JP4108755B2 - 新規セマフォリン遺伝子:セマフォリンy - Google Patents

新規セマフォリン遺伝子:セマフォリンy Download PDF

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Description

発明の属する技術分野
本発明は、セマフォリンファミリーに属する新規なセマフォリンである、セマフォリンYおよび該セマフォリンYの医薬・診断薬あるいは研究用試薬への用途に関する。さらに詳しくは、神経の伸長に対して抑制的に作用するセマフォリンY及びその遺伝子、または該セマフォリンY遺伝子にハイブリダイズする他のセマフォリン、該セマフォリンYの改変タンパク質、部分ペプチド、抗体、該セマフォリンY遺伝子のアンチセンスヌクレオチド、該セマフォリンYのアンタゴニスト、トランスジェニック動物、或いはこれらの物質の医薬・診断薬あるいは研究用試薬としての用途に関する。
従来の技術
ヒトなど高等生物では中枢神経は一度傷害を受けると再生する能力がないことが広く知られている。このため交通事故などで脊髄の損傷を受けた人は、半生を半身不随として過ごさなければならない。一方、末梢神経はこれらの高等生物においても旺盛な再生能が保持されており、手足の神経は一度切断されても徐々に再生し、それに伴って機能も回復することが知られている。
1980年代初期にAguayoらのグループは、損傷を与えた高等生物の中枢神経中に実験的に末梢神経を移植することにより中枢神経の軸索伸長が誘導されることを見出し、それまで再生能力はないと一般に考えられていた高等生物の中枢神経が、周囲の環境さえ整えば軸索を再生することを明らかにした(Nature,284,264-265(1980)、Science,214,931-933(1981))。この報告は、高等生物の中枢神経系には「中枢神経再生阻止因子」とでも呼べるような因子が存在しており、この因子が中枢神経の再生を抑制している可能性、そしてその抑制を解除することにより中枢神経が再生する可能性を示唆しており、中枢神経再生治療への道を開いた。
1988年にSchwabらのグループは、中枢神経系のミエリン由来のタンパク質の中に、上記中枢神経再生阻止因子が存在していることを明らかにした。そして、該中枢神経再生阻止活性を有するタンパク質を部分的ながら精製することに成功し、このタンパク質画分をNI35/250と名付けた(Annu.Rev.Neurosci.,16,565-595(1993))。しかし、その単離・同定及び遺伝子クローニングは未だに成功していない。また、彼らは粗精製したNI35/250を動物に免疫し、中和活性を有する抗体(IN-1)を取得することにも成功している。この抗体はウエスタンブロットでNI35/250のバンドを認識し、免疫染色でNI35/250が分布していると考えられる部位を染めることができる。そして、実験的に脊髄を損傷させた動物にこの抗体を投与すると、2−3週間後には脊髄の神経が部分的ながら再生すること、更に2〜3か月後には機能も回復することを明らかにしている(Nature,343,269-272(1990)、Nature,378,498-501(1995))。これは、まさに前記Aguayoらにより示唆された中枢神経再生阻止因子の存在、及び該因子の活性を阻止することによる中枢神経の再生を実験的に証明したものであり、その価値は大きい。しかし該抗体はヒト型ではなくラット型NI35/250に対する抗体であり、また安定性、特異性も低い。また上述のように該抗体の投与により再生が認められたものの、その効果は部分的かつ不完全であり、全ての運動機能が回復したわけではない。従ってこれら問題点の解決策として、NI35/250あるいはこれに相当する中枢神経再生阻止因子の遺伝子の実体を明らかにし、分子生物、神経科学等の知見に基づいて、中枢神経再生阻止活性をより効果的に阻害するアンタゴニストを開発すること、あるいは該再生阻止因子の遺伝子の発現抑制方法を開発することが不可欠であると考えられる。
ところで中枢・末梢を問わず神経系がその主な機能である情報伝達・処理を正確に行うためには、発生段階、すなわち胚あるいは胎児の過程において、神経細胞間あるいは神経細胞と末梢の受容器・効果器との間に複雑な神経ネットワークを形成しなければならない。神経ネットワーク形成のためには、伸長する神経突起を遠く離れた標的部位に正確に導く(ガイドする)巧妙な機構が必要である。
これまでは、神経ネットワークの形成には突起伸長促進因子・突起誘引因子と言った神経の突起伸長を正に制御する因子が主な役割を果たしているものと考えられてきた。しかしそれとは逆の、つまり伸長阻止活性を持った負の因子が正確なガイダンスには重要であることが、ネットワーク形成メカニズムに関する最近の研究から明らかになりつつある(Cell,78,353-356(1994))。
このような伸長阻止活性を有する因子の代表が、「セマフォリン」と呼ばれるタンパク質である。最初に発見されたセマフォリンはバッタから発見されたファシクリンIVであり、その後、ニワトリからコラプシン(後にコラプシンIと命名)が発見され(Cell,75,217-227(1993);Neuron,9,831-845(1992))、ショウジョウバエ、カブトと言った昆虫からヒトまたはウイルスにまで広く、10以上のセマフォリンファミリーに属する遺伝子が報告されている(Cell,81,471-474(1995))。これらのセマフォリンは、そのアミノ酸配列上にセマフォリンドメインと呼ばれるおよそ500アミノ酸からなる類似の構造を有するのが特徴である(Neuron,14,941-948(1995)、Cell,75,1389-1399(1993))。しかし、セマフォリン遺伝子相互の間でセマフォリンドメインのアミノ酸一次配列上の類似性は80%-20%であり、必ずしも高くはない。
これらのセマフォリンの中で機能が確認されているものはバッタのファシクリンIV、ショウジョウバエのセマフォリンI,II、ニワトリのコラプシン、そしてほ乳類におけるコラプシンであるセマフォリンIIIなどごく一部であり、これらは全て神経突起の伸長、シナプス形成に対して抑制的に作用することが知られている。中でもセマフォリンIIIは、in vitroにおいて培養神経の成長円錐を短時間に退縮させる活性(成長円錐退縮活性)をも有することが報告されている(Neuron,14,941-948(1995)、Neuron,14,949-959(1995)、Cell,81,631-639(1995)、Cell,75,1389-1399(1993)、Cell,75,217-227(1993)、Neuron,9,831-845(1992))。
以上のように既知のセマフォリンは、発生段階において成長円錐退縮活性及び神経突起の伸長抑制活性を有し、神経の正確なガイダンスを行う役割を担っていることが明らかになりつつあるが、これらのセマフォリンが発生段階のみならず、成体においても何らかの機能を有しているのか否かは現在のところ明らかにされていない。ましてやセマフォリンが、成体における中枢神経の再生阻止因子としての役割を担っているか否かは全く不明である。勿論、既知のセマフォリンについて、神経突起伸長を抑制する負のガイダンス因子であることが明らかにされているため、該セマフォリンを中枢神経の再生阻止因子の候補として挙げることもできなくはない(Nature,378,439-440(1995))。しかし、高等生物で唯一機能解析がなされているセマフォリンIII(Sema III)は、末梢神経である感覚神経あるいは交感神経に対しては突起伸長阻止活性を示すが、中枢神経である網膜神経に対しては作用しないことがin vitroの実験結果により明らかにされている(Cell,75,217-227(1993))。加えて、本発明者らがSemaIIIの成体における発現分布をノーザン解析により調べた結果、主に末梢組織で発現していることが判明している(後述の参考例2参照)。従って、このようなSema IIIが、中枢神経再生阻止因子としての機能を有しているとは考え難い状況にある。
発明が解決しようとする課題
本発明が解決しようとする課題は、セマフォリンファミリーに属する新規なセマフォリンである、セマフォリンY及びその遺伝子を提供することにより、神経疾患に関わる医薬、中でも中枢神経の再生に関わる医薬、又は診断薬あるいは研究用試薬を提供することにある。さらに詳しくは、神経の伸長に対し抑制的に作用するセマフォリンY及びその遺伝子、または該セマフォリンY遺伝子にハイブリダイズする他のセマフォリン、該セマフォリンYの改変タンパク質、部分ペプチド、抗体、該セマフォリンY遺伝子のアンチセンスヌクレオチド、或いはこれらの物質の医薬・診断薬あるいは研究用試薬としての用途、さらには該セマフォリンYを用いたセマフォリンYアンタゴニストのスクリーニング方法、該スクリーニング方法により得られるセマフォリンYアンタゴニスト、これらアンタゴニストを含有する医薬、若しくは該セマフォリンYについてのトランスジェニック動物等をも提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
本発明者らは、神経疾患に関わる医薬、中でも中枢神経の再生に関わる医薬、又は診断薬あるいは研究用試薬の提供のために、未だクローニングされていない新規なセマフォリンを同定することを考えた。具体的には、前述のNI35/250とセマフォリンとのin vitro活性の類似性、すなわちNI35/250はin vitroで成長円錐退縮活性及び神経の突起伸長抑制活性を有しているのに対し(J.Neurosci.,8,2381-2393(1988)、Science,259,80(1993))、既知のセマフォリンも突起伸長抑制活性を有しており、中でもセマフォリンIIIは成長円錐退縮活性も有しているという点に着目し、未だ同定されていない未知のセマフォリンの中に、中枢神経の再生を阻止するものが存在している可能性を考えた。すなわち、1)神経の再生(伸長)が抑制されている成体の中枢神経系全般では広く発現しているが、2)成体の末梢組織等ではあまり発現していない、といった特徴を有するセマフォリンは未だ知られていないが、そのような特徴を有する未知のセマフォリンを同定することができれば、該セマフォリンは中枢神経の再生阻止に関与しているのではないかと考えた。
そこでまず、これまで報告されているセマフォリン遺伝子相互の間で比較的保存されているアミノ酸配列を基にDNAデータベースを詳細に検索した。すなわち、末梢組織では発現していないが生後の脳では発現している遺伝子であり、しかもセマフォリン相互の間で比較的保存されているアミノ酸配列をコードするDNA配列を、EST(Expressed Sequence Tags)データベースにより検索した。その結果、7個のアミノ酸からなる配列(Gln(またはArg)-Asp-Pro-Tyr-Cys-Ala(またはGly)-Trp)を一部配列としてコードするDNA断片配列、R59527を見出した。該R59527の配列情報は僅か238塩基であり、しかもその中で既知のセマフォリンと共通の配列に翻訳できるのは全体のわずか数%のアミノ酸に限られており、また該R59527には配列未確定の部分が存在していたためアミノ酸への読み枠も決定できなかったことから、該R59527の塩基配列が新規セマフォリンの一部であるとは到底結論できない状況であった。しかし我々は、この配列情報を基にしてDNAプライマーを合成し、該プライマーを用いてヒトの海馬のcDNAライブラリーから調製したcDNAを鋳型にしてPCRを行い、170塩基からなる新規なDNA断片(配列番号:7)を得、このDNA断片を32PでラベルしてDNAプローブを合成し、ラット及びヒトのcDNAライブラリーをスクリーニングした結果、最終的に新規セマフォリン遺伝子をクローニングすることに成功した。我々は、この新規セマフォリンを「セマフォリンY」と命名した。
解析の結果、セマフォリンY遺伝子は既知のセマフォリン遺伝子と異なり、成体の中枢神経系では広く発現している一方、末梢組織では限られた組織でしか発現が確認されなかったことから、本発明者らが意図した新規セマフォリンであることが明らかとなった。
