JP4632326B2 - イヌのアトピー性皮膚炎の治療薬及び治療方法 - Google Patents
イヌのアトピー性皮膚炎の治療薬及び治療方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蛋白質の一次構造がイヌの遺伝情報由来であるイヌインターロイキン12(以下、CaIL12と略記する)からなるイヌのアトピー性皮膚炎の治療薬およびその薬を用いたイヌのアトピー性皮膚炎の治療方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インターロイキン12は、分子量約40kD蛋白質(以下P40と略記する)と約35kD蛋白質(以下P35と略記する)とのヘテロダイマーよりなり、ナチュラルキラー 細胞および1型ヘルパーT細胞を活性化するなどの生理活性作用を有するサイトカインで(文献1、2)、IL12と略記される。IL12は、特に細胞性免疫の強力な活性化作用により、腫瘍、感染症、アレルギーなどのマウスモデル実験において、驚異的な治癒効果が多くの文献において報告されており(文献3、4、5)、腫瘍および感染症の治療薬として臨床試験も始まっている。
【0003】
ヒトと同様、イヌにも乳腺腫瘍など多数の腫瘍、アトピー性皮膚炎など多くの皮膚炎、パルボウイルス感染症、ジステンバー感染症など多数の感染症などが知られており、これらはイヌの疾病統計で常に上位にランクされている。しかしながら、これらイヌの疾病に対する有効な治療薬および予防薬は現在のところほとんどない。例えば腫瘍では、腫溜が大きくなってから来院するイヌやがほとんどで、手術により切除してもすでに転移していて、手術後まもなく死亡することが多い。また、イヌに多い皮膚疾病では、ステロイド剤などを用いて長期にわたり繰り返し治療されているにもかかわらず、完治しない例が多く、即効性でかつ持続性のある治療薬が望まれている。そのような現状の中で、イヌのIL12が入手可能となれば、有効な治療薬および予防薬がないこれらイヌの疾病に対する用途が開かれると期待される。ネコに関しても同様なことが言える。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、かかる状況に鑑みCaIL12cDNAをクローニングし、それを用いて大量生産すること、およびCaIL12からなる製剤を免疫疾患のイヌのアトピー性皮膚炎治療薬として提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的の達成のため、創意工夫を成し、イヌのcDNAからCaIL12のP40とP35をコードするそれぞれの遺伝子をクローニングすることに成功し、更にはこれらを発現ベクターに連結した2つのプラスミドを用いてCaIL12を生産する細胞の作製、およびこれら遺伝子を同時に含む組換えバキュロウイルスの作製に成功し、以って簡単に大量にCaIL12を製造する方法を確立し、さらにはCaIL12からなる製剤を従来の治療法では治療が困難である疾病のイヌに投与すること、または疾病のイヌ末梢血からリンパ球を分離してin vitroでCaIL12からなる製剤で刺激後、再び同一イヌに戻すことによってその病状が驚くほど顕著に改善されることを見出し、かくして本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明の骨子は、下記の各発明から成る。
【0007】
(1)配列番号:1または配列番号:11と同じアミノ酸配列と配列番号:2または配列番号:12と同じアミノ酸配列がヘテロダイマーを形成してできるイヌインターロイキン12を含んでなるイヌのアトピー性皮膚炎治療薬。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のCaIL12蛋白質の2つのサブユニットをそれぞれコードするDNAを組込んだプラスミドは例えば次のようにして製造することができる。すなわち、イヌの細胞からポリ(A)RNAを抽出した後、cDNAを合成し、ウシやヒトのIL12の2つのサブユニットをそれぞれコードする遺伝子配列を元にしたプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(以下PCRと略す)を行うことによってCaIL12活性を示す2つのサブユニットをそれぞれコードする2つの遺伝子をクローニングすることができる。また、合成したcDNA組換え体よりファージライブラリーを作製し、PCRによって得られた2つの遺伝子断片とプラークハイブリダイゼーションを行うことにより、CaIL12P40cDNAとCaIL12P35cDNAの全長をクローニングすることができる。
【0014】
イヌの臟器や細胞、例えばマイトージェンなどで刺激されたイヌ単核球やリンパ球などよりRNAを得る方法としては、通常の方法、例えば、ポリソームの分離、ショ糖密度勾配遠心や電気泳動を利用した方法などがあげられる。上記イヌ臟器やイヌ細胞よりRNAを抽出する方法としては、グアニジン・チオシアネート処理後CsCl密度勾配遠心を行うグアニジン・チオシアネート−塩化セシウム法(文献3)バナジウム複合体を用いてリボヌクレアーゼインヒビター存在下に界面活性剤で処理したのちフェノール抽出を行う方法(文献4),グアニジン・チオシアネート−ホット・フェノール法、グアニジン・チオシアネート−グアニジン塩酸法、グアニジン・チオシアネート−フェノール・クロロホルム法、グアニジン・チオシアネートで処理したのち塩化リチウムで処理してRNAを沈殿させる方法などの中から適当な方法を選んで行うことができる。
【0015】
