JP2001009984A - 多層成形品およびその製造方法 - Google Patents

多層成形品およびその製造方法

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JP2001009984A
JP2001009984A JP11185371A JP18537199A JP2001009984A JP 2001009984 A JP2001009984 A JP 2001009984A JP 11185371 A JP11185371 A JP 11185371A JP 18537199 A JP18537199 A JP 18537199A JP 2001009984 A JP2001009984 A JP 2001009984A
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resin
layer
thermoplastic resin
fiber
multilayer molded
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JP11185371A
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English (en)
Inventor
Toru Shima
徹 嶋
Manabu Nomura
学 野村
Nobuhiro Watanabe
信廣 渡辺
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Idemitsu Petrochemical Co Ltd
Original Assignee
Idemitsu Petrochemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 軽量で、重量当たりの強度、剛性にすぐれ吸
音性、遮音性、断熱性、表面硬度、光沢を合わせ有する
多層成形品およびその製造方法の提供。 【解決手段】 少なくとも表面の一部を形成する熱可塑
性樹脂層2および、(A)繊維含有量が10〜70重量
%、(B)平均繊維長が1〜30mm、(C)平均見か
け密度が0.2〜1.0g/cm3 である繊維含有熱可
塑性樹脂層3からなる多層成形品1。熱可塑性樹脂を射
出成形金型キャビティに射出し、層2を形成後、可動金
型を後退し成形金型キャビテイを拡大し、繊維含有溶融
膨張性樹脂を、射出あるいは射出圧縮充填後、成形金型
キャビティ容積を拡大して膨張し、層3を形成し多層成
形品を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多層成形品および
その製造方法に関し、詳しくは、著しく軽量化されてい
ながら、重量当たりの物性とともに、表面特性にすぐ
れ、自動車用外装材などに適用できる多層成形品および
その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】合成樹脂は各種成形品として、幅広い分
野において用いられている。これらの成形品にあって
は、意匠性、機能性の観点から多層構造の成形品が各種
用いられている。たとえば、透明性、色の異なる異種の
樹脂を二層状に一体成形するためには二色成形方法が用
いられている。また、二色成形方法では、単に色などの
意匠性のみでなく、樹脂の特性、たとえば軟質の樹脂、
高硬度の樹脂を表面層とし、強度、剛性の高い樹脂ある
いは発泡構造を基材層とするなどの多層成形品も知られ
ている。
【0003】多層成形品の中でも、表面層と発泡体など
の軽量断熱層からなる多層成形品は、成形品の軽量化、
断熱性、吸音性などの物性の複合化の点からすぐれた多
層成形品である。こららの特性を有する多層成形品は、
近時の自動車における軽量化、リサイクル化の要請を受
けて、自動車部品で用いられてきている。すなわち、省
資源、環境問題などから燃料消費量の低減が最重要事項
となり、これら問題点の解決に、自動車の軽量化が強く
求められている。自動車の軽量化を目的に、それぞれの
部品において、金属から樹脂への転換が急速に進んでい
る。
【0004】これらの自動車用部品は、強度、剛性など
の必要性からガラス繊維などの繊維強化樹脂が好ましく
用いられる。しかし、リサイクル性、材料の統一の動向
などから、繊維強化熱硬化性樹脂(FRP)から、ポリ
プロピレン系樹脂などの熱可塑性樹脂が用いられてきて
いる。自動車部品の軽量化の要求は、日々厳しくなって
おり、成形品の軽量化のためには、成形品の肉厚を薄く
する努力がなされている。
【0005】しかしながら、成形品の肉厚を薄くするた
めには、強度、剛性など樹脂本来の特性に加えて、部品
の大型化に対応して成形性、すなわち溶融流動性の向上
が必要となる。たとえばポリプロピレン系樹脂の強度、
剛性などを向上するために、他の熱可塑性樹脂、熱可塑
性エラストマー、ガラス繊維などの強化剤、タルクなど
の充填剤などを添加する手段が数多く提案されている。
しかし、これらの添加剤は一般的に比重が高く、軽量化
に限界があり適用される部品も限られている。
【0006】自動車の軽量化の一環として、従来、バン
パー、インストルメントパネル、ドアトリム(内部部
材)、シートなどの樹脂化が実用化されている。しか
し、ドア外装部材、フェンダーなどの主要部は、金属の
薄板からなる外板と樹脂発泡体や繊維類からなる断熱材
との組み合わせからなる部材が採用されている。金属外
板は、硬度、塗装による光沢などにはすぐれているもの
の、部分的な外力により窪み変形が生じ、この窪み跡が
回復しないなどの欠点があるとともに、断熱材との複合
化など、製造工程のより簡略化が望まれている。
【0007】ドア材料としては、従来、ドア内装部材で
あるドアトリムは、ポリプロピレン系樹脂などの射出
(圧縮)成形で実用化されている。しかしながら、ポリ
プロピレン系樹脂などは表面光沢や表面硬度が不十分な
ため、ドアの外表面材としては使用されていない。この
ため、光沢が要求される外表面材としては、非晶性樹脂
であるポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹
脂とポリエステル系樹脂および/またはポリアミド系樹
脂とのポリマーアロイが提案されている。しかしなが
ら、この外表面材は、金属の樹脂化には貢献するもの
の、強度、剛性を満足するためには、その肉厚を厚くす
る必要があり、軽量化に限界がある。また、断熱材との
複合構造まても置き換えるものではなく、生産性の点か
ら、より構造の簡単な樹脂製のドアなどの自動車用の外
装材が望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の多層成形品
は、軽量で、重量当たりの強度、剛性が高く、吸音性、
断熱性、遮音性などにもすぐれるとともに、すぐれた表
面硬度、光沢を合わせ有する自動車用外装部材などとし
て有用な多層成形品とその効率的な製造方法を提供する
ことにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記のよ
うな状況下において、成形品の外観を含めた、軽量化と
性能について鋭意研究を重ねた結果、特定の組成と構造
因子を満足する多層成形品が、軽量化とともにすぐれた
外観と物性を満足し、金属に代わりうるものであること
を見いだし本発明を完成したものである。
【0010】すなわち、本発明は、 (1) 少なくとも表面の一部を形成する熱可塑性樹脂
層(I)および、(A)繊維含有量が10〜70重量
%、(B)平均繊維長が1〜30mm、(C)平均見か
け密度が0.2〜1.0g/cm3 である繊維含有熱可
塑性樹脂層(II)からなる多層成形品。 (2) 層(I)の樹脂表面が、90%以上の光沢度、
100以上のロックウエル硬度(Rスケール)を有する
上記(1)記載の多層成形品。 (3) 層(II)における繊維がガラス繊維であり、
平均見かけ密度が0.3〜0.8g/cm3 である上記
(1)または(2)記載の多層成形品。
【0011】(4) 層(I)および層(II)の熱可
塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、
ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂から選ば