このような特徴を有する本発明のセマフォリンYは、成体において中枢神経の再生阻止に関与していることが考えられる。該セマフォリンYを用いてセマフォリンYのアンタゴニストをスクリーニングすることが可能であり、そのようなスクリーニング系により見出されたアンタゴニストは、中枢神経の再生を促進することが考えられる。またセマフォリンY遺伝子のアンチセンスDNAあるいはRNAも、前記アンタゴニストと同様に中枢神経の再生を促進することが考えられる。
さらに、本発明のセマフォリンYは神経の伸長に対して抑制的に作用することから、末梢組織に対して適用された場合には、末梢神経の伸長を抑制することによりアトピー性皮膚炎等の免疫疾患及び疼痛等の治療薬、あるいは診断薬となることも考えられる。また該セマフォリンYは、セマフォリンファミリーに属する新規なセマフォリンであり、かつその発現分布は前記したように従来にない特徴的なものであり、さらに、これまでに報告されている脊椎動物のセマフォリンに共通に見出されているIgドメインは有していないという特徴をも有している。従って該セマフォリンYは、当該分野における重要な研究材料、研究試薬となる。
本発明は、これらの研究成果に基づいて完成するに至ったものである。
即ち本発明の要旨は、
(1)以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする遺伝子、
(a)配列番号:3又は配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなるセマフォリンYタンパク質
(b)配列番号:3又は配列番号:6に記載のアミノ酸配列のうち1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ神経の伸長に対して抑制的に作用するタンパク質
(2)以下の(a)又は(b)のDNAからなる遺伝子、
(a)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:4又は配列番号:5に記載の塩基配列からなるセマフォリンYDNA
(b)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:4又は配列番号:5に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ神経の伸長に対して抑制的に作用するタンパク質をコードするDNA
(3)配列番号:7に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつセマフォリンドメインを有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子、
(4)前記(1)〜(3)のいずれか記載の遺伝子を発現することによって得られるタンパク質、
(5)配列番号:3又は配列番号:6に記載のタンパク質において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ神経の伸長に対して促進的に作用するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子、
(6)前記(5)記載の遺伝子を発現することによって得られるタンパク質、
(7)ヒトcDNAライブラリー又はヒトゲノムライブラリーからクローニングされるDNAであって、配列番号:1又は配列番号:4記載の塩基配列からなるDNAの少なくとも一部からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA、
(8)前記(1)〜(3)又は(5)記載の遺伝子、あるいは前記(7)記載のDNAのいずれかを発現する発現プラスミド、
(9)前記(8)記載の発現プラスミドによって形質転換された形質転換体、
(10)前記(9)記載の形質転換体を培養し、発現される組換えタンパク質を回収することからなる、組換えタンパク質の生産方法、
(11)前記(4)又は(6)記載のタンパク質の、少なくとも6アミノ酸以上の部分よりなるペプチド、
(12)神経の伸長に対して促進的に作用する、前記(11)記載のペプチド、
(13)配列番号:6に記載のアミノ酸配列の第198位のアスパラギン酸、あるいは該アスパラギン酸の位置に相当するアミノ酸を含有することを特徴とする、前記(11)記載のペプチド、
(14)前記(1)〜(3)のいずれか記載の遺伝子、あるいは前記(7)記載のDNAの、少なくとも8塩基以上の部分に対応するアンチセンスヌクレオチド、あるいはその化学的修飾体、
(15)前記(4)記載のタンパク質の発現を抑制することを特徴とする、前記(14)記載のアンチセンスヌクレオチド、あるいはその化学的修飾体、
(16)前記(4)又は(6)記載のタンパク質、あるいは前記(11)〜(13)いずれか記載のペプチドに対する抗体、
(17)前記(1)〜(3)又は(5)記載の遺伝子、前記(7)記載のDNA、前記(4)又は(6)記載のタンパク質、前記(11)〜(13)記載のペプチド、前記(14)又は(15)記載のアンチセンスヌクレオチド又はその化学的修飾体、あるいは前記(16)記載の抗体の、いずれかを有効成分として含有する医薬、
(18)前記(4)記載のタンパク質を用いることを特徴とする、セマフォリンYアンタゴニストのスクリーニング方法、
(19)前記(18)記載のスクリーニング方法を用いて得られる、セマフォリンYアンタゴニスト、
(20)前記(6)記載のタンパク質、前記(11)〜(13)いずれか記載のペプチド、又は前記(16)記載の抗体よりなる、前記(19)記載のセマフォリンYアンタゴニスト、
(21)前記(14)又は(15)記載のアンチセンスヌクレオチドあるいはその化学的修飾体、前記(19)又は(20)記載のセマフォリンYアンタゴニストの、少なくとも一つを含有することを特徴とする、中枢神経の再生促進剤、
(22)前記(4)記載のタンパク質の少なくとも一つを含有することを特徴とする、末梢神経の伸長抑制剤、並びに
(23)前記(1)〜(3)又は前記(5)のいずれか記載の遺伝子、あるいは前記(7)記載のDNAのいずれかを人為的に染色体中に挿入したか、あるいはいずれかをノックアウトさせたトランスジェニック動物、に関する。
発明の実施の形態
本発明の第1の態様は、配列番号:3又は配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなるセマフォリンYをコードする遺伝子、あるいは前記セマフォリンYのアミノ酸配列のうち1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ神経の伸長に対して抑制的に作用するタンパク質をコードする遺伝子である。また本発明の第2の態様は、配列番号:1、2、4又は5に記載の塩基配列からなるセマフォリンY遺伝子、又はこれらセマフォリンY遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ神経の伸長に対して抑制的に作用するタンパク質をコードする遺伝子である。以下、これらの遺伝子につき順次説明する。
1)セマフォリンYをコードする遺伝子(セマフォリンY遺伝子)
上記遺伝子のうち、「配列番号:3に記載のアミノ酸配列からなるセマフォリンYタンパク質をコードする遺伝子」又は「配列番号:1、配列番号2に記載の塩基配列からなるセマフォリンY遺伝子」とは、本発明のラットセマフォリンYをコードする遺伝子である。また、「配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなるセマフォリンYタンパク質をコードする遺伝子」又は「配列番号:4、配列番号5に記載の塩基配列からなるセマフォリンY遺伝子」とは、本発明のヒト型セマフォリンYをコードする遺伝子である。このうち配列番号:2及び配列番号:5に記載の遺伝子は、それぞれラットセマフォリンY及びヒト型セマフォリンYのオープンリーディングフレームに相当する。これらの遺伝子は、例えば実施例1に記載したように、ESTデータベースから発見された「R59527」の配列を元に作製したプローブ(例えば配列番号:7に記載の塩基配列を有するDNAプローブ)を用いて中枢神経系の組織由来のcDNAライブラリーをスクリーニングすることによりクローニングすることができる。これらクローニングの個々の技術は、例えばMolecular Cloning 2nd Edt.(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))等の基本書を参照することにより行うことができる。クローニングされたDNAの塩基配列の決定も、市販のシークエンスキット等を用いる通常の方法により行うことができる。
なお上記クローニング法によらなくとも、本発明のラット及びヒトセマフォリンYcDNAの塩基配列の公開に伴い、当業者ならば、該cDNAの一部をプローブに用いてラット及びヒト型セマフォリンYをコードする遺伝子の全長を容易にクローニングすることができる。
2)セマフォリンYの改変タンパク質をコードする遺伝子
前記遺伝子のうち、「セマフォリンYのアミノ酸配列のうち1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ神経の伸長に対して抑制的に作用するタンパク質をコードする遺伝子」とは、いわゆるセマフォリンYの「改変タンパク質」のうち、神経の伸長に対して抑制的に作用するタンパク質をコードする遺伝子を指す。該タンパク質をコードする遺伝子は、例えば部位特異的突然変異誘発(Methods in Enzymology,100,448-(1983))やPCR法(Molecular Cloning 2nd Edt.15章,Cold Harbor Laboratory Press(1989)、”PCR A Practical Approach”IRL Press 200-210(1991))により、当業者ならば容易に得ることができる。なおここで、欠失、置換及び/又は付加されるアミノ酸残基の数は、上記部位特異的変異誘発等の周知の方法により欠失、置換及び/又は付加できる程度の数を指す。
ここで、「神経の伸長に対して抑制的に作用する」とは、例えば神経の成長円錐に対する退縮活性を有すること、あるいは神経の伸長阻害活性を有することを指す。該活性は、例えばセマフォリンYあるいはその改変タンパク質をコードするDNAの発現産物等の被験物質を用い、例えば以下のようにして測定することができる。
セマフォリンYは膜タンパク質であるため、セマフォリンY遺伝子で形質転換された細胞の細胞膜にセマフォリンYは存在している。従って形質転換された細胞の膜画分を材料に使うことで、前記被験物質の活性を容易に測定できる。
活性測定法としては、前記したように神経の成長円錐に対する退縮活性(M.Igarashi et al Science vol.259 pp77-79(1993))、あるいは神経の伸長阻止活性(J.A.Davies et.al.Neuron vol.2 pp11-20(1990)やM.Bastmeyer J.Neurosci.vol.11 pp626-640(1991)など)などがある。成長円錐退縮活性の測定方法は文献(M.Igarashi et al Science vol.259 pp77-79(1993))に詳しく述べられているが、簡単には、セマフォリンY等の被験物質を発現する細胞をホモゲナイズし、細胞膜の画分を含むホモジェネートを用いる方法、あるいは精製した膜画分を用いる方法(E.C.Cox et.al.Neuron vol.2 pp31-37(1990))、あるいは膜画分から抽出した蛋白質をリポソームに再構成したものを材料にする方法(C.E.Bandtlow Science vol.259 pp80-84(1993))などが可能である。これらを材料にして実際に成長円錐の退縮活性を測定するには、ラミニンやコラーゲン、ポリリジン、ポリオルニチンといったような神経突起の伸長と成長円錐の形成を促進する物質をコーティングした容器の中で通常の条件で培養した神経細胞(Bankerらの編纂によるCulturing Nerve Cells MIT Press(1991)など)に対し、先に述べたような形状のセマフォリンY等の被験物質を添加することによって行う。添加後、成長円錐の退縮が起こるのに充分な時間(通常添加後30分から1時間)が経過した時点でこの神経細胞を1%グルタルアルデヒドなどで固定し、顕微鏡下で退縮を起こした成長円錐の数を計数する。このときセマフォリンY等の被験物質を発現していない細胞を出発材料にして、被験物質発現細胞を用いたときと全く同様にして調整した試料を対照として観察することが重要である。通常、試料の平均化は試料内に含まれる総蛋白量によって行う。一方、突起伸長阻害活性を測定するには上記と同様にして調整したセマフォリンY等の被験物質をマイクロポアフィルターやガラスやプラスティック製の培養容器の表面の一部分にコーティングし、通常の条件で培養した神経細胞が、このコーティング面上では接着できないこと、突起の伸長速度が非常に低下すること、あるいはコーティング面の外からコーティング面に向かって伸長する神経突起がコーティング面との境界に達しても、停止したり、回避したりして面内に侵入できないことなどを指標とする。コラーゲンゲル中で被験物質を発現する細胞の塊と神経細胞とを同時に培養した場合には、伸長する神経突起が被験物質発現細胞の塊の中に侵入できないことも指標とできる(A.Sophia et.al.Cell vol.81 pp621-629(1995))。
