JP3954231B2 - 複合紡績糸を用いてなる布帛 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐切創性、耐熱性に優れた芯鞘型複合紡績糸、および該紡績糸からなるプリーツ性、防しわ性などの形態保持性に優れ、仕立て栄えの良好な布帛に関する。さらに詳しくは、切創、擦過溶融、火傷の危険の高い職場に用いられる防護被服やアウトドアスポーツなどの過酷な環境下で着用に耐える防護被服素材に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年では、作業効率化、高速化、省力化が進み、労働、交通災害の危険性が高くなり、人命尊重の観点から安全性向上が強く望まれている。一方スポーツにおいても多岐に渡り参加人数も増え活発になり、スノーボード、フィッシング、登山などのアウトドアスポーツへの参加人口の伸びが著しく、それにともないスポーツ衣料素材も従来以上に耐久性、機能性が要求されるようになり、特に、耐切創性、耐熱性などの機能性に優れ、プリーツ性、防しわ性、形態保持性などの審美性の優れたものが望まれている。また溶接や製鉄工場などで用いる耐熱作業服や消防服等においても高度の耐熱性が要求されている。
【0003】
これに対して、耐切創性に優れ、耐熱性が高く、耐薬品性、糸強度が高い全芳香族ポリアミド繊維が幅広く用いられるている。例えばパラ系アラミド繊維100%のフィラメント糸や紡績糸を部分的に用いて交織した実公平1−36600号公報や特公昭62−26900号公報、特開平2−292036号公報などで提案されている。
【0004】
これらはいずれも引裂抵抗性、耐切創性は向上するが、パラ系アラミド繊維は本質的に耐熱性繊維であるがため熱セット性が乏しく、縫製された衣服の仕立て栄え、着用中のプリーツの消去としわの発生という形態保持性が劣る欠点がある。これら欠点を解決するものとして、特開平3−830号公報では芯部にパラ系アラミド繊維、鞘部にポリエステル繊維を配置した芯鞘型複合紡績糸やポリエステル短繊維とパラ系アラミド短繊維の均一混紡として特開平6−220730号公報、ポリエステル短繊維と芳香族ポリアミド繊維とセルロース系繊維の均一混紡として特開平4−50340号公報が提案されている。しかしながらこれらは、防護衣服の形態保持性は改善されるものの、布帛表面へのパラ系アラミド繊維の被覆が少なく、パラ系アラミド繊維100%と比較すると耐切創性、耐熱性が劣っているのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の欠点を解決せんとするものであって、鞘成分は全芳香族ポリアミド短繊維で構成され、芯成分はポリエステル短繊維100%もしくはポリエステル短繊維混紡繊維束で構成されてなり、耐切創、耐熱などの機能特性は鞘成分の全芳香族ポリアミド繊維が、仕立て栄え、プリーツ保持性、防しわ性などの形態保持性を芯成分のポリエステル繊維がはたすもので、炎や高温にさらされる作業である消防服や高熱作業服において、耐熱、切創などの機能を充分に発揮し、仕立て栄え、プリーツ保持性、防しわ性などの形態保持性を持ち、審美性をも兼ね備えたアウトドアスポーツ用衣料や防護被服用素材を安定的に供給することのできる芯鞘型複合紡績糸およびそれを用いてなる布帛を提供せんとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、次の構成からなる。すなわち、
(1)少なくとも全芳香族ポリアミド短繊維を含む鞘成分が50〜70重量%と、少なくともポリエステル短繊維を含む芯成分が30〜50重量%とで構成されてなるとともに、前記鞘成分に含まれる全芳香族ポリアミド短繊維の単繊維繊度が0.5〜4.5デニールであり、全芳香族ポリアミド短繊維の複合糸に占める割合が50〜90重量%であり、ポリエステル短繊維の複合糸に占める割合が10〜35重量%であり、かつ複合糸の撚係数Kが2.8〜6である芯鞘型複合紡績糸を布帛重量の30〜100重量%の範囲で用いてなることを特徴とする布帛。
