JP3913171B2 - 新規ヒトキネシン関連遺伝子の核酸、該核酸によってコードされるタンパク質、その部分ペプチド、および該核酸等からなる抗癌剤 - Google Patents

新規ヒトキネシン関連遺伝子の核酸、該核酸によってコードされるタンパク質、その部分ペプチド、および該核酸等からなる抗癌剤 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、新規ヒトキネシン関連遺伝子と、該遺伝子がコードするタンパク質に関する情報、並びにそれらを癌の治療または予後の診断に応用することに関する。
背景技術
ニューロンにおける物質輸送
ニューロンの軸索内では種々の物質が、一定の秩序に従って輸送されており、その速度によって「速い輸送」と「遅い輸送」の2つに分けられる。「速い輸送」には、細胞体から軸索末端へ向かう順行性の輸送と、その反対方向の逆行性輸送とがある。「速い輸送」は、一般の細胞内でも見られる定方向性の運動で、微小管の上を細胞内小器官についた分子モーター(モータータンパク質)が移動することによって生じる。
軸索輸送におけるキネシンの役割
キネシンは細胞内小器官を微小管のプラス端に運び、神経軸索内では速い順行性輸送を行う。キネシン分子は、120kDaの重鎖2個と、64kDaの軽鎖2個とのペプチドからなるヘテロ4量体である。前記重鎖のN末端側は、球状の頭部となって、ATPおよび微小管と結合するモータードメインを構成し、さらにロッド状の体部と、扇状の尾部とからなり、全長は約80nmである(Hirokawa N.ら:Cell 56:867−878,(1989))。前記軽鎖はスプライシングの違いによって、3つの分子種を生じ(Cyr JL.ら:Proc Natl Acad Sci USA 88:10114−10118,(1991))、臓器により差異がある。軽鎖は重鎖尾部につき、重鎖尾部と軽鎖で膜性小器官につく。
キネシン関連遺伝子
最近いくつかのキネシン関連遺伝子が発見され、タンパク質の構造解析が行われた。これらのキネシン関連遺伝子は、モーター部の構造が良く保存されている(Eyer J.ら:Nature 391:584−587,(1998))。現在までにマウスで30種以上のキネシン関連タンパク質が発見されているが、全てモーター部の構造を有し(Gibbons IR.ら:Cell Motll Cytoskel 32:136−144,(1995))、これらはキネシンスーパーファミリーと呼ばれている。最近、キネシンスーパーファミリーの系統樹が発表され(Hirokawa N.ら:Science 279:519−526,(1998))、これらのいくつかが軸索輸送に関与することが分かった。
上記のキネシンスーパーファミリーの研究は、マウスで精力的に進められ、これらはKIFと呼ばれているが(Aizawa H.ら:J Cell Biol ll9:1287−1296,(1992))、モータードメインの位置により、N末端側にあるもの、中央にあるもの、C末端側にあるものと3つに大別されている。
N末端側型のキネシンスーパーファミリー
N末端側型のキネシンスーパーファミリーは、さらに、KHC、Unc104、RP85/95、BimC、MKLP1、クロモキネシンのサブファミリーに分類される。このうちBimCファミリーは、哺乳動物では同定されていない。
KHCファミリーは、マウスで3種(KIF5B、KIF5A、KIF5C)、ヒトで2種(HsuKHC、HsnKHC)同定され、無脊椎動物では1種のみが同定されている。このファミリーは、遍在するもの(KIF5B、HsuKHC)と、神経系特異的なもの(KIF5A、KIF5C、HsnKHC)に分けることができる。HsnKHCは神経細胞体に、HsuKHCは軸索内にも分布する(Niclas J.ら:Neuron 12:1059−1072,(1994))。
Unc104ファミリーは、ヒトでは同定されていないが、マウスではKIF1AとKIF1Bとが知られている。KIF1Aは1695個のアミノ酸、200kDaと大きく単頭で働き、in vitroでは1.2−1.5μm/sで微小管のプラス端側に向かい、シナプス小胞前駆体を運ぶ(Okada Y.ら:Cell 81:769−780,(1995))。また、遺伝子ターゲッティングでマウスは重篤な運動感覚障害を示し、生後間もなく死亡する。
KIF1Bは1150個のアミノ酸からなり、やはり単頭で働き0.5μm/sで微小管のプラス端側に向かい、ミトコンドリアを運ぶ(Nangaku M.ら:Cell 79:1209−1220,(1994))。
RP85/95ファミリーであるマウスKIF3AとマウスKIF3Bは、双頭であるがヘテロダイマーで存在し、KAP3を随伴しヘテロトリマーとなる。これらのキネシン関連タンパク質は、0.3μm/sで微小管のプラス端側に向かい、神経非特異的で、シナプス小胞より大きい膜小胞を運ぶ(Yamazaki H.ら:Proc Natl Acad Sci USA 93:8443−8448,(1996))。
MKLPファミリーは、ヒトでは1種(ヒトMKLP)が知られている。ヒトMKLP1は、後期Bにおける紡錘体の伸長、収縮環の形成、細胞質分裂の完了等の機能をもっている。
クロモキネシンファミリーであるマウスKIF4は、1231個のアミノ酸からなり、116nmと長く双頭である。速度は0.2μm/sであり、成長円錐への膜小胞輸送を行う。成体では免疫系臓器に多い(Shingyoji C.ら:Nature 393:711−714,(1998))。
