JP3845191B2 - 成形用金型および軽量樹脂成形品の成形方法 - Google Patents

成形用金型および軽量樹脂成形品の成形方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形用金型および該金型を用いる軽量樹脂成形品の成形方法に関し、詳しくは、金型キャビティの容積を変化させることができる、摺動金型において、キャビティを形成する他の金型と隣接する部分のキャビティ形成面が断熱構造を有する成形用金型および該金型を用いる軽量樹脂成形品の成形方法に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来より、熱可塑性樹脂、繊維強化熱可塑性樹脂は自動車部品、家電、OA分野、建築・土木用部材等として広く利用されている。これらの成形品は、生産性などの点から主として射出成形により成形されている。これら成形品の特徴は他の材質に比較して軽量であることであるが、産業界からは、省資源、樹脂の有効活用の観点から更なる軽量化が求められている。この樹脂成形品の軽量化は、単位重量当たりの強度、剛性が高く、資源の有効活用の観点から望ましい使用形態である。また、一方では、成形品においてヒケの発生など、外観不良の解消が求められている。
【0003】
射出成形(射出圧縮成形を含む:以下同じ)において、樹脂成形品を軽量化するための方法としては、発泡剤含有樹脂を用いる方法、ガスを注入する方法、繊維含有樹脂における繊維の絡み合いの復元力である膨張性を利用する方法などが知られている。このなかで、発泡剤含有樹脂を用いて通常の射出成形、すなわち、キャビティの容積よりも少ない量の樹脂を射出して発泡させる方法では、成形品の末端部分まで均一に成形できなかったり、成形品表面に発泡剤によるシルバーが生じるなど外観にすぐれた成形品が得られないという問題がある。これを解決する方法として、射出時の発泡を抑制するカウンタープレッシャー法も提案されているが、経済性に問題があるとともに、薄肉末端部の成形が困難である問題は解決されない。
【0004】
一方、ガス注入(液体注入によるガス化を含む)成形方法においても同様に、金型キャビティの容積よりも少ない量の溶融樹脂を射出した後に、ガスを注入して成形品中に中空部を形成する成形方法がある。しかし、この方法では、金型表面での樹脂の流れが、断続となるため、成形品表面に流動マークが生じるなど外観不良の問題がある。また、繊維含有樹脂による膨張性を利用した成形方法にあっても、通常の成形方法のように、固定された金型キャビティでの成形では、成形品の外観不良が生じ易く、また成形品の端部での転写成形性はその軽量化の程度にもよるが十分でない場合がある。
【0005】
上記の射出成形における樹脂成形品の軽量化を目的とした成形方法において、それぞれの問題点を解決するための改良がなされている。たとえば、溶融した発泡性プラスチック組成物を目的とする成形品の容積の10〜95%の容積を有するキャビティ内に射出し、金型面に接触する固化層を形成後に、目的とする成形品の容積まで拡張して発泡させる成形方法(特開平8−300391号公報)が提案されている。また、ガス注入成形方法においても、大型の中空部を形成させるためには、ガス注入時にキャビティを拡張することが知られている。さらに、本出願人は、特定の繊維含有樹脂による繊維の絡み合いによる膨張性を利用した軽量化成形方法において、キャビティを拡張する成形方法(国際公開WP97/29896公報)について提案している。
【0006】
すなわち、これらの改良成形方法は、最終成形品の容積よりも小さい金型キャビティに樹脂を射出充填して、ある程度表面を硬化させて、表面転写を完了した後に、キャビティを最終成形品の容積まで拡張して軽量化することで、成形品の外観を良好にすることを目的としたものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの改良方法にあっても、軽量化の程度が低い場合はともかくとして、拡張倍率が高く、たとえば3倍を越えるような場合には、金型表面の冷却と摺動金型(可動型)の後退のタイミングによって、成形品の均一性が不十分となり、特に、成形品の端部や成形品中に穴部がある場合の穴の周囲が、摺動金型の後退、拡張に対応して、十分追従することが困難となり、この部分の密度が他の一般部分と比較して高くなる傾向がある。さらに、この部分のコーナー部の型転写性が甘くなり、角部が明瞭に転写され難くなる問題点があり、適用分野が制限される場合がある。