イヌ臟器やマイトージェンなどで刺激されたイヌ単核球やリンパ球より通常の方法、例えば、塩化リチウム/尿素法、グアニジン・イソチオシアネート法、オリゴdTセルロースカラム法等によりmRNAを単離し、得られたmRNAから通常の方法、例えば、Gublerらの方法(文献5),H.Okayamaらの方法(文献6)等によりcDNAを合成する。得られたmRNAからcDNAを合成するには、基本的にはトリ骨芽球ウイルス(AMV)などの逆転写酵素などを用いるほか1部プライマーを用いてDNAポリメラーゼなどを用いる方法を組み合わせてよいが、市販の合成あるいはクローニング用キットを用いるのが便利である。
【0016】
このcDNAを鋳型としてヒト、マウスおよびウシの塩基配列を基にしたプライマーを用いてPCRを行うことによってCaIL12活性を示すP40サブユニットおよびP35サブユニットをコードする遺伝子をクローニングすることができる。また、合成したcDNAをλファージベクターに連結した後、インビトロでλファージのコート蛋白質などと混合することによりパッケージングし、その生成されたファージ粒子を宿主となる大腸菌に感染させる。この際、λファージの感染した大腸菌は溶菌し、1個1個のクローンがプラークとして回収される。このプラークをニトロセルロースなどのフィルターに移し、放射標識したPCRで得た遺伝子をプローブとしたハイブリダイゼーションにより、CaIL12P40cDNAおよびCaIL12P35cDNAの全長をクローニングすることができる。
【0017】
宿主としては原核生物又は真核生物を用いることができる。原核生物としては細菌、特に大腸菌(Escherichia coli),バチルス属(Bacillus)細菌、例えばバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等を用いることができる。真核生物としては酵母、例えばサッカロミセス(Saccharomyces)属酵母、例えばサッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces serevisiae)等の真核性微生物、昆虫細胞、例えば、ヨガ細胞(Spodoptera frugiperda)、キャベツルーパー細胞(Trichoplusiani)、カイコ細胞(Bombyx mori)、動物細胞、例えばヒト細胞、サル細胞、マウス細胞等を使用することができる。本発明においてはさらに、生物体それ自体、例えば昆虫、例えばカイコ、キャベツルーパー等を用いることもできる。
【0018】
発現ベクターとしては、プラスミド、ファージ、ファージミド、ウイルス(バキュロ(昆虫)、ワクチニア(動物細胞))等が使用できる。発現ベクター中のプロモーターは宿主細菌に依存して選択され、例えば細菌用プロモーターとしてはlacプロモーター、trpプロモーター等が使用され、酵母用プロモーターとしては、例えばadh1プロモーター、pqkプロモーター等が使用される。
また、昆虫用プロモーターとしてはバキュロウイルスポリヘドリンプロモーター、p10プロモーター等、動物細胞としてはSimian Virus40のearlyまたはlateプロモーター等があげられるが、これらに限定されない。 発現ベクターによる宿主の形質転換は、当業界においてよく知られている常法により行うことができ、これらの方法は例えば、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons社、に記載されている。形質転換体の培養も常法に従って行うことができる。
【0019】
産生されたCaIL12は,非還元下、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により決定すると、見かけの分子量が約70〜80kDである。
【0020】
SDS−PAGEでは、70〜80kDのバンドが、還元条件下では分子量約40kDと約35kDの2つのサブユニットを生じる。 CaIL12は、以下の実施例2で示すように、in vitroで、イヌ白血球からのインターフェロンγ(以下IFNγと略記する)の誘導能およびフィトヘムアグルチニンン(以下PHAと略記する)で刺激されたイヌリンパ球の増殖促進効果により主に特性化される。その他、NK細胞や細胞障害性T細胞を活性化してそれらの標的細胞、例えば腫瘍由来のセルラインまたはウイルス感染した線維芽細胞を融解する活性を有する。
【0021】
遺伝子組換え技術によって製造されたCaIL12を単離、精製するための方法に特に限定はなく、通常の蛋白質の精製方法を用いることができる。例えばイヌIFNγの誘導活性を指標としながら、イオン交換性担体、色素担体、ゲル濾過担体、シリカゲル担体、キレート担体等を用いたクロマトグラフィーや、限外濾過、ゲル濾過、透析、塩析等による脱塩、濃縮を組合せることによって精製し単離することができる。
【0022】
本発明に係るイヌのアトピー性皮膚炎治療薬は、腫瘍をはじめ皮膚炎、アレルギー疾患、感染症など免疫能が低下した疾病、あるいは特に細胞性免疫反応に比べ、液性免疫反応が中心となったような片寄った免疫反応を示す疾病などさまざまなイヌの免疫疾病に対して、従来のこれらイヌの疾病に対する治療薬・予防薬や治療方法・治療方法に比べ、驚くべき顕著な治療効果および予防効果を示す。
【0023】
本発明において、イヌの腫瘍としては、乳腺腫瘍、好酸球性肉芽腫、類表皮腫、皮膚腫瘍、脂肪腫、耳血腫、肺水腫、皮膚有茎軟腫または肛門腫瘍が挙げられ、イヌの皮膚炎としては、外耳道炎、皮膚炎、湿疹、皮膚真菌症、膿皮症、アレルギー性皮膚炎、じん麻疹、外傷性皮膚炎、または脱毛症が挙げられ、イヌの感染症としては、イヌパルボウイルス感染症、ジステンバー感染症が挙げられ、そしてアレルギー性疾病としては、イヌの花粉症が挙げられる。