中央型のキネシンスーパーファミリー
中央型のキネシンスーパーファミリーは、ヒトでは同定されていない。マウスのKIF2は81kDaで双頭になり、0.4μm/sで微小管のプラス端側に向かう。このキネシン関連タンパク質は、神経非特異的であるが、幼若神経系に発現し、成長円錐への膜小胞輸送を行う(Noda Y.ら:J Cell Biol 129:157−167,(1995))。
C末端側型のキネシンスーパーファミリー
C末端側型のキネシンスーパーファミリーもヒトでは同定されていない。マウスでは3種(KIFC1、KIFC2、KIFC3)のキネシンが知られている。KIFC2は末梢神経にはなく、樹状突起に多く存在し、主に樹状突起の末端に向かい多胞小体を運ぶ(Saito N.ら:Neuron 18:425−438(1997))。
新規ヒトキネシン関連遺伝子断片のクローニング
KIAA0591のcDNA(GenBank受理番号:AB011163)は、分子量分画したヒト脳のcDNAライブラリーよりクローニングされた(Nagase T.ら:DNA Res.5:31−39(1998))。
このcDNAは5368個の塩基より構成され、1338個のアミノ酸からなるヒト神経軸索におけるシナプス小胞のトランスポーターの遺伝子と非常に高いホモロジーを有する新規遺伝子の部分断片であった。KIAA0591のcDNAの5’末端には転写開始コドンが存在せず、対応する約9.5kbの転写物に比べて短いため、より長い完全長cDNAの存在が予想されていた。
そこで、本発明者は、KIAA0591を含む完全長のcDNAを得るためにヒト脳黒質のcDNAライブラリーのスクリーニングを行ったが、その完全長のcDNAを明らかするまでには至っておらず、従ってその機能も当然ながら不明であった。
一方、本発明者らはKIAA0591の完全長cDNAを明らかにする過程で、キネシンスーパーファミリーに共通して見られるモータードメインに該当する部分を有さないキネシン関連遺伝子を見出した。この遺伝子の翻訳領域の塩基配列を配列表の配列番号3に、また該領域から翻訳されるタンパク質を配列番号1にそれぞれ示す。
さらに、この遺伝子が、神経芽細胞腫等において頻繁に欠失が認められるヒト1番染色体短腕36.2−36.3に存在していること、8種類の神経芽細胞腫と15種類の神経芽細胞腫由来細胞株で遺伝子をコードする領域内に変異は認められないこと、成人の幅広い組織で発現しており、特に脳、腎臓、骨格筋、膵臓で強発現していること、ヒト胎児では脳で強発現していること等を見出した(Nakagawara A.ら:International Journal of Oncology 16:907−916(2000))。
しかしながら、上記モータードメインを有さないキネシン関連遺伝子およびそのタンパク質については、その機能が不明のままであった。
足場非依存的増殖と癌
ところで、正常な接着細胞は増殖のために足場にしっかりと接着する必要がある。接着できない物質の表面で培養すると、細胞は長期間生きてはいるが、増殖はしない。例えば、正常細胞をアガロースゲルのような足場のない半固形培地に懸濁すると、生命の維持に必要な代謝等は行うが増殖は抑制される。一方、癌細胞のように悪性形質転換した細胞は、一般に接着に対する要求を失っており、足場のない半固形培地に懸濁しても、コロニーを形成し増殖することができる。この特徴は、悪性形質転換した細胞が腫瘍を形成する能力と非常に関連深い。すなわち、足場非依存的に増殖する細胞を、動物に接種すると効率良く腫瘍を形成する。Darnellら:MOLECULAR CELL BIOLOGY Second Edition 24:963−967(1993)を参照。
細胞接着と癌の浸潤・転移
癌が悪性腫瘍たる所以は浸潤、転移にある。現在までその機序の解明を目指して精力的な研究がなされてきたが、浸潤、転移は癌細胞と宿主細胞との相克の結果として生じる複雑な現象で、その全貌は未だ不明である。血行性転移は、原発巣からの癌細胞の浸潤、血管内侵入、運搬、定着、血管外脱出、初期増殖を経て成立する。リンパ行性転移、播種性転移、管内性転移も類似した過程を経るものと考えられる。これらの過程の随所で癌細胞と癌細胞、癌細胞と正常細胞、癌細胞と細胞外基質との接着と解離が起こる。
癌細胞間の接着の低下は多くの癌に見られ浸潤、転移能との関連が注目されている。また癌細胞は転移成立過程で多種多様な正常細胞と接するが、内皮細胞との接着は、癌細胞が内皮細胞に被包されるもの、内皮細胞頂面に接着するもの、内皮細胞基底面に覆われるものがあり、癌細胞の血管内侵入や、血管外脱出と深く関連している。癌細胞と細胞外基質との接着も同様に、随所で観察される。また癌細胞が正常細胞に接着後、細胞融合を起こし、正常細胞を死滅させると考えられる所見も観察されている(鶴尾 隆ら:癌転移の分子機構 メジカルビュー社(1993))。
以上のように、本発明者らが先に、発見したモータードメインを有さない新規キネシン関連遺伝子およびそれがコードするタンパク質の機能は、不明のままであった。また、KIAA0591を含む完全長のcDNAは、その存在が予想されていたにもかかわらず、未だ確認、同定されていなかった。
発明の開示
