JP3974315B2 - 交流発電機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は交流発電機に関し、特にエンジンによって回転される車両用交流発電機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図12は従来の車両用交流発電機の一例を示す側断面図である。図12に示す如く、この発電機は、アルミニウム製のフロントブラケット1及びリヤブラケット2から構成されたケース3と、このケース3内に設けられ、一端部にプーリ4が固定されたシャフト6と、このシャフト6に固定されたランドル型のロータ7と、ロータ7の両端面に固定されたファン5と、ケース3内の内壁面に固定されたステータ8とを備えている。
【0003】
発電機は更に、シャフト6の他端部に固定され、ロータ7に電流を供給するスリップリング9と、スリップリング9に摺動する一対のブラシ10と、このブラシ10を収納したブラシホルダ11と、ステータ8に電気的に接続されステータ8で生じた交流を直流に整流する整流器12と、ブラシホルダ11に嵌着されたヒートシンク19と、このヒートシンク19に接着されステータ8で生じた交流電圧の大きさを調整するレギュレータ20とを備えている。フロントブラケット1及びリヤブラケット2には、冷却風の通風口となる排気窓17が開けられている。
【0004】
ロータ7は、電流を流して磁束を発生する円筒状のロータコイル13と、このロータコイル13を覆って設けられ、その磁束によって磁極が形成されるポールコア14とを備えている。
【0005】
ステータ8は、ステータコア15と、このステータコア15に巻回され、ロータ7の回転に伴ってロータコイル13からの磁束の変化で交流が生じるステータコイル16とを備えている。
【0006】
ポールコア14は、一対の交互に噛み合った第1のポールコア体21及び第2のポールコア体22から構成されている。ポールコア体21及びポールコア体22は通常鉄製であり、ロータコイル13が巻装される円筒部21e、22eと、この円筒部21e、22eが突設された円盤状の基部21k、22kより成る。基部21k、22kの外縁には、ロータコイル13の外周とステータ8の内周との間の位置に、相互に噛み合う爪状磁極23、24をそれぞれ複数有している。
【0007】
上記爪状磁極23、24は、基部21k、22k側の厚み及び幅が大きく、先端側にいくに従って厚み及び幅が細くなる形状である。爪状磁極23、24の内周面23a、24aは、先端にいくにつれ厚みが薄くなり、外周面23b、24bは、ステータ8の内周面に沿った弧状である。爪状磁極23、24は、ロータ7の周方向に対して台形状の2つの側面23c、24cを有する。各爪状磁極23、24は、その先端を向かい合わせて交互に噛み合わせられるので、爪状磁極23、24の内周面23a、24aの傾斜が周方向に互い違いで並ぶことになる。また、爪状磁極23、24の側面23c、24cは、根元側から先端側にいくにつれて先端側が細くなるように爪状磁極23、24の中心側に傾いている。
【0008】
隣り合う爪状磁極23、24の間には、その対向する側面23c、24c同志で磁束の漏洩を減少する向きに着磁されたほぼ直方体形状の永久磁石30Aが固着されている。
【0009】
動作を以下に説明する。図ししてないバッテリからブラシ10、スリップリング9を通じてロータコイル13に電流が供給されて磁束が発生し、第1のポールコア体21の爪状磁極23にはN極が着磁され、第2のポールコア体22の爪状磁極24にはS極が着磁される。一方、エンジンの回転力によってプーリ4が回転され、シャフト6によってロータ7が回転するためステータコイル16には交流の起電力が生じる。この交流の起電力は、整流器12を通って直流に整流されるとともに、レギュレータ20によりその大きさが調整されて、図ししてないバッテリに充電される。
【0010】
