JP3993292B2 - 厚肉部を有する繊維強化樹脂成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リブやボスなどの厚肉部を有する繊維強化樹脂成形品に関し、詳しくは、リブやボスの形状を成形品の主要部である薄肉部の肉厚に対して大きくして射出成形、射出圧縮成形などで成形品を成形しても、リブやボス対応部分の表面にヒケの発生がない、繊維強化樹脂成形品に関する。
【0002】
【背景技術】
従来より、熱可塑性樹脂はインストルメントパネルコア、ファンシュラウド、フアン、フロントエンド、タイミングベルトカバー、エンジンカバー、ラゲージボックス、ホイールキャップ、エアクリーナ・ケース等の自動車部品、クーリングファン、プーリー、エアコン室外機、テレビ、パソコン、コンピューター類のハウジング等の家電、OA分野および外壁用パネル、間仕切壁用パネル等の建築・土木用部材等として広く利用されている。これらの成形品は主として射出成形により成形され、射出成形品の製品剛性は、肉厚の3乗に比例して向上する。しかし、肉厚を大きくすると、製品の重量が上がり、重くなることや冷却時間が長くなり成形サイクルが長く生産性が劣ること、樹脂量が多くなり、軽量化のメリットがなくなるなどの経済性にも劣るなどの問題点がある。
【0003】
この対策として、成形品の裏面に、リブを立て、成形品重量を抑えつつ成形品の剛性を向上させることが一般に採用されている。リブ構造により製品剛性を向上させるためには、裏面のリブの幅やリブ部の肉厚が大きいほど効果がある。さらに、このようなリブにより樹脂の流動性が高まり主要部分が薄肉であっても、成形性よく製品を得ることができる。しかし、リブ生成部は肉厚が他の部分よりも厚くなり、冷却が遅れることから、成形品の表面にヒケが発生し、その大きさは制限されているのが現状である。
【0004】
たとえば、「プラスチック成形加工入門」(本吉正信:日刊工業新聞社)P249には、リブの肉厚は母体となる平坦部の肉厚よりも小さくし、平坦部の肉厚の1/2ぐらいとする、と述べられている。また、「射出成形用金型」(岡田清:プラスチックエージ社)P158にも、普通リブ厚みは壁肉の0.5〜0.8倍以下に抑えることが述べられている。さらに、「プラスチック射出成形品の設計」(森隆:工業調査会)P99にも、リブ厚さは根本で壁肉厚の50〜70%以上とすると表面にヒケを生じると述べている。繊維強化樹脂の場合においても、繊維のない場合よりヒケの程度は小さいものの、本質的には変わらない。
【0005】
この成形品リブ部分のヒケの発生を防止する方法として、金型キャビティに溶融樹脂を射出後、金型キャビティ内のリブ形成部分の溶融樹脂に加圧流体を圧入して、リブを中空にすることが近時採用されてきている。しかしながら、最近の大面積の成形品や薄肉化の傾向から、リブの効果を得るためには、リブの長さや本数を必要とし、かかる場合には、通常の流体(ガス)注入方法では、射出時の圧力が非常に高くなったり、流体をリブの全域に注入することが非常に困難になるなどの問題を残している。これを改良するために、金型キャビティのリブ対応部分へ可動中子を突出させた状態で溶融樹脂を射出した後、リブ対応部分へ加圧流体を圧入し、この加圧流体の圧入と共に又は圧入後に可動中子を後退させる射出成形方法が提案されている(特開平5−301257号公報)。
【0006】
他方、薄肉軽量成形品にあっては、リブのみでなく、ボスがある。薄肉成形品は一般に他の部材にネジ止めなどで固定されるため、ボスが殆どの場合一体的に設けられている。このボス部分もリブと同様に、冷却が他の一般の薄肉部より遅れるため表面側にヒケを生じ、外観が不良となるとともに、根元部の肉厚が薄くなり、強度の点からも製品化が困難になっている。このボス部のヒケの防止としては、一般にボス穴またはボスの周囲の根元にガスを圧入して保圧することが提案されている。
【0007】
すなわち、合成樹脂成形品であって5mm以下の板状部分を含む成形品にあっては、リブやボスなど他の一般部分よりも厚み方向の肉厚が厚くなる部分を有する成形品となる場合が多く、この場合には、厚肉部に対応する成形品の表面にヒケが発生し、そのままでは商品価値がなく、前記のようなヒケを防止する特殊の成形方法を採用したり、他の表面材を被覆するなどの対策が必要となっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、リブ部やボス部に流体(ガス)を注入する方法では、通常の射出成形装置に、高圧の流体(ガス)を供給するための大がかりな、高価な装置を必要とするばかりでなく、流体の注入時のタイミング、注入量などを決定するために複雑な制御方法、制御装置を必要とする。さらに、リブとして連続していなければ、それぞれ独立にガスの注入が必要となり、金型構造、注入ノズルなどが複雑になり、リブの形状、構造設計において大きく制限される。また、ボス部のヒケの防止としては、ボス穴やボスの周囲の根元にガスを注入し保圧する場合にあっては、ボスは数や位置の関係で多くあり、それぞれにガスで保圧することは、金型構造が複雑になるとともに、根元部分に選択的にガスを注入することは非常に困難である。また、ガス保圧により、ボス根元周囲の肉厚が減少し、ボスの強度が低下することもあり、本質的な解決は困難であるという問題点がある。
