JP3990294B2 - 低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形加工性に優れ、且つ、蓄熱が少なく、耐候性及び耐衝撃性に優れる成形品を与える低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物及び成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂は、広く用いられており、着色された樹脂製品は、熱可塑性樹脂と、染料、顔料等の着色剤と、を含む樹脂組成物を成形したものである。例えば、黒色樹脂製品は、着色剤として、カーボンブラックを含む樹脂組成物から製造される。しかし、カーボンブラックを含む樹脂製品は、太陽光に当たる用途の成形品としては、熱の吸収が大きいために成形品が高温になり、変形や収縮が発生するという問題、自動車の車内部品として用いた場合、車内の温度を高めることがあり、冷房効果が妨げられるといった問題等がある。カーボンブラックに代わって、色の三原色を利用した、有機顔料あるいは染料の組み合わせによる黒色系着色が試みられているが、着色性及び耐候性が十分ではない。
一方、熱可塑性樹脂として耐熱性ゴム強化樹脂を用いた場合は、高温時の変形や収縮等を軽減することができるが、成形加工性が十分ではなく、大型あるいは複雑な構造を有する成形品を得ることが困難である場合がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、鋭意検討した結果、成形加工性に優れ、且つ、蓄熱が少なく、耐候性及び耐衝撃性に優れる成形品を与える低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物及び成形品を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の通りである。
1.熱可塑性樹脂〔A〕100質量部と、(b1)Cu、Cr及びMnの複合酸化物、(b2)Ni、Co、Fe及びCrの複合酸化物、並びに(b3)Fe及びMnの複合酸化物から選択される少なくとも1種である無機顔料〔B〕0.5〜15質量部と、を含有し、本組成物からなる成形品の色調をLab方式で表示したときに、L値が40以下であり、且つ下記試験条件で得られる成形品の温度上昇が50℃以下であることを特徴とする低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物。
〔試験条件〕
本組成物からなる成形品(長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mm)を、温度25±2℃、湿度50±5%RHに調節された室に載置し、高さ200mmから、その表面に赤外線ランプ(出力100W)を60分間照射し、成形品の表面温度を測定し、赤外線ランプ照射前の初期温度との差を上昇温度とする。
2. 上記無機顔料〔B〕は、(b2)Ni、Co、Fe及びCrの複合酸化物であり、本組成物中のCo元素及びNi元素の含有量の比Co/Niが5/95〜95/5である上記記載の低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物。
. 上記熱可塑性樹脂〔A〕は、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体成分(b)を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂(A1)、又は、このゴム強化ビニル系樹脂(A1)とビニル系単量体成分の(共)重合体(A2)との混合物からなる上記1又は2記載の低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物。
. 上記ビニル系単量体成分(b)に芳香族ビニル化合物を含む上記に記載の低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物。
. 上記1乃至のいずれかに記載の低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物を用いて得られたことを特徴とする成形品。
【0005】
【発明の効果】
本発明の低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物は、これを用いて成形する際の加工性に優れ、得られる成形品は熱の吸収が少なく、変形、収縮が発生しにくい。更には、耐候性及び耐衝撃性にも優れる。特に、無機顔料〔B〕がFe、Cr、Mn、Cu、Co及びNiから選ばれる少なくとも1種の元素の化合物である場合には、成形品の低蓄熱性に優れる。なかでも、Fe、Cr及びMnから選ばれる少なくとも2種の元素を含む酸化物の場合、並びに、Co元素及びNi元素を含む酸化物であり、本組成物中のCo元素及びNi元素の含有量の比Co/Niが5/95〜95/5である場合には、低蓄熱性に優れ且つL値が40以下である暗色系の鮮映な成形品を得ることができる。また、本組成物からなる成形品に、波長1000〜1250nmの光を照射した際の、この波長範囲における光の反射率の最大値が15%以上である場合には、優れた低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物とすることができる。
【0006】
