JP3946234B2 - 高多孔性表面層を有する水素吸蔵電極材料 - Google Patents

高多孔性表面層を有する水素吸蔵電極材料 Download PDF

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Description

本発明は水素吸蔵合金ならびにこれらの合金を用いる電気化学単電池、電池、および燃料電池に関する。より詳細には、本発明は、高い透過性がある、および/または高濃度の触媒活性金属または触媒活性金属合金粒子を含む、微小構造を有する水素吸蔵合金に関する。最も詳細には、本発明は、低い作動温度で高い出力と高い放電率を有する水素化金属電池の負極材料として使用するのに適した水素吸蔵合金に関する。
(発明の背景)
民生および産業用途分野では、エネルギー源として用いるための新しく効率的な電池を要求し続けている。重要な目標として、環境に配慮した形でより小型でさらに大きな出力を得ることが含まれる。考えられる電池の用途は、携帯電子装置から電気自動車までのあらゆるものを含む。携帯性、多数の再充電サイクル、低コスト、高出力、軽量性、および広く変動する負荷に対する一貫した性能は、中でも電池に要求される重要な特性である。要求される電池性能の特定の組合せは、意図される用途により広く変化し、電池の構成要素および材料は一般にそれに応じて最適化される。
再充電可能な電池の重要な用途開発分野は、電気自動車(EV)およびハイブリッド電気自動車(HEV)である。これらの用途では、電池は、効率的な加速度を得るために短時間で大電流を提供する能力をもたなければならない。したがって、高い放電率が必要である。また、適当なサイズと重量の車両が、再充電しないで適当な時間の走行を維持できるためには、電池の大きな出力も必要である。容易に入手可能な電力源を用いて、多数回の急速な再充電が可能でなければならない。また、好ましいサイクル寿命プロファイルは、深いよりむしろ、浅い放電深度で多数回の充電/放電サイクルを必要とする。HEV用途のための電池の開発において進展が見られ、最近、2種類のHEV自動車が米国一般に入手可能になった。それにもかかわらず、これらの自動車に使用される電池は、関連する性能パラメータが苦しい妥協とトレードオフの犠牲になっており、さらにHEVとEV製品の能力を高めるための新しい開発が必要である。
HEV、EV、42V SLIおよび他の用途の再充電可能な電池においての比較的関心を寄せられなかった一態様は、その低温作動である。HEVおよびEV製品では、冬季の気候で良好に作動する電池が望ましい。同様に、寒冷な気候の戸外、または戸内の冷たい環境で作動することのできる、再充電可能な電池に基づく携帯型および据え置き型電力源を達成することが望ましい。実際、すべての電池技術の基本的な限界は、低温における出力と性能の減少である。温度による悪影響は、特に氷点下で著しくなる。
水素化ニッケル金属電池が再充電可能な電池の先端型として現れ、多くの用途で前の世代のニッケル−カドミウム電池を置き換えつつある。例えば、現在のHEVおよびEV製品は水素化ニッケル金属電池を使用しており、将来のHEVおよびEV製品の性能の向上は、水素化ニッケル金属電池の能力に大きく依存すると考えられている。他の再充電可能な電池と同様に、水素化ニッケル金属電池は、温度の低下によって出力と性能の大きな低下を示す。低温性能の向上には、水素化ニッケル金属電池の基礎的な構成要素、および作動原理を考察することが必要である。
水素化ニッケル金属電池は、一般的に、水酸化ニッケル正極と、水素吸蔵合金を含む金属を組み込んだ負極と、セパレーターと、アルカリ電解質水溶液とを含む。正および負の電極は、一般に不織布、両伏縫布(felled)、ナイロンまたはポリプロピレン製のセパレーターで分離された隣接する電池区画に格納される。また、いくつかの電池を直列に結合して、より高い出力、電圧または放電率を提供することの可能な、より大きな電池パックを形成することができる。
水素化ニッケル金属電池の充電と放電反応は、当技術分野で記述されてきており、次のようにまとめることができる。
充電:
正極:Ni(OH)+OH→NiOOH+HO+e
負極:M+HO+e→MH+OH
放電:
正極:NiOOH+HO+e→Ni(OH)+OH
負極:MH+OH→M+HO+e
水素化ニッケル金属電池の性能を向上させるため、過去十余年にわたって多くの仕事が行われた。電池の最適化は、最終的に充電と放電反応の速度、深度および効率の制御に依存する。電池の性能を左右するする要因は、物理的状態、化学的組成物、触媒活性、および他の正および負極材料の特性、電解質の組成物および濃度、セパレーター、操作条件、ならびに外部環境要因を含む。正の水酸化ニッケル電極の性能に関する様々な要因は、例えば、本譲受人による米国特許第5,348,822号、第5,637,423号、第5,905,003号、第5,948,564号、第6,228,535号において考察されており、それらはここに引用することにより本明細書に組み込まれる。
適切な負極材料に関する仕事は、化合物TiNiが可逆的に水素を吸収し脱着することが発見された1950年代後半から、水素吸蔵合金としての金属間化合物に焦点が集まった。その後の仕事によって、一般式AB、AB、AB、AB(Aは水素化形成元素であり、Bは弱いまたは非水素化形成元素である)を有する金属間化合物が、水素を可逆的に吸収および脱着することが可能であることが示された。したがって、負極を開発する努力の多くは、AB、AB、AB、またはABの化学式の種類を有する水素吸蔵合金に焦点が集まった。
水素吸蔵合金の望ましい特性は、高いエネルギー密度と高い電池容量を達成する良好な水素貯蔵能力、水素の可逆的な吸収と脱着に適した熱力学的特性、低い水素平衡圧、高い電気化学的活性、高速性能のための迅速な放電反応速度、高い酸化抵抗性、弱い自己放電傾向、多くのサイクルにわたって再現性のある性能を持つことを含む。水素化ニッケル金属の負極材料として、水素吸蔵合金の化学組成物、物理的状態、電極構造、および電池構造が研究され、先行技術に報告された。この仕事のいくつかは、本譲受人による米国特許第4,716,088号、第5,277,999号、第5,536,591号、第5,616,432号、第6,270,719号に記載されており、その開示はここに引用することにより本明細書に組み込まれている。
今までの努力によれば、金属間化合物は再充電可能な電池の負極材料として有効に作動することが可能であるが、重要な特性を同時に最適化するのは困難であることが判明した。例えば、AB型の水素吸蔵合金は、一般に高い初期活性、良好な充電安定性、および比較的長い充電−放電サイクル寿命を有するが、同時に、放電容量は低い。さらに、サイクル寿命を増加させる試みは、一般に初期活性の低下を招く。他方、AB型の水素吸蔵合金は、一般に高い放電容量を有するが、初期活性が低くサイクル寿命が比較的短い。初期活性を向上する努力は、一般にサイクル寿命を犠牲にする。他の重要な特性は、放電率、放電電流、および長時間にわたる出力の安定性を含む。多くの用途において、すべての望ましい電池の特性を同時に最適化するのは困難であり、その結果いくつかの特性を他の特性のために犠牲にする妥協が行われる。
水素吸蔵合金の望ましい性能特性をできるだけ多く広く改善する努力は、水素吸蔵合金として使用される材料の構造および原子間相互作用の分子レベルでの考察を必要とする。本発明者の一人であるS.R.Ovshinskyは、新しいおよび/または拡大された機能を有する材料の設計のための、新規で汎用性のある方策を立案した。Ovshinskyによって進められた基本的概念は、物質の無秩序状態及び非晶質状態によってもたらされる、新しくかつ多種の自由度を認識することである。Ovshinskyは、秩序性のある結晶格子は、規定された構造格子への原子の強い結合のため材料の構造と特性に多くの制約を与え、替わりに、無秩序状態及び非晶質状態は、化学結合、分子間相互作用、およびそれらの提供する構造的な構成に大きな柔軟性を含むものと理解した。Ovshinskyは、無秩序材料や非晶質材料について、構成要素の局部的構造の見地から考察し、おのおの化学元素およびトポロジーによって独特な特性を有し、総体的にかつ相乗的に相互作用して新規な構造と特性を有する巨視的な材料を生成すると考えた。これまで達成できなかった特性は、適切に調整した構成要素の局部構造を巧妙に組み立てることによって可能になる。
この観点から、Ovshinskyは、原子レベルの工学、化学的変性および総体的相互作用環境の原理を発見、解明、および開発し、人々が材料およびその特性を考察し理解する方法を改革した。これらの原理によれば、材料の構造と特性は強く相互に関係づけられ、新しい材料の特性が必然的に新しい構造的な自由度からもたらされる。Ovshinskyは、規定された固い構造を有する結晶性固体と、新しい機能を有する新しい材料を設計する目標とは全く両立しないことを理解した。それに比べて、材料設計の広く新しい概念を達成するのに必要な局部的な化学組成、トポロジー、および構成要素の局部的構造の組み立てを制御することによって、無秩序状態及び非晶質状態だけが構造的な柔軟性を与える。
先行技術におけるOvshinskyの原理の実行においては、四面体非晶質半導体(例えば、Si、Ge)、周期律表のV族の元素から形成された三価の層状系(例えばAs)、ならびに周期律表のVI族の元素から形成された二価の直鎖および/または環状系(例えばSe、Te、S)などの非晶質及び無秩序な無機材料を重要視した。代表的なOvshinskyの原理の材料への応用は、IV族、V族、およびVI族から選択される元素に基づき、Ovshinskyへの米国特許第4,177,473号、および第4,177,474号に含まれ、その開示は引用により本明細書に組み込まれている。これらの特許においてOvshinskyは、変性剤材料を使用して、一つまたは複数の変性剤元素の、微小空孔、ダングリングボンド、最隣接相互作用、または孤立電子対との電子軌道の相互作用によって格子欠陥に伴う電子配置の変性により、無機材料の電気的活性化エネルギーおよび導電度を制御することを教示している。これらの電子軌道の相互作用は、電荷補償、多原子価、孤立電子対補償、三中心結合、および孤立電子対−孤立電子対の相互作用などの効果を提供し、フェルミ準位と電子活性化エネルギーを決定する働きをする新しい電子状態の形成および/または本来の電子状態の不活性化をもたらす。一つまたは複数の変性剤元素を含むことは、望ましいレベルの導電度を達成するのに必要な非変性材料の構造的な偏向を形成するなどの、局部的な組成物、トポロジー、および分子間相互作用を乱す手段を構成する。変性剤と周囲の無秩序或いは非晶質の材料との電子軌道的な相互作用は、結晶質状態では不可能な局部構造との結合形態の確立を可能にした。変性剤元素の量と化学的種類を制御することによって、Ovshinskyは十桁以上の大きさの範囲にわたる導電率の変化が可能なことを示した。
その開示が引用により本明細書に組み込まれている、米国特許第4,520,039号、および第4,664,960号において、Ovshinskyは無秩序材料及び非晶質の材料における構成要素の局部的構造の不均一な配置をさらに教示している。不均一な、無秩序または非晶質の材料は、その化学組成、トポロジー、および電子軌道の相互作用が材料全体で巨視的な長さの規模にわたって不均一である局部構造を含む。不均一性は、材料内に化学的環境及びトポロジー的環境が注文どうりの分布を形成するための、原子の配置とそれらの最隣接相互作用を選択的に制御する手段を与えるため、材料から実現可能な構造の範囲、従ってその特性をさらに増大させる機会を与える。一方、均一である、無秩序または非晶質の材料は、局部的に化学的およびトポロジー的な柔軟性の恩恵を受けるが、均一性は、巨視的なある長さの規模内で局部的な化学組成とトポロジーの繰り返しを必要とするという、潜在的な制約を必ず含む。個々の化学的およびトポロジー的な環境は、より広範囲の特性を有する巨視的材料を得るという意図の下に混合し、調和させ、組み立てることができるので、不均一性は材料設計者にとってさらに助けになる。例えば、不均一性は、材料の電気的、磁気的、化学的およびフォノン特性を選択的に互いに結合し、または切り離すことのできる材料の形成を可能にする。傾斜材料は不均一な材料の一例である。
低温で高い出力と放電率を有する改善された再充電可能な電池の必要性が存在する。水素化ニッケル金属に関しては、低温性能に対する障壁は、主として負の水素吸蔵合金電極の作動特性にあることが明らかである。したがって、低温での水素吸蔵合金の性能を向上させる必要がある。この必要性を満たすために材料設計における新しい概念が要求される。
(発明の要約)
本発明は、水素化ニッケル金属電池の負極の活性成分として含まれるとき、特に低い作動温度においてより高い放電量およびより高い出力を提供する電池をもたらす高多孔性水素吸蔵合金を含む。また、本合金は、熱的水素吸蔵合金として、また、燃料電池中に使用することもできる。本発明は、原子レベルの工学、化学的変性、および全体的な相互作用環境のOvshinskyの原理を用いて、水素吸蔵合金の反応速度を改善する。本水素吸蔵合金で得られる改善された反応速度は、大きく改善された低温作動性を提供し、−30℃での高出力操作をはじめて実現する。
本発明の変性された多孔性合金は、AB、AB、AB、AB型の水素貯蔵材料で表される異なる形のベース合金を含み、ここで成分Aは遷移金属、希土類元素、またはその混合物であり、成分Bは遷移金属元素、Al、またはその混合物である。成分Aの代表的な例には、La、Ce、Pr、Nd、およびミッシュメタルを含むそれらの混合物が含まれる。成分Bの代表例には、Ni、Co、Mn、Al、およびそれらの混合物が含まれる。本合金は、電気化学的および熱的な反応性化学成分の触媒部位への接近を容易にし、それによって反応速度を向上させる支持マトリックスで囲まれた触媒金属粒子を含む。
一実施形態において、ベース合金は、より高い濃度の触媒金属粒子提供すると同時に、反応成分が触媒金属粒子へより高い接近度を提供するように、支持マトリックスの特性を好ましく調整する作用を持つ一つまたは複数の微小構造調整元素によって変性さる。微小構造の調整元素は、作動中または活性化中に支持体マトリックスがより速くまた計画的に選択的腐食されることを促進し、本発明の水素吸蔵合金の表面領域全体に配分され、局部的に高められた濃度の触媒金属粒子も含むより多孔質かつ接近可能な支持体マトリックスを提供する。支持体マトリックスがより多孔質になり酸化物が少なくなると、触媒金属粒子は少なくとも部分的に独立構造になることができる。本発明の微小構造調整元素で提供される支持体マトリックスの変性は、触媒部位の数を増加させ、反応物の触媒部位への接近を容易にすると同時に、反応生成物が触媒部位から離れまたは移動することを容易にし、それによって熱的および電気化学的水素吸蔵合金の水素化/脱水素化および充電/放電過程のより速い反応速度を提供する。本発明の微小構造調整元素は、Cu、Fe、Al、Zn、Snを含む。