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、モータードメインを有する新規ヒトキネシン関連遺伝子に関する塩基配列情報を提供することを目的とする。さらに、本発明は、前記モータードメインを有する新規ヒトキネシン関連遺伝子、およびモータードメインを有さないキネシン関連遺伝子がコードするタンパク質の機能に関する情報を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意研究した結果、モータードメインを有さないキネシン関連遺伝子(配列番号3)よりも5’末端がさらに長い、新規遺伝子をRapid Amplification of cDNA Ends(RACE)法によりクローニングし、このモータードメインを有するキネシン関連遺伝子の完全長cDNAのシークエンシングに成功した。ここで便宜上、このモータードメインを有する新規キネシン関連遺伝子をKIF1b−βと名付け、そのcDNA配列(塩基配列)を配列表の配列番号4に示す。
さらに、本発明者らは、KIF1b−β遺伝子が神経芽細胞腫の予後良好な臨床組織でのみ発現が増強していることを見出した。
また、さらにKIF1b−β遺伝子、およびモータードメインを有さないキネシン関連遺伝子の発現をアンチセンスRNAで抑制すると、本来足場依存的にのみ増殖する正常細胞が足場非依存的に増殖すること、すなわちこれら遺伝子が正常細胞の癌化を制御する機能を有することを見出した。
さらに本発明者は、KIF1b−β遺伝子、およびモータードメインを有さない新規キネシン関連遺伝子の発現をアンチセンスRNAで抑制すると、正常細胞が腫瘍形成することも見出した。従って、これらの遺伝子が欠失すると、正常細胞が腫瘍化し易くなる。
すなわち、本発明は、以下の1〜12記載の核酸、およびタンパク質またはその薬学的に許容できる塩を提供する。さらに、本発明は、以下の13〜17に記載の核酸、およびタンパク質またはその薬学的に許容できる塩の治療上または診断用上の用途を提供する。
1.配列表の配列番号4に記載の塩基配列を有する核酸。
2.配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列を有する核酸。
3.上記1または2に記載の核酸の断片である核酸。
4.上記1〜3のいずれか1つに記載の核酸にハイブリダイズしうる核酸。
5.配列表の配列番号7に記載の塩基配列を有する核酸。
6.上記1または2に記載の核酸に対するアンチセンス核酸。
7.正常細胞に導入することにより、正常細胞を足場非依存的に増殖させることを特徴とする、配列表の配列番号7に記載の塩基配列を有するアンチセンス核酸。
8.配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質、またはその薬学的に許容できる塩。
9.配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列に実質的に同一のアミノ酸配列を有し、且つその欠失が正常細胞の腫瘍化を誘起する活性を有するタンパク質、またはその薬学的に許容できる塩。
10.前記配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列に実質的に同一のアミノ酸配列が、配列番号2に記載のアミノ酸配列における一若しくは複数のアミノ酸を置換、欠失、または付加してなるアミノ酸配列であることを特徴とする、上記9に記載のタンパク質、またはその薬学的に許容できる塩。
11.配列番号1に記載のアミノ酸配列における一若しくは複数のアミノ酸を置換、欠失、または付加してなるアミノ酸配列を有し、且つその欠失が正常細胞の腫瘍化を誘起する活性を有するタンパク質、またはその薬学的に許容できる塩。
12.配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質の機能的に有効な断片である部分ペプチド、またはその薬学的に許容できる塩。
13.配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質、またはその薬学的に許容できる塩を含む抗癌剤。
14.配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質、またはその薬学的に許容できる塩を含む抗癌剤。
15.配列表の配列番号3に記載の塩基配列を有する核酸を含む抗癌剤。
16.配列表の配列番号4に記載の塩基配列を有する核酸を含む抗癌剤。
17.上記1に記載の核酸またはその断片をヒト神経芽細胞腫の臨床組織サンプルから検出することを特徴とする、ヒト神経芽細胞腫の予後の診断方法。
18.以下の(a)または(b)の核酸を含む核酸プローブ:
(a)配列表の配列番号4に示す塩基配列の一部、またはそれと相補的な塩基配列を有する核酸;
(b)配列表の配列番号4に示す塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸。
19.以下の(a)または(b)のDNAを含むプライマー:
(a)配列表の配列番号4に示す塩基配列の一部、またはそれと相補的な塩基配列を有するDNA;
(b)配列表の配列番号4に示す塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
20.上記18に記載のプローブまたは上記19に記載のプライマーを有効成分とする神経芽細胞腫の予後診断用キット。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の構成および好ましい実施の形態について、詳しく説明する。
