JP3994705B2 - メモリーカードの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラッシュメモリー等のICメモリーを搭載したメモリーカードの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のメモリーカードAは、例えば図6に示すように、メモリーカード用成形品15aに設けた凹部16にICメモリー等の電子部品2が実装された基板1を搭載し、この基板1が搭載された凹部16に他のメモリーカード用成形品15bに設けた凹部16を対向させ、上記2枚のメモリーカード用成形品15a,15bを超音波溶着や接着剤等で貼着することによって製造されている。通常、このようにして製造されるメモリーカードAは、その大きさや厚みが規格化されて制限されているため、メモリーカード用成形品15の凹部16の容積に応じて、電子部品2が実装された基板1を搭載する必要がある。逆にいえば、大容量の記憶能力や高速処理能力を有する電子部品2が実装された基板1を搭載するにあたっては、予め凹部16の容積を大きく確保しておく必要があり、従って、凹部16の底部となる薄肉部17をより薄く形成しておかなければならないものである。
【0003】
しかしながら、一般的にメモリーカード用成形品15は、射出成形やトランスファー成形によって成形されており、上記の薄肉部17の厚みは0.2mmにするのが限界であって、たとえこの厚みより薄く薄肉部17を形成できたとしても、反り、ヒケ、バリ、ウエルド等が発生してメモリーカードAの製造が困難となるものであった。一方、上記の薄肉部17の面積は、通常、0.25〜30cm2の範囲とされている。
【0004】
また、既述のようにメモリーカードAの製造は、電子部品2が実装された基板1を2枚のメモリーカード用成形品15a,15bの凹部16に挟入した後、これらのメモリーカード用成形品15a,15bを貼着することによって行われているが、このときの凹部16の大部分は、図6(a)に示すように電子部品2や基板1によって占められている一方、その他の部分には隙間18が生じている。そのため、場合によってはこの隙間18の存在に起因してメモリーカードAが破損するおそれがある。そこで従来は、図6(b)に示すように、メモリーカード用成形品15と電子部品2及び基板1との間の隙間18にエポキシ樹脂等の充填材19を注入することによって、メモリーカードAの破損の防止が図られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、通常、図6に示すように、電子部品2が実装された基板1は、一方のメモリーカード用成形品15aの凹部16の底部に載置されるものであり、しかもこの底部は、既述のように薄肉部17であって厚みが薄いため、メモリーカードA内部の隙間18に充填材19を注入する際に、この注入圧力に抗して基板1を支えておくのが困難であった。そのため、充填材19の注入によって基板1の位置がずれたり、基板1やこの基板1を内蔵するメモリーカードA全体が変形したり破損したりするという問題があった。
【0006】
また、上述したようなメモリーカードAの製造においては、2枚のメモリーカード用成形品15a,15bを貼着する工程が必要であるのはもちろん、さらにメモリーカードA内部の隙間18に充填材19を注入し、これを硬化させる工程も必要であり、工数が多いという問題もあった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、メモリーカード内部において基板が位置ずれしないと共に、基板やこの基板を内蔵するメモリーカードの変形・破損を防止することができ、また、従来のようなメモリーカード用成形品の貼着工程や充填材の注入工程が不要であり、規格化されたメモリーカードの外形寸法において電子部品及び基板が占める容積を大きく確保することができるメモリーカードの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係るメモリーカードの製造方法は、電子部品2が実装された基板1を内蔵するメモリーカードAを製造するにあたって、電子部品2が実装された基板1を成形金型3の一方の割り型3bに設けたコアブロック7に載置すると共にこのコアブロック7に設けた基板位置決めピン11を基板1に掛着して基板1の位置決めを行った後に成形金型3を型締めし、次いで、溶融状態の樹脂8を基板1と他方の割り型3aとの間のキャビティ4に注入すると共に、その注入圧力で基板1をコアブロック7に押さえ付けながら樹脂8をこのキャビティ4に充填し、次にコアブロック7を基板1から離間させた後、コアブロック7と基板1との間の隙間14に再度溶融状態の樹脂8を注入すると共に、その注入圧力で基板1を他方の割り型3aの側に押さえ付けながら樹脂8をこの隙間14に充填して成形することを特徴とするものである。