他の実施形態において、支持体マトリックスは合金加工によってより多孔性に作られる。ある種の合金加工パラメータの制御(例えば、熱処理温度、加工雰囲気、空気との接触時間、電解質等)は支持体マトリックスの多孔性を増加させる。さらに他の実施形態では、加工中のステップとしてエッチングを含むことによって、支持体マトリックスの多孔性を増加させる方法が提供される。
好ましい実施形態では、支持体マトリックスの多孔性は、表面層全体に三次元に広がる断面寸法1〜2nmの開放チャンネルまたは空孔の形成によって増加する。チャンネルまたは空孔は、触媒金属粒子に向かっての、および触媒金属粒子からの、通路を提供し、反応成分の触媒金属粒子への接近、および生成成分の離脱を容易にする。充電/放電過程および水素化/脱水素化過程の反応速度はそれによって高められる。
電極は、本発明の高多孔性合金から形成され、水素化ニッケル金属電池の負の電極として使用され、特に低温における優れた出力と放電率を提供する電池が得られる。一実施形態では、活性な負の電極材料として本発明の高い表面界面多孔性のB12合金(La10.5Ce4.3Pr0.5Nd1.4Ni64.5Co3.0Mn4.6Al6.0Cu5.4)を含む単2(C cell)NiMH電池は、80%のSOCにおいて35℃で約2000W/kgの比出力を提供する。他の実施形態では、活性な負の電極材料として本発明の高い表面界面多孔性のB12合金を含む単2NiMH電池は、50%のSOCにおいて−30℃で約150W/kgの比出力を提供する。これに比較して、従来の合金(La10.5Ce4.3Pr0.5Nd1.4Ni60.0Co12.7Mn5.9Al4.7)は、同じ電池パッケージにおいて、同じ低温条件の下、殆ど比出力ゼロを示した。
(詳細な説明)
本発明は電気化学的または熱的水素貯蔵材料として適した高多孔性水素吸蔵合金を提供する。本発明の合金は、電池、電気化学電池(ガルヴァーニまたは電解質)または燃料電池のための電極の活性材料として使用することができる。好ましい実施形態では、本発明の水素吸蔵合金は、低温での作動環境下で優れた性能を提供する水素化ニッケル金属電池の負極として使用される。本発明は、原子レベルの工学、化学的変性、および全体的な相互作用環境のOvshinsky原理を用いて、表面領域の微小構造の変性により達成された水素吸蔵合金の反応反応速度の向上によって、改善された性能を達成する。
Ovshinskyとその共同者による米国特許第4,431,561号(‘561特許)、第4,623,597号(‘597特許)、第5,840,440号(‘440特許)、第5,536,591号(‘591特許)において、水素吸蔵合金の化学反応性部位の設計へのOvshinsky原理の応用が論じられており、その開示はここに引用して本明細書に組み込む。水素吸蔵合金は触媒部位と水素貯蔵部位を含む。触媒部位は通常水素ガスまたは水から水素原子を形成し、水素貯蔵部位は通常水素原子を後に回収するために貯蔵する。水素原子の形成および貯蔵過程は水素吸蔵合金の充電と呼び、貯蔵された水素原子を回収して水、水素分子、または他の成分へ再生する過程を、水素吸蔵合金の放電と呼ぶことができる。
水素ガスを水素源として用いて作動することのできる水素貯蔵材料は本明細書では熱的水素貯蔵材料と呼ぶ。典型的な例では、熱的水素貯蔵材料の水素化過程の進行中に水素ガスは材料の上に吸着し、それは触媒部位によって水素原子に変換され、水素原子は水素貯蔵部位に貯蔵される。この例における熱的水素貯蔵材料の脱水素は、水素貯蔵部位からの水素原子の放出および触媒部位での水素原子が再結合し水素ガスを形成することを含む。
水素源として水を用いて作動することのできる水素貯蔵材料は、通常電気化学的に作動される過程の電気化学電池中で用いられ、本明細書では電気化学的貯蔵合金と呼ぶ。代表的な例では、電気化学的水素吸蔵合金の充電中に水の存在下で電流が水素吸蔵合金に提供され、水素化金属および水酸化イオンを形成する。合金は充電過程中に還元されると考えても良い。この例において、水素化金属の放電は水酸化イオンの存在下で水素化金属の酸化を含み、金属または金属合金と水を形成する。放電過程中に電子が生成し電流を形成する。
多くの場合、特定の材料は電気化学的水素貯蔵材料と熱的水素吸蔵合金の両方として作動することができる。それらの場合、作動態様は材料が用いられる操作環境によって決定される。
‘561特許は、水素ガスから誘導された水素原子を貯蔵するように設計した、変性元素によって変性されたマトリックスからなる水素吸蔵合金を考察している。‘561特許は、変性剤元素(例えば、ある種の遷移金属または希土類)を含むことによって水素貯蔵マトリックスの局部的な化学的環境を変化させ、水素貯蔵部位の密度の増加した材料を提供することを教示している。結果として、全体の水素貯蔵能力は改善される。
‘597特許は電気化学的水素貯蔵材料を考察し、高い充電と放電効率を示す電気化学的水素吸蔵合金を得るために、局部的な化学的環境および金属または金属合金の構造を操作する変性剤元素の使用を教示している。変性剤元素は、独特の結合形態および電子軌道的な相互作用によって材料に無秩序性を導入し、水素貯蔵部位の数と範囲を増加させる多電子軌道変性剤(例えば、複数のd軌道を有する遷移金属または複数のf軌道を有する希土類)である。変性剤の量と化学的な性質に応じて、様々な無秩序性を実現することが可能である。例えば、組成的な、トポロジー的な、および配置的な無秩序性のように、多結晶、微小結晶、中間程度または非晶質領域の形の無秩序性が可能である。
また、‘597特許に教示される無秩序性は、触媒部位の密度を増加させ、それによって充電と放電過程が改良された。従来の化学的触媒は、転位部位、結晶段差、キンク(kink)、空孔、不純物、欠陥などの表面の無秩序性で起きる表面現象である。これらの表面不規則性は意図的なものではないのでその数は少なく、全体の触媒効率は多くの場合低くて役に立たない。偶発的に生じる表面の無秩序性に依存する代りに、‘597特許は、1種または複数の反応に関する活性の程度および選択性を変化させる触媒部位の形成と組み立てに、Ovshinsky原理を応用することを教示している。これを実施することによって、触媒活性は表面に制限されず、むしろ材料のバルクの特性になり得る。結果として、触媒部位の数は意図しない表面の無秩序性の場合の数よりも増加する。無秩序材料及び非晶質材料の恩恵を受けたトポロジー的な自由度は、多数の望ましい触媒性能を有する局部的な構造ユニットまたは部位の生成および効果的な配置を可能にする。隣接部位間の相互作用を巧妙に制御することにより、個々の効果に寄与する部位の単純な重ね合わせよりも触媒性能の多い材料をもたらす。
‘440特許は水素吸蔵合金の貯蔵能力をさらに詳細に考察した。‘440特許の教示の中で、貯蔵能力の実質的な改善を得るために増加することの必要な水素貯蔵部位の数の程度が認識された。‘440特許は、水素貯蔵材料中に無秩序性と欠陥を導入することによって水素貯蔵部位の数が大きく増加することを示した。従来型の水素貯蔵部位に加えて、‘440特許は、非従来型水素貯蔵部位の形成を教示しており、非従来型部位の数が従来型部位の50%またはそれ以上にすることができる。水素貯蔵能力の総計はそれによって増加する。‘440特許は、微結晶粒径の制御によって非従来型貯蔵部位の無秩序性と密度を制御することをさらに教示した。より小さな微結晶粒径は改善された水素貯蔵能力と相関があった。より小さな微結晶は、より多くのトポロジー的な無秩序性およびより多数の非従来型貯蔵部位を含むものと考えられる。非従来型水素貯蔵部位を提供するために、無秩序性の他の形がさらに示された。無秩序性のこれらの形は微小結晶、ナノ結晶、非晶質、および多相領域を含む微小構造を含む。
‘561特許、‘597特許、および‘440特許は、より多数の触媒および水素貯蔵部位を示す変性された水素吸蔵合金を提供した。これらの特許の教示は、水素貯蔵材料の公称すなわちバルクの組成に関する改善を考察し、触媒および水素貯蔵部位が水素貯蔵材料の表面または外部部分に制限される必要がなく、適切に無秩序性とトポロジーを制御することによって如何にして内部部分にも設計できるかを示した。これらの進歩は水素吸蔵合金の大きな向上をもたらし、同時に電池および燃料電池用のより良好な電極をもたらした。
米国特許第5,536,591号(‘591特許)の中で、Fetcenko、Ovshinsky、およびその協力者は水素吸蔵合金の触媒性能のさらなる改善を考察する。‘591特許は水素吸蔵合金の組成的な微小構造を詳細に考察し、水素吸蔵合金の組成は公称即ちバルクの組成で示されるよりも複雑であることを認識する。詳細には、‘591特許は、水素吸蔵合金に通常存在する表面酸化物層の重要性、およびその充電と放電過程への影響を認識する。電気化学的に作動する過程において、例えば、酸化物層は電解質とバルクの水素吸蔵合金の間に界面を構成し、したがって、界面層または界面領域と呼ぶことができる。酸化物層は通常絶縁性が高いので、それらは一般に金属または金属合金を用いる電極の性能を阻害する。電気化学的反応の前に、金属または金属合金電極は通常は活性化され、性能向上のため表面の酸化物層は除去され、還元または変性される。活性化の過程は、例えば、エッチング、電気的成形、前処理または過剰の酸化物もしくは水酸化物の除去もしくは改変するに適した他の方法によって達成することができる。例えば、その開示がここに引用することにより本明細書に組み込まれている、米国特許第4,717,088号を参照されたい。
‘591特許はOvshinskyの原理を水素貯蔵材料の酸化物層へ延長し、それによって触媒活性が向上することを示した。具体的には、酸化物層中にNi富化触媒領域を有する水素吸蔵合金が高い触媒活性を有することが示されている。Ni富化触媒領域は、例えば、活性化過程において生成することができ、水素吸蔵合金のNi以外の元素は選択的に腐食されて、酸化物層全体に分散した約50〜70Åの金属ニッケル合金を提供する。Ni富化触媒領域は高い活性を有する触媒部位としてはたらく。‘591特許のNi富化触媒領域の形成は、予備活性化熱焼鈍ステップによって促進される。焼鈍ステップは水素吸蔵合金の表面領域の前処理を行う働きをし、活性化過程中にNi富化触媒領域が形成するのを容易にする。本発明の内容に関連した焼鈍に関する記述は以下に追加して提供する。
米国特許第4,716,088号中で論じられたように、V−Ti−Zr−Ni合金の安定な表面組成物は比較的高濃度の金属ニッケルを有するものであることは周知である。‘591特許の一態様はこれらのニッケル領域の発生頻度の増加、ならびにこれらの領域のより著しい局在化である。より具体的には、‘591特許の材料は酸化物界面全体に分布した直径50〜70Åのニッケル増強領域を有し、領域間の距離が2−300Å、好ましくは50−100Åである。これは図1Aに示されており、これは‘591特許の図1の再現であるが、ニッケル領域は178,000倍の倍率で酸化物界面の表面に灰色で表されている。これらのニッケル領域の発生頻度が増加する結果、‘591特許の材料は触媒性および導電性の増加を示す。
‘591特許のNi密度の増加した領域は、増強されたNi表面を有する粉体粒子を提供する。‘591特許の以前には、Ni富化は微小カプセル化を用いて試みられ、不成功に終わった。Ni微小カプセル化の方法は、金属−電解質界面で約100Å厚さのNi層の堆積をもたらす。この厚さは過剰であり性能特性には改善が見られない。
‘591特許のNi富化領域は、以下の作製方法で形成することができる。それは、活性化中に選択的に腐食されてNi富化領域を生成する表面領域を有する合金を特別に生成することである。理論に拘束されることは望まないが、例えば、Niは特定の表面領域でAlなどの元素と共に存在し、この元素は活性化の際に選択的に腐食されて‘591特許のNi富化領域が残るものと考えられる。本明細書および‘591特許に用いられる「活性化」とは、「エッチング」または、他の方法、例えば‘088特許に記載されたような方法で、水素移動率を高めるために、はじめの電極合金粉体に、或いは完成された電極に、またはその間の任意の点において行う過剰酸化物を除去する方法を指す。
‘591特許のNi富化触媒領域は不連続領域である。Ni富化触媒領域の触媒活性は、大きさ、間隔、化学組成および局部のトポロジーを制御することによって制御可能である。‘591特許の一実施形態では、個々のNi富化触媒領域は、互いに2〜300Åの距離を隔てた直径50〜70Åまたはそれ未満の金属Ni粒子を含む。Ni富化触媒領域は酸化物層全体に分布する。Ni富化触媒領域または触媒金属Ni粒子を取り囲む酸化物層の部分は、以降は支持体マトリックス(support matrix)、支持マトリックス(supporting matrix)、支持酸化物(supporting oxide)、酸化物支持体(oxide support)等と呼ぶ。Ni富化触媒領域は従って支持体マトリックスに支持されるか、又はその内部に存在している。。支持体マトリックスは、水素吸蔵合金組成物中に存在する1種または複数種の金属元素の微細な、および粗い粒状酸化物および/または水酸化物を含むことができ、また、複数の相を含むことができ、そのいくつかは微小結晶、ナノ結晶、または非晶質であることができる。
支持マトリックスおよびその触媒部位は、Fetcenko、Ovshinsky、およびその協力者の米国特許第6,270,719号(‘719特許)の中でさらに論じられている。‘719特許は、触媒活性のさらなる改善を提供するNi富化領域の追加の改質を教示している。‘719特許は金属Ni粒子だけではなく、Co、Cr、V、Pt、Pd、Au、Ag、Rh、Ti、Mn、またはAlのうちの、1種以上とNiとの合金、ならびに他の金属合金(例えば、PtAu)とNiとの合金などの金属合金の粒子を含む触媒活性のある金属富化領域の形成を教示している。‘719特許は、合金化が‘591特許の金属Ni粒子のBCC構造の代わりにFCC構造を有する粒子を提供できることをさらに教示している。
本発明は、水素吸蔵合金の酸化物支持層の性質をさらに考察し、電気化学的および熱的水素吸蔵合金の向上した性能を得るために、特にOvshinskyの原理を支持体マトリックスの微小構造に拡張することに関する。水素貯蔵材料の性能は、触媒部位の固有の活性、触媒部位の数、触媒部位間の相互作用、触媒部位と水素貯蔵部位間の相互作用、水素貯蔵部位の数、および水素貯蔵部位の安定性を含む要因に基づく。これらの要因は、水素貯蔵能力、熱力学的特性、および水素貯蔵材料の反応速度に影響を及ぼす。上述した‘561、‘597、‘440、‘591、‘719特許は、触媒部位の活性、触媒部位の数、水素貯蔵部位の数、および水素貯蔵部位の安定性を改善する様々な方法を示した。
