JP3965749B2 - 変性エポキシ樹脂、その製造法及び塗料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、変性エポキシ樹脂、その製造法及びこの変性エポキシ樹脂を用いた塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
汎用金属製品の防黴・防食を目的として、一般的に乾性油・半乾性変性アルキド樹脂が防黴・防食塗料に用いられているが、耐食性・耐水性が不十分であった。耐食性・耐水性の向上を目的に今までにフェノール樹脂変性やエポキシ樹脂変性による改質が行われてきたが、未だ耐食性・耐水性は不十分であり改良の要求は強い。
【0003】
一方、高分子量エポキシ樹脂を使用した防黴・防食塗料が一部出回っており、優れた耐食性・耐水性を示しているが、これらの高分子量エポキシ樹脂は、優れた塗膜性能を得るために各種材料による変性や高分子量化が行われている。これらの高分子量エポキシ樹脂は、各種材料による変性、高分子量化等により希釈シンナーに対する溶解性が低下し、ある一定の組成に組み合わされた特別なシンナーでなければ溶解せず作業性等に問題がある。
【0004】
また、一液型エポキシ樹脂の中で、エポキシ樹脂のエポキシ基に不飽和結合を有する脂肪酸を付加反応させた脂肪酸変性エポキシ樹脂が上市されている。これらの脂肪酸変性エポキシ樹脂の変性に用いられる脂肪酸は、大豆油やアマニ油等の乾性油から誘導されうる不飽和脂肪酸であり、脂肪酸が長鎖のアルキル鎖を有するため変性された脂肪酸変性エポキシ樹脂は希釈シンナーに対する溶解性が良い。しかし、これらの脂肪酸変性エポキシ樹脂は、脂肪酸を付加反応によりエポキシ基に導入するためシンナー溶解性を得るためにある程度以上の脂肪酸量を変性しようとするとエポキシ樹脂の分子量が制限される。樹脂分子量の調整のため、イソシアネート類により高分子量化されるが、これらの樹脂は、耐食性、耐水性が劣る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐食性・耐水性に優れ、また溶剤に対する溶解性に優れた塗料に好適な変性エポキシ樹脂及びその製造法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、上記の目的に加え、塗膜硬度・乾燥性に優れ塗料に好適な変性エポキシ樹脂及びその製造法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、防黴・防食性等の塗膜特性及び溶剤溶解性に優れた塗料を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、(A)ビスフェノール型エポキシ樹脂と(B)アルカノールアミン類を付加反応させた後、(C)乾性油又は半乾性油から誘導される脂肪酸を反応させ、その後(D)イソシアネート類を反応させることを特徴とする変性エポキシ樹脂の製造法を提供するものである。
【0010】
本発明はまた、上記の変性エポキシ樹脂を含有してなる塗料を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる(A)ビスフェノール型エポキシ樹脂は、例えばビスフェノールとエピクロルヒドリンを混合し触媒の存在下で加熱し、これにより付加反応させて得ることができる。
【0012】
ビスフェノールとしては、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールΑ)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)等が挙げられる。また触媒としては、例えば水酸化アルカリ等が挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0013】
前記(A)成分としては市販品を利用することができ、その具体例としては、エピコート828、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009(いずれも、シェルケミカル社商品名)等が挙げられる。前記(A)成分は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0014】
(A)成分のエポキシ当量は、100〜30,000であることが好ましく、100〜10,000であることがより好ましく、150〜5,000であることが更に好ましい。このエポキシ当量が100未満であると変性後の樹脂分子量が低くなり、得られる塗膜の乾燥性や耐食性が劣る傾向にあり、30,000を超えると溶剤溶解性や塗膜の付着性が劣る傾向にある。
【0015】
本発明に用いられる(B)アルカノールアミン類は、少なくとも1つのヒドロキシアルキル基がアミンの窒素原子に結合した構造を有するものであり、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジ−2−ヒドロキシブチルアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ベンジルエタノールアミン等が挙げられる。前記(B)成分は単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0016】
用いるエポキシ樹脂の分子量等にもよるが、(B)成分としては、1級アミンと2級アミンを併用することが、耐水性、耐食性等の点で優れるので好ましく、1級アミン/2級アミンのモル比で90/10〜10/90とすることが好ましい。2級アミンとしては、ジアルカノールアミンを用いることが好ましい。
