JP2008271784A - 新規薬剤デリバリー系 - Google Patents

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Abstract

【課題】 物質の移行性に対するバリア機構を抑制し、体の至る所において非侵襲的、非観血的に薬剤を体内へ移行させることのできる薬剤デリバリー系を開発する
【解決手段】 トリセルリン遺伝子の発現またはトリセルリン蛋白の機能を抑制する因子、該因子を用いる薬剤デリバリー系、該因子を含む医薬組成物、およびトリセルリン遺伝子をノックアウトしたヒト以外の動物。
【選択図】なし

Description

本発明は、トリセルリン遺伝子の発現またはトリセルリン蛋白の作用を抑制する因子、それを用いた薬剤デリバリー系、医薬組成物等に関する。
脳、網膜、精巣、胎盤など体の各部においては、血管からの物質の移行が著しく制限されている。特に、血液中から脳への薬剤移行性の低さ(脳血管関門)は、中枢神経系疾患に対する薬物の選択肢、ひいては治療の手段を大きく制限している。このような薬剤移行性の低さは、タイトジャンクション(tight junction)と呼ばれる特別なバリア機構によるものである。タイトジャンクションは細胞間を通る物質の移動を防止する機構であり、特殊な接着分子を構成成分としている。このような接着分子として、オクルディン(occuludin)やクローディン(claudin)が研究されている。本発明者らは、タイトジャンクションを構成する蛋白のうち、クローディン(claudin)に関して研究を行い(非特許文献1参照)、クローディン−5のノックアウトマウスにおいては、脳血管関門の透過性が分子量800以下の化合物に限られて上昇していることが明かとなった(非特許文献2参照)。
しかし、このような物質の移行性に対するバリア機構は血管においてのみ機能しているわけでなく、血中に至る以前にも消化管、皮膚など体の至る所において厳密に機能している。このため、経皮、経粘膜的に非侵襲的、非観血的に薬剤を体内へ移行させる方法が長らく求められてきた。脳血管の場合と同様に、皮膚や粘膜に対してクローディンの機能を阻害することが1つの可能性として考えられるが、タイトジャンクションを形成するクローディンには24種類の遺伝子が存在することが知られており、さらに一般に多くの組織の上皮細胞では、同時に複数の種類のクローディンがタイトジャンクションを形成している。それらの多くには機能的冗長性が認められるため、各組織においてタイトジャンクションを一時的に破壊して薬剤の移行性を高めるには、同時に複数のクローディンの機能を阻害する必要があるが、そのような方法は現時点において困難である。
Tsukitaら、Nature Review Molecular Cell Biology、第2巻、第4号、2001年4月、285−293ページ Nittaら、The Journal of Cell Biology、第161巻、第3号、2003年5月、653−660ページ
本発明の解決課題は、物質の移行性に対するバリア機構を抑制し、体の至る所において非侵襲的、非観血的に薬剤を体内へ移行させることのできる薬剤デリバリー系を開発することであった。
上記事情に鑑みて、本発明者らは鋭意研究を重ね、3つの細胞が向かい合うトリセルラージャンクション(tricellular junction)に局在するトリセルリン(tricellulin)という新規分子を同定した。そして、トリセルリン遺伝子またはトリセルリン蛋白の機能を抑制する因子を用いることにより、効率よく薬剤を体内に取り込ませることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)トリセルリン遺伝子の発現またはトリセルリン蛋白の機能を抑制する因子;
(2)siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗体、阻害ペプチド、ドミナントネガティブ変異体からなる群より選択される(1)記載の因子;
(3)配列番号:7または8に示すヌクレオチド配列を有するsiRNA、あるいはそれと同等の機能を有する相同体RNAである(1)記載の因子;
(4)トリセルリンDNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドである(1)記載の因子;
(5)トリセルリン蛋白に対する抗体である(1)記載の因子;
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の因子を用いることを特徴とする薬剤デリバリー系;
(7)(1)〜(5)のいずれかに記載の因子および薬剤を含む医薬組成物;
(8)経皮剤形または経粘膜剤形である(7)記載の医薬組成物;
(9)点眼剤である(7)記載の医薬組成物;