【0008】
(2)前記芯鞘型複合紡績糸において、芯成分がポリエステル短繊維100重量%、またはポリエステル短繊維と天然繊維もしくはセルロース系繊維の混紡糸であることを特徴とする前記(1)に記載の布帛。
【0009】
(3)前記芯鞘型複合紡績糸において、芯成分に全芳香族ポリアミド短繊維を芯成分全体の20重量%以内混紡したことを特徴とする前記(1)または(2)に記載の布帛。
【0010】
(4)前記芯鞘型複合紡績糸において、全芳香族ポリアミド短繊維がパラ系アラミド短繊維であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の布帛。
【0011】
(5)前記芯鞘型複合紡績糸において、全芳香族ポリアミド短繊維がメタ系アラミド短繊維であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の布帛。
【0012】
(6)前記芯鞘型複合紡績糸において、全芳香族ポリアミド短繊維がメタ系アラミド短繊維とパラ系アラミド短繊維の混紡品であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の布帛。
【0013】
(7)前記芯鞘型複合紡績糸において、パラ系アラミド短繊維がポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維であることを特徴とする前記(4)または(6)に記載の布帛。
【0015】
【発明の実施の形態】
このように本発明では、芯鞘型複合紡績糸の芯部に、ポリエステル短繊維およびポリエステル短繊維混紡繊維束を配し、鞘部を全芳香族ポリアミド短繊維を配し、ポリエステル繊維を全芳香族ポリアミド繊維で覆い、ポリエステル繊維の耐切創、耐熱の低さをカバーして、全芳香族ポリアミド繊維を複合糸表面に出すことにより、全芳香族ポリアミド繊維の機能特性を十分に発揮させ、芯部のポリエステル繊維により、仕立て栄え、プリーツ保持性、防しわ性などの形態保持性を付与させるものである。
【0016】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0017】
本発明の芯鞘型複合紡績糸は、全芳香族ポリアミド繊維の衣料用途使用の大きな欠点である仕立て栄え、プリーツ性、防しわ性などの形態保持性を持ち、審美性を備え、かつ全芳香族ポリアミド繊維の持つ機能特性を損なうことなく実現すべく鋭意検討し、全芳香族ポリアミド繊維の特徴である、耐切創性、耐熱性の機能特性を十分に発揮させるには、種々検討した結果、紡績糸、布帛の表面に全芳香族ポリアミド繊維を配置するのが効果が高く最適である事を見出したのである。また、防護被服の仕立て栄え、プリーツ保持性、防しわ性などの形態保持性を得るにはポリエステル繊維の優れた熱セット性を利用するのが効果が高く最適であり、いかに全芳香族ポリアミド繊維と混紡組み合わせるか種々検討した結果、紡績糸の中心部に配置して、外周部を全芳香族ポリアミド短繊維で覆うことで、ポリエステル繊維の耐切創、耐熱性の低さを防護し、かつポリエステル繊維の持つ熱セット性を十分発揮できることを見出したのである。
【0018】
本発明の芯鞘型複合紡績糸は、芯、鞘成分いずれも短繊維で構成されてなり、芯成分が複合糸に占める割合が30〜50重量%の範囲であり、該芯成分をポリエステル短繊維100%、あるいはポリエステル短繊維混紡糸条で構成されてなり、かつ複合糸に占めるポリエステル繊維の割合が10〜35重量%の範囲で構成させるものである。ポリエステル繊維の複合糸に占める割合が低いと防護被服への満足する熱セット性、形態保持性を付与することができにくくなる。一方、ポリエステル繊維の複合糸に占める割合が多くなるとポリエステル繊維の弱点である耐切創、耐熱の低下が現われ、全芳香族ポリアミド繊維の優れた高機能特性を損ない好ましくない。芯成分の短繊維束が複合糸に占める割合が40〜50重量%、ポリエステル繊維の複合糸に占める割合が15〜30重量%の範囲がより好ましい。