【0017】
(B)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して1〜100重量部であることが好ましく、1〜50重量部であることがより好ましい。この(B)成分の配合量が1重量部未満であると耐食性・付着性が低下する傾向にあり、100重量部を超えると耐水性や溶剤溶解性が劣る傾向にある。
【0018】
本発明に用いられる(C)乾性油又は半乾性油から誘導される脂肪酸としては、例えば、桐油、大豆油、アマニ油,ヒマシ油、脱水ヒマシ油、サフラワー油、綿実油等から得られる脂肪酸等が挙げられる。前記(C)成分は単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0019】
(C)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して5〜300重量部であることが好ましく、5〜100重量部であることがより好ましい。この(C)成分の配合量が5重量部未満であると耐水性や溶剤溶解性が低下する傾向にあり、100重量部を超えると耐食性や乾燥性が劣る傾向にある。
【0020】
本発明に用いられる(D)イソシアネート類としては、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート又は脂環式イソシアネート等が挙げられ、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられ、(D)成分は単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0021】
(D)成分の配合量は、(Α)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100重量部に対して0〜50重量部であることが好ましく、0.01〜10重量部であることがより好ましい。この(D)成分の配合量が50重量部を超えると付着性や溶剤溶解性が低下する傾向にある。
【0022】
本発明の変性エポキシ樹脂は、前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分をを反応させてなるものである。前記配合物は、得られる変性エポキシ樹脂の乾燥性、耐水性が向上する点から、前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の他に(D)成分を反応させてなるものが好ましい。
【0023】
(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分は、50〜250℃、1〜24時間加熱することにより前記付加、縮合反応を行えば良い。この反応はキシレン等の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分と反応しない有機溶剤中で行ってもよい。これらの有機溶剤は単独又は2種類以上を組み合わせて使用される。また、反応は、(A)成分と(B)成分を反応させたのち、(C)成分を反応させ、次に(D)成分を添加し反応させるように段階を追って反応させる。(A)成分と(B)成分を反応させたのち、(C)成分を反応させる反応においては(A)成分と(B)成分の反応物中の水酸基と脂肪酸が反応する。このように反応させると、まず、ビスフェノール型エポキシ樹脂が、アルカノールアミンと反応して、重合体が鎖伸長され、アルカノールアミン由来の水酸基に脂肪酸が多数結合するため、耐食性と溶剤溶解性のバランスに優れる。
【0024】
なお、前記加熱操作は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分と反応しない有機溶媒中で行っても良い。このような有機溶媒としてトルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルプロピレングリコールアセテート等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0025】
また、(A)成分と(B)成分の反応においては、有機溶媒としてn−ブタノール、メチルプロピレングリコール等も使用可能である。
【0026】
前記有機溶媒の使用量は特に制限されるものでないが、樹脂固形分100重量部に対して20〜300重量部であることが好ましい。
【0027】
以上の製造法により得られた本発明の変性エポキシ樹脂は、塗料に好適に利用できる。塗料として例えば酸化架橋による常温乾燥型塗料や、ラッカー塗料等が挙げられる。
【0028】
塗料には、カーボン、酸化チタン等の着色顔料、タルク、炭酸カルシウム等の体質顔料、リンモリブデン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等の防錆顔料を配合することができる。着色顔料は、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.1〜50重量部配合することが好ましい。また、体質顔料及び防錆顔料は夫々エポキシ樹脂100重量部に対して、1〜200重量部配合することが好ましい。
【0029】
常温乾燥型塗料の場合は、更に金属ドライヤーを添加する。金属ドライヤーとしては、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛等が挙げられ、これらは、エポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜50重量部配合することが好ましい。更に、前記したような有機溶媒を用いることができ、その使用量は特に制限されないが、樹脂固形分に対して20〜300重量部とすることが好ましい。