【0009】
本発明は、リブやボスなどの一般薄肉成形品に一体的に設けられた厚肉部の大きさにかかわらず、成形品の表面側にヒケが生じることがなく、強度や生産性にもすぐれた繊維強化樹脂成形品を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題につき鋭意研究した結果、特定の繊維含有条件を満足する場合に、リブやボスなどの厚肉部の大きさにかかわらず、成形品の表面側のヒケが解消することを見出した。
すなわち、薄肉部の厚みに対して、0.5倍以上の幅を有するような大型のリブであっても、従来提案されている、ガス注入射出成形、ガス注入保圧成形のような、特別の成形機、成形方法を用いることなく、成形品中の繊維の繊維長分布、平均繊維長と繊維含有量の関係が特定の関係を満足する場合にヒケが発生しないことを見出し、本発明を完成したものである。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)厚肉部を有する繊維含有成形品であって、繊維長が0.5mm以下の繊維が5〜30重量%、1.5mm以上の繊維が20重量%以上であり、成形品中の繊維の重量平均繊維長をL(mm)、繊維含有量をV(重量%)としたとき、20≦L×V≦500の関係を満足するとともに、成形品の薄肉部の肉厚をa、リブの幅をbとして、b/aが0.5以上であり、ことを特徴とする厚肉部を有する繊維強化樹脂成形品。
(2)厚肉部が、リブおよび/またはボスである上記(1)記載の厚肉部を有する繊維強化樹脂成形品。
(3)樹脂が結晶性熱可塑性樹脂である上記(1)または(2)に記載の厚肉部を有する繊維強化樹脂成形品。
(4)樹脂が不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂を含有するものである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の厚肉部を有する繊維強化樹脂成形品。
(5)繊維がガラス繊維である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の厚肉部を有する繊維強化樹脂成形品を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明は繊維強化樹脂成形品であり、一般的には、繊維含有熱可塑性樹脂を射出成形して得られるリブやボスなどの厚肉部を有する繊維強化樹脂成形品である。
【0013】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、特に、制限はないが、例えば、ポリプロピレン、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ芳香族エーテルまたはチオエーテル系樹脂、ポリ芳香族エステル系樹脂、ポリスルホン系樹脂およびアクリレート系樹脂等が採用できる。ここで、上記熱可塑性樹脂は、単独で用いることがもできるが、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。このような熱可塑性樹脂のうち、ポリプロピレン、プロピレンと他のオレフィンとのブロック共重合体、ランダム共重合体、あるいは、これらの混合物などのポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が好ましく、特に、ヒケが発生しやすい結晶性熱可塑性樹脂の場合に好適に適用できる。また、不飽和カルボン酸、または、その誘導体で変性された酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有するポリオレフィン系樹脂、特にポリプロピレン系樹脂が好適である。
【0014】