爪状磁極23、24の側面23c、24c間に固着され、磁束の漏洩を減少する向きに着磁された直方体形状の磁石30Aは、プラスチックマグネットである。磁石の材料としては、コスト的にはフェライト磁石が有利であるが、強度的に脆く加工性が低いことや、着磁できる残留磁束密度が低く、特性的に熱に弱いなどの理由からあまり用いられない。従って、磁石材料としては、磁石形状の自由度が高く、残留磁束密度が大きいなどの利点から、プラスチックマグネットが多く用いられる。プラスチックマグネットとしては、ネオジウム−鉄−ボロン系(Nd-Fe-Co-Bボンド磁石)およびサマリウム−鉄系(Sm-Fe-Nボンド磁石)のものが用いられていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
Nd-Fe-Co-Bボンド磁石の残留磁束密度Brの温度係数は、-0.1 %/K(負の温度係数)であり、Sm-Fe-Nボンド磁石の残留磁束密度Brの温度係数は、-0.07 %/K(負の温度係数)であるため、交流発電機が高温状態になった時、磁石の効果が低くなり発電機出力が低下してしまう。
【0012】
また一般に磁石には、磁石を高温に曝した後常温に戻しても磁束(磁力)が初期特性値にまで回復しない不可逆減磁という現象があり、そのような変化の割合を不可逆減磁率という。ここでは、磁石を373Kの高温度に於いて加熱した場合の不可逆減磁率であって加熱時間が2時間の場合を2時間不可逆減磁率と呼び、加熱時間が300時間の場合を300時間不可逆減磁率と呼ぶことにすると、Nd-Fe-Co-Bボンド磁石の2時間不可逆減磁率(373K×2hr)は−4.4%であり、300時間不可逆減磁率(373K×300hr)は−5.4%である。Sm-Fe-Nボンド磁石の2時間不可逆減磁率(373K×2hr)は−4.0%であり、300時間不可逆減磁率(373K×300hr)は−5.3%である。従って、交流発電機が高温で連続的に使用された場合、磁石の磁気特性が劣化するため交流発電機の出力は初期値に比べて低下することになる。
【0013】
一方、Nd-Fe-Co-B磁粉の高温保持(373K×300hr)後の酸素含有量は0.8wt%であり、Sm-Fe-N磁粉の高温保持(373K×300hr)後の酸素含有量は、0.4wt%である。この酸素含有量が大きいほど錆が発生しやすく、ブラケットに排気窓を有している場合は、外部からの影響、例えば水の浸入等によって磁粉や磁極に錆が発生する危険性が大きくなる。錆が発生すると、磁石強度および磁極と磁石との接着強度が低下し、高速回転時の回転子強度が著しく低下する。特に、Nd-Fe-Co-Bボンド磁石は、酸素含有量がSm-Fe-Nボンド磁石の酸素含有量の2倍もあり、耐酸化性に劣るためエポキシ塗装やメッキなどの表面処理が必要でコストがかかる。
【0014】
従ってこの発明の目的は、交流発電機が高温運転されても交流発電機出力の低下がなく、高速回転時の回転子強度が充分に大きな、低価格の交流発電機を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
この発明によれば、上述の課題を解決するための手段は次の通りである。
(1)排気窓を有するブラケットに内含され、ロータの回転磁界により三相交流を発生するステータと、磁束を発生するロータコイル、このロータコイルを覆って設けられ、交互に噛み合うように突出される爪状磁極をそれぞれ有する第1のポールコア体及び第2のポールコア体から構成されたポールコア、上記爪状磁極の両側面側に配設され、隣り合う爪状磁極の側面同士の磁束の漏洩を低減する永久磁石、発電機出力電流による発熱体を冷却するロータ軸方向両端に取り付けられたファンを有しているロータと、を有する交流発電機であって、
上記永久磁石は、組成にTiとBが添加されているサマリウム−鉄系の永久磁石(Sm-Fe-Ti-B-N磁石)であることを特徴とする交流発電機。
【0016】
(2)上記永久磁石は、磁石粉末を樹脂で結合したプラスチックマグネットで作ることができる。
【0017】
(3)上記永久磁石は、Sm8.2-Fe75.6-Ti2.3-B0.9-N13ボンド磁石で良い。
【0018】
(4)上記永久磁石は、耐食性部材で囲われて保持されていても良い。
【0019】
(5)上記永久磁石の爪状磁極側面に対向する側の少なくとも一部が樹脂含浸されていても良い。
【0020】
(6)上記永久磁石は、第1のポールコア体の磁極及び第2のポールコア体の磁極の各々に分離、取り付けられていても良い。
【0021】