【0019】
一方、鞘成分は全芳香族ポリアミド短繊維が好ましくは100重量%で構成されている。全芳香族ポリアミド短繊維の量が少ないと全芳香族ポリアミド繊維の優れた高機能特性を十分に発揮させることができず好ましくない、また鞘成分の複合糸に占める割合は50〜70重量%の範囲である。50重量%未満では芯成分のポリエステル繊維を鞘成分の全芳香族ポリアミド繊維で十分に覆うことが難しくなり、全芳香族ポリアミド繊維の優れた高機能特性を十分に発揮させることができず好ましくない。また、70重量%を越えると芯成部のポリエステル繊維の混紡率が低くなって十分な熱セット性が得られないばかりか、複合加工性が悪化して好ましくない。好ましくは鞘成分の複合糸に占める割合は50〜60重量%の範囲である。前記全芳香族ポリアミド短繊維の複合糸に占める割合は50〜90重量%である。
【0020】
本発明で用いる全芳香族ポリアミド繊維は、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維であることが好ましく、両繊維を任意の混紡率で混紡した混紡品であってもよく、あるいは各々100%でも、要求されるスポーツ用衣料や防護被服特性により選定するのが良い。
【0021】
また、上記のパラ系アラミド繊維としては、例えばポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維やコポリパラフェニレン−3,4′オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維があげられる。
【0022】
また、上記のメタ系アラミド繊維としては、例えばポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維があげられる。
【0023】
上記、芯鞘型短々複合紡績糸の鞘成分を構成する短繊維束Aについて説明する。本発明の短繊維束Aは全芳香族ポリアミド短繊維を通常の短繊維紡績工程である打綿、梳綿、練条、粗紡、精紡などの工程を通すことにより得られるスライバーや粗糸などからなる。また、繊維長を長くして(76〜160mm)一般のソ毛紡績を通したスライバーや粗糸などの短繊維束でもよい。短繊維の繊度は0.5〜4.5デニールが好ましく、複合加工性向上の面から0.8〜2.5デニールがより望ましい、繊維長については特に限定しないが紡績方法に合わせ最適な繊維長を選ぶのが良い。
【0024】
芯成分を構成する短繊維束Bはポリエステル短繊維100%、あるいはポリエステル短繊維と他の繊維との混紡品である。また、この芯成分を構成する短繊維束Bに全芳香族ポリアミド短繊維が短繊維束Bに占める割合において20重量%以内混紡してもよく、これにより全芳香族ポリアミド繊維の持つ機能特性をより高めることができる。全芳香族ポリアミド繊維の割合が20重量%を越えると全芳香族ポリアミド繊維の持つ機能特性は向上するが、ポリエステル繊維の混紡率が低くなり、防護衣服への満足する形態保持性が付与しにくくなるので好ましくない。好ましくは15重量%以内である。また混紡繊維としては、難燃処理された木綿繊維や、セルロース系繊維でもよく、これらの混紡糸でもよい。
【0025】
本発明の芯鞘型短々複合紡績糸の撚方向はS、Zいずれでも良く、撚係数K(撚数=K・番手1/2 )は一般の紡績糸よりやや高めにするのが芯部を全芳香族ポリアミド短繊維で覆う点で好ましく、K=2.8〜6.0の範囲が望ましい、K=2.8より低くすると芯、鞘の複合加工性が悪化し好ましくない、K=6.0より高くすると強撚になりすぎ二重撚の発生が強く加工性が悪化して好ましくない。K=3.2〜4.5の範囲がより好ましい。
【0026】
