JP3924134B2 - 光情報記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ光を用いて情報の記録及び再生を行うことができるヒートモード型の光情報記録媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、レーザ光により1回限りの情報の記録が可能な光情報記録媒体(光ディスク)としては、追記型CD(いわゆるCD−R)やDVD−Rなどがあり、従来のCD(コンパクトディスク)の作製に比べて少量のCDを手頃な価格でしかも迅速に市場に供給できる利点を有しており、最近のパーソナルコンピュータなどの普及に伴ってその需要も増している。
【0003】
CD−R型の光情報記録媒体の代表的な構造は、厚みが約1.2mmの透明な円盤状基板上に有機色素からなる記録層、金などの金属からなる光反射層、更に樹脂製の保護層をこの順に積層したものである(例えば特開平6−150371号公報参照)。
【0004】
また、DVD−R型の光情報記録媒体は、2枚の円盤状基板(厚みが約0.6mm)を各情報記録面をそれぞれ内側に対向させて貼り合わせた構造を有し、記録情報量が多いという特徴を有する。
【0005】
そして、これら光情報記録媒体への情報の書き込み(記録)は、近赤外域のレーザ光(CD−Rでは通常780nm付近、DVD−Rでは635nm付近の波長のレーザ光)を照射することにより行われ、色素記録層の照射部分がその光を吸収して局所的に温度上昇し、物理的あるいは化学的な変化(例えばピットの生成)が生じて、その光学的特性を変えることにより情報が記録される。
【0006】
一方、情報の読み取り(再生)も、通常、記録用のレーザ光と同じ波長のレーザ光を照射することにより行われ、色素記録層の光学的特性が変化した部位(ピットの生成による記録部分)と変化しない部位(未記録部分)との反射率の違いを検出することにより情報が再生される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述のような光ディスクを製造する場合にスピンコート法が使用されている。このスピンコート法は、回転している基板の内周側に溶液を滴下し、遠心力により該溶液を外周側に流延させて塗膜を形成すると共に、その余分の溶液を基板の外周縁部から振り切り、その周囲に放出させ、次いで、塗膜から溶剤を乾燥除去する処理を含む薄膜形成法の一種である。
【0008】
光ディスクを安価に提供するために、コストを下げて製造することが重要である。そのためには、(1)安価な原料を使用すること、(2)製造の歩留まりを上げること、(3)製造スピードを上げること、が重要となってくる。その中で、(1)については、原料の価格をこれ以上安価にするのは困難な状況にあり、新しい方法を検討する必要がある。
【0009】
そこで、本出願人は、特開2000−285528号公報等に、スピンコート法による塗布処理において排出される廃液を再利用する方法を提案している。スピンコート法によって実際に基板上に塗布される量は、吐出量の約2割であり、残りが廃液だめに溜まる。この方法では、廃液だめに溜まった色素廃液を再利用することにより、製造コストを大幅に低減することができる。
【0010】
しかしながら、色素廃液は色素濃度が高く、色素や退色防止剤の析出物等の固形物を含んでいるので、色素廃液を利用した色素溶液(以下、「再生色素溶液」という)は濃度調整が難しく、再生色素溶液を実際に塗布液として使用した場合には、回収前の色素溶液と同じ条件で塗布しても、同じ厚さの塗布膜(光学濃度)を得ることができず、光学濃度を測定しながら塗布条件を最適化し直す必要があった。
【0011】
本発明は上記の問題点に鑑みなされたものであり、色素廃液を色素溶液として再利用しても記録再生特性の再現性を安定に確保でき、製造コストの低廉化を効率よく実現することができる光情報記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、基板上に、レーザ光の照射により情報を記録することができる色素記録層を有する光情報記録媒体の製造方法において、前記基板を回転させながら前記色素記録層を形成するための色素溶液を前記基板上に塗布する塗布工程と、前記塗布工程で排出された色素廃液を回収する回収工程と、前記回収工程で得られた色素廃液から固形物を除去すると共に該色素廃液を所定倍率で希釈して希釈廃液とする前処理工程と、前記前処理工程で得られた希釈廃液中の主要成分の含有量を定量する定量工程と、前記定量工程での定量結果に基づいて、主要成分の濃度が前記色素溶液中の主要成分の濃度と2桁以上の精度で一致するように、主要成分の濃度を調整して前記希釈廃液から再生色素溶液を得る濃度調整工程と、を含み、前記濃度調整工程で得られた再生色素溶液を、色素溶液として再利用することを特徴とする。
【0013】
請求項1の光情報記録媒体の製造方法では、色素溶液を基板上に塗布して色素記録層を形成する際に、排出される色素廃液を回収し、回収した色素廃液に所定の処理を施して再生色素溶液とした上で、色素溶液として再利用する。このため製造コストの低廉化を効率よく実現することができる。
【0014】
また、再生色素溶液中の色素及び退色防止剤の濃度を、色素溶液中の色素及び退色防止剤の濃度と2桁以上の精度で一致するように調整するので、再生色素溶液を用いて色素記録層を形成した際に、記録再生特性の再現性を確保することができる。
【0015】
特に、本発明では、回収した色素廃液を再生色素溶液として再利用するに際して、色素廃液から固形物を除去すると共に該色素廃液を所定倍率で希釈して希釈廃液とする前処理を行い、この前処理工程で得られた希釈廃液中の主要成分の含有量を定量し、得られた定量結果に基づいて主要成分の濃度が前記色素溶液中の主要成分の濃度と2桁以上の精度で一致するように、主要成分の濃度を調整するようにしたので、定量誤差が小さくなり、再生色素溶液を用いて色素記録層を形成した際に、記録再生特性の再現性を安定に確保することができる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、基板上に、レーザ光の照射により情報を記録することができる色素記録層を有する光情報記録媒体の製造方法において、前記基板を回転させながら前記色素記録層を形成するための色素溶液を前記基板上に塗布する塗布工程と、前記塗布工程で排出された色素廃液を回収する回収工程と、前記回収工程で得られた色素廃液から固形物を除去すると共に該色素廃液を所定倍率で希釈して希釈廃液とする前処理工程と、前記前処理工程で得られた希釈廃液中の主要成分の含有量を定量する第1の定量工程と、前記第1の定量工程での定量結果に基づいて、主要成分の濃度が前記色素溶液中の主要成分の濃度よりも0.01〜1質量%高い濃度となるように、主要成分の濃度を調整して前記希釈廃液から1次再生色素溶液を得る第1の濃度調整工程と、前記第1の濃度調整工程で得られた1次再生色素溶液中の主要成分の含有量を定量する第2の定量工程と、前記第2の定量工程での定量結果に基づいて、主要成分の濃度が前記色素溶液中の主要成分の濃度と2桁以上の精度で一致するように、主要成分の濃度を調整して前記希釈廃液から2次再生色素溶液を得る第2の濃度調整工程と、を含み、前記第2の濃度調整工程で得られた2次再生色素溶液を、色素溶液として再利用することを特徴とする。
【0017】
請求項2の光情報記録媒体の製造方法では、前処理工程で得られた希釈廃液中の主要成分の含有量を定量し、得られた定量結果に基づいて主要成分の濃度を調整して再生色素溶液とするのに際し、まず、前処理工程で得られた希釈廃液中の主要成分の含有量を定量し(第1の定量工程)、得られた定量結果に基づいて主要成分の濃度が前記色素溶液中の主要成分の濃度よりも0.01〜1質量%高い濃度となるように主要成分の濃度を調整して1次再生色素溶液とし(第1の濃度調整工程)、次に、第1の濃度調整工程で得られた1次再生色素溶液中の主要成分の含有量を定量し(第2の定量工程)、得られた定量結果に基づいて主要成分の濃度が前記色素溶液中の主要成分の濃度と2桁以上の精度で一致するように主要成分の濃度を調整している(第2の濃度調整工程)。
【0018】
このように、主要成分の濃度の調整を、粗調整と微調整の2段階で行うようにしたので、高い精度で濃度調整を行うことが容易になり、得られた2次再生色素溶液を用いて色素記録層を形成した際に、記録再生特性の再現性を安定に確保することができる。
【0019】
上記の製造方法の前処理工程においては、色素廃液を1.5〜3.0倍に希釈して希釈廃液とすることが好ましい。また、上記の製造方法の定量工程においては、主要成分として、少なくとも色素及び退色防止剤の含有量を定量することが好ましく、希釈廃液または1次再生色素溶液を10〜9000倍に希釈して、廃液中の主要成分の含有量を定量するのが好ましい。この場合、主要成分の定量を液体クロマトグラフィで行うのが好ましい。