【0009】
また請求項2の発明は、請求項1において、前記他方の割り型3aに設けた基板保持ピン5によって、コアブロック7に載置された基板1を押さえ付けて基板1を保持すると共に、前記基板位置決めピン11と基板保持ピン5とを溶融状態の樹脂8の注入圧力によって基板1から離間する方向に後退させることを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1はメモリーカードAを製造する工程の一例を示すものである。メモリーカードAには電子部品2が実装された基板1を内蔵するものであるが、かかる基板1としては特に限定されるものではなく、従来のメモリーカードAを製造する際に使用されていたものと同様のものを使用することができる。すなわち、基板1の両面又は片面に形成された回路にICメモリー(例えば、フラッシュメモリー)等の電子部品2を実装すると共に、この回路に接続される端子部9を基板1の端部に設け、図示省略した外部電極からこの端子部9を介して基板1の回路に通電できるようになっている。
【0012】
メモリーカードAの製造に使用する成形金型3は、一対の割り型3a,3bから形成されるものであり、両割り型3a,3bは型締め・型開き自在に各パーティング面(分割面)を対向させて配置してある。ここで、一方の割り型3bにはコアブロック7が、両割り型3a,3bの型締め・型開き方向に沿って前進後退自在に設けられており、しかも、このコアブロック7の先端面20は略平滑であり、その面積はここに載置される基板1よりも広く形成されている。また、他方の割り型3aのパーティング面には、キャビティ4が凹設してある。そして両割り型3a,3bを型締めした後、コアブロック7をパーティング面から所定量だけ型開き方向に後退させた際に形成される隙間14と、上記のキャビティ4とを合わせた空間部分全体が、規格化されたメモリーカードAの外形寸法となるように、成形金型3が製作されている。なお、キャビティ4が凹設されている方の割り型3aには、図1のようにゲート21及びランナー22も凹設してあり、型締めした後でランナー22からキャビティ4に樹脂8を注入することができるように、ゲート21を介してランナー22とキャビティ4とが連通されている。
【0013】
また、コアブロック7を備えた一方の割り型3bには、基板位置決めピン11を設けることができる。この基板位置決めピン11は、コアブロック7の先端面20に載置された基板1に掛着して基板1の位置決め(位置合わせ)を行うためのものである。具体的には、この基板位置決めピン11は棒状に形成し、両割り型3a,3bの型締め・型開き方向に沿って前進後退自在にすると共に、前進時においてはコアブロック7の先端面20から他方の割り型3aのキャビティ4に向けて突出し、後退時においては先端がコアブロック7の先端面20と面一となるように形成することができる。このとき、例えば図5に示すように、スプリング10の一端をコアブロック7(図示省略)に固定し、他端を基板位置決めピン11の後端部13に取着するようにしておくと、スプリング10の収縮・伸長によって基板位置決めピン11を前進後退自在にすることができ、基板位置決めピン11を前進後退させるための複雑な機構を組み込む必要がなくなり、成形金型3の構造を単純化することができるものである。
【0014】
図1に示す成形金型3には、基板位置決めピン11は2つ設けられているが、これに限定されるものではなく、任意の個数設けることができる。基板位置決めピン11に基板1を掛着させるにあたっては、図3(a)のように、予め基板1に穿設しておいた位置決め孔23に、基板位置決めピン11を挿嵌することによって行うことができる。このようにして基板1を基板位置決めピン11に掛着させるようにしておくと、基板1の位置決め(位置合わせ)を容易かつ迅速に行うことができ、また、基板1がコアブロック7の先端面20において不用意に摺動することがなくなり、基板1の位置ずれを確実に防止することができるものである。
【0015】