【0008】
一方、外観不良を解消するものとして、金型の材質として特定の熱伝導率の低い材質を用いることも提案されている(特開平8−57888号公報など)。しかしながら、この場合は、低圧射出成形における外観を改良するものであり、軽量化を目的としたものではない。しかも、生産性の観点からは、成形品の冷却効率が低下し、成形サイクルが長くなり、射出成形一般へ適用できるものではなく実用性に問題を残している。
【0009】
本発明は、溶融樹脂を射出した後、キャビティを拡張して軽量樹脂成形品を成形するに際しての外観不良を解消し、均一性にすぐれた成形品を得ることのできる成形用金型および該金型を用いる成形品の成形方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題につき鋭意研究した結果、金型キャビティを形成する金型を、キャビティ容積を変化させることができる摺動金型と他の金型からなる金型で形成し、摺動金型の特定箇所に断熱構造を設けることにより、外観、均一性にすぐれた軽量樹脂成形品が得られることを見いだした。すなわち、摺動金型の他の金型(摺動金型の後退時に固定している金型)と隣接する部分のキャビティ形成面に断熱構造を設けることにより、摺動金型の後退による金型冷却による不都合が解消し、転写性よく、外観、品質的に均一な軽量樹脂成形品が得られることを見いだし、本発明を完成したものである。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)組み合わされてキャビティを形成する摺動金型と他の金型からなり、摺動金型が摺動することによりキャビティ容積を変化させることができ、かつ、摺動金型において他の金型と隣接する部分のキャビティ形成面が断熱構造を有し、この断熱構造が厚み0.1〜5mmの断熱層と断熱層の上の厚み0.01〜0.5mmの金属層とで形成されていることを特徴とする成形用金型。
(2)断熱構造の断熱層が耐熱性樹脂および/またはセラミックスからなる断熱層で形成されている上記(1)記載の成形用金型。
(3)組み合わされてキャビティを形成する摺動金型と他の金型からなり、摺動金型が摺動することによりキャビティ容積を変化させることができ、かつ、摺動金型において他の金型と隣接する部分のキャビティ形成面が断熱構造を有する成形用金型を用い、最終成形品に相当する容積よりも小さく閉じた金型キャビティに、2〜100mmの長さの繊維を含有する樹脂ペレットを少なくとも一部として含む原料を溶融したものであり繊維含有量が5〜80重量%である熱可塑性溶融樹脂を射出し、次いで摺動金型を後退させて最終成形品に相当する容積までキャビティ容積を拡張することを特徴とする軽量樹脂成形品の成形方法。
)射出された熱可塑性溶融樹脂中にガスを注入する上記(3)記載の軽量樹脂成形品の成形方法。
)熱可塑性溶融樹脂が発泡剤を含有するものである上記(3)または(4)記載の軽量樹脂成形品の成形方法を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明の成形用金型は、射出成形用、射出圧縮成形用に用いられるものである。具体的には、金型のキャビティを拡大縮小できる構造の金型であり、進退してキャビティ容積を可変とする摺動金型を持つ成形用金型である。金型の基本構造としては、組み合わされてキャビティを形成する摺動金型と他の金型からなる。具体例としては、(1)固定金型と移動金型とで構成され、移動金型の摺動進退によりキャビティ容積を可変とする構造の金型がある。この場合は移動金型が本発明における摺動金型に相当する。すなわち、摺動金型の進退は金型の型締め機構あるいは移動盤と移動金型の間に設けられた金型移動装置を用いてなされる。また(2)固定金型と移動金型と移動金型内に設けられた摺動金型により全体の金型を構成してもよい。この場合は固定金型と移動金型と摺動金型の部材にてキャビティが構成され、一般的には型締め機構で移動金型と固定金型の型締めが行われ、移動盤と摺動型の間に設けられた金型移動装置で摺動金型の進退がなされる。