本明細書で用いる、「配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質」とは、配列番号3に記載の核酸がコードするタンパク質のみならず、それと実質的に同等の活性を有するタンパク質をも意味する場合がある。前記実質的に同等の活性を有するタンパク質は、配列番号1に記載のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有するものである。後者のアミノ酸配列は、例えば配列番号1に記載のアミノ酸配列において一若しくは複数のアミノ酸を置換、欠失、または付加してなるアミノ酸配列である。「配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質」も、全く同様の定義を有し、配列番号4に記載の塩基配列を有する核酸がコードするタンパク質のみならず、それと実質的に同等の活性を有するタンパク質をも意味する場合がある。
また、本明細書で用いる、「配列番号3に記載の塩基配列を有する核酸」とは、配列番号3に記載の核酸がコードするタンパク質と実質的に同等の活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を有する核酸をも意味する場合がある。「配列番号4に記載の塩基配列を有する核酸」も、全く同様の定義を有し、配列番号4に記載の核酸がコードするタンパク質と実質的に同等の活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を有する核酸をも意味する場合がある。これら核酸およびタンパク質の変異体は、部位特異的突然変異等の当業者に公知の手法で、前記核酸の塩基配列情報に基づき、調製することができる。
本明細書で用いる「核酸」とは、上記で定義したタンパク質または該タンパク質の機能的に有効な断片である部分ペプチドをコードするか、或いはそのようなタンパク質または部分ペプチドをコードする核酸に相補的であるか、さらにそのような核酸に「ストリンジェント」な条件下、ハイブリダイズするDNAまたはRNAを意味する。
本発明の核酸は、予後良好および予後不良な神経芽細胞腫の発現量の比較において、予後良好な神経芽細胞腫に多く発現されている。また、該核酸に対するアンチセンス(核酸)(後述)を正常細胞に導入することにより、その正常細胞は足場非依存性成長(anchorage independent growth)し、また腫瘍形成性の増加をもたらす。これらの理由から、本発明の核酸は、少なくとも、生体の正常性を維持する(例えば、細胞の癌化を抑制して)機能を有するものと考えられる。
従って、本発明の核酸(その断片を含む)、該核酸がコードするタンパク質またはその部分ペプチド(あわせて、本発明のタンパク質という場合もある)、および該核酸に対するアンチセンスは、以下に示すように様々な疾患(特に悪性腫瘍)の診断、治療、予防において用いられることが可能である。
(1)診断上の有用性
本発明の核酸、タンパク質、部分ペプチド、並びに前記タンパク質および部分ペプチドに対する抗体は、診断上の有用性を備える。
すなわち、これらの分子は、種々の検定法により本発明のタンパク質、または部分ペプチドの発現量の増減が影響を与えるような疾患(例えば、神経芽細胞腫)、障害を検出したり、その予後を予測、診断、監視したりする際に使用することが可能である。
本発明のタンパク質、または部分ペプチドに対する抗体を用いる免疫検定法としては、特に限定はされないが、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA、「サンドウィッチ」免疫検定法、免疫沈降検定法、沈降素反応、ゲル拡散沈降素反応、免疫拡散検定法、凝集検定法、補体結合検定法、免疫放射線検定法、蛍光免疫検定法、プロテインA免疫検定法をはじめとする種々の技法を使用した競合的、非競合的な検定法が挙げられる。
また、本発明の核酸を診断に用いる場合は、ハイブリダイゼーションのプローブ、またはPCRのプライマーとして使用し、試料細胞中の遺伝子発現の増強の有無を調べることにより、予後同定が可能である。遺伝子発現の増強の有無を調べるには、例えば、本発明により開示された塩基配列の任意の配列とハイブリダイズし得る塩基配列をプローブとして使用する全て方法が考慮される。好ましくは、放射性同位元素等で標識されたプローブをサザン、またはノーザンブロッティングに用い、検定する。試料細胞中でプローブとハイブリダイズする核酸の量が増強する場合、予後が良好であると診断することが可能である。またPCRのプライマーとして使用する場合は、例えば、検定したい試料(細胞)からRNAを抽出し、RT−PCR法により遺伝子発現を半定量的に測定することが可能である。
(2)治療上の有用性
本発明の核酸、タンパク質、および部分ペプチドは、これらのうちのいずれかが関与している疾患、障害に対して治療剤としての有用性を備える。
本発明の一つの実施の形態では、本発明のタンパク質または部分ペプチドの発現量が減少している疾患(特に悪性腫瘍)、障害に対して該タンパク質または部分ペプチドを含む医薬組成物を投与する。または、本発明の核酸の一部又は全部を含む医薬組成物を投与してもよい。
別の実施の形態では、本発明のタンパク質または部分ペプチドの発現量が増加している疾患、障害に対して、アンチセンス、中和抗体、または前記タンパク質またはペプチドに対する競合的阻害剤等を含む医薬組成物を投与し、タンパク質またはペプチドの発現量の抑制、或いは機能阻害を行うことが可能となる。
特に、前記の目的で本発明の核酸を遺伝子治療に用いる場合は、該核酸を遺伝子運搬に使用されるベクターに導入して、任意の発現プロモーターにより導入遺伝子を患者の体内で発現させ、例えば癌の治療を行うことができる。