次に、本発明の芯鞘型複合紡績糸の製造方法について説明する。
【0027】
本発明における複合糸の製造方法は鞘成分の短繊維束Aがスライバーや粗糸の場合、一対のテーパーローラーからなるフロントトップローラーおよびフロントボトムローラーを有するリング精紡機により、ガイドを介してフロントローラーの送り出し量の高い側へ通したエプロンドラフト後の短繊維束Aと、送り出し量の低い側へ通したエプロンドラフト後の短繊維束Bとを同時に精紡し、短繊維束Bを中心に短繊維束Aを実撚付与時に順時巻回させることにより、芯成部の短繊維束Bをこより状に包み込む状態で糸形成させるようにすればよい。
【0028】
図1は、本発明の芯鞘型複合紡績糸を製造する精紡機において、ドラフト、加撚する概要を示すものである。
【0029】
精紡機にセットされた短繊維束Aと短繊維束Bとは、それぞれトランペット1a,1bを経てバックローラー2に供給され、エプロンドラフト3を経たのち一対のテーパーフロントローラー4a,4bに把持される。
【0030】
この一対のテーパーフロントローラー4a,4bでは、それぞれ送り出し量の高い側(径の大きい側)へはトランペット1aを介して短繊維束Aを供給し、送り出し量の低い側(径の小さい側)へはトランペット1bを介して短繊維束Bを供給する。次いでテーパーフロントローラー4a,4bに把持されながら出てきた両短繊維束A,Bを間隔3〜10mmの範囲にとって合体させ、短繊維束Bを芯に短繊維束Aを被覆させながら芯鞘型複合紡績糸5に形成し、これにリング6、トラベラ7で実撚を付与しながら糸管8に巻き取る。
【0031】
また、本発明においては、芯を構成する短繊維束Bとして、あらかじめ紡績糸の状態に形成したものであってもよい。、
この場合、芯成分を構成する連続糸条の紡績糸としては、ポリエステル短繊維紡績糸100%、またはポリエステル短繊維混紡紡績糸であればよい。
【0032】
上記の紡績糸を芯とした芯鞘型複合紡績糸の製造方法としては、特に限定するものではないが、鞘成分の短繊維束がスライバーや粗糸の場合、例えば一対のテーパーローラーからなるフロントトップローラーおよびフロントボトムローラーを有するリング精紡機により、トランペットを介してバックローラー、エプロンローラーを経て、フロントローラーの送り出し量の高い側へ通し、芯成分の紡績糸をフロントローラーの送り出し量の低い側へガイドを介して通した後、短繊維束と同時にフロントローラーより紡出し、連続紡績糸を中心に短繊維束が実撚付与時に順時巻回され、芯成部の紡績糸をこより状に包み込む状態で糸形成させることにより得ることができる。
【0033】
本発明の芯鞘型複合紡績糸は該紡績糸中に占める鞘成分の全芳香族ポリアミド短繊維の割合が50〜70重量%であり、全芳香族ポリアミド短繊維束Aとポリエステル繊維束Bの構成比率を適宜設定することによって本発明の芯鞘型複合紡績糸を得ることができる。
【0034】
芯、鞘両繊維束の合体時の間隔は両成分の送り出し量の差、すなわち短繊維束の巻回状態を変えるものであり、重なり状態や複合糸の物性をみて決めるのがよい。
【0035】
次に、本発明の芯鞘型複合紡績糸を単糸あるいは双糸として、織、編物加工してもよく、該糸100%使いでも良いが、フィラメント、加工糸、弾性繊維などとの交編、交織さらには、耐熱、耐切創が要求される特定の部分に本発明紡績糸を用い、常法により織、編物などの製品を得ることができるが、織、編物製品などの全体の重量の30〜100%の範囲で用いてなるものである。上記本発明の紡績糸が織、編物製品全体の重量の30%未満ではたとえ特定の部分に本発明糸を用いても十分な耐切創性、耐熱性が得られにくくなり、好ましくない。好ましくは50〜100%の範囲である。
【0036】
【実施例】
以下、実施例をあげて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例における特性値等の測定法は次の通りである。
