JP2004180540A - 哺乳動物のToll様受容体3に結合する新規アダプタータンパク質およびその遺伝子 - Google Patents

哺乳動物のToll様受容体3に結合する新規アダプタータンパク質およびその遺伝子 Download PDF

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Abstract

【課題】B型肝炎やC型肝炎等のウイルス感染症等の予防・治療、腫瘍の治療等に有効なI型インターフェロンの産生を制御する、哺乳動物のToll様受容体3に結合する性質を持つ新規アダプタータンパク質およびその遺伝子を提供する。
【解決手段】新規アダプタータンパク質TICAM−1は、ヒト由来の特定のアミノ酸配列からなり、哺乳動物のToll様受容体3に対して特異的に結合する性質と、I型インターフェロンの産生を誘導する性質とを併せ持つ。上記アダプタータンパク質TICAM−1の変異体は、TIRドメインを有していれば、同様の性質を持つ。また、遺伝子は、アダプタータンパク質TICAM−1をコードする遺伝子である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、哺乳動物のToll様受容体3に結合してI型インターフェロンの産生を誘導しうる性質を持つ新規アダプタータンパク質およびその変異体、並びにそれをコードする遺伝子、その用途に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インターフェロンは、ウイルスに対する適応免疫応答において重要な役割を果たすタンパク質である。
【0003】
前述したように、インターフェロンは、適応免疫系において重要な役割を果たしており、適応免疫系におけるインターフェロンの役割については詳細な研究がなされている。しかしながら、病原体に対する免疫応答の際に、生体内でインターフェロンがどのようなシグナル伝達経路を介して産生されるかについてはほとんど解明されていなかった。
【0004】
最近、哺乳動物の自然免疫系において病原体を認識する受容体としてToll様受容体(Toll−like Receptor;以下、適宜「TLR」と略記する)が発見され、このTLRに関する研究により、自然免疫系における病原体の認識に係わるシグナル伝達経路が明らかにされつつある。
【0005】
哺乳動物のTLRファミリーは、ショウジョウバエとヒトとの種の違いを越えて保存されていると考えられる主要な組織であり、様々な微生物構成成分を認識し、核因子κB(以下、「NF−κB」と略記する)の活性化および他のシグナル伝達経路を媒介する。
【0006】
現在、ヒトでは、TLRファミリーに属する10種の受容体(ヒトTLR1〜10)が確認されており、これらのマウス相同体(マウスTLR1〜10)も確認されている。TLRファミリータンパク質は、複数のロイシン・リッチ・リピート(LRR)およびそれとカルボキシル末端(C末端)隣接領域を含む細胞外領域と、Toll/インターロイキン1受容体相同ドメイン(TIR)と呼ばれる細胞質の(細胞内の)シグナル伝達領域とから構成されている。各TLRは、特有の1種または複数種のリガンドを細胞外領域で認識し、細胞内のTIRを媒介すると推測される免疫応答を誘発する。各TLRによって誘発される免疫応答は、互いに異なっており、一部が重複していることもある。
【0007】
ほとんどのTLRファミリーのタンパク質に共通する細胞質領域のTIRドメインは、シグナル伝達およびアダプター分子MyD88またはMal/TIRAPの相互作用を引き起こすと考えられている。すなわち、TLR2、TLR4、TLR5、TLR7、およびTLR9は、アゴニスト刺激の下でアダプター分子MyD88によってシグナルを伝達してNF−κBを活性化する。
【0008】
一方、最近、TLR4を介するシグナル伝達経路においては、TLR4と会合するアダプター分子Mal/TIRAP(MyD88−adapter−likeあるいはTIRAPと呼ばれているアダプター分子)が関与していることが報告されている(非特許文献2〜4参照)。
【0009】
上記の報告によれば、TLR4は、NF−κB、MAPK、およびインターフェロンβプロモータの活性化に関与している。このインターフェロンβプロモータの活性化を誘導するTLR4の特有の能力は、「アダプター分子MyD88に非依存的なシグナル伝達経路」と呼ばれている、TLR4と会合するアダプター分子Mal/TIRAPによって媒介されるシグナル伝達経路に起因している。すなわち、TLR4を介するシグナル伝達では、アダプター分子MyD88と異なる第2のアダプター分子Mal/TIRAPとTLR4との協働によって、NF−κBおよびI型インターフェロンプロモータの活性化が制御される。
マクロファージ(Mf)においては、TLR2刺激ではなくTLR4刺激の結果として、インターフェロンβのプロモータ活性化がSTAT1によるα/βリン酸化を誘導する。その後、インターフェロンβをコードしている遺伝子の発現は、MCP(Monocyte Chemoattractant Protein)−5、IP(インターフェロン誘導タンパク質)−10、およびiNOS(誘導型NO合成酵素)の産生を誘導する。これは、再びアダプター分子MyD88に非依存的な経路を介して起こり、MyD88−/−細胞(アダプター分子MyD88を欠損させた細胞)でさえ起こる。
【0010】
現在まで最も可能性が高いと思われていた概念は、アダプター分子Mal/TIRAPがアダプター分子MyD88に非依存的な経路をカバーするということである。
【0011】
これに対して、本願発明者等は、二本鎖RNAによって誘導されヒトTLR3を介した免疫応答を研究し、ヒトの線維芽細胞において、ヒトTLR3が、細胞表面上での二本鎖RNAの認識に関与し、インターフェロンβ産生を誘導する下流のシグナル伝達を引き起こすことを見出した(非特許文献1参照)。すなわち、インターフェロンβプロモータの活性化およびインターフェロンβの産生が、二本鎖RNAに応答したヒトTLR3によって強くかつ急速に誘導されることを示した(非特許文献1参照)。ヒトTLR3は、二本鎖RNAの類似体であるポリ(I:C)にも応答してNF−κBおよびインターフェロンβプロモーターを活性化させる(非特許文献1参照)。リポーター遺伝子分析により、ヒトTLR3は、インターフェロンβプロモータの活性化を媒介するが、NF−κBの活性化はそれより低いレベルでしか媒介しないことが明らかになった(非特許文献1参照)。この結果は、他のTLR、TLR2、TLR5、TLR7、およびTLR9が、それらに特有のリガンドを認識したのに続いて、アダプター分子MyD88を介してNF−κBおよびp38 MAPK(MAPキナーゼ)を活性化したのと著しく異なっている。
【0012】
ところで、TLR3によって誘導されるI型インターフェロン(インターフェロンαおよびインターフェロンβ)は、抗ウイルス作用や抗がん作用を示すことが知られている。詳細には、I型インターフェロンは、以下のような作用を持つことが知られている。
【0013】
I型インターフェロンは、以下のような複数の作用機序により抗ウイルス作用を奏することが知られている。
【0014】
▲1▼ウイルスのmRNAを不安定化し、宿主のタンパク翻訳を抑制する細胞内遺伝子を活性化する。これにより、ウイルスの複製を抑制し、ウイルスの増殖を抑制する。
【0015】
▲2▼MHCクラスI分子の発現を誘導し、ナチュラルキラー(NK)細胞に対する抵抗性を誘導する。細胞障害性CD8T細胞に対する感受性を亢進させる。さらに、T細胞の活性化の抑制およびT細胞サプレッサー活性の増強にも関与する。
【0016】
▲3▼ウイルス感染細胞を選択的に障害するナチュラルキラー(NK)細胞を活性化し、ナチュラルキラー(NK)細胞によるアポトーシスをウイルスに誘導する。
【0017】
また、I型インターフェロンは、以下のような複数の作用機序により抗腫瘍作用を奏することが知られている。
【0018】
1)腫瘍細胞内のmRNAを不安定化し、宿主のタンパク翻訳を抑制する細胞内遺伝子を活性化する。これにより、腫瘍細胞内のタンパク質の合成を抑制し、腫瘍細胞の増殖を抑制する。
【0019】
2)マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞等の抗腫瘍エフェクターを活性化し、これらの抗腫瘍エフェクターにより腫瘍細胞を障害することで、腫瘍細胞にアポトーシスを誘導する。
【0020】
3)ウイルス感染細胞を選択的に障害するナチュラルキラー(NK)細胞を活性化し、ナチュラルキラー(NK)細胞によるアポトーシスを腫瘍細胞に誘導する。
【0021】
さらに、I型インターフェロンは、前述したようにT細胞の活性化の抑制、T細胞サプレッサー活性の増強にも関与することから、ある種の自己免疫疾患を改善できると考えられる。
【0022】
I型インターフェロンは、以上のような抗ウイルス作用および抗腫瘍作用を持つことから、従来より、インターフェロンα製剤やインターフェロンβ製剤が、B型肝炎、C型肝炎、C型肝炎から誘発される肝がん、腎臓がん等の治療剤として使用されている。例えば、天然型インターフェロンα製剤である住友製薬株式会社製の「スミフェロン(登録商標)」などが、臨床応用において好成績を挙げている。
【0023】
【非特許文献1】
Matsumoto, M., Kikkawa, S., Kohase, M., Miyake, K., & Seya, T. Establishment of a monoclonal antibody against human Toll−like receptor 3 that blocks double−stranded RNA−mediated signaling. Biochem. Biophys. Res. Commun. 293: 1364−1369(2002年5月31日電子発行)
【0024】
【非特許文献2】
Kawai, T., et a. Lipopolysaccharide stimulates the MyD88−independent pathway and results in activation of IFN−regulatory factor 3 and the expression of a subset of lipopolysaccharide−inducible genes. J. Immunol. 167: 5887−5894 (2001)
【0025】
【非特許文献3】
Horng, T., Barton, G. M., & Medzhitov, R. TIRAP: an adapter molecule in the Toll signaling pathway. Nat. Immunol. 2: 835−841 (2001)
【0026】
【非特許文献4】
Fitzgerald, K. A., et al. Mal (MyD88−adapter−like) is required forToll−like receptor−4 signal transduction. Nature 413: 78−83 (2001)
【0027】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これまでのTLRに関する研究では、二本鎖RNAを認識したTLR3によりI型インターフェロンの産生が誘導されるシグナル伝達経路が、他のTLRを介したシグナル伝達経路とは異なることが示唆されているものの、このシグナル伝達経路に関与するタンパク質は解明されていない。
【0028】
もしTLR3と特異的に結合して下流のI型インターフェロンの産生に至るシグナル伝達を誘導するタンパク質の存在が明らかにされれば、ウイルスに対する自然免疫応答における重要なシグナル伝達経路およびその調節機構の解明が進むこととなり、自然免疫系に係わる種々の病気の病態解析や、自然免疫応答の調節による治療薬の開発等に有効利用できると考えられる。
【0029】
また、前述したウイルス感染症や腫瘍の治療に用いられているインターフェロン製剤は、全身投与なので、治療効果の得られる濃度では、精神・神経症状(うつ病等)、自己免疫疾患(甲状腺機能異常、自己免疫性肝炎、溶血性貧血、潰瘍性大腸炎、慢性関節リウマチ等)が悪化する等の副作用が強い。インターフェロン製剤による副作用は、本来はインターフェロンを産生しない正常な宿主細胞にまでインターフェロンが導入されてしまうために、本来は外部抗原に対する免疫応答時に行われるべきT細胞に対する自己抗原の提示が、インターフェロンの導入部位全体で誘導され、自己免疫現象が起こり易くなるためであると考えられる。
【0030】
このように、インターフェロン製剤は、治療効果の得られる濃度では副作用が強いため、全身投与では十分な抗がん作用を維持するのが難しい。また、インターフェロン製剤を局所投与したとしても、副作用を完全に避けることは難しいと考えられる。
【0031】
もしTLR3と特異的に結合して下流のI型インターフェロンの産生に至るシグナル伝達を誘導する新規なタンパク質を見出せば、生体内で局所的なI型インターフェロンの産生を亢進することによりウイルス感染症や腫瘍等を治療する新たな治療剤を開発することができると考えられる。また、この新規なタンパク質の機能解析を通じて生体内でI型インターフェロンの産生を阻害するタンパク質を提供し、このタンパク質により生体内でI型インターフェロンの産生を阻害することにより自己免疫疾患やアトピー性疾患等を治療する新たな治療剤を提供することができると考えられる。
【0032】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、哺乳動物のToll様受容体3に特異的に結合する性質を持つ新規アダプタータンパク質およびその変異体、上記タンパク質の遺伝子、上記遺伝子を含む組換え発現ベクター、上記タンパク質に対する抗体、並びにこれらを用いたウイルス感染症の予防・治療剤、腫瘍の治療剤、自己免疫疾患の治療剤、およびアトピー性疾患の治療剤を提供することにある。
【0033】
【課題を解決するための手段】
本願発明者等は、最近、ヒトTLR3が、現在知られているTLRファミリー全般のシグナル伝達に必須と考えられているアダプター分子MyD88、およびTLR4に会合するアダプター分子Mal/TIRAPに依存することなく、二本鎖RNA(リボ核酸)の存在を示すシグナルを伝達してインターフェロン(IFN)βの産生を誘導することを見出した。
【0034】