【0024】
また、このイヌのアトピー性皮膚炎治療薬は、CaIL12に加えて任意に他の成分を含むことができる。本薬に添加される成分は、主として、本薬が投与される方式に依存して決定される。本薬が個体として用いられる場合は、例えばラクトース等の充填剤、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン等の結合剤、着色剤、コーティング剤等を用いることができ、このような剤は経口投与に好適である。また、担体または賦活剤として例えば、白色ワセリン、セルロース誘導体、界面活性剤、ポリエチレングリコール、シリコーン、オリーブ油等を加えてクリーム、乳液、ローション等の形態として外用薬として患部に塗布して用いることもできる。また、本薬が液体として投与される場合は、通常行われている生理学的に許容される溶媒、および乳化剤、安定剤を含むことができる。溶媒としては水、PBS、等張性生理食塩水等が挙げられ、乳化剤としては、ポリオキシエチレン系界面活性剤、脂肪酸系界面活性剤、シリコーン等が例示でき、安定剤としては、イヌ血清アルブミン、ゼラチン等のポリオール、またはソルビトール、トレハロースなどの糖類等が挙げられる。本発明のアトピー性皮膚炎治療薬の投与方法に特に限定はないが、注射投与することにより最も治療効果が期待できる。注射投与方法としては静脈内投与、筋肉
内投与、皮下投与、腹腔内投与、胸腔内投与いずれの方法にも限定されない。
【0025】
投与量は、個体の大きさ、投与方法、疾病の種類、症状などに依存して決定されるであろうが、治療効果および予防効果を示すのに十分な量を投与すればよく、例えば、1用量、1日当たり、0.1pgから100μg/kgのCaIL12の投与で十分な効果が得られる。
【0026】
また、養子免疫療法では1−100mlのイヌの血液から分離したリンパ球に対し、0.001pgから1μgのCaIL12で12時間から6日間刺激した後に再び体内に戻すことによって十分な効果が得られる。
【0027】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0028】
[実施例1]
CaIL12P40、P35遺伝子のクローニング:
(1)イヌcDNAの調製
イヌ肝臓、LPS(50μg/ml)で48時間刺激したイヌ末梢血単核球およびニワトリニューカッスル病ウイルスで7時間処理した(107 pfu/ml)イヌ脾臓由来リンパ球よりISOGEN(ニッポンジーン社)を用いて総RNAを調製した。得られたRNAを1mM EDTAを含む10mM トリス塩酸緩衝液(pH7.5)(以下TEと略する。)に溶解し、70℃で5分間処理した後、1M LiClを含むTEを同量加えた。0.5M LiClを含むTEで平衡化したオリゴdTセルロースカラムにRNA溶液をアプライし、同緩衝液にて洗浄した。さらに0.3M LiClを含むTEにて洗浄後、0.01% SDSを含む2mM EDTA(pH7.0)で吸着したポリ(A)RNAを溶出した。こうして得られたポリ(A)RNAを用いて一本鎖cDNAを合成した。すなわち、滅菌した0.5mlのミクロ遠心チューブに5μgのポリ(A)RNAと0.5μgのオリゴdTプライマー(12−18mer)を入れ、ジエチルピロカルボネート処理滅菌水を加えて12μlにし、70℃で10分間インキュベートしたのち氷中に1分間つけた。これに200mM トリス塩酸(pH8.4),500mM KCl溶液を2μl,25mM MgCl2 を2μl,10mM dNTPを1μlおよび0.1M DTTを2μlそれぞれ加え、42℃で5分間インキュベートしたのち、200ユニットのGibcoBRL社製SuperScript II RTを1μl加え、42℃でさらに50分間インキュベートしてcDNA合成反応を行った。さらに70℃で15分間インキュベートして反応を停止し、氷上に5分間置いた。この反応液に1μlのE.coli RNaseH(2units/ml)を加え、37℃で20分間インキュベートした。
【0029】
(2)イヌcDNAファージライブラリーの調製
上記(1)で得られたポリ(A)RNA1μgづつを用い、ファルマシア社のタイムセーバーcDNA合成キットにて添付のマニュアルに従い、オリゴdTプライマーを用いて2本鎖cDNAを合成し、さらにEcoRI/NotIアダプターを連結した。これを用いて、アマシャム社のcDNAラピットクローニングモジュール−λgt10にて添付のマニュアルに従い、組換えλgt10ベクターを作製し、さらにアマシャム社のインビトロパッケージングモジュールにて添付のマニュアルに従い、組換え体ファージ作製した。
【0030】
(3)CaIL12P40遺伝子のクローニング
ヒトIL12P40のN末端およびC末端の塩基配列(文献1)をもとに、
5´ATGTGTCACCAGCAGTTGGTCATCTCTTGGTTT3´(配列番号3)
と
5´CTAACTGCAGGGCACAGATGCCCA3´(配列番号4)
の2種類のプライマーをDNAシンセサイザーにて合成した。上記(1)のイヌ肝臓およびLPS刺激イヌ末梢血より得られたcDNAを別々の0.5mlのミクロ遠心チューブに2μlづつ取り、各プライマーを20pmol,20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、1.5mM MgCl2 、25mM KCl,100μg/ml ゼラチン、50μM各dNTP、4単位 TaqDNAポリメラーゼとなるように各試薬を加え、全量100μlとする。DNAの変性条件を94℃,1分、プライマーのアニーリング条件を55℃、2分、プライマーの伸長条件を72℃、3分の各条件でPerkin−Elmer Cetus社のDNAサーマルサイクラーを用い、35サイクル反応させた。これを1%アガロースゲルにて電気泳動し、約990bpのDNA断片を常法(文献7)に従って調製した。