【0013】
すなわち、摺動金型と他の金型である固定金型、あるいは固定金型と移動金型でキャビティを形成することとなる。このキャビティに溶融樹脂を射出した後、摺動金型を後退させて、キャビティを拡張することにより、拡張された金型キャビティに相当する軽量樹脂成形品が得られる。なお、摺動金型は、一般的には、移動金型側であるが、固定金型側に設ける場合もある。
【0014】
本発明では、摺動することによりキャビティ容積を変化させることができる摺動金型において、他の金型と隣接する部分のキャビティ形成面が断熱構造を有するものである。ここで、他の金型と隣接する部分とは、樹脂を射出して充満した状態の摺動金型の位置から摺動金型が後退する場合に、固定している他の金型との境の部分を意味し、固定している金型の冷却の影響を最も強く受ける部分である。具体的には、摺動金型の周辺部や成形品に穴などを形成するための筒状部に対応する周辺部である。したがって、隣接とは、摺動金型の端部が直接接触する場合はもちろん、一部間隙を設けて隣接する場合であってもよい。断熱構造の形成範囲は、特に制限はないが、通常摺動金型の摺動端部から3〜20mmの範囲であり、成形品の大きさ、成形原料樹脂、成形法の種類などによって適宜最適の範囲を選定する。ここで、断熱構造の幅が広くなると成形品の冷却が難しくなるため、成形サイクルとの兼ね合いで最適な条件を選定することになる。
【0015】
次に、断熱構造としては、金型表面に断熱層を有するものに限らず、断熱層の上の表面に金属層、あるいは、断熱効果の小さい薄い耐熱性の樹脂層を形成したものなど多層で構成されたものも例示できる。ここで、断熱層の上に金属層を設けるのは、溶融樹脂の射出時には、表面が金属層として恰も金型表面が均一であるようにし、これによって樹脂の流動への影響を極力抑え、樹脂充填後の冷却開始後に断熱の効果が現れるようにするために好ましいからである。すなわち、断熱構造を特定位置に形成する目的は、特定部分の溶融樹脂の冷却速度を他の一般部分よりも遅くすることにある。
【0016】
成形用金型は、一般に一般鋼鉄、ニッケル、アルミニウム、銅、亜鉛あるいはこれらの合金などの金属材料で構成されている。一般の金属材料は熱伝導率が高く、熱伝導性がよく、射出された溶融樹脂は急激に冷却され、成形品表面は固化することになる。本発明における断熱構造(層)を形成する材料としては、特に限定はなく、たとえば、ポリイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、ポリアリルスルフォン、ポリフェニレンエーテルなどやエポキシ樹脂等の耐熱性樹脂を例示することができる。これらの樹脂の中でも、ガラス転移温度が140℃以上、好ましくは、170℃以上、または融点が220℃以上、好ましくは240℃以上の耐熱性を有する樹脂を用いることができる。
【0017】
また、他の断熱構造(層)形成材料としては、ガラス、アルミナ、ジルコニア、シリカ、酸化マグネシウム、窒化チタンなどの金属化合物やセラミックなどの耐熱材料がある。これらの断熱構造(層)を形成する材料の使用形態としては、溶融吹き付け被覆する方法、溶液またはペースト状で被覆し、硬化または焼結する方法、化学蒸着、物理蒸着する方法、膜状の単体を事前に作成して接着する方法、これらを金属層の形成を含めて複数を組み合わせて断熱構造を形成することができる。
【0018】
断熱構造における断熱層の厚みとしては、特に限定されず、成形される樹脂の種類、成形品の形状、成形方法、成形条件などを考慮して適宜設定することができる。たとえば、断熱層部分が0.1〜5mm、表面金属層が0.01〜0.5mmの場合を例示できる。ここで表面金属層の厚みが、0.01mm以下では、金属層の強度が不足し、断熱層の保護効果に劣る場合があり、0.5mm以上となると断熱効果が低下することになる。なお、表面金属層の上に、さらに表面層を形成することもできる。この場合の表面層の効果は、離型性を向上させるものであり、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂分散金属メッキなどがある。この層により、他の一般部分より冷却が遅れても、冷却後の全体的な冷却に支障なく成形サイクルを短く成形品の脱型が行われることになる。