れた樹脂である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の
多層成形品。 (5) 層(II)の熱可塑性樹脂がポリプロピレン系
樹脂であり、層(I)の熱可塑性樹脂が、ポリカーボ
ネート樹脂、ポリカーボネート樹脂とポリアミド系樹
脂および/またはポリエステル系樹脂、ポリプロピレ
ン系樹脂から選ばれた樹脂である上記(1)〜(4)の
いずれかに記載の多層成形品。 (6) 層(I)の熱可塑性樹脂の主成分が非晶性樹脂
である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の多層成形
品。
【0012】(7) 上記(1)〜(6)のいずれかに
記載の多層成形品の熱可塑性樹脂層(I)を外層とする
自動車用外装部材。 (8) 熱可塑性樹脂を射出成形金型キャビティに射出
し、層(I)を形成した後、可動金型を後退して成形金
型キャビテイを拡大し、繊維を含有し溶融膨張性を有す
る熱可塑性樹脂を、射出あるいは射出圧縮充填後、成形
金型キャビティ容積を拡大して膨張し、層(II)を形
成する多層成形品の製造方法。 (9) 溶融膨張性を有する熱可塑性樹脂が、繊維強化
熱可塑性樹脂ペレットを少なくとも含む成形材料を溶融
混練してなり、当該ペレットは、全長が3〜100mm
であり、この全長と等しい長さを有し、互いに平行に配
列された状態にある繊維を20〜90重量%含有するも
のである上記(8)記載の多層成形品の製造方法に関す
るものである。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明の多層成形品は、従来の金属製または熱可
塑性樹脂製からなる表面材と発泡体または繊維類からな
る軽量断熱層からなる多層構造物とは異なり、熱可塑性
樹脂の一体成形体である。すなわち、熱可塑性樹脂から
なる表面層と膨張により空隙が生じ軽量化された繊維含
有熱可塑性樹脂層の二層を少なくとも含む多層成形品で
ある。この多層構造により、外観のみでなく、多層成形
品として軽量化が図られ、重量当たりの強度、剛性、耐
衝撃性にすぐれるとともに、断熱性、遮音性、吸音性、
振動吸収性など多層化による複合効果を得ることを可能
にしたものである。
【0014】すなわち、従来の断熱層を構成する発泡体
や繊維類の層の代わりに、繊維含有熱可塑性樹脂の膨張
軽量化層構造をとることにより、軽量でありながら、強
度、剛性、耐衝撃性にすぐれるとともに、空隙含有層で
ある軽量化層の表面も一般の成形品並の緻密構造を有す
る成形品としたものである。以下、本発明の多層成形品
を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の多層成形
品の断面図である。図1において、1は多層成形品、2
は熱可塑性樹脂層、3は繊維含有熱可塑性樹脂層であ
る。図1において、(A)は基本的構造である二層成形
品であり、(B)は、繊維含有熱可塑性樹脂層3の片面
と外周部を熱可塑性樹脂層2で被覆した構造の二層成形
品である。また、(C)は(B)において、熱可塑性樹
脂層2の一部が厚肉とされた場合であり、熱可塑性樹脂
層2は一般部2aと厚肉部2bから構成されている。
【0015】この場合には、空隙を有する繊維含有熱可
塑性樹脂層3は、一般部3aと密度が比較的高い3bか
ら構成されることになる。また熱可塑性樹脂厚肉部2b
は、強度の向上とともに、繊維含有熱可塑性樹脂層3と
の接合面積が増大し、界面融着性の向上にも寄与する。
さらに、(D)は繊維含有熱可塑性樹脂層3を熱可塑性
樹脂層2が全体的に被覆している、三層構造の板状多層
成形品である。本発明の熱可塑性樹脂層(I)の樹脂に
は、外観を悪化させる繊維類は、実質的に含まない方が
好ましい。
【0016】図1に示したのは、板状の成形品である
が、本発明の多層成形品は、ともに熱可塑性樹脂で構成
されているので、成形方法、成形金型によって任意の形
状をとることができる。たとえば、本発明の多層成形品
が自動車の外装材として用いられる場合には、それぞれ
ドア外装材、フェンダー、タイヤカバー、ボンネット、
バンパー、フロントエプロン、ホイールカバーなどの形
状とされ、この際、少なくとも外表面の一部は熱可塑性
樹脂層2とされる。さらに、図1では、熱可塑性樹脂層
2は、空隙を有する繊維含有熱可塑性樹脂層3の片面を
被覆する構成の場合を示したが、用途によっては、熱可
塑性樹脂層2は、表面特性の要求される部分のみとする
こともできる。
【0017】本発明の多層成形品の繊維含有熱可塑性樹
脂層3は、熱可塑性樹脂中に比較的繊維長の長いガラス
繊維などの繊維がランダムに分布するとともに、成形体
の内部には樹脂の膨張による実質的に連続する空隙を有
する構造をとるものである。また、含有する繊維も溶融
樹脂の膨張とともにその方向がランダム、均一化する。
さらに、多層成形品は、熱可塑性樹脂層に対して、内部
の膨張による空隙発生による軽量化と表面部分の緻密な
表面層との成形一体化多層構造およびガラス繊維などの
繊維による補強効果により、軽量でありながらすぐれた
物性を発揮するものである。
【0018】本発明の多層成形品における、各層の厚み
は、多層成形品の用途、大きさ、樹脂の種類、成形品の
見かけ密度などにより異なる。しかし、表面の熱可塑性
樹脂層2は光沢などの外観、硬度などの特性、ソフト感
などの感触、色調などの性能を確保するものであり、通
常0.2〜5mm、好ましくは0.5〜3mm程度とさ
れる。また、繊維含有熱可塑性樹脂層3は、空隙含有に
よる軽量化とともに、断熱性、吸音性あるいは強度、剛
性、耐衝撃性などの要求特性から適宜決定される。通常
1〜100mm、好ましくは1.5〜60mm程度であ
る。なお、これらの各層の厚みは、多層成形品の部分に
よって、任意厚みになるように多層成形品を設計するこ
ともできる。
【0019】すなわち、本発明の多層成形品は、熱可塑
性樹脂層(I)および(A)繊維含有量が10〜70重
量%、好ましくは15〜60重量%、(B)平均繊維長
が1〜30mm、好ましくは2〜20mm、(C)平均
見かけ密度が0.2〜1.0g/cm3 、好ましくは
0.3〜0.8g/cm3 である繊維含有熱可塑性樹脂
層(II)とからなるものである。
【0020】本発明に用いられる熱可塑性樹脂として
は、特に、制限はなく、例えば、ポリプロピレン、プロ
ピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・エチ
レンランダム共重合体、低結晶性ポリプロピレン系樹
脂、高密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共
重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ゴム
改質耐衝撃性ポリスチレン、シンジオタクチック構造を
含むポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂などのスチレ
ン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、
ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカー
ボネート系樹脂、ポリフエニレンサルファイド、ポリ芳
香族エーテルまたはチオエーテル系樹脂、ポリ芳香族エ
ステル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、アクリレート系樹
脂、熱可塑性エラストマー等が採用できる。ここで、上
記熱可塑性樹脂は、単独で用いることがもできるが、二
種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】これら熱可塑性樹脂には、無水マレイン
酸、フマル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸ま
たはその誘導体変性樹脂類を含有することが好ましい。
なお、ここで変性樹脂類としては、前記の熱可塑性樹脂
あるいは各種エラストマー類があり、変性方法として
は、通常グラフト変性であるが、共重合体であってもよ
い。変性樹脂類としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリ
