JP3990736B2 - 制がん剤 - Google Patents

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Description

発明の属する技術分野
本発明は、がん細胞、その周辺組織又は非患部組織の特定のタンパク質濃度を増強させることにより、がんの増殖を抑制する、医薬の分野に有用な薬剤に関する。
従来の技術
近年、がん化学療法などを始めとするがん治療法の進歩にはめざましいものがあるが、それでもなお世界中でがんはいまだに死因の主要な位置を占める疾病である。したがって、真に有効な新しいがん治療法の開発が強く望まれている。
動物組織や体液中には、血液型認識抗体のような免疫グロブリン以外に糖を認識するタンパク質として「動物レクチン」と総称される一群の機能性タンパク質が存在する。
本発明者は、この動物レクチンに関する研究過程で、カルシウム依存的にマンノース(Man)やN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)に結合するC型レクチンを哺乳動物肝臓及び血清中に見出し、マンナン結合タンパク質(MBP)と命名している[バイオケミカル アンド バイオフィジカル リサーチ コミュニケーションズ(Biochemical and Biophysical Research Communications)、第81巻、第3号、第1018〜1024頁(1978)、バイオケミカル アンド バイオフィジカル リサーチ コミュニケーションズ、第95巻、第2号、第658〜664頁(1980)ほか]。
更に、ヒト肝臓及びヒト血清MBP、並びにその遺伝子を獲得することに成功している[ジャーナル オブ バイオケミストリー(Journal of Biochemistry)、第115巻、第6号、第1148〜1154頁(1994)]。なお、マンナン結合タンパク質は、マンノース結合タンパク質あるいはマンナンバインディングレクチンと呼ばれることがある。
本発明者は、このMBPの構造と機能に関する研究を進める中で、血清MBPが抗体や補体成分であるC1qに依存することなく、古典経路、あるいはレクチン経路を介して補体系を活性化していることを明らかにしている。更に、血清MBPは直接的な生体防御作用を有していることが知られている。例えば、ヒト免疫不全ウイルスのエンベロープ糖タンパク質上のハイマンノース型糖鎖に結合することによって感染を抑制したり、酵母やある種のグラム陰性細菌に対してファゴサイトによる除去を促進することが知られている。
しかしながら、MBPのがん細胞あるいはがん組織に対する作用はこれまで全く知られていなかった。
発明が解決しようとする課題
本発明の目的は、がん細胞、その周辺組織又は非患部組織のがんの増殖を抑制させる薬剤を提供することにある。
課題を解決するための手段
本発明者は、上記目的を達成するために、MBPの構造並びに機能について、種々研究を行っていたところ、驚くべきことに、MBPをコードする遺伝子を投与した担がん動物と、MBPをコードする遺伝子を投与していない担がん動物とでは、明らかにMBPをコードする遺伝子を投与した担がん動物のがん細胞の増殖能が抑制されていることを見出し、本発明を完成した。
本発明を概説すれば、本発明は、マンナン結合タンパク質又はその遺伝子を有効成分とすることを特徴とする制がん剤に関する。
【図面の簡単な説明】
図1はワクシニアウイルスベクターpBSF2−16の制限酵素地図を示す図である。
図2はMBP発現プラスミドpBSF2−16/MBPの模式図を示す図である。
図3はインビボでの制がん効果評価実験の結果を示す図である。
発明の実施の形態
以下、本発明を具体的に説明する。
本明細書において、MBPとは、天然型のMBPのみならず、MBPとしての活性を有する限り天然型のアミノ酸配列中、アミノ酸残基の置換、欠失、付加、挿入等によりアミノ酸配列が改変されたタンパク質をも本発明に含む意味である。また、ここで言う天然型MBPとしては、例えばヒト又はウサギ由来のものが挙げられるが、本発明においてはこれらに限定されるものではなく、他の動物、植物等の生物体由来のもの、あるいは細菌類、酵母類、放線菌類、糸状菌類、子嚢菌類、担子菌類等の微生物由来のものも含まれる。
本明細書において、MBPをコードする遺伝子とは、上述したMBP及びMBP活性を有するタンパク質をコードする遺伝子であれば、特に限定されるものではなく、該遺伝子に対し、遺伝子工学的な置換、欠失、付加、挿入等の変異処理を行ったものでも、MBP活性を有しているタンパク質をコードする遺伝子であれば、本発明に含まれる。