さらに、コアブロック7を備えた一方の割り型3bに対して他方の割り型3aには、基板保持ピン5を設けることができる。この基板保持ピン5は、コアブロック7の先端面20に載置された基板1を押さえ付けることによって基板1を保持するためのものである。具体的には、この基板保持ピン5は棒状に形成し、両割り型3a,3bの型締め・型開き方向に沿って前進後退自在にすると共に、前進時においてはキャビティ4内面からコアブロック7の先端面20に向けて突出し、後退時においては先端がキャビティ4内面と面一となるように形成することができる。このとき、図5に示す基板位置決めピン11の場合と同様に、スプリング10の一端を割り型3a(図示省略)に固定し、他端を基板保持ピン5の後端部24に取着するようにしておくと、スプリング10の収縮・伸長によって基板保持ピン5を移動自在にすることができ、基板保持ピン5を前進後退させるための複雑な機構を組み込む必要がなくなり、成形金型3の構造を単純化することができるものである。
【0016】
図1に示す成形金型3には、基板保持ピン5は1つ設けられているが、これに限定されるものではなく2つ以上設けることもできる。基板1を保持するにあたっては、図4(a)のように、コアブロック7の先端面20に載置された基板1の表面に基板保持ピン5の先端を当接させ、基板保持ピン5で基板1をコアブロック7側に押さえ付けることによって行うことができる。このようにしておくと、基板1がコアブロック7に確実に保持され、基板1がコアブロック7の先端面20から不用意に離間するのを防止することができるものである。
【0017】
そして、上記の成形金型3を使用してメモリーカードAを製造するにあたっては、以下のような工程を経て行うことができる。すなわち、まず図1(a)のように成形金型3を型開きし、図1(b)のように電子部品2が実装された基板1をコアブロック7の先端面20に載置する。このとき上述したように、コアブロック7の先端面20から基板位置決めピン11を突出させておき、この基板位置決めピン11に基板1を掛着させることにより、基板1の位置決め(位置合わせ)を行うことができるが、位置決め孔23を基板1に貫通して設けている場合には、図3(a)のように基板位置決めピン11の先端が位置決め孔23の途中に位置するように基板位置決めピン11を位置決め孔23に挿嵌し、位置決め孔23の一部に空隙として樹脂流入部25を確保しておくのが好ましい。この理由については後述する。
【0018】
次に、両割り型3a,3bを近付け、図1(c)のように型締めを行う。このとき、コアブロック7の先端面20と割り型3bのパーティング面とは面一にしておく。そして、キャビティ4内面から基板保持ピン5を突出させ、上述したように、この基板保持ピン5で基板1をコアブロック7側に押さえ付けることにより、基板1を保持することができるのであるが、図1に示すように、キャビティ4内面の一部に端子隠蔽部26を形成しておくと、型締め時においてこの端子隠蔽部26が、基板1に設けた端子部9に当接し、基板1をコアブロック7側に押さえ付けて保持することができるものである。しかも、型締めから型開きまでの間、端子隠蔽部26は基板1の端子部9を隠蔽しているので、キャビティ4に注入される樹脂8が端子部9を汚損するのを防止することもできるのである。
【0019】
次いで、上記のようにして型締めした後、図1(d)のように溶融状態の樹脂8をランナー22からゲート21を通して、キャビティ4に注入していく。このキャビティ4は、基板1と他方の割り型3aとの間に存在しており、ここに樹脂8を注入していくと、キャビティ4内面に対して注入圧力が加わるのはもちろん、基板1に対してもこの注入圧力が加わる。すなわち本発明では、樹脂8の注入圧力で基板1をコアブロック7に押さえ付けながら樹脂8をキャビティ4に充填するのである。この際、基板1の背面にはコアブロック7が存在し、このコアブロック7によって基板1全体が支えられているので、たとえ大容量の記憶能力や高速処理能力を有する電子部品2を実装すべく、基板1が薄く形成されていたとしても、この基板1は変形したり破損したりすることがなくなるのである。なお、上記の樹脂8としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、PET、PBT、ABS等を使用することができる。これらの樹脂は単独で使用したり、複数併用したりすることができるのはもちろん、変性して使用したり、他の公知の配合剤と混合・混練して使用することもできる。
【0020】