本願発明者は、哺乳動物のToll様受容体3に特異的に結合する性質を持つ新規なアダプタータンパク質について鋭意検討した結果、哺乳動物のToll様受容体3に特異的に結合する性質を持つ新規アダプタータンパク質を同定するとともに、その全長遺伝子配列を決定し、さらに、この新規タンパク質が、核因子を活性化しインターフェロンβの産生を誘導する機能を持つことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0035】
本発明に係るタンパク質は、配列番号2または4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質またはその変異体である。
【0036】
上記タンパク質は、後述するように、本願発明者等が初めて同定し、その全長アミノ酸配列を明らかにした新規のアダプタータンパク質(本願発明者等はこれを「TICAM−1」と命名した;以下、適宜「アダプタータンパク質TICAM−1」と記す)であり、配列番号2にはヒト由来のアミノ酸配列を、配列番号4にはマウス由来のアミノ酸配列をそれぞれ示す。このアダプタータンパク質TICAM−1は、後述するように、他のTLRやTLR3変異体等とは結合せずTLR3と特異的に結合し、哺乳動物の核因子κB(NF−κB)およびインターフェロンβプロモータを活性化し、インターフェロンβの産生を誘導する機能を持つことが確認された。
【0037】
したがって、上記タンパク質は、哺乳動物のI型インターフェロンの産生を亢進することができる。それゆえ、前述したI型インターフェロンの抗ウイルス作用や抗腫瘍作用を利用して、B型肝炎やC型肝炎等のウイルス感染症等の予防・治療(予防または治療)、腫瘍(がん)の自然免疫治療等が可能となる。
【0038】
すなわち、ウイルス感染症の殆どでウイルスの二本鎖RNAが関与することが証明されており、この二本鎖RNAは、TLR3によって認識され、TICAM−1を介したシグナル伝達経路によりI型インターフェロンの産生を誘導する。したがって、ウイルス感染症に対してアダプタータンパク質TICAM−1を投与すれば、ウイルス感染症に対する自然免疫系の免疫応答を増強し、ウイルス感染部位において選択的にI型インターフェロンを大量に産生させることができる。それゆえ、ウイルス非感染部位に対するI型インターフェロンの導入によって引き起こされる自己免疫疾患等の副作用を回避しながら、I型インターフェロンの抗ウイルス作用によりウイルス感染症を予防または治療することができる。
【0039】
また、アダプタータンパク質TICAM−1は、後述するように、TLR3と会合しなくとも、単独でI型インターフェロンの産生を誘導することが確認された。したがって、アダプタータンパク質TICAM−1は、ウイルス感染時以外にもI型インターフェロンの産生を誘導でき、I型インターフェロンの産生により改善される各種の疾患に有効である。例えば、腫瘍に対してアダプタータンパク質TICAM−1を投与すれば、I型インターフェロンの産生を誘導することができるので、I型インターフェロンの抗腫瘍作用を利用して腫瘍の治療が可能となる。
【0040】
また、上記タンパク質は、アダプター分子MyD88およびMal/TIRAPに非依存的なTLR3を介する新たなシグナル伝達経路が存在することを明らかにするものであり、この新たなシグナル伝達経路により、TLRファミリーからインターフェロンβプロモーターの活性化に至るシグナル伝達のミッシングリンクが説明可能となる。そのため、タンパク質は、上記TLR3を介したシグナル伝達系ならびにその調節機構を研究解析するための研究材料として有用であるばかりでなく、こうした研究を通じて、当該シグナル伝達系やその調節機構に関わる種々の病気の病態解析に有効利用できる可能性がある。
【0041】
なお、上記タンパク質が、インターフェロンαの産生を誘導する機能を持つかは検証されていないが、これまでの研究によりインターフェロンαおよびインターフェロンβの産生に係るシグナル伝達経路が共通していることが確認されていることから、上記タンパク質は、インターフェロンαの産生を誘導する機能も持っていると推定される。
【0042】
ここで、上記「タンパク質」は、細胞、組織などから単離精製された状態であってもよいし、タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞に導入して、そのタンパク質を細胞内発現させた状態であってもよい。また、本発明に係るタンパク質は、付加的なポリペプチドを含むものであってもよい。このようなポリペプチドが付加される場合としては、例えば、HAやFlag等によって本発明のタンパク質がエピトープ標識されるような場合が挙げられる。
【0043】
本発明に係る配列番号2または4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質の変異体は、配列番号2または4に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるものであって、(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち394〜532番目のアミノ酸配列(TIRドメイン)を有するもの、(b)配列番号4に示されるアミノ酸配列のうち396〜534番目のアミノ酸配列(TIRドメイン)を有するもの、(c)哺乳動物のToll様受容体3に対して特異的に結合する性質と、哺乳動物のI型インターフェロンの産生を誘導する性質とを併せ持つもの、(d)哺乳動物のI型インターフェロンの産生を誘導する性質を持つ一方、哺乳動物のToll様受容体3に対して特異的に結合する性質に異常(低下あるいは欠失)を持つもの、または(e)哺乳動物のToll様受容体3に対して特異的に結合する性質を持つ一方、哺乳動物のI型インターフェロンの産生を誘導する性質に異常を持つものである。上記(e)のタンパク質の具体例としては、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、少なくとも434番目のアミノ酸が置換又は欠失され、かつ、394〜532番目のアミノ酸配列(TIRドメイン)の少なくとも一部を保持しているヒト由来のタンパク質が挙げられる。
【0044】
上記タンパク質の変異体は、上記TLR3を介したシグナル伝達系ならびにその調節機構を研究解析するための研究材料として有用であるばかりでなく、こうした研究を通じて、当該シグナル伝達系やその調節機構に関わる種々の病気の病態解析に有効利用できる可能性がある。
【0045】
さらに、上記(a)〜(c)の変異タンパク質は、上記配列番号2または4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同様に、哺乳動物のI型インターフェロンの産生を亢進することができる。それゆえ、前述したI型インターフェロンの抗ウイルス作用や抗腫瘍作用を利用して、B型肝炎やC型肝炎等のウイルス感染症等の予防・治療(予防または治療)、腫瘍(がん)の自然免疫治療等が可能となる。
【0046】
上記(d)の変異タンパク質は、哺乳動物のI型インターフェロンの産生を亢進することができるので、I型インターフェロンの産生を亢進することによって改善される疾患(がんやウイルス感染症等)の予防または治療のための治療剤として使用することができる。
【0047】
上記(e)の変異タンパク質は、TLR3に結合してTLR3からI型インターフェロンの産生に至るシグナル伝達を阻害するので、哺乳動物のI型インターフェロンの産生を抑制することができる。それゆえ、それゆえ、I型インターフェロンの産生によって引き起こされる自己免疫疾患やアトピー性疾患等の疾患の予防または治療に使用できると考えられる。
【0048】
また、上記(a)〜(e)の変異タンパク質は、例えば、野生型タンパク質と構造を比較することにより、その構造の中で活性に必須な領域が明らかになるという、タンパク質の機能解析においても有用である。
【0049】
なお、上記「1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異タンパク質作製法により置換、欠失、挿入、及び/又は付加できる程度の数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されることを意義する。換言すれば、配列番号2または4に示されるアミノ酸配列の1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるものとは、配列番号2または4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質を変異した変異体(変異タンパク質)である。ここにいう「変異」は、主として公知の変異タンパク質作製法により人為的に導入された変異を意味するが、天然に存在する同様の変異タンパク質を単離精製したものであってもよい。
【0050】
本発明に係る遺伝子は、上記タンパク質のいずれかをコードする遺伝子である。
【0051】
上記遺伝子は、上記TLR3を介したシグナル伝達系ならびにその調節機構を研究解析するための研究材料として有用であるばかりでなく、こうした研究を通じて、当該シグナル伝達系やその調節機構に関わる種々の病気の病態解析に有効利用できる可能性がある。
【0052】
なお、上記「遺伝子」とは、少なくともゲノムDNA、cDNA、mRNAを含む意味であり、本発明に係る遺伝子としては、▲1▼配列番号1に示される塩基配列のうち、63〜2198番目の塩基配列をオープンリーディングフレームとして有するヒト由来のcDNA、▲2▼配列番号3に示される塩基配列のうち、66〜2261番目の塩基配列をオープンリーディングフレームとして有するマウス由来のcDNA、▲3▼これらcDNAの塩基配列に対応する塩基配列を有するmRNAが例として挙げられる。
【0053】
また、上記「遺伝子」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAやRNAを包含する。さらに、上記「遺伝子」は、オープンリーディングフレーム以外に、非翻訳領域(UTR)の配列やベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの配列を含むものであってもよい。例えば、タンパク質をコードする配列をベクター配列につないで本発明の遺伝子を構成し、これを適当な宿主で増幅させることにより、本発明の遺伝子を所望に増幅させることができる。また、本発明の遺伝子の一部配列をプローブに用いてもよい。このようにプローブに用いる場合としては、例えば、本発明の遺伝子の一部配列をチップ上に固定してDNAチップを構成し、当該DNAチップを各種検査・診断用に用いるような場合が挙げられる。
【0054】
本発明に係る組換え発現ベクターは、上記遺伝子を含むものである。
【0055】
この組換え発現ベクターを用いると、公知の遺伝子工学的手法(遺伝子操作技術)により標的細胞を形質転換して標的細胞に上記遺伝子を導入することができる。
【0056】
上記形質転換により得られる形質転換体は、上記TLR3を介したシグナル伝達系ならびにその調節機構を研究解析するための研究材料として有用であるばかりでなく、こうした研究を通じて、当該シグナル伝達系やその調節機構に関わる種々の病気の病態解析に有効利用できる可能性がある。
【0057】
また、上記形質転換によって、この組換え発現ベクターに含まれる遺伝子を哺乳動物の標的細胞(宿主細胞)内に導入し、その細胞内で発現させることで、哺乳動物のI型インターフェロンの産生を制御することができる。それゆえ、上記組換え発現ベクターは、I型インターフェロンの産生を亢進することによって改善される疾患(ウイルス感染症や腫瘍等)、あるいはI型インターフェロンの産生によって引き起こされる疾患の遺伝子治療が可能となる。
【0058】
本発明に係る抗体は、上記タンパク質に特異的に結合する抗体である。
【0059】
上記抗体は、宿主細胞におけるアダプタータンパク質TICAM−1の発現の検出、アダプタータンパク質TICAM−1の製造・精製等に有用であると考えられる。
【0060】
また、上記抗体は、哺乳動物のToll様受容体3に対して特異的に結合する性質を持つタンパク質に対して特異的に結合する抗体は、哺乳動物のToll様受容体3を介した免疫応答によるI型インターフェロンの産生を阻害することができる。I型インターフェロンの産生を亢進することによって改善される疾患(ウイルス感染症や腫瘍等)の予防・治療剤として有効である。
【0061】
【発明の実施の形態】
(1)本発明に係るアダプタータンパク質TICAM−1、及びその遺伝子の配列、構造等
本願発明者等は、〔実施例〕で述べるHEK293細胞のトランスフェクトの実験によって、二本鎖RNAによって誘導されるヒトTLR3を介したTLR3シグナル伝達は、その細胞質の末端であるTIRドメインを通して行われ、主としてアダプター分子MyD88およびMal/TIRAPに非依存的であることを見出した。
【0062】
そこで、本願発明者等は、少なくともTLR3を介するI型インターフェロンプロモータの活性化には別のアダプター分子が優先的に関与していると考えた。。
【0063】
本願発明者等は、I型インターフェロンの産生を誘導するシグナル伝達を優先的に媒介する、既知のアダプター分子MyD88およびMal/TIRAPとは異なる別のアダプター分子が存在するはずと考え、この未知のアダプター分子の同定を試みた。
【0064】
その結果、本願発明者等は、物理的にはヒトTLR3のToll/インターロイキン1受容体相同ドメイン(以下、「TIRドメイン」と略記する)と結合し、機能的にはポリイノシン酸−シチジル酸(以下、「ポリ(I:C)」と略記する)に応答してI型インターフェロンプロモーターの活性化を誘導する代替のアダプター分子を同定することに成功した。このアダプター分子は、TIRドメインを含有することから、本願発明者等は、「TIRドメイン含有アダプター分子」(以下、「TICAM−1」と略記する)と命名した。
【0065】
本発明に係るアダプタータンパク質TICAM−1のアミノ酸配列を、配列番号2および4に示す。配列番号2にはヒト由来のアダプタータンパク質TICAM−1(以下、「ヒトTICAM−1」と略記する)のアミノ酸配列を、配列番号4にはマウス由来のアダプタータンパク質TICAM−1(以下、「マウスTICAM−1」と略記する)をそれぞれ示す。
【0066】
また、上記アダプタータンパク質TICAM−1をコードする完全長cDNA配列の塩基配列を、配列番号1および3に示す。配列番号1にはヒトTICAM−1をコードするcDNAの塩基配列を、配列番号3にはマウスTICAM−1をコードするcDNAの塩基配列をそれぞれ示す。