【0019】
次に、図面により、本発明の成形用金型を説明する。
図1、図2は、本発明の実施形態の金型部と成形時の金型動作を示す概念図である。図中の(a)は樹脂の射出充填時、(b)は摺動金型後退時、(c)は摺動金型の表面を示す。図中において、1は固定金型、2は移動金型、3は摺動金型、4は樹脂流路、5はガス供給路、6はガス排出路、7は断熱構造、8はキャビティ、9は穴用コア、10は穴部、11は穴用断熱構造である。
【0020】
図面により、繊維含有の膨張性を有する熱可塑性樹脂を用いる軽量樹脂成形品の成形方法の場合について以下説明する。固定金型1に対して、移動金型2が、型締めされ、摺動金型3の前進によって初期の金型キャビティ8(クリアランス:D1)が設定される。摺動金型3のキャビティ側には、図示のように、摺動金型3が後に後退してキャビティを拡張するときに、固定している他の金型に相当する移動金型2に隣接する周辺部に断熱構造7が形成されている。初期の金型キャビティに樹脂流路4を介して、繊維を含有し繊維の絡み合いによって膨張性を有する溶融樹脂が射出充填される。充填された樹脂は、一般金型面において冷却が始まり、固化層を形成する。
【0021】
ついで、摺動金型3を、図中の(b)に示すようにキャビティ間隔がD2の位置まで摺動後退させる。これにより、溶融樹脂はD2/D1の倍率で膨張し冷却され、脱型して軽量樹脂成形品が得られる。ここにおいて、摺動金型3の後退時に移動型2と接する部分においては、摺動金型3の断熱構造に対応する部分の表面の溶融樹脂は他の一般部分の冷却よりも遅れることとなり、このコーナー部の溶融樹脂がキャビティの拡張において、他の一般部分と実質的に同じような膨張性を維持して膨張がなされることとなる。ここにおいて、断熱構造がないと、溶融樹脂の冷却による粘度の上昇が他の部分より早くなり、十分な膨張が生じないばかりか、成形品の端部、特にコーナー部において、移動型2の金型面との間に、隙間ができるなど、型転写性が悪くなることがある。この現象は膨張倍率が高くなるほど、膨張性が弱いほど問題となる。
【0022】
図2は、さらに、成形品の中に円筒状の穴10がある場合である。この場合は、摺動金型3と固定型1の穴用コア9との隣接部(接触部)においても同様なことが生じるので、摺動金型3の円形凹部の周辺に穴用断熱構造11を形成することができる。
本発明の成形用金型としては、キャビティを形成する摺動金型と他の金型との隣接部のすべてに断熱構造を形成しても良いが、軽量樹脂成形品の使用目的などによっては、一部分は省略することもできる。なお、図面においてはガス注入のための流路を示したが、これも、必要により設ければよい。また、樹脂流路やガス注入路を固定型に設けたものを示したが、場合によっては、成形品の表面を避けて、移動型側からのサイドゲート、サイド注入の手段を採用することもできる。さらに、摺動金型が固定金型側に設けてある場合であってもよい。
【0023】
本発明の成形用金型を用いて成形される熱可塑性樹脂としては、特に、制限はないが、例えば、ポリプロピレン、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ芳香族エーテルまたはチオエーテル系樹脂、ポリ芳香族エステル系樹脂、ポリスルホン系樹脂およびアクリレート系樹脂等が採用できる。ここで、上記熱可塑性樹脂は、単独で用いることがもできるが、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。このような熱可塑性樹脂のうち、ポリプロピレン、プロピレンと他のオレフィンとのブロック共重合体、ランダム共重合体、あるいは、これらの混合物などのポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が好ましく、特に、不飽和カルボン酸、または、その誘導体で変性された酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有する熱可塑性樹脂、ポリオレフィン系樹脂、特にポリプロピレン系樹脂が好適である。