<切創抵抗力>
枠体の中央部に約3mmの間隔で2枚の試料シートを把持し、この試料シートのスリット部に角度60度で2辺に刃のあるセラミック製の刃を垂直に立てて当て、この刃先に500mm/分の速度で荷重をかけていったときの該試料シートが切創される最大荷重を測定する。
<プリーツ性>
織、編物のタテ方向に長さ25cmの試料を切り取り、長さ方向5cm間隔で印をつけ(4箇所)中央部の15cmを折り込み、5cmの長さで試料が3重になるように折り、通常のプレス機でプレス温度140℃、プレス圧力0.5kg/cm2 で10秒間プレスしたのちバキューム処理を10分間行い試料を冷却する。プリーツ性(プリーツのつき方)は肉眼で級判定した。判定基準を下記する。(5級:非常にシャープなプリーツ、4級:シャープなプリーツ、3級:プリーツがある、2級:プリーツが少しある、1級:プリーツがほとんどない)
<プリーツ保持性>
プリーツ性を評価した試料を用いJIS L0217−103法にもとずき洗濯後試料のプリーツ性を評価した、結果をプリーツ保持性として級判定した。
<難溶融性(熱溶融性)>
500℃に加熱された金属棒(直径約0.6cm)の先端に試料を5秒間接触させた時の穴開きの程度を5級(穴開きなし)〜1級(完全に穴が開く)の5段階で級判定する。
<布帛風合い(官能評価)>
布帛を次の4段階に官能評価した。(◎:ソフトでふくらみがあり適度の張り、腰があるもの、○:これに準ずる良好なもの、△:ソフト感、ふくらみに欠け、硬く劣るもの、×:粗硬で劣るもの)。
[実施例1〜3、比較例1〜3]
鞘成分の短繊維束として、繊度1.5d、繊維長51mmの引張強度23g/d、破断伸度3.7%、熱分解温度500℃のパラ系アラミド短繊維〔商標:東レ・デュポン(株)製“ケブラー”(デュポン社登録商標)〕100%を通常の2インチ紡績方法で、太さ0.6g/mの粗糸を作成した。芯成分として短繊維束Bであるポリエステル繊度1.5d、繊維長51mm〔商標:東レ(株)製“テトロン”(登録商標)〕を通常の2インチ紡績方法で、0.7、0.3、0.2g/mの粗糸を作成し、各々の粗糸を用いて、一対のフロントテーパーローラーを有する2インチリング精紡機に仕掛け、短繊維束Aの粗糸をトランペットを通してフロントローラーの送り出し量の高い側へバックローラーから供給し、フロントローラーの送り出し量の低い供給側へ短繊維束Bをトランペットに通して供給した。精紡トータルドラフト33.0〜20.4倍で、芯鞘型短々紡績糸の番手を15s(綿番手)、撚係数はK=3.5(13.6T/in)Z撚りとした。両フリースの間隔を5mmになるようにトランペットとガイドの間隔およびコレクターで調整した後ドラフトし合体させ通常の方法で管糸に巻き取り、鞘成分のパラ系アラミド繊維が複合糸に占める割合が46.2、66.7、75%の3種(比較例1、実施例1、実施例2)ポリエステル繊維が複合糸に占める割合が53.8%、33.3%、25.0%であった。また芯、鞘成分が50%/50%のパラ系アラミド繊維100%、30s、K=3.5(比較例2)の複合糸を得た。
【0037】
また、実施例3、比較例3として芯成分の短繊維束をポリエステル50%/木綿(米綿コーマ綿)50%の0.4g/mと0.3g/mの粗糸を作成し鞘成分としてパラ系アラミド短繊維100%の1.4g/mの粗糸を作成し、実施例1と同様にフロントテーパローラーを有する精紡機を用い複合加工して15s、K=3.5、鞘成分のパラ系アラミド繊維が複合糸に占める割合が77.8%と82.4%、ポリエステル繊維が複合糸に占める割合が11.1%、8.8%(実施例3、比較例3)の芯鞘型短々複合紡績糸を得た。得られた複合糸6種を90℃×20分の撚止めセットをおこないそれぞれ100%使いで平織物を作成した。
【0038】