上記熱可塑性樹脂〔A〕として、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体成分(b)を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂(A1)、又は、このゴム強化ビニル系樹脂(A1)とビニル系単量体成分の(共)重合体(A2)との混合物を用いる場合には、特に成形加工性に優れ、且つ、蓄熱が少なく、耐候性及び耐衝撃性に優れる成形品を得ることができる。また、上記ビニル系単量体成分に芳香族ビニル化合物を含む場合には、成形加工性、表面外観性に優れる。
【0007】
また、本発明の成形品は、熱の吸収が少なく、高温時の変形、収縮が発生しにくい。更には、耐候性及び耐衝撃性にも優れる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
本発明に係わる熱可塑性樹脂〔A〕としては特に限定されないが、ゴム強化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン・α−オレフィン系樹脂等)、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂((メタ)アクリル酸エステル化合物の(共)重合体等)、フッ素樹脂、スチレン系樹脂(芳香族ビニル化合物等の(共)重合体等)、エチレン・酢酸ビニル樹脂、アクリロニトリル・スチレン樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらのうち、ゴム強化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル系樹脂が好ましく、ゴム強化ビニル系樹脂が特に好ましい。
【0009】
上記ゴム強化ビニル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体成分(b)を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂(A1)をそのまま用いてもよいし、あるいは、このゴム強化ビニル系樹脂(A1)とビニル系単量体成分の(共)重合体(A2)との混合物からなるものを用いてもよい。
上記ゴム質重合体(a)としては、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体等のジエン系(共)重合体並びにそれらの水素添加物、エチレン・プロピレン・(非共役ジエン)共重合体、エチレン・ブテン−1・(非共役ジエン)共重合体、イソブチレン・イソプレン共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体、アクリルゴム、ポリウレタンゴム及びシリコーンゴム等の非ジエン系(共)重合体が挙げられる。更に、上記スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物には、上記ブロック共重合体の水素添加物の他に、スチレンブロックとスチレン・ブタジエンランダム共重合体の水素添加物等が含まれる。上記ゴム質重合体(a)は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明においては、ゴム強化ビニル系樹脂を乳化重合により得る場合には、ラテックス状のゴム質重合体が好ましい。
【0010】
上記ラテックスを用いる場合の、ラテックス中のゴム質重合体(a)の重量平均粒子径は、好ましくは500〜8000Åであり、更に好ましくは1000〜5000Å、特に好ましくは1000〜4000Åである。500Å未満では成形品の耐衝撃性が劣る傾向にあり、8000Åを超えると成形品の表面光沢が劣る傾向にある。
【0011】
上記ゴム質重合体(a)を製造する方法としては、平均粒子径の調整等を考慮し、通常、乳化重合法が好ましいが、この場合、平均粒子径は乳化剤の種類・量、開始剤の種類・量、重合時間、重合温度及び攪拌条件等の製造条件を適宜選択することにより調整することができる。また、粒子径分布の他の調整方法としては、異なる粒子径の上記ゴム質重合体(a)の少なくとも2種類をブレンドする方法でもよい。
【0012】
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いられるビニル系単量体成分(b)としては特に限定されず、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、シアン化ビニル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、メチル−α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、臭素化スチレン等が挙げられる。これらのうち、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンが好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。これらのうち、メタクリル酸メチルが好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
上記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記マレイミド系化合物としては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらのうち、N−フェニルマレイミドが好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、マレイミド系化合物を導入する他の方法としては、例えば、無水マレイン酸を共重合し、その後イミド化する方法でもよい。