(7)上記第1および第2のポールコア体の磁極の外周に、上記磁極の回転子回転時の遠心力による外径方向の変位を規制する規制手段を有していても良い。
【0022】
(8)上記規制手段は、第1および第2のポールコア体の磁極の先端近傍に設けられ、上記先端の変位を規制するものでよい。
【0023】
(9)上記規制手段は、耐食性材料であって、回転子の全外周に亘って周方向に延びたものでよい。
【0024】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1にはこの発明の交流発電機の回転子を斜視図で示し、図2にはこの回転子を部品単位で分解した側面図で示す。この発明の交流発電機の全体構造は図12に示すような従来の交流発電機と同様であるが、隣り合う爪状磁極23、24の間に挿入され固着されて、その対向する側面23c、24c同志で磁束の漏洩を減少する向きに着磁された直方体形状の永久磁石30が異なっている。即ち、この発明によれば、爪状磁極23、24間に固着された永久磁石30は、組成にTiとBが添加されているサマリウム−鉄系のプラスチックマグネット(Sm-Fe-Ti-B-Nボンド磁石)である。このような永久磁石30の一例はSm8.2-Fe75.6-Ti2.3-B0.9-N13ボンド磁石である。
【0025】
図3の表には、本発明のボンド磁石について、残留磁束密度の温度係数および磁石を高温に曝した後常温に戻した時の磁束(磁力)の特性値が初期特性値に対して変化した割合である不可逆減磁率を、磁石を373Kで2時間加熱した場合(2時間不可逆減磁率)と、300時間加熱した場合(300時間不可逆減磁率)とを、従来のボンド磁石と比較して示してある。図3から、従来のNd-Fe-Co-Bボンド磁石(例えばNd12-Fe76-Co5-B7)の残留磁束密度Brの温度係数は−0.10%/K(負の温度係数)であり、同じく従来のSm-Fe-Nボンド磁石(例えばSm9.0-Fe78.0-N13)の残留磁束密度Brの温度係数は−0.07%/K(負の温度係数)であるため、交流発電機が高温状態になった時、磁石の残留磁束密度が小さくなり、磁束の漏洩を低減する効果が低くなるため発電機出力が低下してしまう。本発明のSm-Fe-Ti-B-Nボンド磁石(例えばSm8.2-Fe75.6-Ti2.3-B0.9-N13)の残留磁束密度Brの温度係数は−0.06%/Kであり、従来磁石と比べて負で大きい(0%/Kに近くなる。)ことから、交流発電機が高温状態になった時の磁石の残留磁束密度の低下が小さく、発電機出力の低下が軽減できる。
【0026】
図5のグラフには本発明の交流発電機に於ける発電機回転速度(r/min)に対する発電機出力電流の変化の様子を、従来の交流発電機と比較して、冷時出力特性(A)および熱時出力特性(B、C)について示してある。図5のグラフから明らかなように、冷時出力特性については、発電機出力特性は本発明の発電機でも従来の発電機でも同じ曲線Aであらわされる。従来の発電機の熱時出力特性は冷時出力特性の曲線Aよりも出力電流値の低い曲線Cのようになるが、本発明の発電機の熱時出力特性は曲線Cよりも出力電流値の大きい曲線Bのようになる。これは、磁石の残留磁束密度の温度係数が従来より負で大きいためで、温度上昇時の残留磁束密度の減少量が小さくなったためである。
【0027】
また、図3から、従来のNd-Fe-Co-Bボンド磁石の2時間不可逆減磁率(373K×2hr)は−4.4%であり、300時間不可逆減磁率(373K×300hr)は−5.4%である。同じく従来のSm-Fe-Nボンド磁石の2時間不可逆減磁率(373K×2hr)は−4.0%であり、300時間不可逆減磁率(373K×300hr)は−5.3%である。これら従来磁石に対し、本発明のSm-Fe-Ti-B-Nボンド磁石の2時間不可逆減磁率(373K×2hr)は−2.1%であり、300時間不可逆減磁率(373K×300hr)は−2.5%である。つまり、本発明のSm-Fe-Ti-B-Nボンド磁石は、2時間不可逆減磁率、300時間不可逆減磁率ともに従来の半分程度である。従って、交流発電機が高温で連続的に使用された場合に、従来の磁石では磁気特性の劣化が大きく、交流発電機の出力特性は初期に比べて劣化するが、本発明のSm-Fe-Ti-B-Nボンド磁石を用いた場合は、磁気特性の劣化が小さく、交流発電機の出力特性の劣化も従来の半分程度に小さくでき、磁石の効果が安定的に得られる。