【0020】
また、上記の製造方法において、前記前処理工程の前に、前記色素溶液の塗布の際に周囲に付着した色素を洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程で回収された色素廃液の色素濃度が前記回収工程で回収された前記色素溶液の色素濃度以上となった段階で、これら色素廃液を混合する混合工程と、を更に含むようにしてもよい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明に係る光情報記録媒体の製造方法を、色素記録層を備えた光ディスク(例えばCD−R)を製造するシステムに適用した実施の形態について説明する。
【0022】
本実施の形態に係る製造システム10は、図1に示すように、例えば射出成形、圧縮成形又は射出圧縮成形によって基板を作製する2つの成形設備(第1及び第2の成形設備12A及び12B)と、基板の一主面上に色素塗布液を塗布して乾燥させることにより、該基板上に色素記録層を形成する塗布設備14と、基板の色素記録層上に光反射層を例えばスパッタリングにより形成し、その後、光反射層上にUV硬化液を塗布した後、UV照射して前記光反射層上に保護層を形成する後処理設備16とを有して構成されている。
【0023】
第1及び第2の成形設備12A及び12Bは、ポリカーボネートなどの樹脂材料を射出成形、圧縮成形又は射出圧縮成形して、一主面にトラッキング用溝又はアドレス信号等の情報を表す凹凸(グルーブ)が形成された基板を作製する成形機20と、該成形機20から取り出された基板を冷却する冷却部22と、冷却後の基板を段積みして保管するためのスタックポール24が複数本設置された集積部26(スタックポール回転台)とを有する。
【0024】
塗布設備14は、3つの処理部30、32及び34から構成され、第1の処理部30には、前記第1及び第2の成形設備12A及び12Bから搬送されたスタックポール24を収容するためのスタックポール収容部40と、該スタックポール収容部40に収容されたスタックポール24から1枚ずつ基板を取り出して次工程に搬送する第1の搬送機構42と、該第1の搬送機構42によって搬送された1枚の基板に対して静電気の除去を行う静電ブロー機構44とを有する。
【0025】
第2の処理部32は、第1の処理部30において静電ブロー処理を終えた基板を次工程に順次搬送する第2の搬送機構46と、該第2の搬送機構46によって搬送された複数の基板に対してそれぞれ色素塗布液を塗布する色素塗布機構48と、色素塗布処理を終えた基板を1枚ずつ次工程に搬送する第3の搬送機構50とを有する。この色素塗布機構48は6つのスピンコート装置52を有して構成されている。
【0026】
第3の処理部34は、前記第3の搬送機構50にて搬送された1枚の基板の裏面を洗浄する裏面洗浄機構54と、裏面洗浄を終えた基板を次工程に搬送する第4の搬送機構56と、該第4の搬送機構56によって搬送された基板に対してロット番号等の刻印を行う番号付与機構58と、ロット番号等の刻印を終えた基板を次工程に搬送する第5の搬送機構60と、該第5の搬送機構60によって搬送された基板に対して欠陥の有無並びに色素記録層の膜厚の検査を行う検査機構62と、該検査機構62での検査結果に応じて基板を正常品用のスタックポール64あるいは不良品用(NG用)のスタックポール66に選別する選別機構68とを有する。
【0027】
第1の処理部30と第2の処理部32との間に第1の仕切板70が設置され、第2の処理部32と第3の処理部34にも同様の第2の仕切板72が設置されている。第1の仕切板70の下部には、第2の搬送機構46による基板の搬送経路を塞がない程度の開口(図示せず)が形成され、第2の仕切板72の下部には、第3の搬送機構50による基板の搬送経路を塞がない程度の開口(図示せず)が形成されている。
【0028】
後処理設備16は、塗布設備14から搬送された正常品用のスタックポール64を収容するためのスタックポール収容部80と、該スタックポール収容部80に収容されたスタックポール64から1枚ずつ基板を取り出して次工程に搬送する第6の搬送機構82と、該第6の搬送機構82によって搬送された1枚の基板に対して静電気の除去を行う第1の静電ブロー機構84と、静電ブロー処理を終えた基板を次工程に順次搬送する第7の搬送機構86と、該第7の搬送機構86によって搬送された基板の一主面に光反射層をスパッタリングにて形成するスパッタ機構88と、光反射層のスパッタリングを終えた基板を次工程に順次搬送する第8の搬送機構90と、該第8の搬送機構90によって搬送された基板の周縁(エッジ部分)を洗浄するエッジ洗浄機構92とを有する。
【0029】
また、この後処理設備16は、エッジ洗浄を終えた基板に対して静電気の除去を行う第2の静電ブロー機構94と、静電ブロー処理を終えた基板の一主面に対してUV硬化液を塗布するUV硬化液塗布機構96と、UV硬化液の塗布を終えた基板を高速に回転させて基板上のUV硬化液の塗布厚を均一にするスピン機構98と、UV硬化液の塗布及びスピン処理を終えた基板に対して紫外線を照射することによりUV硬化液を硬化させて基板の一主面に保護層を形成するUV照射機構100と、前記基板を第2の静電ブロー機構94、UV硬化液塗布機構96、スピン機構98及びUV照射機構100にそれぞれ搬送する第9の搬送機構102と、UV照射された基板を次工程に搬送する第10の搬送機構104と、該第10の搬送機構104によって搬送された基板に対して塗布面と保護層面の欠陥を検査するための欠陥検査機構106と、基板に形成されたグルーブによる信号特性を検査するための特性検査機構108と、これら欠陥検査機構106及び特性検査機構108での検査結果に応じて基板を正常品用のスタックポール110あるいはNG用のスタックポール112に選別する選別機構114とを有する。
【0030】
スピンコート装置52は、図2及び図3に示すように、塗布液付与装置400、スピナーヘッド装置402及び飛散防止壁404を有して構成されている。塗布液付与装置400は、塗布液が充填された加圧タンク(図示せず)と、該加圧タンクからノズル406に引き回されたパイプ(図示せず)と、ノズル406から吐出される塗布液の量を調整するための吐出量調整バルブ408とを有し、塗布液は前記ノズル406を通してその所定量が基板202の表面上に滴下されるようになっている。この塗布液付与装置400は、ノズル406を下方に向けて支持する支持板410と該支持板410を水平方向に旋回させるモータ412とを有するハンドリング機構414によって、待機位置から基板202の上方の位置に旋回移動できるように構成されている。
【0031】
スピナーヘッド装置402は、前記塗布液付与装置400の下方に配置されており、着脱可能な固定具420により、基板202が水平に保持されると共に、駆動モータ(図示せず)により軸回転が可能とされている。
【0032】
スピナーヘッド装置402により水平に保持された状態で回転している基板202上に、上記の塗布液付与装置400のノズル406から滴下した塗布液は、基板202の表面上を外周側に流延する。そして、余分の塗布液は基板202の外周縁部で振り切られ、その外側に放出され、次いで塗膜が乾燥されることにより、基板202の表面上に塗膜(色素記録層204)が形成される。
【0033】
飛散防止壁404は、基板202の外周縁部から外側に放出された余分の塗布液が周辺に飛散するのを防止するために設けられており、上部に開口422が形成されるようにスピナーヘッド装置402の周囲に配置されている。飛散防止壁404を介して集められた余分の塗布液、即ち、色素廃液はドレイン424を通して回収容器450に回収されるようになっている。色素廃液の回収後の処理については後で詳述する。
【0034】
また、第2の処理部32(図1参照)における各スピンコート装置52の局所排気は、前記飛散防止壁404の上方に形成された開口422から取り入れた空気を基板202の表面上に流通させた後、各スピナーヘッド装置402の下方に取り付けられた排気管426を通じて排気されるようになっている。このときの排気風速は1m/s以下に設定している。
【0035】
次に、この製造システム10によって光ディスクDを製造する過程について図4(A)〜(C)、図5(A)及び(B)の工程図を参照しながら説明する。
【0036】
まず、第1及び第2の成形設備12A及び12Bにおける成形機20において、ポリカーボネートなどの樹脂材料が射出成形、圧縮成形又は射出圧縮成形されて、図4(A)に示すように、一主面にトラッキング用溝又はアドレス信号等の情報を表す凹凸(グルーブ)200が形成された基板202が作製される。