エチレン系樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリオレフ
ィン系エラストマー、ポリスチレン系樹脂を例示でき
る。不飽和カルボン酸またはその誘導体変性樹脂の不飽
和カルボン酸またはその誘導体の含有量は、通常0.0
1〜10重量%である。また、変性樹脂の含有量は、通
常0.5〜20重量%である。
【0022】本発明の多層成形品では、熱可塑性樹脂層
(I)用の樹脂としては、光沢などの良外観、耐傷つき
性、柔軟性、ソフト感、塗装性、耐候性などにすぐれた
樹脂あるいは樹脂組成物が用いられる。ソフト感の樹脂
としては、低結晶性の軟質ポリプロピレン系樹脂、熱可
塑エラストマー、軟質塩化ビニル樹脂などが用いられ
る。しかし、自動車外装材の場合などにあっては、表面
光沢、塗装性、耐傷つき性、寸法安定性などの観点か
ら、非晶性熱可塑性樹脂あるいは非晶性熱可塑性樹脂を
主成分とする熱可塑性樹脂組成物の使用が好ましい場合
がある。
【0023】この熱可塑性樹脂層(I)用の樹脂として
は、ポリカーボネート樹脂(PC)、PC/ABS(ア
クリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)、PC/
PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC/PBT
(ポリブチレンテレフタレート)、PC/ポリアリレー
ト、PC/ポリアミド系樹脂、PMMA(ポリメチルメ
タアクリレート)、AS(アクリロニトリル−スチレン
樹脂)、ASA(アクリレート−スチレン−アクリロニ
トリル共重合体)、AES(アクリロニトリル−エチレ
ン−スチレン共重合体)、AAS(アクリロニトリル−
アクリレート−スチレン共重合体)、ポリアミド/変性
エラストマー、変性PPE(ポリフエニレンエーテ
ル)、変性PPE/PA、ポリプロピレン系樹脂などの
ポリオレフィン系樹脂などを例示できる。
【0024】中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリ
カーボネート樹脂とポリアミド系樹脂および/またはポ
リエステル系樹脂からなる樹脂組成物、ポリプロピレ
ン系樹脂から選ばれた樹脂の使用が外観、塗装性、成形
性などの点から好ましい。また、熱可塑性樹脂層は多層
成形品の樹脂表面が、90%以上、好ましくは92%以
上の光沢度、100以上、好ましくは105以上のロッ
クウエル硬度(Rスケール)を有するものである樹脂が
好ましく用いられる。
【0025】また本発明の多層成形品は、自動車用外装
材などに使用される場合には、耐候性が要求される場合
があり、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤(紫外線吸収
剤)、光安定剤などの添加剤を加えることができる。こ
れらは、単独で使用してもよく、或いは、2種類以上を
併用してもよい。酸化防止剤としては、特に制限はな
く、従来公知のもの、例えば、フェノール系、リン系、
硫黄系のもの等を使用できる。
【0026】フェノール系酸化防止剤としては、例え
ば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、
n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4
−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリス
リチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−
4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2−t−
ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−
メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、
2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチ
ルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェ
ニルアクリレート、トリエチレングリコール−ビス−
〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシ
フェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオー
ル−ビス−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒド
ロキシフェニル)プロピオネート〕、3,9−ビス
〔1,1−ジ−メチル−2−〔β−(3−t−ブチル−
4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオ
キシ〕エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピ
ロ〔5,5〕ウンデカン、1,3,5−トリメチル−
2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒ
ドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t
−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレー
ト、トリス(4−t−ブチル−2,6−ジ−メチル−3
−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート等が挙げられ
る。
【0027】また、リン系酸化防止剤としては、例え
ば、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、トリス
(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、
ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリス
リトール−ジ−フォスファイト、ビス(2,6−ジ−t
−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール
−ジ−フォスファイト、ビス(2,4,6−トリ−t−
ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスフ
ァイト、メチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニ
ル)オクチルフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ
−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ
−フォスフォナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブ
チル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン
−ジ−フォスフォナイト等が挙げられる。
【0028】さらに、硫黄系酸化防止剤としては、例え
ば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチ
オジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネー
ト、グリセリントリブチルチオプロピオネート、グリセ
リントリオクチルチオプロピオネート、グリセリントリ
ラウリルチオプロピオネート、グリセリントリステアリ
ルチオプロピオネート、トリメチロールエタントリブチ
ルチオプロピオネート、トリメチロールエタントリオク
チルチオプロピオネート、トリメチロールエタントリラ
ウリルチオプロピオネート、トリメチロールエタントリ
ステアリルチオプロピオネート、ペンタエリスリトール
テトラブチルチオプロピオネート、ペンタエリスリトー
ルテトラオクチルチオプロピオネート、ペンタエリスリ