【0024】
なお、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された酸変性ポリオレフィン系樹脂は、ガラス繊維などの繊維やタルクなどの充填剤と樹脂との界面接着強度を向上する結果、成形品の物性、長期安定性の向上に寄与するとともに、繊維束への樹脂含浸性が促進するので好適である。また、変性に用いられ不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸,メタクリル酸,マレイン酸,フマル酸,イタコン酸,クロトン酸,シトラコン酸,ソルビン酸,メサコン酸,アンゲリカ酸などが挙げられ、またその誘導体としては、酸無水物,エステル,アミド,イミド,金属塩などがあり、例えば無水マレイン酸,無水イタコン酸,無水シトラコン酸,アクリル酸メチル,メタクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸ブチル,マレイン酸モノエチルエステル,アクリルアミド,マレイン酸モノアミド,マレイミド,N−ブチルマレイミド,アクリル酸ナトリウム,メタクリル酸ナトリウムなどを挙げることができる。これらの中で不飽和ジカルボン酸及びその誘導体が好ましく、特に無水マレイン酸が好適である。この酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、前記不飽和カルボン酸やその誘導体の付加量が0.01〜20重量%、好ましくは0.02〜10重量%の範囲にあるものがよく、特に無水マレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂が好適である。
【0025】
また、本発明の軽量樹脂成形品の成形方法の中で、繊維の絡み合いによる膨張性を活用した成形方法の場合には繊維の含有が必須となる。繊維としては、セラミック繊維:ボロン繊維、炭化ケイソ繊維、アルミナ繊維、チッ化ケイ素繊維、ジルコニア繊維、無機繊維:ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維:銅繊維、黄銅繊維、鋼繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維、アルミニウム合金繊維、有機繊維:ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリアリレート繊維などを例示できる。これらのなかでもガラス繊維が好ましく用いられる。
【0026】
ここで、ガラス繊維としては、E−ガラス、S−ガラスなどのガラス繊維であって、その平均繊維径が25μm以下のもの、特に3〜20μmの範囲のものが好ましく採用できる。ガラス繊維の径が3μm未満であると、ペレット製造時にガラス繊維が樹脂になじまず、樹脂に含浸するのが困難となる一方、20μmを超えると、溶融混練時に切断、欠損が起こりやすくなる。
【0027】
本発明の軽量樹脂成形品の成形方法の為には、たとえば、熱可塑性樹脂および連続繊維を用い、引き抜き成形法によって強化されたペレット状の原料を用いることができる。この原料ペレツトの好ましい例としては、全長が2〜100mmであり、前記全長と等しい長さの繊維が、互いに平行に配列された状態となって20〜80重量%含有されたペレットまたは前記ペレットと他の樹脂ペレットとの混合物で前記繊維が全体の5〜80重量%、好ましくは10〜75重量%とされた原材料である。繊維が互いに平行に配列された状態となって全体の20〜80重量%含有されたペレットを用いれば、射出装置のスクリューで可塑化・混練を行っても、繊維の破断が起こりにくく、また分散性も良好となる。これにより、射出溶融樹脂中に存在する繊維長さを比較的長く保持でき、溶融樹脂の膨張性を良好にすることができやすい。しかも、成形品の物性の向上、表面外観が向上する。