本発明は、水素貯蔵材料の性能に有益な支持体マトリックス(support matrix)および/または触媒金属領域もしくは粒子の上記以外の特性に関する。より詳細には、本発明は、水素吸蔵合金の表面またはその近くの領域の有益な変性に関する。また、水素吸蔵合金の表面またはその近くの領域は、本明細書では表面領域もしくは界面領域、表面層もしくは界面層、表面酸化物もしくは界面酸化物等と呼ぶことができる。表面領域もしくは界面領域は、水素吸蔵合金の電解質とバルク部分の間に界面を構成する。本明細書の一実施形態では、界面領域は、既知の水素化金属合金よりも多孔性の大きい、周囲の支持体マトリックスによって支持された、オングストローム規模の寸法を有する触媒金属もしくは金属合金粒子を含む。以下でさらに充分に説明するように、触媒金属もしくは金属合金粒子と表面領域の支持体マトリックスの相対比率は、本発明の水素吸蔵合金の組成物および加工処理によって変化する。
本発明の一態様は、界面領域の空孔またはチャンネルによって、反応物化学成分が触媒部位へ接近することを容易にし、生成物化学成分が触媒部位から離れることを容易にする、より開放的な網目構造を作るために、水素吸蔵合金の界面領域中の支持体マトリックスの微小構造を調整することに焦点をおいている。関与する反応物化学成分(充電または放電過程の)に比較して十分なサイズの空孔およびチャンネルは、反応物化学成分の移動を容易にし、反応物空孔または反応物チャンネルと呼ぶことができる。本発明の合金の界面領域に反応物空孔または反応物チャンネルが存在することによって、触媒部位の使用がより多くなり、特に低温での性能の向上がもたらされる。本発明の他の態様は、触媒部位の密度を増加するために、水素吸蔵合金の界面領域の微小構造を調整することに焦点をおいている。所与の容積の水素吸蔵合金中のより多数の触媒部位は、全体的な触媒活性の増加をもたらす。
本発明の水素吸蔵合金に存在する有益な微小構造調整効果は、合金組成物中に微小構造調整元素を含ませることによって、1種または複数種の合金加工パラメータ(例えば、熱処理温度、処理中の雰囲気、空気との接触時間等)の制御によって、加工中または合金形成後に1種または複数種のエッチングステップを含ませることによって、またはこれらの組合せによって達成することができる。好ましい実施形態では、本発明による微小構造調整は、触媒部位近傍の反応物および生成化学成分の移動が殆ど妨げられないように、高多孔性の支持体マトリックスによって取り囲まれた高密度の触媒部位を有する水素吸蔵合金を提供する。
一実施形態では、本発明の水素貯蔵材料は、‘591特許に開示された選択的腐食法を更に拡張することの可能な配合物を有し、酸化物全体に分布した金属ニッケル合金領域の形成を可能にするだけでなく、さらに選択的に腐食して高多孔性網目を酸化物内に作り、触媒へより容易に接近できるように設計されたベース合金を含む。配合物変性剤は支持体マトリックスの多孔性および/またはベース合金の表面領域内の触媒部位の密度を変性する。多孔性の変性は合金形成、形成後加工、活性化過程中、または電気化学的もしくは熱的水素吸蔵合金としての作動中に行うことができる。本発明の配合物変性剤は、以降、変性元素、微小構造調整元素、微小構造変性剤、支持体マトリックス変性剤、支持酸化物変性剤、表面もしくは界面領域変性剤等と呼ぶことができる。他の元素と組み合わせた配合物変性剤は、本発明の有益な微小構造および多孔性効果を提供する合金配合物全体を提供する。
他の実施形態では、高多孔性支持体マトリックスは、成形、焼鈍、加工または水素吸蔵合金のとして作動中にプロセス・パラメータを適切に制御することによって得られる。さらに他の実施形態では、合金形成後に加えるエッチング・ステップが高多孔性の支持体マトリックスを提供する。エッチング・ステップは、水素吸蔵合金の界面領域の1種または複数種の元素またはその酸化物もしくは水酸化物を選択的または優先的にエッチングし、それによって界面領域にさらに多孔性を与えるように設計した塩基性および/または酸性エッチング工程を含むことができる。
本発明による微小構造調整を行わずに、ベース合金は、ニッケル、ニッケル合金ならびに‘591および‘719特許に記載された他の金属もしくは金属合金からなる触媒的な活性粒子を含む金属富化触媒領域を有することができる。以下でさらに詳しくに述べるように、本発明による微小構造調整は、触媒活性粒子を取り囲む支持体マトリックスの多孔性の制御を可能にし、それによって電気化学的または熱的充電または放電工程に関与する分子もしくは分子状化学成分の支持体マトリックスに対しての移動度を高める。本発明の合金の微小構造は高い多孔性表面領域を有し、表面領域内、ならびに触媒粒子または触媒領域へ、または触媒粒子または触媒領域からの反応物化学成分の接近を容易にする空孔またはチャンネルを含む。したがって、本発明の空孔またはチャンネルは、反応物の空孔または反応物のチャンネルとみなすことができる。また、本発明の微小構造調整は、本発明の水素貯蔵材料の界面領域における高密度の触媒金属粒子を提供することができる。本発明の微小構造調整は、以下でいくつかの例に示すように、特に低温でより良好な充電および/または放電反応速度をもたらす。
‘591および‘719特許に記載された、水素貯蔵材料の触媒金属富化領域を取り囲む支持体母材の特性およびその変性の範囲は、先行技術では完全に最適化されなかった。触媒および水素貯蔵部位の性能または数を改善する試みを実施した結果として、偶発的な支持体マトリックスの変化は報告されたが、支持体マトリックスの意図的な変性の教示は示されなかった。例えば、‘591特許において、Ni富化領域の形成はいくらかより多孔質度の高い支持酸化物を提供するものと考えられた。他の例として、‘719特許では、多原子価のMnO成分を酸化物層に提供し、多原子価の成分が触媒特性を有することができるように、水素吸蔵合金のバルクの組成物中にMnを含ませることが提案された。
理論に拘束されることは望まないが、本発明者達は、先行技術の水素吸蔵合金の支持酸化物は高密度であり、高密度の酸化物支持体は特に低温での水素吸蔵合金の性能に有害であると考える。‘591特許の材料にはより良好な多孔性が期待されるが、これらの材料においてさえ、支持酸化物はやはり性能を妨げるほどに密度が高いものと考えられる。本発明者達は、性能は一般に支持酸化物の多孔性を増加させることによって改善できるものと考えており、本発明では、原子レベルでの工学、化学的変性、および全体的な相互作用環境のOvshinsky原理を、触媒金属粒子を取り囲む支持マトリックスまたは水素吸蔵合金の他の触媒富化領域の微小構造調整に拡張する。
金属富化触媒領域を支持するマトリックスの多孔性調整は、電気化学的および熱的水素吸蔵合金の性能を最適化するために自由度を増加させることを意味する。触媒部位、水素貯蔵部位および上述の周囲の材料の固有の活性、数、およびその間の相互作用に加えて、高い性能のためには水素ガスまたは水などの水素供給源が触媒部位に接近可能であることが必要である。接近可能性の概念は更に拡張されて、充電の間に形成された副生成物、または放電の間に形成された生成物が、触媒部位がさらに利用できるようにその触媒部位を離れる能力にも及ぶ。
一例として、金属富化触媒領域を含む電気化学的水素吸蔵合金で、合金が水性電解質の存在下で再充電可能な電池の負極として含まれる例が考えられる。充電の際に、水は金属富化触媒部位に接近して貯蔵される水素原子と副生成物の水酸化イオンを形成する。この充電過程を行わせるために、金属富化触媒部位を取り囲む支持体マトリックスは、電解質からの水分子が金属富化触媒部位へ接近できるように十分開放性または多孔質でなければならない。さらに、金属富化触媒部位で連続的に触媒作用を行うためには、支持体マトリックスは、他の水分子の触媒部位への接近が水酸化イオンの存在によって抵抗を受けないように、或いは遮断されないように、充電中に形成された水酸化イオンを触媒部位から移動、拡散、或いは離脱させなければならない。類似の考察が放電にも適用される。放電の際に、貯蔵された水素は触媒部位で水酸化イオンと結合して水を形成する。高い放電率を達成するために、支持体マトリックスは十分多孔質であって、放電の際に形成された水分子を触媒部位から迅速に離れさせることが好ましい。水分子の離脱が支持体マトリックスによって抑制されると、触媒部位は効果的に遮断され、それ以上の放電が妨げられる。最適な放電は、急速な生成物の形成だけでなく、部位がさらに放電反応に関与することが可能なように、生成物(もし存在すれば副生成物も)の触媒部位からの迅速な離脱または移動を必要とする。反応物、生成物および副生成物に加えて、触媒部位、水素貯蔵部位への電解質中のイオンの接近性と移動度、および水素貯蔵材料内の接近性と移動度は充電および放電領域の全体的な性能と効率に直接関連する可能性もある。
例えば、支持体マトリックスの不十分な多孔性は、分子状化学成分が触媒部位へ迅速に移動または離脱するためには小さすぎる開口またはチャンネルを有する構造を与えることによって、触媒部位への接近または離脱を妨げ得る。したがって、特定の触媒部位(例えば、金属富化触媒領域または触媒金属粒子内)が高い活性、充電および放電の速い反応速度を有していても、反応物分子または電解質化学成分が触媒部位へ接近不可能であること、または生成物分子または電解質化学成分が触媒部位を離脱するのが不可能であることは水素貯蔵材料の性能に有害な影響を与え得る。
触媒部位への接近または離脱対する構造的な障壁に加えて、支持マトリックスは立体的、電子的または他種の障壁も与える。電子的障壁は一般に、支持体マトリックスと、移動もしくは拡散している分子もしくは化学成分の間に存在することもある分子間の引力または反発力から発生する。移動のための十分大きな構造的通路が支持マトリックス内に存在しても、静電気力、ファンデルヴァールス力、化学結合力等の相互作用は移動または拡散への抵抗として働き得る。本明細書に使用される多孔性の概念は、起源の如何にかかわらず、充電または放電過程に関与する化学成分の移動または拡散に対する、支持マトリックス内に存在する障壁または抵抗を広く包含するものである。高度に多孔質の支持体マトリックスは移動または拡散に対してわずかな障壁にしかならないが、低多孔性または高密度の支持体マトリックスは移動または拡散に対して大きな障壁となる。
また、分子または他の化学成分が触媒部位に接近したりまたは離脱する能力は、支持体マトリックス内または支持体マトリックスに対する分子の移動度と呼ぶこともできる。移動度の高い分子または化学成分は、支持体マトリックスを通過または内部に浸透し、動き、拡散し、またはその他の形で移動することが容易に可能である。高い移動度は、充電中の反応物の触媒部位へのより大きな接近可能性、および放電中の生成物の触媒部位からのより大きな離脱能力を意味する。また、高い移動度は、充電および放電過程中のいずれか、または両過程中に触媒部位から副生成物が離脱する更に大きな能力も意味する。化学成分が支持体マトリックスを通る高い移動度は、支持体マトリックスが移動または拡散に対しての障壁(構造的、立体的、電子的等)が少ないことを意味する。電解質化学成分の移動は同様に高い移動度を示す支持体マトリックスによって容易になる。
現象的には、触媒部位への化学成分の移動度および接近性は、特に低温で、電気化学的に推進される過程の電荷移動抵抗によって表現することができる。電荷移動抵抗は、電気化学反応における基本的な電極電子移動過程の容易さの測定値である。高い電荷移動抵抗は、電子移動過程が抑制されていることを意味する。抑制に寄与する要因は、触媒部位の少ないこと、触媒部位の低い活性、または関与する分子および分子状化学成分が触媒部位へ接近または離脱不可能であることを含む。高密度の酸化物支持体マトリックスは、触媒部位への接近および/または離脱を妨げることによって電荷移動過程を抑制する。この抑制効果は、電荷移動抵抗を大きくし、電気化学的過程の反応速度を遅くする。支持体マトリックスの多孔性が増加すると、触媒部位への化学成分の移動度および接近性が向上するので、電荷移動抵抗は低下する。多孔性が十分であれば、支持体マトリックスはもはや電荷移動抵抗を決定する主要な要因ではない。かわりに、触媒部位の数および/または活性、または反応性化学成分の濃度が主要因子になる。
支持体マトリックスに対する分子または他の分子状化学成分の移動度は、温度などの外部要因によって影響を受ける。温度は分子の熱エネルギーの尺度であるから、考慮すべき事柄である。より高い温度は、触媒部位に接近または離脱する分子および分子状化学成分により高い熱エネルギーを提供し、それによって、支持体マトリックスによって提供される移動度への構造的、立体的、電子的または他の障壁を克服することを可能にする。特定の充電または放電過程について、ある温度で十分な移動度を有する支持体マトリックスは、より低い温度では触媒部位への接近または離脱を必要とする1成分以上の分子もしくは分子状化学成分に入手可能な熱エネルギーが減少するため、十分な移動度得ることができない。移動に対する支持体マトリックス中にある障壁の活性エネルギーと比較しての、移動可能分子または移動可能化学成分の熱エネルギーは、充電および放電の効率に影響を及ぼす。
本発明においては、関与する分子および分子状化学成分の移動度を向上させる支持体マトリックスの多孔性を最適化した水素貯蔵材料が提供される。移動度の向上は、高温、室温、および低温で達成できる。移動度の向上は、本発明の合金の表面領域中に、表面領域内ならびに合金内の触媒および/または水素貯蔵部位へ関与する化学成分の移動、拡散等を容易にする十分なサイズと数の反応物空孔または反応物チャンネルを含むこと、または形成することによって提供される。好ましい実施形態では、本発明の水素貯蔵材料は、水素化ニッケル金属電池の負極の活性材料として使用され、0℃以下の温度で優れた放電反応速度を提供する。一実施形態では、−30℃で優れた放電反応速度を提供する水素化ニッケル金属電池が提供される。
高多孔性支持体マトリックスの生成は、例えば、表面層の選択腐食によって達成される。表面層は、通常は多成分の酸化物相であり、水素吸蔵合金の配合物に存在する1種または複数種の金属の酸化物または水酸化物を含む。異なる金属に基づく酸化物または水酸化物は、合金加工、活性化および/または作動の間に、電気化学的な電池の腐食の程度が異なる。理論に拘束されることは望まないが、本発明者達は、本発明による微小構造調整が、表面酸化物層の促進された計画的な選択腐食を容易にすると考える。本明細書の一実施形態では、本発明による微小構造調整は、微小構造調整元素と呼ぶことのできる配合物変性剤を合金組成物中に含有することによって提供される。この実施形態における促進された計画的な選択腐食効果によって、通常電気化学電池の活性化および/または作動中に起きる腐食効果は、微小構造調整元素の存在下で誇張され、結果としてより多孔質の支持体マトリックスが形成される。他の実施形態では、促進された選択腐食は、後の処理段階において、合金形成、焼鈍、処理または操作の加工パラメータの制御によって、または合金形成の直後または形成中に行う塩基性および/または酸性エッチングの段階の施行、またはこの段階をを含ませることによって、達成されるかまたは促進される。