【0030】
実施例1(参考例)
不活性ガス導入管を付けた2リットルのガラス製フラスコ中で、エピコート1001(ビスフェノールΑ型エポキシ樹脂、シェルケミカル社製、エポキシ当量475)620g、モノエタノールアミン30g、ジエタノールアミン35g、キシレン200g及びn−ブタノール100gを混合し110℃で粘度が飽和するまで付加反応を進め、次に亜麻仁油脂肪酸210g、大豆油脂肪酸105gを配合した後フラスコ中のキシレン・n−ブタノールを回収しながら200℃に昇温し、樹脂酸価4を終点として冷却し、キシレン980gで希釈し、加熱残分50重量%の樹脂を得た。
【0031】
実施例1
不活性ガス導入管を付けた2リットルのガラス製フラスコ中で、エピコート1001(ビスフェノールΑ型エポキシ樹脂、シェルケミカル社製、エポキシ当量475)620g、モノエタノールアミン30g、ジエタノールアミン35g、キシレン200g及びn−ブタノール100gを混合し110℃で粘度が飽和するまで付加反応を進め、次に亜麻仁油脂肪酸210g、大豆油脂肪酸105gを配合した後フラスコ中のキシレン・n−ブタノールを回収しながら200℃に昇温し、樹脂酸価4を終点として冷却し、キシレン980gで希釈し、加熱残分50重量%の樹脂を得た。
【0032】
実施例2
不活性ガス導入管を付けた2リットルのガラス製フラスコ中で、エピコート1001(ビスフェノールΑ型エポキシ樹脂、シェルケミカル社製)620g、モノエタノールアミン30g、ジエタノールアミン35g、キシレン150g及びメチルプロピレングリコール150gを混合し130℃で粘度が飽和するまで付加反応を進め、次に脱水ひまし油脂肪酸315gを配合した後フラスコ中のキシレン・メチルプロピレングリコールを回収しながら200℃に昇温し、樹脂酸価3を終点として冷却し、キシレン1150gで希釈した。次に、100℃に昇温し、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート、日本ポリウレタン社製)50gを添加し樹脂粘度が飽和したのを確認し冷却、加熱残分45重量%の樹脂を得た。
【0033】
実施例3
不活性ガス導入管を付けた2リットルのガラス製フラスコ中で、エピコート1007(ビスフェノールΑ型エポキシ樹脂、シェルケミカル社製、エポキシ当量1925)750g、ジエタノールアミン41g、キシレン200g及びn−ブタノール100gを混合し110℃で粘度が飽和するまで付加反応を進め、次に亜麻仁油脂肪酸210gを配合した後フラスコ中のキシレン・n−ブタノールを回収しながら200℃に昇温し、樹脂酸価4を終点として冷却し、キシレン980gで希釈した。次に、100℃に昇温し、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート、日本ポリウレタン社製)50gを添加し樹脂粘度が飽和したのを確認して冷却し、加熱残分45重量%の樹脂を得た。
【0034】
比較例1
不活性ガス導入管を付けた2リットルのガラス製フラスコ中で、エピコート1001(ビスフェノールΑ型エポキシ樹脂、シェルケミカル社製)951g、モノエタノールアミン29.0g及びジエタノールアミン20.0gを、キシレン400gに混合し130℃で粘度が飽和するまで付加反応を進め、メチルエチルケトン400g、n−プロピルセロソルブ200gで希釈し、加熱残分50重量%の変性高分子エポキシ樹脂を得た。
【0035】
比較例2
不活性ガス導入管を付けた2リットルのガラス製フラスコ中で、エピコート1001(ビスフェノールΑ型エポキシ樹脂、シェルケミカル社製)750g及び大豆油脂肪酸250gを混合し200℃で粘度が飽和するまで付加反応を進め、キシレン1,000gで希釈した。その後、ヘキサメチレンジイソシアネート20gを入れ100℃で粘度が飽和するまで鎖伸長反応を進め、加熱残分50重量%の変性高分子エポキシ樹脂を得た。
【0036】
評価方法(結果を表3に示す。)
(1)溶剤溶解性(トレランス)試験:樹脂10g入れた透明な三角フラスコに、供試溶剤を入れながら内部の樹脂を溶解していく。三角フラスコ内の希釈溶液が白濁した点を終点とする。トレランス値=供試溶剤量/樹脂(g)
(2)塗膜特性試験:各実施例、比較例によって得られた変性エポキシ樹脂を、下記の配合(重量比)で塗料化し各種試験を行った。表1は塗料配合を示し、表2はシンナー配合を示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
ペイントシェーカーにより分散した塗料をシンナーでイワタカップ16秒に粘度調整し未処理鋼板にエアスプレーにより乾燥膜厚30μmになるように塗装し、20℃で5日乾燥後に塗膜の評価試験(JIS K 5400に準拠)を行った。
【0039】
【表3】
【0040】
【発明の効果】
本発明の変性エポキシ樹脂を用いた塗料は、溶剤溶解性に優れ、かつ耐水性、耐食性、硬度等の塗膜特性にも優れている。
Claims (3)
- (A)ビスフェノール型エポキシ樹脂と(B)アルカノールアミン類を付加反応させた後、(C)乾性油又は半乾性油から誘導される脂肪酸を反応させ、その後(D)イソシアネート類を反応させることを特徴とする変性エポキシ樹脂の製造法。
- 請求項1記載の製造法により製造された変性エポキシ樹脂。
- 請求項2記載の変性エポキシ樹脂を含有してなる塗料。
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