【0028】
図6のグラフには本発明の交流発電機に於ける高温連続運転時間(hr)に対する交流発電機出力電流の低下率(%)の変化を従来の交流発電機の変化と比較して示してある。図6のグラフから明らかなように、従来の発電機での低下率の曲線Dは高温連続運転開始から約10時間程度までは急激に下がり、その後は時間の経過と共に緩やかな低下を示しているが、本発明の発電機の低下率は曲線Eで示すように始めの約1時間を越える辺りまで従来のものの約50%の低下率であり、その後は時間の経過と共に緩やかに次第に減少していて、本発明の発電機出力電流の低下率は全体として従来のものの低下率の約50%であると言える。これは、本発明の磁石の不可逆減磁率が、従来の磁石に比べて半分程度であり、磁石の高温連続使用による特性劣化が半減するためである。
【0029】
図4のグラフは磁粉を373Kの高温下で保持した時の磁粉の酸素含有量の時間的変化を示してある。図4のグラフから明らかなように、従来のNd-Fe-Co-B磁粉は高温保持373K×300時間後の酸素含有量の増加量は0.8wt%であり、同じく従来のSm-Fe-N磁粉の高温保持373K×300時間後の酸素含有量は0.4wt%であるのに対し、本発明のSm-Fe-Ti-B-N磁粉の高温保持373K×300時間後の酸素含有量は0.3wt%であり、従来の磁石に比べ耐酸性に優れる。
【0030】
従って、ブラケットの排気窓から水の浸入が有った場合などでも、本発明の磁石は錆びにくく耐食性・耐環境性に優れた交流発電機を得ることができる。また、表面処理の必要なNd-Fe-Co-Bボンド磁石に対してはコスト低減も可能である。
【0031】
このように、この発明の交流発電機によれば、従来よりも高温時の出力を向上でき、かつ、耐久性・耐環境性に優れ、強度低下が防止された交流発電機を提供できる。
【0032】
実施の形態2.
図7には本発明の交流発電機の回転子のポールコア体21、22の爪状磁極23、24間に配置された永久磁石30を斜視図で示し、図8には爪状磁極23と永久磁石30との関係を断面図で示してある。永久磁石30はSm-Fe-Ti-B-Nボンド磁石であり、磁性樹脂板材料あるいは磁性金属板等の耐食性材料でできた保持部材41に固着されている。保持部材41はほぼ台形の板部材の斜辺部分に断面ほぼコの字形の折り曲げ部分42を設けたもので、このほぼコの字形部分42の内側に永久磁石30を接着剤等によって固着したものであり、永久磁石30はその周囲を折り曲げ部分42によって囲まれている。このようにして永久磁石30が斜辺に沿って固着された保持部材41は、その中央部43で爪状磁極23、24の内周面に接着剤などにより固着されている。
【0033】
この構成によれば永久磁石30は耐食性の保持部材41によって囲まれているので、外部環境の影響を受けにくくなり、Sm-Fe-Ti-B-Nボンド磁石自身の持つ耐食性と合わせて永久磁石30の防錆効果が向上し、耐環境性が向上する。また、永久磁石30を保持する保持部材41の材料として熱伝導率の低いモールド樹脂を用いた場合でも、Sm-Fe-Ti-B-Nボンド磁石は熱安定性に優れているので、従来磁石と比べて高温時の出力低下が低減される。以上より、従来よりも高温時の出力低下を防ぎ、かつ、耐久性・耐環境性に優れ、強度低下を防止できる。
【0034】
実施の形態3.
図9に示す構造は、図8に示す永久磁石30の磁極23への取付構造と同様であるが、爪状磁極23の側面と、それに対向する永久磁石30の磁極面との間にできる隙間44に磁性樹脂45を充填してある。この磁性樹脂45により隙間44による空隙を塞ぐとともに、永久磁石30の露出表面をも覆って永久磁石30の露出部を減少させてある。この構造によれば、図7および図8の実施形態よりもさらに永久磁石30への外部環境の影響を低減でき、更なる防錆効果が得られる。なお、永久磁石30を囲む保持部材41および隙間44に充填された樹脂により磁石が覆われるため永久磁石30の放熱が悪化する可能性があるが、Sm-Fe-Ti-B-Nボンド磁石は熱安定性に優れているので、従来の磁石と比べて高温時の出力低下が低減される。また、耐久性・耐環境性に優れ、強度低下を防止できる。
【0035】
実施の形態4.