(10)トリセルリン遺伝子またはトリセルリン蛋白がヒト由来である(1)〜(5)のいずれかに記載の因子。
(11)トリセルリン遺伝子をノックアウトしたヒト以外の動物
を提供するものである。
本発明によれば、効率よく薬剤を体内に取り込ませることができ、特に、経皮、経粘膜的に非侵襲的、非観血的に多くの薬剤を体内へ移行させることができる。
本発明の標的分子はトリセルリン遺伝子またはトリセルリン蛋白である。したがって、本発明は、1の態様において、トリセルリン遺伝子またはトリセルリン蛋白の機能を抑制する因子に関するものである。すなわち、トリセルリン遺伝子またはトリセルリン蛋白の機能を抑制することによって、トリセルラージャンクションおよびタイトジャンクションを通る物質の透過性を増加させ、効率よく薬剤を体内に取り込ませることができ、特に、経皮、経粘膜的に非侵襲的、非観血的に多くの薬剤を体内へ移行させることができる。
上述のごとく、タイトジャンクションは隣り合った細胞の間で接着分子(クローディン)同士が一対となることにより形成されている、しかし、このような細胞をシールする構造は、3つの細胞が向かい合うトリセルラージャンクション構造において弱体化している。トリセルラージャンクション構造の模式図を図1に示す。本発明者らは、トリセルラージャンクションに局在する接着分子トリセルリンを始めて同定した。トリセルラージャンクションについては今まで形態学的な記載があるのみで、その分子構築に関しては全く未知であった。今回、本発明者らは、トリセルラージャンクションに局在する接着蛋白トリセルリンを同定し、そのDNAのヌクレオチド配列およびそれによりコードされるアミノ酸配列を明かにした。
トリセルラージャンクション構造およびトリセルリンは哺乳動物に広く分布している。典型例として、ヒト・トリセルリンをコードするDNAのヌクレオチド配列(Genebank Accession number AB219936)を配列番号:1に、ヒト・トリセルリンのアミノ酸配列を配列番号:2に示す。ヒト・トリセルリンの別形態をコードするDNAのヌクレオチド配列(Genebank Accession number AB219937)を配列番号:3に、ヒト・トリセルリンの別形態のアミノ酸配列を配列番号:4に示す。さらに、マウス・トリセルリンをコードするDNAのヌクレオチド配列(Genebank Accession number AB219935)を配列番号:5に、マウス・トリセルリンのアミノ酸配列を配列番号:6に示す。本発明の標的分子は、トリセルリン遺伝子およびトリセルリン蛋白であり、好ましい標的分子はヒト由来のトリセルリン遺伝子およびトリセルリン蛋白である。
本明細書において「トリセルリン遺伝子」という場合には「トリセルリンDNA」を包含する。したがって、「トリセルリン遺伝子の発現」という場合には「トリセルリンDNAの発現」を包含する。また、「遺伝子」または「オリゴヌクレオチド」という場合には、DNAおよびRNAの両方を含む。本明細書においてヌクレオチド配列の表記は左から右に5’から3’向きである。
本明細書において、特に断らないかぎり、遺伝子の「発現を抑制する」とは、遺伝子の発現を通常レベルよりも低下させること、ならびに完全に消失させてしまうことを包含する。具体的には、トリセルリン遺伝子の「発現を抑制する」とは、トリセルリン遺伝子の合成を不活性化あるいは消失させること、トリセルリン遺伝子の制御・調節機構を発現抑制の方向にシフトさせることなどを包含する。例えば、細胞のトリセルリン遺伝子を、公知の方法によりノックダウン、ノックアウト、あるいは欠失させてもよい。また例えば、同種の機能を有する蛋白、例えばアイソザイムをコードする遺伝子が複数ある場合において、それらの遺伝子のうち1つまたはそれ以上、あるいはすべての発現を抑制してもよい。
トリセルリン遺伝子の発現を抑制する因子の例としては、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗体、阻害ペプチド、ドミナントネガティブ変異体のごとき因子や薬剤が挙げられるが、これらに限らない。薬剤デリバリーのための所望部位の細胞をこれらの因子で処理することにより、例えば、細胞をこれらの因子と接触させ、あるいは細胞にこれらの因子を導入することにより、所望部位の細胞におけるトリセルリン遺伝子の発現を抑制することができる。これらの因子をコードする遺伝子で細胞を処理してもよい。これらの因子や遺伝子で細胞を処理する方法、例えば、これらの因子またはこれらの因子をコードする遺伝子を細胞に接触させ、あるいは細胞に導入する方法は当該分野で公知である。例えば、細胞への遺伝子の導入には、ベクターによる方法(例えば、アデノウイルスベクター等用いる方法)、細胞融合、エレクトロポレーション、遺伝子銃、リポフェクション、直接導入法などの方法を用いることができる。当業者は所望部位の細胞の種類、使用する因子の種類等に応じて、これらの方法を適宜選択して用いることができる。また、当該分野で公知の上記以外の方法により、トリセルリン遺伝子の発現を抑制することもできる。