【0028】
また、繊維がガラス繊維の場合に引き抜き成形法等でペレットを製造するにあたり、ガラス繊維は、カップリング剤で表面処理した後、収束剤により、100〜10000本、好ましくは、150〜5000本の範囲で束ねておくことが望ましい。カップリング剤としては、いわゆるシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤として従来からあるものの中から適宜選択することができる。例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のアミノシランやエポキシシランが採用できる。特に、前記アミノ系シラン化合物を採用するのが好ましい。
【0029】
上述のような収束剤で収束したガラス繊維に熱可塑性樹脂を付着・含浸させることにより、ガラス繊維を含有する樹脂ペレットが製造される。ガラス繊維に熱可塑性樹脂を付着・含浸させる方法としては、例えば、溶融樹脂の中に繊維束を通し、繊維に樹脂を含浸させる方法、コーティング用ダイに繊維束を通して含浸させる方法、あるいは、ダイで繊維の周りに付着した溶融樹脂を押し広げて繊維束に含浸させる方法等が採用できる。
【0030】
ここで、繊維束と樹脂とをよくなじませる、すなわち濡れ性を向上するために、内周に凹凸部が設けられたダイの内部に、張力が加えられた繊維束を通して引き抜くことで、溶融樹脂を繊維束に含浸させた後、さらに、この繊維束を加圧ローラでプレスする工程が組み込まれた引抜成形法も採用できる。なお、ガラス繊維と溶融樹脂とが互いによくなじむ、濡れ性のよいものであれば、溶融樹脂がガラス繊維に容易に含浸され、ペレットの製造が容易となるので、前述の収束剤で繊維を収束する工程は、省略できる場合がある。ここで、互いによくなじませる方法としては、樹脂に極性を付与したり、ガラス繊維の表面にカップリング剤と反応する官能基をグラフトしたりする方法が有効である。さらに、ガラス繊維束を流動パラフィンなどであって、含浸時の溶融樹脂の溶融温度以上の沸点を有する液状物で処理した後に、複数の繊維束を分離状態で樹脂含浸部へ導入し、複数繊維束を一体化する方法も好ましい。この方法によって、樹脂の含浸性の向上、高速引き抜き成形が可能となる。
【0031】
以上のような方法で、樹脂が含浸されたストランド等を、繊維の長手方向に沿って切断すれば、ペレットの全長と同じ長さの長繊維を含んだ樹脂ペレットを得ることができる。この際、樹脂ペレットとしては、繊維束がストランドにされ、その断面形状が略円形となった樹脂含有長尺繊維束を切断したものに限らず、繊維を平たく配列することにより、シート状、テープ状またはバンド状になった樹脂含有長尺繊維束を所定の長さに切断したものでもよい。
【0032】
本発明の軽量樹脂成形品を成形する方法において、発泡による場合には、成形原料として、たとえば、0.1〜5重量%程度の発泡剤を含むものを用いる。ここで、発泡剤の種類は、熱により分解してガスを発生するものであれば、限定されない。例えば、シュウ酸誘導体、アゾ化合物、ヒドラジン誘導体、セミカルバジド、アジド化合物、ニトロソ化合物、トリアゾール、尿素およびその関連化合物、亜硝酸塩、水素化物、炭酸塩ならびに重炭酸塩等が採用できる。さらに具体的に例示すれば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ベンゼンスルホヒドラジド、N,N−ジニトロペンタメチレンテトラミン、テレフタルアジド等が採用できる。
【0033】
また、本発明の軽量樹脂成形品を成形するためには、原料樹脂中に、必要により、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、耐候剤、光安定剤、着色剤などの添加剤、ガラス短繊維、タルク等の充填剤を加えることもできる。
【0034】