また、多孔性の変性に加え、促進された計画的な選択腐食は、表面またはその近傍で、より腐食を受けにくい1成分または複数の元素の比較的局部的な濃度の増加をもたらす。上で引用により本願に組み込んだ‘591および‘719特許のように、1種または複数種の金属の濃度の増加は、触媒金属粒子を含む金属に富む領域を容易に形成することができる。したがって、本発明の微小構造調整は、その大規模な腐食を行う能力により、‘591および‘719特許に記載された合金に比べて、本発明の水素吸蔵合金中の触媒金属粒子密度の大きな増加を示す。
理論に拘束されることは望まないが、本発明者達は、本発明の微小構造調整によって与えられた多孔性変性および/または触媒金属粒子の密度増加が、本発明の水素吸蔵合金の少なくともいくつかの実施形態において相乗的に起きるものと考える。すなわち、支持体マトリックスの多孔性の増加は触媒金属粒子の形成を促進し、その原因と結果が逆転している過程も起き得る。本発明による微小構造調整の存在下で、促進された計画的な選択腐食に伴う効果は、酸化物支持体マトリックスの量の減少と、本発明の水素吸蔵合金の表面およびその近傍での、より腐食の少ない元素の局部的濃度の増加を含む。過大な腐食の傾向は、触媒金属粒子を支持するのに役立つ酸化物マトリックスの量を大きく減少させる効果がある。酸化物マトリックスが腐食されると、局部の酸素濃度は減少する。結果として、表面またはその近傍に残るより高度に局在化した、より腐食性の少ない元素が金属粒子(例えば金属酸化物の替わりに)を形成する傾向は大きくなる。さらに、周囲の酸化物マトリックスは腐食されて少なくなり、形成するより高い密度の金属粒子を支持するには実質的に役立たないので、例えば、連続的な粒子状網目を形成することによって、金属粒子は実質的に自立型になり、個々の金属粒子は相互接続されて少なくとも部分的に非酸化物性支持マトリックスを形成する。‘591特許のように、単に酸化物マトリックス上に支持された触媒粒子を含む局部的な金属富化領域を提供するのではなく、本発明は、それ自体触媒であり、実質的に自立型触媒金属粒子の組み立てからなる支持体マトリックスを提供することができる。
本発明において、組成物中の微小構造調整元素の濃度、即ち本発明の合金の微小構造の調整度は、酸化物で支持された触媒金属粒子数と独立構造型の触媒金属粒子数の相対比、ならびに界面領域の空孔またはチャンネルの容積に影響を与える。微小構造調整元素の濃度即ち本発明による微小構造調整の程度が低いとき、触媒金属粒子は低い濃度で形成され、比較的高密度の酸化物マトリックスによって実質的に支持されることが予測される。これらの条件下の触媒金属粒子は十分に離散し、比較的高密度でしかも多孔質度の小さい支持体マトリックスで取り囲まれることが予測される。微小構造調整元素の濃度が増加すると、上で述べた、促進された計画的な選択腐食効果のため、支持マトリックスは多孔質を増加させる。支持体マトリックスが触媒金属粒子の近傍で豊富でなくなると、これらの粒子を支持する可能性が少なくなり、触媒金属粒子が独立構造になる傾向は増加する。独立構造型触媒金属粒子の割合は増加する一方では、酸化物で支持された触媒金属粒子の割合は小さくなる。また、腐食性の少ない元素が、触媒金属粒子を形成する傾向も増加し、密度がより高くまた相互間隔のより小さな触媒金属粒子の生成をもたらすことが予測される。
微小構造調整元素の濃度即ち本発明による微小構造調整が中間程度であるとき、本発明の水素吸蔵合金の表面またはその近傍の領域は独立構造型および酸化物で支持された触媒金属粒子の両方を含み、微小構造調整元素が増加すると残る酸化物の多孔性は高くなる。微小構造調整元素の濃度即ち本発明による微小構造調整の程度が高いとき、触媒金属粒子は殆ど独立構造になる。酸化物のマトリックスは残り得るが、低密度であり、触媒金属粒子の支持には二次的に関与するに過ぎない。
表面領域の多孔性は、孔の容積分率または空孔の容積分率で表すことができ、ここで孔または空孔とは表面領域の開口または開口した部分である。孔または空孔は水素貯蔵材料中に局在するか又は広範に存在し、例えば、チャンネルを含むことができる。理論に拘束されることは望まないが、本発明者達は、本発明による微小構造調整の最初の効果は、触媒金属粒子の近傍全体における空孔の形成または成長であると考える。この最初の効果において、本発明による微小構造調整は、水素貯蔵材料中の互いに離れている位置での局部的な腐食を容易にする。腐食部位で支持マトリックスの欠乏に伴って金属粒子が形成することは、酸化物支持体マトリックスの1種または複数種の金属を連結させて金属粒子の形成をもたらし、同時に金属粒子の近傍で酸素およびより腐食性の高い金属を除去する。したがって、腐食部位での局部的な環境は金属粒子と空孔を含む。空孔のサイズは、形成した金属粒子の容積、除去された材料の量、および水素貯蔵材料の空孔形成の傾向の強弱に依存する。空孔は、水素貯蔵材料中の材料が存在しない、開放した、密度の低い領域を表す。空孔は水素貯蔵材料中の欠陥であり、機械的強度の弱い領域で、そのため界面領域の崩壊又は高密度化を容易にする。高密度化は、原子を除去して空孔形成される空孔に隣接する原子の変形への抵抗が低いために起きる。以前に空孔を占めていた原子は、隣接する原子の変形に対して機械的な抵抗を与える。しかしこれらの原子を腐食によって除去すると、変形に対する抵抗が取り除かれ、結果として水素貯蔵材料が崩壊して空孔を埋める。水素貯蔵材料の崩壊する程度は、空孔を取り囲む材料の機械的強度、ならびに崩壊に伴う原子移動過程の熱力学および反応速度に依存する。大きな崩壊は、孔容積の減少および界面領域における分子および化学成分の移動度の抑制を招く。
理論に拘束されることは望まないが、本発明者達は、本発明による微小構造調整は空孔の形成の際に界面領域の崩壊を抑制するので、空孔の容積が増加し、空孔を通過する分子或いは空孔近傍の分子および化学成分の移動度が促進されるものと考える。一モデルにおいて、本発明者達は、本発明による微小構造調整は、周囲の支持材料が崩壊して空孔を埋めるのに必要な時間よりも速く触媒金属粒子が形成するほどに、触媒金属粒子の形成速度を高めるものと考える。このモデルにおいて、大きな空孔容積は界面領域に動力学的に「凍結」され、または保持される。このモデルの結果は、触媒金属粒子程度のサイズ、またはそれよりも大きなサイズの空孔が形成され又保存されることを含む。
上で示したように、本発明による微小構造調整の最初の効果は、界面領域の触媒金属粒子近傍に空孔を形成することであり、空孔は互いに比較的孤立している。本発明による微小構造調整が進捗し、顕著になると(例えば、微小構造調整元素の濃度を上げる、エッチングをより長く、或いはより強く行うことによって、等)、形成される金属粒子の数、空孔の容積分率および/または界面領域の多孔性は増大する。終局的には、隣接する空孔が重なり合ってチャンネルなどの広範な空孔構造を形成し、または小板が形成して界面領域全体に広がる連続的な開口を形成することができる。支持マトリックスの多孔性が増加すると、1個または複数の空孔、小板、およびチャンネルを含む多孔性の網目が局部的および界面領域全体に形成される。
本明細書の一実施形態における本発明の配合物変性元素は、遷移金属および後遷移金属を含む。一実施形態では、Sn、またはZnが多孔性変性剤として使用される。好ましい実施形態では、Feが多孔性変性剤として使用される。最も好ましい実施形態では、Cuが多孔性変性剤として使用される。一般的な手法は、全体として許容される配合物を考察することである。選択腐食には、酸化および腐食するもの、酸化し不動態化するもの、金属として残るものなど、一連のの元素が存在することが必要である。腐食型と不動態化型の両種において様々な反応速度を持つ複数の元素が存在することが最も好ましい。この場合、上記の変性剤(Cu、Fe、Sn、Zn)は、それらが腐食性元素を既に過分に含有しているベース合金と結合すれば、望ましい微小構造および多孔性特性の達成ををかえって阻害する可能性がある。ここに提案された発明に役立つことのできる他の元素はAl、Si、Vを含む。1種または複数種の多孔性変性剤を含む実施形態は、本発明の範囲内である。
要点はは空孔に触媒を接近させることである。1種または複数種の支持体酸化物元素を選択的に侵食するように設計した化学的前処理などの変性剤元素を使用しない手法も、本発明の有益な微小構造および多孔性効果を提供する働きをすることができる。例えば、HFは最終的に望ましい酸化物多孔性を提供することもある。
本発明による微小構造調整に適した水素貯蔵材料は、1種または複数種の遷移金属または希土類を含むベース水素吸蔵合金、ならびに微小構造調整元素と結合したベース合金を含む。AB、AB、AB、またはAB型、およびその混合物の型の式を有するベース合金は、本発明の範囲内であり、成分AおよびBは遷移金属、希土類元素、またはその混合物とすることができ、成分Aは一般に成分Bよりも強い水素化物形成傾向がある。
基本AB型水素化貯蔵組成において、AはTi、Zr、V、またはその混合物もしくは合金であることが好ましく、BはNi、V、Cr、Co、Mn、Mo、Nb、Al、Mg、Ag、Zn、またはPd、およびその混合物もしくは合金からなる群から選択されることが好ましい。基本AB組成物は、ZrNi、ZrCo、TiNi、およびTiCoならびにその変性された形を含む。本発明の範囲内の代表的な基本AB型組成物およびその変性された形は、上記の引用により本明細書に組み込まれている米国特許第4,623,597号、第5,840,440号、第5,536、591号、第6,270,719号、及びその開示を引用により本明細書に組み込んでいる米国特許第5,096,667号に記載されたものを含む。
ベースAB型組成は、MgNi、ならびにOvshinsky原理によるその変性された形を含み、MgまたはNiのいずれかまたは両方がすべてまたは部分的に多電子軌道変性剤で置換されている。
ベースAB型組成は、ラーベス(laves)相化合物であり、AがZr、Ti、またはその混合物もしくは合金であり、BがNi、V、Cr、Mn、Co、Mo、Ta、Nb、またはその混合物もしくは合金である組成物を含む。また、本発明は、上述のOvshinsky原理によって変性されたベースAB組成物を含む。本発明の範囲内の代表的なAB組成は、米国特許第5,096,667号に論じられており、ここに引用して本明細書に組み込む。
ベースAB型組成は、Aがランタノイド元素またはその混合物もしくは合金であり、Bが遷移金属元素またはその混合物もしくは合金であるものを含む。LaNiはベースAB化合物の原型であり、その特性を向上させるために様々な方法で変性された。Niは、Mn、Co、Al、Cr、Ag、Pd、Rh、Sb、V、またはPtを含む元素及びその混合物で部分的に置換することができる。Laは、Ce、Pt、Nd、または他の希土類及びその混合物で部分的に置換することができる。また、ミッシュメタルはLaをすべてまたは部分的に置換することができる。また、本発明は上述のOvshinsky原理によって変性されたベースAB組成物を含むこともできる。本発明の範囲内の代表的なAB組成物は、米国特許第5,096,667号、第5,536,591号中に記されており、ここに引用して上に組み込まれる。
また、引用により本明細書に組み込まれている米国特許第5,616,432号、第6,193,929号に記載されたものなど、変性されたMgベースの合金も本発明の範囲内である。
また、本発明のベース合金はOvshinsky原理を適用することによって得られる非化学量論的組成物を含むこともできる。非化学量論的組成物とは、元素の割合が、小さな整数比で単純に表せない組成物である。代表的な非化学量論的組成物は、AB1±x、AB2±x、AB5±x、A1±xを含み、xは非化学量論的組成物の偏差の値である。また、本発明のベース合金は、多相材料を含むこともでき、多相材料は、異なる化学量論的組成、微小構造、および/または構造的に異なった相を有する材料の組合せまたは混合物である。構造的な相は、結晶相、微小結晶相、ナノ結晶相および非晶質相を含む。
いくつかの実施形態では、支持体マトリックスの増加した多孔性および/または触媒金属粒子の密度増加は、ベース合金組成中に変性元素を含有させることによりもたらされる。他の実施形態では、ベース合金組成物中の1種または複数種の元素量を減らして変性元素を加えることは、支持マトリックスの多孔性増加および/または触媒金属粒子の密度増加をもたらす。さらに他の実施形態では、微小構造調整は上述したように、形成、加工、処理、活性化または操作ステップによって行われる。
本発明の水素吸蔵合金は、溶解鋳造、電気誘導炉溶解、急速凝固、機械的合金化、スパッタ、およびガス噴霧を含む様々な方法によって調製することができる。代表的な調製は、以下の実施例1および2に説明される。多くの水素吸蔵合金の調製過程の重要な態様は、生成後の焼鈍ステップであり、調製過程で生成された材料を焼鈍処理にかける。焼鈍処理は、材料を十分な時間高温に加熱することを含む。焼鈍の効果は、水素貯蔵材料の表面を変化または準備することにより、材料が上述の促進された計画的な選択腐食過程に影響されやすくなり、また良く反応し、オングストローム規模の触媒金属または金属合金粒子の形成、およびより大きな空孔容積分率を表面領域にもたらすことである。促進された計画的な選択腐食が活性化過程の間にオングストローム規模の触媒粒子を形成する程度は、表面のまたはその近くの局部的組成物によって影響を受ける。引用により上に組み込まれた‘591および‘719特許の材料では、表面領域の局部的なニッケル富化は、活性化されるとオングストローム規模の触媒ニッケルまたはニッケル合金粒子の形成を可能にし、または容易にするのが観察された。適切な焼鈍過程は、ニッケル濃度が水素吸蔵合金の組成式単位から予測される統計的濃度に比較して豊富な表面の状況を誘起する。適切な条件下での焼鈍は、バルクから表面領域へ向かってニッケルの偏析を開始させ、ニッケル富化表面領域を提供する。
理論に拘束されることは望まないが、本発明者達は、十分高いニッケル濃度を有する表面領域の形成は、活性化されるとオングストローム規模の触媒ニッケルまたはニッケル合金粒子の形成を可能にすると考える。高いニッケル濃度に加えて、ニッケル富化表面領域は、オングストローム規模の触媒ニッケルまたはニッケル合金粒子の形成を容易にする微小構造形態を含むこともできる。例えば、焼鈍で誘起された偏析は、相、構造、結晶性、粒子、界面等の局部的な変化を伴い、活性化過程中にオングストローム規模の触媒ニッケルまたはニッケル合金粒子の形成を助けることができる。‘591特許の材料に関して、本発明者達は、焼鈍ステップを受けなかった材料を活性化しても、オングストローム規模の触媒ニッケルまたはニッケル合金粒子は形成しないことを示した。酸化されない金属ニッケルまたはニッケル合金粒子の代りに、焼鈍しない材料の表面領域は、Nin+に富む酸化物相の形の酸化されたニッケルを含む。