【0067】
なお、配列番号1の塩基配列中、63〜2198番目の塩基配列が、ヒトTICAM−1をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)領域に相当する。また、配列番号3の塩基配列中、66〜2261番目の塩基配列が、上記マウスTICAM−1をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)領域に相当する。配列番号1および3に示される各cDNA配列は、このORF領域のほか5’側及び3’側にそれぞれ非翻訳領域(UTR)を含むものであった。
【0068】
ヒトTICAM−1は、N末端のプロリン・リッチ・ドメイン(1〜393番目のアミノ酸配列)、TIRドメイン(394〜532番目のアミノ酸配列)、およびC末端のプロリン・リッチ・ドメイン(533〜712番目のアミノ酸配列)から構成されていることが判明した(図5)。
【0069】
ヒトTICAM−1のcDNA配列のTIRドメインは、既知のアダプター分子、ヒトMal/TIRAP(非特許文献3・4参照)およびヒトMyD88のTIRドメイン(図6の「Mal(TIR).hu」および「MyD88(TIR).hu」)に対する類似性が低く、他のTIRドメイン含有タンパク質のTIRドメイン中における保存配列である、Box1の(F/Y)D、Box2のRD、およびBox3のFW(Xu, Y, et al. Structural basis for signal transduction by the Toll/interleukin−1 receptor domains, Nature 408: 111−115 (2000)参照)が全て欠失している点で特異的である(図6)。
【0070】
対照的に、ヒトTICAM−1では、TIR−MyD88を介するシグナル伝達に必須であり、既知のアダプター分子MyD88およびMal/TIRAPで保存されている、いわゆるBBループ(Xu, Y, et al. Structural basis for signal transduction by the Toll/interleukin−1 receptor domains, Nature 408: 111−115 (2000)参照)内のプロリンが良く保存されていた。
【0071】
このヒトTICAM−1と既知のアダプター分子MyD88およびMal/TIRAPとの間のもう1つの重要な相違点は、ヒトTICAM−1は、Death領域(細胞死誘導領域)、あるいはより短いMalに類似したN末端ドメインが欠失しており、その代わりに、プロリン・リッチな長いN末端領域およびC末端領域を含んでいる点である。
【0072】
また、上記ヒトTICAM−1のcDNA配列を用いて、ヒトゲノムドラフトシークエンスのデータベース検索を行った。その結果、ヒトTICAM−1をコードするcDNA配列は、染色体19p13.3(遺伝子座)上に存在することが判明した。
【0073】
なお、上記タンパク質や遺伝子は、診断にも利用できる可能性がある。すなわち、診断対象の個体から採取した細胞においてアダプタータンパク質TICAM−1または同様の機能を持つ変異体の発現の有無を検出すれば、この結果に基づいて個体がアダプタータンパク質TICAM−1の欠損や変異に起因する免疫不全症にかかっているか否かを診断することができると考えられる。アダプタータンパク質TICAM−1または同様の機能を持つ変異体の発現の有無を検出する方法としては、DNAチップを用いてアダプタータンパク質TICAM−1の遺伝子を検出する方法、個体のアダプタータンパク質の遺伝子における一塩基多型(SNPs)を調べる方法等が考えられる。
【0074】
(2)本発明に係るタンパク質、遺伝子の取得方法
本発明に係るタンパク質および遺伝子の取得方法について説明する。
【0075】
上記アダプタータンパク質TICAM−1をコードする遺伝子を取得する方法は、特に限定されるものではなく、前述の開示された配列情報等に基づいて種々の方法により、上記遺伝子配列を含むDNA断片を単離し、クローニングすることができる。例えば、上記アダプタータンパク質TICAM−1をコードするcDNAの一部配列と特異的にハイブリダイズするプローブを調製し、ヒトまたはマウスのゲノムDNAライブラリーやcDNAライブラリーをスクリーニングすればよい。このようなプローブとしては、上記アダプタータンパク質TICAM−1をコードするcDNAの塩基配列又はその相補配列の少なくとも一部に特異的にハイブリダイズするプローブであれば、いずれの配列・長さのものを用いてもよい。また、上記スクリーニングにおける各ステップについては、通常用いられる条件の下で行えばよい。
【0076】
上記スクリーニングによって得られたクローンは、制限酵素地図の作成及びその塩基配列決定(シークエンシング)によって、さらに詳しく解析することができる。これらの解析によって、本発明に係る遺伝子配列を含むDNA断片を取得したか容易に確認することができる。
【0077】
また、上記プローブの配列を、上記アダプタータンパク質TICAM−1の機能上重要と考えられるTIRドメインの中から選択し、ヒト・マウスやその他の哺乳動物のcDNAライブラリーをスクリーニングすれば、上記アダプタータンパク質TICAM−1と同様の機能を有する相同分子や類縁分子をコードする遺伝子を単離しクローニングできる。
【0078】
本発明に係る遺伝子(ポリヌクレオチド)を取得する方法は、上記スクリーニング法以外にも、PCR等の増幅手段を用いる方法がある。例えば、上記アダプタータンパク質TICAM−1のcDNA配列のうち、5’側及び3’側の非翻訳領域の配列(又はその相補配列)の中からそれぞれプライマーを調製し、これらプライマーを用いてヒト・マウスのゲノムDNA(又はcDNA)等を鋳型にしてPCR等を行い、両プライマー間に挟まれるDNA領域を増幅することで、本発明のポリヌクレオチドを含むDNA断片を大量に取得できる。
【0079】
本発明に係るタンパク質を取得する方法についても、特に限定されるものではなく、例えば、上述のようにして取得された遺伝子(上記アダプタータンパク質TICAM−1又はその相同分子等をコードするcDNA等)を、周知の方法により大腸菌や酵母等の微生物又は動物細胞などに組み入れ、そのcDNAがコードするタンパク質を発現させ精製することで、上記タンパク質アダプタータンパク質TICAM−1等の本発明に係るタンパク質を容易に取得することができる。尚、このように宿主に外来遺伝子を導入する場合、外来遺伝子の組換え領域に宿主内で機能するプロモータを組み入れた組換え発現ベクター及び宿主には様々なものがあるので、目的に応じたものを選択すればよい。産生されたタンパク質を取り出す方法は、用いた宿主、タンパク質の性質によって異なるが、タグの利用等により比較的容易に目的のタンパク質を精製することが可能である。
【0080】
(3)アダプタータンパク質TICAM−1及びその遺伝子等の有用性
アダプタータンパク質TICAM−1は、以下の2種類の作用機序により、I型インターフェロンの産生を亢進することができる。
【0081】
(a)ウイルスに感染した、TLR3を発現している宿主細胞内で、アダプタータンパク質TICAM−1が、ウイルス由来の二本鎖RNAを認識したTLR3と結合して、下流のI型インターフェロンの産生誘導に至るシグナル伝達を誘導し、I型インターフェロンの産生を強く亢進する。したがって、ウイルスに感染した宿主細胞において細胞特異的(局所的)にI型インターフェロンの産生を強く亢進することができる。すなわち、ウイルスに対する免疫応答を亢進できる。
【0082】
(b)ウイルスに感染していない宿主細胞内で、アダプタータンパク質TICAM−1が単独で発現して、下流のI型インターフェロンの産生誘導に至るシグナル伝達を誘導し、I型インターフェロンの産生を亢進する。このようなアダプタータンパク質TICAM−1の単独発現でも高いI型インターフェロン誘導活性がある。ただし、これによるI型インターフェロンの産生量は(a)によるものと比較すると少ない。
【0083】
これらの結果として、アダプタータンパク質TICAM−1は、以下のような有用性を持つ。
【0084】
▲1▼アダプタータンパク質TICAM−1あるいはアダプタータンパク質TICAM−1を有効成分として含む混合物は、ウイルス感染症の予防・治療剤として極めて有用である。すなわち、主として(a)の作用機序によるI型インターフェロンの産生亢進の結果として、ウイルス感染時に、前述したI型インターフェロンによる抗ウイルス効果を、ウイルスに感染した宿主細胞において細胞特異的(局所的)に亢進できる。すなわち、ウイルス感染に対するI型インターフェロンによる生体防御機能を強化できる。したがって、I型インターフェロンの過剰な産生による自己免疫疾患等の副作用を最小限に抑制しながらウイルス感染症を予防または治療できる。適用されるウイルス感染症としては、現時点でI型インターフェロンの有効性が確認されている疾患、すなわち、ウイルス性のB型肝炎およびC型肝炎(特に遺伝子型がIIaのものに有効)等が挙げられる。また、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって引き起こされる後天性免疫不全症候群(AIDS;免疫不応答感染症)にも適用できると考えられる。また、アダプタータンパク質TICAM−1は、ウイルスの潜伏感染が予想される部位にアダプタータンパク質TICAM−1を発現させることにより、ウイルス感染の予防が可能である。また、アダプタータンパク質TICAM−1は、単独発現((b)の作用機序)でも高いI型インターフェロン誘導活性があるので、TLR3が発現しない場合((a)の作用機序が有効でない場合)にも十分な抗ウイルス作用を奏する。
【0085】
▲2▼アダプタータンパク質TICAM−1あるいはアダプタータンパク質TICAM−1を有効成分として含む混合物は、腫瘍の治療剤としても有用である。すなわち、上記(b)の作用機序によるI型インターフェロンの産生亢進の結果として、前述したI型インターフェロンによる抗腫瘍効果を亢進できるので、自然免疫療法による腫瘍(癌)の治療が可能となる。適用される腫瘍としては、現時点でI型インターフェロンの有効性が確認されている悪性腫瘍(肝がん、腎臓がん、若年性咽頭乳頭腫、悪性リンパ腫、脳腫瘍、膠芽腫、髄芽腫、星細胞腫、皮膚悪性黒色腫等)が挙げられる。
【0086】
なお、本発明に係る治療剤の標的となる細胞としては、ウイルスの二本鎖RNAを認識するTLR3をその表面上で発現するものであることが望ましいが、本発明に係るタンパク質は単独でI型インターフェロンの産生を誘導することができるので、TLR3をその表面上で発現しない細胞にも適用可能である。ただし、ウイルス感染症に適用する場合には、ウイルスの二本鎖RNAを認識するTLR3をその表面上で発現する細胞に導入する方が好ましい。これにより、ウイルス感染部位において局所的にI型インターフェロンの産生を誘導することができ、I型インターフェロンの産生量の増大による副作用を最小限に抑えながら、I型インターフェロンの産生量の増大によるウイルス感染症の治療を効果的に行うことができる。
【0087】
本願発明者等の研究によれば、ヒトTLR3は、様々な樹状細胞(DC)サブセットの中で発現される。また、ヒトTLR3は、ヒト腸上皮細胞やヒト線維芽細胞の中で発現されることが報告されている(M.Muzio, D.Bosisio, N.Polentarutti, G.D’amico, A.Stoppacciro, R.Mancinelli C.van’t Veer, G.Penton−Rol,L.P.Ruco, P.Allavena, A.Mantovani, J.Immunol. 164 (2000) 5998−6004およびE.Cario, D.K.Podolsky, Infect.Immun. 68 (2000) 7010−7017)。このことは、その機能が、自然免疫系における微生物核酸成分に対する応答と密接に関連していることを示唆している。したがって、本発明に係るウイルス感染症の治療剤は、ヒトTLR3を発現してタイプIインターフェロンを産生する細胞、特に、ヒトTLR3をその表面上で発現すると共に、RNAウイルスを認識したときにI型インターフェロンを産生する細胞に対して効果的である。このような細胞としては、例えば、ヒト肺線維芽細胞やヒト包皮線維芽細胞等のヒト線維芽細胞、ヒト樹状細胞、ヒト腸上皮細胞等が挙げられる。特に、線維芽細胞は、RNAウイルス感染または二本鎖RNAによる処理の際に、異なる複数のシグナル伝達経路を経てI型インターフェロンを産生することが知られており、大きな効果が期待できる。また、マウスTLR3を発現してI型インターフェロンを産生する細胞としては、例えば、マウス線維芽細胞等の細胞が挙げられる。
【0088】
また、アダプタータンパク質TICAM−1を含む予防・治療剤の投与方法としては、静脈注射、皮下注射などが好ましいが、舌下錠や直腸投与などの非経口投与でもよい。また、投与形態として、通常の蛋白質の製剤化法により製剤化されたものを使用できる。また、リポソーム製剤などの乳化剤として使用することもできる。
【0089】
アダプタータンパク質TICAM−1は、上述した有用性に加えて、以下のような有用性を持つと考えられる。
【0090】
すなわち、上記(b)の作用機序によるI型インターフェロンの産生亢進の結果として、前述したI型インターフェロンによる免疫調節効果を亢進できるので、ある種の自己免疫疾患の治療が可能になると考えられる。
【0091】
また、アダプタータンパク質TICAM−1は、TLR3とアダプタータンパク質TICAM−1との結合、あるいはアダプタータンパク質TICAM−1から下流のI型インターフェロンの産生に至るシグナル伝達を亢進する化合物や、このシグナル伝達を阻害する化合物(阻害剤)のスクリーニング等にも利用できると考えられる。
【0092】
また、後述の実施例において詳述するように、上記アダプタータンパク質TICAM−1は、TLR3と結合し、I型インターフェロンの産生を誘導する分子であり、上記TLR3を介したシグナル伝達系において極めて重要な役割を果たす分子と考えられる。それゆえ、本発明に係る遺伝子およびタンパク質は、上記TLR3を介したシグナル伝達系ならびにその調節機構を研究解析するための研究材料として有用であるばかりでなく、こうした研究を通じて、当該シグナル伝達系やその調節機構に関わる種々の病気の病態解析にも有効利用できる可能性がある。
【0093】