本発明においては、がん細胞、その周辺組織又は非患部組織にMBPを導入することによってその目的を達成することができる。MBPを導入するには、例えばマイクロインジェクション法のような、がん細胞への直接投与法などによってMBPの活性を保持したままで、がん細胞に直接導入してもよいし、皮下投与法あるいは静脈内投与法等によってMBP活性を保持したままで導入してもよい。また、例えばウイルス等を使ってMBPをコードする遺伝子をがん細胞へ導入してもよいし、皮下投与法等によりMBPをコードする遺伝子をがん細胞へ導入し、MBPを発現させることによって本発明の目的を達成することができる。
すなわち、本発明の薬剤を用いればMBP又はMBPをコードする遺伝子をがん細胞、その周辺組織又は非患部組織に導入することができ、がんの増殖を抑制することができる。
MBP又はMBPをコードする遺伝子は、組織表面の患部あるいはその周辺組織に直接注入すればよい。また、組織内部の患部、その周辺組織にも直接注入すればよいが、ドラグデリバリーシステム(DDS)を応用することもできる。DDSとしては、がん細胞に特異的なシステムであれば良く、例えば、がん細胞リセプター、がん特異抗体等を利用した一般的なシステムから選択すれば良い。また、周辺組織の特定の臓器あるいは細胞に特異的なリガンド、リセプターを利用してそれらの臓器にMBPを特異的に導入させることもできる。なお、がん組織を外科手術的に摘出した後、非がん部に本発明の薬剤を適用するのも、微小がんの増殖抑制に極めて有効な方法である。
本発明のMBP又はMBPをコードする遺伝子を有効成分とする薬剤を、がん細胞、その周辺組織又は非患部組織に使用する場合、上記薬剤が最も効果的に効くようにするのは当然である。本発明の制がん剤は、MBP又はMBPをコードする遺伝子を医薬として許容される範囲で含有していれば良く、通常の遺伝子治療剤、タンパク質含有剤と同様に製剤化することができ、製剤中には担体、賦形剤、安定化剤、粘稠化剤等が含有されていても良い。
本発明の制がん剤として用いられるMBP又はMBPをコードする遺伝子の使用量は、その製剤形態、使用方法及び該薬剤を使用する患者の年齢、体重、疾患の進行度等を考慮した上で、適宜設定、調節すればよい。例えば、タンパク質の場合、成人1回当り0.01μg〜1g/kgである。また、タンパク質発現用組換えウイルスを使用する場合、成人1回当り1×102〜1×1012PFU(プラーク形成ユニット)を使用する。当然、使用量は種々の条件によって変動するものであるので、上記の使用量より少ない量で十分な場合、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。
本発明の制がん剤に含有されるMBP又はMBPをコードする遺伝子は、生体内物質であり、毒性は無い。
本発明で用いられるMBPについては、既にその詳細なタンパク質化学的性質が明らかにされており、例えばヒト血清から川嵜らの方法[ジャーナル オブ バイオケミストリー、第94巻、第3号、第937〜947頁(1983)]に従って、下記表1に示す工程により調製することができる。
Figure 0003990736
MBPの結合活性は、ジャーナル オブ バイオケミストリー、第94巻、第3号、第937〜947頁(1983)に記載の方法に準じ、125Iでラベルされたマンナン(125I−mannan)を用いて測定することができる。MBPの比活性は、結合した125I−mannan(ng)/タンパク質量(μg)で表す。タンパク質量は、牛血清アルブミンを標準物質として、ローリー法で測定する。
MBPをコードする遺伝子は、例えばヒト肝臓cDNAライブラリーから倉田らの方法[ジャーナル オブ バイオケミストリー、第115巻、第6号、第1148〜1154頁(1994)]によって得ることができる。
この方法により得られるヒトMBPの成熟タンパク質のアミノ酸配列は、配列表の配列番号1に、それらをコードする遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号2に示す。
これらの遺伝子若しくはその一部をプローブとして用いることにより、該遺伝子にハイブリダイズし、かつ、MBP活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を調製することができる。また、これらの遺伝子若しくはその一部からプライマーをデザインし、このプライマーを用いてPCR反応を行うことにより、MBP活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を調製することもできる。