なお、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された変性ポリオレフィン系樹脂は、ガラス繊維などの繊維と樹脂の界面強度を向上させ、その結果、成形品の物性、長期安定性の向上に寄与するとともに、繊維束への樹脂含浸性が促進するので好適である。この変性されたポリオレフィン系樹脂に用いられるポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリプロピレン,ポリエチレン,エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム,エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン系化合物共重合体(例えばEPDMなど),エチレン−芳香族モノビニル化合物−共役ジエン系化合物共重合ゴムなどが挙げられる。また、上記α−オレフィンとしては、例えばプロピレン;ブテン−1;ペンテン−1;ヘキセン−1;4−メチルペンテン−1などが挙げられ、これらは一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのポリオレフィン系樹脂の中では、ポリプロピレンやポリエチレンが好適であり、中でもポリプロピレンが最も好ましい。
【0015】
また、変性に用いられ不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸,メタクリル酸,マレイン酸,フマル酸,イタコン酸,クロトン酸,シトラコン酸,ソルビン酸,メサコン酸,アンゲリカ酸などが挙げられ、またその誘導体としては、酸無水物,エステル,アミド,イミド,金属塩などがあり、例えば無水マレイン酸,無水イタコン酸,無水シトラコン酸,アクリル酸メチル,メタクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸ブチル,マレイン酸モノエチルエステル,アクリルアミド,マレイン酸モノアミド,マレイミド,N−ブチルマレイミド,アクリル酸ナトリウム,メタクリル酸ナトリウムなどを挙げることができる。これらの中で不飽和ジカルボン酸及びその誘導体が好ましく、特に無水マレイン酸が好適である。
【0016】
これらの不飽和カルボン酸やその誘導体は、前記ポリオレフィン系樹脂を変性する場合、一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また変性方法については特に制限はなく、従来公知の種々の方法を用いることができる。例えば該ポリオレフィン系樹脂を適当な有機溶媒に溶解し、不飽和カルボン酸やその誘導体及びラジカル発生剤を添加して攪拌、加熱する方法、あるいは前記各成分を押出機に供給してグラフト共重合を行う方法などを用いることができる。この変性されたポリオレフィン系樹脂としては、前記不飽和カルボン酸やその誘導体の付加量が0.01〜20重量%、好ましくは0.02〜10重量%の範囲にあるものがよく、特に無水マレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂が好適である。
【0017】
本発明に用いられる繊維としては、セラミック繊維:ボロン繊維、炭化ケイソ繊維、アルミナ繊維、チッ化ケイ素繊維、ジルコニア繊維、無機繊維:ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維:銅繊維、黄銅繊維、鋼繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維、アルミニウム合金繊維、有機繊維:ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリアリレート繊維などを例示できる。これらのなかでもガラス繊維が好ましく用いられる。
【0018】
ここで、ガラス繊維としては、E−ガラス、S−ガラスなどのガラス繊維であって、その平均繊維径が25μm以下のもの、好ましくは3〜20μmの範囲のものが好ましく採用できる。ガラス繊維の径が3μm未満であると、ペレット製造時にガラス繊維が樹脂になじまず、樹脂を含浸するのが困難となる一方、20μmを超えると、溶融混練時に切断、欠損が起こりやすくなる。
【0019】
本発明の繊維強化樹脂成形品を得るには、たとえば、これらの熱可塑性樹脂および連続繊維を用い、引き抜き成形法によって強化されたペレット状の原料を用いることができる。この原料ペレツトとしては、全長が2〜100mmであり、前記全長と等しい長さの繊維が、互いに平行に配列された状態となって20〜80重量%含有されたペレットまたは前記ペレットと他の樹脂ペレットとの混合物で前記繊維が全体の10〜70重量%とされた原材料であることが好ましい。繊維が互いに平行に配列された状態となって全体の20〜80重量%含有されたペレットを用いれば、射出装置のスクリューで可塑化・混練を行っても、繊維の破断が起こりにくく、また分散性も良好となる。これにより、成形品中に存在する繊維長さの分布を本発明の範囲内に制御することができやすい。しかも、成形品の物性の向上、表面外観が向上する。