(4)アダプタータンパク質TICAM−1の変異体
タンパク質の変異体が、野生型と同様の活性・機能を有する例は既に多数知られている。そのため、アダプタータンパク質TICAM−1と同様にTLR3と特異的に結合する性質およびI型インターフェロンの産生を誘導する性質を併せ持つアダプタータンパク質TICAM−1の変異体を作製する方法についても、特に限定されるものではなく、例えば、部位特異的突然変異誘発法(Hashimoto−Gotoh,Gene 152,271−275(1995)他)、PCR法等を利用して塩基配列に点変異を導入し変異体を作製する方法、あるいはトランスポゾンの挿入による突然変異株作製法などの周知の変異タンパク質作製法を用いて作製することができる。また、変異体の作製には、市販の突然変異誘発キット(例えば、ストラタジーン社製の位置指定突然変異誘発キット”QuickChange”)を利用してもよい。この場合、位置を、TLR3と特異的に結合する性質およびI型インターフェロンの産生を誘導する性質を持つ領域と考えられるTIRドメイン以外に変異を導入すれば、TLR3と特異的に結合する性質およびI型インターフェロンの産生を誘導する性質を併せ持つアダプタータンパク質TICAM−1の変異体を確実に作製することができると考えられる。
【0094】
すなわち、後段の実施例で述べるように、ヒトTICAM−1を構成するアミノ酸配列のうちほぼToll/インターロイキン1受容体に対して相同性を持つ領域(TIRドメイン)のみからなる、387〜556番目のアミノ酸配列からなる変異タンパク質が、ヒトTLR3と特異的に結合する性質およびI型インターフェロンの産生を誘導する性質を併せ持っていたことから、TIRドメイン(ヒトTICAM−1を構成するアミノ酸配列のうちの394〜532番目のアミノ酸配列あるいはマウスTICAM−1を構成するアミノ酸配列のうちの396〜534番目のアミノ酸配列)を少なくとも有する変異体であれば、TLR3と特異的に結合する性質およびI型インターフェロンの産生を誘導する性質を併せ持つと考えられる。
【0095】
TLR3と特異的に結合する性質およびI型インターフェロンの産生を誘導する性質を併せ持つアダプタータンパク質TICAM−1の変異体は、前述したアダプタータンパク質TICAM−1と同様の有用性、すなわち、▲1▼ウイルス感染症としての有用性、▲2▼腫瘍の治療剤としての有用性等を持つ。
【0096】
一方、アダプタータンパク質TICAM−1において、TLR3と特異的に結合する性質およびI型インターフェロンの産生を誘導する性質に重要な領域と考えられるTIRドメインに変異を生じさせれば、TLR3と特異的に結合する性質、I型インターフェロンの産生を誘導する性質のいずれか一方に異常を持つ変異タンパク質を作製できると考えられる。
【0097】
そして、後段の実施例で述べるように、ヒトTICAM−1を構成するアミノ酸配列のうちのほぼTIRドメイン(387〜556番目のアミノ酸配列)のみからなる変異タンパク質に対してさらに434番目(完全長のヒトTICAM−1での位置)のアミノ酸(プロリン)をヒスチジンに置換する点変異を導入した変異タンパク質が、TLR3に対して特異的に結合する性質を保持する一方、I型インターフェロンの産生を誘導する性質を失ったことから、アダプタータンパク質TICAM−1あるいはTIRドメインを少なくとも有するその変異体に対して、TIRドメインのうち、少なくとも434番目のアミノ酸(プロリン)を含む一部領域に変異を導入すれば、ヒトTLR3に対して特異的に結合する性質を持つ一方、I型インターフェロンの産生を誘導する性質に異常を持つ変異タンパク質を作製できると考えられる。
【0098】
このようなTLR3に対して特異的に結合する性質を持つ一方、I型インターフェロンの産生を誘導する性質に異常を持つアダプタータンパク質TICAM−1の変異体は、TLR3から下流のI型インターフェロンの産生に至るシグナル伝達を阻害して、I型インターフェロンの産生を抑制することができる。その結果、アダプタータンパク質TICAM−1の制御を介したTLR3から下流のI型インターフェロンの産生に至るシグナル伝達経路に起因した自己免疫疾患やアトピー性疾患等を治療できると考えられる。すなわち、上記変異タンパク質は、以下の有用性を有すると考えられる。
【0099】
(ア)上記変異タンパク質またはそれを有効成分として含む混合物は、自己免疫疾患の治療剤として有用である。
【0100】
(イ)上記変異タンパク質またはそれを有効成分として含む混合物は、アトピー性疾患の治療剤として有用である。
【0101】
一方、ヒトTICAM−1あるいはTIRドメインを少なくとも有するヒトTICAM−1の変異体に対して、ヒトTLR3に対して特異的に結合する性質が失われるように、434番目のアミノ酸(プロリン)以外のTIRドメインの一部に変異を導入すれば、ヒトTLRに対して特異的に結合する性質を持つ一方、I型インターフェロンの産生を誘導する性質に異常を持つ変異タンパク質を作製できると考えられる。
【0102】
このようなTLR3に対して特異的に結合する性質を持つ一方、I型インターフェロンの産生を誘導する性質に異常を持つ変異タンパク質は、前述したアダプタータンパク質TICAM−1と同様に、ウイルス感染症の予防・治療剤としての有用性、腫瘍の治療剤としての有用性等を持つと考えられる。ただし、この場合、ウイルス感染症の予防・治療剤としての有用性は、前述した(a)の作用機序(ウイルス免疫応答)によるI型インターフェロンの産生亢進の結果ではなく前述した(b)の作用機序(アダプタータンパク質TICAM−1の単独発現)によるI型インターフェロンの産生亢進の結果である。したがって、この変異体は、アダプタータンパク質TICAM−1と比較すると、自己免疫疾患等の副作用を抑制する効果やウイルス抑制効果は低い。
【0103】
(5)組換え発現ベクター
本発明に係る組換え発現ベクターは、前述したアダプタータンパク質TICAM−1またはその変異体をコードする遺伝子を含むものである。
【0104】
この組換え発現ベクターは、種々の細胞に上記遺伝子を導入してその細胞内でアダプタータンパク質TICAM−1を産生させることにより、種々の細胞内におけるTLR3を介したシグナル伝達系ならびにその調節機構を研究解析するための研究材料として有用であるばかりでなく、こうした研究を通じて、当該シグナル伝達系やその調節機構に関わる種々の病気の病態解析に有効利用できる可能性がある。
【0105】
また、公知の哺乳動物の標的細胞(宿主細胞)内に対して、この組換え発現ベクターに含まれる遺伝子を遺伝子導入法により導入し、その細胞内で発現させることで、前述したアダプタータンパク質TICAM−1またはその変異体を生体内で産生させることができる。それゆえ、上記組換え発現ベクターは、含有する遺伝子がコードするタンパク質と同様の有用性を有する。すなわち、上記組換え発現ベクターは、含▲1▼ウイルス感染症の予防・治療剤としての有用性、▲2▼腫瘍の治療剤としての有用性、(ア)自己免疫疾患の治療剤としての有用性、(イ)アトピー性疾患の治療剤としての有用性等を持つ。
【0106】
なお、この組換え発現ベクターを用いて哺乳動物の標的細胞内に遺伝子を導入する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、(1)哺乳動物の疾患部位から標的細胞を採取し、採取した標的細胞に組換え発現ベクターを導入した後、、哺乳動物の体内に戻す方法、(2)哺乳動物の局所の臓器や癌部にカチオン性リポソームと共に組換え発現ベクターを導入する方法、(3)組換え発現ベクターとしてレトロウイルスベクターやアデノウイルス等のウイルスベクターを用い、ウイルスベクターの感染力を利用して標的細胞内に遺伝子を導入する方法、(4)哺乳動物の局所の臓器や癌部に組換え発現ベクターを導入した後、電極で一定の電場を与えるエレクトロポレーション法等が挙げられる。
【0107】
腫瘍に対しアダプタータンパク質TICAM−1を全身投与した場合、腫瘍部位以外でも副作用の強いI型インターフェロンの産生が亢進されるので、副作用を回避しながら十分な抗腫瘍作用を維持するのが難しいことも考えられる。これに対し、上述した遺伝子導入法などの方法でアダプタータンパク質TICAM−1の局所濃度を挙げれば、腫瘍に対してより適応した治療法を実現できる。したがって、上記組換え発現ベクターは、腫瘍の治療剤として非常に有用である。
【0108】
(6)アダプタータンパク質TICAM−1に対する抗体
本発明に係る抗体は、アダプタータンパク質TICAM−1または変異体と特異的に結合する抗体である。
【0109】
上記抗体は、宿主細胞におけるアダプタータンパク質TICAM−1の発現の検出、アダプタータンパク質TICAM−1の製造・精製等に有用であると考えられる。
【0110】
さらに、アダプタータンパク質TICAM−1と特異的に結合する抗体、またはTLR3に対して特異的に結合する性質とI型インターフェロンの産生を誘導する性質とを併せ持つアダプタータンパク質TICAM−1の変異体と特異的に結合する抗体は、TLR3から下流のI型インターフェロンの産生に至るシグナル伝達を遮断して、I型インターフェロンの産生を抑制することができると考えられるので、前述したTLR3に対して特異的に結合する性質を持つ一方でI型インターフェロンの産生を誘導する性質に異常を持つ変異タンパク質と同様に、(ア)自己免疫疾患の治療剤としての有用性、(イ)アトピー性疾患の治療剤としての有用性を持つと考えられる。また、上記抗体を用いてI型インターフェロンの産生を阻害した状態で、目的遺伝子を挿入したウイルスベクターを宿主細胞に感染させれば、ウイルスベクターによる宿主細胞への目的遺伝子の導入効率を高められると考えられる。
【0111】
また、上記抗体は、診断薬としても使用できる可能性がある。すなわち、上記抗体を用いて診断対象の個体から採取した細胞におけるアダプタータンパク質TICAM−1(または同様の機能を持つ変異体)の発現の有無を検出すれば、この結果に基づいて個体がアダプタータンパク質TICAM−1の欠損や変異に起因する免疫不全症にかかっているか否かを診断することができると考えられる。
【0112】
上記抗体は、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよいが、モノクローナル抗体であることが好ましい。これは、性質が均一で供給しやすい、将来的にヒト型抗体に変えうる、ハイブリドーマとして半永久的に保存ができるなどの理由による。
【0113】
上記モノクローナル抗体は、次の方法により作製することができる。すなわち、まず、アダプタータンパク質TICAM−1、そのフラグメントまたはその他の誘導体、あるいはそれらのアナログ、もしくはそれらを発現する細胞を免疫原として用いてマウス脾臓リンパ球を免疫し、免疫したマウス脾臓リンパ球とマウスのミエローマ細胞とを融合させてハイブリドーマを作製する。次いで、このハイブリドーマによりモノクローナル抗体を産生させる。なお、免疫操作は、公知の各種方法、例えば、ハイブリドーマ法(Kohler,G. and Milstein,C., Nature 256,495−497(1975))、トリオーマ法、ヒトB−細胞ハイブリドーマ法(Kozbor, Immunology Today 4, 72(1983))およびEBV−ハイブリドーマ法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R Liss, Inc.,77−96(1985))などにより行うことができる。
【0114】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例の記載に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0115】
〔細胞株・細胞培養〕
ヒト肺線維芽細胞株MRC−5は、理化学研究所(茨城県つくば市高野台3−1−1)の”Riken Cell Bank”に寄託されているものから取得した。また、ヒトの上皮細胞株HeLaは、藤田尚志博士(東京都臨床医学研究所)から提供して頂いたものである。また、実施例で使用したHEK(ヒト胚腎臓)293細胞株は、ヒトTLR3は発現せず、ヒトTICAM−1のmRNAは極めて低いレベルで発現した(図示しない)。
【0116】
細胞株MRC−5および細胞株HeLaは、それぞれ5重量%(HeLa)または10重量%(MRC−5)の熱不活性化FCS(JRHバイオサイエンス社)と、抗生物質とを添加したMEM(改変イーグル培地)中で培養した。HEK293細胞は、10重量%のFCSおよび抗生物質を添加したDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)中で培養した。
【0117】
〔試薬〕
ポリ(I:C)は、Amersham Pharmacia Biotech社から購入した。ポリミキシン(polymixin)B、抗原型0111:B4の大腸菌由来のLPS(リポ多糖;ヒトTLR4によって認識されるグラム陰性細菌の細胞壁成分;以下、「LPS」と略記する)、およびマウスIgG1は、Sigma社から購入した。マイコプラズマリポペプチドMALP−2は、M.Nishiguchi, M.Matsumoto, T.Takao, M.Hoshino, Y.Shimonishi, S.Tsuji, N.A.Begum, O.Takuchi, S.Akira, K.Toyoshima, T.Seya, J.Immunol. 166 (2001) 2610−2616に記載の方法で調製した。これらの試薬は、LPSを除いて、細胞刺激の前にポリミキシンB(10μg/ml)によって37℃で1時間処理した。
【0118】
〔ヒトTLRに対するモノクローナル抗体〕
ヒトTLR3に対するモノクローナル抗体(TLR3.7)およびヒトTLR2に対するモノクローナル抗体(TLR2.45)は、非特許文献1に記載されている方法(Xu, Y, et al., Structural basis for signal transduction by the Toll/interleukin−1 receptor domains, Nature 408: 111−115 (2000)も参照)で作製した。ヒトTLR4に対するモノクローナル抗体は、三宅健介博士(東京大学医化学研究所)から提供して頂いたものである(作製法については、R.Shimazu, S.Akashi, H.Ogata, Y.Nagai, K.Fukudome, K.Miyake, M.Kimoto, J.Exp.Med. 189 (1999) 1777−1782参照)。