ハイブリダイゼーションの方法としては、例えば、生物体又は微生物等から得たゲノムDNAあるいはcDNAライブラリーを固定化したナイロン膜を作製し、0.5%SDS、5×デンハルツ[Denhardt's、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%フィコール400]、100μgサケ精子DNA及び6×SSC(1×SSCは、0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)を含むプレハイブリダイゼーション溶液中、65℃でナイロン膜をブロッキングする。その後、32Pでラベルした各プローブを加えて、65℃で4時間〜一晩保温する。このナイロン膜を6×SSC中、室温で10分間、0.1%SDS中、45℃で30分間洗浄した後、オートラジオグラフィーをとってプローブとハイブリダイズするDNAを検出することができる。また、洗いなどの条件を変えることにより様々な相同性を示す遺伝子を得ることができる。
配列表の配列番号2で表される遺伝子に対し、遺伝子工学的な置換、欠失、付加、挿入等の変異処理等を行うことによっても、配列表の配列番号2で表される遺伝子にハイブリダイズし、かつMBP活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を調製することができる。
変異処理を行う方法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法[ギャップド デュプレックス(gapped duplex)法、ヌクレイック アシッズ リサーチ(Nucleic Acids Research)、第12巻、第24号、第9441〜9456頁(1984)]、制限酵素部位を利用する方法[アナリティカル バイオケミストリー(Analytical Biochemistry)、第200巻、第81〜88頁(1992)、ジーン(Gene)、第102巻、第67〜70頁(1991)]、dut(dUTPase)とung(ウラシルDNAグリコシラーゼ)変異を利用する方法[クンケル(Kunkel)法、プロシーディングズ オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシーズ オブ ザ USA(Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA)、第82巻、第488〜492頁(1985)]、DNAポリメラーゼ及びDNAリガーゼを用いたアンバー変異を利用する方法[オリゴヌクレオチド−ダイレクティッド デュアル アンバー(Oligonucleotide-directed Dual Amber、ODA)法、ジーン、第152巻、第271〜275頁(1995)]、制限酵素の認識部位を付加した2種類の変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法(米国特許第5,512,463号)等を利用することができる。
また、市販されているキット、例えば、ギャップド デュプレックス法を用いたミュータン−G[Mutan(登録商標)-G、宝酒造社製]、クンケル法を用いたミュータン−K[Mutan(登録商標)-K、宝酒造社製]、ODA法を用いたミュータン−エキスプレス Km[Mutan(登録商標)-Express Km、宝酒造社製]、変異導入用プライマーとピロコッカス フリオサス(Pyrococcus furiosus)由来DNAポリメラーゼを用いたクイックチェンジ サイト−ダイレクティッド ミュータジェネシス キット[QuikChangeTM Site-directed Mutagenesis Kit、ストラタジーン(STRATAGENE)社製]、PCR法を利用するTaKaRa LA−PCR イン ビトロ ミュータジェネシス キット(TaKaRa LA-PCR in vitro Mutagenesis Kit、宝酒造社製)、ミュータン−スーパー エキスプレス Km[Mutan(登録商標)-Super Express Km、宝酒造社製]等を利用することができる。
こうして得られた遺伝子が、MBP活性を有するタンパク質をコードする遺伝子であるかどうかは、ジャーナル オブ バイオケミストリー、第94巻、第3号、第937〜947頁(1983)又はジャーナル オブ バイオケミストリー、第115巻、第6号、第1148〜1154頁(1994)記載の方法に従い、MBP活性を測定することにより確認することができる。
これらの遺伝子、及び該遺伝子により得られる発現タンパク質も本発明の薬剤として使用することができる。