【0037】
前記基板202の材料としては、例えばポリカーボネート、ポリメタルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、アモルファスポリオレフィン及びポリエステルなどを挙げることができ、所望によりそれらを併用してもよい。上記の材料の中では、耐湿性、寸法安定性及び価格などの点からポリカーボネートが好ましい。また、グルーブ200の深さは、0.01〜0.3μmの範囲であることが好ましく、その半値幅は、0.2〜0.9μmの範囲であることが好ましい。
【0038】
成形機20から取り出された基板202は、後段の冷却部22において冷却された後、一主面が下側に向けられてスタックポール24に積載される。スタックポール24に所定枚数の基板202が積載された段階で、スタックポール24はこの成形設備12A及び12Bから取り出されて、次の塗布設備14に搬送され、該塗布設備14におけるスタックポール収容部40に収容される。この搬送は、台車で行ってもよいし、自走式の自動搬送装置で行うようにしてもよい。基板202の保存中におけるクリーン度は、クラス20万以下であり、好ましくはクラス10万以下、更に好ましくはクラス5万以下である。また、基板202の保存中における温度変動は±15℃の範囲であり、好ましくは±10℃の範囲、更に好ましくは±5℃の範囲である。
【0039】
スタックポール24がスタックポール収容部40に収容された段階で、第1の搬送機構42が動作し、スタックポール24から1枚ずつ基板202を取り出して、後段の静電ブロー機構44に搬送する。静電ブロー機構44に搬送された基板202は、該静電ブロー機構44において静電気が除去された後、第2の搬送機構46を介して次の色素塗布機構48に搬送され、6つのスピンコート装置52のうち、いずれか1つのスピンコート装置52に投入される。スピンコート装置52に投入された基板202は、その一主面上に色素塗布液が塗布された後、高速に回転されて塗布液の厚みが均一にされた後、乾燥処理が施される。これによって、図4(B)に示すように、基板202の一主面上に色素記録層204が形成されることになる。
【0040】
即ち、スピンコート装置52に投入された基板202は、図2に示すスピナーヘッド装置402に装着され、固定具420により水平に保持される。次に、加圧式タンクから供給された塗布液は、吐出量調整バルブ408によって所定量が調整され、基板202上の内周側にノズル406を通して滴下される。
【0041】
このノズル406は、その先端面及びその先端面から1mm以上の範囲の外側又は内側、あるいは両方の壁面がフッ素化合物からなる表面を備えており、塗布液が付着し難い。付着した塗布液は、乾燥して色素等の成分が析出したり、析出物が堆積したりと、塗膜欠陥を引き起こす原因となるが、ノズル406は、表面に塗布液が付着し難いので、塗膜欠陥などの障害を伴うことなくスムーズに塗膜を形成させることができる。
【0042】
なお、塗布液としては色素を適当な溶剤に溶解した色素溶液が用いられる。塗布液中の色素の濃度は一般に0.01〜15質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜10質量%の範囲、特に好ましくは0.5〜5質量%の範囲、最も好ましくは0.5〜3質量%の範囲である。
【0043】
スピナーヘッド装置402は駆動モータによって高速回転が可能である。基板202上に滴下された塗布液は、スピナーヘッド装置402の回転により、基板202の表面上を外周方向に流延し、塗膜を形成しながら基板202の外周縁部に到達する。外周縁部に達した余分の塗布液は、更に遠心力により振り切られ、基板202の縁部の周囲に飛散する。飛散した余分の塗布液は飛散防止壁404に衝突し、更にその下方に設けられた受皿に集められた後、ドレイン424を通して回収される。塗膜の乾燥はその形成過程及び塗膜形成後に行われる。塗膜(色素記録層204)の厚みは、一般に20〜500nmの範囲であり、好ましくは50〜300nmの範囲に設けられる。
【0044】
色素記録層204に用いられる色素は特に限定されない。使用可能な色素の例としては、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、イミダゾキノキサリン系色素、ピリリウム系・チオピリリウム系色素、アズレニウム系色素、スクワリリウム系色素、Ni、Crなどの金属錯塩系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、インドフェノール系色素、インドアニリン系色素、トリフェニルメタン系色素、メロシアニン系色素、オキソノール系色素、アミニウム系・ジインモニウム系色素及びニトロソ化合物を挙げることができる。これらの色素のうちでは、シアニン系色素、ベンゾインドレニン色素系が好ましく、ベンゾインドレニン系色素がより好ましく、下記一般式(1)で示される色素が特に好ましい。
【0045】
【化1】
【0046】
一般式(1)のR1、R2は1価の置換基を示す。R1及びR2は、同一でもよく、また異なっていてもよい。1価の置換基としては、置換又は無置換のアルキル基が好ましい。
【0047】
アルキル基としては、炭素原子数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜12のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜4のアルキル基が特に好ましい。また、アルキル基は直鎖でも分岐でもよく、置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;メチルチオ基、メチルチオ基等のアルキルチオ基;アセチル基等のアシル基;ヒドロキシ基;エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;ビニル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基等が挙げられる。この中でも、エーテル結合またはエステル結合を含む置換アルキル基、及び無置換のアルキル基がより好ましく、無置換のアルキル基が特に好ましい。
【0048】
一般式(1)のR3は、1価の置換基を示す。1価の置換基としては、水素原子、炭素数1〜16のアルキル基、ハロゲン原子、アラルキル基が好ましく、メチル基、エチル基及びベンジル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0049】
一般式(1)のX2-は、2価の陰イオンを示し、下記一般式(2)で表される2価の陰イオンが特に好ましい。
【0050】
【化2】
【0051】
一般式(2)のR4〜R9は、それぞれ独立に1価の置換基を示す。1価の置換基としては、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アラルキル基が好ましく、水素原子、ヒドロキシ基、炭素原子数8以下のアルキル基がより好ましく、ヒドロキシ基及びメチル基が特に好ましい。
【0052】
色素記録層204を形成するための塗布剤の溶剤の例としては、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどのエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルムなどの塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミドなどのアミド;シクロヘキサンなどの炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール;2,2,3,3−テトラフロロ−1−プロパノールなどのフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などを挙げることができる。
【0053】
前記溶剤は使用する色素の溶解性を考慮して単独または二種以上を適宜併用することができる。好ましくは、2,2,3,3−テトラフロロ−1−プロパノールなどのフッ素系溶剤である。なお、塗布液中には、所望により退色防止剤や結合剤を添加してもよいし、更に酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、そして潤滑剤など各種の添加剤を、目的に応じて添加してもよい。
【0054】