【0016】
上記酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
上記ビニル系単量体成分(b)としては、芳香族ビニル化合物を含むことが好ましく、その場合、芳香族ビニル化合物(b1)と、それ以外のビニル系単量体(b2)との重合割合(b1)/(b2)は、これらの合計を100質量%とした場合、好ましくは(10〜95)質量%/(5〜90)質量%、より好ましくは(20〜85)質量%/(15〜80)質量%である。芳香族ビニル化合物(b1)の使用量が少なすぎると、成形加工性、成形品の美的外観性が劣る傾向にあり、多すぎると、ビニル系単量体(b2)の使用による効果が十分に発揮できない傾向にある。尚、上記ビニル系単量体(b2)としては、好ましくは(メタ)アクリル酸エステル化合物、シアン化ビニル化合物、マレイミド化合物等から選ばれた少なくとも1種である。
【0018】
また、本組成物を構成する成分のうち、無機顔料〔B〕を含まない熱可塑性樹脂〔A〕のみを用いて得られる成形品に透明性又は透明感を有する場合には、無機顔料〔B〕を含む本組成物からなる成形品は、無機顔料〔B〕に由来する色の着色性、鮮映性が向上する。透明性あるいは透明感を出すためには、ゴム質重合体(a)の屈折率に、ビニル系単量体(b)の重合体の屈折率を合わせる又は近づけることで達成できる。屈折率を合わせる又は近づけるために、ビニル系単量体成分(b)として(メタ)アクリル酸エステル化合物を含むことが好ましく、この(メタ)アクリル酸エステル化合物の使用量は、(メタ)アクリル酸エステル化合物を含むビニル系単量体成分(b)の重合体及びゴム質重合体(a)の各屈折率の差が小さくなるように選択される。また、この場合の(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、メタクリル酸メチルが好ましい。
上記の場合、(メタ)アクリル酸エステル化合物と、それ以外のビニル系単量体としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、マレイミド化合物から選ばれた少なくとも1種である。
【0019】
尚、前述のように、上記ゴム強化ビニル系樹脂は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のみであってもよく、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)と、ビニル系単量体成分の重合によって得られた(共)重合体(A2)との混合物であってもよい。この(共)重合体(A2)は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いたビニル系単量体成分(b)と全く同じ組成の成分を重合して得られる重合体であってもよいし、異なる組成で同じ単量体成分を重合して得られる重合体であってもよいし、異なる組成で異なる単量体成分を重合して得られる重合体であってもよい。更には、これらの各重合体が2種以上の含まれるものであってもよい。
【0020】
また、本発明の目的を損なわない範囲で、更に以下の単量体化合物を共重合させたものとすることができる。その例としては、エポキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、カルボン酸基、オキサゾリン基等の群から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するビニル化合物が挙げられる。その例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。
【0021】
ここで、上記ゴム強化ビニル系樹脂が、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)である場合、このゴム強化ビニル系樹脂(A1)と、ビニル系単量体成分の重合によって得られた(共)重合体(A2)とからなる場合、のいずれにおいても、本組成物中のゴム質重合体(a)の含有量は、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜35質量%である。ゴム質重合体(a)の含有量が少なすぎると、耐衝撃性が劣る傾向にあり、多すぎると、硬度、剛性が劣る傾向にある。
【0022】
次に、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)及び(共)重合体(A2)の製造方法について説明する。
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)は、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体成分(b)を、好ましくは乳化重合、溶液重合、塊状重合による方法で製造することができる。
乳化重合により製造する場合には、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水等が用いられる。
尚、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を製造するために用いられるゴム質重合体(a)及びビニル系単量体成分(b)は、反応系において、ゴム質重合体全量の存在下に、単量体成分を一括添加してもよいし、分割又は連続添加してもよい。また、これらを組み合わせた方法でもよい。更に、ゴム質重合体の全量又は一部を、重合途中で添加して重合してもよい。