MBPをコードする遺伝子そのものを用いて、本発明の薬剤をがん細胞に導入する場合、例えばMBPをコードする遺伝子と、これに関係する調節遺伝子を持つ組換えベクターを使用することで、簡単にMBPをコードする遺伝子を導入することができる。調節遺伝子としては、MBPをコードする遺伝子そのもののプロモーター以外にも、もちろん他の有効なプロモーター、例えばワクシニアウイルスA型封入体(ATI)プロモーター、SV40プロモーター、レトロウイルス由来LTRプロモーター、ヒートショックプロモーター、メタロチオネインプロモーター、アクチンプロモーター等を有するベクターを使用することができる。
これらベクターは、細胞中の染色体外にとどまるようなベクターの形で、がんあるいはまだがん化していない細胞に導入することができる。このような状態では、遺伝子は染色体外の位置から細胞によって発現され、MBPを生産し、細胞内のMBP濃度を増加することができ、本発明の目的を達成することができる。
染色体外保持用ベクターは、当該分野において知られており、適切なベクターが用いられる。該ベクターを細胞内に導入する方法としては、例えば、電気穿孔法、リン酸カルシウム共沈法、ウイルス形質導入法などが当該分野において知られており、どのような方法を選択するかは日常的作業の範囲である。
また、MBPをコードする遺伝子を染色体内に組込まれるようなベクターの形で、がんあるいはまだがん化していない細胞に導入することができる。このような状態では、遺伝子は染色体中に保持され、細胞によって発現され、MBPを生産し、細胞内のMBP濃度を増加することができ、本発明の目的を達成することができる。
細胞へのMBP遺伝子導入には、ウイルスベクターを使用することにより、当該遺伝子を含むベクターを効率よく導入することができる。これらのベクターとしては、従来から目的のDNAを細胞に輸送することが知られており、かつ感染効率の高いワクシニアウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターあるいは非増殖性組換えウイルスベクター等を用いることができる。特に、非増殖性組換えウイルスベクターは目的の細胞等に導入後、この組換えウイルスは増殖しないために2週間から2ヶ月ごとに毎回用いる必要はあるが、その際に投与量の調節を行えるという利点もある。また、非ウイルスベクターである、脂質を用いて人工的に作製した球状カプセルのリポソーム、例えば、膜結合リポソームやカチオニックリポソーム等を用いることも可能である。
本発明の薬剤として望ましい組換えウイルスの構築方法としては、例えば次に示すような方法があげられる。ヒトMBPのcDNAを、アーカイブス オブ ビロロジー(Archives of Virology)、第138巻、第315〜330頁(1994)記載の方法で構築したワクシニアウイルスベクターpBSF2−16(図1)のSmaIとSacIサイトに導入し、ATIハイブリッドプロモーター(7.5kDaプロモーターを直列に数個並べたものと、ATIプロモーターを組合せたプロモーター)で制御されるMBPの組換えベクターpBSF2−16/MBP(図2)を作製する。この組換えベクターpBSF2−16/MBPと野生型ワクシニアウイルスDNAをCOS−7細胞に、コトランスフェクトし、生じる組換えワクシニアウイルスを、例えばヘマグルチニン フェノタイプ、あるいはMBPの発現量によって選抜することにより、MBP発現組換えワクシニアウイルスを得ることができる。
制がん効果に関しては、例えばヒトがん細胞をヌードマウスに接種後、本発明の薬剤を投与し、その後のがん組織の増殖能を測定することによって、がん増殖抑制効果を評価することができる。すなわち、ヒト結腸がん細胞株SW1116をKSNヌードマウスの皮下に接種し、その3週間後に先に述べたMBP発現組換えワクシニアウイルスを、腫瘍内投与あるいは非患部の皮下に投与する。その2週間後、更にもう一度MBP発現組換えワクシニアウイルスを同様の方法で投与し、投与後の腫瘍の大きさを測定することによりがん細胞の増殖抑制能を評価することができる。
実施例
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例 1
発現ベクター及び組換えワクシニアウイルスの構築
ヒトMBPのコーディング領域全長を含むcDNAクローンH−3−1[ジャーナル オブ バイオケミストリー、第115巻、第6号、第1148〜1154頁(1994)]を、ワクシニアウイルスベクターpBSF2−16[アーカイブス オブ ビロロジー、第138巻、第315〜330頁(1994)]のATIハイブリッドプロモーター(7.5kDaプロモーターを直列に数個並べたものと、ATIプロモーターを組合せたプロモーター)のすぐ下流、SmaIとSacIサイトにサブクローニングし、ATIハイブリッドプロモーターで制御されるMBP発現プラスミドpBSF2−16/MBPを作製した。
図1にワクシニアウイルスベクターpBSF2−16の制限酵素地図を示す。また、図2にMBP発現プラスミドpBSF2−16/MBPの模式図を示す。