ここで、上述したような基板保持ピン5を使用している場合は、この基板保持ピン5を基板1から離間させずに成形してしまうと、成形後において、基板1の表面を底部とする孔がメモリーカードAに残存することになり、この孔がメモリーカードA故障の原因となるなど、信頼性を高く得ることができなくなるおそれがある。また、基板保持ピン5を基板1から離間させるにしても、そのタイミングが早すぎたのでは基板1の位置がずれる可能性が高くなり、逆に遅すぎたのでは樹脂8が先に増粘し、基板保持ピン5が占めていた箇所を樹脂8で埋めるのが困難となり、その結果、メモリーカードAの内部に空隙が残存したり、メモリーカードAの表面に段差や凹みが生じたりする可能性が高くなる。そこで、本発明において基板保持ピン5を使用する場合には、溶融状態の樹脂8の注入圧力によって、基板保持ピン5を基板1から離間する方向に後退させるのが好ましい。このようにすると、基板保持ピン5が基板1から離間するよりも前に、基板保持ピン5周囲の樹脂8が基板1をコアブロック7に押し付けることになり、基板1の位置ずれを防止することができるものである。そして、基板保持ピン5と基板1とが接する付近に樹脂8の注入圧力が集中することによって、基板保持ピン5を基板1から離間させることができるものであり、ひとたび離間すれば、基板保持ピン5の先端と基板1との間に樹脂8が流れ込んで、その後は基板保持ピン5をキャビティ4内面に向けてスムーズに後退させることができるものである。
【0021】
しかし、図4(a)のように基板保持ピン5の側面が基板1に対して略垂直であると、基板保持ピン5に作用する樹脂8の注入圧力は、その大部分が基板保持ピン5の側面に対して略垂直に作用し、基板保持ピン5を基板1から離間させる方向には作用しにくくなるおそれがある。そこで、基板保持ピン5の先端を先細り状に形成しておくのが好ましい。具体的には、図4(b)のように基板保持ピン5の先端に傾斜面27を形成したり、あるいは図4(c)(d)のように基板保持ピン5の先端に凸曲面28や凹曲面29を形成したりすることによって、先細り状にすることができる。このようにしておくと、上記の傾斜面27、凸曲面28、凹曲面29に作用する樹脂の注入圧力は、図4(b)(c)(d)の矢印で示すように、基板1から離れる方向に向いて基板保持ピン5に作用し、基板保持ピン5を基板1から離間させるのを促進することができるものである。
【0022】
次に、上記のようにして樹脂8をキャビティ4に充填した後、図1(e)のようにコアブロック7を所定量だけ矢印の向きに後退させて基板1から離間させる。このとき基板1は、ある程度増粘し粘着性を有するキャビティ4内の樹脂8によって引き付けられているので、コアブロック7と共に移動することはない。また、基板位置決めピン11を使用する場合に、図3のように位置決め孔23の一部に樹脂流入部25を確保しておくのが好ましい理由は、キャビティ4に樹脂8を充填する際にこの樹脂流入部25にも樹脂8が浸入し、樹脂8と基板1との接触面積が増加する上にアンカー効果も得られ、キャビティ4内の樹脂8が基板1を引き付けておく力を一層高めることができ、基板1がコアブロック7と共に移動する可能性をさらに低下させることができるからである。
【0023】
なお、基板位置決めピン11として、図3(a)のように、外径が基板1の位置決め孔23の内径と略同一のものを使用すると、コアブロック7を基板1から離間させる工程において、キャビティ4内の樹脂8が基板1を引き付ける力が弱い場合には、基板1がこの樹脂8から剥がれ、位置決め孔23に基板位置決めピン11が貫入されつつ、基板1がコアブロック7と共に移動するおそれがある。そこで、基板位置決めピン11としては、例えば、図3(b)(c)(d)に示すように、先端部30の外径が位置決め孔23の内径と略同一であって、かつ先端部30以外の外径が位置決め孔23の内径よりも太いものを使用するのが好ましい。かかる基板位置決めピン11を使用すると、たとえキャビティ4内の樹脂8が基板1を引き付けておく力が弱くても、基板1の位置決め孔23の開口縁が基板位置決めピン11の先端部30以外の部分に引っ掛かることによって、基板1を基板位置決めピン11で支えておくことができるものである。
【0024】