【0119】
〔cDNA発現ベクター〕
ヒトTLR2、ヒトTLR3、MyD88、およびMal/TIRAPのcDNAを、組換え体ヒトGM−CSF(Peprotech社製)と共に9日間培養したヒトの単核細胞から得られたcDNAからPCRによって生成し、哺乳動物の発現ベクターpEFBOS中にクローニングすることで、ヒトTLR2発現ベクター、ヒトTLR3、MyD88発現ベクター、およびMal/TIRAP発現ベクターとした。なお、発現ベクターpEFBOSは、大阪大学の長田重一教授から提供して頂いたプラスミドベクターである。
【0120】
ヒトTLR4発現ベクターおよびMD−2発現ベクターは、三宅健介博士(東京大学医化学研究所)から提供して頂いたものである(Shimazu, R., et at. MD−2, a molecule that confers lipopolysaccharide responsiveness on Toll−like receptor 4. J. Exp. Med. 189: 1777−1782 (1999)参照)。
【0121】
N末端にFlagタグ(Flag標識)を付けたヒトTLR4発現ベクターおよびN末端にFlagタグを付けたヒトTLR2発現ベクターはそれぞれ、ヒトTLR4およびヒトTLR2をコードするcDNAを、N末端にFlagタグを付けたプラスミドベクターpCMV−Flag(Sigma社製)に組み込むことにより作成した。
【0122】
ヒトCD14発現ベクター(pME18S/CD14)は、西村仁博士(筑波大学)から提供して頂いたものである。
【0123】
TIRドメインを欠失させたヒトTLR3の変異体(TLR3を構成するアミノ酸配列のうち1〜729番目のアミノ酸配列からなるタンパク質;以下、「ヒトTLR3deICYT」と記す;)をコードするcDNAは、ヒトTLR3のcDNAからPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)によって作製し、発現ベクターpEFBOS中にクローニングしてヒトTLR3deICYT発現ベクターとした。
【0124】
ヒトMyD88の顕性不活性(ドミナントネガティブ)な変異体(ヒト由来のアダプタータンパク質MyD88を構成するアミノ酸配列のうち52〜296番目のアミノ酸配列からなるタンパク質;以下、「TIRMyD88」と記す)をコードするcDNAは、骨髄細胞株P39のcDNAからPCRによって作製し、発現ベクターpEFBOS中に組み込んでTIRMyD88発現ベクターとした。
【0125】
ヒトTLR3における795番目のアミノ酸(アラニン)をヒスチジンに置換した変異体(Ala795His;以下、「ヒトTLR3 A795H」と記す)をコードする発現ベクター、およびアダプター分子Mal/TIRAPの顕性不活性な変異体(アダプター分子Mal/TIRAPにおける125番目のアミノ酸(プロリン)をヒスチジンに置換した顕性不活性な変異体;Mal Pro125His;以下、「MalP125H」と記す)をコードするcDNAは、それぞれヒトTLR3およびMal/TIRAPから「Quick−change」位置指定突然変異誘発キット(Stratagene社製)を用いて生成した。そして、ヒトTLR3 A795HをコードするcDNA、およびMalP125HをコードするcDNAをそれぞれプラスミドベクターpEFBOSに組み込むことにより、ヒトTLR3 A795H発現ベクターおよびMalP125H発現ベクターを得た。
【0126】
〔実施例1;リポーター遺伝子発現アッセイ〕
HEK293細胞のトランスフェクションにより、ヒトTLR3が、二本鎖RNAの類似体であるポリ(I:C)の存在をアダプター分子MyD88またはMal/TIRAPを介してシグナル伝達するかどうか調べた。
【0127】
まず、リポーター遺伝子発現アッセイによりNF−κBの活性化の度合いを分析した。
【0128】
24ウェルのプレート上のHEK(ヒト胚腎臓)293細胞(1ウェル当たり2×10個)を、遺伝子導入用カチオン性脂質「Lipofectamine2000」試薬(Gibco社製)を用いて、ルシフェラーゼを連結したNF−κBレポータ遺伝子(Stratagene社製、0.1μg)と、(1)空ベクター、(2)TIRMyD88発現ベクター(0.2μg)、(3)TIRMyD88発現ベクター(0、0.05μg、0.2μg、または0.6μg)およびヒトTLR2発現ベクター(0.1μg)、(4)空ベクター、(5)TIRMyD88発現ベクター(0.2μg)、(6)TIRMyD88発現ベクター(0、0.05μg、0.2μg、または0.6μg)およびヒトTLR3発現ベクター(0.1μg)、(7)空ベクター、(8)MalP125H発現ベクター(0.2μg)、(9)MalP125H発現ベクター(0、0.2μg、または0.6μg)およびヒトTLR4/CD14/MD−2発現ベクター(0.3μg)、(10)空ベクター、(11)MalP125H発現ベクター(0.2μg)、または(12)MalP125H発現ベクター(0、0.2μg、または0.6μg)およびヒトTLR3発現ベクター(0.1μg)とによって、過渡的にトランスフェクトした。空ベクターを添加することによって、トランスフェクトされるDNAの総量(0.8〜1.0μg)を調整した。また、内部コントロールとして、プラスミドベクターpCMVβ(Clontech社製;5ng)を用いた。
【0129】
なお、「空ベクター」はcDNAを組み込んでいないプラスミドベクターpEFBOSである。また、「ヒトTLR4/CD14/MD−2発現ベクター」とは、ヒトTLR4発現ベクターとヒトCD14発現ベクターとMD−2発現ベクターとの組み合わせを指す。
【0130】
トランスフェクトの24時間後に、(1)〜(3)のトランフェクト後の細胞を培地のみまたはポリミキシンBで処理したMALP−2(100nM)で、(4)〜(6)および(10)〜(12)のトランフェクト後の細胞を培地のみまたはポリミキシンBで処理したポリ(I:C)(10μg/ml)で、(7)〜(9)のトランフェクト後の細胞を培地のみまたはLPS(100ng/ml)で、それぞれ6時間刺激した。続いて、細胞を溶出バッファ(Promega社製)で溶出した。この溶出液について、トランスフェクト後の刺激によるNF−κBの活性化の度合いを表すルシフェラーゼの活性を、製造業者の使用説明書に従って測定した。また、計3回の実験を行い、それらの代表値を測定値とした。
【0131】
トランスフェクト後に刺激を与えた細胞のルシフェラーゼ活性の測定値を、図1(a)〜(d)に灰色または黒色で示し、トランスフェクト後に刺激を与えなかった(培地のみで刺激した)細胞のルシフェラーゼ活性の測定値を、図1(a)〜(d)に白色で示す。ルシフェラーゼ活性の測定値は、トランスフェクト後に刺激を与えなかった細胞のルシフェラーゼ活性を1とした相対値(相対刺激)で表している。
【0132】
次に、p−125 lucリポータープラスミドを用いたリポーター遺伝子発現アッセイによりインターフェロンβプロモータの活性化の度合いを分析した。
【0133】
この「p−125 lucレポータプラスミド」は、東京大学大学院医学系研究科の谷口維紹教授から供与して頂いたものである(T.Taniguchi, K.Ogasawara, A.Takaoka, N.Tanaka, Annu.Rev.Immunol. 19 (2001) 623−655参照)。p−125 lucレポータプラスミドは、レポータ遺伝子発現ベクターとしての「ピッカジーン(Picagene)」ルシフェラーゼレポータプラスミド(東洋インキ株式会社製)に対して、ヒトインターフェロンβプロモータをコードする領域(−125〜+19)を挿入したものである。
【0134】
p−125 lucリポータープラスミドを用いたリポーター遺伝子発現アッセイでは、ルシフェラーゼを連結したNF−κBレポータ遺伝子に代えてp−125 lucリポータープラスミド(0.1μg)を用いる点と、(1)〜(3)のベクターに代えて、(1’)空ベクター、(2’)MalP125H発現ベクター(0.2μg)、または(3’)MalP125H発現ベクター(0、0.2μg、または0.6μg)およびヒトTLR4/CD14/MD−2発現ベクター(0.3μg)を用いる点と、(1)〜(3)のベクターを用いてトランスフェクトした細胞を培地のみまたはLPS(100ng/ml)で刺激する点とを除いて、ルシフェラーゼを連結したNF−κBレポータ遺伝子を用いたリポーター遺伝子発現アッセイと同様の操作を行った。
【0135】
そして、トランスフェクト後の刺激によるインターフェロンβプロモータの活性化の度合いを表すルシフェラーゼの活性を測定した。得られた測定値を、図2(a)〜(d)に図1(a)〜(d)と同様の形態で示す。
【0136】
本実施例では、以下の結果が得られた。
【0137】
まず、アダプター分子MyD88の顕性不活性な変異体TIRMyD88の発現は、その量に応じてヒトTLR2を介したヒトTLR2のリガンドMALP−2によるNF−κBの活性化を著しく阻害した(図1(a))。これに対して、アダプター分子MyD88の顕性不活性な変異体TIRMyD88の発現は、ヒトTLR3を介したポリ(I:C)によるNF−κBおよびインターフェロンβプロモーターの活性化にはほとんど影響を与えなかった(図1(b)および図2(b))。
【0138】
アダプター分子Mal/TIRAPの顕性不活性な変異体MalP125Hを用いた類似の実験において、アダプター分子Mal/TIRAPがヒトTLR3を介するシグナル伝達に寄与しないことも示された(図1(d)および図2(d))。
【0139】
それとは対照的に、ヒトTLR4を介するLPSによるNF−κBおよびインターフェロンβプロモーターの活性化は、アダプター分子Mal/TIRAPの顕性不活性な変異体MalP125Hによってその量に応じて阻害された(図1(c)、図2(c))。
【0140】
以上の結果から、ヒトTLR3によって媒介されたインターフェロンβの産生を誘導するシグナル伝達は、既知のアダプター分子MyD88およびMal/TIRAPに依存しないことが分かった。
【0141】
〔実施例2;リポーター遺伝子発現アッセイ〕
24ウェルのプレート上のHEK(ヒト胚腎臓)293細胞(1ウェル当たり2×10個)を、遺伝子導入用カチオン性脂質「リポフェクトアミン(Lipofectamine) 2000」試薬(Gibco社製)を用いて、ルシフェラーゼを連結したNF−κBレポータ遺伝子(Stratagene社製、0.1μg)またはp−125 lucリポータープラスミド(0.1μg)と、空ベクター、ヒトTLR3発現ベクター(0.1μg)、ヒトTLR3delCYT発現ベクター(0.1μg)、またはヒトTLR3 A795H発現ベクター(0.1μg)とによって、過渡的にトランスフェクトした。
【0142】
トランスフェクトの24時間後に、(1)〜(3)のトランフェクト後の細胞を培地のみまたはポリミキシンBで処理したポリ(I:C)で6時間刺激した。続いて、細胞を溶出バッファ(Promega社製)で溶出した。この溶出液について、ルシフェラーゼの活性を測定した。また、計3回の実験を行い、それらの代表値を測定値とした。
【0143】
トランスフェクト後に刺激を与えた細胞のルシフェラーゼ活性の測定値を、図3(a)(b)に黒色で示し、トランスフェクト後に刺激を与えなかった(培地のみで刺激した)細胞のルシフェラーゼ活性の測定値を、図3(a)(b)に白色で示す。ルシフェラーゼ活性の測定値は、トランスフェクト後に刺激を与えなかった細胞のルシフェラーゼ活性を1とした相対値(相対刺激)で表している。
【0144】
本実施例では、以下の結果が得られた。
【0145】
ヒトTLR3からTIRドメインを削除したタンパク質であるヒトTLR3delCYTをコードするcDNAをトランスフェクトした細胞は、同様に、ポリ(I:C)に応答しなかった(図3)。
【0146】
ヒトTLR3の突然変異体ヒトTLR3 A795HをコードするcDNAをトランスフェクトした細胞は、TLR3delCYTと同様に、ポリ(I:C)に対する応答性を失った。この結果は、ヒトTLR3における795番目のアミノ酸(アラニン)の点突然変異が、NF−κBへの下流のシグナル伝達にとっても、インターフェロンプロモーターβの活性化にとっても、極めて重大であることを示唆している。
【0147】
これに対して、TIRドメインを含むヒトTLR3を発現している細胞は、ポリ(I:C)による刺激の下でインターフェロンβプロモーターを活性化した(図3(b))。
【0148】
〔実施例3;新規アダプター分子のスクリーニングおよび同定〕
まず、酵母ツー・ハイブリッド・システムから、ヒトTLR3の末端は、あるタンパク質と特異的に会合することが確認された(図4)。
【0149】
次に、ヒトTLR3のシグナル伝達に関与するアダプター分子を同定するために、酵母ツー・ハイブリッド・システムを用いてスクリーニングを行った。
【0150】
すなわち、ヒトTLR3のTIRドメインに対して特異的に結合する新規アダプター分子のスクリーニングは、酵母ツー・ハイブリッド・システム「マッチメーカー(MATCHMAKER)ツー・ハイブリッド・システム3」(CLONTECH社製)を用いて、cDNAライブラリーの中からヒトTLR3のTIRドメインと相互作用するタンパク質を探索する方法で行った。
【0151】
すなわち、まず、転写因子GAL4のDNA結合ドメインの融合ベクターであるプラスミドベクターpGBKT7(CLONTECH社製)のマルチクローニング・サイトに対し、ヒトTLR3のTIRドメイン(ヒトTLR3を構成するアミノ酸配列のうち745〜904番目のアミノ酸配列)およびヒトTLR4のTIRドメイン(ヒトTLR3を構成するアミノ酸配列のうち625〜799番目のアミノ酸配列)をコードするcDNAをそれぞれ挿入することにより、いわゆる餌(bait)プラスミドベクターとして、プラスミドベクターpGBKT7−TLR3およびプラスミドベクターpGBKT7−TLR4を作製した。また、転写因子GAL4の活性化ドメインの融合ベクターであるプラスミドベクターpGADT7(CLONTECH社製)に対し、ヒトの肺由来の「マッチメーカー」cDNAライブラリー(CLONTECH社製)を組み込んで、いわゆる獲物プラスミドベクター群を作製した。
【0152】