【0020】
次に、繊維がガラス繊維の場合に引き抜き成形法等でペレットを製造するにあたり、ガラス繊維は、カップリング剤で表面処理した後、収束剤により、100〜10000本、好ましくは、150〜5000本の範囲で束ねておくことが望ましい。カップリング剤としては、いわゆるシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤として従来からあるものの中から適宜選択することができる。例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のアミノシランやエポキシシランが採用できる。特に、前記アミノ系シラン化合物を採用するのが好ましい。
【0021】
収束剤としては、例えば、ウレタン系、オレフィン系、アクリル系、ブタジエン系およびエポキシ系等が採用できる。これらのうち、ウレタン系収束剤は、通常、ジイソシアネート化合物と多価アルコールとの重付加反応により得られるポリイソシアネートを50重量%以上の割合で含有するものであれば、油変性型、湿気硬化型およびブロック型等の一液タイプ、および、触媒硬化型およびポリオール硬化型等の二液タイプのいずれもが採用できる。一方、オレフィン系収束剤としては、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された変性ポリオレフィン系樹脂が好ましく採用できる。上述のような収束剤で収束したガラス繊維に熱可塑性樹脂を付着・含浸させることにより、ガラス繊維を含有する樹脂ペレットが製造される。ガラス繊維に熱可塑性樹脂を付着・含浸させる方法としては、例えば、溶融樹脂の中に繊維束を通し、繊維に樹脂を含浸させる方法、コーティング用ダイに繊維束を通して含浸させる方法、あるいは、ダイで繊維の周りに付着した溶融樹脂を押し広げて繊維束に含浸させる方法等が採用できる。
【0022】
ここで、繊維束と樹脂とをよくなじませる、すなわち濡れ性を向上するために、内周に凹凸部が設けられたダイの内部に、張力が加えられた繊維束を通して引き抜くことで、溶融樹脂を繊維束に含浸させた後、さらに、この繊維束を加圧ローラでプレスする工程が組み込まれた引抜成形法も採用できる。なお、ガラス繊維と溶融樹脂とが互いによくなじむ、濡れ性のよいものであれば、溶融樹脂がガラス繊維に容易に含浸され、ペレットの製造が容易となるので、前述の収束剤で繊維を収束する工程は、省略できる場合がある。ここで、互いによくなじませる方法としては、樹脂に極性を付与したり、ガラス繊維の表面にカップリング剤と反応する官能基をグラフトしたりする方法が有効である。さらに、繊維束をあらかじめ含浸する場合の溶融樹脂温度以上の沸点を有する流動パラフィンなどの液体で処理したあと、繊維束が互いに接触しないように複数束を含浸部へ導入して含浸、引き抜きする方法の採用が好ましい。この方法によれば、樹脂の濡れ性が向上して、含浸が容易になると共に、引き抜き速度の向上も図れる。
【0023】
このような方法で、樹脂が含浸された長尺ストランド等を、繊維の長手方向に沿って切断すれば、ペレットの全長と同じ長さの長繊維を含んだ樹脂ペレットを得ることができる。この際、樹脂ペレットとしては、繊維束がストランドにされ、その断面形状が略円形となった樹脂含有長尺ストランドを切断したものに限らず、繊維を平たく配列することにより、シート状、テープ状またはバンド状になった樹脂含有長尺繊維束を所定の長さに切断したものでもよい。
【0024】
本発明の成形品を得るためには、成形原料として、繊維強化樹脂ペレットに、必要により、3重量%以下、具体的には、0.01〜3重量%の発泡剤を含ませることもできる。ここで、発泡剤の種類は、熱により分解してガスを発生するものであれば、限定されない。例えば、シュウ酸誘導体、アゾ化合物、ヒドラジン誘導体、セミカルバジド、アジド化合物、ニトロソ化合物、トリアゾール、尿素およびその関連化合物、亜硝酸塩、水素化物、炭酸塩ならびに重炭酸塩等が採用できる。さらに具体的に例示すれば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ベンゼンスルホヒドラジド、N,N−ジニトロペンタメチレンテトラミン、テレフタルアジド等が採用できる。また、必要により、安定剤、帯電防止剤、耐候剤、光安定剤、着色剤、短繊維、タルク等の充填剤を加えることもできる。