次に、本発明の軽量樹脂成形品の成形方法として、ガス注入成形方法を採用する場合には、射出ノズル、ランナー、あるいはキャビティ壁に設けられたたガスノズルから窒素などのガスをキャビティ中の溶融樹脂に注入する。ガスの注入は一般的には、摺動金型の後退が開始した後に行われる。なお、本発明では、ガスの注入は一般のガス注入成形方法とは異なり、摺動金型を後退しながら行われるので、キャビティ内は比較的低圧であり、注入するガスの圧力は、通常20MPa以下、特に、2Mpa以下の低いガス圧力で十分である。
【0035】
本発明の成形用金型を用いた軽量樹脂成形品の成形方法は、金型キャビティに溶融樹脂を射出、または射出圧縮して金型キャビティに溶融樹脂を充満させた後、摺動金型を後退させて溶融樹脂を膨張させる軽量樹脂成形品の成形方法に適用できる。すなわち、本発明の成形用金型は、摺動金型の後退によりキャビティ容積が拡張する際に成形品の表面部にスキン層を形成させる成形方法一般に適用できるものであり、溶融樹脂の膨張手段によって特に限定されるものではない。したがって、得られる軽量樹脂成形品の形態も、全体的にほぼ均一になった成形品、表面部と中心部の密度が異なった中実の成形品、成形品の内部に一つ以上の比較的大きな中空部を有する成形品などがある。
【0036】
このように、本発明成形方法には、繊維含有原料樹脂の利用に加え、発泡剤含有樹脂および/またはガス注入を利用する方法を組み合わせて成形する場合が当然含まれるものである。なお、ガスを注入する場合には、注入したガスを、成形品の冷却工程中にある程度の圧力(賦形性の確保)を維持しながら、外部にガスを排気しながら流通することが好ましい。これにより、軽量樹脂成形品でありながら、成形品内部を均一に流通ガスにより冷却することになり、冷却効率、成形サイクルの向上を図ることができる。
【0037】
以上、詳細に述べたように、本発明の成形用金型は、外観にすぐれた軽量樹脂成形品の成形方法に好ましく利用できるものである。しかも、成形品周辺部を含めて全体的に均一性、転写性にすぐれるとともに、成形サイクルに本質的に影響を与えないので、生産性の低下の心配が低いものである。また、軽量樹脂成形品の成形方法にあっては、外観を重視する各種成形品への適用が可能であり、その適用分野の拡大が期待される。したがつて、成形品の軽量化、良好な外観の必要な各種成形品、特に、外観の観点から成形品に穴などの凹部を表面に有する成形品においても大きなメリットを享受できるものである。これらの特徴により、前記したところの、自動車部品、家電、0A機器分野、家具、建築、土木分野などの各種成形品として、その応用分野を拡大するものである。特に、従来困難であった、軽量化の程度が高い成形品への適用が期待される。
【0038】
【実施例】
次に、本発明の効果を具体的な実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
ガラス繊維が平行に配列し、その含有量が60重量%、長さが12mmであるガラス繊維強化ポリプロピレンペレット(無水マレイン酸変性ポリプロピレンを3重量%含有)60重量%とメルトインデックス(MI:230℃、2.16kg荷重)が30g/10分のポリプロピレンペレット40重量%をドライブレンドして成形用原料とした。射出成形機は、型締力:850t、圧縮比:1.9のスクリューを備え、移動金型の中を摺動する摺動金型を進退可能にする圧縮ユニットを設けた成形装置を用いた。成形用金型は、図1に示すように、600mm×300mm×厚み(可変)とし、摺動金型3の端部周囲のキャビティ面に、幅5mmの断熱構造7を有する。断熱構造としては、厚み1.0mmのエポキシ樹脂層とその上に厚み0.2mmのニッケル層からなっている。
【0039】
まず、初期金型キャビティ容積として、間隙D1=3mmに設定し、この容積に相当する樹脂を溶融可塑化して射出充填した。充填完了2秒後に、摺動金型3を成形品厚みD2=12mmに相当する位置まで後退させた。なお、摺動金型後退開始後2秒後にガスピン(ガス供給路5)より、1MPaの窒素ガスを注入した。冷却後金型を開放して、軽量樹脂成形品を取り出した。得られた軽量樹脂成形品は、4倍に膨張しており、且つ周辺端部(一般には冷却速度の早い部分)も良好な膨張を示すとともに、摺動金型の端部コーナー部も良好に樹脂の転写がされていた。また成形品表面も均一な平滑性を有していた。