【0023】
上記重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等で代表される有機ハイドロパーオキサイド類と含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等で代表される還元剤との組み合わせによるレドックス系、あるいは過硫酸カリウム等の過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレイト、t−ブチルパーオキシモノカーボネート等の過酸化物等が挙げられ、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。更に、上記重合開始剤は、反応系に一括又は連続的に添加することができる。また、上記重合開始剤の使用量は、上記ビニル系単量体成分(b)全量に対し、通常、0.1〜1.5質量%、好ましくは0.2〜0.7質量%である。
【0024】
上記連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類、ターピノーレン、α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられ、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記連鎖移動剤の使用量は、上記ビニル系単量体成分(b)全量に対して、通常、0.05〜2.0質量%である。
【0025】
乳化重合の場合に使用する乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩、高級脂肪族カルボン酸塩、リン酸系等のアニオン性界面活性剤、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型等のノニオン系界面活性剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記乳化剤の使用量は、通常、上記ビニル系単量体成分(b)全量に対して、0.3〜5.0質量%である。
【0026】
乳化重合により得られたラテックスは、通常、凝固剤により凝固させ、重合体成分を粉末状とし、その後、これを水洗、乾燥することによって精製される。この凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩や、硫酸、塩酸等の無機酸、酢酸、乳酸等の有機酸等が用いられる。
溶液重合、塊状重合による製造方法は、公知の方法を採用することができる。
【0027】
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のグラフト率は、好ましくは10〜200%、更に好ましくは15〜150%、特に好ましくは20〜100%である。上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のグラフト率が10%未満では、本発明の樹脂組成物を用いて得られる成形品の外観不良、衝撃強度の低下を招くことがある。また、200%を超えると、加工性が劣る。
ここで、グラフト率とは、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)1グラム中のゴム成分をxグラム、上記共重合樹脂(A1)1グラムをメチルエチルケトンに溶解させた際の不溶分をyグラムとしたときに、次式により求められる値である。
グラフト率(%)={(y−x)/x}×100
【0028】
また、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のアセトン可溶分の極限粘度〔η〕(メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜1.0dl/g、更に好ましくは0.2〜0.9dl/g、特に好ましくは0.3〜0.7dl/gである。この範囲とすることにより、成形加工性(流動性)に優れ、本発明の樹脂組成物を用いて得られる成形品の耐衝撃性も優れる。
尚、上記グラフト率(%)及び極限粘度〔η〕は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を重合するときの、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤等の種類や量、更には重合時間、重合温度等を変えることにより、容易に制御することができる。
【0029】
上記(共)重合体(A2)は、例えば、バルク重合、溶液重合、乳化重合及び懸濁重合等により得ることができる。
上記(共)重合体(A2)のアセトン可溶分の極限粘度〔η〕(メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜1.0dl/g、より好ましくは0.15〜0.7dl/gである。極限粘度〔η〕が上記範囲内であると、成形加工性と耐衝撃性の物性バランスに優れる。尚、極限粘度〔η〕は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)と同様にして制御することができる。
【0030】