トールテトララウリルチオプロピオネート、ペンタエリ
スリトールテトラステアリルチオプロピオネート等が挙
げられる。
【0029】このような酸化防止剤は、単独で用いても
よく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、酸
化防止剤の含有量は、通常0.02〜2.0重量%、好
ましくは0.05〜1.5の範囲である。
【0030】つぎに、紫外線吸収剤としては、サリチル
酸誘導体、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系お
よひベンゾエート系などがあり、これらの中では、ベン
ゾトリアゾール系、ベンゾエート系が好ましい。ベンゾ
トリアゾール系の光吸収剤としては、2−(3−t−ブ
チル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−ク
ロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチ
ル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリ
アゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニ
ル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチ
ル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2
−(2−ヒドロキシ5−t−オクチルフェニル)ベンゾ
トリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t
−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールなどを挙げるこ
とができる。また、ベンゾエート系の光吸収剤として
は、例えば2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−
ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサ
デシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベン
ゾエートなどを挙げることができる。
【0031】また、光安定剤としては、ヒンダードアミ
ン系光安定剤、フェニルベンゾエート系光安定剤などが
ある。このヒンダードアミン系またはフェニルベンゾエ
ート系光安定剤の具体例として、ビス(2,2,6,6
−テトラメチル−4−ピペリジル)セパケート、コハク
酸とN−(2−ヒドロキシプロピル)−2,2,6,6
−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとの縮合
物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−
ピペリジル)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボキ
シレート、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメ
チル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと1,
2−ジブロモエタンとの重縮合物、ビス(2,2,6,
6−テトラメチルピペリジル)アジペート、ビス(2,
2,6,6−テトラメチルピペリジル)フマレート、ポ
リ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イ
ミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕
〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)
イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメ
チル−4−ピペリジル)イミノ〕〕、4−ヒドロキシ−
2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノ
ール含有ジメチル サクシネートポリマー、2,4−ジ
−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−
ヒドロキシベンゾエート、4−オクチルフェニル−3,
5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n
−ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル4−ヒドロキ
シベンゾエートなどが挙げられる。
【0032】これら添加剤の含有量は、紫外線吸収剤
0.05〜1.0重量%、好ましくは0.1〜0.6重
量%、光安定剤0.05〜1.0重量%、好ましくは
0.2〜0.6重量%程度である。なお、前記各種類の
添加剤は複数の添加剤を併用することができる。さら
に、熱可塑性樹脂層(I)用の樹脂には金属粉、カーボ
ンブラック、グラファィト、タルク,酸化チタン、酸化
亜鉛、分散剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、可塑
剤、エポキシ化合物、金属不活性化剤、顔料、染料など
を添加することもできる。
【0033】つぎに、繊維含有熱可塑性樹脂層(II)
用の樹脂としては、前記した熱可塑性樹脂が用いられる
が、中でも結晶性樹脂であるポリプロピレン系樹脂、ポ
リアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、非晶性樹脂であ
るポリカーボネート樹脂あるいはこれらの混合樹脂が好
適に用いられる。これらの樹脂には、前記の熱可塑性樹
脂層(I)用の樹脂で述べた添加剤を添加することがで
きるとともに、さらに、剛性、耐熱性、成形性の向上の
ために、ヒドロキシ−ジ(t−ブチル安息香酸)アルミ
ニウム、リン酸ビス(4−t−ブチル−フェニル)ナト
リウム、メチレンビス(2,4−ジ−t−ブチル−フェ
ニル)ホスフェートナトリウム塩などの造核剤や過酸化
物などを添加することもできる。
【0034】つぎに、本願発明で用いられる、繊維とし
ては、特に制限はなく、溶融混練押出時に膨張性を有す
る各種繊維から選択される。たとえは、ガラス繊維、炭
素繊維などの無機繊維、銅繊維、黄銅繊維、鋼繊維、ス
テンレス繊維、アルミニウム繊維、アルミニウム合金繊
維などの金属繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、アル
ミナ繊維、チッ化ケイ素繊維、ジルコニア繊維などのセ
ラミック繊維、芳香族ポリエステル繊維、ポリアミド繊
維、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリフエニレ
ンサルファイド繊維、ポリサルホン繊維、超高分子量ポ
リエチレン繊維などの有機繊維などを例示できる。これ
らの繊維は、たとえば無機繊維と有機繊維など複数を併
用することもできる。
【0035】これらの繊維としては、多層成形品に要求
される特性、用途などにより適宜選定できる。中でも、
ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維などは強度、剛性、耐
熱性にすぐれるとともに、長繊維であり、溶融樹脂の含
浸引き抜き成形が容易であるため好ましい。特に、ガラ
ス繊維が好ましく用いられる。ここで、ガラス繊維とし
ては、E−ガラス、S−ガラスなどのガラス繊維であっ
て、その平均繊維径が25μm以下のもの、好ましくは
3〜20μmの範囲のものが好ましく採用できる。ガラ
ス繊維の径が3μm未満であると、溶融樹脂含浸引き抜
き成形によるペレット製造時に、ガラス繊維が樹脂にな
じまず、樹脂に含浸するのが困難となる一方、20μm
を超えると、外観が低下するとともに、繊維が流れ難く
なるとともに、溶融混練時に切断、欠損が起こりやすく
なる。これらの熱可塑性樹脂およびガラス繊維を用い、
引き抜き成形法等でペレットを製造するにあたり、ガラ
ス繊維は、カップリング剤で表面処理した後、収束剤に
