JP3987651B2 - 光情報記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ光を用いて情報の記録及び再生を行うことができるヒートモード型の光情報記録媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、レーザ光により1回限りの情報の記録が可能な光情報記録媒体(光ディスク)としては、追記型CD(いわゆるCD−R)やDVD−Rなどがあり、従来のCD(コンパクトディスク)の作製に比べて少量のCDを手頃な価格でしかも迅速に市場供給できる利点を有しており、最近のパーソナルコンピュータなどの普及に伴ってその需要も増している。
【0003】
CD−R型の光情報記録媒体の代表的な構造は、厚みが約1.2mmの透明な円盤状基板上に有機色素からなる記録層、金などの金属からなる光反射層、更に樹脂製の保護層をこの順に積層したものである(例えば特開平6−150371号公報参照)。
【0004】
また、DVD−R型の光情報記録媒体は、2枚の円盤状基板(厚みが約0.6mm)を各情報記録面をそれぞれ内側に対向させて貼り合わせた構造を有し、記録情報量が多いという特徴を有する。
【0005】
そして、これら光情報記録媒体への情報の書き込み(記録)は、近赤外域のレーザ光(CD−Rでは通常780nm付近、DVD−Rでは635nm付近の波長のレーザ光)を照射することにより行われ、色素記録層の照射部分がその光を吸収して局所的に温度上昇し、物理的あるいは化学的な変化(例えばピットの生成)が生じて、その光学的特性を変えることにより情報が記録される。
【0006】
一方、情報の読み取り(再生)も、通常、記録用のレーザ光と同じ波長のレーザ光を照射することにより行われ、色素記録層の光学的特性が変化した部位(ピットの生成による記録部分)と変化しない部位(未記録部分)との反射率の違いを検出することにより情報が再生される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、基板上の内周側の透明部分には、光ディスクの製造履歴を示すロット番号や製造メーカー、ディスク種別表示等の印字をする場合がある。これらの印字形態は、光ディスクへの記録そのものには影響はないが、外観上の品質が重視される。
【0008】
上述のような光情報記録媒体においては、図14に示すように、基板500上に有機色素による記録層を形成する場合、基板500を回転させながら色素溶液502をノズル504を通して基板500上に塗布するようにしているため、基板500上に落下した色素溶液502が四方に飛散する場合があり、内周側における透明部分506の外観不良を招くおそれがある。
【0009】
そこで、図14の二点鎖線で示すように、色素溶液502の飛沫を付着させたくない部分にマスク508を設置する方法が考えられるが、塗布処理を行うたびに色素溶液502の飛沫によってマスク508の表面が汚れ、乾いたときに、塵埃として飛散することになり、欠陥発生の原因となるという新たな問題が生じるおそれがある。
【0010】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、色素溶液の飛散を防止することで外観不良の発生を防止し、光情報記録媒体の歩留まりの向上を図ることができる光情報記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る光情報記録媒体の製造方法は、基板上に、レーザ光の照射により情報を記録することができる記録層を有するヒートモード型の光情報記録媒体の製造方法において、前記記録層を形成するための溶液であって、色素をフッ素系溶剤に溶解した溶液を、前記基板を回転させながら前記基板上に塗布する場合に、前記溶液の塗布開始から塗布終了までの前記基板の回転数が270〜550rpmであり、前記溶液を供給するノズルの径が0.5mm以上、1.0mm以下であり、前記溶液の塗布開始時点から溶液の塗布速度が一定になるまでの時間を0.1秒以上、1秒以下とすることが好ましい。ここで、溶液の塗布開始時点とは、ノズルの先端から溶液が出始めた時点を指す。