上記ゴム強化ビニル系樹脂のアセトン可溶分の極限粘度〔η〕(メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜0.8dl/g、より好ましくは0.15〜0.7dl/gである。極限粘度〔η〕が上記範囲内であると、成形加工性と耐衝撃性の物性バランスに優れる。
【0031】
本発明に係わる赤外線反射特性を有する無機顔料〔B〕としては、赤外線を吸収しにくい性質を有するものであれば特に限定されず、Fe、Cr、Mn、Cu、Co及びNiから選ばれる元素を含む化合物が好ましい。特に、上記元素の酸化物、複合酸化物等が好ましく、具体的には、FeO、FeO(OH)、Fe、CrO、Cr、Cr・2HO、MnO、Mn、MnO、CuO、CuO、CoO、CoO・Al、Fe(Fe,Cr)、(Co,Fe)(Fe,Cr)、Cu(Cr,Mn)、(Cu,Fe,Mn)(Fe,Cr,Mn)、(Fe,Zn)(Fe,Cr)、(Fe,Zn)Fe、CoAl、Co(Al,Cr)、Cr:Fe、(Ni,Co,Fe)(Fe,Cr)等が挙げられる。これらのうち、Cr:Fe、(Cu,Fe,Mn)(Fe,Cr,Mn)、Fe(Fe,Cr)、(Co,Fe)(Fe,Cr)、Cu(Cr,Mn)、(Ni,Co,Fe)(Fe,Cr)が好ましい。また、上記例示した酸化物及び複合酸化物は、それぞれ1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、所望の色に着色された成形品とすることができる。
尚、上記例示した中で、CoOは、単独で用いた場合、太陽光が当たったときに赤外線の強度等によって成形品の表面に白化が発生したり、紫外線によって揮散したりすることがあるため、CoOを用いる場合は、他の無機顔料と組み合わせて用いることが好ましい。
【0032】
本発明においては、黒系、深緑系等の暗色系の色の成形品を得るために、無機顔料〔B〕としてFe、Cr及びMnから選ばれる少なくとも2種の元素を含む酸化物を用いることが好ましい。その例としては、Fe(Fe,Cr)、(Co,Fe)(Fe,Cr)、Cu(Cr,Mn)、(Cu,Fe,Mn)(Fe,Cr,Mn)、(Fe,Zn)(Fe,Cr)、Cr:Fe等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
黒系、深緑系等の暗色系の色の成形品とするためには、上記例示した無機顔料は、その合計が、無機顔料〔B〕全体に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%となるように含有させることが必要である。100質量%でない場合の残部は、他の顔料(無機顔料、有機顔料、カーボンブラック等)とすることができる。また、黒系、深緑系のみならず、青系、茶系等の暗色系の色についても、所望の色に応じて、1種単独であるいは色の三原色を利用した複数種の無機顔料の組み合わせによって得ることができる。従来の着色剤は、有機顔料あるいは染料を組み合わせるものであり、成形品が退色、変色する等耐候性に劣っていたのに対し、本発明においては、無機顔料を用いているため、成形品の退色、変色等を引き起こすことがない。そして、無機顔料に由来する色を鮮やかに呈し続ける成形品とすることができる。
【0033】
上記例示した無機顔料を用いる場合の、本組成物を構成する熱可塑性樹脂〔A〕及び無機顔料〔B〕の含有割合は、熱可塑性樹脂〔A〕100質量部に対して、無機顔料〔B〕が0.5〜15質量部であり、好ましくは1.0〜10質量部、より好ましくは1.0〜7質量部である。無機顔料〔B〕の含有量が少なすぎると、着色鮮映性が劣る傾向にあり、一方、多すぎると、成形加工性と耐衝撃性が劣る傾向にある。
【0034】
また、黒系、深緑系等の暗色系の色の成形品を得るための他の態様は、上記無機顔料〔B〕としてCo元素及びNi元素を含む酸化物を用いることが好ましい。その例としては、(Ni,Co,Fe)(Fe,Cr)等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、他の無機顔料と組み合わせて用いることもできる。
また、上記無機顔料〔B〕としてCo元素及びNi元素を含む酸化物を用いる場合、本組成物中のCo元素及びNi元素の含有量の比Co/Niが5/95〜95/5であることが好ましい。より好ましくは10/90〜90/10であり、更に好ましくは15/85〜85/15である。上記範囲とすることによって、暗色系着色性及び低蓄熱性に一段と優れた熱可塑性樹脂組成物とすることができる。
黒系、深緑系等の暗色系の色の成形品とするためには、上記例示した無機顔料は、その合計が、無機顔料〔B〕全体に対して、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20〜100質量%、更に好ましくは25〜100質量%となるように含有させることが必要である。100質量%でない場合の残部は、他の顔料(無機顔料、有機顔料、カーボンブラック等)とすることができる。また、黒系、深緑系のみならず、青系、茶系等の暗色系の色についても、所望の色に応じて、1種単独であるいは色の三原色を利用した複数種の無機顔料の組み合わせによって得ることができる。
【0035】
上記例示した無機顔料を用いる場合の、本組成物を構成する熱可塑性樹脂〔A〕及び無機顔料〔B〕の含有割合は、熱可塑性樹脂〔A〕100質量部に対して、無機顔料〔B〕が0.5〜15質量部であり、好ましくは1.0〜10質量部、より好ましくは1.0〜8質量部である。無機顔料〔B〕の含有量が少なすぎると、十分な低蓄熱性を得ることができず、着色性も劣る傾向にあり、一方、多すぎると、成形加工性、耐衝撃性が劣る傾向にある。