より、100〜10000本、好ましくは、150〜5
000本の範囲で束ねておくことが望ましい。
【0036】カップリング剤としては、いわゆるシラン
系カップリング剤、チタン系カップリング剤として従来
からあるものの中から適宜選択することができる。例え
ば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−
(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシ
ラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメ
トキシシラン等のアミノシランやエポキシシランが採用
できる。特に、前記アミノ系シラン化合物を採用するの
が好ましい。
【0037】収束剤としては、例えば、ウレタン系、オ
レフィン系、アクリル系、ブタジエン系およびエポキシ
系等が採用でき、これらのうち、ウレタン系およびオレ
フィ系が好ましく採用できる。これらのうち、ウレタン
系収束剤は、通常、ジイソシアネート化合物と多価アル
コールとの重付加反応により得られるポリイソシアネー
トを50重量%以上の割合で含有するものであれば、油
変性型、湿気硬化型およびブロック型等の一液タイプ、
および、触媒硬化型およびポリオール硬化型等の二液タ
イプのいずれもが採用できる。一方、オレフィン系収束
剤としては、不飽和カルボン酸、または、その誘導体で
変性された変性ポリオレフィン系樹脂が採用できる。
【0038】本発明で用いられる繊維含有成形材料とし
ては、溶融膨張性を有するものであれば特に制限はな
い。しかし、好ましくは前記のような収束剤で収束した
ガラス繊維に熱可塑性樹脂を付着・含浸させることによ
り、ガラス繊維で強化された繊維強化樹脂ペレットが用
いられる。ガラス繊維に熱可塑性樹脂を付着・含浸させ
る方法としては、例えば、溶融樹脂の中に繊維束を通
し、繊維に樹脂を含浸させる方法、コーティング用ダイ
に繊維束を通して含浸させる方法、あるいは、ダイで繊
維の周りに付着した溶融樹脂を押し広げて繊維束に含浸
させる方法等が採用できる。ここで、繊維束と樹脂とを
よくなじませる、すなわち濡れ性を向上するために、内
周に凹凸部が設けられたダイの内部に、張力が加えられ
た繊維束を通して引き抜くことで、溶融樹脂を繊維束に
含浸させた後、さらに、この繊維束を加圧ローラでプレ
スする工程が組み込まれた引抜成形法も採用できる。な
お、ガラス繊維と溶融樹脂とが互いによくなじむ、濡れ
性のよいものであれば、溶融樹脂がガラス繊維に容易に
含浸され、ペレットの製造が容易となるので、前述の収
束剤で繊維を収束する工程は、省略できる場合がある。
ここで、互いによくなじませる方法としては、樹脂に極
性を付与したり、ガラス繊維の表面にカップリング剤と
反応する官能基をグラフトしたりする方法が有効であ
る。
【0039】以上のような方法で、樹脂が含浸された長
尺繊維束(ストランド等)を、繊維の長手方向に沿って
切断していけば、ペレットの全長と同じ長さの長繊維を
含んだ繊維強化樹脂ペレットを得ることができる。この
際、樹脂ペレットとしては、繊維束がストランドにさ
れ、その断面形状が略円形となった樹脂含有長尺繊維束
を切断したものに限らず、繊維を平たく配列することに
より、シート状、テープ状またはバンド状になった樹脂
含有長尺繊維束を所定の長さに切断したものでもよい。
【0040】さらに、本願発明の多層成形品の製造方法
に、好ましく用いられる繊維含有熱可塑性樹脂成形材料
としては、前記したように溶融樹脂含浸引き抜き成形に
より製造された、全長が3〜100mmであり、この全長
と等しい長さを有し、互いに平行に配列された状態にあ
る繊維を20〜90重量%含有する繊維強化熱可塑性樹
脂ペレットまたは前記ペレットと他のペレットとの混合
物で前記繊維が全体の10〜70重量%とされた成形材
料であることが好ましい。
【0041】繊維が互いに平行に配列された状態となっ
て全体の20〜90重量%含有されたペレットを用いれ
ば、ガラス繊維は溶融樹脂によつて含浸、被覆されてい
るので、射出成形機のスクリューで可塑化、溶融、混練
を行っても、繊維の破断が起こり難いともに、また分散
性も良好となる。これにより、成形金型キャビティに射
出された後の繊維含有溶融熱可塑性樹脂のスプリングバ
ック現象が良好になるとともに、最終成形品中に残存す
る繊維長が長くなり、物性の向上、表面外観が向上す
る。ここで、他のペレットとの混合物を用いれば、高濃
度のガラス繊維強化熱可塑性樹脂ペレットの使用量が少
なくて、経済的であるとともに、成形品中の繊維含有量
の調整、溶融粘度の調整などができるメリットがある。
【0042】なお、本願発明では、溶融樹脂の膨張性
は、含有するガラス繊維などの繊維の持つ絡み合いによ
るスプリングバック現象による復元力によるものであ
る。しかし、膨張性の補完のために、少量、たとえば
0.01〜3重量%の発泡剤を含有させることができ
る。ここで、発泡剤としては特に制限はなく、熱により
ガスを発生するものであればよく、化学発泡剤、物理発
泡剤がある。たとえば、アゾジカルボンアミド(ADC
A)、ベンゼンスルホヒドラジド、N,N−ジニトロペ
ンタメチレンテトラミン、テレフタルアジドなどを例示
できる。
【0043】本発明の多層成形品は、前記の(A)、
(B)、(C)をそれぞれ満足する繊維含有熱可塑性樹
脂層(II)によって、軽量でありながら、高い曲げ強
度、曲げ剛性、衝撃強度とともに耐熱性、耐熱寸法安定
性を満足するものであり、軽量化とこれら強度特性が通
常相反するものであるにも関わらず、これらを両立させ
るとともに、単位重量当たりの曲げ特性が従来の材料と
比較して著しく向上することによって、表面の熱可塑性
樹脂層(I)の特徴との複合化によって自動車外装材な
どへの適用を可能にするものである。さらに、繊維含有
熱可塑性樹脂層(II)は、膨張による空隙により、断
熱性、吸音性など従来の発泡体や繊維類に相当する性能
を合わせ有する。
【0044】以下、本発明の多層成形品の製造方法を成
形材料とともに詳細に述べる。本発明の多層成形品は、
表面層を構成する一般の熱可塑性樹脂成形材料、熱可塑
性樹脂とガラス繊維などの繊維を含有し溶融膨張性を有
する熱可塑性樹脂成形材料を用いるものである。ここ
で、繊維を含有し溶融膨張性を有する熱可塑性樹脂成形
材料とは、成形金型に射出された後、金型キャビティ容
積を拡大した場合に自ら膨張できる溶融樹脂である。こ
れを可能にするものであれば、成形材料は特に制限はな
い。しかし、全長が3〜100mm、好ましくは4〜50
mmであり、この全長と等しい長さを有し、互いに平行
に配列された状態にある繊維を20〜90重量%含有す
る繊維強化熱可塑性樹脂ペレット単独、またはこのペレ
ットと他のペレットとの混合物で前記繊維が全体の10
〜70重量%とされたものである成形材料を用いること
が好ましい。ここで、他のペレットとしては、通常は同
種の熱可塑性樹脂、またはこれに各種添加剤を含むもの
である。この好ましい成形材料ペレットの選択によっ
て、射出成形金型キャビティ内での溶融膨張性のすぐれ
た溶融混練樹脂を容易に得ることができる。
【0045】ここで、繊維含有熱可塑性樹脂中の繊維含
有量が、10重量%未満であると、溶融膨張性が不十分
となるとともに、繊維による強度、剛性などの物性向上
効果が期待できなくなる。また、70重量%を超える
と、溶融混練性、繊維の分散性が低下し、射出成形性、
膨張性、成形品の外観、均質性などの品質の安定性が低
下することになる場合がある。
【0046】つぎに、熱可塑性樹脂層(I)用の樹脂と
してポリカーボネート樹脂組成物、繊維含有熱可塑性樹
脂層(II)用の樹脂としてポリプロピレン系樹脂、繊
維としてガラス繊維の場合を例として、具体的に説明す
る。ポリカーボネート系樹脂としては、ポリカーボネー
ト樹脂の他、ポリエステル−ポリカーボネート樹脂、ポ
リシロキサン−ポリカーボネート樹脂、分岐状ポリカー
ボネート系樹脂などが用いられる。ポリカーボネート系
樹脂の粘度平均分子量としては、通常100,000〜
40,00、好ましくは14,000〜30,000の
範囲のものが用いられる。また、ポリカーボネート樹脂
には、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ABS