本発明に用いられるトリセルリン遺伝子の発現を抑制する好ましい因子の例としては、トリセルリンsiRNA、トリセルリン遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドなどが挙げられる。トリセルリンsiRNAやトリセルリン遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドはトリセルリン遺伝子に対する特異性が高く、ノックダウンあるいはノックアウト効率も高く、副作用のリスクも小さいという利点を有する。アンチセンスオリゴヌクレオチドやsiRNAの製造方法や好ましい配列も当業者に公知であり、これらを容易に得ることができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドやsiRNAの細胞への導入方法(例えば、アンチセンスDNAを導入する場合にはトランスフェクション法)も確立されており、導入が容易で使用しやすいという利点もある。本発明のsiRNAの体内への導入方法としては、直接導入法、アデノウイルスベクターを用いる方法、経皮的なリポフェクション、エレクトロポレーションなどの公知の方法を用いることができる。本発明のsiRNAの体内への導入のための好ましい方法は直接導入法である。直接導入法を採用することにより、以下に説明する薬剤デリバリー系や医薬組成物の構成や使用を単純化することができる。siRNAを直接導入するための条件や因子は当業者が適宜選択しうるものである。
配列番号:7または8に示すヌクレオチド配列を有するsiRNAの相同体RNAとは、配列番号:7または8に示すヌクレオチド配列を有するsiRNAと同等のトリセルリン遺伝子発現抑制効果を有するすべてのRNAを包含する。好ましくは、本発明のsiRNAの相同体RNAは、配列番号:7または配列番号:8に示すヌクレオチド配列において、1個ないし数個のヌクレオチドが欠失、置換および/または付加(それらの組み合わせであってもよい)された配列を有するものである。ここに数個とは、通常には5個、好ましくは3個、さらに好ましくは2個、最も好ましくは1個を意味する。
本明細書において、特に断らないかぎり、ある蛋白の「機能を抑制する」とは、その蛋白の機能を通常レベルよりも低下させること、ならびに完全に消失させてしまうことを包含する。同種の蛋白(例えば、アイソザイム)が複数存在する場合に、それらのうちの1つまたはそれ以上の作用を抑制してもよく、あるいは全部の機能を抑制してもよい。
トリセルリンの機能を抑制する因子の例としては、トリセルリン抗体、トリセルリン阻害ペプチド、トリセルリンのドミナントネガティブ変異体などが挙げられるが、これらに限らない。本発明に用いられるトリセルリンの機能を抑制する好ましい因子の一例はトリセルリン蛋白に対する抗体である。抗体は、種々のものが知られており、例えばポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよい。キメラ抗体、ヒト化抗体を作成し、使用してもよい。抗体の製造方法は当業者に公知であり、作成すべき抗体の種類、用途等に応じて、適宜選択することができる。薬剤デリバリーすべき所望部位の細胞をこれらの因子で処理することにより、例えば、細胞をこれらの因子と接触させ、あるいは細胞にこれらの因子を導入することにより、所望部位の細胞におけるトリセルリンの機能を抑制することができる。また、これらのトリセルリンの機能を抑制する因子をコードする遺伝子で細胞を処理してもよい。これらの因子や遺伝子で細胞を処理する方法、例えば、これらの因子またはこれらの因子をコードする遺伝子を細胞に接触させ、あるいは細胞に導入する方法は当該分野で公知であり、当業者は細胞の種類、因子の種類等に応じて、これらの方法を適宜選択して用いることができる。細胞への遺伝子の導入には、例えば、上述のごとき手段・方法を用いることができる。