‘591特許の材料の焼鈍で観察される偏析効果は、本発明による微小構造調整の影響の下で増加すると考えられる。例えば、微小構造調整元素を含むことによって、‘591または‘719特許の水素吸蔵合金に比べて、本発明の水素吸蔵合金中により著しいニッケルの偏析および局部的に富化されたニッケル濃度をもたらすことができる。Coなどの他の金属、または微小構造調整元素自体の局部的な富化も起き得る。結果として、活性化の際に起きる選択腐食は本発明の合金においてより明らかであり、支持体マトリックスの多孔性の増加、空孔容積分率の増加、触媒金属ニッケルまたはニッケル合金粒子の密度増加、および/または、本発明の微小調製によって提供される促進された計画的な選択腐食効果と結びついて、上に述べた界面領域内の独立構造を作る傾向をもたらす。本発明による微小構造調整は触媒金属粒子の形成を容易にし、界面領域に空孔の容積を増加させることができる。上で述べたモデルによれば、本発明の微小構造調整は触媒金属粒子形成の反応速度を増加させることができ、残存する未消耗の支持体材料が空孔中へ崩壊するのを抑制することが出来る。
本発明のいくつかの実施形態で使用される配合物変性剤は、いくつかの先行技術の合金中に現れたが、本発明の合金に付随する有益な微小構造現象の実施には用いられなかった。例えば、Lichtenbergらの米国特許第5,738,953号の中で、MmNiAlMnCoが開示されており、式中、Mmはミッシュメタルであり、MはCu、Fe、またはCuとFeの混合物である。溶解鋳造およびガス噴霧で調製された合金が開示されている。Lichtenbergの溶解鋳造合金の調製は焼鈍ステップを含まないので、触媒金属粒子(‘591特許に記載されたものなど)は形成しない。結果として、本発明による、CuまたはFeの存在によって促進される、促進された計画的な活性化過程中に起こる選択腐食は、Lichtenbergらの溶融合金鋳造合金には起こらず、Lichtenberg合金は本発明の有益な高多孔性微小構造を示さない。実際に、Lichtenbergはこれらの合金が著しく短いサイクル寿命を有し、サイクル寿命を回復するために必要な手段としてガス噴霧を具体的に開示した。Lichtenbergのガス噴霧合金は熱処理ステップを含んだが、熱処理の効果は、ガス噴霧粒子の間の境界領域を分解し拡散させることによって、形成されたままのガス噴霧合金の貯蔵容量を増加させるためであった。この熱処理は、ガス噴霧粒子の表面積を減少させ、小さな粒子が融合して大きな粒子となることによって、全体の多孔性を低下させる効果を有する。また、Lichtenberg合金は、彼らの特許に記述されたコバルト含有の参照合金に比べて、初期の容量および繰り返しサイクル後の容量に顕著な減少を示す。したがって、Lichtenberg合金にCuおよび/またはFeを含ませることは、先行技術の組成物に比べて電池容量の低下を招く。さらに、Lichtenberg特許は低温出力または容量の改善は教示していない。
Imotoらの米国特許第6,329,100号の中で、MmNiCoAlの式を有する合金が開示されており、式中、Mmはミッシュメタルであり、MはMnおよび/またはCuである。合金は具体的には、2種の異なる組成物の混合物を含む。合金は溶解鋳造によって調製されたが、焼鈍ステップを含まず、含まれたCuは、本発明の合金におけるように、活性化過程中に有利に微小構造を変化させない。さらに、Imotoらの合金は0℃で改善された放電量を有すると報告されているが、この改善はテフロン・コーティング処理、水素還元処理、または酸処理によるものである。さらに、開示された0℃の性能は、改善されてはいるが、本発明の合金が示す低温改善よりも顕著でない。テフロン・コーティング処理は、作動中に水素吸蔵合金を電解質から保護し、特に過放電中に水素吸収効率を改善すると考えられる。水素還元および酸処理は、表面近くのミッシュメタルでない成分の濃度を高めるので、電極との湿濡性が高まるものと考えられる。支持体マトリックスの多孔性、触媒粒子の性質または分布、または他の微小構造現象を改変するという教示はImotoらの特許には見られない。Imotoらの合金は本発明の促進された計画的な選択腐食の恩恵を受けていない。
Leeらの米国特許第6,106,768号において、いくつかのAB型合金が開示されており、Aはミッシュメタルであり、BはCr、Cu、Zn、Fe、またはSiからなる群から選択される変性剤と一緒に、1種または複数種のNi、Co、Mn、およびAlを含む。Leeらの合金はArの存在下でアーク溶融によって調製され、焼鈍ステップは受けなかった。合金のコスト低減と水素貯蔵容量を改善する試みのために、Coの代用品として変性剤が含まれた。変性剤は、Coに比べてその水素へのより強い親和力およびそのより大きな酸化抵抗性によって選択された。Leeらによれば、変性剤は、繰り返しサイクルの際に劣化を低減する高密度の酸化物層の形成を促進することによって、サイクル寿命を改善する。したがって、Leeらの特許は本発明の微小構造調整元素によって提供される、より多孔性の酸化物支持体とは反対の教示をしている。
Ebiharaらの米国特許第6,331,367号には、多孔性の表面層を有する水素吸蔵合金が記載されており、孔直径は1〜2nmであり、孔容積分率は1%未満である。Ebiharaらの合金の調製は、ニッケル濃縮層および上記の孔直径を有する表面層を形成するために、別々のアルカリおよび酸エッチング・ステップを含んだ。以下でさらに詳細に述べるように、Ebiharaらの合金の孔サイズおよび孔容積分率は、本発明の合金のそれよりもはるかに小さい。本発明の合金のより大きな空孔サイズおよびより大きな空孔容積分率は、本発明の合金のより優れた低温出力と放電特性を容易にする。
本発明の合金は、燃料電池または電池などの装置の熱的または電気化学的水素貯蔵材料として使用することができる。電池の種類は平型電池、巻型電池、円筒形電池、角形電池、密閉型電池、通気型電池等を含む。本発明の水素貯蔵材料から形成された電池は、室温および特に0℃〜−30℃などの室温以下の温度で、現在入手可能な電池よりも高い出力を提供する。本発明の水素貯蔵材料から形成された電池は再充電可能であり、HEVまたはEV用途に使用することができ、自動車、バス、トラクター等などの従来の車両の始動電池として使用することもできる。
本発明の範囲の更に深い理解は以下に示す例示的実施例に示される。以下の実施例は本発明を包括的に定義するものではなく、代表例として意図したものである。
(実施例1)
この実施例において、化学量論的および非化学量論的なAB型組成物を有する、いくつかの水素吸蔵合金の調製および組成式が示される。各合金はミッシュメタルと残りの元素の形の成分(各元素の純度は>99%)を、必要な化学量論的比率でMgO坩堝の中で混合することによって調製した。この実施例で使用したミッシュメタルは、La、Ce、Pr、およびNdを、La:Ce:Pr:Nd=10.5:4.3:0.5:1.4のモル比で含んだ。混合した出発元素の総質量は約2kgであった。続いて1気圧のアルゴン雰囲気下の水冷した電気誘導炉中に坩堝を置き、約1350℃に加熱し、その温度で15〜20分間保った。加熱の間、坩堝中の材料は溶融し、より良好な均一性を得るために過熱した。この加熱ステップの後、材料をその溶融点(約1280℃)のわずかに高い温度まで冷却し、直ちに湯口を通してスチール鋳型へ注いだ。注いだ後、材料を室温まで冷却した。次いで、得られたインゴットを、拡散ポンプで真空にした真空チャンバー内で、950℃で8時間焼鈍した。焼鈍の後、インゴットを室温に戻した。次いで、冷却したインゴットを機械的に粉砕し、200メッシュのフィルターで篩にかけた。
上述の方法を用いて調製した代表的なAB型合金を表1に示す。これらの合金の中で、成分Aはミッシュメタルであり、成分Bは遷移金属の混合物である。表1に示す組成物は、原子%であり、モル比に一致する。0と記入しているのは、合金を調製するのに元素が意図的に含まれていなかったことを示す。BおよびB0合金は本発明によって変性されない従来の合金である。B合金は典型的な市販の合金組成物であり、B0は市販の合金に類似している。合金B1、B3、B4、およびB7〜B12は微小構造調整元素(Cu、Fe、またはZn)を含み、本発明によるベース合金B0の変性された形である。合金B2、B5、B6はB0に比べて過剰のNiを含む。
Figure 0003946234
組成物中の微小構造調整元素の相対的な量は、合金中のミッシュメタルに対する微小構造調整元素の原子比で表すことができる。表1に示された合金中のミッシュメタルの原子%は、16.7であり、La、Ce、Pr、およびNd元素の原子%の和である。したがって、微小構造調整元素の相対量は16.7に対する元素の原子%比として表すことができる。例えば、B1合金において、ミッシュメタルに対する銅の原子比は3.4:16.7または0.204:1である。同様な比は他の合金でも計算することができる。
他の希土類および/または遷移金属を含む変性された組成物を同様に調製することができる。また、希土類は個々の原子の形で、またはこの実施例で使用されたミッシュメタルとは異なる割合または組合せの希土類を有するミッシュメタル組成物の形で混合することができる。
(実施例2)
この実施例は化学量論的および非化学量論的なABおよびAB型組成物を有するいくつかの水素吸蔵合金の調製および組成式を示す。各合金は、必要な化学量論比の混合および加工実施例1に述べた合金と類似の加工によって調製した。処理温度および処理条件の範囲についての詳細の情報は、引用により上に組み込まれている‘719、‘088、‘591特許に見ることができる。
上の方法を用いて調製された代表的なABおよびAB型合金を表2に示す。表1に示す組成物は原子%であり、モル比に一致する。0と記入しているのは、合金を調製するのに元素が意図的に含まれていなかったことを示す。
Figure 0003946234
(実施例3)
この実施例では、本発明による水素吸蔵合金の表面領域の微小構造調整が示される。より詳細には、触媒金属粒子を取り囲む支持体マトリックスの多孔性の増加は、本発明による微小構造調整を示す代表的な合金として、実施例1で述べたB1およびB12合金を用いて示される。本発明の有益な微小構造と‘591特許の先行技術の合金の比較も行われる。
図1Aは‘591特許による先行技術の合金の暗視野透過型電子顕微鏡写真を示す。‘591合金は、(ベース合金)CoMnFeSnの組成を有する水素貯蔵材料を含み、式中、ベース合金は0.1〜60原子%のTi、0.1〜40原子%のZr、0〜60原子%のV、0.1〜57原子%のNi、0〜56原子%のCrを含み、bは0〜7.5原子%、cは13〜17原子%、dは0〜3.5原子%、eは0〜1.5原子%であり、a+b+c+d+e=100原子%である。‘591特許の中で説明したように、‘591合金の表面領域は、界面領域全体に分布した直径50〜70Åの触媒金属ニッケル粒子を含み、約2〜300Åの変化を示す。図1Aの暗視野像において、触媒ニッケル粒子は白く見える。触媒金属ニッケル粒子は多孔性の低い周囲の支持体マトリックスによって支持される。
B1合金の微小構造の像は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて形成され、本明細書では図1Bに明視野モードで描かれている。B1合金はベースB0合金(実施例1に述べた)の変性された形であり、元素Cuが組成物中に含まれ、Coの量が少なくなり、Alの量は増加している。像は、Ni、Co、Cuまたはその混合物を含む金属触媒粒子、ならびに本発明のB1合金の界面領域の空孔を示している。触媒金属粒子は明視野の顕微鏡写真中に暗い領域として現れ、空孔は明るい点として現れる。選択された触媒粒子と空孔が像の中に詳細に識別される。触媒粒子および空孔は周囲の酸化物支持体マトリックス内(灰色で示され、高多孔性触媒層と称することにする)に含まれる。触媒金属粒子および空孔は、周囲の支持体マトリックス全体に分布している。また、B1合金のバルクの部分(「「バルク」金属」と記された暗い領域)も図1Bに示される。
B1合金の像は、その微小構造が高濃度の空孔および高濃度の触媒金属粒子を備える高度な多孔質であることを示す。この像のための拡大倍率尺度のバーが像の下部に示されている。像の拡大尺度(200,000X)は、長さのバー全長が20nmの距離に一致する。この尺度を使用すれば、本発明のB1合金の界面領域が約100Å未満のサイズおよび直径を有する触媒金属粒子を含むことが明らかである。触媒金属粒子の直径は約10Åから約100Åに及ぶ範囲で形成される。この範囲全体に及ぶサイズを有する触媒金属粒子は顕微鏡写真に明らかである。また、この範囲内のより狭いサイズ分布も、例えば引用により上記部分に組み込んだ‘591および‘719特許の中で記述した方法を用いて達成可能である。直径50Å未満の触媒金属粒子を含む実施形態は、直径30Å未満の触媒金属粒子を含む実施形態のように、本発明の範囲内である。
触媒金属粒子間の相互距離は広範囲に変化し、界面領域の触媒金属粒子と空孔の容積分率で変化する形態である。触媒金属粒子間の距離が2〜300Åで変化する実施形態は、触媒金属粒子間の距離が50〜100Åで変化する実施形態のように、本発明の範囲内である。
界面領域のある部分では、触媒粒子は互いに接触して部分的な独立型構造および相互接続性を示す。空孔は一般に球状であり触媒粒子のそれに似たサイズを有する。界面領域のある部分では、隣接する空孔が合流してより拡張する開口構造を形成する。先行技術の‘591合金に比べて、本発明のB1合金の微小構造は明らかにより多孔質度が高く、類似の濃度、またはより高濃度の触媒金属粒子を含む。
本発明のB12合金の界面領域の微小構造は、図1Cの暗視野透過型電子顕微鏡写真に示されている。像の拡大率は500,000Xであり、20nmの長さの尺度が像の中に示されている。B12合金は、B1合金よりも高濃度の微小構造調整元素Cuおよび低濃度のCoを含む。B12合金の微小構造はニッケル、コバルト、銅、またはその混合物を含む触媒金属粒子を含み、B1合金について上で述べたものに類似したサイズを有する。触媒金属粒子は図1Cの暗視野像の中で白く現れる。触媒粒子をいくつか選んで像の中に矢印で示してある。触媒金属粒子は界面領域全体に分布する。