【0012】
通常、溶液の吐出量は、溶液の塗布開始時点から時間の経過に伴って過渡的に変化(上昇)し、最終的に一定の吐出量に落ち着く(安定する)ことになる。つまり、上述の「溶液の塗布開始時点から溶液の塗布速度が一定になるまでの時間」とは、溶液の塗布開始時点から溶液の吐出量が一定に落ち着く(安定する)までの時間を指す。
【0013】
そして、この時間を0.1秒以上、1秒以下とすることにより、溶液が基板に落下した時点での溶液の四方への飛散を防止することができ、外観不良の発生を防止することができる。これは、光情報記録媒体の歩留まりの向上につながる。
【0014】
前記製造方法において、バルブの開閉によって前記溶液の前記基板に対する吐出の実行及び停止を行うバルブ装置を使用した場合においては、前記バルブの開き速度を最高速度に対して5%以上、50%以下にすることで達成できる。つまり、溶液を吐出するバルブ装置におけるバルブの開き速度を遅くすればよい。
【0015】
また、前記バルブの開閉を流体圧で行うべく、前記バルブ装置に供給される流体の流量を制御するためのスピードコントローラを使用した場合においては、前記流体の流量を決定する前記スピードコントローラの開度を5%以上、50%以下にすればよい。
【0016】
そして、塗布を開始する位置は前記基板上であることが適当であり、前記基板上における内周側の塗布しない部分から5mm以上離れていること、つまり、記録層として形成されるべき領域の内周側の端部から5mm以上外周側寄りの部分であることが好ましい。
【0017】
塗布を開始する位置が基板上における内周側の塗布しない部分から十分離れていれば、溶液が飛散しても問題とならない。飛散した飛沫がその後の塗布処理で流れ去ってしまうからである。
【0018】
塗布開始直後においては、溶液の吐出量が時間の経過に伴って過渡的に変化し、安定しないため、最内周から少し離れた位置で塗布を開始することが好ましい。最内周から塗布を開始すると、塗布むらの原因となり、記録層の内周端がきれいな円形にならなくなるおそれがある。
【0019】
塗布を開始したら、その後少なくとも1回は内周側にノズルを動かすと、記録層の内周端がきれいな円形になる。
【0020】
但し、基板の外で塗布を開始してしまうと、溶液が基板の外周端部に当たったときに様々な方向に飛散し、塗布部近辺を汚してしまったり、基板の裏面に溶液が付着するなどの問題が生ずる。
【0021】
従って、塗布の開始位置は、基板上が好ましく、更に好ましくは基板の外周端部から5mm以上内周寄りがよい。また、前記基板上における内周側の塗布しない部分から5mm以上、好ましくは10mm以上、更に好ましくは15mm以上外周寄りがよい。
【0022】
前記溶液にかかる圧力は1kgf/cm2 以下が好ましい。一般に、基板に溶液を塗布する場合、急激に溶液の吐出が開始されるときに溶液の四方への飛散が発生するが、溶液にかかる圧力が少ないときには、大きく飛散しないために外観不良等の問題は生じない。
【0023】
しかし、圧力が低すぎると、単位時間の吐出量が少なくなって、塗布速度が遅くなるため、規定量の溶液を塗布するのに時間がかかり、その結果、スループットの減少を招き、生産効率が低下するおそれがある。
【0024】
従って、溶液にかかる圧力の好ましい範囲は、上述したように、上限については1kgf/cm2 以下、好ましくは0.8kgf/cm2 以下、最も好ましくは0.6kgf/cm2 以下である。下限については、0.02kgf/cm2 以上、好ましくは0.05kgf/cm2 以上、最も好ましくは0.1kgf/cm2 以上である。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る光情報記録媒体の製造方法を例えばCD−R等の光ディスクを製造するシステムに適用した実施の形態例(以下、単に実施の形態に係る製造システムと記す)を図1〜図13を参照しながら説明する。
【0026】