また上記活性測定用の細胞としては、中枢神経系及び末梢神経系のいずれの細胞をも用いることができる。なお「従来の技術」の項に述べたように、哺乳類の成体の中枢神経系には元々再生(伸長)阻止因子が大量に存在しているため、in vivoで中枢神経の伸長に対する抑制作用を測定することは非常に困難であり、通常、上記のようなin vitroの方法を用いて測定を行う。これらはin vitroの方法であるため各々に特徴があり、従って複数の方法を用いて活性を確認することが好ましい。また、該作用の測定に用いる神経細胞は脊髄や大脳皮質運動野の運動神経などの中枢神経が好ましいが、中枢神経再生阻止因子として知られているNI35/250が、末梢神経である上頚神経節や後根神経節の神経細胞に対しても突起伸長阻止や成長円錐退縮などの活性を有することが判明しているため(J.Cell Biol.,106,1281-1288(1988)、Science,259,80-83(1993))、該末梢神経を用いることも可能である。
次に、本態様の改変タンパク質の具体例を以下に示す。
既知のセマフォリンの構造を比較すると、保存されたアミノ酸は大部分セマフォリンドメイン内に位置し、セマフォリンの活性発現にはこれら保存されたアミノ酸が重要であると考えられる。さらに、本発明者らがSema IIIのセマフォリンドメイン内の第198位のアスパラギン酸がグリシンに置換されたタンパク質の成長円錐退縮活性を測定したところ、該タンパク質は活性を有していなかった(後述の参考例1参照)。従ってSema IIIにおいては、第198位のアスパラギン酸が活性発現に重要であると考えられる。既知のセマフォリンにおけるこの位置に相当するアミノ酸は非常に良く保存されており、一部のセマフォリンにおいてグルタミン酸である以外は全てアスパラギン酸である。従って、Sema III以外のセマフォリンにおいても、この位置のアミノ酸が活性発現に重要であると考えられる。本発明のセマフォリンYにおいてSema IIIの第198位に相当するアミノ酸は、配列番号:3に記載のアミノ酸配列中、第197のアスパラギン酸であると予想され、また配列番号:6に記載のヒトセマフォリンYのアミノ酸配列中、第198位のアスパラギン酸であると予想される。
以上の知見より、セマフォリンYの有する活性を、その改変タンパク質においても残存させるためには、上記アミノ酸の欠失、置換及び/又は付加は、セマフォリン間で保存されたアミノ酸以外の部分で行うことが望ましい。特に、配列番号:3のラットセマフォリンYの第197位のアスパラギン酸、あるいはヒトセマフォリンYの第198位のアスパラギン酸は、改変しないことが望ましい。一方セマフォリン間で保存されたアミノ酸を置換しかつセマフォリンYの活性を残存させる場合は、類似の側鎖を有するアミノ酸に置換することが望ましい。このように保存されたアミノ酸を類似の側鎖を有するアミノ酸に置換することによって、セマフォリンYの有する活性をさらに増強させた改変タンパク質を作製することが可能である。このような活性の増強した改変タンパク質は、後述の本発明の第22態様の項に記載の如き末梢神経の伸長抑制剤として非常に好適である。
なお、本態様において「保存されたアミノ酸」とは、Cell,75,1389-1399(1993)の図2、もしくはNeuron,14,941-948(1995)の図1において、50%以上のセマフォリン遺伝子においてアミノ酸が同一となるような位置に存在するアミノ酸を言う。
3)セマフォリンY遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA
前記DNAのうち、「セマフォリンY遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ神経の伸長に対して抑制的に作用するタンパク質をコードする遺伝子」とは、すなわち哺乳動物由来のセマフォリンY遺伝子のような、配列番号:1、2、4又は5に記載の塩基配列からなるラット又はヒト型セマフォリンY遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする遺伝子を指す。
ここで、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする遺伝子」とは、例えばホルムアミド濃度:45%(v/v)、塩濃度:5×SSPE、温度:42℃程度の条件下でハイブリダイズさせ、塩濃度:2×SSPE、温度:42℃程度の条件下で洗浄した場合において、ラットあるいはヒト型セマフォリンY遺伝子とハイブリダイズするような遺伝子を指す。これら遺伝子の具体的なクローニングは、たとえば配列番号:1又は配列番号:4に記載のDNAの一部又は全部をプローブに用いて各種動物の組織から調製したcDNAライブラリーまたはゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより行うことができる。具体的なスクリーニングは、例えばMolecular Cloning 2nd Edt.(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))等の基本書を参照することにより行うことができる。
このような本態様の遺伝子の具体例としては、哺乳類、鳥類の全てのセマフォリンY遺伝子が挙げられる。哺乳動物間あるいは哺乳類と鳥類の間では相同な遺伝子なら配列は非常に似ており、通常80%以上、多くは90%以上の塩基配列が共通である。従って、該哺乳類、鳥類の全てのセマフォリンY遺伝子は、本態様の遺伝子に該当する。換言すれば、80%以上のホモロジーを有するものが本態様の遺伝子であり、好ましくは、90%以上のホモロジーを有するものが挙げられる。
本発明の第3の態様は、配列番号:7に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつセマフォリンドメインを有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子である。
ここで「配列番号:7に記載の塩基配列からなるDNA」とは、セマフォリン間でよく保存された7アミノ酸からなる配列(Gln(またはArg)-Asp-Pro-Tyr-Cys-Ala(またはGly)-Trp)を一部配列としてコードするDNA「R59527」の配列情報をもとにPCR法によりクローニングした断片であり、配列表の配列番号:1に記載されたラットセマフォリンYの塩基配列の第1574位から第1743位に、また配列表の配列番号:4に記載されたヒトセマフォリンYの塩基配列の第1524位から第1693位に相当するDNA断片である。
また、ここで「ストリンジェントな条件」は、前記本発明の第2態様の項に記載の条件を指す。
本態様の遺伝子は、配列番号:7のDNAとのハイブリダイゼーション等によりクローニングされるものであるが、具体的には、例えばTINS,15,319-323(1992)およびこの引用文献記載の方法によって行うことができ、さらに具体的には例えば以下の方法により行うことができる。
即ち、配列番号:7に記載の塩基配列からなるDNAをプローブとして、各種動物の組織から調製したcDNAライブラリーまたはゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより行うことができる。スクリーニング方法としては、例えば、実施例1に示したような方法が挙げられる。また、cDNAライブラリーとしては成人の中枢神経系の組織由来のcDNAライブラリーを用いることが好ましく、更に好ましくは海馬、線条体、小脳由来のcDNAライブラリーを用いる。ハイブリダイゼーションの条件は、例えば前述のように実施例1に示した条件、あるいはTINS,15,319-323(1992)およびこの引用文献等に記載されている条件が挙げられる。
また、本態様の遺伝子は、「セマフォリンドメインを有するタンパク質をコードするDNA」でもある。ここで「セマフォリンドメイン」とは、例えばCell,75,1389-1399(1993)またはNeuron,14,941-948(1995)に記載された既知の10個のセマフォリン(G-Sema I,T-Sema I,D-Sema II,H-Sema III,C-Collapsin,Sem A,Sem B,Sem C,Sem D,Sem E)のいずれか1つのセマフォリンドメインを構成するアミノ酸と20%以上が一致し、かつ300-600のアミノ酸残基からなる配列で構成されるドメインをいう。特に好ましいものとしては、30%以上のアミノ酸が一致するセマフォリンドメインを有するものが挙げられる。ここで、アミノ酸の一致は、例えば日立ソフトウェアーエンジニアリング社製のDNASIS Ver.2.0を、ktup=1,cutoff=1の条件で比較することでなされる。さらに好ましくは、既知の10個のセマフォリンのセマフォリンドメインにおいて保存されている13個のシステイン(このシステインは例えばNeuron,14,941-948(1995)の942頁図1においてマークされているものが挙げられる)のうち、10個以上が保存されたものが挙げられ、特に12個以上が保存されたものが好ましい。
このような本態様の遺伝子の具体例としては、配列番号:7に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、セマフォリンドメインを有し、かつ神経伸長抑制活性を有するようなセマフォリン遺伝子、あるいは前記第2態様と同様の哺乳類、鳥類の全てのセマフォリンY遺伝子が挙げられる。
本発明の第4の態様は、前記本発明の第1〜第3態様のいずれか記載の遺伝子を発現することによって得られるタンパク質である。
本態様に含まれるタンパク質の代表例として、配列番号:3に記載のアミノ酸配列からなるラットセマフォリンY、あるいは配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなるヒトセマフォリンYが挙げられる。また、該ラット及びヒト型セマフォリンYはN末端にシグナル配列を有するが、該シグナル配列は、配列番号:3に記載のアミノ酸配列の第1位から第23位までに、また配列番号:6に記載のアミノ酸配列の第1位から第24位までに相当すると予想される。該シグナル配列は膜に移行する際にプロセシングを受けて除去されるため、このようなシグナル配列の除去された成熟型セマフォリンYも、本態様に含まれる。
次に本態様のタンパク質の調製法であるが、たとえばクローニングされたラットセマフォリンYcDNAを、pET、pCDM8等の公知の発現ベクターに連結した後、適当な宿主に導入することにより発現・生産することができる。宿主としては、原核性生物細胞または真核性生物細胞のいずれでもよく、例えば大腸菌株や動物細胞株は既に広く普及しており入手は可能である。例えば動物細胞宿主としては、COS−1、COS−7、CHO細胞等が挙げられる。