前記核酸が導入されうるベクターは、好ましくは、DNAまたはRNAウイルスをもとに作製できる。このようなウイルスベクターの種類は特に限定されないが、MoMLVベクター、ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルスベクター、AAVベクター、HIVベクター、SIVベクター、センダイウイルスベクター等が用いられる。
また、ウイルスベクターの構成タンパク質群のうち1つ以上を、異種ウイルスの構成タンパク質で置換する、或いは遺伝子情報を構成する核酸配列のうち一部を異種ウイルスの核酸配列で置換する、シュードタイプ型のウイルスベクターも使用できる。例えば、HIVの外皮タンパク質であるEnvタンパク質を、小水痘性口内炎ウイルス(Vesicular stomatitis Virus:VSV)の外皮タンパク質であるVSV−Gタンパク質に置換したシュードタイプウイルスベクターが挙げられる(Naldini Lら:Science272 263−267(1996))。
さらに、治療効果を持つウイルスであれば、ヒト以外の宿主域を持つウイルスもウイルスベクターとして使用可能である。ウイルス由来でないベクターとしては、リン酸カルシウムと核酸の複合体、リポソーム、カチオン脂質複合体、センダイウイルスリポソーム、ポリカチオンを主鎖とする高分子キャリアー等が使用可能である。さらに、遺伝子導入系としてはエレクトロポレーション、遺伝子銃等も使用可能である。
前記のようなベクターに本発明の核酸を導入して、遺伝子発現させるのに、発現プロモーターを備えた発現カセットを用いるのが好ましい。
発現カセットは、標的細胞内で遺伝子を発現させることができるものであれば、特に制限されることなく、いかなるものでも用いることができる。当業者はそのような発現カセットを容易に選択することができるが、好ましくは、動物由来の細胞内で遺伝子発現が可能な発現カセットであり、より好ましくは、哺乳類由来の細胞内で遺伝子発現が可能な発現カセットであり、特に好ましくは、ヒト由来の細胞内で遺伝子発現が可能な発現カセットが選択される。
前記発現カセットには、本発明の核酸の他、遺伝子を転写するためのプロモーターやエンハンサー、ポリAシグナル、遺伝子が導入された細胞の標識および/または選別のためのマーカー遺伝子、細胞のゲノムDNA配列内に効率よく該遺伝子を挿入するためのウイルス由来の遺伝子配列、遺伝子発現により産生される薬物として作用する物質を細胞外に分泌および/細胞内の局所に滞留させるためのシグナル配列等、いかなる配列でも用いることが可能である。
発現カセットに用いられるプロモーターとしては、例えばアデノウイルス、サイトメガロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、シミアンウイルス40、ラウス肉腫ウイルス、単純ヘルペスウイルス、マウス白血病ウイルス、シンビスウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、パピローマウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、JCウイルス、パルボウイルスB19、ポリオウイルス等のウイルス由来のプロモーター、アルブミン、SRα、熱ショック蛋白、エロンゲーション因子等の哺乳類由来のプロモーター、CAGプロモーター等のキメラ型プロモーター、テトラサイクリン、ステロイド等によって発現が誘導されるプロモーター等が挙げられる。
(3)医薬組成物
本発明の核酸、タンパク質、および部分ペプチドは、適当な医薬組成物として治療に供される。このため、該核酸等を下記の調剤方法に従い、製剤化し、好ましい投与経路を設定して、望ましい治療効果を達成するように投与量を決定する。
(調剤法)
本発明の核酸、タンパク質、またはペプチドを含む医薬組成物は、特に限定はされないが、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル内への被包、組換え細胞による発現、レセプター媒介飲食法、レトロウイルスまたは他のベクターの部分としての医薬品への構築が可能である。
より具体的には、本発明の核酸を含む組換えウイルスベクターを、水、生理食塩水、等張化した緩衝液等の適当な溶媒に溶解することで本発明の核酸を含む組成物を調製できる。また、本発明のタンパク質または部分ペプチドを水、生理食塩水、等張化した緩衝液等の適当な溶媒に溶解することで本発明のタンパク質または部分ペプチドを含む組成物を調製できる。その際、ポリエチレングリコール、グルコース、各種アミノ酸、コラーゲン、アルブミン等を保護材として添加して、調製してもよい。
本発明に係る医薬組成物は、中和形態または薬学的に許容できる塩として塩形態で製剤化されてもよい。薬学的に許容される塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等から誘導されるもののようにタンパク質、またはヘプチドの遊離のアミノ基と形成されるもの、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等から誘導されるもののようにタンパク質、またはヘプチドの遊離のカルボキシル基と形成されるものが含まれる。
(投与法、投与量)