本実施の形態に係る製造システム10は、図1に示すように、例えば射出成形、圧縮成形又は射出圧縮成形によって基板を作製する2つの成形設備(第1及び第2の成形設備12A及び12B)と、基板の一主面上に色素溶液を塗布して乾燥させることにより、該基板上に色素記録層を形成する塗布設備14と、基板の色素記録層上に光反射層を例えばスパッタリングにより形成し、その後、光反射層上にUV硬化液を塗布した後、UV照射して前記光反射層上に保護層を形成する後処理設備16とを有して構成されている。
【0027】
第1及び第2の成形設備12A及び12Bは、ポリカーボネートなどの樹脂材料を射出成形、圧縮成形又は射出圧縮成形して、一主面にトラッキング用溝又はアドレス信号等の情報を表す凹凸(グルーブ)が形成された基板を作製する成形機20と、該成形機20から取り出された基板を冷却する冷却部22と、冷却後の基板を段積みして保管するためのスタックポール24が複数本設置された集積部26(スタックポール回転台)を有する。
【0028】
塗布設備14は、3つの処理部30、32及び34から構成され、第1の処理部30には、前記第1及び第2の成形設備12A及び12Bから搬送されたスタックポール24を収容するためのスタックポール収容部40と、該スタックポール収容部40に収容されたスタックポール24から1枚ずつ基板を取り出して次工程に搬送する第1の搬送機構42と、該第1の搬送機構42によって搬送された1枚の基板に対して静電気の除去を行う静電ブロー機構44とを有する。
【0029】
第2の処理部32は、第1の処理部30において静電ブロー処理を終えた基板を次工程に順次搬送する第2の搬送機構46と、該第2の搬送機構46によって搬送された複数の基板に対してそれぞれ色素溶液を塗布する色素塗布機構48と、色素塗布処理を終えた基板を1枚ずつ次工程に搬送する第3の搬送機構50とを有する。この色素塗布機構48は6つのスピンコート装置52を有して構成されている。
【0030】
第3の処理部34は、前記第3の搬送機構50にて搬送された1枚の基板の裏面を洗浄する裏面洗浄機構54と、裏面洗浄を終えた基板を次工程に搬送する第4の搬送機構56と、該第4の搬送機構56によって搬送された基板に対してロット番号等の刻印を例えばインクジェットによって行う番号付与機構58と、ロット番号等の刻印を終えた基板を次工程に搬送する第5の搬送機構60と、該第5の搬送機構60によって搬送された基板に対して欠陥の有無並びに色素記録層の膜厚の検査を行う検査機構62と、該検査機構62での検査結果に応じて基板を正常品用のスタックポール64あるいはNG用のスタックポール66に選別する選別機構68とを有する。
【0031】
第1の処理部30と第2の処理部32との間に第1の仕切板70が設置され、第2の処理部32と第3の処理部34にも同様の第2の仕切板72が設置されている。第1の仕切板70の下部には、第2の搬送機構46による基板の搬送経路を塞がない程度の開口(図示せず)が形成され、第2の仕切板72の下部には、第3の搬送機構50による基板の搬送経路を塞がない程度の開口(図示せず)が形成されている。
【0032】
後処理設備16は、塗布設備14から搬送された正常品用のスタックポール64を収容するためのスタックポール収容部80と、該スタックポール収容部80に収容されたスタックポール64から1枚ずつ基板を取り出して次工程に搬送する第6の搬送機構82と、該第6の搬送機構82によって搬送された1枚の基板に対して静電気の除去を行う第1の静電ブロー機構84と、静電ブロー処理を終えた基板を次工程に順次搬送する第7の搬送機構86と、該第7の搬送機構86によって搬送された基板の一主面に光反射層をスパッタリングにて形成するスパッタ機構88と、光反射層のスパッタリングを終えた基板を次工程に順次搬送する第8の搬送機構90と、該第8の搬送機構90によって搬送された基板の周縁(エッジ部分)を洗浄するエッジ洗浄機構92とを有する。
【0033】