樹脂、ゴム改質ポリスチレン系樹脂などを5〜70重量
%、好ましくは10〜50重量%の範囲で含有する樹脂
組成物として用いることもできる。
【0047】ポリプロピレン系樹脂のMI(メルトイン
デックス)としては、特に制限はなく、全体としてのM
I〔JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重
2.16kgで測定〕が、5〜1,000g/10分、
好ましくは10〜600g/10分である。通常、ガラ
ス繊維強化ポリプロピレン系樹脂ペレットとポリプロピ
レン系樹脂ペレットとの混合物からなる成形材料が用い
られる。したがって、ガラス繊維含有ポリプロピレン系
樹脂マスターペレット中の,ポリプロピレン系樹脂とガ
ラス繊維希釈用のポリプロピレン系樹脂ペレットは、自
ずから異なるMIのペレットを用いることが自由であ
り、多層成形品のサイズ、用途など多層成形品の曲げ強
度、曲げ剛性、衝撃強度、耐熱性、耐熱寸法安定性など
の特性、成形性を考慮して適宜決定できる。
【0048】しかしながら、本発明の多層成形品は、比
較的成形時の金型キャビティの厚みが薄く、かつ比較的
繊維長の長いガラス繊維を含有するものであり、成形性
すなわち、溶融流動性が良好であることが求められる。
したがって、希釈用のポリプロピレン系樹脂のMIを3
0〜1,000g/10分、好ましくは40〜800g
/10分と比較的大きいMIのポリプロピレン系樹脂を
適宜選択することもできる。通常の射出成形において、
溶融樹脂の流動性を考慮して、一般にこのような大きい
MIのポリプロピレン系樹脂を用いた場合衝撃強度が著
しく低下し、実用的でなくなるため、MIの上限にはお
のずと制限があった。
【0049】本発明の多層成形品にあっては、ポリプロ
ピレン系樹脂のMIが、従来の一般的な射出成形法にお
けるMIよりも、比較的大きく、すなわち、分子量を大
幅に低く成形性の向上を図ることができる。しかも、ガ
ラス繊維の含有、ガラス繊維の絡み合い、ガラス繊維の
ランダム分布、表面緻密層の形成、繊維と樹脂による空
隙の形成などにより、軽量でありながら、本発明の多層
成形品としての特性を十分満足する強度、耐熱性などの
特性を得ることが可能になったものである。
【0050】本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂
は、ホモポリプロピレン樹脂あるいは、耐衝撃性のため
に、プロピレンと他のオレフィンとのブロック共重合
体、プロピレンと数重量%以下の他のオレフィンとのラ
ンダム共重合体が好ましい。更に耐衝撃性を向上するた
めに、熱可塑性樹脂エラストマーや非晶質ないし低結晶
性のポリプロピレン系樹脂などを適宜含有させることも
可能である。
【0051】ここで熱可塑性エラストマーとしては、た
とえば、エチレン・プロピレン共重合体エラストマー
(EPR)、エチレン・ブテン−1共重合体エラストマ
ー、エチレン・オクテン−1共重合体エラストマー、エ
チレン・プロピレン・ブテン−1共重合体エラストマ
ー、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体エラストマ
ー(EPDM)、エチレン・プロピレン・エチリデンノ
ルボルネン共重合体エラストマー、軟質ポリプロピレ
ン、軟質ポリプロピレン系共重合体などのオレフィン系
エラストマーがある。これらの内エチレン系エラストマ
ーの場合のエチレン含有量は通常40〜90重量%程度
である。これらのエラストマーとしては、ムーニー粘度
(ML1+4 100 )が通常5〜100、好ましくは10〜
60であるものが用いられる。
【0052】また、スチレン系エラストマーとしては、
たとえば、スチレン・ブタジエン共重合体エラストマ
ー、スチレン・イソプレン共重合体エラストマー、スチ
レン・ブタジエン・イソプレン共重合体エラストマー、
あるいはこれら共重合体の完全あるいは部分水添してな
るスチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体エ
ラストマー(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピ
レン・スチレン共重合体(SEPS)などを例示でき
る。これらのエラストマーとしては、メルトインデック
ス(MI)〔JIS K7210に準拠し、200℃、
荷重5kgで測定〕が、0.1〜120g/10分、好
ましくは8〜100g/10分であるものが用いられ
る。
【0053】次に、ガラス繊維としては、各種繊維長の
ものが用いられ、本発明の多層成形品としての成形品中
の、平均ガラス繊維長が1〜30mm、特に2〜20m
m程度の範囲となるものである。したがって、成形品中
のガラス繊維の平均繊維長が上記範囲を確保されれば、
成形材料としては特に制限はない。しかしながら、成形
品中のガラス繊維長をあるレベルに保つため、一般的に
は、前記の全長が3〜100mm、好ましくは4〜50
mmであり、この全長と等しい長さのガラス繊維が互い
に平行に配列され、ガラス繊維の含有率が20〜90重
量%であるガラス繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを用い
ることが好ましい。ここでガラス繊維強化熱可塑性樹脂
ペレットは、複数のガラス繊維束を溶融樹脂中で引き抜
き成形し、樹脂を含浸しストランドとし、3〜100m
mに切断する前記の公知の方法で得られるものである。
【0054】つぎに、本発明の多層成形品の製造方法を
図面に基づいて説明する。図2は、本発明の多層成形品
の製造方法に用いられる射出装置の概念断面図である。
図2において、10は射出装置、11は第1樹脂射出ユ
ニット、12は第1スクリュー、13は第1樹脂流路、
14は第2樹脂射出ユニット、15は第2スクリュー、
16は第2樹脂流路、17は射出ノズルをそれぞれ示
す。図3は成形工程を説明するための成形金型部の概念
断面図であり、第1樹脂の射出後の状態を示す。
【0055】図4は成形工程を説明するための成形金型
部の概念断面図であり、第2樹脂の射出後の状態を示
す。図5は成形工程を説明するための成形金型部の概念
断面図であり、第2樹脂が膨張して多層成形品が成形さ
れた状態を示す。図3〜5において、17は射出ノズ
ル、20は成形金型、21は固定金型、22は可動金
型、23は成形金型キャビティ、24はスプルー、25
はガス注入管、26はガス排気管、31は第1溶融樹
脂、32は第2溶融樹脂、をそれぞれ示す。
【0056】本発明の多層成形品の製造方法は、通常射
出成形方法が採用される。射出成形装置は、図2に示す
ように、二種の成形材料を溶融混練・可塑化計量するた
めの、二個の射出ユニットを備えた装置が用いられる。
また、成形金型20としては、図3〜5より明らかなよ
うに、成形金型キャビティ23の容積を変化できること
が必要である。通常は、金型開閉方向のキャビティ厚み
を変化できるものである。すなわち、可動金型22を進
退させる機能を有する射出成形装置が用いられる。
【0057】この射出成形機としては、一般に射出圧縮
成形が可能な成形機、あるいは、一般の射出成形機に可
動金型移動装置が装備された射出成形装置が用いられ
る。ここで、金型移動装置は、一般的には可動金型取り
付け板側に設けられるが、固定金型取り付け板側に設け
ることが好ましい場合もある。本発明の多層成形品の製
造方法は、図3において、固定金型21に対して、可動
金型22を表面の熱可塑性樹脂層(I)の形成に必要な
成形金型キャビティ23aとなるようにD1の厚みに型
締し、図2の第1樹脂射出ユニット11の第1スクリュ
ー12で溶融混練・可塑化計量された第1溶融樹脂31
を第1樹脂流路13、スプルー24を介して成形金型キ
ャビティ23aに射出充填する。図3はこの射出充填後
の状態を示す。第1樹脂射出ユニット11での射出の完
了後、第2樹脂射出ユニット14の第2スクリュー15
では繊維含有熱可塑性樹脂の溶融混練・可塑化計量が開
始されている。
【0058】ついで、ある程度冷却された後に、図4に
示すように可動金型22を後退させて、成形金型キャビ
ティがD3(実質的にはD2)となる位置に位置決めす
る。この状態で、繊維含有熱可塑性溶融樹脂が同様に成
形金型キャビティ23bにD4に相当する容積の第2溶