【0036】
尚、上記いずれの態様においても、無機顔料〔B〕の1つにCoOを用いる場合は、無機顔料全体を100質量%とすると、CoOの含有割合は好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。残部は、他の無機顔料であり、例えば、Fe(Fe,Cr)等である。
【0037】
上記無機顔料〔B〕としては、上記例示したものに加え、更に、従来より赤外線反射特性を有する材料として用いられているTiO、有機顔料等を組み合わせて用いることができる。
【0038】
尚、上記無機顔料〔B〕は粉末であることが好ましく、更に好ましくは微粉末である。形状は特に限定されないが、粉末の最大長さは、好ましくは5nm〜40μm、より好ましくは15nm〜30μmである。上記範囲とすることによって、取扱い性と耐衝撃性のバランスに優れる。
【0039】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、種々の添加剤を含有させることができる。例えば、酸化防止剤、可塑剤、着色剤、難燃剤、充填剤、滑剤、帯電防止剤等である。着色剤としては、成形品の蓄熱を低く維持できる範囲で、有機顔料、有機染料、カーボンブラック等を配合することができる。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、各種押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を用い、各成分を混練りすることによって得られる。混練りするに際しては、各成分を一括して混練りしてもよく、多段添加方式で混練りしてもよい。このようにして得られた樹脂組成物を用いて、射出成形、シート押出、真空成形、発泡成形等によって各種成形品を作ることができる。
【0041】
本発明の樹脂組成物は、下記試験条件で得られる成形品の温度上昇が50℃以下であることを特徴とする。この試験条件によって、蓄熱性を評価することができる。この温度上昇は、好ましくは45℃以下、更に好ましくは40℃以下とすることができる。
〔試験条件〕
本組成物からなる成形品(長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mm)を、温度25±2℃、湿度50±5%RHに調節された室に載置し、高さ200mmから、その表面に赤外線ランプ(出力100W)を60分間照射し、成形品の表面温度を測定し、赤外線ランプ照射前の初期温度との差を上昇温度とする。
【0042】
また、本組成物からなる成形品に、波長1000〜1250nmの光を照射した際の、この波長範囲における光の反射率の最大値は、好ましくは15%以上であり、より好ましくは20%以上、更に好ましくは25%以上である。但し、上限は、通常、80%である。上記最大値が高いほど、低蓄熱性に優れた成形品といえる。
【0043】
本発明の樹脂組成物に含まれる無機顔料〔B〕はそれぞれ固有の色を有するが、特に十分な濃度の色を呈色させ且つ鮮映性に優れた成形品とするためには、熱可塑性樹脂〔A〕に対する無機顔料〔B〕の含有割合を十分とする以外に、無機顔料〔B〕の含有割合が少なめであっても、成形品の厚さを大きくする等によって達成することができる。
【0044】
また、本組成物からなる成形品の色調をLab方式で表示したときに、L値は40以下であり、好ましくは35以下、更に好ましくは30以下である。但し、下限は、通常、5である。L値が小さいほど、暗色系低蓄熱性成形品といえる。
【0045】
本発明の樹脂組成物は、成形加工性に優れ、上記成形方法によって得られる成形品は、蓄熱が少なく、耐候性及び耐衝撃性に優れており、雨どい等の屋外家屋の構造部材、自動車内装部品、エアーコンディショナーのダクトカバー等に好適に使用することができる。
【0046】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、実施例及び比較例において、部及び%は特に断らない限り質量基準である。
【0047】
1.評価方法
本実施例において用いられる評価方法は以下の通りである。
(1)成形加工性
流動性(メルトフローレート)をもって評価し、JIS K7210に準じて測定した。測定温度は220℃、荷重は98N、単位はg/10分である。
(2)蓄熱性
温度25±2℃、湿度50±5%RHに調節された室において、樹脂組成物を用いて得られた長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mmの成形品(試験片)の表面に、高さ200mmから赤外線ランプ(出力100W)を照射して、60分後の試験片の表面温度を、表面温度計を用いて測定した。単位は℃である。
(3)耐衝撃性
アイゾット衝撃強度をもって評価した。JIS K7110の2号型試験片を成形し、アイゾット衝撃強度を測定した。単位は、kJ/mである。
【0048】
(4)耐候性
長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mmの試験片を、サンシャインウェザーオメーター(スガ試験機社製)を用いて、降雨サイクル18分/120分、ブラックパネル温度63℃として1000時間暴露し、暴露前後の色調変化値ΔEを算出した。
ΔEは、多光源分光測定計(スガ試験機社製)を用いて変色度Lab(L;明度、a;赤色度、b;黄色度)を測定し、次式により算出した。
ΔE=√〔(L−L+(a−a+(b−b
(式中、L、a、bは、暴露前の値を、L、a、bは暴露後の値を示す。)