【0025】
つぎに、本発明の繊維強化樹脂成形品中の平均繊維長としては、繊維含有量とも関係するが、通常1〜20mm、好ましくは2〜15mmである。ここで1mm未満では、繊維の絡み合いが不十分となり、膨張性が不足し、その結果としてヒケ発生の防止効果が不十分となる場合がある。また、20mmを越えると分散性が十分でないとともに、成形時の溶融流動性が不十分となり、成形品の薄肉部、角部、末端部に樹脂が流れにくくなり、外観不良や成形不良が発生する場合がある。さらに、繊維含有量としては、通常10〜70重量%、好ましくは15〜60重量%である。10重量%未満では、繊維の絡み合いが不十分となり膨張性が低下する場合があり、70重量%を越えると成形時の溶融流動性が低下し、外観不良、成形性が低下する場合があり、成形品の用途によっては好ましくない場合がある。
【0026】
上記において、平均繊維長、繊維含有量は、繊維一般について記載したが、ガラス繊維の場合についても同様である。また、平均繊維長、繊維含有量については、繊維の絡み合いによる膨張性、ヒケの防止について述べたが、強度、剛性、耐熱性などの物性の観点からも上記範囲が好ましい。
本発明の繊維強化樹脂成形品は、厚肉部を有するとともに、繊維含有成形品中において、繊維長が0.5mm以下の繊維が繊維全体の30重量%以下、好ましくは25重量%以下であり、1.5mm以上の繊維が繊維全体の20重量%以上、好ましくは30重量%以上である。ここで、0.5mm以下の繊維が30重量%を越えると、ヒケの発生が生じやすく、また、1.5mm以上の繊維が20重量%未満では同様にヒケが生じやすくなる。本発明では、上記の繊維長の分布に加えて、成形品中の繊維の重量平均繊維長をL(mm)、繊維含有量をV(重量%)としたときに、20≦L×V≦500の関係を満足することが必要である。ここで、L×Vが20未満では、ヒケが大きく、500を越えると成形性が低下し、リブの末端まで樹脂が流れない場合があり、表面の外観も低下する。したがって、ヒケの発生の観点から、好ましくは、30≦L×V≦400である。
【0027】
つぎに、本発明の繊維強化樹脂成形品とは、リブ、ボスに代表される厚肉部を有する樹脂成形品である。成形品の形状としては、板状成形品、箱状成形品、組み合わせ成形品などその形状はまったく限定されるものではない。また、厚肉部としてのリブの形状としては、独立の直線状、格子状などのような形状であってもよい。図1に本発明の繊維強化樹脂成形品の一例を示す。図中1は成形品、2は板状薄肉部、3はリブ、4はゲート部、aは薄肉部肉厚、bはリブの幅を示す。
【0028】
ここで、リブの形状として、薄肉部の肉厚をa、リブの幅をbとして、b/aが0.5以上であるような、比較的大きなリブに好適に適用できるのが本発明の大きな特徴である。すなわち、このb/aが、0.5未満の場合のような、比較的小型のリブの場合では、従来の一般繊維強化成形品であっても、成形条件などによりヒケのない成形品を得ることはできたが、成形品の剛性向上効果が不十分であり使用分野が制限されていた。しかし、本発明の成形品にあっては、b/aが、1.0〜1.5と大きくしていってもヒケの発生はなく、リブの設計を従来の常識の範囲を大幅にこえて大きく自由にできることを可能にするものである。
【0029】
なお、成形品の厚肉部としては、リブに加えて、一般の成形品に多用されるボスがある。ボスにあっても、部品としての成形品のサイズの大型化にともなって、取り付け強度の強化が望まれている。しかし、従来は、ヒケの問題で大型化できず、小さいもので数を増やすなどの方法しかなく、自ずと限界があったが、本発明では、サイズをある程度無視しても、設計できる。さらに、厚肉部としては、箱状成形品の剛性向上手段としての内側底部のコーナー部の厚肉部などもある。
【0030】
本発明の繊維強化樹脂成形品の製造方法としては、一般の射出成形方法だけでなく、繊維含有溶融樹脂を金型キャビティに不完全充填の状態で射出し、次いで、可動型を前進させて樹脂を圧縮するいわゆる射出圧縮成形方法を採用することもできる。特に、本発明の繊維強化樹脂成形品において、全体的に薄肉で比較的、面積が大きい成形品の場合には、成形品の配向度を低く、ソリ変形を防止する点からは成形圧力が低い射出圧縮成形方法の採用が好ましい場合がある。
【0031】
以上、詳細に述べたように、本発明の繊維強化樹脂成形品は、リブ、ボスなどの厚肉部の設計が、従来はヒケ発生を考慮して厳密にする必要があるとともに、ヒケの発生の確認のための試作が必要であったのに比べ、これらを実質的に不要にする画期的なものである。したがつて、成形品の強度、剛性、耐熱性などのすぐれた物性とともに、前記したところの、自動車部品、家電、0A機器分野、家具、建築、土木分野などの各種成形品として、その応用分野を拡大するものである。特に、従来困難であった、大型の成形品分野への適用が期待される。