その後、図1(f)のようにコアブロック7の先端面20と基板1の背面(コアブロック7側の面)との間に生じた隙間14に再度溶融状態の樹脂8を注入する。この隙間14は、基板1とコアブロック7との間に存在しており、ここに樹脂8を注入していくと、コアブロック7の先端面20に対して注入圧力が加わるのはもちろん、基板1に対してもこの注入圧力が加わる。すなわち本発明では、樹脂8の注入圧力で基板1を他方の割り型3aの側に押さえ付けながら樹脂8をこの隙間14に充填するのである。この際、基板1の表面(コアブロック7と反対側の面)にはキャビティ4に充填された樹脂8が存在し、この樹脂8によって基板1全体が支えられているので、厚みの薄い基板1を使用していても、この基板1は変形したり破損したりすることがなくなるのである。
【0025】
ここで、上述したような基板位置決めピン11を使用している場合は、この基板位置決めピン11を基板1から離間させずに成形してしまうと、基板保持ピン5の場合と同様に、メモリーカードAの信頼性を高く得ることができなくなるおそれがある。また、基板位置決めピン11を基板1から離間させるタイミングが早ければ、基板1がキャビティ4内の樹脂8から剥がれたり、逆に遅ければ、メモリーカードAに空隙等が生じたりする可能性が高くなる。そこで、本発明において基板位置決めピン11を使用する場合には、溶融状態の樹脂8の注入圧力によって、基板位置決めピン11を基板1から離間する方向に後退させるのが好ましい。このようにすると、基板位置決めピン11が基板1から離間するよりも前に、基板位置決めピン11周囲の樹脂8が基板1を他方の割り型3aの側に押し付けることになり、基板1がキャビティ4内の樹脂8から剥がれるのを防止することができるものである。そして、基板位置決めピン11と基板1とが接する付近に樹脂8の注入圧力が集中することによって、基板位置決めピン11を基板1から離間させることができ、ひとたび離間すれば、位置決め孔23に樹脂8が浸入すると共に基板位置決めピン11の先端と基板1との間に樹脂8が流れ込んで、その後は基板位置決めピン11をコアブロック7の先端面20に向けてスムーズに後退させることができるものである。
【0026】
しかし、図3(a)のように基板位置決めピン11の側面が基板1に対して略垂直であると、基板位置決めピン11に作用する樹脂8の注入圧力は、その大部分が基板位置決めピン11の側面に対して略垂直に作用し、基板位置決めピン11を基板1から離間させる方向には作用しにくくなるおそれがある。そこで、基板位置決めピン11として、図3(b)(c)(d)のように、位置決め孔23の内径と略同一の外径を有する先端部30と、位置決め孔23の内径よりも太い外径を有する軸部31と、先端部30と軸部31をつなぐ傾斜部32とから構成され、かつ傾斜部32の外径が先端部30から軸部31にかけて太くなるように形成されたものを使用するのが好ましい。具体的には、図3(b)のように傾斜部32を先端部30から軸部31にかけて傾斜面33に形成したり、あるいは図3(c)(d)のように傾斜部32を先端部30から軸部31にかけて凸曲面34や凹曲面35に形成したりすることによって、傾斜部32の外径を先端部30から軸部31にかけて太くすることができる。このようにしておくと、上記の傾斜面33、凸曲面34、凹曲面35に作用する樹脂8の注入圧力は、図3(b)(c)(d)の矢印で示すように、基板1から離れる方向に向いて基板位置決めピン11に作用し、基板位置決めピン11を基板1から離間させるのを促進することができるものである。
【0027】
そして、図1(f)のようにして溶融状態の樹脂8を充填した後に、この樹脂8を冷却して硬化させ、次いで両割り型3a,3bを遠ざけて型開きを行い、脱型することによって製造が完了し、図2のような成形品すなわちメモリーカードAを得ることができるものである。
【0028】
上述したメモリーカードAの製造方法によって、ゲーム用、音楽用、動画用、静止画用等の種々の用途に使用可能なメモリーカードAを製造することができるものであり、従来のようにメモリーカード用成形品15を別途成形しておく必要はなく、このため2枚のメモリーカード用成形品15a,15bを貼着したり、貼着後に生じたメモリーカード15内部の隙間18に補強のための充填材19を注入する必要もなくなるものである。つまり、本発明によればこれらに相当する工程を一度に行うことができるものであり、規格化されたメモリーカードAを効率よく製造することができるものである。しかも、本発明において使用する成形金型3のキャビティ4等の容積は、規格化されたメモリーカードAの外形寸法となるように製作されており、キャビティ4等の容積を限度として電子部品2や基板1の容積を大きく確保することができるものである。