ΔEの値は、小さい方が色の変化が小さく、色調が優れていることを示す。評価基準は以下の通りである。
○;ΔEが5以下である。
△;ΔEが5を超えて10未満である。
×;ΔEが10以上である。
【0049】
(5)着色鮮映性
長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mmの試験片を目視で評価した。評価基準は以下の通りである。
○;優れている。
△;○印に比べてやや劣る。
×;劣る。
【0050】
(6)L値
長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mmの試験片を用い、多光源分光測定計(スガ試験機社製)によりL値を求めた。
【0051】
(7)反射率
長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mmの試験片を用い、赤外線反射率測定計(島津製作所社製)により測定した。照射した赤外線の波長範囲は200〜2500nmである。1000〜1250nmの波長範囲における反射率の最大値を求めた。
【0052】
2.熱可塑性樹脂等の調製
製造例1〔ゴム強化ビニル系樹脂(A1−1)の製造〕
攪拌機を備えたガラス製反応器に、イオン交換水75部、ロジン酸カリウム0.5部、t−ドデシルメルカプタン0.1部、ポリブタジエンラテックス(平均粒子径;2700Å、ゲル含率;90%)32部(固形分換算)、スチレン−ブタジエン共重合ラテックス(スチレン含率25%、平均粒子径5500Å)8部、スチレン15部及びアクリロニトリル5部を入れ、窒素気流中で攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達した時点でピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第1鉄7水和物0.01部及びブドウ糖0.2部をイオン交換水20部に溶解した溶液を加えた。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始し、1時間重合させた。次いで、イオン交換水50部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン30部、アクリロニトリル10、t−ドデシルメルカプタン0.05部及びクメンハイドロパーオキサイド0.01部を3時間かけて連続的に添加した。1時間重合させた後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチレン−6−t−ブチルフェノール)0.2部を添加し重合を完結させた。反応生成物のラテックスを凝固、水洗した後、乾燥してゴム強化ビニル系樹脂(A1−1)を得た。グラフト率は72%、アセトン可溶分の極限粘度〔η〕は0.47dl/gであった。
【0053】
製造例2〔ゴム強化ビニル系樹脂(A1−2)の製造〕
まず、スチレン73部及びアクリロニトリル27部を混合して、単量体混合物を調製した。
攪拌機を備えたガラス製反応器に、アクリル酸n−ブチル99部及びアリルメタクリレート1部を乳化重合して得られた重量平均粒子径が284nmであるアクリル系ゴム質重合体ラテックス100部(固形分換算)とイオン交換水110部を仕込み、窒素気流中で攪拌しながら昇温した。内温が40℃に達した時点で、ピロリン酸ナトリウム1.2部及びブドウ糖0.3部をイオン交換水20部に溶解した水溶液(以下、「RED水溶液」という。)のうちの86%分と、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.4部、不均化ロジン酸カリウム2.4部をイオン交換水30部に溶解した水溶液(以下、「CAT水溶液」という。)のうちの30%分と、を反応器に入れ、その直後に上記単量体混合物及びCAT水溶液をそれぞれ、3時間及び3時間30分に渡って連続添加し、重合を開始した。重合開始から75℃まで昇温し、その後、75℃に保持した。重合を開始して180分後にRED水溶液の残り14%分を反応器に仕込み、60分間、同温度で保持した後に重合を終了した。以下、上記(A1−1)と同様にして、ゴム強化ビニル系樹脂(A1−2)を得た。グラフト率は50%、アセトン可溶分の極限粘度〔η〕は、0.45dl/gであった。
【0054】
製造例3〔ゴム強化ビニル系樹脂(A1−3)の製造〕
リボン型攪拌翼、助剤連続添加装置及び温度計を装備したステンレス製オートクレーブに、エチレン・プロピレン系ゴム質重合体(JSR製、商品名「EP84」)20部、スチレン56部、アクリロニトリル24部及びトルエン110部を仕込み、内温を75℃に昇温して、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.45部を添加し、内温を更に上昇させ、100℃とした後、この温度に保ちながら、攪拌回転数100rpmとして重合反応を行った。重合反応が開始してから4時間目から内温を120℃とし、この温度に保ちながら更に2時間反応を行って終了した。グラフト率は55%であった。内温を100℃まで冷却した後、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した後、内容物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去し、40mmφベント付き押出機でシリンダー温度を220℃、真空度を700mmHgとして、揮発分を実質的に脱揮させ、ペレット化した。ゴム強化ビニル系樹脂(A1−3)のグラフト率は55%、アセトン可溶分の極限粘度〔η〕は、0.5dl/gであった。