【0031】
このDNA断片をInvitrogen社のT−Vectorに宝酒造(株)のDNA Ligation Kit Ver.1を用いて連結した。これを用いて常法に従い大腸菌を形質転換し、得られた形質転換体よりプラスミドDNAを常法により調製した。次にこのプラスミドにPCR断片が挿入されていることを前述と同じ条件のPCRによって確認し、Genesis2000 DNA analysis system(デュポン社)を用いて、ダイデオキシ法(文献9)でCaIL12活性を示すと思われる2つのサブユニットのうち一方のP40サブユニットDNAの塩基配列を決定した。この配列を配列番号1に示す。
【0032】
また、この配列を含む、990bpのDNA断片に宝酒造(株)のRandom Primer DNA Labeling Kitを用いて32Pを標識し、プローブを作製した。上記(2)で得られたイヌ肝臓cDNAから作製した組換え体ファージライブラリーを大腸菌NM514上でプラークとして形成させ、アマシャム社のHybond−N+に常法に従って転写した。
【0033】
Hybond−N+は、5×SSPE(0.9M NaCl,50mM NaH2PO4,5mM EDTA,pH7.4),5×デンハルト溶液(0.1%フィコール、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ウシ血清アルブミン)、0.1%SDS、100μg/mlサケ精子DNA中、65℃で2時間インキュベートし、ついで同じ溶液中で上述のようにして作製した標識プローブ1×106cpm/mlとハイブリダイズした。65℃で1晩インキュベートした後、Hybond−N+を0.2×SSC(30mM NaCl,3mMクエン酸ナトリウム)、0.1%SDS中15分、3回洗浄し、富士写真フィルム(株)の富士イメージングプレートに12時間露出し、富士写真フィルム(株)のバイオイメージングアナライザーにて解析した。陽性のシグナルを有するプラークは常法に従い、再スクリーニングを行った。3回のスクリーニングの結果、陽性シグナルを有する1個の組換え体ファージを得た。この組換え体ファージより常法に従ってファージDNAを抽出し、制限酵素EcoRIで切断した後、1%アガロースゲル電気泳動にて得られた約1.5kbのDNA断片を常法に従い調製し、宝酒造(株)のDNA Ligation Kit Ver.2を用いて、宝酒造(株)のpUC118BAP処理DNA(EcoRI/BAP)と連結した。これを用いてプラスミドDNAを常法により調製し、蛍光DNAシーケンサー(パーキンエルマー社製DNAシーケンサー373S)を用い、その添付プロトコールに従って、パーキンエルマー社のダイターミネーターサイクルシーケンシングキットを用いて、得られたDNA断片の塩基配列を決定した。このうち、CaIL12P40をコードする配列を配列番号11に示す。
【0034】
(4)CaIL12P35遺伝子のクローニング
ヒトIL12P35のN末端(文献1)およびウシIL12P35のC末端の塩基配列をもとに、
5´AGCATGTGTCCAGCGCGCAGCCTCCTCCTTGTCGCTACCCTG3´(配列番号5)
と
5´CTAGGAAGAACTCAGATAGCTCATCATTCTGTCGATGGT3´(配列番号6)
の2種類のプライマ−をDNAシンセサイザーにて合成した。上記(1)の鶏ニューカッスル病ウイルスで処理したイヌ脾臓由来リンパ球より得られたcDNAを鋳型として上記(3)と同様にして約670bpのDNA断片を得、T−Vectorに挿入し、CaIL12活性を示すと思われる2つのサブユニットのうち一方のP35サブユニットDNAの塩基配列を決定した。この配列を配列番号2に示す。
【0035】
また、この配列を含む670bpのDNA断片を用いて標識プローブを作製した。上記(2)で得られた鶏ニューカッスル病ウイルスで処理したイヌ脾臓由来リンパ球より得られたcDNAから作製した組換え体ファージライブラリーを上記(3)と同様にして標識プローブとハイブリダイズし、スクリーニングを行った。その結果得られた陽性シグナルを有する1個の組換え体ファージよりDNAを抽出し、制限酵素NotIで切断した後、1%アガロースゲル電気泳動にて得られた約1.2kbのDNA断片をSTRATAGENE社のpBluescriptIIのNotIサイトに常法に従い連結した。これを用いてプラスミドDNAを調製し、蛍光DNAシーケンサーを用いて、得られたDNA断片の塩基配列を決定した。このうち、CaIL12P35をコードする配列を配列番号12に示す。
【0036】
[実施例2]
CaIL12の生産:
(1)CaIL12発現ベクターの調製
発現ベクターpCDL−SRα296(文献9)を制限酵素EcoRIで切断し、バクテリア由来アルカリホスファターゼで末端を脱リン酸化した。これを1%アガロースゲル電気泳動にて約3.6kbのDNA断片を常法に従い調製した。一方、CaIL12P40 DNA断片は
5´GGGGAATTCATGTGTCACCAGCAGTTGGTCATCTCTTGG3´(配列番号7)
と
5´CCCGAATTCCTAACTGCAGGGCACAGATGCCCAGTCGCT3´(配列番号8)
の2種類のEcoRI切断部位を付加したプライマーを作製し、実施例1(2)で調製したT−Vectorに挿入したCaIL12活性を示すと思われる2つのサブユニットのうち一方のP40サブユニットDNAを鋳型として、DNAの変性条件を94℃、1分、プライマーのアニーリング条件を55℃、2分、プライマーの伸長条件を72℃,3分、サイクル数30でPCRを行い、エタノール沈殿後、制限酵素EcoRIで切断し、1%アガロースゲル電気泳動にて約990bpのDNA断片を調製した。また、