そして、酵母培地において、酵母細胞株AH109(CLONTECH社製)を、餌プラスミドベクターpGBKT7−TLR3と、「マッチメーカー」cDNAライブラリーより作製した獲物プラスミドベクター群とで形質転換した。酵母培地としては、Sherman, F., Fink, G. R., & Hicks, J. B. Methods in Yeast Genetics. Cold Spring Harhor, NY: Cold Spring Harhor press. (1986)に記載されたものを用いた。
【0153】
酵母ツー・ハイブリッド・システムでは、獲物プラスミドベクターと餌プラスミドベクターとが相互作用する場合にのみ、酵母細胞がプレート上で増殖できる。この場合、スクリーニング対象の1,000,000の形質転換体から、5つのクローンがSD−Trp−Leu−His−Adeプレート(トリプトファン、ロイシン、ヒスチジン、およびアデニンのないSD(Synthetic Dropout)培地プレート)上で成長した。
【0154】
これらのクローンからプラスミドを回収し、プラスミド内の挿入部位の配列を解析した。
【0155】
BLAST検索解析により、クローン2.3A1−1がNCBIのEST(Expressed Sequence Tag)配列から推定されたヒトの仮定的なmRNA配列CL24751を含むことが明らかとなった。挿入部位の5’領域内の12塩基対が、仮定のmRNA「LOC148022」の3’末端と重なった。
【0156】
CL24751は、ヒトのゲノムにおいてLOC148022からたった75bpしか離れていなかったという事、およびLOC148022の3´末端がポリアデニル酸末端を持たないという事は、これら2つの注釈付きのmRNAが1つの転写から得られたことを示唆している。
【0157】
これを確認するために、LOC148022中に位置している5’プライマーおよびCL24751中の3’プライマーを用いてRT−PCRを行った。種々の細胞および組織のmRNAから、予想されたDNA断片を増幅することに成功した。これにより、本願発明者等は、LOC148022およびCL24751がそれぞれ、新規アダプタータンパク質をコードするcDNAの5’断片および3’断片であると結論した。PCRによって得られた2つのcDNA断片を連結することによって、完全長のcDNAが得られた。
【0158】
本願発明者等は、このタンパク質を「TICAM−1(TIR含有アダプター分子−1)」と命名した。
【0159】
また、本願発明者等は、以下の方法でヒトTICAM−1に対して相同性を持つマウス由来のタンパク質TICAM−1(マウスTICAM−1)を見いだした。
【0160】
まず、ESTに登録されているマウスのcDNAの塩基配列からヒトTICAM−1に相同性を有する配列を探索したところ、ヒトTICAM−1に相同性を有するマウスLOC224899が見つかり、この塩基配列がヒトTICAM−1のマウス相同体をコードするcDNAの塩基配列であるものと推定された。
【0161】
そこで、ヒトTICAM−1のマウス相同体をコードするものと推定されたマウスLOC224899のアミノ酸配列について、BLASTプログラムにより、ヒトTICAM−1のアミノ酸配列との相同性検索解析を行った。解析結果を図5に示す。なお、ヒトTICAM−1タンパク質およびマウスTICAM−1タンパク質のアミノ酸配列は、cDNAの塩基配列から推定した。また、これらタンパク質のアミノ酸配列は、ClustalWを用いてアラインメントした。
【0162】
図5において、ヒトTICAM−1のアミノ酸配列を「TICAM−1.hu」、マウスLOC224899のアミノ酸配列を「TICAM−1.mu」と表している。図5において、アスタリスク(*)は同一の残基を示し、2点(:)は保存された置換を示し、1点(・)は準保存された置換を示す。
【0163】
図5の結果から、ESTから推定したマウスLOC224899のアミノ酸配列が、ヒトTICAM−1のアミノ酸配列と非常に類似しており、それゆえ、マウスLOC224899が、ヒトTICAM−1のマウス相同体である可能性が高いことが明らかとなった。このことから、マウスLOC224899を、ヒトTICAM−1のマウス相同体「マウスTICAM−1」と同定した。
【0164】
また、ヒトTICAM−1およびマウスTICAM−1は、図5中に上線で示すTIRに類似したモチーフ(TIRドメイン)を持っており、その領域はヒトTICAM−1では394〜532番目のアミノ酸配列であり、マウスTICAM−1では396〜534番目のアミノ酸配列であった。
【0165】
このマウスTICAM−1は、ヒトTICAM−1のTIRドメイン中のN末端領域およびC末端領域にあるプロリン・リッチな領域が部分的に欠失していた(図5参照)。マウスTICAM−1は、ヒトTICAM−1に対して54%の同一性を持っていた。
【0166】
なお、ヒトTICAM−1およびマウスTICAM−1のcDNA配列およびアミノ酸配列は、DDBJデータベースに登録済(本願出願時には未公表)であり、それらのGenbankアクセッション番号はそれぞれAB086380およびAB091053である。
【0167】
〔実施例4;酵母ツー・ハイブリッド・システムによる相互作用の解析〕
酵母ツー・ハイブリッド・システムにより、ヒトTLR3とヒトTICAM−1との間の相互作用を解析した。
【0168】
すなわち、まず、プラスミドベクターpGADT7(CLONTECH社製)に対し、TICAM−1遺伝子の部分的な断片を含むと推定されたcDNAをプラスミドベクターpGADT7のマルチクローニングサイトに組み込んで、いわゆる獲物ベクターとしてのプラスミドベクターpGADT7−TICAM−1を作製した。また、獲物ベクターとしては、このプラスミドベクターpGADT7−TICAM−1と、コントロールとしてのプラスミドベクターpGADT7とを用いた。
【0169】
一方、餌ベクターとしては、前述したプラスミドベクターpGBKT7−TLR3およびpGBKT7−TLR4と、コントロールとしてのプラスミドベクターpGBKT7(CLONTECH社製)とを用いた。
【0170】
そして、実施例4で用いたの同じ酵母培地において、酵母細胞株AH109(CLONTECH社製)を、2種類の獲物プラスミドベクターのいずれか(プラスミドベクターpGADT7またはpGADT7−TICAM−1)と、3種類の餌プラスミドベクターのいずれか(プラスミドベクターpGBKT7、pGBKT7−TLR3、またはpGBKT7−TLR4)とで形質転換し、SD−His−Trp−Leu−Adeプレート上で画線培養した。結果を図4に示す。
【0171】
この場合、上記の全ての組み合わせのうち、獲物プラスミドベクターpGADT7−TICAM−1と餌プラスミドベクターpGBKT7−TLR3との組合せだけが、細胞を増殖することができた。また、酵母ツー・ハイブリッド・システムにおいて、ヒトTLR3に代えてヒトTLR2を用いた場合にも、酵母中でTICAM−1がクローニングされなかった(図示しない)。
【0172】
これにより、酵母ツー・ハイブリッド・システムによるスクリーニングによって同定されたpGADT7−TICAM−1が、ヒトTLR3のTIRドメインに対して特異的に結合するアダプタータンパク質TICAM−1(ヒトTICAM−1)をコードする遺伝子の部分的な断片を含んでいることが確認された。
【0173】
〔実施例5;TIRドメインの比較〕
ヒトおよびマウスのTICAM−1、Mal(TIRAP)、およびMyD88のTIRドメインのアラインメントを行い、これらを比較した。
【0174】
ヒトTICAM−1のTIRドメイン(394〜532番目のアミノ酸配列)、マウスTICAM−1のTIRドメイン(396〜534番目のアミノ酸配列)、ヒトMyD88(アクセッション番号U70451)のTIRドメイン(160〜296番目のアミノ酸配列)、およびヒトMal/TIRAP(アクセッション番号AF406652)のTIRドメイン(85〜216番目のアミノ酸配列)を、ClustalWを用いてアラインメントした。TIRドメインの位置は、SMARTプログラムを用いて推定した。アラインメントした結果を図6に示す。
【0175】
図6中においても、「TICAM−1.hu」および「TICAM−1.mu」はそれぞれ、「ヒトTICAM−1」および「マウスTICAM−1」を表す。また、アステリスク(*)は同一の残基を示し、2点(:)は保存された置換を示し、1点(・)は準保存された置換を示す。Box1〜3の詳細については、前述した文献を参照。
【0176】
〔実施例6;TICAM−1の検出〕
ヒトの多数の組織中におけるTICAM−1のmRNAの発現を、ノーザンブロットキット(CLONTECH社製)を用いたノーザンブロット法で解析した。すなわち、ヒトの12レーンの「Human MTN Blot」メンブレンおよび「Blot It」メンブレン(CLONTECH社製)を用いて、ヒトの多数の組織から抽出したmRNAを変性条件下で電気泳動した。電気泳動のパターンをフィルターにトランスファーし、C末端TICAM−1プローブ(ヒトTICAM−1をコードするcDNAの1406〜2193番目の塩基配列を32Pで標識したもの)を用いて厳しい条件でハイブリダイズした。「BAS2000」画像解析装置(富士フィルム株式会社製)を用いて1日間露出を行うことによりフィルター上のパターンを撮像した。結果を図7の上段に示す。
【0177】
コントロールとして標識したβ−アクチンプローブを用いて同様の操作を行い、4時間露出でフィルター上のパターンを撮像した。結果を図7の下段に示す。
【0178】
図7に示すように、末梢血白血球(PBL)、脳(brain)、脾臓(spleen)、胸腺(thymus)、肝臓(liver)、肺(lung)、腎臓(kidney)、骨格筋(skeletal muscle)、心臓(heart)、および胎盤(placenta)を含むたいていの組織において、2.6キロベース(kb)のヒトTICAM−1のmRNAが検出された。
【0179】
〔実施例7;RT−PCRによるTICAM−1の検出〕
図8に示す複数種のヒト細胞およびヒト細胞株からトータルのRNAを単離し、ヒトTICAM−1のプライマーを用いてRT−PCRを行った。PCRサイクルは35サイクル実行した。
【0180】
図8において、MfおよびiDCはそれぞれ、マクロファージおよび未熟樹状細胞を表す。「−」は、鋳型なしのコントロールを示す。また、β−アクチンプライマーをコントロールとして用いてPCRサイクルを20サイクル実行した。
【0181】
ヒト末梢血から用意した、未熟樹状細胞(iDC)、マクロファージ(MΦ)、およびNK(ナチュラルキラー)細胞は全て、ヒトTICAM−1のmRNAを発現した(図8)。また、リンパ系の細胞株(T細胞CCRF−CEM、T細胞Molt−4、B細胞Namalwa)および線維芽細胞の細胞株(MRC5)も、ヒトTICAM−1のmRNAが陽性であった(図8)。
【0182】
これらの結果を総合すれば、ヒトTICAM−1の発現がβ−アクチンの発現と比較して遍在しており、かつ、弱いと推論される。
【0183】
〔実施例8;免疫沈降法によるTICAM−1とTLR3の相互作用解析〕
ヒトTLR3のTIRドメインとTICAM−1との会合は、ヒトTLR3(Flag標識付)およびヒトTICAM−1(HA標識付)を発現しているHEK293細胞の免疫沈降法(イムノプレシピテーション)によって確認した。
【0184】
まず、6ウェルのプレートで、HEK293細胞を、Lipofectamine 2000試薬(Gibco社製)を用い、ヒトTLR3−Flag発現ベクター(Flagタグ付きTICAM−1発現ベクター)3μgおよびTICAM−1−HA発現ベクター(HAタグ付きTICAM−1発現ベクター)0.5μgで過渡的にトランスフェクトした。このとき、空ベクターを加えることによって、DNAの総量を一定(4μg)に保った。
【0185】
トランスフェクトの24時間後、細胞を、培地のみ(図9のレーン1およびレーン3)、あるいはポリ(I:C)10μg/ml(図9のレーン2およびレーン4)で15分間刺激し、溶出バッファ(pH7.5;25mMのTris、150mMのNaCl、1重量%のNP40、2mMのPMSE、25mMのインドアセトアミド、および10mMのEDTAを含む)中に溶出させた。
【0186】
遠心分離後に、細胞溶出液を、免疫沈降プローブ(IP)としてマウスIgG1(図9のレーン1およびレーン2)または抗FlagM2抗体(図9のレーン3およびレーン4;Sigma社製)と共に4℃で2時間かけてインキュベートし、免疫沈降させた。コントロール反応のために、マウスIgG1を用いた。免疫複合体を、プロテインG−セファロースにより沈降させ、沈降物を良く洗浄した。
【0187】
そして、1重量%のSDS、0.2重量%のNP−40、および5重量%の2−メルカプトエタノールを含むDPBSを加えて煮沸することによって、免疫沈降したタンパク質を抽出した。次に、抽出物を抗Flag抗体または抗HA抗体を用いて免疫ブロットした後、SDS−PAGEを行った。溶出液も、トランスフェクトされたTICAM−1−HAの発現を調べるために免疫ブロットした。
【0188】
得られた結果(ウエスタンブロット;WB)を図9に示す。なお、表中の、+はそれでトランスフェクションあるいは刺激をしたことを、−はそれでトランスフェクションあるいは刺激をしなかったことを示す。また、中央パネルは細胞溶出液の一部のウエスタンブロット(免疫ブロット)であり、下パネルは細胞溶出液全体のウエスタンブロットである。
【0189】
図9に示すように、ヒトTLR3およびヒトTICAM−1との両方を含む分子複合体が、抗Flag抗体を用いた免疫沈降によって検出された(図9のレーン3およびレーン4;上パネルの矢印で指す位置)。したがって、ヒトTICAM−1が、ヒトTLR3と会合することが確認された。
【0190】
また、ヒトTLR3に対する特定のモノクローナル抗体TLR3.7(非特許文献1参照)の存在下においても、類似のヒトTLR3とヒトTICAM−1との会合が確認された(図示しない)。また、ヒトTLR3を発現した細胞のポリ(I:C)による刺激は、この分子会合にほとんど影響を与えなかった(図9)。
【0191】
細胞溶出液全体のウエスタンブロット(WB)は、TICAM−1−HA(中央パネルの矢印で指している位置)の発現を示した。細胞溶出液全体のウエスタンブロットでは、ヒトTICAM−1のメジャーバンドの上の高分子量型も検出された(図9の上パネル)。これは、リン酸化型を表すと考えられる。
【0192】
次に、同じ条件の下で、他のTLRおよびTLR3変異体に対してTICAM−1が結合するかを調べた(図10)。
【0193】