退色防止剤の代表的な例としては、ニトロソ化合物、金属錯体、ジインモニウム塩、アミニウム塩を挙げることができる。これらの例は、例えば、特開平2−300288号、同3−224793号、及び同4−146189号等の各公報に記載されている。
【0055】
この実施の形態においては、下記一般式(3)で示される退色防止剤が好ましい。
【0056】
【化3】
【0057】
一般式(3)のR10、R11はそれぞれ独立に水素原子又は1価の置換基を表す。R10及びR11で示される置換基は、ハロゲン原子、又は炭素原子、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子が組み合わせてなる置換基であり、具体的には、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミド基、スルホンアミド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルコキシスルホニルアミノ基、ウレイド基、チオウレイド基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基、スルファモイル基、カルボキシ基(塩を含む)、スルホ基(塩を含む)を挙げることができる。これらは、更に、これらの置換基で置換されていてもよい。
【0058】
R10、R11としては、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のアミド基、炭素数1〜6のスルホンアミド基、炭素数1〜6のウレイド基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜6のカルバモイル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基が好ましく、アルキル基がより好ましく、原子炭素数4以下のアルキル基が特に好ましい。
【0059】
結合剤の例としては、ゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴムなどの天然有機高分子物質;およびポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物などの合成有機高分子を挙げることができる。
【0060】
結合剤を使用する場合に、結合剤の使用量は、色素100質量部に対して、一般に20質量部以下であり、好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
【0061】
色素記録層204の厚みは、一般に20〜500nmの範囲、好ましくは50〜300nmの範囲で設けられる。色素記録層204の膜厚変動は、正規の膜厚に対して±30%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは±20%の範囲、更に好ましくは±15%の範囲である。
【0062】
前記基板202上に色素溶液を塗布する際の色素吐出量は0.3cc〜5ccであることが好ましく、特に好ましくは0.5cc〜2ccである。色素溶液を塗布する際の温度は10℃〜50℃の範囲であればよいが、好ましくは15℃〜35℃の範囲、更に好ましくは20℃〜25℃の範囲である。この場合の温度変動は±8℃の範囲、好ましくは±4℃の範囲、更に好ましくは±2℃の範囲である。色素溶液を塗布する際の湿度は25%RH〜65%RHの範囲であり、好ましくは35%RH〜60%RHの範囲、更に好ましくは45%RH〜55%RHの範囲である。この場合の湿度変動は±8%RHの範囲であり、好ましくは±4%RHの範囲、更に好ましくは±2%RHの範囲である。
【0063】
なお、色素記録層202が設けられる側の基板表面には、平面性の改善、接着力の向上及び色素記録層204の変質防止などの目的で、下塗層が設けられてもよい。
【0064】
下塗層の材料としては例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトルエン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質、およびシランカップリング剤などの表面改質剤を挙げることができる。
【0065】
下塗層は、前記物質を適当な溶剤に溶解または分散して塗布液を調整した後、この塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコートなどの塗布法を利用して基板表面に塗布することにより形成することができる。下塗層の層厚は一般に0.005〜20μmの範囲、好ましくは0.01〜10μmの範囲に設けられる。
【0066】
色素記録層204が形成された基板202は、第3の搬送機構50を介して次の裏面洗浄機構54に搬送され、基板202の一主面の反対側の面(裏面)が洗浄される。その後、基板202は、第4の搬送機構56を介して次の番号付与機構58に搬送され、基板202の一主面又は裏面に対してロット番号等の刻印が行われる。
【0067】
その後、基板202は、第5の搬送機構60を介して次の検査機構62に搬送され、基板202の欠陥の有無や色素記録層204の膜厚の検査が行われる。この検査は、基板202の裏面から光を照射してその光の透過状態を例えばCCDカメラで画像処理することによって行われる。この検査機構62での検査結果は次の選別機構68に送られる。
【0068】
上述の検査処理を終えた基板202は、その検査結果に基づいて選別機構68によって正常品用のスタックポール64か、NG用のスタックポール66に搬送選別される。
【0069】
正常品用のスタックポール64に所定枚数の基板202が積載された段階で、正常品用のスタックポール64はこの塗布設備14から取り出されて、次の後処理設備16に搬送され、該後処理設備16のスタックポール収容部80に収容される。この搬送は、台車で行ってもよいし、自走式の自動搬送装置で行うようにしてもよい。
【0070】
正常品用のスタックポール64がスタックポール収容部80に収容された段階で、第6の搬送機構82が動作し、スタックポール64から1枚ずつ基板202を取り出して、後段の第1の静電ブロー機構84に搬送する。第1の静電ブロー機構84に搬送された基板202は、該第1の静電ブロー機構84において静電気が除去された後、第7の搬送機構86を介して次のスパッタ機構88に搬送される。スパッタ機構88に投入された基板202は、図4(C)に示すように、その一主面中、周縁部分(エッジ部分)206を除く全面に光反射層208がスパッタリングによって形成される。
【0071】
光反射層208は、反射率が70%以上ある反射膜であれば何でもよい。光反射層208の材料である光反射性物質としては、レーザ光に対する反射率が高い物質が使用され、その例としては、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Biなどの金属及び半金属あるいはステンレス鋼を挙げることができる。
【0072】
これらのうちで好ましいものは、Cr、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Al及びステンレス鋼である。これらの物質は単独で用いてもよいし、あるいは二種以上を組み合わせて用いてもよい。または合金として用いてもよい。特に好ましくはAu、Ag、もしくはその合金である。
【0073】
光反射層208は、例えば、前記光反射性物質を蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングすることにより記録層の上に形成することができる。反射層の層厚は、一般的には10〜800nmの範囲、好ましくは20〜500nmの範囲、更に好ましくは50〜300nmの範囲に設けられる。
【0074】
光反射層208が形成された基板202は、第8の搬送機構90を介して次のエッジ洗浄機構92に搬送され、図5(A)に示すように、基板202の一主面中、エッジ部分206が洗浄されて、該エッジ部分206に形成されていた色素記録層204が除去される。その後、基板202は、第9の搬送機構102を介して次の第2の静電ブロー機構94に搬送され、静電気が除去される。
【0075】
その後、基板202は、同じく前記第9の搬送機構102を介してUV硬化液塗布機構96に搬送され、基板202の一主面の一部分にUV硬化液が滴下される。その後、基板202は、同じく前記第9の搬送機構102を介して次のスピン機構98に搬送され、高速に回転されることにより、基板202上に滴下されたUV硬化液の塗布厚が基板全面において均一にされる。
【0076】
この実施の形態においては、前記光反射層の成膜後から前記UV硬化液の塗布までの時間が2秒以上、5分以内となるように時間管理されている。