5´GGGGAATTCATGCATCCTCAGCAGTTGGTCATCTCCTGG3´(配列番号13)
と
5´CCCGAATTCCTAACTGCAGGACACAGATGCCCAGTCGCT3´(配列番号14)
の2種類のEcoRI切断部位を付加したプライマーを作製し、実施例1(2)で調製したpUC118に挿入したCaIL12P40DNAを鋳型として、PCRを行い、EcoRIで切断し、約990bpのDNA断片を調製した。得られたそれぞれのCaIL12P40DNA断片をT4DNAリガーゼを用いて上述のようにして調製したpCDL−SRα296に連結した。これを用いて大腸菌を形質転換し、得られた形質転換体よりプラスミドDNAを調製し、CaIL12P40を発現するFOCaIL12P40およびFOCaIL12P40FLを得た。
【0037】
また、pCDL−SRα296を制限酵素PstIで切断し脱リン酸化後、電気泳動にて約3.6kbのDNA断片を調製した。CaIL12P35 DNA断片は
5´GGGCTGCAGATGTGTCCAGCGCGCAGCCTCCTCCTTGTC3´(配列番号9)
と
5´GGGCTGCAGCTAGGAAGAACTCAGATAGCTCATCATTCT3´(配列番号10)
の2種類のPstI切断部位を付加したプライマーを作製し、実施例1(3)で調製したT−Vectorに挿入したCaIL12活性を示すと思われる2つのサブユニットのうち一方のP35サブユニットDNAを鋳型として、94℃,1分、55℃,2分、72℃,3分、30サイクルでPCRを行い、エタノール沈殿後、制限酵素PstIで切断した。これを1%アガロースゲル電気泳動にて約670bpのDNA断片を調製した。また、
5´GGGCTGCAGATGTGCCCGCCGCGCGGCCTCCTCCTTGTG3´(配列番号15)
と
5´GGGCTGCAGTTAGGAAGAATTCAGATAACTCATCATTCT3´(配列番号16)
の2種類のPstI切断部位を付加したプライマーを作製し、実施例1(2)で調製したpUC118に挿入したCaIL12P35DNAを鋳型として、PCRを行い、PstIで切断し、約670bpのDNA断片を調製した。得られたそれぞれのCaIL12P35DNA断片をT4DNAリガーゼを用いて上述のように、PstIで切断し調製したpCDL−SRα296に連結、大腸菌形質転換、プラスミドDNA調製を行い、CaIL12P35を発現するFOCaIL12P35およびFOCaIL12P35FLを得た。
【0038】
さらに、作製したこれら4つの発現プラスミド中のCaIL12P40DNAおよびCaIL12P35DNAの塩基配列を確認した。
【0039】
(2)サルCOS細胞でのCaIL12の生産
上記(1)で得られたそれぞれ5μgのFOCaIL12P40および
FOCaIL12P35を50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)、400μg/mlのDEAEデキストラン(ファルマシア製)および100μMのクロロキン(シグマ社)を含む4mlのERDF培地(極東製薬(株)社製)に加えておく。一方、直径10cmのディッシュを用いて10%ウシ胎児血清(ギブコ社、以下FBSと略記する)で50%コンフルエントになるまで増殖させたCOS−1細胞(ATCC CRL−1650)をPBSで一回洗浄した後、上記で得た4mlのDNA混合液を加え、5%CO2 、37℃の条件で培養した。4時間後、細胞をPBSで洗浄した後、20mlのERDF培地にて5%CO2 ,37℃の条件で4日間培養し、CaIL12が生産された培養上清を得た。
【0040】
(3)CaIL12産生組換えバキュロウイルスの作製
バキュロウイルストランスファーベクターpAcAB3(ファーミンジェン社製)のプロモーター下流の制限酵素XbaIおよびSmaI切断部位にそれぞれP40およびP35サブユニットcDNAを常法に従って連結し、組換えトランスファーベクターを得た。さらにファーミンジェン社製のバキュロウイルストランスフェクションキットを用いてその添付マニュアルに従って、組換えバキュロウイルスを作製した。
(4)昆虫細胞でのCaIL12の生産
上記(3)で得られた組換えバキュロウイルスを、ファーミンジェン社製のバキュロゴールドProtein−Free Insect Mediumで75cm2のフラスコでコンフルエントまで平面培養したSf21細胞(Spondoptera Flugiperda由来、ファーミンジェン社より入手)に感染させ、4日間培養した後、CaIL12が生産された培養上清を得た。
【0041】
(5)CaIL12の活性測定
上記(2)、(4)で生産されたCaIL12の活性測定は以下のようにして行った。 イヌリンパ球からのイヌIFNγ誘導活性検定のために、抗ウイルス活性およびイヌ細胞のクラスIIMHC発現増強活性を測定した。
【0042】
イヌ脾臓よりリンパ球を分離し、10%FBS−ERDFに106 cells/mlの細胞密度で懸濁し、このうち2.5mlとヒトIL2(Genzyme社製)250Uを6cmディッシュに添加した。これに上記(2)で得られた培養上清2.5mlとヒトIL2(Genzyme社)250Uを加え、5%CO2 、37℃の条件で2日間培養し、ウイルスとしてVesicular Stomatitis Virus,感受性細胞としてMDCK(ATCC CCL−34)を用い、文献10のCPE法に従ってこの培養液の抗ウイルス活性を測定した。その結果、2x105 希釈単位/ml以上の抗ウイルス活性が確認された。また、上記(4)で得られた培養上清の抗ウイルス活性を同様にして測定した結果、107希釈単位/ml以上の抗ウイルス活性が検出された。一方、10μgのpCDL−SRα296を上記(2)と同様にCOS−1細胞に導入したコントロールの細胞培養液およびSf21細胞を3日間培養した培養液では抗ウイルス活性は全く認められなかった。