まず、HEK293細胞は、ヒトTICAM−1−HA(0.05μg)と共に、空ベクター(4μg)あるいはヒトTLR3−Flag発現ベクター(3μg)、TLR3A795H−Flag発現ベクター(3μg)、Flag−TLR2発現ベクター(2μg)、Flag−TLR4発現ベクター(2μg)、あるいはMD−2発現ベクター(1μg)で過渡的にトランスフェクトした。このとき、空ベクターを加えることによって、DNAの総量を一定(4μg)に保った。トランスフェクトの24時間後に、細胞を溶出バッファで溶出した。
【0194】
溶出液をマウスIgG1(図示しない)または抗FlagM2抗体(レーン1〜5)で免疫沈降した。そして、1重量%のSDS、0.2重量%のNP−40、および5重量%の2−メルカプトエタノールを含むDPBSを加えて煮沸することによって、免疫沈降したタンパク質を抽出した。次に、抽出物を抗Flag抗体または抗HA抗体を用いて免疫ブロットした後、SDS−PAGEを行った。溶出液も、トランスフェクトされたTICAM−1−HAの発現を調べるために免疫ブロットした。抗Flag抗体または抗HA抗体を用いて免疫ブロットを行った。
【0195】
得られた結果を図10に示す。なお、表中の、+はそれでトランスフェクションをしたことを、−はそれでトランスフェクションをしなかったことを示す。図10の上パネルは、免疫沈降されたFlagタグ付きTLRタンパク質を示す。図10の中パネルは、(レーン2だけ示す)野生型のTLR3(カッコあるいは矢印)と相互作用するTICAM−1を示す。図10の下パネルは、トランスフェクトされたTICAM−1−HA(矢印)の発現を示す。
【0196】
図10に示すように、ヒトTLR3は、ヒトTICAM−1と共沈したが、TLR3変異体A795H、TLR2、およびTLR4とは共沈しなかった。すなわち、A795H TLR3変異体は、TICAM−1と結合する能力を失った(図10)。TLR2およびTLR4は、MD−2と共発現した場合でさえ、TICAM−1を共沈できなかった(図10)。これらの結果は、TLR2に対するモノクローナル抗体およびTLR4に対するモノクローナル抗体を用いた場合にも、確認された(図示しない)。
【0197】
これらの結果から、ヒトTICAM−1がヒトTLR3に対して特異的に結合することが確認された。
【0198】
また、TLR2、TLR3、およびTLR4に対するモノクローナル抗体を用いた実験における、イースト・ツー・ハイブリッド分析および特異性確認の結果を総合すれば、ヒト細胞中において、ヒトTLR3のTIRドメインはアダプタータンパク質TICAM−1と会合できることができる一方、TLR2やTLR4はアダプタータンパク質TICAM−1と会合できないと結論できる。
【0199】
〔実施例9;ヒトTICAM−1およびその変異体の発現ベクター作製〕
図11に示すように、ヒトTICAM−1と、その3種類の変異体、すなわちヒトTICAM−1の1〜288番目のアミノ酸配列を欠失させた変異体(以下、「ヒトTICAM−1(ΔN288)」と表記する)、ヒトTICAM−1の1〜386番目のアミノ酸配列を欠失させた変異体(以下、「ヒトTICAM−1(ΔN386)」と表記する)、およびほぼヒトTICAM−1のTIRドメインのみからなる変異体(以下、「ヒトTICAM−1 TIR」と表記する)をそれぞれコードする3種類の発現ベクターを作製した。上記のほぼヒトTICAM−1のTIRドメインのみからなる変異体(ヒトTICAM−1 TIR)は、より詳細には、ヒトTICAM−1の1〜386番目のアミノ酸配列と557〜712番目のアミノ酸配列とを欠失させた変異体、すなわちヒトTICAM−1を構成するアミノ酸配列のうち387〜556番目のアミノ酸配列からなる変異タンパク質を作製した。
【0200】
TICAM−1をコードする完全長のcDNAをプラスミドベクターpEFBOSのXhoI−NotIサイトに組み込んでヒトTICAM−1発現ベクターとした。pEFBOS−TICAM−1(ΔN288)、pEFBOS−TICAM−1(ΔN386)、およびpEFBOS−TICAM−1(TIR)は、それぞれ、Kozack配列および第1のATGの後に続いているTICAM−1の289−712番目のアミノ酸配列、387−712番目のアミノ酸配列、および387−556番目のアミノ酸配列をコードする配列をプラスミドベクターpEFBOSのXhoI−NotIサイト中に挿入することによって作製した。これらプラスミドベクターは、内毒素を含まない「Plasmid Maxi」キット(Qiagen社製)で調製した。
【0201】
〔実施例10;ヒトTICAM−1の変異による機能解析〕
ヒトTICAM−1の機能解析を行うために、ヒトTICAM−1およびその変異体について、NF−κBおよびインターフェロンβの活性化度を測定するリポーター遺伝子発現アッセイを行った。すなわち、インターフェロンβプロモーター等に対するTICAM−1の機能的な結合をHEK293細胞中で調べた。
【0202】
24ウェルのプレート上のHEK293細胞(1ウェル当たり2×10個)を、遺伝子導入用カチオン性脂質「Lipofectamine2000」試薬(Gibco社製)を用いて、ルシフェラーゼを連結したNF−κBレポータ遺伝子(Stratagene社製)0.1μg(図12(b))またはp125 lucリポータープラスミド0.1μg(図12(a))と、空ベクター、ヒトTICAM−1TIR、ヒトTICAM−1(ΔN386)、ヒトTICAM−1(ΔN288)、または完全長のヒトTICAM−1を発現するベクター(それぞれ10ngまたは100ng)とでトランスフェクトした。空ベクターを添加することによって、トランスフェクトされるDNAの総量(0.8〜1.0μg)を調整した。また、内部コントロールとして、プラスミドベクターpCMVβ(Clontech社製;5ng)を用いた。
【0203】
トランスフェクトの24時間後に、細胞を溶出バッファ(Promega社製)で溶出した。この溶出液について、トランスフェクト後の刺激によるNF−κBの活性化の度合いを表すルシフェラーゼの活性を、製造業者の使用説明書に従って測定した。また、計3回の実験を行い、それらの代表値を測定値とした。インターフェロンβの活性化度を図12(a)に、NF−κBの活性化度を図12(b)にそれぞれ示す。
【0204】
結果として、インターフェロンβプロモーター活性化の顕著な亢進が、少量(0.1μg)の完全長ヒトTICAM−1を発現しているHEK293細胞において観察された(図12(a))。図12の染色体欠失分析は、ヒトTICAM−1由来のTIRドメインが、顕性不活性体として作用するMyD88のTIRとは異なり、上記機能を担っていることを示唆している。TIRドメインに対するN末端領域およびC末端領域の連結反応は、インターフェロンβプロモーターの活性化度を高めた(図12(a))。それゆえ、ヒトTICAM−1のTIRドメインは、ヒトTLR3の末端を下流の分子と結合させてインターフェロンβプロモーターを活性化するのに十分な最小の必須成分と考えられる。
【0205】
また、図12(b)に示すヒトTICAM−1によるNF−κBを活性化する能力を類似のトランスフェクト実験で調べた結果から、完全長のTICAM−1は、インターフェロンβプロモーターと比較して弱くNF−κBプロモーターを活性化することが分かった。NF−κBの活性化能は、TIRドメインあるいは完全長のTICAM−1を持つ細胞よりも、N末端ドメインのない変異体の方が高かった(図12)。それゆえ、N末端配列は、トランスフェクタント上でのインターフェロンβ産生に対して強い優先性を誘導し、同時にNF−κBの活性化を比較的抑制すると思われる。また、C末端領域は、インターフェロンβおよびNF−κB活性化の両方を少し増強した(図12)。
【0206】
さらに、完全長のヒトTICAM−1を発現している細胞においては、TLR3のトランスフェクトなしにインターフェロンβプロモーターの活性化が誘発されることがあった(図12)。
【0207】
このことから、ヒトTICAM−1は、自発的に、インターフェロンβプロモーターを活性化し、インターフェロンβの産生を誘導すると考えられる。この自発的なインターフェロンβの産生誘導は、ヒトTICAM−1が、未知の分子とのホモ二量化あるいは錯体形成を起こすことに起因すると考えられる。この研究結果は、自動二量化する傾向があるアダプター分子Malに関する研究、および同じく自動二量化する傾向があるアダプター分子MyD88のTIRドメインの構造解析結果と整合している。
【0208】
〔実施例11;TLR3によって媒介されるシグナル伝達の解析〕
次に、ヒトTLR3によって媒介されるシグナル伝達を解析するためのリポーター遺伝子発現アッセイを行った。すなわち、TICAM−1の最小の必須成分であるTIRドメインをHEK293細胞に用い、インターフェロンβプロモーターの活性化に対するTLR3および/またはポリ(I:C)の効果が相加的なものであるかどうかを調べた。
【0209】
まず、ヒトTICAM−1 TIR発現ベクター(pEFBOS−TICAM−1(TIR))に対して、434番目のアミノ酸(プロリン)をヒスチジンに置換する点突然変異を挿入することによって、ヒトTICAM−1 TIRの顕性不活性な変異体を作製した。作製した変異体は、「TIR P434H」と命名した。
【0210】
24ウェルのプレート上のHEK293細胞(1ウェル当たり2×10個)を、遺伝子導入用カチオン性脂質「Lipofectamine2000」試薬(Gibco社製)を用いて、ルシフェラーゼを連結したNF−κBレポータ遺伝子(Stratagene社製)0.1μg(図13(b))またはp125 lucリポータープラスミド0.1μg(図13(a))と、TICAM−1 TIR(0.1ngおよび10ng)またはTICAM−1 TIRの顕性不活性な変異体TIR P434Hをコードしているプラスミド(0、0.2μg、0.6μg)と、空ベクター、TLR2(0.1μg)、またはTLR3(0.1μg)とでトランスフェクトした。空ベクターを添加することによって、トランスフェクトされるDNAの総量(0.8〜1.0μg)を調整した。また、内部コントロールとして、プラスミドベクターpCMVβ(Clontech社製;5ng)を用いた。
【0211】
トランスフェクトの24時間後に、細胞を100nMのMALP−2(TLR2刺激)あるいは10μg/mlのポリ(I:C)(TLR3刺激)で6時間刺激し、細胞を溶出バッファ(Promega社製)で溶出した。この溶出液について、トランスフェクト後の刺激によるインターフェロンβの活性またはNF−κBの活性を表すルシフェラーゼの活性を、製造業者の使用説明書に従って測定した。また、計3回の実験を行い、それらの代表値を測定値とした。インターフェロンβの活性化度を図13(a)に、NF−κBの活性化度を図13(b)にそれぞれ示す。
【0212】
TLR3およびTICAM−1のTIRの両方をトランスフェクトした結果、インターフェロンβプロモーターが強く活性化された(図13)。また、低い導入量のTICAM−1 TIRトランスフェクタント(図13)の結果から非常に明確に示されているように、ポリ(I:C)によるこトランスフェクタントの刺激は、TICAM−1を介するインターフェロンβプロモーターの活性化を亢進した。ヒトTICAM−1を発現している細胞に対してヒトTLR3コトランスフェクションおよびポリ(I:C)刺激を行ったことによるNF−κB活性化の亢進がみられた(図13)。一方、ヒトTLR2を発現する細胞に対してTICAM−1による追加のトランスフェクションを行っても、ヒトTLR2刺激に応答したNF−κBの活性化が起こらなかった(図13)。これらから、ヒトTICAM−1がヒトTLR3に対して特異性を有していると考えられる。また、HEK293細胞中でTICAM−1のTIRと共にTLR2を発現させたところ、ヒトTLR2のリガンドであるマイコプラズマリポペプチドMALP−2で刺激された細胞中でさえ、インターフェロンβプロモーターの発現を活性化しなかった(図13)。
【0213】
以上のことから、ヒトTICAM−1に対するヒトTLR3の機能的な会合は、ポリ(I:C)によって媒介されるインターフェロンβプロモーターの活性化に関与すると考えられる。
【0214】
また、興味深いことに、活性なTICAM−1 TIRの代わりにTICAM−1 TIRの顕性不活性な変異体P434Hをトランスフェクトした場合、ポリ(I:C)−TLR3によって媒介されるインターフェロンβプロモーターおよびNF−κBの活性化が完全にキャンセルされた(図13)。これは、TICAM−1 TIRの顕性不活性な変異体P434Hは、ヒトTLR3に結合する能力を持つ一方、インターフェロンβの産生を誘導する能力を失っているためと考えられる。したがって、この変異体は、むしろヒトTLR3を介するシグナル伝達を遮断してインターフェロンβの産生を阻害するものと考えられる。
【0215】
〔実施例12;アダプター分子の機能解析〕
次に、ヒトTICAM−1と既知のアダプター分子MyD88およびMal/TIRAPとの間でインターフェロンβおよびNF−κBの活性化度を比較するためのリポーター遺伝子発現アッセイを行った。
【0216】
24ウェルのプレート上のHEK293細胞(1ウェル当たり2×10個)を、遺伝子導入用カチオン性脂質「Lipofectamine2000」試薬(Gibco社製)を用いて、ルシフェラーゼを連結したNF−κBレポータ遺伝子(Stratagene社製)0.1μg(図14(b))またはp125 lucリポータープラスミド0.1μg(図14(a))と、空ベクター、MyD88、Mal/TIRAP、または完全長のTICAM−1(それぞれ10、100、または200ng)とでトランスフェクトした。空ベクターを添加することによって、トランスフェクトされるDNAの総量(0.8〜1.0μg)を調整した。また、内部コントロールとして、プラスミドベクターpCMVβ(Clontech社製;5ng)を用いた。
【0217】
トランスフェクトの24時間後に、細胞を溶出バッファ(Promega社製)で溶出した。この溶出液について、インターフェロンβの活性またはNF−κBの活性を表すルシフェラーゼの活性を、製造業者の使用説明書に従って測定した。また、計3回の実験を行い、それらの代表値を測定値とした。インターフェロンβの活性化度を図14(a)に、NF−κBの活性化度を図14(b)にそれぞれ示す。
【0218】