【0077】
その後、基板202は、同じく前記第9の搬送機構102を介して次のUV照射機構100に搬送され、基板202上のUV硬化液に対して紫外線が照射される。これによって、図5(B)に示すように、基板202の一主面上に形成された色素記録層204と光反射層208を覆うようにUV硬化樹脂による保護層210が形成されて光ディスクDとして構成されることになる。
【0078】
保護層210は、色素記録層204などを物理的及び化学的に保護する目的で光反射層208上に設けられる。保護層210は、基板202の色素記録層204が設けられていない側にも耐傷性、耐湿性を高める目的で設けることもできる。保護層210で使用される材料としては、例えば、SiO、SiO2、MgF2、SnO2、Si3N4等の無機物質、及び熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、そしてUV硬化性樹脂等の有機物質を挙げることができる。
【0079】
保護層210は、例えば、プラスチックの押出加工で得られたフイルムを接着剤を介して光反射層208上及び/または基板202上にラミネートすることにより形成することができる。あるいは真空蒸着、スパッタリング、塗布等の方法により設けられてもよい。また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の場合には、これらを適当な溶剤に溶解して塗布液を調整したのち、この塗布液を塗布し、乾燥することによっても形成することができる。
【0080】
UV硬化性樹脂の場合には、上述したように、そのままもしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調整したのちこの塗布液を塗布し、UV光を照射して硬化させることによって形成することができる。これらの塗布液中には、更に帯電防止剤、酸化防止剤、UV吸収剤等の各種添加剤を目的に応じて添加してもよい。保護層210の層厚は一般には0.1〜100μmの範囲で設けられる。
【0081】
その後、光ディスクDは、第10の搬送機構104を介して次の欠陥検査機構106と特性検査機構108に搬送され、色素記録層204の面と保護層210の面における欠陥の有無や光ディスクDの基板202に形成されたグルーブ200による信号特性が検査される。これらの検査は、光ディスクDの両面に対してそれぞれ光を照射してその反射光を例えばCCDカメラで画像処理することによって行われる。これらの欠陥検査機構106及び特性検査機構108での各検査結果は次の選別機構114に送られる。
【0082】
上述の欠陥検査処理及び特性検査処理を終えた光ディスクDは、各検査結果に基づいて選別機構114によって正常品用のスタックポール110か、NG用のスタックポール112に搬送選別される。
【0083】
正常品用のスタックポール110に所定枚数の光ディスクDが積載された段階で、該スタックポール110が後処理設備16から取り出されて図示しないラベル印刷工程に投入される。
【0084】
また、本実施の形態に係る製造システム10には、図1に示すように、塗布設備14の第2の処理部32と並行して空調システム300が設置されている。空調システム300は、図示はしないが、空気調和機、除湿機、及び排気装置から構成されている。このうち空気調和機は、塗布設備14に対して清浄な空気を送り込み、除湿機は、外気を取り入れて除湿を行い、一次空気として出力する。また、排気装置は、塗布設備14からの一部の排気(局所排気)を上位の排気系統に送る。このような局所排気としては、例えば塗布設備14の色素塗布機構48における6つのスピンコート装置52からの排気が挙げられる。
【0085】
色素溶液を塗布する際の排気風速は1m/s以下、好ましくは0.7m/s以下、更に好ましくは0.4m/s以下がよい。これにより、基板202上への色素溶液の塗布が良好に行われると共に、再生色素溶液の回収率を向上させることができる。
【0086】
また、図示はしないが、第1の処理部30と第3の処理部34の各天井にも、それぞれ高性能充填層フィルタ(HEPAフィルタ)を介して、第1及び第3の処理部30及び34に対してそれぞれ清浄な空気を送り込むことにより、第1及び第3の処理部30及び34内の温度をコントロールする空調機が設置されている。
【0087】
そして、本実施の形態に係る製造システム10においては、塗布設備14や後処理設備16とは別に、色素廃液の回収処理を行うための再処理室600を備えている。以下、図6を参照して、再処理室600で行われる色素廃液の回収処理について説明する。
【0088】
この再処理室600には、回収された色素廃液452を収容した回収容器450が定期的にあるいは必要なときに搬入されるようになっている。この色素廃液452は光の透過しない密閉容器で保管することが好ましい。密閉容器としては、ステンレス製の缶が好ましく、更に好ましくはステンレス製のドラム缶が望ましい。色素廃液452の保管場所は、強烈な光や熱が当たらない場所であれば特に問題はないが、好ましくは館屋の中、更に好ましくは常温暗室がよい。また、保管場所のクリーン度は、クラス50万以下、好ましくはクラス20万以下がよい。
【0089】
回収容器450内の色素廃液452は、その後、色素廃液452中の固形物をフィルタで除去するフィルタリング工程607、色素廃液452を希釈して希釈廃液611を得る希釈工程609、希釈廃液611中の色素及び退色防止剤の含有量を定量する定量工程610、及び希釈廃液611中の色素及び退色防止剤の濃度に基づいて、色素及び退色防止剤の濃度を回収前の色素溶液中の色素及び退色防止剤の濃度と2桁以上の精度で一致するように調整する濃度調整工程612を経て、再生色素溶液614として再利用される。
【0090】
フィルタリング工程607は、色素廃液452中の固形物をフィルタで除去する工程である。フィルタとしては、色素廃液に含有される溶剤に濡れ性の高い材質のものを好適に使用することができる。フィルタの除去粒子孔径は、後述する濃度調整を高精度で行い、塗布欠陥の発生を防止するために、20μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下である。一方、目詰まり等によりフィルタリング効率を損なわないように、フィルタの除去粒子孔径は、0.001μm以上が好ましく、より好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.1μm以上である。また、フィルタリングの際には、フィルタリング効率を上げるために加圧や吸引を行ってもよい。
【0091】
希釈工程609は、フィルタリング工程607において固形物が除去された色素廃液452を希釈して、希釈廃液611を得る工程である。回収された色素廃液は、回収前の色素溶液が約4倍程度に濃縮されており、色素や退色防止剤の一部が析出するなど、主要成分の濃度分布が不均一になっている。固形物が除去され予め希釈された廃液について、色素及び退色防止剤の含有量の定量を行うことにより、精度の良い定量を行うことができる。
【0092】
希釈倍率は、回収前の色素溶液の組成に近付けるため1.5倍〜3倍の範囲が好ましい。希釈倍率が3倍を超えると、希釈後の主要成分の濃度が回収前の色素溶液より薄くなる可能性があり、回収前の色素溶液より薄くなると濃度調整が困難になる。一方、希釈倍率が1.5倍より低いと、濃度分布の不均一性が十分に解消されず、定量精度が低下する。
【0093】
定量工程610は、上記の希釈廃液611中の色素及び退色防止剤の含有量を定量する工程である。色素及び退色防止剤の含有量の定量は、いかなる定量方法を用いて行ってもよいが、測定時の色素及び退色防止剤の安定性等を考慮すると、液体クロマトグラフィを用いて定量を行うのが好ましい。また、分光吸収スペクトルにおいて色素及び退色防止剤の各々に特有の吸収ピークが見出された場合には、分光光度計を用いた簡易な方法により定量を行うこともできる。
【0094】
次に述べる色素等の濃度調整工程612において、色素及び退色防止剤の濃度を有効数字2桁の精度で厳密に調整するためには、色素及び退色防止剤の含有量の定量は、有効数字3桁以上の精度で行うことが好ましい。
【0095】
液体クロマトグラフィを用いて、このような高精度の定量を実現するためには、まず、分解能を上げるため、希釈廃液611を更に10〜9000倍の倍率で希釈して、定量試料を調整する。希釈廃液611を更に10〜9000倍の倍率で希釈するのは、希釈倍率が9000倍を超えると定量精度が低下し、希釈倍率が10倍未満では分光光度計で定量するのに再度希釈が必要になるためである。
【0096】