【0040】
なお、断熱構造を形成していない金型を用いた場合には、同様に膨張してはいるものの、周辺部は冷却が早く一般部に比較して、膨張の程度が低く(約2.6倍)コーナー部の転写性も不十分であった。
実施例2
実施例1において、図2に示すような、固定型1に一体化した穴用コア9(径=30mm)を有し、穴部10を有する成形用金型を用いた以外は、実施例1に準じて軽量樹脂成形品を成形した。なお、金型の断熱構造は、摺動金型3の端部周囲のキャビティ面7に、幅5mmと、穴の周辺部11に幅5mmに形成したものである。断熱構造としては、厚み1.5mmのジルコニア層、0.1mmのニッケル層、表面に3μmのポリイミド層が順に積層されたものを用いた。
【0041】
得られた軽量樹脂成形品は、4倍に膨張しており、且つ周辺端部(一般には冷却速度の早い部分)、穴の周辺部も良好な膨張を示すとともに、摺動金型の端部コーナー部、穴部コーナー部も転写性良好に成形されていた。また成形品表面も均一な平滑性を有していた。
なお、断熱構造を形成していない成形用金型を用いた場合には、同様に膨張してはいるものの、周辺部は冷却が早く一般部に比較して、膨張の程度が低く(周辺部:約2.6倍、穴部:約2.6倍)コーナー部、穴部の転写性も不十分であった。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、摺動金型の後退により、キャビティ容積を拡大して軽量化する成形方法において、成形サイクルを実質的に低下させることなく、軽量成形品の均一性を高め、特に、成形品のコーナー部の転写性を確実にすることができる。したがって、特に、軽量化の程度が比較的高い成形品においても、均一性にすぐれた商品価値の高い成形品を容易に成形することが可能になり、設計の自由度が広がり、その応用分野の大幅な拡大が期待される。
【0043】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の成形用金型と作動を示す一実施形態を示す概念図である。(a)は樹脂の射出充填時、(b)は摺動金型後退時、(c)は摺動金型の表面を示す。
【図2】本発明の成形用金型と作動を示す他の実施形態の概念図である。(a)は樹脂の射出充填時、(b)は摺動金型後退時、(c)は摺動金型の表面を示す。
【符号の説明】
1:固定金型
2:移動金型
3:摺動金型
4:樹脂流路
5:ガス供給路
6:ガス排出路
7:断熱構造
8:キャビティ
9:穴用コア
10:穴部
11:穴用断熱構造

Claims (5)

  1. 組み合わされてキャビティを形成する摺動金型と他の金型からなり、摺動金型が摺動することによりキャビティ容積を変化させることができ、かつ、摺動金型において他の金型と隣接する部分のキャビティ形成面が断熱構造を有し、この断熱構造が厚み0.1〜5mmの断熱層と断熱層の上の厚み0.01〜0.5mmの金属層とで形成されていることを特徴とする成形用金型。
  2. 断熱構造の断熱層が耐熱性樹脂および/またはセラミックスから形成されている請求項1記載の成形用金型。
  3. 組み合わされてキャビティを形成する摺動金型と他の金型からなり、摺動金型が摺動することによりキャビティ容積を変化させることができ、かつ、摺動金型において他の金型と隣接する部分のキャビティ形成面が断熱構造を有する成形用金型を用い、最終成形品に相当する容積よりも小さく閉じた金型キャビティに、2〜100mmの長さの繊維を含有する樹脂ペレットを少なくとも一部として含む原料を溶融したものであり繊維含有量が5〜80重量%である熱可塑性溶融樹脂を射出し、次いで摺動金型を後退させて最終成形品に相当する容積までキャビティ容積を拡張することを特徴とする軽量樹脂成形品の成形方法。
  4. 射出された熱可塑性溶融樹脂中にガスを注入する請求項記載の軽量樹脂成形品の成形方法。
  5. 熱可塑性溶融樹脂が発泡剤を含有するものである請求項3または4記載の軽量樹脂成形品の成形方法。
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