インターフェロンβプロモーターおよびNF−κBの活性化プロフィールを比較(図14)すると、これらの3つのアダプター分子は、NF−κBに対して類似レベルの活性化を誘導した(図14)のに対し、TLR3および/またはポリ(I:C)のようないかなる刺激もない条件において、完全長のヒトTICAM−1によるインターフェロンβプロモーター誘発活性は、アダプター分子Mal/TIRAPまたはMyD88によるインターフェロンβプロモーター誘発活性と比較して100倍以上高かった(図14)。したがって、ヒトTICAM−1は、インターフェロンβプロモーターに対してより直接的に作用し、インターフェロンβの産生を顕著に亢進することができると考えられる。
【0219】
〔実施例13;ウエスタンブロット〕
HEK293細胞を、アダプター分子Mal−HA、MyD88−HA、あるいはTICAM−1−HAをそれぞれコードするプラスミド(100ng)で過渡的にトランスフェクトした。トランスフェクトから24時間後に、細胞を溶解し、発現されたタンパク質を抗HA抗体を用いてウエスタンブロット法により解析した。
【0220】
得られたウエスタンブロットを図15に示す。左側の黒い矢印はMal−HAの発現を示し、中央の白抜きの矢印はMyD88−HAを示し、右側の矢印はTICAM−1−HAの発現を示す。図15の結果から、これらのアダプター分子は、妥当なタンパク質発現レベルを持つことが確認された。
【0221】
〔実施例14;TICAM−1ノックダウン〕
次に、TICAM−1を介するインターフェロンβの産生誘導へのシグナル伝達を確認するために、一本鎖RNAのトランスフェクションによってヒトTICAM−1ノックダウン細胞を生成した。
【0222】
ヒトTICAM−1の一本鎖RNAの配列は、図16に示すように、センスがr[GACCAGACGCCACUCCAAC]d[TT]であり、アンチセンスがr[GUUGGAGUGGCGUCUGGUC]d[TT](TICAM−1)である。「r」および「d」はそれぞれ、リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドを表す。TICAM−1のメッセージ中における一本鎖RNA領域を、一本鎖RNA配列の下に示す。
【0223】
遺伝子をサイレントにするのに有効なヒトTICAM−1メッセージ中における一本鎖RNAのトランスフェクションの位置は、図16に示すように、986〜1008番目の塩基配列(bp)である。
【0224】
HeLa細胞およびMRC−5細胞は、細胞表面上でTLR3を発現し、外因的に付加的なポリ(I:C)に応答してインターフェロンβを産生した。これらは両方とも、TICAM−1およびTLR3のmRNAを含んでいた(データは示していない)。一本鎖RNAを上記の位置に導入した細胞内ではインターフェロンβの産生が部分的に減少していた。
【0225】
〔実施例15;RT−PCR〕
ヒトTICAM−1のプライマーまたはβ−アクチンのプライマーを用いてRT−PCR分析を行った。結果を図17に示す。図17(a)はHeLa細胞であり、図17(b)はMRC−5細胞である。
【0226】
用いたヒトTICAM−1のプライマーの配列は、5’CCAGATGCAACCTCCACTGG3’(5’プライマー)および5’TGGAGGAAGGAACAGGACACC3’(3’プライマー)である。
【0227】
ヒトTICAM−1のmRNAレベルは、HeLa細胞およびMRC−5細胞中においてRNAi(RNA干渉)法によって約80%抑制された(図17)。
【0228】
したがって、これらの実験によって、TICAM−1が、二本鎖RNAによって媒介されたTLR3の活性化とインターフェロンβの産生とをつなぐアダプター分子であるという直接的な証拠が得られた。
【0229】
〔実施例16;RNAi〕
RNAiにより二本鎖RNAの補充が、ヒトTICAM−1が減少されたHeLa細胞およびMRC−5細胞中におけるインターフェロンβタンパク質の産生を誘発するかどうかを調べた。
【0230】
HeLa細胞またはMRC−5細胞を、「Oligofectamine」(Invitrogen社;最終濃度200nM)を用い、バッファだけ、ラミン(Lamin)A/Cの一本鎖RNA(コントロール;最終濃度200nM)、またはヒトTICAM−1の一本鎖RNAでトランスフェクトした。トランスフェクトから48時間後に、HeLa細胞およびMRC−5細胞をそれぞれ、50μg/mlおよび10μg/mlのポリ(I:C)で刺激した。24時間の刺激の前(0時間刺激後)および24時間の刺激の後における上清のインターフェロンβの濃度をELISAで測定した。HeLa細胞の測定結果を図18(a)に、MRC−5細胞の測定結果を図18(b)に示す。
【0231】
RNAiの基本的な方法は、Elbashir, S. M., Harborth, J., Lendeckel, W., Yalcin, A., Weber, K., & Tuschl, T. Duplexes of 21−nucleotide RNAs mediate RNA interference in cultured mammalian cells. Nature 411: 494−498 (2001)に記載されている。また、詳細な手順および条件はOshiumi, H., Brgum, N. A., Matsumoto, M., & Seya, T. RNA interference for mammalian cells, Folia Pharme, Jpn. 120: 91−95 (2002)に記載されている。
【0232】
ヒトTICAM−1の一本鎖RNAの配列は、センスがr[GACCAGACGCCACUCCAAC]d[TT]であり、アンチセンスがr[GUUGGAGUGGCGUCUGGUC]d[TT](TICAM−1)である。また、laminA/Cの一本鎖RNAの配列は、センスがr[CUGGACUUCCAGAAGAACA]d[TT]、アンチセンスがr[UGUUCUUCUGGAAGUCCAG]d[TT]である。ここで、「r」および「d」はそれぞれ、リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドを表す。これらの一本鎖RNAは、Xeragon社(USA)から購入した。
【0233】
ポリ(I:C)(10μg/mLまたは50μg/mL)で刺激した細胞(HeLa細胞またはMRC−5細胞)を24時間(24h)培養し、上清を採取した。培養液の上清中におけるヒトインターフェロンβの濃度は、ELISA(酵素結合免疫吸着定量法;TEB社製)によって測定した。結果を図18に示す。
【0234】
これらの細胞中においては、インターフェロンβ産生のレベルは、一本鎖RNAによって約50%まで特異的に阻害された(図18)。
【0235】
したがって、これらの実験によって、TICAM−1が、二本鎖RNAによって媒介されたTLR3の活性化とインターフェロンβの産生とをつなぐアダプター分子であるという直接的な証拠が得られた。
【0236】
【発明の効果】
本発明は、以上のように、哺乳動物のToll様受容体3に対して特異的に結合してI型インターフェロンの産生を誘導する新規アダプタータンパク質およびその変異体、上記タンパク質の遺伝子、上記遺伝子を含む組換え発現ベクター、上記タンパク質に対する抗体を提供できる。
【0237】
これらは、〔発明の実施の形態〕の欄で詳述したように、上記TLR3を介したシグナル伝達系ならびにその調節機構を研究解析するための研究材料、当該シグナル伝達系やその調節機構に関わる種々の病気の病態解析、B型肝炎やC型肝炎等のウイルス感染症の予防・治療、腫瘍の治療、自己免疫疾患の治療、アトピー性疾患の治療等に有用である。
【0238】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】ヒトTLRによるNF−κBの活性化をリポーター遺伝子発現アッセイにより解析した結果を示す図である。
【図2】ヒトTLRによるインターフェロンβプロモーターの活性化をリポーター遺伝子発現アッセイにより解析した結果を示す図である。
【図3】ヒトTLR3およびその変異体によるNF−κBおよびインターフェロンβプロモーターの活性化をリポーター遺伝子発現アッセイにより解析した結果を示す図である。
【図4】酵母ツー・ハイブリッド・システムによるタンパク間の相互作用を調べた結果を示す図である。
【図5】ヒトTICAM−1とマウスTICAM−1との相同性検索の結果を示す図である。
【図6】ヒトTICAM−1およびマウスTICAM−1と、既知のアダプター分子MalおよびMyD88のTIRドメインを示す図である。
【図7】ヒトの多数の組織中におけるTICAM−1のmRNAの発現を示すノーザンブロットである。
【図8】RT−PCRにより複数種のヒト細胞およびヒト細胞株におけるTICAM−1のmRNAを検出した結果を示す図である。
【図9】ヒトTICAM−1とヒトTLR3の相互作用を解析するための免疫沈降法の結果を示す図である。
【図10】ヒトTICAM−1と、ヒトTLR3以外のヒトTLRやヒトTLR3変異体との相互作用を解析するための免疫沈降法の結果を示す図である。
【図11】ヒトTICAM−1の変異体を示す図である。
【図12】ヒトTICAM−1およびその変異体について、NF−κB活性およびインターフェロンβプロモーター活性の測定結果を示す図である。
【図13】TLR3によって媒介されるシグナル伝達を解析するためのリポーター遺伝子発現アッセイによるNF−κB活性およびインターフェロンβ活性の測定結果を示す図である。
【図14】ヒトTICAM−1および既知のアダプター分子についてでインターフェロンβ活性およびNF−κB活性を測定した結果を示す図である。
比較するためのリポーター遺伝子発現アッセイを行った。
【図15】HEK293細胞中におけるヒトTICAM−1および既知のアダプター分子の発現を示すウエスタンブロットである。
【図16】ヒトTICAM−1の一本鎖RNAの配列を示す図である。
【図17】RT−PCR分析の結果を示す図である。
【図18】RNAiによる解析結果を示す図である。

Claims (22)

  1. 配列番号2または4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
  2. 配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち394〜532番目のアミノ酸配列を有するタンパク質。
  3. 配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、配列番号4に示されるアミノ酸配列のうち396〜534番目のアミノ酸配列を有するタンパク質。
  4. 配列番号2または4に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、哺乳動物のToll様受容体3に対して特異的に結合する性質と、I型インターフェロンの産生を誘導する性質とを併せ持つタンパク質。
  5. 配列番号2または4に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、哺乳動物のI型インターフェロンの産生を誘導する性質を持つ一方、哺乳動物のToll様受容体3に対して特異的に結合する性質に異常を持つタンパク質。
  6. 配列番号2または4に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、哺乳動物のToll様受容体3に対して特異的に結合する性質を持つ一方、哺乳動物のI型インターフェロンの産生を誘導する性質に異常を持つタンパク質。
  7. 配列番号2に示されるアミノ酸配列において、少なくとも434番目のアミノ酸が置換又は欠失され、かつ、394〜532番目のアミノ酸配列の少なくとも一部を保持している請求項6記載のタンパク質。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載のタンパク質をコードする遺伝子。
  9. cDNAであって、配列番号1に示される塩基配列のうち、63〜2198番目の塩基配列をオープンリーディングフレームとして有する請求項8記載の遺伝子。
  10. cDNAであって、配列番号3に示される塩基配列のうち、66〜2261番目の塩基配列をオープンリーディングフレームとして有する請求項8記載の遺伝子。
  11. 請求項8ないし10のいずれか1項に記載の遺伝子を含む組換え発現ベクター。
  12. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタンパク質に対して特異的に結合する抗体。
  13. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタンパク質を有効成分として含むウイルス感染症の予防・治療剤。
  14. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタンパク質を有効成分として含む腫瘍の治療剤。
  15. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタンパク質をコードする遺伝子を含む組換え発現ベクターを有効成分として含むウイルス感染症の予防・治療剤。
  16. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタンパク質をコードする遺伝子を含む組換え発現ベクターを有効成分として含む腫瘍の治療剤。
  17. 請求項6または7に記載のタンパク質を有効成分として含む自己免疫疾患の治療剤。
  18. 請求項6または7に記載のタンパク質を有効成分として含むアトピー性疾患の治療剤。
  19. 請求項6または7に記載のタンパク質をコードする遺伝子を含む組換え発現ベクターを有効成分として含む自己免疫疾患の治療剤。
  20. 請求項6または7に記載のタンパク質をコードする遺伝子を含む組換え発現ベクターを有効成分として含むアトピー性疾患の治療剤。
  21. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタンパク質に対して特異的に結合する抗体を有効成分として含む自己免疫疾患の治療剤。
  22. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタンパク質に対して特異的に結合する抗体を有効成分として含むアトピー性疾患の治療剤。
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