B12合金の微小構造の注目すべき特徴は、多数のチャンネルが界面領域全体にわたって触媒金属粒子間に存在することである。チャンネルは「1〜2nm空孔」と記され、図1Cの暗視野像に暗い対象物として示されている。チャンネルは約1〜2nmの横断断面寸法、および約20〜30nmまでのより長い長手方向寸法を有する。チャンネルは管形状を有することもあり、または平板状構造を有することもある。球状の、非チャンネル空孔も存在することがある。空孔は界面領域全体に分布する。図1Bに描かれた本発明のB1合金に比べて、本発明のB12合金の微小構造はより大きな空孔容積およびより大きな平均空孔サイズを含む。また、本発明のB12合金の微小構造はより多数でまたより大きく延びた延長型空孔構造も含む。本発明による微小構造の調整がより高度に行われると、B1合金で観察される傾向はB12合金の中で強まる。これらの空孔は改善された低温作動(例えば−30℃)の要因であると考えられる。
(実施例4)
この実施例では、上述の実施例1の中で記述したB、B1、B12水素吸蔵合金のサンプルの微小構造の比較が示される。具体的には、3種類の合金について、界面領域の典型的な厚さ、触媒金属粒子の平均サイズおよび支持体マトリックスの容積分率、界面領域の触媒金属粒子および空孔が記述されている。
B、B1、B12合金の微小構造の比較概要図が本明細書の図1Dに示される。実施例1で見るように、銅の濃度はB合金からB1合金へ、B1からB12合金へと増加し、コバルトの濃度は減少する。また、B1およびB12合金はB合金よりも高濃度のAlを含む。各図は代表的なバルクの合金(各図の下部の塗りつぶされた黒い部分)および代表的な界面領域を含む。各合金の界面領域の厚さは、オージェ(Auger)深度プロファイル計によって求められ、得られた厚さが各合金について示さていれる(B合金は350Å、B1合金は200Å、B12合金は550Å)。界面領域は触媒金属粒子、酸化物支持体マトリックス、および空孔を含む。触媒金属粒子は、界面領域中に、塗りつぶした円として描かれ、空孔は塗りつぶさない(白い)円または引き伸ばされた、塗りつぶさない(白い)形状(B12合金)として描かれている。各合金の図中、界面領域の残る領域は支持体マトリックスに相当する。また、界面領域中の触媒金属粒子、空孔、支持体マトリックスの本発明の容積分率は、各合金の図の下部に示されている。界面領域内の平均触媒金属粒子サイズは各合金の図の界面領域の上に示されている(B合金は41Å、B1合金は41Å、B12合金は35Å)。界面領域中の平均触媒金属粒子サイズおよび触媒金属粒子の容積分率は磁化率測定から得られた。空孔の容積分率はBET測定によって求めたが、顕微鏡写真像から判断することもできる。
従来のB合金の界面領域は26%の触媒金属粒子、70%の酸化物支持体マトリックス、および4%の空孔を含む。従来のB合金では、空孔の大部分はほぼ球状であり、その典型的なサイズは典型的な触媒金属粒子よりも小さい。本発明による微小構造調整を行って本発明のB1合金を形成すると、酸化物支持体マトリックスの界面領域の容積分率は減少するが、触媒金属粒子の容積分率は増加する。B1合金の界面領域は42%の触媒金属粒子、40%の酸化物支持体マトリックス、および18%の空孔を含む。B1合金中の触媒金属粒子の平均サイズはB合金のそれに類似しているが、B1合金はより高密度の触媒金属粒子を含む。B1合金の触媒金属粒子は、B合金の触媒金属粒子よりも粒子間間隔がより近接している。また、B1合金はB合金に比べてより多数の空孔ならびにより大きなサイズの空孔を含む。B1合金は、典型的な触媒金属粒子のサイズと等しいかまたはより大きな、ほぼ球状の形状を有する空孔をいくらか含む。B1合金の界面領域はB合金のそれよりも薄いが、上で説明し、また更にいくつかの実施例で以下によりより詳細に説明するように、その増加した多孔性とより高密度の触媒金属粒子は、改善された電気化学的活性をもたらす。B合金の界面領域の低い多孔性は、電気化学的に活性な化学成分の界面層のより深い部分(すなわち、バルク合金に最も近い部分)への接近を妨害または抑制し、したがって、B合金の潜在的な電気化学的活性の利用が不十分であることの要因となる。言い換えれば、B合金の界面領域の厚さは公称350Åであるが、電気化学的活性化学成分が界面領域の深さに完全に浸透することが不可能なため、有効な厚さははるかに薄くなると考えれれる。
合金組成物中に、より高濃度の微小構造調整元素Cuを含ませて本発明のB12合金を生成すると、酸化物支持体マトリックスの容積分率はさらに減少し、触媒金属粒子と空孔の容積分率はさらに増加する。B12合金の界面領域は51%の触媒金属粒子、25%の酸化物支持体マトリックス、および24%の空孔を含む。また、B12合金の界面領域の厚さも550Åに増加した。また、B12合金の触媒金属粒子の平均サイズも35Åに減少した。このより小さなサイズは、動力学的な立場から、より多数の粒子の生成がより大きな粒子の形成よりも優先するので、上で述べた、促進された計画的な選択腐食効果と矛盾しない。触媒金属粒子の偏析粒間距離は、B1合金に比べてB12においてより小さく、触媒金属粒子が支持マトリックス中で相互接触または部分的に独立構造を形成する傾向は、B1合金に比べてB12において増加する。
また、B12合金中の細長形空孔の存在は、B12合金の界面領域の空孔として、非球状のチャンネルの形に描かれて、図1D中に示されている。球状空孔もB12合金の界面領域に存在することができるが、微小構造調整元素の濃度の増加と共に細長形空孔を形成する傾向が大きくなることは本発明の合金の特徴である。B12合金の界面領域のより高い多孔性は、界面領域の厚さ全体をすべて電気化学的過程に利用することを可能にする。より高い多孔性は、電気化学的成分が界面領域の中へ深く浸透する可能性を高める。
B1およびB12合金の微小構造は、本発明の微小構造調整元素による促進された計画的な選択腐食の実現例であり、本発明による微小構造調整に伴ってて増加した多孔性を示す。本発明による微小構造調整は、その界面領域が先行技術の合金よりも大きな空孔容積分率および/またはより大きな触媒金属粒子の容積分率を含む合金を提供する。本発明の微小構造調整によれば、空孔および/または触媒金属粒子は支持体マトリックスを犠牲にして形成される。従来のB合金と同様に、先行技術の水素吸蔵合金の微小構造は通常約4%の空孔容積分率を含む。本発明によって調整された微小構造を有する合金は、界面領域により大きな空孔容積分率、またははるかに大きな空孔容積分率を示す。空孔容積分率の制御は、微小構造調整元素の含有、合金形成の制御、処理または操作条件の制御、および/または酸、塩基またはその組合せでエッチングすることによる微小構造調整によって、本発明によって達成することができる。微小構造調整の程度を連続的に制御(例えば、微小構造調整元素の濃度、エッチングに使用される酸または塩基の濃度、空気に露出する時間、焼鈍温度、焼鈍時間または焼鈍雰囲気等によって)して、界面領域に4%〜24%、またはそれ以上の空孔容積分率を達成することができる。界面領域に少なくとも5%の空孔容積分率を有する合金が本発明によって提供される。界面領域に少なくとも10%の空孔容積分率を有する合金が本発明によってさらに提供される。界面領域に少なくとも15%の空孔容積分率を有する合金が本発明によってさらに提供される。界面領域に少なくとも20%の空孔容積分率を有する合金が本発明によってさらに提供される。
他の実施形態では、触媒金属粒子の高い容積分率と共に、高い空孔容積分率を有する合金が本発明によって提供される。界面領域に少なくとも5%の空孔容積分率を有し、同時に界面領域に少なくとも30%の触媒金属粒子容積分率を有する合金が本発明によって提供される。界面領域に少なくとも10%の空孔容積分率を有し、同時に界面領域に少なくとも35%の触媒金属粒子容積分率を有する合金が本発明によって提供される。界面領域に少なくとも15%の空孔容積分率を有し、同時に界面領域に少なくとも40%の触媒金属粒子容積分率を有する合金が本発明によって提供される。界面領域に少なくとも20%の空孔容積分率を有し、同時に界面領域に少なくとも50%の触媒金属粒子容積分率を有する合金が本発明によって提供される。
熱的および/または電気化学的な充電および放電過程に関与する化学成分は、B0合金に比べてB1およびB12合金の支持体マトリックス内およびマトリックスを通過するのにより高い移動度を有することが予測される。より高密度の触媒粒子はより強い触媒効果を提供する。結果として、ベースB0合金に比べて、B1およびB12合金はより低い移動抵抗およびより速い充電および放電の反応速度が予測される。類似の効果は、加工パラメータの制御または形成後のエッチングステップを加えることによって得られる類似の微小構造調整によって生じる。
(実施例5)
この実施例では、本発明による微小構造を有する、水素吸蔵合金の一実施形態を含む負極を有する水素化ニッケル金属電池の性能が説明される。水素化ニッケル金属単2電池を作製しHEV出力試験規格に従って試験した。単2は、実施例1のB12合金を含むペースト化した負極と、水酸化ニッケル正極(AP64NH1、ニッケル発泡基板(Inco500、500g/m坪量)上に、埋め込まれたNi繊維を有する水酸化ニッケル粒子(例えば、米国特許第6,177,213号参照)を含む)と、KOH電解質と、フッ化ポリプロピレン/ポリエチレンセパレーター(Freudenberg FS2225)とを含んだ。電池の比出力はHEV出力試験を用いて35℃において100%、80%、50%、20%のSOC値で測定した。各充電状態(SOC)は最初に100%SOCまで充電し、次いでC放電率で必要なSOCまで放電することによって到達した。(C放電率は電池を1時間で完全に放電するのに必要な放電率である。例えば、4A−h電池のC放電率は4Aである。)C放電率での放電がを終了する途中で、各SOCでの最初の電圧および電流を得るためにC放電率での電池の電圧を各SOCで測定した。SOCからさらに放電する際の比出力を求めるために最初の電圧および電流値を引き続き用いた。この電池の各SOCからのさらなる放電は、電池に10C電流パルスを10秒加えることによって行われた。パルスの間、パルスの開始に続いて2秒、6秒、10秒後に電圧値を測定した。これらの各時間の比出力を計算した。比出力計算は、抵抗を得るため、ならびに開放回路電圧(Voc)および電池の最大電流(Imax)を求めるために最初の電圧と電流と比べたΔV/ΔIの計算を含んだ。この実施例で報告された比出力は積(1/2Voc)X(1/2Imax)およびこれを単位質量に換算することによって計算した。
100%、80%、50%、20%のSOC値でのHEV出力試験結果は本明細書の図2に示されている。比出力データは10C放電パルスの開始に続いて2秒、および10秒後の時点で示される。本発明のB12合金を負極活性材料として含むUHP 単2電池設計についての結果が示される。データは、2秒後のデータにおける約2000W/kgの最大出力、および10秒後のデータにおける1600W/kgを有する高い比出力を示している。電池の比出力は実施例1のベース合金B0を含んだ対照電池の比出力よりも10%以上高い。本発明のB1合金を含む類似の電池の類似の試験は、2秒、10Cパルスを用いて約1900W/kgの最大出力を示す。
(実施例6)
この実施例では、本発明による微小構造を有する合金を含む電池の電荷移動抵抗および二重層キャパシタンスが、典型的な市販合金を含む類似の電池と比較される。標準の市販の単2電池を比較に使用した。電池設計は水素吸蔵合金を含む負極と、水酸化ニッケル正極と、セパレーターと、およびKOH電解質とを含んだ。2個の電池を作製した。1個の電池では、負極は水素貯蔵材料として実施例1のB合金を含み、他の電池には、実施例1のB1合金を使用した。負極に使用された水素吸蔵合金以外は、電池は同一であった。したがって、電池性能におけるいかなる相違も水素吸蔵合金の選択に帰する。
2種の電池の電荷移動抵抗(RCT)および二重層キャパシタンス(Cdl)は複素インピーダンス測定によって得た。測定は23℃で行った。測定の結果は本明細書の図3に示されており、複素インピーダンスの実数部Z’の関数として複素インピーダンスの虚数部Z”を示している。「B1」と記した曲線は本発明のB1合金を含む電池に相当し、「B」と記した曲線は市販のB合金を含む電池を指す。各曲線は半円形部分と上方向に傾斜する部分を含む。各曲線のZ’軸との切片は各電池のオーム抵抗を与える。電荷移動抵抗は各曲線の半円部分の直径から求めることができ、各曲線の上方向に傾斜する部分の傾斜は拡散抵抗に関係する。二重層キャパシタンスは、標準的な電気化学平衡式を使用して各曲線の半円部分の分析から得ることができる。各電池の複素インピーダンスから計算したTCTとCdlの値を図3の挿入表に示す。
本発明のB1合金は、従来のB合金に比べて、電池設計に、減少した電荷移動抵抗(0.14Ω・g対0.23Ω・g)および増加した二重キャパシタンス(0.32F/g対0.23F/g)をもたらす。RCTの減少した値は、B1合金を含む電極での電荷移動反応がB合金を含む電極での電荷移動反応よりも速い反応速度で進行することを示している。より速い反応速度を示すことはより好ましい電気化学反応であり、触媒金属粒子を取り囲む支持体マトリックスのより高い多孔性および/または触媒金属粒子のより高い密度と一貫している。二重層キャパシタンスは電気化学反応が起きる表面積を示すものである。B1合金に基づく電池のより大きなCdl値は、電気化学反応部位の近傍におけるより高い多孔性と一貫している。図3のインピーダンスデータは、本発明による微小構造調整が、電気化学反応に関与する化学成分のより大きな移動度により、反応速度の改善をもたらすことを示している。
(実施例7)
この実施例では、微小構造を本発明によって調製した合金の、2つの実施形態の低温特性を記述する。UHP単2電池を作製し、−30℃でのHEV出力試験で試験した。単2は、正極と、上述の実施例5に述べたセパレーターと、KOH電解質と、上述の実施例1に述べたB12水素吸蔵合金を含む負極とを含んだ。電池の比出力は−30℃いおいて様々な電荷状態でHEV出力試験で求めた。HEV出力試験規格は、(2/3Voc)と(1/3Imax)の積が比出力計算に使用されること以外、上述の実施例5に説明されている。
HEV出力試験の結果は本明細書の図4にまとめた。電池は−30℃の温度において様々な異なる充電状態で、10秒間の10C放電パルスの開始から6秒後の比出力が示されている。また、HEV出力試験は、負極にB1およびB合金を含む比較電池でも行った。B12またはB1合金を含む負極を有する電池は、従来のB合金を含む負極を有する電池よりも高い比出力を示した。本発明のB1およびB12合金を含む電池と従来のB合金を含む電池間の比出力の相違は、電池の充電状態が減少するにつれて漸進的にまた顕著に大きくなった。従来のB合金に基づく電池の比出力は充電状態が減少すると急速に減少した。50%SOCで、B合金に基づく電池は−30℃で殆ど出力を示さなかった。これに比して、B12合金に基づく電池は100%SOCと50%SOCの間で約30%の比出力減少(約295W/kgから約200W/kgへ)しか示さず、B1合金に基づく電池は100%SOCと50%SOCの間で約50%の減少しか示さなかった。50%SOCおよび−30℃で、B1およびB12合金に基づく電池は、従来のB合金に基づく電池よりも2倍以上大きな比出力を示した。