次に、分光吸収スペクトルにおいて、色素及び退色防止剤の各ピークが他のピークと重ならず、それぞれ単独のピークとなる分離条件を設定する。例えば色素として下記構造式(A)で示されるインドレニン系色素(化合物A)を用い、退色防止剤として下記構造式(B)で示される退色防止剤(化合物B)を用いた場合の液体クロマトグラフィの3次元チャート(各測定波長での注入後の経過時間に対する相対検出強度を表す)を図7に示す。
【0097】
【化4】
【0098】
【化5】
【0099】
この場合の分離条件は、カラム:TSK−gel ODS−80Ts、カラム温度:25℃、溶離液:アセトニトリル/水/酢酸/トリエチルアミン=750/250/2/2、流量:1mリットル/分圧、力:59bar、検出波長:254nm、試料注入量:20μmである。図7からわかるように、この条件では、色素及び退色防止剤の各ピークが他のピークと重なることなく分離されている。
【0100】
次に、検出波長は、各化合物の検出精度が有効数字3桁以上で担保されるように選択することが好ましい。各化合物の定量は、検出波長で検量線を作成し、これを基準にして検出強度から含有濃度を算出するのが通常である。従って、各化合物の検出精度を上げるためには、検出波長での検量線の相関係数が大きいことが好ましい。逆に言えば、このような高い相関性を示す検出波長を選択しなければならない。一般に、色素の検出強度は大きく、検出精度に問題はない。そのため、退色防止剤の検出強度がある程度大きくなるような検出波長を選択することが検出精度の点で好ましい。例えば、上記の退色防止剤では表1に示すように、検出波長が450nmのときに相関係数が0.999と最大になるため、450nmを検出波長として選択することが好ましい。また、再現性よく定量を行うために、試料の注入精度が2桁以上であることが好ましく、3桁以上であることがより好ましい。
【0101】
【表1】
【0102】
なお、上記の例では、退色防止剤が450nmに特有の吸収ピークを有しており、色素が680nmに特有の吸収ピークを有しているので、分光光度計を用いて定量を行うことができる。この場合には、これらピーク波長に吸収を有しない溶剤で希釈して、定量試料を調整すればよい。
【0103】
濃度調整工程612は、前記定量工程610で決定された希釈廃液611中の色素及び退色防止剤の濃度に基づいて、再生色素溶液614の色素及び退色防止剤の濃度を、回収前の色素溶液中の色素及び退色防止剤の濃度と2桁以上の精度で一致するように調整する工程である。
【0104】
調液処方の算出は、色素、退色防止剤及び溶剤のうち最も過多になっている成分の含有量を固定し、再生色素溶液614の色素及び退色防止剤の濃度を、回収前の色素溶液中の色素の濃度及び退色防止剤の濃度にするために、含有量を固定した成分以外の成分の不足量を算出することにより行う。不足量は、再生色素溶液614の色素及び退色防止剤の濃度が、回収前の色素溶液中の色素及び退色防止剤の濃度と2桁以上の精度で一致するように、正確に算出する。そして、算出した不足量に応じた不足分を補充して、色素及び退色防止剤の濃度を調整する。
【0105】
例えば、回収前の色素溶液中の色素の濃度及び退色防止剤の濃度がそれぞれa質量%、b質量%であり、希釈廃液611中の色素及び退色防止剤の濃度がそれぞれ1.2a質量%、0.5b質量%である場合においては、この希釈廃液dグラムに含まれる色素は1.2adグラムであり、退色防止剤は0.5bdグラムである。最も過多になっている色素を追加せずに、他の成分(退色防止剤及び溶剤)を追加して、各成分を回収前の色素溶液の濃度にするためには、希釈廃液611dグラムに、退色防止剤0.7bdグラムと溶剤0.2dグラムとを正確に加える必要がある。溶剤、色素及び退色防止剤以外の成分を添加する際も、同様の精度で行うことが好ましい。
【0106】
以上の通り、本実施の形態に係る製造システムにおいては、色素溶液の塗布処理にて排出された色素廃液(回収工程で回収された色素廃液)を、所定の処理を施した後、再生色素溶液として再利用するため、製造コストの低廉化を効率よく実現することができる。
【0107】
また、再生色素溶液中の色素及び退色防止剤の濃度を、回収前の色素溶液中の色素及び退色防止剤の濃度と2桁以上の精度で一致するように調整するようにしたので、再生色素溶液を用いて色素記録層を形成した際にも記録再生特性の再現性を確保することができる。
【0108】
更に、回収容器内の色素廃液を再生色素溶液として再利用するに際しては、色素廃液中の固形物をフィルタで除去し希釈した後に、希釈廃液中の色素及び退色防止剤の含有量を定量し、この定量結果に基づいて再生色素溶液中の色素及び退色防止剤の濃度を調整するようにしたので、定量誤差が小さくなり、再生色素溶液を用いて色素記録層を形成した際にも、記録再生特性の再現性を安定して確保することができる。
【0109】
上記実施の形態では、色素廃液中の固形物をフィルタで除去するフィルタリング工程に続き、色素廃液を希釈して希釈廃液を得る希釈工程を実施する例について説明したが、色素廃液を希釈して希釈廃液を得た後、希釈廃液中の固形物をフィルタで除去するフィルタリング工程を実施してもよい。希釈した後にフィルタリングを行うことにより析出した成分が溶解し、再生色素溶液における色素や退色防止剤の回収率を更に増加させることができ、生産効率の向上を図ることができる。
【0110】
また、上記実施の形態では、定量工程で決定された希釈廃液中の色素及び退色防止剤の濃度に基づいて、再生色素溶液の色素及び退色防止剤の濃度を、1回で調整する例について説明したが、定量工程で決定された希釈廃液中の色素及び退色防止剤の濃度に基づいて、再生色素溶液の色素及び退色防止剤の濃度を、回収前の色素溶液中の色素及び退色防止剤の濃度よりも0.01〜1質量%高い濃度となるように粗調整し、粗調整した再生色素溶液中の色素及び退色防止剤を定量して、定量した色素及び退色防止剤の濃度に基づいて、再生色素溶液の色素及び退色防止剤の濃度を、回収前の色素溶液中の色素及び退色防止剤の濃度と2桁以上の精度で一致するように微調整するようにしてもよい。このように再生色素溶液の色素及び退色防止剤の濃度の調整を、粗調整と微調整の2段階に分けて行うことで、高い精度で濃度調整を行うことが容易になる。
【0111】
また、上記実施の形態では、色素溶液の塗布処理にて排出された色素廃液だけを再利用する例について説明したが、スピナーヘッド装置402や飛散防止壁404を洗浄処理して得られた色素廃液を、回収工程で回収された色素廃液に混合して再利用してもよい。
【0112】
例えば、図8に示すように、再処理室600に、定期的にあるいは必要なときに、例えばメンテナンスを目的としてスピンコート装置52のスピナーヘッド装置402や飛散防止壁404を搬入し、該再処理室600内に設置されている洗浄槽602を使用して洗浄が行われるようにする。具体的には、洗浄槽602内に入っている洗浄液にスピナーヘッド装置402や飛散防止壁404を漬け込んで洗浄処理が行われる(漬け込み洗い)。スピンコート装置52のスピナーヘッド装置402や飛散防止壁404を洗浄する方法として、洗浄槽602での漬け込み洗いを実施すると、洗浄槽602内に色素廃液604が溜まり、効率よく、色素廃液604を得ることができる。洗浄槽602への漬け込み時間は10分以上がよく、好ましくは30分以上がよい。
【0113】
この洗浄処理によって、スピナーヘッド装置402や飛散防止壁404に付着していた色素が洗い流され、洗浄液中に拡散する。この洗浄処理を繰り返すことによって、洗浄液中の色素の濃度が徐々に高くなり、色素廃液604として洗浄槽602内に溜まることになる。
【0114】
そして、洗浄槽602内の色素廃液604の濃度が、回収容器450内の色素廃液452の濃度以上になった段階で、洗浄槽602内の色素廃液604と回収容器450内の色素廃液452を混合して混合色素廃液606とする。この場合、新たな容器608を使用して混合するようにしてもよく、洗浄槽602内に回収容器450内の色素廃液452を入れて混合するようにしてもよい。
【0115】
このように、洗浄工程で回収された色素廃液と色素溶液の塗布処理にて排出された色素廃液とを混合して混合色素廃液とし、この混合色素廃液を再生色素溶液として再利用することにより、再生色素溶液における色素の回収率を増加させることができ、生産効率の向上を図ることができる。特に、洗浄工程で回収された色素廃液の色素濃度が前記回収工程で回収された色素廃液の色素濃度以上となった段階で、これら色素廃液を混合するようにした場合には、工程内への不純物の混入を防ぐことができ、混合色素廃液を再生色素溶液として再利用した際にも記録再生特性の再現性を確保でき、製造コストの低廉化を効率よく実現させることができる。
【0116】