【0029】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1に係るメモリーカードの製造方法は、電子部品が実装された基板を内蔵するメモリーカードを製造するにあたって、電子部品が実装された基板を成形金型の一方の割り型に設けたコアブロックに載置すると共にこのコアブロックに設けた基板位置決めピンを基板に掛着して基板の位置決めを行った後に成形金型を型締めし、次いで、溶融状態の樹脂を基板と他方の割り型との間のキャビティに注入すると共に、その注入圧力で基板をコアブロックに押さえ付けながら樹脂をこのキャビティに充填し、次にコアブロックを基板から離間させた後、コアブロックと基板との間の隙間に再度溶融状態の樹脂を注入すると共に、その注入圧力で基板を他方の割り型の側に押さえ付けながら樹脂をこの隙間に充填して成形するので、溶融状態の樹脂をキャビティに注入するにあたって、基板の背面にはコアブロックが存在し、このコアブロックによって基板全体が支えられることにより、基板の変形・破損を防止することができ、また、溶融状態の樹脂をコアブロックと基板との間の隙間に注入するにあたって、基板の表面にはキャビティに充填された樹脂が存在し、この樹脂によって基板全体が支えられることにより、基板の変形・破損を防止することができるものである。しかも、従来よりも少ない工数で信頼性の高いメモリーカードを効率よく製造することができると共に、規格化された外形寸法において電子部品や基板の容積を大きく確保することができるものである。
【0030】
また請求項2の発明は、前記他方の割り型に設けた基板保持ピンによって、コアブロックに載置された基板を押さえ付けて基板を保持すると共に、前記基板位置決めピンと基板保持ピンとを溶融状態の樹脂の注入圧力によって基板から離間する方向に後退させるので、溶融状態の樹脂を注入する前においては、基板位置決めピンと基板保持ピンとによって、基板の位置決めを容易かつ迅速に行うことができると共に、基板の位置ずれを確実に防止することができるものであり、また溶融状態の樹脂を注入する際においては、樹脂の注入圧力によって、基板の位置ずれを防止することができると共に、基板位置決めピンと基板保持ピンとを後退させることができ、メモリーカードの内部や表面に空隙や段差等が生じるのを防止することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すものであり、(a)乃至(f)は各工程の断面図である。
【図2】本発明に係るメモリーカードの製造方法によって製造されるメモリーカードの一例を示す断面図である。
【図3】本発明における基板位置決めピンの例を示すものであり、(a)乃至(d)は一部拡大した断面図である。
【図4】本発明における基板保持ピンの例を示すものであり、(a)乃至(d)は一部拡大した断面図である。
【図5】本発明における基板位置決めピン等とスプリングとの取着状態を示すものであり、一部拡大した断面図である。
【図6】従来のメモリーカードを示すものであり、(a)(b)は断面図である。
【符号の説明】
A メモリーカード
1 基板
2 電子部品
3 成形金型
3a 割り型
3b 割り型
4 キャビティ
5 基板保持ピン
7 コアブロック
8 樹脂
11 基板位置決めピン
14 隙間
Claims (2)
- 電子部品が実装された基板を内蔵するメモリーカードを製造するにあたって、電子部品が実装された基板を成形金型の一方の割り型に設けたコアブロックに載置すると共にこのコアブロックに設けた基板位置決めピンを基板に掛着して基板の位置決めを行った後に成形金型を型締めし、次いで、溶融状態の樹脂を基板と他方の割り型との間のキャビティに注入すると共に、その注入圧力で基板をコアブロックに押さえ付けながら樹脂をこのキャビティに充填し、次にコアブロックを基板から離間させた後、コアブロックと基板との間の隙間に再度溶融状態の樹脂を注入すると共に、その注入圧力で基板を他方の割り型の側に押さえ付けながら樹脂をこの隙間に充填して成形することを特徴とするメモリーカードの製造方法。
- 前記他方の割り型に設けた基板保持ピンによって、コアブロックに載置された基板を押さえ付けて基板を保持すると共に、前記基板位置決めピンと基板保持ピンとを溶融状態の樹脂の注入圧力によって基板から離間する方向に後退させることを特徴とする請求項1に記載のメモリーカードの製造方法。
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