発現プラスミドを用い適当な動物細胞宿主を形質転換するには、例えばDEAEデキストラン法(F.M.Ausubelらの編纂によるCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987))等の公知の方法を用いればよい。実施例6にて確認したように、セマフォリンYは細胞膜画分に存在しており、この細胞膜画分はそのまま種々のアッセイに使用され得る程度のセマフォリンYを含んでいる。従って、適当な細胞を用いて調製した細胞膜画分を用いて、本態様のタンパク質の種々の活性測定を容易に行うことができる。
また本態様のタンパク質は、後述の本発明の第16態様のセマフォリンY認識抗体を用いたアフィニティー精製、あるいは通常のカラムクロマトグラフィー等の方法により精製することができる。
本発明の第5の態様は、配列番号:3又は配列番号:6に記載のラット又はヒト型セマフォリンYにおいて1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ神経の伸長に対して促進的に作用するタンパク質をコードする遺伝子である。また本発明の第6の態様は、本発明の第5態様の遺伝子を発現することによって得られるタンパク質である。
上記第5態様の遺伝子における欠失、置換及び/又は付加は、本発明の第1態様の改変タンパク質をコードする遺伝子と同様の手法により行うことができる。また、神経の伸長に対する促進的な作用は、例えば本発明の第1態様の項に記載のセマフォリンY活性測定系にセマフォリンYを添加し、さらにそこへ被験物質(すなわち候補となるセマフォリンY改変タンパク質)を添加することにより、容易に測定することができる。詳しくは本発明の第18態様の項を参照されたい。
本発明の第6態様のタンパク質の具体例として、セマフォリンYの有する神経伸長抑制活性を消失させたような改変タンパク質が考えられる。セマフォリンYの活性を消失させた改変タンパク質が、セマフォリンYの代わりに該セマフォリンYのリセプター、あるいはセマフォリンYそのものに結合することなどによってセマフォリンYがリセプターに結合するのを阻害することにより、上述の神経の伸長に対する促進活性を発揮することが考えられる。本発明の第1態様の項に記載したように、セマフォリンの活性部位はセマフォリンドメイン内に、そしてラットセマフォリンYにおいてはおそらく第197位のアスパラギン酸に、またヒトセマフォリンYにおいては第198位のアスパラギン酸に、おそらく存在しているものと示唆される。従って、セマフォリンY活性を、その改変タンパク質において消失させるためには、上記アミノ酸の欠失、置換及び/又は付加は、該セマフォリンドメイン内の保存されたアミノ酸に対して、好ましくはラットセマフォリンYの第197位のアスパラギン酸に対して、またヒトセマフォリンYの第198位のアスパラギン酸に対して行うのが望ましい。その際、もとのアミノ酸と異なった性質の側鎖を有するアミノ酸への置換が望ましい。ヒト及びラット以外のセマフォリンYにおいても、この位置に相当する位置にあるアスパラギン酸、即ち該セマフォリンYのアミノ酸配列をラットあるいはヒトセマフォリンYと最も一致するように並べた場合、ラットセマフォリンYの第197位、ヒトセマフォリンYの第198位に相当する位置にあるアミノ酸に対して改変を行うのが望ましい。
以上のように本発明の第6態様のタンパク質は、神経の伸長に対して促進的に作用するものであるため、後述の第21態様の項に記載の如き中枢神経の再生促進剤となるものが含まれる。
本発明の第7の態様は、ヒトcDNAライブラリー又はヒトゲノムライブラリーからクローニングされるDNAであって、配列番号:1又は配列番号:4記載のラット又はヒト型セマフォリンYDNAの少なくとも一部からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAである。
クローニングの方法は、例えばMolecular Cloning 2nd Edt.Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)等に詳しく述べられており、具体的には、ハイブリダイゼーションを用いる方法、PCRを用いる方法等が挙げられる。ライブラリーとしては、ここではヒト由来のゲノム性ライブイラリーを用いることが好ましく、成人の中枢神経由来のcDNAライブラリーを用いることもできる。ハイブリダイゼーションを用いる方法の場合は、例えばTINS,15,319-323(1992)及びこの引用文献等に従い行うことができる。またPCR法を用いる場合は、McPhersonらの編纂によるPCR(1991)IRL Press等に従い行うことができる。
クローニングされるDNAはその全長に限らず、そのうちの200塩基以上からなるDNA断片、あるいは該DNA断片の一本鎖(正鎖、あるいは相補鎖)の形態のものも含む。本発明の第7態様のDNAの具体例としては、アミノ酸をコードする領域は言うに及ばず、5’、3’転写調節領域、エキソンのノンコーディング配列、イントロンなどを含む染色体DNAが挙げられる。これらアミノ酸をコードしない配列も、後述のアンチセンス技術を用いて薬剤を開発する場合などに非常に有用である。
本発明の第8の態様は、本発明の第1、第2、第3又は第5態様の遺伝子、あるいは第7態様のDNAのいずれかを発現する発現プラスミドである。また、本発明の第9の態様は、第8態様の発現プラスミドによって形質転換された形質転換体である。また本発明の第10の態様は、第9態様の形質転換体を培養し、発現される組換えタンパク質を回収することからなる、組換えタンパク質の生産方法である。これら発現プラスミド及び形質転換体の作製方法、あるいは組換タンパク質の生産方法は、本発明の第4の態様の項に記載したように、全て当業者にとって周知の方法である。
本発明の第11の態様は、本発明の第4態様又は第6態様のタンパク質の、少なくとも6アミノ酸以上の部分よりなるペプチドである。ここで、「少なくとも6アミノ酸以上」との限定は、安定な構造をとり得る最小のサイズが6アミノ酸であることによるが、好ましくは8アミノ酸以上の部分よりなるペプチドが、より好ましくは10〜20個程度のアミノ酸からなるペプチドが好ましい。該ペプチドは、10〜20個程度の短いものであればペプチド合成装置により合成することができるし、長いものであれば通常の遺伝子工学的手法により調製されたDNAを、上述の動物細胞等により発現させることにより得ることができる。なお、このようにして作製されたペプチドを、通常の方法により修飾することも可能である。
これらペプチドは、後述の第12、第13態様の項に記載の医薬への応用が可能である他、抗体作製のためにも使用することができる。
本発明の第12の態様は、本発明の第11態様のペプチドのうち、神経の伸長に対して促進的に作用するものである。該ペプチドは、前記第11態様の項に記載の方法で作製することができる。また神経の伸長に対する促進的な作用は、本発明の第5態様の項に記載の如く、本発明の第1態様の項に記載の活性測定系にセマフォリンYを添加し、さらにそこへ被験物質(すなわち候補となるセマフォリンYのペプチド)を添加することにより、容易に測定することができる。詳しくは本発明の第18態様の項を参照されたい。
これらペプチドの具体例として、セマフォリンYの有する神経の伸長抑制作用を消失させたペプチドが考えられる。セマフォリンY活性を有さないペプチドがセマフォリンYのレセプター、あるいはセマフォリンYそのものに結合することによって、セマフォリンYがそのレセプターに結合するのを阻害し、神経の伸長促進作用を発揮すると考えられる。このようなペプチドは、後述の第21態様の項に記載のように、中枢神経の再生促進剤となるものが存在する。
本発明の第13の態様は、本発明の第11態様のペプチドのうち、配列番号:6に記載のアミノ酸配列の第198位のアスパラギン酸、あるいは該アスパラギン酸の位置に相当するアミノ酸を含有することを特徴とするペプチドである。該ペプチドは、前記第11態様に記載の方法にて作製することができる。
本発明の第1態様の項に記載したように、配列番号:6に記載のヒトセマフォリンYの第198位のアスパラギン酸(ラットでは第197位のアスパラギン酸)は、セマフォリンYの活性発現に重要であると考えられるアミノ酸である。従ってこのアミノ酸は、セマフォリンYとそのレセプターとの結合に関与している可能性があり、それゆえ該アミノ酸を含有する本態様のペプチドはセマフォリンYのレセプター、あるいはセマフォリンYそのものに結合することによってセマフォリンYがそのレセプターに結合するのを阻害し、セマフォリンYの有する神経の伸長抑制作用を阻害する(すなわち神経の伸長を促進する)ことが可能である。このような作用を有するペプチドは、後述の第21態様の項に記載のように、中枢神経の再生促進剤となるものが存在する。なお該神経の伸長促進活性は、本発明の第5態様の項に記載の如く、本発明の第1態様の項に記載の活性測定系にセマフォリンYを添加し、さらにそこへ被験物質(すなわち候補となるセマフォリンYのペプチド)を添加することにより容易に測定することができる。詳しくは本発明の第18態様の項を参照されたい。
本態様中「該アスパラギン酸の位置に相当するアミノ酸」とは、本発明の第4又は第6態様のタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:6に記載のヒトセマフォリンYのアミノ酸配列と最も一致するように並べた場合、ヒトセマフォリンYの198位に相当する位置にあるアミノ酸を指す。従って、「該アスパラギン酸の位置に相当するアミノ酸を含有することを特徴とするペプチド」とは、このヒトセマフォリンYの第198位に相当する位置にあるアミノ酸を有し、かつその前後のアミノ酸からなるペプチドを指す。
本発明の第14の態様は、本発明の第1〜第3態様のいずれか記載の遺伝子、あるいは第7態様のDNAの、少なくとも8塩基以上の部分に対応するアンチセンスヌクレオチド、あるいはその化学的修飾体である。
ここで「アンチセンスヌクレオチド」とは、アンチセンスオリゴヌクレオチド、もしくは、アンチセンスRNA又はアンチセンスDNAなどと呼ばれるものを指し、合成機を用いて人工的に合成したり、通常と逆の向き(すなわちアンチセンスの向き)に遺伝子を発現させることなどによって得ることができる。詳しくは、本発明の第21態様の項を参照されたい。
これらアンチセンスヌクレオチドは、後述の第15態様の項に記載したようなセマフォリンYの発現を抑制する目的で使用される他、in situハイブリダイゼーション等の研究用試薬としても有用である。また、本発明において「化学的修飾体」とは、具体的にはアンチセンスヌクレオチドの細胞内への移行性または細胞内での安定性を高めることができる化学的修飾体を表し、例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホトリエステル、アルキルホスホナート、アルキルホスホアミデート等の誘導体(”Antisense RNA and DNA”WILEY-LISS刊1992 P.1-50、J.Med.Chem.36,1923-1937(1993))が挙げられる。この化学的修飾体は、同文献等に従って調製することができる。
本発明の第15の態様は、本発明の第4態様のタンパク質の発現を抑制することを特徴とする、前記第14態様のアンチセンスヌクレオチド、あるいはその化学的修飾体である。
通常の遺伝子の転写によって生産されるmRNAはセンス鎖であるが、アンチセンスヌクレオチドあるいはその化学的修飾体は、細胞内でセンス鎖mRNAに結合し、該遺伝子の発現を抑制することができる。従って、該アンチセンスヌクレオチドあるいはその化学的修飾体は、セマフォリンYの発現を抑制することができ、該発現を抑制することによりセマフォリンYの有する活性を抑制することができる。このような効果を有するアンチセンスヌクレオチドあるいはその化学的修飾体には、後述の本発明の第21態様の項に記載の如く、中枢神経の再生促進剤となるものが存在する。