融樹脂32が射出される。また、このD4は、次工程に
おける圧縮により成形金型キャビティ全体に充填、充満
する量である。
【0059】前記繊維含有溶融樹脂の射出時、溶融樹脂
の射出量は、成形金型キャビティ容積の通常2/3以下
であり、射出樹脂圧力は低く、また樹脂、繊維の配向は
少ないか実質的に起こらない。第2溶融樹脂の射出開始
後、通常数秒後に可動金型22を前進させることによ
り、第2溶融樹脂を圧縮し成形金型キャビティに完全充
填する。これにより、第1樹脂の成形部と圧着接合する
とともに第2溶融樹脂の表面部は金型により冷却が開始
されるとともに、金型表面は、微小な凹凸までも完全に
転写される。ついで、図5に示すように、表面がある程
度冷却されスキン層が形成された後、可動金型22は、
成形体厚みである成形金型キャビティクリアランスD5
(実質的にはD6)の位置まで後退することにより膨張
させる。これにより、熱可塑性樹脂からなる表面樹脂層
2と繊維含有熱可塑性樹脂層3からなる多層成形品1が
形成される。次いで、冷却することにより、多層成形品
が硬化し、可動金型22を開放することにより、多層成
形品が取り出される。
【0060】なお、第2樹脂である繊維含有の膨張性の
溶融樹脂の射出に引き続き、第1樹脂の少量の射出を行
い、射出ノズルの前後、スプルー、ランナー、ゲートに
残留した繊維含有熱可塑性樹脂を第1樹脂である熱可塑
性樹脂で置換することが好ましい。すなわち、この工程
を行うことにより、次の成形サイクルにおいての、表面
層を形成する熱可塑性樹脂に繊維が混入して、表面外観
が悪化することを防止することができる。
【0061】なお、前記においては、溶融樹脂の圧縮完
了時に、さらなる圧縮代(固定金型と可動金型がさらに
圧縮可能なこと)としてのクリアランスC(図3)を設
けた例を示したが、Cがゼロとすることもできる。ま
た、圧縮工程においては、図に示すように、成形金型キ
ャビティクリアランスを位置制御する場合の他、圧縮力
により制御することもできる。
【0062】本発明の多層成形品の製造方法は、基本的
には前記方法であるが、可動金型22の後退開始後に、
ガス注入管25より、窒素ガスなどを注入することがで
きる。このガスの注入はガラス繊維による膨張を補助す
るとともに、膨張後において成形品を金型表面に押圧し
て、金型転写性、外観の向上に寄与する。さらに、注入
ガスの圧力を必要によりある程度のレベルに制御しなが
ら、排気し、成形品内にガスを流通させることにより、
成形品の冷却を促進することができる。このことは、空
隙の形成により断熱状態となった成形品を金型により冷
却しなければならない不都合に変えて、成形品の内部か
らの冷却を可能にするものであり、成形サイクルの改善
に大きく寄与するものである。なお、注入ガスとして
は、特に、制限はないが、窒素ガス、アルゴンガスなど
の不活性ガスが好ましく用いられる。また、ガス圧力
は、0.01〜20MPaの範囲、好ましくは、0.1
〜5MPaの範囲で選定される。
【0063】また、前記ガスとしては、通常は室温のガ
スであるが、温度が15℃以下、好ましくは、0℃以下
の冷却用ガスを採用することもできる。この際に、揮発
性の水などの液体を同伴させると、より冷却効率が向上
する。さらに、前記ガスは、前記溶融樹脂を可塑化して
射出する射出装置のノズルの内部に設けられたガス注入
ノズル、または、前記金型の内部に設けられたスプル
ー、ランナーおよびキャビティのいずれかに開口される
ガス注入ノズル、ガス注入ピンから、繊維含有溶融樹脂
の内部へ注入することができる。これらの中でも、金型
に設けられたガス注入ピン、特に、キャビティに開口さ
れたガス注入ピンから注入するのが好ましい。
【0064】また上記には、好ましい製造方法であると
ころの、第2樹脂である膨張性の繊維含有熱可塑性樹脂
は射出圧縮充填の例を示したが、多層成形品の形状、大
きさ、厚みなどによっては、溶融樹脂の射出充填方法と
して、圧縮工程を省くこともできる。しかし、前記した
ように、樹脂の配向、繊維の配向防止、溶融樹脂の充填
の容易さ、金型転写性などから射出圧縮成形方法の採用
が好ましい。なお、可動金型としては、多層成形品の形
状などによっては、主要面全体を後退膨張する場合の
他、適宜後退しない箇所を設けた金型、二段に後退する
金型を用いることもできる。すなわち、後退しない部分
においては、膨張することなく緻密な結合部分を形成す
ることにより、リブ効果が生じ、より曲げ特性を向上で
きる。同様に、多層成形品の裏面側に凹凸状を形成する
金型構造によっても同様なリブ効果が期待できる〔図1
(C)参照〕。
【0065】また、図1(B)のように、表面層樹脂が
繊維含有熱可塑性樹脂層を外周部まで被覆するような多
層成形品は、用途によっては好ましい形態である。この
多層成形品の成形にあっては、多層成形品の裏面側から
樹脂の射出をし、また、繊維含有樹脂の膨張のための金
型キャビティの拡大は、可動金型とは別に、固定金型に
設けられたコア型の移動による方法の採用が好ましい。
この場合、固定金型に設けられるコア金型移動装置とし
ては、中心部に穴があいており、ここより射出ノズルが
進退できる構造のものが使用できる。この構造の成形金
型移動装置としては、特開平10−244542号公報
記載の装置を例示できる。
【0066】以上本発明の多層成形品の製造方法を好ま
しい製造方法である二層成形品の場合について、その1
例を具体的に示した。しかしながら、この例に限定され
るものではない。たとえば、本発明の多層成形品の製造
方法では、前記の場合に、第2樹脂である繊維含有熱可
塑性樹脂の射出を、第1樹脂の射出成形後、可動金型を
後退させて、キャビティ空間を確保した後に第2樹脂で
ある繊維含有膨張性樹脂の射出を開始したが、可動金型
を後退しながら射出することもできる。
【0067】また、本発明の多層成形品は、本発明の製
造方法に限定されることなく、公知の二色成形方法を採
用することによっても成形することができる。すなわ
ち、第1の熱可塑性樹脂と第2の繊維含有熱可塑性樹脂
を同時に射出成形して、二層または三層成形品を射出成
形することもできる。また、第1の樹脂の射出と、第2
の樹脂の射出を成形金型を回転または移動して行うこと
もできる。さらに、第1樹脂を射出し、成形金型キャビ
テイの溶融樹脂中にガスを注入しながら可動金型を後退
して、中空部を形成し、その後に、この中空部に第2樹
脂を膨張可能な樹脂量を射出し、必要により、さらにガ
スを注入する成形方法を採用することもできる。また、
必要箇所に金属部材などをインサート成形することもで
きる。
【0068】本発明の多層成形品は、表面特性と強度、
剛性を必要とする軽量成形品分野である、自動車分野、
建材分野、家具分野などに幅広く展開できる。中でも、
ドア外装材、フェンダー、タイヤカバー、ボンネット、
バンパー、フロントエプロン、ホイールカバーなどの自
動車外装材として好ましく用いられる。
【0069】
【実施例】次に、本発明の効果を具体的な実施例に基づ
いて説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限
定されるものではない。 実施例1 成形樹脂材料として、 ・表面層形成用熱可塑性樹脂:ポリカーボネート樹脂
〔粘度平均分子量=22,000〕60重量%とポリエ
チレンテレフタレー樹脂〔固有粘度=0.7(フエノー
ル/テトラクロロエタン:重量比6/4の混合溶媒・3
0℃)〕40重量%からなる混合樹脂ペレット。 ・繊維を含有し膨張性を有する熱可塑性樹脂用成形材
料:ガラス繊維(径:13μm)が平行に配列し、その
含有量が70重量%、長さが16mmであるガラス繊維
強化ポリプロピレン系樹脂ペレット(無水マレイン酸変
性ポリプロピレンを3重量%含有)60重量%とメルト
インデックス(MI)〔230℃、2.16kg荷重〕
が60g/10分のポリプロピレン樹脂ペレット40重
量%からなる混合ペレット。
【0070】なお、両樹脂材料には、成形材料100重
量部に対して、酸化防止剤〔イルガノックス1076
(チパ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)=0.2重
量部、紫外線吸収剤〔チヌビン327(チパ・スペシャ
リティ・ケミカルズ社製)=0.2重量部を添加した。
射出成形機は、型締力:1500t、第1樹脂用スクリ