本発明は、もう1つの態様において、トリセルリン遺伝子の発現またはトリセルリン蛋白の機能を抑制する因子(以下、「本発明の因子」ということがある)を用いることを特徴とする薬剤デリバリー系に関するものである。本発明の薬剤デリバリー系は、本発明の因子およびデリバリーされるべき薬剤を必須成分とする。本発明の薬剤デリバリー系は、上記以外の他の成分、例えば、皮膚や粘膜の透過性を上昇させることがすでに知られている薬剤、薬剤デリバリー用の器具などを含んでいてもよい。本発明の薬剤デリバリー系を用いることにより、トリセルリン遺伝子の発現またはトリセルリン蛋白の機能を抑制し、細胞層への薬剤の透過性を高め、多くの薬剤を速やかに体内にデリバリーすることができる。すなわち、従来これらの部位への投与では体内にデリバリーすることが不可能、あるいは不十分にしかできなかった薬剤を、本発明の薬剤デリバリー系をこれらの部位に適用することにより、大量かつ速やかに、しかも非侵襲的、非観血的に体内へ移行させることができる。このことは、対象の負担を軽減することにもつながる。本発明の薬剤デリバリー系によりデリバリーされる薬剤はいずれのものであってもよく、特に制限はない。デリバリーされる薬剤は1種類であっても、複数種類であってもよい。本発明の薬剤デリバリー系の適用部位についても特に制限はなく、また、2箇所以上の部位に適用してもよい。好ましい適用部位としては皮膚、粘膜、眼球、特に角膜等が挙げられる。本発明の因子の使用量は特に制限はなく、目的に応じたものとすることができる。例えば、必要とされる透過性の程度、デリバリーされる薬剤、疾病の種類、対象の状態、適用部位等に応じて、本発明の因子の使用量を変更することができる。本発明の薬剤デリバリー系を用いる際に、皮膚や粘膜の透過性を高めることが知られている他の薬剤を併用してもかまわない。なお、本明細書において「薬剤」とは、投与された場合に所望の治療効果または予防効果を有する、あるいは有することが期待される物質をいう。
本発明は、さらにもう1つの態様において、本発明の因子および薬剤を含む医薬組成物に関するものである。本発明の医薬組成物は、本発明の因子の作用によりトリセルリン遺伝子の発現またはトリセルリン蛋白の機能を抑制し、細胞層への薬剤の透過性を高め、体内への薬剤の透過性を高めることができるので、多くの薬剤を速やかに体内に移行させることができる。すなわち、従来の医薬組成物では体内に移行させることが不可能、あるいは不十分にしかできなかった薬剤を、本発明の医薬組成物を用いることにより、大量かつ速やかに、しかも非侵襲的、非観血的に体内へ移行させることができる。このことは、対象の負担を軽減することにもつながる。本発明の医薬組成物中の本発明の因子の量、薬剤、他の成分、適用部位等については、本発明の薬剤デリバリー系のところで説明したとおりである。本発明の医薬組成物の剤形はいずれのものであってもよく、特に限定されないが、好ましくは、経皮剤形(ローション、クリーム、軟膏、発布剤など)または経粘膜剤形、あるいは点眼剤である。これらの剤形の製造方法は公知であり、当業者は適宜選択することができる。
さらにもう1つの態様において、本発明は、上で説明した本発明の薬剤デリバリー系あるいは医薬組成物を製造するための、本発明の因子の使用に関する。本発明の因子を用いて製造される薬剤デリバリー系あるいは医薬組成物は、従来の薬剤デリバリー系あるいは医薬組成物では体内に移行させることが不可能、あるいは不十分にしかできなかった薬剤を、大量かつ速やかに、しかも非侵襲的、非観血的に体内へ移行させることができ、しかも対象の負担を軽減することが可能である。
さらにもう1つの態様において、本発明は、本発明の因子を薬剤とともに投与することを特徴とする、疾病の治療および/または予防方法にも関する。本発明の方法によれば、従来の方法では体内に移行させることが不可能、あるいは不十分にしかできなかった薬剤を、大量かつ速やかに、しかも非侵襲的、非観血的に体内へ移行させることができるので、優れた治療および/または予防効果が得られるとともに、対象の負担も軽減されうる。
本発明は、さらにもう1つの態様において、トリセルリン遺伝子をノックアウトしたヒト以外の動物に関する。ノックアウト動物の作出方法は当業者に公知であり、いずれの動物からも作出可能である。好ましい動物種は哺乳動物であり、サル、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、マウス、ラット等である。本発明のトリセルリン遺伝子ノックアウト動物は、皮膚や粘膜を介した物質移行が亢進しているので、薬物デリバリーのモデル動物として薬物の研究、開発に使用することができる。また、公知の方法によりコンディショナルノックアウト(conditional knock out)動物(ある特定の臓器のみでトリセルリン遺伝子がノックアウトされている)を作成し、それらの動物を、各臓器のバリア機構の性質およびその破綻による病理学的解析についてのモデル動物として使用することもできる。
以下に実施例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、実施例は本発明を限定するものと解してはならない。
トリセルリンに対する抗体の作成、およびトリセルラージャンクションにおけるトリセルリンの存在の確認