作製したアンチセンスヌクレオチドあるいはその化学的修飾体が目的の抑制効果を有しているか否かは、セマフォリンYを発現する細胞に外からアンチセンスオリゴヌクレオチドそのものを直接導入するか、或いは転写によって該アンチセンスRNAを生成する遺伝子を導入し、該セマフォリンYの発現量が減少するか否かを指標にして、容易に見い出すことができる。
この抑制効果を有するアンチセンスヌクレオチドとしては、上記各態様のセマフォリン遺伝子のコーディング部分、5’ノンコーディング部分のいずれの部分に対するものであっても良いが、好ましくは転写開始部位、翻訳開始部位、5’非翻訳領域、エクソンとイントロンとの境界領域もしくは5’CAP領域に対するアンチセンスヌクレオチドであることが望ましい。
本発明の第16の態様は、本発明の第4又は第6態様のタンパク質、あるいは第11〜第13態様のペプチドに対する抗体である。該抗体は、マウスやウサギを用いて、例えばカレント プロトコルズ イン イムノロジー2.4.1-2.6.6頁(1992刊、ジェー・イー・コリガン編集)に記載された方法により、容易に作製することができる。また前記参考書に述べられている手法を用いることで、容易にモノクローナル抗体を作製することも可能である。該抗体の用途としては、アフィニティークロマトグラフィー、cDNAライブラリーのスクリーニング、あるいは医薬・診断薬・研究用試薬等が挙げられる。該抗体の中にはセマフォリンYに対する中和活性を有するものが存在する。これら中和活性は、本発明の第5態様の項に記載の如く、本発明の第1態様の項に記載の活性測定系にセマフォリンYを添加し、さらにそこへ被験物質(すなわち候補となるセマフォリンYの抗体)を添加することにより、容易に測定することができる。そして該中和抗体には、本発明の第21態様の項に記載の如く、中枢神経の再生促進剤となるものが存在する。
本発明の第17の態様は、本発明の全ての遺伝子(DNA)、タンパク質、ペプチド、アンチセンスヌクレオチド又はその化学的修飾体、あるいは抗体の、いずれかを有効成分として含有する医薬である。
該医薬のうち、中枢神経の再生促進剤及び末梢神経の伸長抑制剤については本発明の第21及び第22態様の項に記載した。従ってこれら用途については、該21及び22態様の項を参照されたい。
近年、ある種のセマフォリンが、神経系のみならず非神経系においても重要な機能を担っていることが明らかになりつつある。すなわち、心筋の成長抑制に働いているという可能性が示唆されている(Nature,383,525-528(1996))。また、免疫系においても、ある種のセマフォリンがBリンパ球の凝集及び生存維持に関与していることが示唆されている(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93,11780-11785(1996))。さらに最近、ある種のセマフォリンがリウマチにおける免疫反応において何らかの役割を担っていることも示唆されている(B.B.R.C.,234,153-156(1997))。また、肺癌への関与も示唆されている(Proc.Natl.Acad.Sci USA,93,4120-4125(1996))。
従って本発明のセマフォリンY、あるいはその改変タンパク質、ペプチド、アンチセンスヌクレオチド等が、抗アレルギー剤、免疫抑制剤、あるいは抗癌剤として利用できることが考えられる。なお、これら医薬の具体的な用法・用量等については、本発明の第21又は第22の態様の項を参照されたい。
本発明の第18の態様は、本発明の第4態様のタンパク質を用いることを特徴とする、セマフォリンYアンタゴニストのスクリーニング方法である。ここで、「セマフォリンYアンタゴニスト」とは、例えばセマフォリンYの有する神経の伸長抑制作用を阻害する物質を指す。
該スクリーニングは、本発明の第1態様の項に述べたセマフォリンY活性測定系にセマフォリンYを添加し、さらにそこへ被験物質を添加することによって行う。即ち、セマフォリンYを添加して行うセマフォリンYの活性測定実験において、培養の期間を通して或いはその一時期だけ、被験物質を培養液に添加することによって、セマフォリンYの活性が阻害されることを指標とする。また、同濃度の被験物質単独では神経細胞の生存、突起伸長などに対して影響しないことを確認することも重要である。この両者が満たされた場合、この被験物質をセマフォリンYアンタゴニストと認定することができる。被験物質はあらかじめ水溶液であることが好ましいが、DMSOなどの有機溶媒を溶媒として用いることもできる。いずれの場合も神経細胞に対する溶媒の影響を除くために、加える体積は最小限にすることが大切であり、具体的には培養液に対して等量以下、好ましくは1/10以下、更に好ましくは1/100以下になるようにする。このようにして得られたセマフォリンYアンタゴニストには、後述の本発明の第21態様の項に記載したように、中枢神経の再生促進剤となるものが存在する。
本発明の第19の態様は、本発明の第18態様のスクリーニング方法を用いて得られるセマフォリンYアンタゴニストである。該アンタゴニストは、セマフォリンYの活性を阻害する物質であればその構造・形状等は問わない。
本発明の第20の態様は、本発明の第6態様のタンパク質、第11〜第13態様いずれか記載のペプチド、あるいは第16態様の抗体からなる、第19態様のセマフォリンYアンタゴニストである。すなわち、本発明の第6態様のタンパク質、第11〜第13態様いずれか記載のポリペプチド、あるいは第16態様の抗体のうち、セマフォリンYの有する活性を阻害する効果を有するものである。これらアンタゴニストは、本発明の第18態様のスクリーニング系に上記いずれかの物質を供することにより選び出すことができるものであり、選び出された該アンタゴニストには、後述の本発明の第21態様に記載の如き中枢神経の再生促進剤となるものが含まれる。
本発明の第21の態様は、本発明の第14又は第15態様のアンチセンスヌクレオチド又はその化学的修飾体、あるいは第19又は第20態様のセマフォリンYアンタゴニストの少なくとも一つを含有することを特徴とする、中枢神経の再生促進剤である。本態様は「中枢神経の再生治療」という用途に係わるものであるため、以下、具体的な用法・用量等につき説明する。
1)アンチセンスヌクレオチドあるいはその化学的修飾体
種々の疾患に対してアンチセンスヌクレオチドの適用が試みられているが、近年、神経系疾患に対しても、該アンチセンスヌクレオチドが適用可能であるとの認識がなされている(TINS 20,No.8,321-322(1997))。
本発明の第14又は第15態様の項に記載したように、本発明の第14又は第15態様のアンチセンスヌクレオチドまたはその化学的修飾体を用いてセマフォリンY遺伝子の発現を制御することができるため、セマフォリンタンパク質の存在量を減らし、中枢神経の再生を促進することができると思われる。治療方法としては、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその化学的修飾体をそのまま投与する方法、およびアンチセンスRNAを細胞内で生産する方法がある。
アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその化学的修飾体をそのまま投与する方法において、このアンチセンスオリゴヌクレオチドの好ましい長さとしては、例えば5−200塩基のものが挙げられ、さらに好ましくは8−25塩基が挙げられ、特に好ましくは12−25塩基のものが挙げられる。アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその化学的修飾体を安定化材、緩衝液、溶媒などと混合して製剤化した後、投与時には抗生物質、抗炎症剤、麻酔薬などと同時に用いることもできる。こうして調製された製剤は様々な方法で投与可能であるが、好ましくは神経の障害の著しい部位に局所的に投与される。神経の再生は通常数日から数カ月を要するものであり、その間、投与は連日または数日から数週間おきになされる。また、この様な頻回の投与を避けるために徐放性のミニペレット製剤を調製し患部近くに埋め込むことも可能である。あるいはオスモチックポンプなどを用いて患部に連続的に徐々に投与することも可能である。通常投与量は作用部位における濃度が0.1nM-10μMになるように調製する。
一方、アンチセンスRNAを細胞内で生産する方法において、このアンチセンスRNAの好ましい長さとしては、例えば100塩基以上が挙げられ、好ましくは300塩基以上が挙げられ、さらに好ましくは500塩基以上が挙げられる。
アンチセンスRNAを産生する遺伝子の患者への導入方法としては、直接生体内の細胞に遺伝子を導入するin vivo法、及び体外である種の細胞に遺伝子を導入し、その細胞を体内に戻すex vivo法がある(日経サイエンス,1994年4月号,20-45頁、月刊薬事,36(1),23-4 8(1994)、実験医学増刊,12(15),(1994)、およびこれらの引用文献等)が、in vivo法がより好ましい。
in vivo法としては、組換えウイルスを用いる方法及びその他の方法(日経サイエンス、1994年4月号、20-45頁、月刊薬事、36(1)、23-48(1994)、実験医学増刊、12(15)、全頁(1994)、及びこれらの引用文献等)のいずれの方法も適用することができる。
組換えウイルスを用いる方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス等のウイルスゲノムにセマフォリン遺伝子を組み込んで生体内に導入する方法が挙げられる。この中で、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス等を用いた方法が特に好ましい。
その他の方法としては、リポソーム法、リポフェクチン法等が挙げられ、特にリポソーム法が好ましい。
ex vivo法としては上記方法以外にマイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等も用いることができる。
患者への投与方法は、治療目的の疾患、症状などに応じた適当な投与経路により投与される。例えば、静脈、動脈、皮下、筋肉内等に投与するか、または神経などの疾患の対象部位に直接投与することができる。例えば、脊髄に感染させると脊髄で特異的にセマフォリン遺伝子の発現が抑制される。通常、本願のアンチセンスオリゴヌクレオチドの発現は数日から数カ月持続し、この1回の感染で神経の再生が十分に起こる。発現が弱いときは、再感染することもできる。in vivo法により投与される場合は、製剤形態(例えば、液剤など)をとりうるが、一般的には有効成分であるセマフォリン遺伝子を含有する注射剤等とされ、必要応じて、慣用の担体等を加えてもよい。また、セマフォリン遺伝子を含有するリポソームまたは膜融合リポソーム(センダイウイルス(HVJ)ーリポソーム等)においては、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤などのリポソーム製剤の形態とすることができる。
製剤中のセマフォリン遺伝子の含量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調節することができるが、通常セマフォリン遺伝子として、0.0001-100mg、好ましくは0.001-10mgであり、これを数日ないし数カ月に1回投与するのが好ましい。
2)セマフォリンYの改変タンパク質
本発明の第5、第6態様の項に記載したように、セマフォリンYの有する中枢神経伸長抑制活性を消失させた改変タンパク質を作製することができ、該改変タンパク質を生体内に投与することにより、セマフォリンYの代わりに該セマフォリンY改変タンパク質がセマフォリンYのリセプターに結合し、その結果、セマフォリンYの活性が抑制され、中枢神経の再生が促進されることが考えられる。
治療においては該セマフォリンYの改変タンパク質を安定化剤、緩衝液、希釈液と共に製剤化して患者に投与する。投与は様々な方法で可能であるが、好ましくは病床部位に局所的に投与する。神経の再生には通常数日から数カ月を要するので、その間セマフォリンYの活性を抑制するために1回もしくは2回以上投与する。2回以上投与するときは連日あるいは適当な間隔をおいて繰り返し投与することが望ましい。注射によって中枢神経系、例えば脊髄内に投与するときは、一回当たり数百μgから2g、好ましくは数十mg以下を用いる。投与回数を減らすために徐放性製剤を利用したり、オスモティックポンプなどで長期間に渡って少量ずつ投与する方法も可能である。あるいは該セマフォリンY改変タンパク質を発現する細胞を生体内に移植することによっても可能である。