本発明の合金に基づく電池の低温での改善された比出力は、今まで到達できなかった作動環境で水素化ニッケル金属電池を実際に使用可能にするので注目に値する。HEVのための設計配慮において、望ましい回生制動特性を得るためには、電池は100%未満の充電状態が好ましいことが明らかである。例えば、現在の市販HEVは、50%の充電状態で電池を使用している。図4に示されたデータは、低温で使用するには、すべての充電状態、特に80%またはそれ未満の充電状態、最も特別には50%またはそれ未満の充電状態で、本発明の合金に基づく電池の優位性を明らかに示している。また、本発明の水素吸蔵合金を含む電池の優れた低温特性は、これらの電池が従来型車両の始動電池としても非常に適していることも示している。
(実施例8)
この実施例では、本発明のB1合金および従来のB合金に基づく電池の−30℃での比出力が比較される。標準の市販単2電池設計を比較に使用した。電池設計は水素吸蔵合金を含む負極と、水酸化ニッケル正極と、KOH電解質とを含んだ。3種類の電池を作製した。2種類の電池には、負極は水素貯蔵材料として実施例1のB1合金を含み、第3の電池には実施例1の従来のB合金を使用した。負極に使用した水素吸蔵合金を除いて、電池は同一であった。各電池の比出力を−30℃において様々な充電状態でHEV出力試験で測定した。HEV出力試験手順は上述の実施例5に説明されている。
この実施例の電池の−30℃における、10秒間の10C放電パルスの開始に続く2秒および10秒後のHEV出力試験がそれぞれ図5Aおよび5Bに示されている。各秒時点で、本発明のB1合金に基づく2種類の電池は殆ど同様に作動した。2秒後の結果において、本発明のB1合金に基づく電池は、100%SOCで、従来のB合金に基づく電池よりも25%以上高い比出力(約325W/kg(B1)対258W/kg(B))を示した。80%SOCで、従来のB合金に基づく電池は殆ど出力を示さなかった。それに比して、本発明のB1合金に基づく電池は80%SOCで約250W/kgの比出力を示した。−30℃での10秒後の結果において、従来のB合金に基づく電池は、いかなるSOCでも殆ど出力を示さず、これらの試験条件下での作動には完全に適していなかった。これに比べて、B1合金に基づく電池は100%SOCで約240W/kg、80%SOCで約190W/kgの比出力を示した。
図5Aおよび5Bに示した試験結果は、本発明のB1合金に基づく電池の低温操作条件下での優位性をさらに示す。優位性は、特に低温で長秒間の遅延および高速放電条件下で明瞭である。改善された長秒間の遅延性能は、本発明の合金に基づく電池が、電流引き出し開始のかなり後で高い出力を示し、したがって、長い電流パルスを用いる用途に適していることを示す。電流パルスの持続期間が増加するとその出力が急速に減少する従来合金に基づく電池とは対照的に、本発明の合金に基づく電池は電流パルスの開始に引き続いて長時間高出力を提供し続ける。
(実施例9)
この実施例では、本発明のB1合金に基づく電池のさらに低温での比出力特性が示される。本発明のB1合金の組成は実施例1に示される。3種類の電池を作製した。電池は、Freudenberg FS2225セパレーターと、KOH電解質と、AP64NH1正極材料および実施例5に述べたInco500ニッケル発泡体基板とを含んだ単2電池である。また、電池は、活性材料として本発明のB1合金を用いるペースト化した負極も含んだ。エッチングした(60%および45%アルカリ・エッチング)B1合金を用いる2種類の電池、およびエッチングしないB1合金を用いる1種類の電池をこの実施例のために作製した。−30℃において様々な充電状態での各電池の比出力を、HEV出力試験で測定した。HEV出力試験手順は上の実施例5に述べてある。
−30℃で、10秒間の10C放電パルスの開始に続く2秒後および10秒後の時間遅延でのこの実施例の電池のHEV出力試験結果はそれぞれ図6Aおよび6Bに示されている。各秒間遅延で、本発明のB1合金のエッチングされたものを含む電池は、本発明のB1合金のエッチングしないものを含む電池よりもわずかに高い比出力を示した。本発明のB1合金のエッチングされたものを含む100%SOCの電池は、−30℃で、10Cパルス開始の2秒後に約385W/kg、および10Cパルス開始の10秒後に約260W/kgの比出力を示した。これに比べて、本発明のB1合金のエッチングされないものを含む電池は、相当するそれぞれの条件で約365W/kgおよび約245W/kgを示した。すべての電池はSOCが低くなると、同様な漸進的な比出力の減少を示した。すべての電池は50%SOCで−30℃において優れた比出力を示した(エッチングしたもので、10Cパルス2秒後、および10Cパルス10秒後でそれぞれ約260W/kgおよび145W/kgを示し、エッチングしないものはこれよりわずかに少ない)。
(実施例10)
この実施例では、以上に追加して本発明のB12合金に基づく電池のさらに低温での比出力特性を示す。本発明のB12合金の組成物は実施例1に示される。この実施例のために3種類の単2電池を作製した。電池は、実施例5に述べたFreudenberg FS2225セパレーターと、KOH電解質と、本発明のB12合金をエッチングしないものを含む圧縮した負極とを含んだ。2種類の電池は、実施例5に述べたAP64NH1正極材料を含み、1種類の電池はAP64.S5正極材料(水酸化ニッケル中に埋め込まれた球状のニッケル金属を含む)を含んだ。−30℃において様々な充電状態での各電池の比出力を、HEV出力試験で測定した。HEV出力試験手順は上の実施例5に述べてある。
−30℃で、10秒間の10C放電パルスの開始2秒後でのこの実施例の電池のHEV出力試験結果は図7に示されている。結果は、AP64NH1正極材料を含んだ電池よりも、AP64.S5正極材料を含んだ電池は100%SOC(約360W/kg対約350W/kg)でわずかに高い比出力を示し、また、SOCを減少させると、この電池はより緩やかな比出力の減少度を示したことを示している。この実施例の3種類の電池はすべて50%SOCで−30℃の温度で約200W/kgまたはそれ以上の比出力を示し、AP64.S5正極材料を含んだ電池は50%SOCで−30℃において約250W/kgの比出力を示した。AP64.S5正極材料を含んだ電池は20%SOCで−30℃においてかなりの比出力(約160W/kg)を示し続けた。
(実施例11)
この実施例では、本発明のB1合金を含む圧縮電極の電荷移動抵抗および二重層キャパシタンスが、従来のB0合金を含む類似電極の電荷移動抵抗および二重層キャパシタンスと3種類の異なる温度で比較される。B1およびB0合金の組成物は上の実施例1に示されている。
2種類の電極の電荷移動抵抗(RCT)および二重層キャパシタンス(Cdl)を複素インピーダンス測定によって得た。インピーダンス測定は、水銀/酸化水銀参照電極と、水酸化ニッケル対電極と、B0またはB1合金を含む実働電極と、30%のKOH電解質とを含む電気化学電池を用いて行った。インピーダンス測定は、23℃、−5℃、および−30℃で行った。測定の結果は図8に示されており、これは複素インピーダンスの実数部(ZRe)の関数としての複素インピーダンスの虚数部(ZIm)を示す。3種類の異なる温度で両方の電極につき行った測定が図8に含まれ、記されている。塗りつぶした四角い記号はB0合金で得られた結果に相当し、塗りつぶした三角の記号はB1合金で得られた結果に相当する。滑らかな曲線が各測定温度での各電池のデータ点を連結する。曲線の外観は全体的に半円形であり、実施例6で述べたように標準の電気化学平衡式を用いて解析して、各温度での各電極の電荷移動抵抗(RCT)および二重層キャパシタンス(Cdl)を得ることができる。解析の結果は図8の挿入表にまとめてある。Wmaxと記した欄はインピーダンス測定中に得られた半円形曲線の最大値にあたる周波数に相当する。RCT、Cdl、およびWmaxは、それぞれRct、Cdl、Wmaxとして図8にリストしてある。
結果は、B1合金を含む電極の電荷移動抵抗が、B0合金を含む電極の電荷移動抵抗よりも3種類の測定温度すべてで著しく低かったことを示している。減少の大きさは−30℃で最大であった。B1合金のより低い電荷移動抵抗はより速い電極の反応速度を示し、本発明者達が、本発明の合金の改善された性能は、本発明による微小構造調整によって周囲の支持体マトリックスの増加した多孔性および/または増加した触媒金属粒子の密度からもたらされた、金属触媒粒子の近傍における化学成分のより大きな移動度によるものとした上述の仮説を裏付ける。また、結果は、本発明のB1合金を含む電極の二重層キャパシタンスは3種類の温度すべてにおいて従来のB0合金を含む電極よりも大きいことを示している。より高い二重層キャパシタンスは、B1合金を含む電極について電気化学反応表面積がより大きいことを示している。この実施例の複素数インピーダンスの結果は、本発明のB1合金を含む負極を含む電池でのより速い放電反応速度およびより高い比出力と一貫している。
(実施例12)
この実施例では、従来のB0合金、本発明のB1および本発明のB12合金を含む電極の電荷移動抵抗(RCT)および二重層キャパシタンス(Cdl)が3つの異なる温度で比較される。B0、B1、B12合金の組成物は実施例1に示してある。この実施例のために、3種類の合金各々を含む1種類の圧縮電極を調製した。同じ調製方法をこの実施例の3種類の電極に用いた。
3種類の電極の電荷移動抵抗(RCT)および二重層キャパシタンス(Cdl)を複素インピーダンス測定によって得た。インピーダンス測定は、水銀/酸化水銀参照電極と、水酸化ニッケル対電極と、B0、B1、またはB12合金の1種を含む実働電極と、30%のKOH電解質とを含む電気化学電池を用いて行った。インピーダンス測定は、23℃、−5℃、および−30℃で行った。測定の結果は図9に示されており、これは複素インピーダンスの実数部(ZRe)の関数としての複素インピーダンスの虚数部(ZIm)を示す。3つの異なる温度で両方の電極に行った測定が図9に含まれ、記されている。塗りつぶした四角い記号はB0合金で得られた結果に相当し、塗りつぶした三角の記号はB1合金で得られた結果に相当し、塗りつぶした丸い記号はB12合金で得られた結果に相当する。滑らかな曲線が各測定温度での各電池のデータ点を連結する。曲線の外観は全体的に半円形であり、実施例6で述べたように標準の電気化学平衡式を用いて解析して、各温度での各電極の電荷移動抵抗(RCT)および二重層キャパシタンス(Cdl)を得ることができる。解析の結果は図8の挿入表にまとめてある。Wmaxと記した欄はインピーダンス測定中に得られた半円形曲線の最大値における周波数に相当する。RCT、Cdl、およびWmaxは、それぞれRct、Cdl、Wmaxとして図9にリストしてある。
結果は、本発明のB1およびB12合金を含む電極の電荷移動抵抗が、従来のB0合金を含む電極の電荷移動抵抗よりも3つの測定温度すべてで顕著に低かったことを示している。減少の大きさは−30℃で最大であった。B1およびB12合金のより低い電荷移動抵抗はより速い電極の反応速度を示し、本発明者達が、本発明の合金の改善された性能は、本発明による微小構造調整によって周囲の支持マトリックスの増加した多孔性および/または増加した触媒金属粒子の密度からもたらされた金属触媒粒子の近傍における化学成分のより大きな移動度によるものとした上述の仮説を裏づけている。また、結果は、本発明のB1およびB12合金を含む電極の二重層キャパシタンスは3つの温度すべてで、従来のB0合金を含む電極よりも大きいことを示している。より高い二重層キャパシタンスは、B1およびB12合金を含む電極について電気化学反応表面積がより大きいことを示している。この実施例の複素インピーダンスの結果は、本発明のB1およびB12合金を含む負極を含む電池でのより速い放電反応速度およびより高い比出力と矛盾しない。
(実施例13)
この実施例では、従来のB0合金、本発明のB1合金、および本発明のB12合金を含む電極の分極特性が3種類の異なる温度で比較される。B0、B1、B12合金の組成は実施例1に示してある。この実施例のために、3種類の合金各々を含む1種類の圧縮電極を調製した。この実施例で使用した電極は実施例12で検討したものと同じ電極である。
3種類の電極の各々の分極は23℃、−5℃、および−30℃で測定した。分極は、最初に電極に80%SOC(充電状態)で10秒の放電電流パルスを加えたときの、電極の過電圧として測定した。分極測定は、水銀/酸化水銀参照電極と、水酸化ニッケル対電極と、B0、B1、またはB12合金を含む実働電極と、30%のKOH電解質とを含む電気化学電池を用いて行った。過電圧は、印加電流によって生ずる平衡電位からの電極の変位の測定値である。所与の印加電流によって生ずる過電圧が低いことは、一般に特定の電気化学反応がより容易であること(例えば、より速い反応速度、より低いエネルギー散逸)を示す。各測定温度での、3種類の電極各々の放電電流の関数としての過電圧は、図10に示されている。データ点は記号「x」で表される。過電圧は、各合金で作った電極の温度が低下すると増加するが、増加はB0電極で最も明らかである。過電圧の増加は、低温での電極性能の劣化を意味し、B0電極の劣化はB1およびB12電極よりもはるかに大きい。B1およびB12電極の低温での劣化を防止したことが、上でいくつかの実施例において説明したB1およびB12合金を含む負極を含む電池の改善された低温特性の原因である。
多孔性を説明するButler−Volmer式の修正された形を用いて、電流による過電圧の変化の解析を行った。従来は、電極過電圧のButler−Volmer解析は平滑な電極近似に基づくものであり、その場合は電気化学反応性の部位が直接電極表面にあるので、電極は反応に対して移動度の障壁とならない。しかし、本発明の電極においては表面は平滑ではなく多孔質であり、上述のように移動度に対する障壁となる。したがって、過電圧に対する多孔性の効果を含ませることが望ましい。この実施例の過電圧データの解析に適用するようにしたButler−Volmer式の修正された形は以下の通りである。
Figure 0003946234
式中、ηは過電圧であり、bはTafelの定数(常用対数から自然対数へ変換したことを考慮にいれたために2.3で除した)であり、iは交換電流密度であり、iは印加した電流であり、Rは孔の抵抗である。iRの項は過電圧への孔抵抗の寄与を記述する。