マウスのトリセルリンのN末端細胞質領域およびC末端細胞質領域を、GST融合蛋白の形で大腸菌中で発現させ、それらを常法により精製した。精製蛋白を結核菌のアジュバントとよく混和させたものをウサギおよびラットの皮下に注射した。ウサギからはポリクローナル抗体を作成し、ラットからはモノクローナル抗体を作成した。二次抗体には商業的に入手可能な、ロバ抗ウサギIgGにFITCおよびCy3の蛍光色素がついたもの、あるいはロバ抗ラットのIgGにFITCおよびCy3の蛍光色素がついたものを用いた。蛍光抗体法にてマウスの乳腺由来の培養上皮細胞(Eph4)を染色すると、図2(左)に示すように、トリセルリンに対するシグナルは3つの細胞が形成するトリセルラージャンクションにのみ認められた。なお、図2(右)は、細胞間に通常見出されるオクルディンの抗体染色像である。
トリセルリンに対するsiRNAの効果
マウス・トリセルリンcDNAの蛋白コード領域のヌクレオチド1590〜1608(GAACAAACTCTCTCACATA)をH1プロモーターベクターに組み込んだ。同様に、マウス・トリセルリンcDNAの蛋白コード領域のヌクレオチド1542〜1560(GAATGACCCTTCGTTTCTG)をH1プロモーターベクターに組み込んだ。H1プロモーターベクターにはネオマイシン耐性遺伝子が組み込まれていた。これらのベクターの作成の際に、T. R. Brummelkamp, R. Bernards, R. Agami, Science 296, 550 (2002)の記載を参照した。
調製した各ベクターを、Invitrogen社のlipofectamin plusを用いてマウスの乳腺由来の培養上皮細胞(Eph4)に導入して、DMEM培地にて48時間培養した。その後、ネオマイシン(400ug/ml)を含むDMEM培地で2週間程度培養し、ネオマイシン耐性を獲得した(すなわちH1プロモーターベクターを安定的に獲得した)細胞を得た。上記操作により、19merのsiRNA:GAACAAACUCUCUCACAUA(配列番号:7)を安定的に発現する細胞(KD−1)、および19merのsiRNA:GAAUGACCCUUCGUUUCUG(配列番号:8)を安定的に発現する細胞(KD−2)を得た。
このようにして得られた細胞の、細胞抽出物のウェスタンブロッティング、蛍光抗体法による染色、および蛍光抗体法による染色を用いて組織学的観察を行った。トリセルリンに対するRNAiがトリセルリンの蛋白を95%程度消失させていることが、ウェスタンブロッティングにより確認された(図3)。蛍光抗体法によっても、トリセルリンに対するRNAiがトリセルリンの蛋白を消失させていることが確認された。すなわち、野生型(WT)細胞と比較して、トリセルリンの発現が消失した細胞(KD−1およびKD−2)ではトリセルラージャンクションにおける蛍光が消失していた(図4上段)。一方、E−カドヘリン(アドヘレンスジャンクション(adherens junction)の接着分子)には変化がなかった(図4下段)。図5に示すように、培養上皮細胞においてトリセルリンの発現を消失させた細胞(図5上段、中および右パネル)では、タイトジャンクションの構築が、(1)矢印部分に示す通り、3つの細胞の交わる点(トリセルラーセンター(tricellular center))の形成が、野生型(WT)(図5上段、左パネル)では正常であるのに比べて、トリセルリンの発現が消失した細胞(KD−1およびKD−2)では開いていることが確認され、(2)矢頭で示す通り、KD−1およびKD−2では2つの細胞の間のタイトジャンクションの形成が脆弱になっていることがわかった。これらの結果は、オクルディン(タイトジャンクションに局在する膜蛋白)の染色(図5下段)と比較することにより判断された。
siRNAによりトリセルリン発現を抑制したことによる、細胞間隙における透過性変化の定量的測定
タイトジャンクションの機能的な定量法の1つであるTER(trans-epithelial electrical resistance)法を用いて、細胞間隙における透過性を定量した。TER法とは、上皮細胞をtwo-chamberの培養ディッシュで培養して、上皮細胞のシートの上下に発生する電気抵抗値(TER)を測定し、上皮細胞の間の溶質の透過しやすさを測定する手段である。結果を図6に示す。正常の野生型細胞(WT)に比較して、トリセルリンの発現が消失した細胞(KD−1およびKD−2)では、TERが大きく減少した。この結果により、トリセルリンの消失によるタイトジャンクションの機能が低下して、イオンの細胞間隙における透過性が亢進したことを示す。
また、図7に示すように、FITCで標識した様々な分子量をもつデキストランに対する透過性の変化を調べたところ、トリセルリンの発現が消失した細胞(KD−1およびKD−2)では、4kD以下の物質に対して非常に透過性が亢進していることが判明した。多くの薬剤および増殖因子などの生理活性物質の分子量がせいぜい数kDであることを考慮すると、このオーダーの分子量のものが選択的に透過することは大きな意味がある。以上の実施例で得られたデータは、トリセルリンの機能を一時的に、局所的に阻害して、当該部分のバリア機構を一時的に破綻させることにより、薬剤や生理活性物質を自由に拡散させて所望部位に移行させることが可能であることを示すものである。