3)セマフォリンYのペプチド
本発明の第11〜第13態様のペプチドの中には、セマフォリンYの受容体への結合を阻害することによって、セマフォリンYの有する中枢神経の伸長抑制活性を抑制し、その結果、中枢神経の再生を促進するものが存在する。このような効果を有するペプチドの具体例として、例えば本発明の第13態様の項に記載したように、配列番号:6に記載のヒトセマフォリンYの第198位のアスパラギン酸、或いは該アスパラギン酸の位置に相当するアミノ酸を含有することを特徴とするペプチドが挙げられる。なお阻害の様式は、競争阻害、非競争阻害、不競合阻害、アロステリック阻害のいずれの様式であるかを問わない。
これらポリペプチドの製剤化、投与法、投与量については上記「2)セマフォリンYの改変タンパク質」の項を参照されたい。
4)セマフォリンYの抗体
セマフォリンYの活性を中和する中和抗体を生体内に投与することにより、セマフォリンYの活性が阻害され、中枢神経の再生治療が促進されることが考えられる。
該中和抗体の製剤化、投与法、投与量については上記「2)セマフォリンYの改変タンパク質」の項に記載の通りであるが、別の方法として、Nature,343,269-272(1990)に記載されているように、モノクローナル抗体を産生する細胞を直接中枢神経系に移植する方法も可能である。
本発明の第22の態様は、本発明の第4態様のタンパク質の少なくとも一つを含有することを特徴とする、末梢神経の伸長抑制剤である。本発明の第4態様のタンパク質は、中枢神経の伸長に対して抑制的に作用し得るが、同時に末梢神経にもセマフォリンYに対するリセプターが発現している可能性があること、また、他のセマフォリンのリセプターがセマフォリンYに対しても反応する可能性があることなどから、末梢神経に対してもその伸長を抑制することが考えられる。従って末梢神経の伸長を抑制することにより、アトピー性皮膚炎、疼痛等の治療薬となることが考えられる。
これらタンパク質の製剤化、投与法、投与量については上記「2)セマフォリンYの誘導タンパク質」の項を参照されたい。
本発明の第23の態様は、本発明の第1〜第3又は第5態様の遺伝子、あるいは第7態様のDNAのいずれかを人為的に染色体中に挿入したか、あるいはいずれかをノックアウトさせたトランスジェニック動物である。
本発明のセマフォリンYの遺伝子情報を持ってすれば、以下の文献(ビー=ホーガンらの編纂によるマニピュレーションオブマウスエンブリオ1986年コールドスプリングハーバーラボラトリー、相澤慎一著 ジーンターゲッティング 1995年 羊土社、など)で明らかなように、現在の技術レベルでは当該領域の研究者にとって本発明の第1、第4、第7又は第9態様の遺伝子を発現するトランスジェニック動物を作製することはいとも簡単であり、こうして得られるトランスジェニック動物も当然のこととして本発明に含まれるものである。このようにして得られたトランスジェニック動物は医薬品開発のためのモデル動物として、あるいは医薬品のスクリーニング用の動物として非常に有用である。さらに、本発明の第1、第4、第7、第9態様の遺伝子を欠失した動物いわゆるノックアウト動物は当該遺伝子を有しないのが特徴であるが、文献に述べられているようにあるいは当該領域の研究者の常識として、本発明のセマフォリンYの遺伝子情報を利用して初めて作成が可能なものであり、従って本発明に含まれることは言うまでもない。
なお、上に述べたようにセマフォリンYは神経の再生に関する生体内の重要な機能を担っているが、一方で、前記したように、セマフォリンYはそれ以外の免疫抑制作用などの未知の機能を有している可能性も指摘されており(Cell,75,1389-1399(1993))、該セマフォリンYの遺伝子発現、蛋白の分布、機能などを調べることは当該領域の研究にとって、あるいは神経疾患などの患者の診断にとって非常に重要であり、本発明はかかる目的のために利用可能な遺伝子プローブ、抗体、組換タンパク質、トランスジェニック動物なども提供することができる。
【図面の簡単な説明】
図1:ノーザン解析による種々の組織におけるセマフォリンYの発現分布を示す電気泳動の写真。
6週令のラットの組織から全RNAを抽出し、1%寒天−ホルムアミドゲル中で電気泳動し、フィルターにブロッティング後32Pで標識したラットセマフォリンYDNAプローブでハイブリダイズし、セマフォリンYmRNA発現分布を調べた。各レーン15μgのRNAを泳動した。上図、オートラジオグラムの結果。18S、28SリボソームRNAの位置を図の左端に示した。下図、ゲルの臭化エチジウム染色像。上、下、2本のバンドは、それぞれ、28S、18SリボソームRNA。
図2:ノーザン解析による中枢神経系でのセマフォリンYの発現分布を示す電気泳動の写真。
6週令のラットの中枢神経組織から全RNAを抽出し、1%寒天−ホルムアミドゲル中で電気泳動し、フィルターにブロッティング後32Pで標識したラットセマフォリンYDNAプローブでハイブリダイズし、セマフォリンYmRNA発現分布を調べた。各レーン15μgのRNAを泳動した。上図、オートラジオグラムの結果。18S、28SリボソームRNAの位置を図の左端に示した。下図、ゲルの臭化エチジウム染色像。上、下の2本のバンドは、それぞれ、28S、18SのリボソームRNA。
図3:ノーザン解析によるヒト中枢神経組織におけるセマフォリンYmRNAの発現分布を示す電気泳動の写真。
ヒト中枢神経組織の種々の領域から調製されたmRNA(2μg/レーン)を電気泳動後、転写された膜フィルター(クローンテック)を、32Pで標識したセマフォリンYDNAプローブでハイブリダイズし、セマフォリンYmRNAの発現分布を調べた。図はそのオートラジオグラムの結果を示す。図中、矢印はセマフォリンYmRNAのバンドの位置を示す。図の左側にはサイズマーカー(kb)の位置を示した。
図4:セマフォリンYタンパク質のCOS7細胞における発現を示す電気泳動の写真。
セマフォリンYのC末端にヒトc-Myc由来の10アミノ酸を付加した発現プラスミドを構築し、これをCOS7細胞に導入して一過的に発現させた(図中、rSYmyc)。コントロールにはセマフォリンY遺伝子を含まないプラスミドを用いた(図中、Control)。プラスミド導入後3日目に細胞を回収し、膜画分を調製した。膜画分をSDS-PAGEで分画後、抗Myc抗体を用いてウェスタンブロットを行った。図中の矢印は、Mycペプチド付加セマフォリンYタンパク質のバンドの位置を示す。図の左側に分子量マーカーの各バンドの位置と分子量(kD)を示した。
図5:ノーザン解析による生体組織でのセマフォリンIIIの発現分布を示す電気泳動の写真。
成体マウスの種々の組織から全RNAを抽出し、1%寒天−ホルムアミドゲル中で電気泳動し、フィルターにブロッティング後、32Pで標識したマウスセマフォリンIII DNAプローブでハイブリし、セマフォリンIII mRNA発現分布を調べた。各レーン15μgのRNAを泳動した。上図、オートラジオグラムの結果。18S,28SリボソームRNAの位置を図の左端に示した。下図、ゲルの臭化エチジウム染色像。上、下の2本のバンドは、それぞれ、28S、18SのリボゾームRNA。
実施例
基本的な実験方法はManiatisらによって編纂されたMolecular Cloning 2nd Edt.(Cold Harbor Laboratory Press,1989),Ausubelらによって編纂されたCurrent Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons,1987)および東京大学医科学研究所制癌研究部編纂の細胞工学実験プロトコール(秀潤社、1991)などの多くの出版物に詳しく記載されている。尚、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものでなく、本発明の技術分野における通常の変更ができることは言うまでもない。
実施例1
ラットセマフォリンY遺伝子の単離
(1)新規セマフォリン遺伝子のデーターベースからの検索
ナショナルセンター フォー バイオテクノロジー リサーチ(アメリカ合衆国メリーランド州ベセスダ)のディービーイーエスティー(dbEST)データベースを用い、既知のセマフォリン遺伝子において比較的保存されているアミノ酸配列をコードしており、しかも末梢組織のcDNAからは得られず生後脳のcDNAのみから得られる配列を検索した。その結果、ファイル番号アール59527(R59527)の塩基配列が既知のセマフォリン遺伝子に共通している7個のアミノ酸からなる配列(Gln(またはArg)-Asp-Pro-Tyr-Cys-Ala(またはGly)-Trp)をコードすることを発見した。しかし、R59527の配列情報は僅か238塩基と、既知のセマフォリン遺伝子のcDNAと比較して非常に短く、しかもその中で既知のセマフォリンと共通の配列に翻訳できるのは全体のわずか数%のアミノ酸に限られていたこと、更にこのR59527には配列未確定の部分が存在していたためアミノ酸への読み枠も決定できなかったなどの理由から、このR59527の塩基配列が新規セマフォリン遺伝子の一部であることは結論できなかった。そこで、この配列を持つ遺伝子が成体の脳で発現していることを確認した上で、この配列を含むcDNAの全長をクローニングして遺伝子の構造を決定することとした。
(2)脳におけるR59527の配列を有する遺伝子の発現の確認
成人ヒト中枢神経系でこの遺伝子が発現していることを確認するため、R59527の塩基配列を基にして、約170bpの配列部分を挟む2本のDNAプライマー(5’TGGCTGTATTGTCTACCT3’(配列番号:8)、5’TGGATTCCTGGTTCCNAGCC3’(配列番号:9))を合成し、ヒト脳のcDNAライブラリー(クローンテック社製)から調製したcDNAを鋳型にして通常の条件でPCRを行った。その結果、期待通り約170bpの断片が増幅されてきた。続いてその断片がR59527と同じ塩基配列を有していることを確認するため、DNAをpCRII(インビトロジェン社製)にインビトロジェン社のプロトコールに従ってクローニングし、塩基配列を決定した。その結果得られた配列(配列番号:7に記載)はR59527と98%一致していたため、R59527の配列を含む遺伝子が成人ヒト脳において発現していることが確認できた。
(3)ラットセマフォリンY遺伝子の単離