次に、IBT(イサチン−β−チオセミカルバゾン)依存性ワクシニアウイルス株[ビロロジー(Virology)、第155巻、第97〜105頁(1986)]をCOS−7細胞(ATCC CRL1651)に感染させた。このIBT依存性ワクシニアウイルス株を感染させたCOS−7細胞に、pBSF2−16/MBPと野生型ワクシニアウイルスWR株のビリオンから抽出したゲノムDNAを、DOTAP試薬(ベーリンガー マンハイム社製)を用いて導入し、MBP組換えワクシニアウイルスを作製した。
なお、組換えワクシニアウイルスは、アーカイブス オブ ヴィロロジー、第138巻、第315〜330頁(1994)記載の方法に従い、ヘマグルチニン フェノタイプによって選抜し、RK−13細胞(ATCC CCL37)中でELISA法によって検出した。ウイルスのタイターは、プラーク形成法によって測定し、プラーク形成ユニット(PFU)として表した。
実施例 2
制がん効果の評価
イン ビボ(in vivo)での制がん効果の評価は、次のようにして行った。
ヒト結腸がん細胞SW1116株(ATCC CCL233)をKSNヌードマウス(日本エスエルシー株式会社製)の皮下に、マウス1匹当り107個接種し、その3週間後に実施例1で述べたMBP組換えワクシニアウイルスを、マウス1匹当り5×106PFUを患部の腫瘍内、あるいは非患部の皮下に投与した。コントロールとして野生型ワクシニアウイルスWR株を同量、患部の腫瘍内に投与した。
その2週間後、更にもう一度、同量のMBP組換えワクシニアウイルス、あるいは野生型ワクシニアウイルスWR株を同様の方法で投与し、投与後の腫瘍の大きさを測定することにより、がん細胞の増殖抑制能を評価した。
なお、対照として、生理食塩水を非患部の皮下に投与した群を用いた。その結果を図3に示す。すなわち図3は、インビボでの制がん効果評価実験の結果を示す図であり、縦軸は腫瘍の大きさ(mm)を、横軸はがん細胞移植後の週数を示す。図中、黒四角印は生理食塩水を非患部の皮下に投与した群を示し、白丸印は野生型ワクシニアウイルスWR株を患部の腫瘍内に投与した群を示し、黒丸印はMBP組換えワクシニアウイルスを患部の腫瘍内に投与した群を示し、黒三角印はMBP組換えワクシニアウイルスを非患部の皮下に投与した群を示す。また、図中の矢印は、MBPワクシニアウイルス、野生型ワクシニアウイルスWR株及び生理食塩水をそれぞれ投与した週を示す。
図3から明らかなように、本発明のMBP組換えワクシニアウイルスを患部の腫瘍内に投与した場合、腫瘍が明らかに小さくなることが観察され、また、非患部の皮下に投与した場合でも、コントロールの野生型ワクシニアウイルスWR株及び生理食塩水を投与したものと比べると、顕著ながん細胞の増殖抑制が観察された。
発明の効果
本発明によって、がん細胞中、その周辺組織又は非患部組織のMBP濃度を増強させる、すなわちMBP又はその遺伝子を有効成分とすることを特徴とする制がん剤が提供された。該制がん剤は、がんの治療の分野で有用である。
配列表
配列番号:1
配列の長さ:228
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
配列:
Figure 0003990736
配列番号:2
配列の長さ:684
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:cDNA to genomic RNA
配列:
Figure 0003990736

Claims (8)

  1. マンナン結合タンパク質又はその遺伝子を有効成分とすることを特徴とする制がん剤。
  2. マンナン結合タンパク質が、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質である請求の範囲1記載の制がん剤。
  3. 遺伝子が、配列表の配列番号1で表されるアミノ酸配列をコードする遺伝子、又は該遺伝子を含む遺伝子である請求の範囲1記載の制がん剤。
  4. 遺伝子が、配列表の配列番号2で表される遺伝子、又は該遺伝子を含む遺伝子である請求の範囲3記載の制がん剤。
  5. 請求の範囲3または4に記載の遺伝子が、ベクターに組込まれていることを特徴とする請求の範囲1に記載の制がん剤。
  6. ベクターが、プラスミドベクターである請求の範囲5記載の制がん剤。
  7. ベクターが、ウイルスベクターである請求の範囲5記載の制がん剤。
  8. ウイルスベクターが、ワクシニアウイルスベクターである請求の範囲7記載の制がん剤。
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