また、上記の製造システム10は、基板202上に形成された色素溶液の塗膜のうち、基板202の裏面に付着した塗膜を除去する裏面洗浄機構54と、基板202上に形成された色素溶液の塗膜のうち、基板202の外周縁部に対応する部分を除去するエッジ洗浄機構92とを有しているが、これらの機構54及び92から排出される廃液についても回収を行い、得られた色素廃液を回収工程で回収された色素廃液に混合して再利用してもよい。従来、エッジ洗浄時の廃液や裏面洗浄時の廃液は、工程内の不純物の混入を防止するため、色素廃液と分離されていたが、本発明では、色素廃液をフィルタ処理した後に再利用するので、これらの廃液を回収工程で回収された色素廃液に混合して用いても、工程内の不純物の混入を防止することができ、記録再生特性の再現性を確保でき、製造コストの低廉化を効率よく実現させることができる。また、エッジ洗浄時の廃液や裏面洗浄時の廃液を再利用することにより、再生色素溶液における色素の回収率を更に増加させることができ、生産効率の向上を図ることができる。
【0117】
【実施例】
[参考例]
ステンレス製の密閉容器に上述のインドレニン系色素(化合物A)2.65部と、退色防止剤(化合物B)0.265部と、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール100部とを混合し、超音波振動機(1800W)を用いて2時間かけて溶解し、色素記録層を形成するための色素溶液(A−0)を調製した。
【0118】
色素溶液中の色素濃度は2.65質量%であり、退色防止剤濃度は0.53質量%であった。この色素溶液を半日間保存した後、表面にスパイラル状のプレグルーブ(トラックピッチ1.6μm、プレグルーブ幅0.52μm、プレグルーブの深さ175nm)が射出成形により形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ1.2mm、帝人(株)製、商品名「パンライトAD5503」)のそのプレグルーブ側の面に、ステンレス製のノズル(内径0.8μm)を有する塗布液付与装置を備えたスピンコート装置を用いて、そのスピナーヘッド装置の回転数を300rpm〜4000rpmまで変化させながら塗布し、色素記録層(グルーブ内の厚さ約200nm)を形成した。塗布の際に飛散した色素溶液はドレインを通して回収容器に集めた。これを色素廃液(A−1)とする。このときの色素記録層の形成条件は、雰囲気の温度、湿度:23℃、50%RH色素溶液の温度:23℃ 基板202の温度:23℃ 排気風速:0.8m/sである。
【0119】
次に、色素記録層上に、Auをスパッタして、膜厚が150nmの光反射層を形成した。更に、別のスピンコート装置を用いて、前記光反射層上にUV硬化性樹脂(商品名「SD−318」、大日本インキ化学工業(株)製)をスピナーヘッド装置の回転数を300rpm〜5000rpmまで変化させながら塗布した後、紫外線を照射して樹脂を硬化させ、層厚8μmの保護層を形成した。
【0120】
以上の工程により、基板上に、色素記録層、光反射層、及び保護層が積層された参考例に係る光ディスクを製造した。この参考例に係る光ディスクは、通常の色素溶液を用いて製造したものである。
【0121】
[実施例1]
上記の回収容器に集めた色素廃液(A−1)30リットルを、除去粒子孔径0.2μmのフィルタ(商品名「MDY2230FREHF」、日本ポール社製)で濾過し、濾液に該濾液と略同量の2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールを加えて均一になるまで撹拌し、約60リットルの希釈廃液(A−2)を得た。
【0122】
一方、前記参考例で示した色素記録層を形成するための色素溶液を所定量サンプルびんに採り、該色素溶液を2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールで約600倍に希釈した。これを試料とし、分光光度計(島津製作所社製、UV3100PC)を用いて、色素(吸収波長680nm)と退色防止剤(吸収波長450nm)について検量線を作成した。
【0123】
希釈廃液(A−2)を0.1g精秤してサンプルびんに採り、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールで600倍に希釈し、定量試料(A−3)とし、作成した検量線を用いて、この定量試料(A−3)中の色素及び退色防止剤を定量し、希釈廃液(A−2)中の色素及び退色防止剤の濃度に換算した。希釈廃液(A−2)中の色素濃度は6.22質量%であり、色素に対する退色防止剤濃度は11.0質量%であった。
【0124】
この結果に基づいて、退色防止剤濃度が色素濃度の20%となるように、希釈廃液(A−2)に退色防止剤375gを添加し、色素濃度が2.8%となるように、希釈廃液(A−2)に2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール73.3リットルを添加して、色素及び退色防止剤の濃度を粗調整し、約133.3リットルの再生色素溶液(A−4)を得た。
【0125】
再生色素溶液(A−4)を0.1g精秤してサンプルびんに採り、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールで600倍に希釈し、定量試料(A−5)とし、作成した検量線を用いて、この定量試料(A−5)中の色素及び退色防止剤を定量し、再生色素溶液(A−4)中の色素及び退色防止剤の濃度に換算した。再生色素溶液(A−4)中の色素濃度は2.81質量%であった。
【0126】
色素濃度が、上記色素溶液(A−0)中の色素濃度(2.65%)と一致するように、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールを追加して色素濃度を微調整し、再生色素溶液(A−6)を得た。
【0127】
得られた再生色素溶液(A−6)を用いて、前記参考例と同様にして色素記録層を形成した。塗布の際に飛散した色素溶液はドレインを通して回収容器に集めた。これを色素廃液(A−7)とする。次に、前記参考例と同様にして、色素記録層上に、光反射層及び保護層を積層し、実施例に係る光ディスクを製造した。
【0128】
[実施例2]
実施例1で回収容器に集めた色素廃液(A−7)を用い、実施例1と同様に処理して、再生色素溶液(A−8)を得た。得られた再生色素溶液(A−8)を用いて、前記参考例と同様にして色素記録層を形成した。塗布の際に飛散した色素溶液はドレインを通して回収容器に集めた。これを色素廃液(A−9)とする。次に、前記参考例と同様にして、色素記録層上に、光反射層及び保護層を積層し、実施例に係る光ディスクを製造した。
【0129】
[実施例3]
実施例2で回収容器に集めた色素廃液(A−9)を用い、実施例1と同様に処理して、再生色素溶液(A−10)を得た。得られた再生色素溶液(A−10)を用いて、前記参考例と同様にして色素記録層を形成した。塗布の際に飛散した色素溶液はドレインを通して回収容器に集めた。これを色素廃液(A−11)とする。次に、前記参考例と同様にして、色素記録層上に、光反射層及び保護層を積層し、実施例に係る光ディスクを製造した。
【0130】
[実施例4]
上記の回収容器に集めた色素廃液(A−1)30リットルを、除去粒子孔径0.2μmのフィルタ(商品名「MDY2230FREHF」、日本ポール社製)で濾過し、濾液に濾液と略同量の2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールを加え、均一になるまで撹拌し、約60リットルの希釈廃液(A−12)を得た。
【0131】
希釈廃液(A−12)を0.1g精秤してサンプルびんに採り、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールで600倍に希釈し、定量試料(A−13)とし、実施例1で作成した検量線を用いて、この定量試料(A−13)中の色素及び退色防止剤を定量し、希釈廃液(A−12)中の色素及び退色防止剤の濃度に換算した。希釈廃液(A−12)中の色素濃度は5.20質量%であり、色素に対する退色防止剤濃度は10.5質量%であった。
【0132】
この結果に基づいて、退色防止剤濃度が色素濃度の20%となるように、希釈廃液(A−12)に退色防止剤296.4gを添加し、色素濃度が2.65%となるように、希釈廃液(A−12)に2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール57.7リットルを添加して、色素及び退色防止剤の濃度を調整し、約117.7リットルの再生色素溶液(A−14)を得た。