次に、前記(2)でクローニングしたR59527の一部に相当する170bpの断片をプローブにしてこの配列を含むcDNA全長をクローニングし、構造を決定することとした。なお、ヒトに比べてcDNAライブラリーの作製がたやすいためラットの遺伝子をまずクローニングすることにした。ラット脳及び筋肉から通常の方法で調製したmRNAとラムダザップツー(λZapII)cDNAライブラリー作製キット(ストラタジーン社製)とを用いて、上記実験書に紹介されている通常の方法にてcDNAライブラリーを作製した。続いて、このcDNAライブラリーを用いて寒天プレート上に約15万プラークを作製し、このプラークをナイロン膜(日本ポール社製)に写し、DNAの変性、中和を行った後、0.6J/cm2の紫外線で固定し、ハイブリダイゼーションに用いた。ハイブリダイゼーションは、このナイロン膜とプローブとなる32Pでラベルした170bpのDNA断片(アマーシャム社製メガプライムDNAラベリングシステムを用いてアマーシャム社のプロトコールに従って作製した)とをハイブリダイゼーション溶液(45%(v/v)ホルムアミド、5×エスエスピィーイー溶液(SSPE,ここで1×SSPEとは0.15M塩化ナトリウム、10mMリン酸二水素ナトリウム、1mMエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの混合物をpH7.0に調製したものを表す)、2×デンハルト溶液(和光純薬製)、0.5%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、20μg/mlサケ精子DNA(和光純薬製))に入れ、42℃48時間静置することにより行った。反応後、ナイロン膜を室温で2-3回2×SSPE、0.5%(w/v)SDS中で10分間洗浄した後、更に、42℃で2-3回2×SSPE、0.5%(w/v)SDS中で10分間洗浄した。こうして得られたフィルターをBAS2000バイオイメージアナライザー(富士フィルム製)で解析し、6個の陽性シグナルを得た。陽性シグナルの位置にあるプラークを寒天プレートから切り出し、20μlクロロフォルムを添加した500μlエスエム(SM)バッファー(100mM塩化ナトリウム、15mM硫酸マグネシウム、50mMトリス(pH7.5)、0.01%ゼラチン)に入れた後、4℃一晩放置し、ファージを溶出した。こうして得られた組換ラムダファージを先と同様の手順で2次スクリーニングし、単一プラークを分離した。得られたファージを以下に示すようにストラタジーン社のプロトコールに従って処理し、cDNAインサートを持つファージミドのインビボ切り出しを行った。すなわち、二次スクリーニングから得られた4個のシングルプラークを含む寒天ゲルをそれぞれ500μlのSMバッファーに入れ20μlのクロロホルムを加えた後4℃一晩静置した。このファージ溶液250μlと、OD600=1.0になるように10mM塩化マグネシウム中に懸濁した大腸菌XL-1BlueMRF’200μl、更に、1μlのエックスアシスト(ExAssist)ヘルパーファージ(>1x106pfu/ml)とを混ぜ、37℃15分間培養した。続いて、3mlのエルピー培地(0.5%(w/v)塩化ナトリウム、1%(w/v)バクトトリプトン(ディフコ社製)、0.5%(w/v)イーストエキストラクト(ディフコ社製)を混合後5M水酸化ナトリウムでpH7.0に調製)を加えて37℃で2-3時間振とう培養した。2000×g 15分間遠心して菌体を除去し上清を70℃15分加熱処理した。その後、再び2000×g 15分間遠心し、上清をcDNAインサートを持ったファージミドの保存液として回収した。このファージミドの保存液10-100μlを200μlの大腸菌SOLR(OD600=1.0)に混合し、15分間37℃で培養した後、アンピシリンプレートに10-50μlまき、37℃一晩培養し、上記陽性プラークのファージミドを有する大腸菌株を取得した。
(4)DNAシーケンシング
得られたcDNAクローンの塩基配列をパーキンエルマー社の377型DNAシーケンサーを用いて解析し、全塩基配列を決定した。なお、反応にはプリズムダイターミネーションキット(パーキンエルマー社製)を用いた。決定したDNA塩基配列(3195塩基)を配列番号:1に、また推定されるオープンリーディングフレーム(2787塩基)を配列番号:2に、またアミノ酸配列(929アミノ酸)を配列番号:3に示す。
この遺伝子は、そのアミノ酸配列の第46位から第570位に、いわゆるセマフォリンドメインを有していたことから、確かにセマフォリンファミリーに属するタンパクであることが確認されたため、この遺伝子をセマフォリンYと名付けた。またこの配列番号1に示すセマフォリンY遺伝子の1574番目から1811番目の塩基配列が238bpからなるR59527の配列全長に対して89%の一致を示したころから、R59527がヒト型セマフォリンY遺伝子の部分配列であることが明らかになった。
実施例2
ノーザン解析によるラットセマフォリンYの発現分布
ラットの組織におけるセマフォリンY遺伝子の発現分布を調べるために種々の組織からRNAを調製しノーザン解析を行った。RNAの調製は以下のようにラットの様々な組織を材料にしてエージーピーシー法(辻孝、沖村敏一;実験医学1991年9巻1937-1940頁、エフ・エム・アウスベルら編カレントプロトコルズインモレキュラーバイオロジー1989年4.2.4−4.2.8頁(グリーンアソシエイツアンドウィリー−インターサイエンス社))で行った。簡単に述べると、切り出した組織1g当たり10mlの変性溶液(4Mグアニジンチオシアン酸、25mMクエン酸ナトリウム(pH7.0)、0.5%サルコシル、0.1M2-メルカプトエタノール)を加えポリトロンホモゲナイザーを用いて素早くホモゲナイズした。その後、0.1容の2M酢酸ナトリウム(pH4.0)、一容の水飽和フェノール、0.2容のクロロホルム−イソアミルアルコール(49:1)を加えて激しく攪拌した後、遠心して水層を分取し、イソプロピルアルコールを等容加えて-20℃で1時間放置した。遠心で沈殿を回収し、再び1g組織当たり2-3mlの変性溶液に溶解、等容のイソプロピルアルコールを加え-20℃1時間静置した後、RNAを遠沈した。75%のエチルアルコールで沈殿を洗い軽く乾燥させた後適当な体積の水に溶解した。
続いて、以下に述べる通常の方法でRNAの電気泳動とノーザンブロッティングを行った。まず、様々な組織から調製したRNAをホルムアルデヒドを含む1%アガロースゲル中で電気泳動した。そのゲルを50mMNaOHで20分間振とうした後、10XSSPE中で40分間振とうした。その後、RNAを毛細管現象を利用してナイロン膜(バイオダインB、日本ポール社製)にブロッティングし、スタラタジーン社のUVクロスリンカーを用いて固定し(0.6J/cm2)ハイブリダイゼーションに用いるナイロン膜を得た。プローブの作製は以下のようにした。まず、2本のプライマー(5’TGTGTAAACGTGACATGG3’(配列番号:10)、5’TGCTAGTCAGAGTGAGGA3(配列番号:11))を用いて上記実施例1で得られたラットセマフォリンYDNAを鋳型にしてPCRを行い、477bpの断片を増幅した。この断片を上記と同様の方法でpCRIIにクローニングした後、塩基配列を決定し、ラットセマフォリンYの遺伝子断片であることを確認した。このプラスミドDNAを鋳型にして上記のプライマーを用いて通常の方法でPCRを行い目的の545bpの断片を増幅した。増幅されたDNAをアガロースゲルを用いて分離・精製したものを、上記実施例1と同様にアマーシャム社製メガプライムDNAラベリングシステムを用いて32Pで標識し、プローブとした。ハイブリダイゼーション反応は、RNAをブロッティングしたナイロン膜とプローブDNAを上記(2)と同様のハイブリダイゼーション溶液中で42℃48時間放置し行った。反応後、ナイロン膜を42℃の2XSSPE、0.5%(w/v)SDS中で10分間2-3回洗浄した後、更に、55℃の2XSSPE、0.5%SDS(w/v)中で10分間2-3回洗浄した後、膜上の放射活性をBAS2000バイオイメージアナライザーで解析した。その結果、図1及び図2に示したように、セマフォリンYのmRNAは成体の中枢神経系で広く発現している一方、末梢組織では筋肉のみでしか発現が確認されず中枢神経再生阻止因子たるセマフォリン遺伝子の期待した特徴を備えていた。
実施例3
ヒト型セマフォリンYの配列決定
上に述べたようにR59527の配列がヒト型セマフォリンY遺伝子の一部分であることが確実となったため、R59527の配列を含んでいるESTクローン(#41581)を米国ジェノムシステムズ社より入手し、上記の方法で全塩基配列を決定した。この決定された塩基配列は配列番号1のラットセマフォリンYの塩基配列と全長にわたって高い相同性を示し、74%の塩基が一致していた。またこの5’側にはオープンリーディングフレームの一部と思われる連続して427個のアミノ酸に翻訳できる領域が存在した。このアミノ酸配列は配列番号3のラットセマフォリンY遺伝子の504番目から929番目までの配列と82%の一致を示し、この配列が間違いなくヒト型セマフォリンYの一部分であることが示された。しかしながら、この#41581のクローンからはヒトセマフォリンYのN末に相当する配列は決定できなかった。続いてヒトセマフォリンYの全長の塩基配列を決定するため、種々のラットセマフォリンYcDNA断片をプローブにして、上記と同様の方法で、ストラタジーン社より購入したヒト海馬と前脳のcDNAライブラリーをスクリーニングし、クローン#10を得た。上記と同様の方法でクローン#10の塩基配列を決定したところ、この配列は先の#41581のクローンと約200塩基の重なりをもち、更に5’側に1700塩基以上のcDNA配列を含んでいた。#41581と#10により構築されたヒト型セマフォリンYの全塩基配列(3432塩基)を配列番号:4に、またオープンリーディングフレーム(2790塩基)を配列番号:5に、またアミノ酸配列(930アミノ酸)を配列番号:6に、それぞれ示す。ヒト型セマフォリンYはラット型セマフォリンYと、アミノ酸レベルで87%が一致していた。
なお、上記クローン#10のインサート部分(ヒト型セマフォリンYのcDNA部分)をベクターpBluescriptに組み込んだプラスミド(hSY10)をE.coli SOLR株に導入して得られた形質転換体であるE.coli SOLR(hSY10)は、茨城県つくば市東1丁目1番3号、工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている(微生物の表示:E.coli SOLR(hSY10);受託日:平成9年7月11日;受託番号:FERM BP-6021)。
また、上記クローン#41581のインサート部分(ヒト型セマフォリンYのcDNA部分)をベクターLafmidBAに組み込んだプラスミド、NO41581をE.coli DH10B株に導入して得られた形質転換体E.coli DH10B(NO41581)は、上記と同様に、工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている(微生物の表示:E.coli DH10B(NO41581);受託日:平成9年7月11日;受託番号:FERM BP-6022)。
実施例4
ノーザン解析によるヒトセマフォリンYの発現分布
ヒトmRNAブロッティングメンブレン(クローンテック社)を用い、PCRによって得られた配列番号:1の第832位から第1310位までの479bpのラットセマフォリンYcDNAをプローブとして、実施例2と同様の方法によりノーザン解析を行ない、ヒト成体の中枢神経組織内の種々の領域でのセマフォリンYmRNAの発現分布を調べた。図3に示したように、ヒトセマフォリンYmRNAは成体の中枢神経組織内各領域において広く発現しており、小脳で特に強い発現が認められた。
以上のようにヒトでのセマフォリンYもラットと同様、中枢神経組織において広く発現しており、セマフォリンYは齧歯類から霊長類に共通の機能を担っているものと思われる。
実施例5
動物細胞におけるセマフォリンYの発現
ラットセマフォリンY遺伝子の終始コドンの直前にAsp-Ile-Gly-Gly-Glu-Gln-Lys-Lue-Ile-Ser-Glu-Glu-Asp-Leuの配列からなるMycタグをコードする断片を挿入し、発現プラスミドpUCSRαに導入した。この発現プラスミドをDEAEデキストラン法(F.M.Ausubelらの編纂によるCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987))でCOS7細胞にトランスフェクションし、48時間後にセルスクレーパーを用いて細胞を回収した。回収した細胞を、蛋白分解酵素阻害剤を含むA液(10mM HEPES pH7.4,1mM EDTA,50μMロイペプチン、2μMペプスタチン、0.5mM PMSF,7.8m TIU/mlアプロチニンを含むハンクス生理食塩水)の存在下でホモジェナイズし、12000g、10分間の高速遠心で沈殿物と上清に分離した。膜画分を含む高速遠心の沈殿物はA液で2回洗った後、2倍量の2.25Mしょ糖/PBSに懸濁し、2.25Mしょ糖/PBS液上に重層し、更にその上に0.8Mしょ糖/PBS液を重層した後、12000g、20分間遠心した。下側の界面から膜画分を回収し、その後更に2回洗い、使用時まで-80℃で保存した。