【0055】
3.共重合体(A2)の調製
スチレン75部、アクリロニトリル25部を用いて、塊状重合でビニル系重合体(A2−1)を得た。極限粘度〔η〕は、0.45dl/gであった。
【0056】
4.着色剤
下記のものを用いた。
4−1.無機顔料
B−1;商品名「フェローカラー42−703A」、日本フェロー社製、Fe及びCrの複合酸化物(化学組成は、Cr;88〜91%、Fe;7〜10%であり、色は黒色である。)
B−2;商品名「フェローカラー42−350A」、日本フェロー社製、Fe及びMnの複合酸化物
B−3;商品名「フェローカラー42−303B」、日本フェロー社製、Cu、Cr及びMnの複合酸化物
B−4;商品名「AE801ブラック」、川村化学工業社製、Ni、Co、Fe及びCrの複合酸化物。
【0057】
4−2.有機顔料
B’−1;ペリレン系有機顔料(商品名「Paliogen Red 3911HD」、BASF社製)
B’−2;イソインドリン系有機顔料(商品名「DISCOALL 443」、大日精化社製)
B’−3;シアニン系有機顔料(商品名「Sumitone Cyanine Blue GH」、住友化学社製)
B’−4;カーボンブラック
【0058】
5.実施例1〜、及び比較例1〜5
各成分を、表1及び表2に示す配合割合でミキサーにより3分間混合した後、50mmφ押出機でシリンダー設定温度180〜200℃で溶融混練り押出し、ペレットを得た。得られたペレットを十分に乾燥し、評価用の試験片を得た。この試験片を用いて下記評価を上記記載の方法で行った。評価結果を表1及び表2に示す。
【0059】
【表1】
Figure 0003990294
【0060】
【表2】
Figure 0003990294
【0061】
5.実施例の効果
表2より、比較例1、3及び5は、着色剤としてカーボンブラックを用いた例であり、耐候性及び着色鮮映性に優れるが、温度上昇がそれぞれ55℃、55℃及び56℃と高く、いずれも蓄熱性に劣っている。また、比較例2及び4は、有機顔料を用いて着色した例であり、蓄熱性は十分であるが、耐候性及び着色鮮映性に劣っている。
一方、表1の実施例1乃至は、いずれも成形加工性、蓄熱性、耐衝撃性、耐候性及び着色鮮映性のバランスに優れる。
【0062】
尚、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、目的、用途に応じて種々の態様をとることができる。本発明の樹脂組成物は、所定の熱可塑性樹脂〔A〕及び無機顔料〔B〕を含有するものであるから、上記実施例のように、熱可塑性樹脂及び無機顔料を別々に準備するのではなく、グラフトしているビニル系単量体成分の重合体及び無機顔料がゴム質重合体を被覆しているような状態の複合化熱可塑性樹脂を原料としてもよいし、ビニル系単量体成分の(共)重合体を無機顔料の存在下で合成し、無機顔料を被覆した(共)重合体を用いてもよい。

Claims (5)

  1. 熱可塑性樹脂〔A〕100質量部と、(b1)Cu、Cr及びMnの複合酸化物、(b2)Ni、Co、Fe及びCrの複合酸化物、並びに(b3)Fe及びMnの複合酸化物から選択される少なくとも1種である無機顔料〔B〕0.5〜15質量部と、を含有し、
    本組成物からなる成形品の色調をLab方式で表示したときに、L値が40以下であり、且つ下記試験条件で得られる成形品の温度上昇が50℃以下であることを特徴とする低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物。
    〔試験条件〕
    本組成物からなる成形品(長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mm)を、温度25±2℃、湿度50±5%RHに調節された室に載置し、高さ200mmから、その表面に赤外線ランプ(出力100W)を60分間照射し、成形品の表面温度を測定し、赤外線ランプ照射前の初期温度との差を上昇温度とする。
  2. 上記無機顔料〔B〕は、(b2)Ni、Co、Fe及びCrの複合酸化物であり、本組成物中のCo元素及びNi元素の含有量の比Co/Niが5/95〜95/5である請求項1記載の低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物。
  3. 上記熱可塑性樹脂〔A〕は、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体成分(b)を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂(A1)、又は、該ゴム強化ビニル系樹脂(A1)とビニル系単量体成分の(共)重合体(A2)との混合物からなる請求項1又は2のいずれかに記載の低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物。
  4. 上記ビニル系単量体成分(b)に芳香族ビニル化合物を含む請求項記載の低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物。
  5. 請求項1乃至のいずれかに記載の低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物を用いて得られたことを特徴とする成形品。
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