ューの圧縮比=2.8、第2樹脂用スクリューはガラス
繊維の破断を極力少なくするために圧縮比=1.8のス
クリューを用いた。成形金型キャビティの容積を変更で
きるように、可動金型を進退させるためのIPMユニッ
ト(出光石油化学株式会社製)を装備した金型構造を有
する射出成形装置である。なお、金型には、キャビティ
内への窒素ガスの注入、排気設備を設けた。成形金型
は、800mm×400mm×厚み可変のものを用い
た。
【0071】まず成形金型キャビティ厚みが1mmとな
るように、可動金型を型締めし、ポリカーボネート樹脂
組成物である溶融混練・可塑化計量された第1樹脂(樹
脂温度=280℃)を射出充填した。充填完了10秒後
に金型間クリアランスが4mm(実質クリアランス=3
mm)になるように、可動金型を後退させた。ついで、
第2樹脂である溶融混練・可塑化計量されたガラス繊維
含有膨張性ポリプロピレン樹脂(樹脂温度=230℃)
を、加圧充填時にキャビティ厚み2mmに相当する量を
射出し、射出完了と同時に可動金型を前進して圧縮し充
填した。充填完了3秒後に、可動金型を金型キャビティ
厚みが5mm(実質クリアランス=4mm)になるよう
に後退させ膨張させた。可動金型後退開始2秒後に、ガ
ス注入ピンより3MPaの窒素ガスを樹脂中に注入し
た。その後冷却固化、ガス排気後、金型を開放して二層
板状成形体を得た。表面熱可塑性樹脂層が約1mm、空
隙を有する繊維含有熱可塑性樹脂層が約4mmであり、
空隙含有層は約2倍に膨張していた。
【0072】多層成形品の評価方法、結果を以下に示
す。 表面光沢(JIS K7105、入射、反射角度:6
0度)=95 ロックウエル硬度(JIS K7202、Rスケー
ル)=120 平均ガラス繊維長(ポリプロピレン樹脂成形体部分を
切り出し灰化後、万能投影機で倍率10倍で直接撮影
し、その画像を用いデジタイザーにて測定)=6.2m
m 曲げ試験(試験片:160mm×50mm×厚み、支
店間距離:80mm、3点曲げ試験、試験速度:10m
m/分、室温) 最大荷重=256N、曲げ剛性=348N/cm 吸音率(垂直入射吸音率測定法、1KHzの場合)=
0.46 遮音率(1,000Hz)=39dB 比較例 実施例1において、第2樹脂の充填圧縮後、可動金型を
後退することなく、膨張せず冷却し、厚み、約3mmの
多層成形品を製造した。評価結果を次に示す。 表面光沢=95 ロックウエル硬度=120 平均ガラス繊維長=6.2mm 曲げ試験:最大荷重=86N、曲げ剛性=98N/c
m 吸音率=0.04 遮音率=29dB これらの結果より、実質同一の面積で同一重量でありな
がら、本発明の多層成形品は曲げ特性に著しくすぐれ、
しかも、比較例にない吸音性、遮音性を有する全く異な
った成形品であることが明らかである。
【0073】
【発明の効果】本発明の多層成形品は、軽量化されてい
るにも関わらず強度、剛性が単位重量当り非常にすぐれ
ている。しかも、外観良好で光沢、硬度など用途、目的
に応じて表面特性を任意に制御できる。さらに、吸音
性、遮音性、振動吸収性、断熱性などを同時に満足する
ものであり、低密度側表面も一般の成形品と同等な緻密
表面を有する。また、これらの特性を有するものであり
ながら、射出または射出圧縮成形により、一段で一体成
形できるものであり、コスト、生産性が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層成形品の断面図である。
【図2】本発明の多層成形品の製造方法に用いられる射
出装置の概念断面図である。
【図3】成形工程を説明するための成形金型部の概念断
面図であり、第1樹脂の射出成形後の状態を示す。
【図4】成形工程を説明するための成形金型部の概念断
面図であり、第2樹脂の射出の状態を示す。
【図5】成形工程を説明するための成形金型部の概念断
面図であり、第2樹脂が膨張して多層成形品が成形され
た状態を示す。
【符号の説明】
1:多層成形品 2:熱可塑性樹脂層 3:繊維含有熱可塑性樹脂層 10:射出装置 11:第1樹脂射出ユニット 12:第1スクリュー 13:第1樹脂流路 14:第2樹脂射出ユニット 15:第2スクリュー 16:第2樹脂流路 17:射出ノズル 20:成形金型 21:固定金型 22:可動金型 23:成形金型キャビティ 24:スプルー 25:ガス注入管 26:ガス排気管 31:第1溶融樹脂 32:第2溶融樹脂
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B32B 27/34 B32B 27/34 27/36 27/36 102 102 // B29K 23:00 67:00 69:00 77:00 105:12 B29L 31:30 Fターム(参考) 4F100 AG00B AK01A AK01B AK07A AK07B AK41A AK41B AK42 AK45A AK45B AK46A AK46B BA02 BA15 CA06 CA07 DG01B EH362 EJ172 GB32 JA12A JA13B JB16A JB16B JH01 JH02 JJ02 JK12A JN21A YY00A YY00B 4F206 AA11 AA24 AA28 AA29 AB25 AH17 JA03 JA07 JB22 JN12 JN33 JQ81

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも表面の一部を形成する熱可塑
    性樹脂層(I)および、(A)繊維含有量が10〜70
    重量%、(B)平均繊維長が1〜30mm、(C)平均
    見かけ密度が0.2〜1.0g/cm3 である繊維含有
    熱可塑性樹脂層(II)からなる多層成形品。
  2. 【請求項2】 層(I)の樹脂表面が、90%以上の光
    沢度、100以上のロックウエル硬度(Rスケール)を
    有する請求項1記載の多層成形品。
  3. 【請求項3】 層(II)における繊維がガラス繊維で
    あり、平均見かけ密度が0.3〜0.8g/cm3 であ
    る請求項1または2記載の多層成形品。
  4. 【請求項4】 層(I)および層(II)の熱可塑性樹
    脂がポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエ
    ステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂から選ばれた樹
    脂である請求項1〜3のいずれかに記載の多層成形品。
  5. 【請求項5】 層(II)の熱可塑性樹脂がポリプロピ
    レン系樹脂であり、層(I)の熱可塑性樹脂が、ポリ
    カーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂とポリアミ
    ド系樹脂および/またはポリエステル系樹脂、ポリプ
    ロピレン系樹脂から選ばれた樹脂である請求項1〜4の
    いずれかに記載の多層成形品。
  6. 【請求項6】 層(I)の熱可塑性樹脂の主成分が非晶
    性樹脂である請求項1〜5のいずれかに記載の多層成形
    品。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれかに記載の多層成
    形品の熱可塑性樹脂層(I)を外層とする自動車用外装
    部材。
  8. 【請求項8】 熱可塑性樹脂を射出成形金型キャビティ
    に射出し、層(I)を形成した後、可動金型を後退して
    成形金型キャビテイを拡大し、繊維を含有し溶融膨張性
    を有する熱可塑性樹脂を、射出あるいは射出圧縮充填
    後、成形金型キャビティ容積を拡大して膨張し、層(I
    I)を形成する多層成形品の製造方法。
  9. 【請求項9】 溶融膨張性を有する熱可塑性樹脂が、繊
    維強化熱可塑性樹脂ペレットを少なくとも含む成形材料
    を溶融混練してなり、当該ペレットは、全長が3〜10
    0mmであり、この全長と等しい長さを有し、互いに平
    行に配列された状態にある繊維を20〜90重量%含有
    するものである請求項8記載の多層成形品の製造方法。
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