また、この後処理設備16は、エッジ洗浄を終えた基板に対して静電気の除去を行う第2の静電ブロー機構94と、静電ブロー処理を終えた基板の一主面に対してUV硬化液を塗布するUV硬化液塗布機構96と、UV硬化液の塗布を終えた基板を高速に回転させて基板上のUV硬化液の塗布厚を均一にするスピン機構98と、UV硬化液の塗布及びスピン処理を終えた基板に対して紫外線を照射することによりUV硬化液を硬化させて基板の一主面に保護層を形成するUV照射機構100と、前記基板を第2の静電ブロー機構94、UV硬化液塗布機構96、スピン機構98及びUV照射機構100にそれぞれ搬送する第9の搬送機構102と、UV照射された基板を次工程に搬送する第10の搬送機構104と、該第10の搬送機構104によって搬送された基板に対して塗布面と保護層面の欠陥を検査するための欠陥検査機構106と、基板に形成されたグルーブによる信号特性を検査するための特性検査機構108と、これら欠陥検査機構106及び特性検査機構108での検査結果に応じて基板を正常品用のスタックポール110あるいはNG用のスタックポール112に選別するための選別機構114とを有する。
【0034】
ここで、1つのスピンコート装置52の構成について図2〜図8を参照しながら説明する。
【0035】
このスピンコート装置52は、図2及び図3に示すように、溶液供給装置400、スピナーヘッド装置402及び飛散防止壁404を有して構成されている。
【0036】
溶液供給装置400は、図4に示すように、内部に色素溶液が充填され、レギュレータ450によって前記色素溶液にかかる圧力が調整された加圧タンク452と、色素溶液の基板202への吐出及びその停止をバルブの開閉によって制御するバルブ装置408と、加圧タンク452からバルブ装置408に引き回され、該加圧タンク452に充填された色素溶液をバルブ装置408に供給するための導管454とを有し、色素溶液はバルブ装置408のノズル406を通してその所定量が基板202の表面上に滴下されるようになっている。加圧タンク452において色素溶液にかかる圧力は1kgf/cm2 以下に設定してある。
【0037】
この溶液供給装置400は、図2及び図3に示すように、ノズル406を下方に向けて支持する支持板410と該支持板410を水平方向に旋回させるモータ412とを有するハンドリング機構414によって、待機位置から基板202の上方の位置に旋回移動できるように構成されている。
【0038】
バルブ装置408は、図4に示すように、急速排気弁456が設けられて内部のバルブの開閉が流体圧で行われるようになっており、流体の供給系458と排気系460にそれぞれ流体の流量を調整するためのスピードコントローラ(第1及び第2のスピードコントローラ462及び464)が接続されている。
【0039】
前記急速排気弁456は、流体の供給系458が接続される入力ポート466と、バルブ装置本体468が接続される出力ポート470と、流体の排気系460に接続される排気ポート472とを有する。
【0040】
流体の供給系458から導入された流体は、急速排気弁456の入力ポート466と出力ポート470を通じてバルブ装置本体468内に供給され、この流体の供給に応じたバルブ装置本体468内の圧力増加に伴って内部のバルブが開方向に動作するようになっている。従って、バルブの開き速度(バルブの単位時間当たりの開度の変化)は、単位時間当たりの流体の供給量に比例することになり、この供給量は、第1のスピードコントローラ462の開度によって調整可能となっている。
【0041】
バルブが開方向に動作することにより、加圧タンク452から供給された色素溶液がバルブ装置408のノズル406を通じて吐出され、基板202上に塗布されることになる。このとき、図5に示すように、バルブの開度の増加に対応して吐出量が時間の経過に伴ってほぼ比例的に増加し、ある時間を経過した段階、即ち、バルブが全開となった段階で吐出量が一定となる。
【0042】
つまり、バルブが開く過程にある過渡段階においては、塗布速度がほぼ比例的に増加し、バルブが全開となった段階で塗布速度が一定となる。
【0043】