本発明に係る医薬組成物を生体へ投与するとき、その投与方法については、特に制限はない。例えば、皮膚内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内へ注射投与することにより好ましく実施できる。本発明の医薬組成物の投与量は、投与経路、投与を受ける患者の状態、年齢、体重、性別、その他により異なるが、処置する医者は、該患者に最適な投与量を決定することが可能である。例えば、注射投与する場合には、1日量約0.1μg/kg〜1000mg/kgを投与するのが好ましく、より好ましくは、1日量約1μg/kg〜100mg/kgである。
(4)対象疾患、障害
本発明の核酸、タンパク質、および部分ペプチドが医薬品として治療に使用可能な対象疾患、障害としては、該核酸等の機能が直接、間接的に関与しているものであれば特に限定されない。前述のように、本発明の核酸に対するアンチセンスを正常細胞に導入することにより、その正常細胞は足場非依存性成長(anchorage Independent growth)をし、また腫瘍形成性の増加がみられる。従って、本発明の核酸、タンパク質、および部分ペプチドが、正常細胞の癌化を抑制するのは明らかであり、これらは特に悪性腫瘍に対して有用である。
本発明の核酸等によって治療の対象とされる悪性腫瘍としては、特に限定されないが、急性白血病、慢性白血病、リンパ腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、肝細胞癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ビルムス腫瘍、胆管癌、精巣癌、子宮頸癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、膠腫、髄芽細胞腫、上皮細胞腫、血管芽細胞腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、軟骨肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、結腸癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、偏平上皮癌、腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、腎細胞癌等が挙げられる。また、本発明の核酸等を悪性腫瘍の治療に用いる場合は、それらが有する機能のために悪性腫瘍の転移を抑制する医薬品としても使用可能である。
(5)アンチセンス(核酸)
本発明の別の実施の形態に従えば、本発明により開示される遺伝子(本発明の核酸を含む)の発現を抑制するアンチセンス核酸を使用して、治療上および予防上の効果が達成される。ここで、「アンチセンス核酸」とは、配列のある程度の相補性により、本発明に係る遺伝子のRNA(好ましくはmRNA)の一部とハイブリダイズしうる核酸をいう。
アンチセンス核酸は、二本鎖、一本鎖、RNA、あるいはDNA(該RNAをコードする)であるオリゴヌクレオチドか、またはそれらのキメラ混合物かいずれの形態でも使用可能である。また、アンチセンス核酸は、特に限定はされないが、好ましくは5〜500、さらに好ましくは200〜500塩基の範囲のオリゴヌクレオチドからなる。このようなオリゴヌクレオチドは、その塩基部分、糖部分、リン酸骨格のいずれの部分が修飾されていてもよい。
また、具体的な一形態として、アンチセンス核酸は触媒RNA、リボザイム、あるいはキメラRNA−DNA類似体としても使用可能である。
アンチセンス核酸は、当業者に公知の方法で、例えば、自動DNA合成装置を使用することにより合成することが可能である。
アンチセンス核酸を治療または、予防目的で使用するとき、前述のように他の核酸と同様に、医薬組成物として、患者に投与できるが、特に好ましくは、特定の細胞(例えば、癌細胞)に直接投与することもできる。さらに、アンチセンス核酸であるRNAをコードするDNAを含むベクターで細胞を形質転換、またはトランスフェクションして、転写により該アンチセンス核酸を細胞内で生成させることもできる。
(6)抗体
本発明のさらに別の実施の形態に従えば、本発明のタンパク質または部分ペプチドに対する抗体、或いはその結合ドメインを有する断片を治療薬または診断薬として用いることも可能である。すなわち、前者(治療薬)の用途では、抗体が本発明のタンパク質の特定の領域に結合することによって、アンタゴニストまたはアゴニストとして作用することが可能である。後者(診断薬)の用途では、前述のように、抗体が本発明のタンパク質等を検出、測定する様々な免疫検定法に使用可能である。
前記抗体は、当業者に公知の手法に従い、本発明のタンパク質、部分ペプチド、それらの断片、類似体または誘導体を免疫原として作製することができる。このような抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、Fab断片、またはFab発現ライブラリー由来の抗体が挙げられる。
(7)ノックアウト動物
本発明のさらに別の実施の形態に従えば、本発明に係る遺伝子の発現をノックアウトする核酸配列、および該配列をトランスジーンとして導入したノックアウト動物が提供される。さらに、これらの情報に基づいて、例えば癌のモデル動物作製が可能である。
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
実施例
(実施例1) 完全長cDNAのクローニング