配列表フリーテキスト
配列番号:1はヒト・トリセルリンをコードするDNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号:2はヒト・トリセルリンのアミノ酸配列を示す。
配列番号:3はヒト・トリセルリンの別形態をコードするDNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号:4はヒト・トリセルリンの別形態のアミノ酸配列を示す。
配列番号:5はマウス・トリセルリンをコードするDNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号:6はマウス・トリセルリンのアミノ酸配列を示す。
配列番号:7はトリセルリン遺伝子の発現を抑制する本発明のsiRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号:8はトリセルリン遺伝子の発現を抑制する本発明のsiRNAのヌクレオチド配列を示す。
本発明は、医薬品の開発、ならびに医学、生理学および薬学的研究などの分野において利用可能である。
図1は、トリセルラージャンクションの構造を示す模式図である。 図2は、トリセルリンの蛍光標識抗体による染色像(左)およびオクルディンの蛍光標識抗体による染色像(右)を示す。 図3は、siRNAによるトリセルリン蛋白の生成の抑制を、ウエスタンブロッティングにより調べた結果を示す。WTは野生型Eph4細胞、KD−1は配列番号:7に示すsiRNAを発現するようにH1プロモーターベクターを導入したEph4細胞(実施例2参照)、KD−2は配列番号:8に示すsiRNAを発現するようにH1プロモーターベクターを導入したEph4細胞(実施例2参照)である。 図4は、siRNAによるトリセルリン蛋白の生成の抑制を、蛍光抗体法により調べた結果を示す。WT、KD−1およびKD−2は図2と同じ意味である。siRNA導入細胞である。上段はトリセルリンに関する結果を示し、下段はE−カドヘリンに関する結果を示す。下段右パネルのスケールバーは10μmを示す。 図5は、野生型細胞、siRNAによりトリセルリンの発現が消失した細胞(KD−1およびKD−2)における、蛍光抗体法による組織学的観察結果を示す。WT、KD−1およびKD−2は図2と同じ意味である。上段はトリセルリンに関する結果を示し、下段はE−カドヘリンに関する結果を示す。上段右パネル中のスケールバーは10μm、下段右パネル中のスケールバーは3μmを示す。 図6は、TER法を用いて細胞間隙における透過性を定量することにより、siRNAによるトリセルリン発現抑制効果を調べた結果を示す。WT、KD−1およびKD−2は図2と同じ意味である。 図7は、FITCで標識した様々な分子量をもつデキストランに対する透過性の変化を調べることにより、siRNAによるトリセルリン発現抑制効果を調べた結果を示す。WT、KD−1およびKD−2は図2と同じ意味である。

Claims (11)

  1. トリセルリン遺伝子の発現またはトリセルリン蛋白の機能を抑制する因子。
  2. siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗体、阻害ペプチド、ドミナントネガティブ変異体からなる群より選択される請求項1記載の因子。
  3. 配列番号:7または8に示すヌクレオチド配列を有するsiRNA、あるいはそれと同等の機能を有する相同体RNAである請求項1記載の因子。
  4. トリセルリンDNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドである請求項1記載の因子。
  5. トリセルリン蛋白に対する抗体である請求項1記載の因子。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載の因子を用いることを特徴とする薬剤デリバリー系。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項記載の因子および薬剤を含む医薬組成物。
  8. 経皮剤形または経粘膜剤形である請求項7記載の医薬組成物。
  9. 点眼剤である請求項7記載の医薬組成物。
  10. トリセルリン遺伝子またはトリセルリン蛋白がヒト由来である請求項1〜5のいずれかに記載の因子。
  11. トリセルリン遺伝子をノックアウトしたヒト以外の動物。

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