の値は、特定の電流における過電圧への多孔性の影響を反映する。Rの値は、電極材料の微小構造、および、反応を起こすために微小構造に浸透しなければならない電気化学的な化学成分の特性によって決定される。開放した多孔質微小構造は、電極表面および/または反応性触媒部位、またはその近傍の化学成分の移動度、または電極を通る導電性イオン化学成分の移動度を妨げない。結果として、多孔質微小構造は孔抵抗の減少を導く。高密度の微小構造、特に表面から離れた電気化学的反応性部位を有するものは、移動度に大きな障壁を与え、空孔による抵抗の増大を導く。特定の微小構造では、孔抵抗は、反応を行うために微小構造に浸透しなければならない電気化学的な化学成分のサイズ、形状、電荷および他の特性に依存する。例えば、より小さな分子は、特定の微小構造についてより大きな分子よりも一般に高い移動度を示す。孔抵抗はいくつかの寄与要因の均衡を反映する。
図10に示した電流データの関数としての過電圧を、上の式を用いて適合させた。その結果は図10の実線曲線で示される。それらの適合は3種類の測定温度でのTafel定数値、交換電流密度、および各電極の孔抵抗を提供する。孔抵抗の結果はこの実施例では特に興味深いものであり、3種類の電極について以下の表3にまとめてある。
Figure 0003946234
23℃では、B0、B1、B12合金を含む3種類の電極の孔抵抗は類似している。孔抵抗の類似性は、23℃における3種類の電極の過電圧曲線の間の相違が比較的小さいことと一貫している。測定温度を低下させるとき、B1およびB12合金を含む電極の過電圧曲線は類似性を保つ。しかし、B0合金を含む電極の過電圧曲線はB1およびB12合金を含む電極の過電圧曲線から大きく離れる。具体的には、−5℃および−30℃で、B0電極の過電圧曲線はB1およびB12電極の過電圧曲線に比べてより高い過電圧に移動する。B0電極の過電圧の上方への移動はより高い電流レベルで特に明らかである。上方への移動は、−5℃および−30℃において、B1またはB12電極よりもB0電極で電気化学反応が起きにくいことを示す。表3に示した結果は、孔抵抗がB0電極での抑制された反応の寄与要因であることを示す。−5℃および−30℃の両方において、B0電極の孔抵抗はB1およびB12電極の孔抵抗よりもかなり大きい。より高い孔抵抗は、電気化学的に活性な化学成分にとってB0電極の触媒金属粒子に対してのより大きな移動障壁であり、ならびに電極の内部または通過する導電性イオン成分にとってより大きな移動障壁であることを示す。−5℃および−30℃におけるB1およびB12電極のより低い孔抵抗は、触媒金属粒子への電気化学的に活性な化学成分のより大きな接近性を示す。この実施例の結果は、本発明による微小構造調整が触媒金属粒子の周囲の支持材料の多孔性を増加させ、結果として、低温でより好ましい電気化学的活性が得られることを示す。
(実施例14)
この実施例では、本発明のB1合金を含む電池のサイクル寿命が、市販の水素吸蔵合金を含む4種類の類似の対照電池と比較される。標準的な市販の単2電池設計をこの実施例の比較に使用した。電池設計は水素吸蔵合金と、水酸化ニッケル正極と、セパレーターと、KOH電解質とを含んだ。5種類の電池をサイクル寿命比較に使用した。各電池は負極に異なる水素吸蔵合金を含んだが、それ以外には電池は同一構造であった。5種類の電池中、4種類の対照電池は、実施例1に述べたB合金の組成物に類似した市販の合金を含んだ。市販合金の各々は約12%のCoを含み、Cuを含まなかった。5番目の電池は負極に本発明のB1合金を含んだ。B1合金中に、Co含有量は約5%であり、3.4%のCuが含まれた。充電と放電の繰り返しサイクルの際に電池の能力の安定性を評価するために、各電池のサイクル寿命を試験した。各電池の充電はC/2の充電率で行い、充電停止の方法としてはΔVが負の値になる点を用いる。この方法の下で、3mVの電圧降下が検出されたときに充電を停止した。各電池の放電は、電池の電圧が0.9Vに降下するまでC/2の放電率で行った。この実施例の各サイクルは、1回の充電ステップおよび1回の放電ステップを含み、そして電池の能力がその最初の能力の70%未満に低下するまで繰り返した。
サイクル試験の結果は本明細書の図11に示される。試験は本発明のB1合金を用いた電池が少なくとも400サイクルまで安定した荷電容量を示したことを示している。B1合金に基づく電池の容量の安定性は、対照電池の安定性に比べてすぐれたものであった。サイクル結果は本発明による微小構造調整が少なくとも400サイクルまでサイクル寿命に有害な影響を与えなかったことを示している。
本発明は熱的および電気化学的水素貯蔵材料ならびにそれから作製された電極、電池、燃料電池等を提供し、微小構造調整によって特に低温での優れた出力を提供する。コスト低減は本出願のいくつかの実施形態において追加の利益であり、本発明の微小構造調整元素は、変性されない合金組成物に存在する高価な元素をすべてまたは部分的に置換する。例えば、実施例1に示した本発明の合金のいくつかにおいて、Cu、Fe、Znなどの調製元素は、B0ベースの合金組成物などの変性されない合金組成物中に存在するCoの一部を置換する。Coは多くの変性されない合金組成物の中で最も高価な元素の1種であるので、これらの置換は本発明の合金にコスト的な利点を提供する。Coは一般に合金のサイクル寿命を改善するために合金組成物中に含まれている。しかし、上の実施例14で論じたように、本発明のいくつかの実施例は、優れた寿命サイクル特性を示しながら、変性された合金組成物中に、1種または複数種の本発明の配合物変性元素を含んで且つより少ない Coを含むことが可能であることを示す。
本明細書に記載した開示および説明は、例示のためであり、本発明の実施の限界を意図するものではない。この発明の多くの等価な態様、及びその予測可能な変種は、本発明の範囲内に含まれるものと考えられる。本発明の範囲を定義するのは、前述の開示と共に、、以下の請求項とそのすべての等価のものを含んだものである。
‘591特許に記載された先行技術の合金の微小構造を示す透過型電子顕微鏡写真である。 本発明のB1合金の微小構造を示す透過型電子顕微鏡写真である。 本発明のB12合金の微小構造を示す透過型電子顕微鏡写真である。 サンプルB、B1、B12合金の微小構造の比較図である。 負極活性材料として本発明のB12合金を含む単2電池の、35℃での充電状態を関数とする比出力の比較図である。 負極活性材料として本発明のB1および従来のB合金をそれぞれ含むC電池電池の、23℃での複素数インピーダンスをプロットした比較図である。 負極活性材料として本発明のB12合金を含む単2電池の、−30℃での充電状態を関数とする比出力の比較図である。 負極活性材料として本発明のB1(2種類)および従来のB合金を含む単2電池の、−30℃での充電状態を関数とする比出力の比較図である。 負極活性材料として本発明のB1(2種類)および従来のB合金を含む単2電池の、−30℃での充電状態を関数とする比出力の比較図である。 負極活性材料として、異なる程度にエッチングした本発明のB1合金を含む単2電池の、−30℃での充電状態を関数とする比出力の比較図である。 負極活性材料として、異なる程度にエッチングした本発明のB1合金を含む単2電池の、−30℃での充電状態を関数とする比出力の比較図である。 負極活性材料として本発明のB12合金、およびAP64NH1(2種類)またはAP64.S5の正極をそれぞれ含む単2電池の、−30℃での充電状態を関数とする比出力の比較図である。 本発明のB1および従来のB0合金を含む圧縮電極の、23℃、−5℃、−30℃での複数のインピーダンスをプロットした比較図である。 本発明のB1、本発明のB12、従来のB0合金を含む圧縮電極の、23℃、−5℃、−30℃での複素数インピーダンスをプロットした比較図である。 本発明のB1、本発明のB12、従来のB0合金を含む圧縮電極の、23℃、−5℃、−30℃での放電電流を関数とする過電流の比較図である。 負極活性材料として本発明のB1(開放四角)およびいくつかの従来の合金をそれぞれ含む単2電池のサイクル寿命特性の比較図である。

Claims (36)

  1. ベース合金から生成される水素吸蔵電極材料であって、
    前記水素吸蔵電極材料は、バルク領域と界面酸化物領域を有し、
    前記界面酸化物領域は支持体マトリックスと空孔によって支持された、前記ベース合金から生成される触媒金属粒子を含み、前記触媒金属粒子は約100Å未満の直径を有し、前記触媒金属粒子と前記空孔は前記界面酸化物領域全体に分布し、前記界面酸化物領域中の前記空孔の容積分率5%よりも大きく、かつ、
    前記水素吸蔵電極材料は、水素化金属電池の負極として用いた場合に、−30℃において50%充電状態でゼロより大きな比出力を有する水素化金属電池を提供する、
    水素吸蔵電極材料
  2. 前記触媒金属粒子が遷移金属を含む請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
  3. 前記触媒金属粒子がニッケルを含む請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
  4. 前記触媒金属粒子が銅をさらに含む請求項3に記載の水素吸蔵電極材料
  5. 前記触媒金属粒子が鉄、スズ、または亜鉛をさらに含む請求項3に記載の水素吸蔵電極材料
  6. 前記触媒金属粒子がニッケル−コバルト−銅合金を含む請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
  7. 前記触媒金属粒子が50Å未満の直径を有する請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
  8. 前記触媒金属粒子が30Å未満の直径を有する請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
  9. 前記界面領域中の前記触媒金属粒子の容積分率が30%よりも大きい請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
  10. 前記界面領域中の前記触媒金属粒子の容積分率が40%よりも大きい請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
  11. 前記界面領域中の前記触媒金属粒子の容積分率が50%よりも大きい請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
  12. 前記触媒金属粒子相互間の距離が、前記界面領域中で2〜300Åの範囲である請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
  13. 前記触媒金属粒子相互間の距離が、前記界面領域中で50〜100Åの範囲である請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
  14. 前記触媒金属粒子が実質的に独立構造型である請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
  15. 前記界面領域中の前記空孔の前記容積分率が10%より大きい請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
  16. 前記界面領域中の前記空孔の前記容積分率が15%より大きい請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
  17. 前記界面領域中の前記空孔の前記容積分率が20%より大きい請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
  18. 前記空孔が実質的に球状である請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
  19. 前記球状空孔の直径が約100Å未満である請求項18に記載の水素吸蔵電極材料
  20. 前記球状空孔の平均直径が前記触媒金属粒子の平均直径と実質的に同じである請求項18に記載の水素吸蔵電極材料
  21. 前記空孔がチャンネルである請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
  22. 前記チャンネルが10〜20Åの断面寸法を有する請求項21に記載の水素吸蔵電極材料
  23. 前記チャンネルが約20Åよりも大きい長手方向寸法を有する請求項21に記載の水素吸蔵電極材料
  24. 前記チャンネルが管状である請求項21に記載の水素吸蔵電極材料
  25. 前記チャンネルが小板状構造を有する請求項21に記載の水素吸蔵電極材料
  26. 前記バルク領域が希土類元素または合金を含む請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
  27. 前記バルク領域がランタンまたはミッシュメタルを含む請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
  28. 前記バルク領域が遷移金属元素または合金を含む請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
  29. 前記バルク領域がニッケル、チタン、マグネシウム、またはバナジウムを含む請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
  30. 前記バルク領域が銅、亜鉛、スズ、または鉄を含む請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
  31. 前記バルク領域が成分Aおよび成分Bを含み、前記成分Aおよび前記成分Bが、成分A対成分Bの原子比が約1:5である合金を形成し、前記成分Aが希土類元素を含み、前記成分Bが遷移金属を含む請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
  32. 成分Bが銅を含む請求項31に記載の水素吸蔵電極材料
  33. 銅対成分Aの原子比が少なくとも0.1:1である請求項32に記載の水素吸蔵電極材料
  34. 銅対成分Aの原子比が少なくとも0.2:1である請求項32に記載の水素吸蔵電極材料
  35. 銅対成分Aの原子比が少なくとも0.3:1である請求項32に記載の水素吸蔵電極材料
  36. 前記バルク領域が成分Aおよび成分Bを含み、前記成分Aおよび前記成分Bが、成分A対成分Bの原子比が約1:2である合金を形成し、前記成分Aが遷移金属を含み、前記成分Bが遷移金属を含む請求項1に記載の水素吸蔵電極材料
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