吐出量が比例的に増加する過渡段階での吐出量の変化幅(特性上の傾き)は、バルブの開き速度に依存し、該開き速度が小さくなるのに従って小さくなる。換言すれば、第1のスピードコントローラ462の開度を小さくすればするほど吐出量の変化幅(特性上の傾き)が小さくなり、色素溶液の塗布開始時点t0からバルブ全開となる時点(色素溶液の塗布速度が一定になる時点)t1までの時間τsが長くなる。反対に、第1のスピードコントローラ462の開度を大きくすればするほど吐出量の変化幅が大きくなり、色素溶液の塗布開始時点t0からバルブ全開となる時点t1までの時間τsが短くなる。ここで、色素溶液の塗布開始時点t0とは、ノズル406の先端から色素溶液が出始めた時点を指す。
【0044】
本実施の形態では、色素溶液の塗布開始時点t0からバルブ全開となる時点t1までの時間τsが0.1秒以上、1秒以下となるようにしている。この条件を満足させるために、本実施の形態では、第1のスピードコントローラ462の開度を5%以上、50%以下にすることによって、バルブの開き速度を最高速度に対して5%以上、50%以下にしている。
【0045】
これにより、色素溶液が基板202に落下した時点での色素溶液の四方への飛散を防止することができ、外観不良の発生を防止することができる。
【0046】
また、バルブ装置本体468内の流体は前記出力ポート470及び排気ポート472を通じて流体の排気系460に導かれるようになっており、この流体の排気量に応じたバルブ装置本体468内の圧力減少に伴って内部のバルブが閉方向に動作する。従って、バルブの閉じ速度は、単位時間当たりの流体の排気量に比例することになり、この排気量は、第2のスピードコントローラ464の開度によって調整可能となっている。
【0047】
バルブが閉方向に動作することにより、ノズル406を通じての色素溶液の吐出が停止し、1枚の基板202に対する色素塗布処理が終了することとなる。
【0048】
このとき、図5に示すように、バルブの開度の減少に対応して、吐出量が時間の経過に伴ってほぼ比例的に減少し、バルブが全閉となった段階で色素溶液の吐出量が0、即ち、色素溶液の吐出が停止する。
【0049】
この場合も、吐出量が比例的に減少する段階での吐出量の変化幅(特性上の傾き)は、バルブの閉じ速度に依存し、該閉じ速度が小さくなるのに従って小さくなる。換言すれば、第2のスピードコントローラ464の開度を小さくすればするほど吐出量の変化幅が小さくなり、色素溶液の塗布停止開始時点t2からバルブ全閉となる時点(色素溶液の吐出量が0になる時点)t3までの時間τeが長くなる。反対に、第2のスピードコントローラ464の開度を大きくすればするほど吐出量の変化幅が大きくなり、色素溶液の塗布停止開始時点t2からバルブ全閉となる時点t3までの時間τeが短くなる。
【0050】
本実施の形態では、色素溶液の塗布停止開始時点t2からバルブ全閉となる時点t3までの時間τeがなるべく短くなるように、第2のスピードコントローラ464の開度を100%に設定している。
【0051】
一方、図2及び図3に示すように、スピナーヘッド装置402は、前記溶液供給装置400の下方に配置されており、着脱可能な固定具420により、基板202が水平に保持されると共に、駆動モータ(図示せず)により軸回転が可能とされている。
【0052】
スピナーヘッド装置402による水平に保持された状態で回転している基板202上に、上記の溶液供給装置400のノズル406から滴下した色素溶液は、基板202の表面上を外周側に流延する。そして、余分の色素溶液は基板202の外周縁部で振り切られ、その外側に放出され、次いで塗膜が乾燥されることにより、基板202の表面上に塗膜(色素記録層204)が形成される。
【0053】
飛散防止壁404は、基板202の外周縁部から外側に放出された余分の色素溶液が周辺に飛散するのを防止するために設けられており、上部に開口422が形成されるようにスピナーヘッド装置402の周囲に配置されている。飛散防止壁404を介して集められた余分の色素溶液はドレイン424を通して回収されるようになっている。
【0054】