得られた膜画分をSDS-PAGE(10%-20%濃度こう配ゲル)の後、常法どおりにウエスタンブロッティングし、本発明のセマフォリンYが産生されていることを確認した。その際、一次抗体には抗Myc抗体9E10(カルバイオケム社製)を、二次抗体にはアルカリフォスファターゼ標識の抗マウスIgG抗体(バイオソース社製)を用いた。ウエスタンブロッティングの結果、図4に示したように約130kDaの位置に特異的なバンドが観察され、Myc標識のラットセマフォリンY蛋白がCOS細胞で発現し膜に存在していることが確認できた。
実施例6
セマフォリンYの活性測定
前記実施例5で得られた細胞膜画分と、同様の方法でセマフォリンYを導入していないCOS7細胞から調製した細胞膜画分とを、in vitroで培養した中枢神経や後根神経節神経等の培養液に添加し、M.Igarashi et al.,Science,259,77-79(1993)に記載の方法で成長円錐の退縮活性を比較すると、該セマフォリンY蛋白の発現プラスミドを導入したCOS7細胞の膜画分が有為に高い成長円錐の退縮活性を有することが明らかとなる。
参考例1
セマフォリンIIIを用いたセマフォリン活性必須部位の同定
Neuron,14,941-948(1995)に記載のセマフォリンIIIの配列情報をもとにPCR反応を行い、発現プラスミドpUCSRαにセマフォリンIIIの構造遺伝子を組み込んだ。この発現プラスミドをDEAEデキストラン法でCOS7細胞に導入し、2日後に培養上清に含まれるセマフォリンIIIの活性を、Cell,75,217-227(1993)に記載の方法と同様の方法にてニワトリ後根神経節神経の成長円錐退縮活性を指標に調べたところ、全く活性を示さないクローンが1つ発見された。そこで、このクローンの塩基配列を決定したところ、198番目のアスパラギン酸がグリシンに変化していた。この198番目を含む前後の領域を他の既知の動物のセマフォリンと比較すると、この領域はセマフォリンドメイン内では際だって保存されている領域ではなかったが、このアスパラギン酸に相当する部位だけは一部のセマフォリンでグルタミン酸になっている以外では非常に良く保存されていた。このことから、このアスパラギン酸が活性発現に必須であることが示唆された。次にこの遺伝子に通常の方法で部位特異的突然変異を導入し、このグリシンをアスパラギン酸に修復したところ強い退縮活性が回復したため、この発現プラスミドのこれ以外の領域は正常に機能することを確認した。以上より、セマフォリンIIIの198番目のアスパラギン酸がセマフォリンの機能発現に必須であると考えられる。なおこのアスパラギン酸に相当するのが配列番号3のラットセマフォリンYのアミノ酸配列では197番目のアスパラギン酸であり、配列番号6のヒトセマフォリンYのアミノ酸配列では198番めのアスパラギン酸である。
参考例2
ノーザン解析によるセマフォリンIIIの組織特異的遺伝子発現
マウスの組織におけるセマフォリンIII遺伝子の発現分布を調べるために成体マウスの種々の組織からRNAを調製し、ノーザン解析を行った。RNAの調製、ブロッティング、ハイブリダイゼーションは、実施例2と同様の方法によって行った。プローブには参考例1に記載したマウスセマフォリンIII DNAの560bpのMspI断片を用いた。その結果、図5に示したように、成体におけるセマフォリンIIIの発現分布は、肺におけて非常に強い一方、中枢神経系ではむしろ弱いことが分かった。
発明の効果
本発明によって、神経の伸長に対し抑制的に作用するセマフォリンY及びその遺伝子、該セマフォリンY遺伝子にハイブリダイズする他のセマフォリン、該セマフォリンYの改変タンパク質、部分ペプチド、抗体、該セマフォリンY遺伝子のアンチセンスヌクレオチド、これらの物質の医薬・診断薬あるいは研究用試薬としての用途、さらには該セマフォリンYを用いたセマフォリンYアンタゴニストのスクリーニング方法、該スクリーニング方法により得られるセマフォリンYアンタゴニスト、これらアンタゴニストを含有する医薬、若しくは該セマフォリンYについてのトランスジェニック動物等が提供される。
配列表
配列番号:1
配列の長さ:3195
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:cDNA to mRNA
ハイポセティカル配列:No
アンチセンス:No
起源
生物名:ラット(Rattus norvegicus)
組織の種類:脳組織
配列の特徴
特徴を表す記号:5’UTR
存在位置:1..50
特徴を決定した方法:E
特徴を表す記号:CDS
存在位置:51..2837
特徴を決定した方法:E
特徴を表す記号:3’UTR
存在位置:2838..3195
特徴を決定した方法:E
配列
Figure 0004108755
Figure 0004108755
Figure 0004108755
配列番号:2
配列の長さ:2787
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:cDNA to mRNA
ハイポセティカル配列:No
アンチセンス:No
起源
生物名:ラット(Rattus norvegicus)
組織の種類:脳組織
配列の特徴
特徴を表す記号:CDS
存在位置:1..2787
特徴を決定した方法:E
配列
Figure 0004108755
Figure 0004108755
Figure 0004108755
配列番号:3
配列の長さ:929
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
起源
生物名:ラット(Rattus norvegicus)
組織の種類:脳組織
配列の特徴
特徴を表す記号:peptide
存在位置:1..929
特徴を決定した方法:P
配列
Figure 0004108755
Figure 0004108755
Figure 0004108755
Figure 0004108755
Figure 0004108755
配列番号:4
配列の長さ:3432
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:cDNA to mRNA
ハイポセティカル配列:No
アンチセンス:No
起源
生物名:ヒト(Homo sapiens)
組織の種類:小児脳組織
配列の特徴
特徴を表す記号:5’UTR
存在位置:1..187
特徴を決定した方法:E
特徴を表す記号:CDS
存在位置:188..2977
特徴を決定した方法:E
特徴を表す記号:3’UTR
存在位置:2978..3407
特徴を決定した方法:E
特徴を表す記号:polyA signal
存在位置:3408..3432
特徴を決定した方法:E
配列
Figure 0004108755
Figure 0004108755
Figure 0004108755
配列番号:5
配列の長さ:2790
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:cDNA to mRNA
ハイポセティカル配列:No
アンチセンス:No
起源
生物名:ヒト(Homo sapiens)
組織の種類:小児脳組織
配列の特徴
特徴を表す記号:CDS
存在位置:1..2790
特徴を決定した方法:E
配列
Figure 0004108755
Figure 0004108755
Figure 0004108755
配列番号:6
配列の長さ:930
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
起源
生物名:ヒト(Homo sapiens)
組織の種類:小児脳組織
配列の特徴
特徴を表す記号:peptide
存在位置:1..930
特徴を決定した方法:P
配列
Figure 0004108755
Figure 0004108755
Figure 0004108755
Figure 0004108755
Figure 0004108755
配列番号:7
配列の長さ:170
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:cDNA to mRNA
ハイポセティカル配列:No
アンチセンス:No
起源
生物名:ヒト(Homo sapiens)
組織の種類:脳組織
配列の特徴
特徴を表す記号:CDS
存在位置:1..170
特徴を決定した方法:E
配列
Figure 0004108755
配列番号:8
配列の長さ:18
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
ハイポセティカル配列:No
アンチセンス:No
配列の特徴
特徴を表す記号:CDS
存在位置:1..18
特徴を決定した方法:P
配列
Figure 0004108755
配列番号:9
配列の長さ:20
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
ハイポセティカル配列:No
アンチセンス:Yes
配列の特徴
特徴を表す記号:CDS
存在位置:1..20
特徴を決定した方法:P
配列
Figure 0004108755
配列番号:10
配列の長さ:18
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
ハイポセティカル配列:No
アンチセンス:No
配列の特徴
特徴を表す記号:CDS
存在位置:1..18
特徴を決定した方法:E
配列
Figure 0004108755
配列番号:11
配列の長さ:18
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
ハイポセティカル配列:No
アンチセンス:Yes
配列の特徴
特徴を表す記号:CDS
存在位置:1..18
特徴を決定した方法:E
配列
Figure 0004108755

Claims (12)

  1. 下記のいずれかのタンパク質をコードするDNA:
    (1)配列表の配列番号:3又は配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;及び
    (2)配列表の配列番号:3又は配列番号:6に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質。
  2. 請求項1に記載のDNAがコードするタンパク質。
  3. 下記のいずれかのタンパク質:
    (1)配列表の配列番号:3又は配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;及び
    (2)配列表の配列番号:3又は配列番号:6に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質。
  4. 下記のいずれかのDNA:
    (1)配列表の配列番号2又は配列番号5に記載の塩基配列からなるDNA;
    (2)配列表の配列番号2又は配列番号5に記載の塩基配列を含むDNA;
    (3)配列表の配列番号1又は配列番号4に記載の塩基配列からなるDNA;及び
    (4)(1)又は(3)記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ神経の伸長に対して抑制的に作用するタンパク質をコードするDNA。
  5. 請求項に記載のDNAがコードするタンパク質。
  6. 請求項1又は請求項4記載のDNAを発現する発現プラスミド。
  7. 請求項記載の発現プラスミドによって形質転換された形質転換体。
  8. 請求項記載の形質転換体を、請求項記載の発現プラスミドの発現可能な条件下で培養することを特徴とする、組換えタンパク質の生産方法。
  9. 請求項2、請求項3又は請求項5記載のいずれかのタンパク質に対する抗体。
  10. 請求項2、請求項3又は請求項5記載のいずれかのタンパク質を用いることを特徴とする、セマフォリンYの有する神経伸長抑制作用を阻害する物質のスクリーニング方法。
  11. 請求項2、請求項3又は請求項5記載のタンパク質の少なくとも一つを含有することを特徴とする、末梢神経の伸長抑制剤。
  12. 請求項1又は請求項4記載のDNAのいずれかを人為的に染色体中に挿入したか、あるいはいずれかをノックアウトさせたヒト以外のトランスジェニック動物。
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