織成に際して経糸には糊剤を付与した、織密度は経糸78本/in、緯糸65本/in、織幅98cmを作成後、パラ系アラミド繊維の織物表面への出現状態(被覆状態)、耐切創性、耐熱性、プリーツ性を評価した。表1に示すように複合糸に占めるポリエステル繊維の割合が53.8%の比較例1はプリーツ性、防しわ性などの形態保持性は良好であるが、複合糸に占める芯成分のポリエステル繊維の混紡割合が高くパラ系アラミド繊維による被覆不足により、パラ系アラミド繊維の機能特性が十分に発揮できず耐切創性、耐熱性などの高機能特性が劣るものであった。
【0039】
パラ系アラミド繊維が複合糸に占める割合が82.4%の比較例3の複合糸と100%の複合糸の比較例2はパラ系アラミド繊維の機能特性、すなわち耐切創性、耐熱性は発揮されるが複合糸に占めるポリエステル繊維の割合が5.6%と0%と少なく、プリーツ保持性などの形態保持性が劣るものであった。
[実施例4〜5、比較例4]
鞘成分の短繊維束として、繊度1.5d、繊維長38mmのパラ系アラミド短繊維“ケブラー”と、繊度1.5d、繊維長38mmのメタ系アラミド短繊維[デュポン社製“ノーメックス”(登録商標)]を50/50%(実施例4)の比率で混紡したものを通常の綿紡績方法で、太さ0.6g/mの粗糸を作成し、芯成分としてポリエステル短繊維100%の0.3g/mの粗糸を作成後実施例1と同様にして複合加工して15s、K=3.5、パラ系アラミド、メタ系アラミド各々繊維混紡率33.3重量%ポリエステル繊維混紡率33.3重量%の芯鞘型短々複合糸を得た。
【0040】
また、実施例4のパラ系アラミド短繊維ケブラーを、繊度5d、繊維長89mm、メタ系アラミド短繊維ノーメックスを繊度1.5d、繊維長76mmにして50/50%(比較例4)の割合で混紡し、実施例1と同様にポリエステル短繊維0.3g/mの粗糸を芯成分として複合加工して15s、K=3.5のパラ系アラミド、メタ系アラミド各々繊維混紡率33.3重量%、ポリエステル繊維混紡率33.3重量%の複合糸を得た。
【0041】
実施例5として実施例1の芯成分ポリエステル短繊維100%をポリエステル短繊維1.5デニール、51mm、50%、ケブラー1.5デニール、51mm、50%の混紡に変更して実施例1と同様に加工して複合糸に占めるパラ系アラミド短繊維の割合が83.4%、複合糸に占めるポリエステル繊維の割合が16.7%、15s、K=3.5、の複合糸を得て実施例1と同様に織物に加工後布帛評価し結果を表1に表した。
【0042】
パラ系アラミド繊維の単繊維デニールを5デニールにした比較例4は、耐熱、耐切創などの機能特性、プリーツ性などの形態保持は良好であるが、布帛が粗硬で防護被服としては劣るものであった。
【0043】
“ケブラー”と“ノーメックス”1.5d、38mmをそれぞれ、50/50%混紡した実施例4、パラ系アラミド短繊維が複合糸に占める割合が83.4%、ポリエステル繊維が複合糸に占める割合が16.6%の実施例5は全芳香族ポリアミド繊維の機能特性である耐熱性、耐切創性などの高機能特性を十分に発揮し、プリーツ性などの形態保持性をも兼ね備え、布帛がソフトでしなやかで防護被服に適した優れた布帛であった。
[比較例5、比較例6]
芯、鞘成分繊維および混紡率、複合方法を実施例1と同様にして、撚係数をK=2.6(9.7T/in)にした比較例5、K=6.2(24.0T/in)の比較例6の複合糸を作成した、撚係数K=2.6の比較例5は複合加工において芯鞘の合体性が悪く分離して糸切れが多く複合加工性が劣り好ましくなかった。K=6.2の比較例6は精紡工程における複合加工において二重撚の発生が起こり、異常張力によるトラベラ飛散、糸切れが起こり好ましくなく、両水準ともに評価水準より削除した。
[実施例6〜7、比較例7]
実施例1の15s複合紡績糸を織物全体重量の25%(比較例7)、40%(実施例6)、100%(実施例7)になるように経糸、緯糸に均一に用い平織地を作成した、ベース糸としてT65%木綿35%、15s、K=3.4のサイロスパン糸を用い、織成に際して経糸には糊剤を付与した。織密度は経糸78本/in、緯糸65本/inであり織幅98cmのものであった、布帛評価結果を表2に示した。