モータードメインを有さないキネシン関連タンパク質のアミノ酸配列(配列番号1)をもとに5’末端をSMART RACE cDNA Amplification Kit(CLONTECH社製)を用いて、ヒト胎児脳のライブラリー(CLONTECH社製)によりクローニングした。一般的手法(Sanger F.ら:Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463−5467(1977))を用いて、クローニングしたDNA断片の塩基配列を決定した。塩基配列は全て両鎖とも解析した。
解析した結果、従来知られていたモータードメインを有さないキネシン関連タンパク質の5’末端からさらに1390塩基対を有するDNA断片が得られたことが分かった。この断片の翻訳領域の検索を行ったところ、85塩基対の5’側非翻訳領域、5472塩基対の翻訳領域、1353塩基対の3’側非翻訳領域が判明した。翻訳されるタンパク質は1824アミノ酸であり、その分子量は205,065ダルトンであった。翻訳されるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号2に、翻訳領域の塩基配列を配列番号4にそれぞれ示す。この新規キネシン関連タンパク質をKIF1b−βと名付けた。なお、配列番号4に記載の塩基配列をDDBJ、GenBank、EMBLに登録した(受理番号:AB017133)。
(実施例2) 半定量的PCRによる予後良好・不良ヒト神経芽細胞腫での遺伝子発現量の測定
KIF1b−β遺伝子の一部から、PCRプライマーを合成し、ヒト神経芽細胞腫の予後良好・不良の臨床組織サンプルで発現量を比較定量した。合成したPCRプライマーの配列を、配列番号5(順方向プライマー)および配列番号6(逆方向プライマー)に、それぞれ示す。ヒト神経芽細胞腫の臨床組織サンプルよりmRNAを抽出し、rTaq(宝酒造社製)を用いてPCR反応を行った。すなわち、5μlの滅菌蒸留水、2μlのmRNA、1μlの10xrTaqバッファー、1μlの2mM dNTPs、各々0.5μlの合成プライマーセット、0.5μlのrTaqを混合した。この混合液を95℃で2分間変性させた後、95℃、15秒間・63℃、15秒間・72℃、20秒間を1サイクルとして35サイクル繰り返し、さらに72℃で6分間放置しPCR反応を行った。この反応液を2.5%のアガロースゲルで電気泳動した。結果を図1Aおよび図1Bに示す。
図1の結果から、KIF1b−β遺伝子は予後良好ヒト神経芽細胞腫でのみ発現量が増強することが確認された。
(実施例3) Genetic Suppressor Element(GSE)法によるKIF1b−β遺伝子、およびモータードメインを有さないキネシン関連遺伝子が腫瘍増殖へ与える影響の検討(その1)
「GSE」とは、ドミナントに作用するペプチド、または阻害性アンチセンスRNAをコードする短い生物活性遺伝子断片を指す。このGSEを分子腫瘍学のツールに用いる方法をGSE法と呼ぶが、その概念、戦略等は、例えば、Roninson IBら、Cancer Res.55:4023−4028(1995)の総説に解説されている。すなわち、GSE法は任意の遺伝子の腫瘍増殖に関する機能解析を行うのに応用できる。手法としては、レトロウイルスベクターおよびパッケージング細胞によって受容細胞に遺伝子導入し、腫瘍形成の有無を判定する。この手法の一連の流れを概略的に示したものが図2である。さらに詳しくは、解析したい遺伝子に対するアンチセンスを受容細胞に導入すると、該細胞中ではその遺伝子の機能が抑制される。その結果、アンチセンスを導入した細胞が、足場非依存的増殖などの腫瘍形成能を獲得した場合は、その遺伝子の本来の機能は腫瘍形成を負に制御していると判断できるのである。
そこで、Garkavtsevらの方法(Garkavtsev I.ら、Nature Genet.4,415−420(1996))に準じて、KIF1b−β遺伝子(KIF1b−β)、およびモータードメインを有さないキネシン関連遺伝子のアンチセンス(KIFASとも呼ぶ)を発現するレトロウイルスベクターを作製し、マウス乳腺細胞にトランスフェクトした。使用したアンチセンスの配列を配列番号7に示す。このアンチセンスを合成アダプターと連結し、該アダプターのセンス鎖をPCRプライマーとして、PCRによって増幅した。PCR増幅したDNAをレトロウイルスベクターpLXSNにクローニングし、得られたプラスミドライブラリーをBOSC23ウイルス・パッケージング細胞株にトランスフェクトした。このレトロウイルス含有培養上澄み液でマウス乳腺細胞(非腫瘍化、不死化マウス乳腺細胞:NMuMG)を感染させた。感染されたマウス乳腺細胞を軟寒天培地(ソフトアガロースゲル)上で培養し、足場非依存性増殖の有無を観察した。また、対照(陰性)として、同様にネオマイシン耐性遺伝子を導入したマウス乳腺細胞を用いた。使用した軟寒天培地は、下層(DMEM、10%FCS、0.6%寒天)と上層(DMEM、10%FCS、0.3%寒天)からなり、5x10個の細胞を軟寒天培地(10cmプレート)に植菌し、37℃で6〜7週間放置した。観察結果を図3A(KIFAS導入細胞)および図3B(陰性対照)に示す。
図3A、3Bの結果から、KIFASを形質導入したマウス乳腺細胞では、陰性対照に比べ足場非依存性増殖が顕著に観察された。
上記と同様に、KIF1b−β遺伝子の全長cDNA(配列番号4)をアデノウイルスベクターに導入し、NMuMG乳がん細胞に感染させた。細胞を培地中で増殖し、その増殖曲線を求めた。これを図4に示す。対照として、LacZのみを含むベクターで感染させたNMuMG乳がん細胞を用いた。図中、「MOI」は、細胞1個あたりに感染するウイルス数を表す。