【0133】
得られた再生色素溶液(A−14)を用いて、前記参考例と同様にして色素記録層を形成した。次に、前記参考例と同様にして、色素記録層上に、光反射層及び保護層を積層し、実施例に係る光ディスクを製造した。
【0134】
[比較例1]
上記の回収容器に集めた色素廃液(A−1)を0.1g精秤してサンプルびんに採り、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールで600倍に希釈し、定量試料(A−15)とし、実施例1で作成した検量線を用いて、この定量試料(A−15)中の色素及び退色防止剤を定量し、色素廃液(A−1)中の色素及び退色防止剤の濃度に換算した。色素廃液(A−1)中の色素濃度は15.8質量%であり、色素に対する退色防止剤濃度は13.0質量%であった。
【0135】
この結果に基づいて、退色防止剤濃度が色素濃度の20%となるように、色素廃液(A−1)30リットルに退色防止剤331.8gを添加し、色素濃度が2.65%となるように、色素廃液(A−1)に2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール148.8リットルを添加して、色素及び退色防止剤の濃度を調整し、約178.9リットルの再生色素溶液(A−16)を得た。
【0136】
得られた再生色素溶液(A−16)を用いて、前記参考例と同様にして色素記録層を形成した。次に、前記参考例と同様にして、色素記録層上に、光反射層及び保護層を積層し、比較例に係る光ディスクを製造した。
【0137】
[評価]
(記録特性)
参考例に係る光ディスクと実施例1に係る光ディスクについて、パルステック社製「OMT−2000」を用いて、最適パワーで記録特性を評価した。その結果を表2に示す。表2から明らかなように、色素溶液の再生処理で得られた再生色素溶液を用いて作製した光ディスクは、正規の色素溶液を用いて作製した光ディスクDと記録特性において大差はなく、再生色素溶液を色素溶液の塗布工程で再利用できることがわかる。
【0138】
【表2】
【0139】
(光学濃度測定)
各実施例について、基板上に色素記録層を形成した後に、色素記録層側から半導体レーザにより680nmのレーザ光を照射して、吸収された光量を測定し、吸収された光量を吸光度に換算して光学濃度を算出した。結果を表3に示す。表3から分かるように、色素廃液中の固形物を濾過し、色素廃液を希釈した後に、色素及び退色防止剤の定量を行い、この定量結果に基づいて調整した再生色素溶液を用いて色素記録層を形成した場合(実施例1〜4)には、通常の色素溶液を用いて色素記録層を形成した場合(参考例)と略同じ光学濃度が得られた。
【0140】
一方、濾過、希釈を行わずに、色素及び退色防止剤の定量を行い、この定量結果に基づいて調整した再生色素溶液を用いて色素記録層を形成した場合(比較例1)には、光学濃度が大幅に変動した。
【0141】
【表3】
【0142】
【発明の効果】
本発明の光情報記録媒体の製造方法によれば、色素廃液を色素溶液として再利用しても記録再生特性の再現性を安定して確保でき、製造コストの低廉化を効率よく実現することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る製造システムの一例を示す構成図である。
【図2】塗布設備に設置されるスピンコート装置を示す構成図である。
【図3】塗布設備に設置されるスピンコート装置を示す斜視図である。
【図4】(A)は基板にグルーブを形成した状態を示す工程図であり、(B)は基板上に色素記録層を形成した状態を示す工程図であり、(C)は基板上に光反射層を形成した状態を示す工程図である。
【図5】(A)は基板のエッジ部分を洗浄した状態を示す工程図であり、(B)は基板上に保護層を形成した状態を示す工程図である。
【図6】本実施の形態に係る製造システムの再生処理の手順を示す工程図である。
【図7】インドレニン系色素と退色防止剤における液体クロマトグラフィの3次元チャートを示す図である。
【図8】本実施の形態に係る製造システムの再生処理の他の手順を示す工程図である。
【符号の説明】
10 製造システム
14 塗布設備
48 色素塗布機構
52 スピンコート装置
54 裏面洗浄機構
92 エッジ洗浄機構
202 基板
204 色素記録層
206 エッジ部分
300 空調システム
400 塗布液付与装置
402 スピナーヘッド装置
404 飛散防止壁
406 ノズル
408 吐出量調整バルブ
424 ドレイン
450 回収容器
452 色素廃液
600 再処理室
607 フィルタリング工程
609 希釈工程
610 定量工程
611 希釈廃液
612 濃度調整工程
614 再生色素溶液
Claims (8)
- 基板上に、レーザ光の照射により情報を記録することができる色素記録層を有する光情報記録媒体の製造方法において、
前記基板を回転させながら前記色素記録層を形成するための色素溶液を前記基板上に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程で排出された色素廃液を回収する回収工程と、
前記回収工程で得られた色素廃液から固形物を除去すると共に該色素廃液を所定倍率で希釈して希釈廃液とする前処理工程と、
前記前処理工程で得られた希釈廃液中の主要成分の含有量を定量する定量工程と、
前記定量工程での定量結果に基づいて、主要成分の濃度が前記色素溶液中の主要成分の濃度と2桁以上の精度で一致するように、主要成分の濃度を調整して前記希釈廃液から再生色素溶液を得る濃度調整工程と、
を含み、
前記濃度調整工程で得られた再生色素溶液を、色素溶液として再利用することを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。 - 基板上に、レーザ光の照射により情報を記録することができる色素記録層を有する光情報記録媒体の製造方法において、
前記基板を回転させながら前記色素記録層を形成するための色素溶液を前記基板上に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程で排出された色素廃液を回収する回収工程と、
前記回収工程で得られた色素廃液から固形物を除去すると共に該色素廃液を所定倍率で希釈して希釈廃液とする前処理工程と、
前記前処理工程で得られた希釈廃液中の主要成分の含有量を定量する第1の定量工程と、
前記第1の定量工程での定量結果に基づいて、主要成分の濃度が前記色素溶液中の主要成分の濃度よりも0.01〜1質量%高い濃度となるように、主要成分の濃度を調整して前記希釈廃液から1次再生色素溶液を得る第1の濃度調整工程と、
前記第1の濃度調整工程で得られた1次再生色素溶液中の主要成分の含有量を定量する第2の定量工程と、
前記第2の定量工程での定量結果に基づいて、主要成分の濃度が前記色素溶液中の主要成分の濃度と2桁以上の精度で一致するように、主要成分の濃度を調整して前記希釈廃液から2次再生色素溶液を得る第2の濃度調整工程と、
を含み、
前記第2の濃度調整工程で得られた2次再生色素溶液を、色素溶液として再利用することを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。 - 前記色素廃液を1.5〜3.0倍に希釈して希釈廃液とする請求項1または2に記載の光情報記録媒体の製造方法。
- 前記主要成分に、少なくとも色素及び退色防止剤を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の光情報記録媒体の製造方法。
- 前記希釈廃液を10〜9000倍に希釈して、前記希釈廃液中の主要成分の含有量を定量する請求項1〜4のいずれか1項に記載の光情報記録媒体の製造方法。
- 前記1次再生色素溶液を10〜9000倍に希釈して、前記1次再生色素溶液中の主要成分の含有量を定量する請求項2〜5のいずれか1項に記載の光情報記録媒体の製造方法。
- 前記前処理工程の前に、前記色素溶液の塗布の際に周囲に付着した色素を洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程で回収された色素廃液の色素濃度が前記回収工程で回収された前記色素溶液の色素濃度以上となった段階で、これら色素廃液を混合する混合工程と、を更に含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の光情報記録媒体の製造方法。
- 前記主要成分の定量を液体クロマトグラフィで行う請求項1〜7のいずれか1項に記載の光情報記録媒体の製造方法。
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