図10および図11に示す交流発電機の回転子に於いては、第1および第2のポールコア体21、22の磁極23、24の先端部および根本部の外周に環状で帯状の規制部材46が嵌められている。この円環状の規制部材46は磁極23、24の先端部が交流発電機の運転時に遠心力により径方向外側に広がろうとするのを防ぐものである。このような構成により磁極23、24の外径側への変位が抑制され、強度向上となる。
【0036】
実施の形態5.
図11に示す交流発電機の回転子48はまた、回転子48の外周全体でポールコア体21、22と永久磁石30との上に巻き付けられて固着された樹脂含浸カーボン繊維のテープ49を備えている。このテープ49はポールコア体21、22と永久磁石30とを外周部で強固に支持しているので、磁極23、24の外径側への変位抑制機能が更に向上するとともに、磁石の飛び出しも防ぐことができ、回転子全体が外周側から耐食性のテープ49により覆われることになるので、外部環境の影響を更に受けにくくなり、耐環境性が向上する。
【0037】
【発明の効果】
以上の如く本発明の交流発電機による効果は次の通りである。
(1)排気窓を有するブラケットに内含され、ロータの回転磁界により三相交流を発生するステータと、磁束を発生するロータコイル、このロータコイルを覆って設けられ、交互に噛み合うように突出される爪状磁極をそれぞれ有する第1のポールコア体及び第2のポールコア体から構成されたポールコア、上記爪状磁極の両側面側に配設され、隣り合う爪状磁極の側面同士の磁束の漏洩を低減する永久磁石、発電機出力電流による発熱体を冷却するロータ軸方向両端に取り付けられたファンを有しているロータと、を有する交流発電機であって、上記永久磁石は、組成にTiとBが添加されているサマリウム−鉄系の永久磁石(Sm-Fe-Ti-B-N磁石)である。従って、Sm-Fe-Ti-B-N磁石は熱安定性に優れるので、交流発電機が高温で運転される時の出力電流の低下が低減でき、また、耐食性・耐環境性にも優れるため、水の浸入など外的影響による錆の発生が起こりにくいという効果も得られるため、従って、高温時の出力を向上でき、かつ、耐久性・耐環境性に優れた交流発電機を供給できる。
【0038】
(2)上記永久磁石は、磁石粉末を樹脂で結合したプラスチックマグネットで作ることができるので、磁石粉末が樹脂で結合されていて、防錆効果が向上するとともに、靱性が高く、強度に優れる。
【0039】
(3)上記永久磁石は、Sm8.2-Fe75.6-Ti2.3-B0.9-N13ボンド磁石で良いので、熱安定性に優れている。
【0040】
(4)上記永久磁石は、耐食性部材で囲われて保持されていても良い。 磁石を保持部材で囲う事により、さらに外的影響を受けにくく防錆効果を向上でき、磁石の熱安定性が優れることから高温時の出力低下を軽減できる。
【0041】
(5)上記永久磁石の爪状磁極側面に対向する側の少なくとも一部が樹脂充填されていても良いので、磁石と爪状磁極の側面との間の隙間を樹脂を充填して埋めることとなり、永久磁石への外部環境の影響、即ち外的影響をさらに遮断して防錆効果を向上させることができ、磁石の放熱性が悪化しても磁石の熱安定性が優れることから高温時の出力低下を低減できる。
【0042】
(6)上記永久磁石は、第1のポールコア体の磁極及び第2のポールコア体の磁極の各々に分離、取り付けられていても良い。永久磁石は、各ポールコア体の磁極各々に分離、取り付けられているので、各ポールコア体の磁極の変位とともに磁石も可動することができ、過度の応力が発生せず、強度に優れる。また、可動部を有することにより、この部位での錆の発生が生じても、回転時に可動することによって錆が剥離し進展しにくくなる。
【0043】
(7)上記第1および第2のポールコア体の磁極の外周に、上記磁極の回転子回転時の遠心力による外径方向の変位を規制する規制手段を有していても良い。錆の発生により、磁石強度および磁極と磁石との接着強度が低下するが、ポールコア体の磁極が回転子回転時の遠心力による外径方向の変位を規制する規制手段を有しているので、強度向上する。
【0044】