さらに、KIF1b−β遺伝子の全長cDNAをアデノウイルスベクターに導入し、NB−C201細胞(ホモ接合部欠失、すなわちKIF1b−β遺伝子欠損神経芽腫細胞株)に感染させた。細胞を培地中で増殖し、その増殖曲線を求めた。これを図5に示す。
図4および図5共に、KIF1b−β遺伝子の導入によって、がん細胞の増殖が抑制されることを示している。
(実施例4) GSE法によるKIF1b−β遺伝子、およびモータードメインを有さないキネシン関連遺伝子が腫瘍増殖へ与える影響の検討(その2)
実施例3に記載した手法と同様な手法を用いて、KIFASを発現するレトロウイルスベクターで感染させたマウス乳腺細胞をヌードマウスの大腿部の皮下に移植し、腫瘍形成の有無を確認した。対照(陰性)として、実施例3と同様に、ネオマイシン耐性遺伝子を導入したマウス乳腺細胞を用い、これをヌードマウスの皮下に移植した。結果を図6A(KIFAS導入)および図6B(陰性対照)に示す。
図6Aおよび図6Bの結果から、KIFASを導入したマウス乳腺細胞は、ヌードマウスの大腿部の皮下に移植すると、陰性対照群に比べ腫瘍形成が顕著に観察された。
さらに、処置群と対照群それぞれ5匹づつのヌードマウスにKIFASを形質導入したマウス乳腺細胞およびネオマイシン耐性遺伝子を導入したマウス乳腺細胞を移植し、形成された腫瘍の大きさの経時変化を調べた。その結果を図7に示す。図から、明らかに処置群では、移植後5週間で腫瘍の増大が観察された。
産業上の利用可能性
本発明の核酸は、モータードメインを有する新規キネシン関連遺伝子のDNAまたはRNAであり、キネシン関連遺伝子の塩基配列情報を明らかにする。
本発明の核酸またはその断片は、プローブ或いはプライマーとして、各種ハイブリダイゼーションまたはPCR法に使用でき、キネシン関連遺伝子の組織、細胞での発現の検出やその構造および機能の解析が可能となる。また、該遺伝子がコードするキネシンタンパク質の遺伝子工学的製造を可能とする。
さらに、本発明の核酸は、神経芽細胞腫の予後良好な臨床組織でのみ発現が増強しており、従って、その発現のレベルから神経芽細胞腫の予後の診断が可能となる。
また、本発明のアンチセンス核酸でKIF1b−β遺伝子、およびモータードメインを有さないキネシン関連遺伝子の発現を抑制すると、本来足場依存的にのみ増殖する正常細胞が足場非依存的に増殖することが確認された。すなわち、前記遺伝子が正常細胞の癌化を制御する機能を有することが分かった。また、KIF1b−β遺伝子を癌細胞に導入すると、癌細胞の増殖が抑制されることも見出された。これらの知見に基づき、本発明の核酸、タンパク質等を細胞の癌化を制御する目的で、抗癌剤として、悪性腫瘍の治療に用いることが可能となる。
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
図1A、図1Bともに、予後良好・不良ヒト神経芽細胞腫におけるKIF1b−β遺伝子発現量を半定量的RT−PCRで調べた結果を示す電気泳動写真に相当する図である。図中、レーン1〜16は、予後良好なヒト神経芽細胞腫の臨床組織サンプルを表わす。一方、レーン17〜32は、予後不良なヒト神経芽細胞腫の臨床組織サンプルを表わす。
図2は、実施例で使用したGSE法の概略を示す概念図である。
図3Aは、レトロウイルスベクターを用いて、KIF1b−β遺伝子、およびモータードメインを有さないキネシン関連遺伝子のアンチセンス(KIFAS)を導入したマウス乳腺細胞の足場非依存的増殖の結果、増殖が認められたソフトアガロースゲルの写真に相当する図である。
図3Bは、レトロウイルスベクターを用いて、陰性対照であるネオマイシン耐性遺伝子を導入したマウス乳腺細胞の足場非依存的増殖の結果を示すソフトアガロースゲルの写真に相当する図である。
図4は、アデノウイルスベクターを用いて、KIF1b−β遺伝子を導入したNMuMGがん細胞の増殖曲線を表す図である。
図5は、アデノウイルスベクターを用いて、KIF1b−β遺伝子を導入したNB−C201細胞の増殖曲線を表す図である。
図6Aは、レトロウイルスベクターを用いて、KIFASを導入したマウス乳腺細胞をヌードマウス大腿部の皮下に移植した結果、腫瘍形成が認められた写真に相当する図である。
図6Bは、陰性対照である、ネオマイシン耐性遺伝子を導入したマウス乳腺細胞をヌードマウス大腿部の皮下に移植した結果を示す写真に相当する図である。
図7は、図6Aで示したマウスの腫瘍形成について、腫瘍の大きさ(腫瘍体積)を時間に対してプロットした図である。

Claims (5)

  1. 配列表の配列番号4に記載の塩基配列を有する核酸。
  2. 配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列を有する核酸。
  3. 配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質、またはその薬学的に許容できる塩。
  4. 配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質、またはその薬学的に許容できる塩を含む抗癌剤。
  5. 配列表の配列番号4に記載の塩基配列を有する核酸を含む抗癌剤。
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