【0044】
本発明糸を25%使用した比較例7はプリーツ保持性などの形態保持性は良好であったが、耐熱、耐切創などの全芳香族ポリアミド繊維の高機能特性が劣るものであった。実施例6、実施例7は全芳香族ポリアミド繊維の高機能特性を十分に発揮し、プリーツ性などの形態保持性をも兼ね備えた優れた布帛であった。
【0045】
また実施例6、実施例7の布帛をスラックスに仕立て、仕立て栄えを目視評価した、ポリエステル繊維の持つシャープなプリーツであり、仕立て栄えの良さが現われた良好なスラックスであり、着用評価を10名にて実施した結果擦過溶融、プリーツ保持性も良好であり好評を得た。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【発明の効果】
以上のごとく、本発明の芯鞘型短々複合紡績糸および布帛は、芯部を構成するポリエステル短繊維混紡品からなる短繊維束を、鞘部を構成する全芳香族ポリアミド短繊維束で被覆させることにより、全芳香族ポリアミド繊維の持つ耐切創性、耐熱性、などの優れた高機能特性を損なうことなく全芳香族ポリアミド繊維の持つ欠点であるプリーツ性、防しわ性などの形態保持性を大幅に改善して高機能特性の要求される防護被服用分野やアウトドアスポーツ衣料に好適な布帛を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の芯鞘型複合紡績糸の製造方法の一例を示す工程図である。
【符号の説明】
A:短繊維束A
B:短繊維束B
1a,1b:トランペット
2:バックローラー
3:エプロンドラフトローラー
4a,4b:テーパーフロントローラー
5:複合紡績糸
6:リング
7:トラベラ
8:紙管
Claims (7)
- 少なくとも全芳香族ポリアミド短繊維を含む鞘成分が50〜70重量%と、少なくともポリエステル短繊維を含む芯成分が30〜50重量%とで構成されてなるとともに、前記鞘成分に含まれる全芳香族ポリアミド短繊維の単繊維繊度が0.5〜4.5デニールであり、全芳香族ポリアミド短繊維の複合糸に占める割合が50〜90重量%であり、ポリエステル短繊維の複合糸に占める割合が10〜35重量%であり、かつ複合糸の撚係数Kが2.8〜6である芯鞘型複合紡績糸を布帛重量の30〜100重量%の範囲で用いてなることを特徴とする布帛。
- 前記芯鞘型複合紡績糸において、芯成分がポリエステル短繊維100重量%、またはポリエステル短繊維と天然繊維もしくはセルロース系繊維の混紡糸であることを特徴とする請求項1に記載の布帛。
- 前記芯鞘型複合紡績糸において、芯成分に全芳香族ポリアミド短繊維を芯成分全体の20重量%以内混紡したことを特徴とする請求項1または2に記載の布帛。
- 前記芯鞘型複合紡績糸において、全芳香族ポリアミド短繊維がパラ系アラミド短繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の布帛。
- 前記芯鞘型複合紡績糸において、全芳香族ポリアミド短繊維がメタ系アラミド短繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の布帛。
- 前記芯鞘型複合紡績糸において、全芳香族ポリアミド短繊維がメタ系アラミド短繊維とパラ系アラミド短繊維の混紡品であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の布帛。
- 前記芯鞘型複合紡績糸において、パラ系アラミド短繊維がポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維であることを特徴とする請求項4または6に記載の布帛。
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