【0032】
【実施例】
次に、本発明の効果を具体的な実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
ガラス繊維が平行に配列し、その含有量が60重量%、長さが8mmであるガラス繊維強化ポリプロピレンペレット(無水マレイン酸変性ポリプロピレンを3重量%含有)、平均繊維長が0.4mm、ガラス繊維の含有量が40重量%の短繊維強化ポリプロピレンペレット(無水マレイン酸変性ポリプロピレンを3重量%含有)およびメルトインデックス(MI:230℃、2.16kg荷重)が30g/10分のポリプロピレンペレットからなる、3種類の原料ペレットを適宜ドライブレンドして成形用原料とした。射出成形機は、型締力:850t、ガラス繊維の繊維長、分布を調整するために、圧縮比:1.9と3.2の2種のスクリューを使い分けるとともに、背圧を変化させて成形実験を行った。図1に示すような、成形品の一般部の肉厚が3mmで300mm×600mmの平板であって、高さ10mmのリブ(幅を変化させた)を2本有する成形品を成形した。成形品中の繊維含有量、繊維長分布、L×Vの値とリブの大きさ(幅)、ヒケの関係についての測定結果を表1に示した。
【0033】
繊維長、繊維含有量は、成形品のリブ部を切り出し、灰化後、万能投影機を用いてガラス繊維を倍率10倍で写真撮影し、デシタイザーにおいて測定した。また、ヒケの程度は目視により、以下の基準で評価した。
◎:ヒケは全く見られず。
○:ヒケがわずかに見られる。
×:ヒケが明瞭であり、製品化不可。
実験番号1〜4において、リブの形状を大きくしても、ヒケの発生がないことが明らかである。
【0034】
【表1】
【0035】
実施例2
実施例1のリブの代わりに、リブ相当部の中間部に外形7mm、内径4mm、高さ20mmのボスを2個有する成形品を実験番号1の条件で射出成形した以外は、実施例1に準じて繊維強化樹脂成形品を成形した。成形品のボス部のガラス繊維についての測定結果は、ガラス繊維含有量41重量%、0.5mm以下が、8%、1.5mm以上が71%、L×Vが209であった。成形品のボス対応部の表面側にヒケはまったく見られなかった。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、薄肉成形品のリブやボスなどの厚肉部の反対側の成形品表面に、ヒケの発生のない成形品が得られる。しかも、ガス注入やガス保圧などの成形における成形品肉厚部や厚肉部と金型表面間にガスを供給するような、特別な成形手段を用いることなく一般の成形手段で成形でき、コスト、生産性の点ですぐれたものである。しかも、従来、リブなどの大きさに限界があり、大型のリブを有する成形品が得られなかった分野の成形品も成形可能となった。さらに、リブと共に繊維による強化と相まって、高強度、高剛性の製品を得ることが可能となった。特に、成形品の設計において、リブやボスの形状、サイズ、位置などをヒケの点から考慮する必要がなくなり、設計の自由度が広がり、その応用分野が大幅に拡大する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態のリブを有する繊維強化成形品の斜視図を示すものである。
【符号の説明】
1:成形品
2:板状薄肉部
3:リブ
4:ゲート部
Claims (5)
- 厚肉部を有する繊維含有成形品であって、
繊維長が0.5mm以下の繊維が5〜30重量%、1.5mm以上の繊維が20重量%以上であり、
成形品中の繊維の重量平均繊維長をL(mm)、繊維含有量をV(重量%)としたとき、20≦L×V≦500の関係を満足するとともに、
成形品の薄肉部の肉厚をa、リブの幅をbとして、b/aが0.5以上であることを特徴とする厚肉部を有する繊維強化樹脂成形品。 - 厚肉部が、リブおよび/またはボスである請求項1記載の厚肉部を有する繊維強化樹脂成形品。
- 樹脂が結晶性熱可塑性樹脂である請求項1または請求項2に記載の厚肉部を有する繊維強化樹脂成形品。
- 樹脂が不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の厚肉部を有する繊維強化樹脂成形品。
- 繊維がガラス繊維である請求項1〜4のいずれかに記載の厚肉部を有する繊維強化樹脂成形品。
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