【0043】
また、クラスIIMHCを発現したイヌ乳腺腫瘍組織由来細胞株FCBR1を用いて、上記の各培養液中のクラスIIMHCの発現増強活性を測定した。6cmディッシュに、105個のFCBR1を接着させ、これに上記の各培養液5mlを添加し、5%CO2、37℃の各条件で1晩培養した。培養後、トリプシンにて細胞を剥離し、1.5mlのミクロ遠心チューブにて遠心した。これに、10μlのラット抗イヌクラスIIMHCモノクローナル抗体(Stratagene社製)を添加し、さらに50μlの10%FBS−ERDFで懸濁し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、5μlのFITC標識ラビット抗ラットモノクローナル抗体(セロテック社製)および50μlの10%FBS−ERDFで懸濁し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン(株)のFACScanにて解析した。その結果、COS1およびSf21で産生させたCaIL12は、FCBR1上のクラスIIMHCの発現量をそれぞれ約20%、60%上昇させた。これらのことから、CaIL12はイヌリンパ球に作用して、イヌIFNγを誘導する活性を有することが判明した。
【0044】
また、芽球化したイヌリンパ球の増殖促進活性を測定した。イヌ末梢血よりリンパ球を分離し、10%FBS−ERDFに106 cells/mlの細胞密度で懸濁し、このうち5mlを6cmディッシュに添加した。これにPHAを5μg/mlの濃度で添加し、5%CO2 、37℃の条件で3日間培養してリンパ球を芽球化させた。この芽球化リンパ球を10%FBS−ERDFに106 cells/mlの細胞密度で懸濁し、96穴マイクロプレート1穴あたり、50μlを添加した。これに上記(2)で得られた培養上清を1穴あたり50μl加えた。また、コントロールとして10%FBS−ERDFのみを1穴あたり50μl加えた。これらをさらに5%CO2 、37℃の条件で3日間培養後、文献11のMTTアッセイ法により、CaIL12の芽球化リンパ球の増殖促進活性を測定した。すなわち、5mg/mlのMTT(シグマ社製)溶液を1穴あたり10μlづつ添加し、さらに6時間培養した。150μlの0.01N塩酸イソプロパノール溶液を加えた後、超音波にて細胞を破砕し、マイクロプレートリーダー(BIO−RAD社製Model13550)にて波長595nmの吸光度を測定した。その結果、コントロールの吸光度が平均0.69であったのに対し、COS−1で産生したCaIL12は平均1.52であり、約2倍以上の芽球化リンパ球の増殖促進活性が認められた。
【0045】
さらに、CaIL12のイヌ腫瘍に対する抗腫瘍作用を検討した。イヌ末梢血よりリンパ球を分離し、10%FBS−ERDFで5x106cells/mlの細胞密度に懸濁し、このうち5mlを6cmディッシュに添加した。これにベーリンガーマンハイム社(株)のリコンビナントヒトIL2を500U添加し、5%CO2、37℃の条件で3日間培養した。一方、イヌ腫瘍細胞FCBR1およびA72(ATCC CRL−1542)を10%FBS−ERDFでそれぞれ105cells/mlの細胞密度に懸濁し、96穴プレート1穴あたり50μlづつ添加し、プレートに接着させた。これにヒトIL2で刺激したイヌリンパ球50μlを加え、さらにCaIL12を発現している上記(2)で得られた培養上清100μlもしくはコントロールとして10%FBS−ERDF100μlを添加し、5%CO2、37℃の条件で2日間培養した。培養後、上清を完全に取り除き、MTTアッセイを行った。%細胞障害性を次の式にて算出した。
【0046】
%細胞障害性=(1ーOD2/OD1)x100
ここで、OD1=培地のみで培養したイヌ腫瘍細胞の波長595nmの吸光度
OD2=イヌリンパ球と共に培養したイヌ腫瘍細胞の波長595nmの吸光度を表す。
【0047】
その結果、FCBR1ではコントロールが34%であったのに対し、COS−1で生産したCaIL12は約75%の細胞障害性を示した。また、A72ではコントロールが22%であったのに対し、CaIL12は約83%の細胞障害性を示した。CaIL12はイヌリンパ球を活性化して、イヌ腫瘍細胞に対して抗腫瘍作用を発揮することが判明した。
【0048】
[実施例3]
CaIL12の精製:
実施例2(4)で得られた細胞培養上清250mlを、スルホプロピル担体を充填したカラムにアプライした後、十分量の20mMリン酸緩衝液でカラムを洗浄し、0.5〜1MのNaClで溶出して得られた吸着画分をさらにブルーセファロース担体を充填したカラムにアプライし、同様にして洗浄後、1.1〜2MのNaClで溶出した画分を得た。得られた画分を透析によって脱塩して、精製したCaIL12画分5mlを得た。SDS−PAGE解析によると、この画分中のCaIL12の純度は95%以上であった。
【0049】
[実施例4]
CaIL12製剤の製造:
実施例3で得られた精製CaIL12溶液に、注射用生理食塩水、注射用低分子ゼラチン(新田ゼラチン(株))、ソルビトールを加えて、ゼラチンの終濃度0.5%、ソルビトールの終濃度30%に調製した。さらに、ポジダイン(ポール(株))で処理してパイロジェンを除去した後、250℃で2時間乾熱滅菌したガラスバイアルに1mlづつ分注した。その後、無菌的に凍結乾燥することによって、1バイアル中に1pgから5μgのCaIL12を含むCaIL12製剤を得た。このCaIL12製剤は、室温条件下で安定であり、また、蒸留水または生理食塩水によって良好に溶解した。
【0050】
[実施例5]
細胞レベルでのCaIL12製剤の薬効評価:
(1)腫瘍
CaIL12製剤の抗腫瘍効果を見るために、担ガンマウスを作製し、CaIL12製剤で刺激されたイヌリンパ球を移入して腫瘍の縮小効果を検討した。6週齢のメスヌードマウス(BALB/C nu/nu)10匹を日本クレア(株)より購入した。それぞれの背部皮下にイヌ乳腺腫瘍細胞株FCBR1を108cells移植し、約1ヶ月後、平均33mmx25mmの腫瘤を有する担ガンマウスを作製した。一方、FCBR1を樹立する際に、Whitesideらの方法(文献14)により分離した腫瘍内浸潤リンパ球(以下TILと略記する)108cellsを20mlの10%FBS−ERDFで懸濁し、実施例4で調製したCaIL12製剤10ngを添加して5%CO2、37℃の条件で2日間培養し、CaIL12製剤で刺激されたTILを得た。またコントロールとしてCaIL12製剤を添加せずに同様の条件で培養した108cellsのTILを準備した。これら2種類のTILを担ガンヌードマウスの尾静脈より1匹あたり107cells、5匹づつ移入した。移入7日後、ノギスにて腫瘍重量を測定し、TIL移入前との腫瘍重量の変化を調べた。なお、腫瘍重量は次の式にて算出した。
【0051】
腫瘍重量=(長径x短径2/2)
その結果、CaIL12製剤で刺激されたTILを移入した担ガンヌードマウスは5匹のうち3匹で完全に腫瘍が退縮し、2匹でTIL移入前の腫瘍重量を1とした相対腫瘍重量で0.2以下であった。一方、コントロールのTILを移入した担ガンヌードマウスは5匹とも腫瘍が増大し、相対腫瘍重量ですべて1.25以上であった。以上のことから担ガンマウスを用いた系において、CaIL12製剤はTILを活性化して腫瘍縮小効果を発揮することが判明した。
【0052】
(2)アレルギー
CaIL12製剤の抗アレルギー効果を見るために、アレルギーの患犬由来リンパ球をCaIL12製剤で刺激し、IgEなどアレルギーの原因となる因子の発現調節の有無について検討した。アトピー性皮膚炎と診断された患犬5頭からそれぞれ10mlの血液を採取した。これらより直ちにリンパ球を分離し、抗ヒトCD3ポリクローナル抗体(Genzyme社製)で固相化した10cmディッシュにて10%FBS−ERDFでCaIL12製剤をそれぞれ10ngづつ加えて3日間培養した。なおコントロールとしてCaIL12製剤を添加せずに同様の条件で培養したイヌリンパ球を準備した。培養後、各ディッシュ中の一部のリンパ球を回収し、実施例1に記載の方法によりcDNAを合成し、
イヌIgEおよびイヌIgEレセプター遺伝子に特異的なプライマーを用いてPCRを行い、それら遺伝子の発現を調べた。その結果、CaIL12製剤を添加して培養したイヌリンパ球のそれら遺伝子の発現はCaIL12製剤を添加しなかったものと比較していずれも抑制されていた。このことから、CaIL12製剤はイヌリンパ球に作用してアレルギーの原因因子の1つであるIgEおよびIgEレセプターの発現を抑制することが判明した。また、抗ヒトCD4ポリクローナル抗体(Genzyme社製)を用いたパンニング法(文献15)により各ディッシュ中の残りのリンパ球から主にヘルパーT細胞集団からなるCD4陽性細胞を得た。これを用いてcDNAを合成し、CaIL5およびCaIFNγ遺伝子に特異的なプライマーを用いてPCRを行い、それら遺伝子の発現を調べた。その結果、CaIL5遺伝子の発現に関してはCaIL12製剤の添加によりいずれも発現が抑制されていた。一方、CaIFNγ遺伝子の発現に関してはCaIL12製剤の添加によりいずれも発現が増強されていた。IL5はアレルギー反応などの液性免疫反応を引き起こす2型ヘルパーT細胞から産生され、一方IFNγは細胞性免疫を引き起こし液性免疫を抑制する1型ヘルパーT細胞から産生される。このことから、CaIL12製剤はイヌリンパ球中の2型ヘルパーT細胞を抑制し、1型ヘルパーT細胞を活性化する作用を有することが示唆された。以上のことから、CaIL12製剤はイヌのアレルギー性疾患の治療に有望であることが判明した。
【0053】
[実施例6]
CaIL12製剤のイヌに対する毒性試験:
CaIL12製剤の毒性を試験した。試験動物としてビーグル犬3頭を用いた。試験は以下の要領にて実施した。
【0054】
(1) 投与方法
2日おきに計5回投与を行った。投与量は順次増やしていった(初回:1ng/kg体重、5ng/kg体重、25ng/kg体重、250ng/kg体重、5回目:1μg/kg体重)。また投与ルートは静脈投与により行った。
【0055】
(2) 観察検査期間、観察検査項目、観察点
観察期間は投与開始前1週から投与開始後3週までとした。観察検査項目は臨床症状(呼吸様式、元気、食欲、活動性、可視粘膜、流延、嘔吐、排便行動、傾眠)
、体温、心拍数、体重、血液学的検査(血球系(白血球数、ヘマトクリット、血小板数、血液像)、電解質(Na,K,Cl)、生化学的検査(BUN,Crea.,GOT,GPT,CPK,Glucose,TP,Alb,Glob,A/G)、尿所見、循環器および自律神経系所見とした。観察点は体重に関しては投与日から7日目毎に1回測定し、その他の項目に関しては、投与開始1週前、投与日の投与直前、投与10分後、30分後、1時間後、1.5時間後、2時間後、4時間後、6時間後、12時間後、24時間後、48時間後、投与開始2週後および投与開始3週後に測定した。