(8)上記規制手段は、第1および第2のポールコア体の磁極の先端近傍に設けられ、上記先端の変位を規制するものでよい。規制手段は、回転時の最も変位の大きなポールコア体の磁極の先端で規制されているので、変位抑制効果が大きい。
【0045】
(9)上記規制手段は、耐食性材料であって、回転子の全外周に亘って周方向に延びたものでよい。上記規制手段は、回転子の外周ぜ全体より規制されているので、磁極の変位抑制効果と、磁石の飛び出し防止効果がある。また、外周側から耐食性部材で囲うことにより、外的影響を受けにくくなりさらに耐環境性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の交流発電機の回転子の斜視図である。
【図2】本発明の交流発電機の回転子のコイルとポールコアと永久磁石との関係を分解側面図である。
【図3】 本発明の交流発電機に用いる永久磁石の熱安定性を残留磁束密度の温度係数および不可逆減磁率によって示す表である。
【図4】磁粉の酸素量の時間変化を示すグラフである。
【図5】本発明の交流発電機の回転速度に対する出力電流の変化を冷時および熱時について従来のものと比較して示すグラフである。
【図6】本発明の交流発電機の運転時間に対する出力電流の低下率を従来のものと比較して冷時および熱時について示すグラフである。
【図7】本発明の一実施形態の交流発電機の回転子のポールコアと永久磁石との関係を示す斜視図である。
【図8】本発明の交流発電機の回転子のポールコアと永久磁石との関係を示す断面図である。
【図9】図8と同様の本発明の交流発電機の回転子のポールコアと永久磁石との関係を示す断面図である。
【図10】本発明の交流発電機の回転子のポールコアと規制部材との関係を示す断面図である。
【図11】本発明の交流発電機の回転子に巻かれたテープを示す斜視図である。
【図12】本発明を適用できる交流発電機を示す側面断面図である。
【符号の説明】
1、2 ブラケット、5 ファン、7 ロータ、8 ステータ、13 ロータコイル、14 ポールコア、17 排気窓、21 第1のポールコア体、22 第2のポールコア体、23、24 爪状磁極、30 永久磁石、41 保持部材、45 樹脂被覆、46 規制手段、49 環状部材(テープ)。

Claims (7)

  1. 排気窓を有するブラケットに内含され、ロータの回転磁界により三相交流を発生するステータおよびロータを備え、
    上記ロータが、磁束を発生するロータコイルと、
    このロータコイルを覆って設けられ、交互に噛み合うように突出される爪状磁極をそれぞれ有する第1のポールコア体及び第2のポールコア体から構成されたポールコアと、
    上記爪状磁極の両側面側に配設され、隣り合う爪状磁極の側面同士の磁束の漏洩を低減する永久磁石と、
    ロータ軸方向両端に取り付けられ、発電機出力電流により発熱する発熱体を冷却するファンとを備えた交流発電機に於いて、
    上記永久磁石は、上記爪状磁極の各々に取り付けられた耐食性の保持部材によって囲われて、各々の上記爪状磁極の両側面側に保持されており
    上記永久磁石は、組成にTiとBが添加されているサマリウム−鉄系の永久磁石であることを特徴とする交流発電機。
  2. 上記永久磁石は、磁石粉末を樹脂で結合したプラスチックマグネットである請求項1記載の交流発電機。
  3. 上記永久磁石は、Sm8.2-Fe75.6-Ti2.3-B0.9-N13ボンド磁石である請求項1記載の交流発電機。
  4. 上記永久磁石の爪状磁極側面に対向する側の少なくとも一部が樹脂被覆されてなる請求項1乃至3のいずれか記載の交流発電機。
  5. 上記第1および第2のポールコア体の磁極の外周に、上記磁極の回転子回転時の遠心力による外径方向の変位を規制する規制手段を有している請求項1乃至4のいずれか記載の交流発電機。
  6. 上記規制手段は、第1および第2のポールコア体の磁極の先端近傍に設けられ、上記先端の変位を規制する請求項5記載の交流発電機。
  7. 上記規制手段は、耐食性材料の環状部材であって、回転子の全外周に亘って周方向に延びた請求項5あるいは6記載の交流発電機。
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