【0056】
以上の要領にて試験を行った結果、CaIL12製剤の投与によって問題となる変化は認められなかったことから、CaIL12製剤は少なくとも1μg/kg体重の投与量まではイヌに対して毒性がないことが明らかになった。
【0057】
[実施例7]
CaIL12製剤によるイヌ疾病の治療および予防:
表皮に腫瘤を持つ患犬、計12頭に対してCaIL12製剤を局所注射および静脈内注射投与した。どの患犬にもさまざまな大きさの腫瘤が複数個存在していた。12頭中8頭に対しては、腫瘤1個につき、10ng−1μgのCaIL12を3ー4日間隔で3ー10回、腫瘍局所に直接、注射投与した。その結果、CaIL12製剤を投与した腫瘤の9割が完全に消失し、残りの腫瘤も全て半分以下に縮小した。4頭は大きさが100cm3以上の腫瘤を持っており、全てすでに肺、肝臓、腎臓などの内臓に転移していた。これら3頭については外科的手術により表皮の腫瘤を切除した直後にCaIL12製剤を静脈内に10ng/kg投与し、以後500ng/kgの投与量で連日7日間にわたって投与を続けた。その結果、内臓に転移していた腫瘍は全て消失し、以後6ヵ月間観察したが、再発は全くみられなかった。
【0058】
また、アトピー性皮膚炎と診断された患犬7頭に対してCaIL12製剤を静脈内注射投与した。これら患犬は皮膚に紅斑、湿疹および脱毛などの臨床症状が観察され、また血液中には多量のIgEが検出され、その白血球画分にはIL4,IL5,IL10,IL13の各mRNAが高発現していた。CaIL12製剤を1回当り0.1ー100ng/kgの投与量で3日間隔で3ー5回、静脈内に投与した結果、1回の投与で臨床症状が速やかに改善され、3ー5回で完治にいたった。
【0059】
さらに、花粉症と診断された患犬3頭に対してCaIL12製剤を静脈内注射投与した。投与量は0.1−10pg/kgで1回の投与でクシャミ、鼻水等の臨床症状が速やかに改善された。
【0060】
[実施例8]
CaIL12製剤を用いた養子免疫療法によるイヌ疾病の治療:
表皮に腫瘤を持つ患犬5頭およびアトピー性皮膚炎と診断された患犬3頭それぞれから25mlの血液を採取した。これらより直ちにリンパ球を分離し、抗ヒトCD3ポリクローナル抗体(Genzyme社製)で固相化した10cmディッシュにて10%FBS−ERDFでヒトIL2(Zenzyme社製)50UとCaIL12製剤を100ng加えて4日間培養した。培養後、リンパ球を回収し、それぞれのイヌに静脈内注射した。その結果、アトピー性皮膚炎の患犬は3頭ともすべて完治し、また、腫瘍の患犬もすべてに腫瘤の縮小傾向が認められ、同様の操作を1週間おきに3〜5回繰り返したところ、すべての腫瘍が完全に退縮した。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、イヌの腫瘍、皮膚病、感染症、アレルギー疾病の優れた治療薬・予防薬および優れた治療方法・予防方法を提供できる。
【0062】
参考文献:
1.Wolfら:J.Immunol.146,3074−3081(1991).
2.Shoenhautら:J.Immunol.148,3433−3440(1992).
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4.Gazzinelliら:Proc.Natl.Acad.Sci.USA.90,6115−6119(1993).
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15.Seedら:Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84,3365−3369(1986).
【配列表】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
Claims (4)
- 配列番号:1または配列番号:11と同じアミノ酸配列と配列番号:2または配列番号:12と同じアミノ酸配列がヘテロダイマーを形成してできるイヌインターロイキン12を含んでなるイヌのアトピー性皮膚炎治療薬。
- 配列番号:1または配列番号:11と同じアミノ酸配列と配列番号:2または配列番号:12と同じアミノ酸配列がヘテロダイマーを形成してできるイヌインターロイキン12が遺伝子組換え手法を用いて製造されたイヌインターロイキン12であることを特徴とする請求項1に記載のイヌのアトピー性皮膚炎治療薬。
- 配列番号:1または配列番号:11と同じアミノ酸配列と配列番号:2または配列番号:12と同じアミノ酸配列がヘテロダイマーを形成してできるイヌインターロイキン12が配列番号:1または配列番号:11と同じDNA配列と配列番号:2または配列番号:12と同じDNA配列を同時に導入された動物細胞または配列番号:1または配列番号:11と同じDNA配列と配列番号:2または配列番号:12と同じDNA配列を同時に含む組換えバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞または幼虫を用いて製造されたイヌインターロイキン12であることを特徴とする請求項1又は2に記載のイヌのアトピー性皮膚炎治療薬。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載されたイヌのアトピー性皮膚炎治療薬をイヌの末梢血から分離したリンパ球に作用させた後、再びイヌの体内に戻すことを特徴とするイヌのアトピー性皮膚炎治療方法。
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