また、第2の処理部32(図1参照)における各スピンコート装置52の局所排気は、前記飛散防止壁404の上方に形成された開口422から取り入れた空気を基板202の表面上に流通させた後、各スピナーヘッド装置402の下方に取り付けられた排気管426を通じて排気されるようになっている。
【0055】
溶液供給装置400のノズル406は、図6及び図7に示すように、軸方向に貫通孔430が形成された細長い円筒状のノズル本体432と、該ノズル本体432を支持板410(図3参照)に固定するための取付部434を有する。ノズル本体432は、その先端面及びその先端面から1mm以上の範囲の外側又は内側、あるいは両方の壁面がフッ素化合物からなる表面を有する。このフッ素化合物としては、例えばポリテトラフルオロエチレンやポリテトラフルオロエチレン含有物等を使用することができる。
【0056】
この実施の形態で用いられる好ましいノズル406の例としては、例えば、図7に示すように、ノズル本体432の先端面及びその先端面から1mm以上の範囲をフッ素化合物を用いて形成したノズル406や、図8に示すように、ノズル本体432の先端面440及びその先端面440から1mm以上の範囲の外側又は内側、あるいは両方の壁面442及び444をフッ素化合物を用いて被覆したノズル406を挙げることができる。
【0057】
ノズル本体432の先端面及びその先端面から1mm以上の範囲をフッ素化合物で形成する場合、強度などを考慮すると、実用的には、例えばノズル本体432をステンレススチールで形成し、その先端面及びその先端面から最大で5mmの範囲をフッ素化合物で形成することが好ましい。
【0058】
また、図8に示すように、ノズル本体432の先端面440及びその先端面440から1mm以上の範囲の外側又は内側、あるいは両方の壁面442及び444をフッ素化合物で被覆する場合、ノズル本体432の先端面440から10mm以上、更に好ましくは、ノズル本体432の全領域をフッ素化合物で被覆することが好ましい。被覆する場合のその厚みは、特に制限はないが、5〜500μmの範囲が適当である。また、ノズル本体432の材質としては、上記のように、ステンレススチールが好ましい。ノズル本体432に形成された貫通孔430の径は一般に0.5〜1.0mmの範囲である。
【0059】
次に、この製造システム10によって光ディスクを製造する過程について図9A〜図11をも参照しながら説明する。
【0060】
まず、第1及び第2の成形設備12A及び12Bにおける成形機20において、ポリカーボネートなどの樹脂材料が射出成形、圧縮成形又は射出圧縮成形されて、図9Aに示すように、一主面にトラッキング用溝又はアドレス信号等の情報を表す凹凸(グルーブ)200が形成された基板202が作製される。
【0061】
前記基板202の材料としては、例えばポリカーボネート、ポリメタルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、アモルファスポリオレフィン及びポリエステルなどを挙げることができ、所望によりそれらを併用してもよい。上記の材料の中では、耐湿性、寸法安定性及び価格などの点からポリカーボネートが好ましい。また、グルーブ200の深さは、0.01〜0.3μmの範囲であることが好ましく、その半値幅は、0.2〜0.9μmの範囲であることが好ましい。
【0062】
成形機20から取り出された基板202は、後段の冷却部22において冷却された後、一主面が下側に向けられてスタックポール24に積載される。スタックポール24に所定枚数の基板202が積載された段階で、スタックポール24はこの成形設備12A及び12Bから取り出されて、次の塗布設備14に搬送され、該塗布設備14におけるスタックポール収容部40に収容される。この搬送は、台車で行ってもよいし、自走式の自動搬送装置で行うようにしてもよい。
【0063】
スタックポール24がスタックポール収容部40に収容された段階で、第1の搬送機構42が動作し、スタックポール24から1枚ずつ基板202を取り出して、後段の静電ブロー機構44に搬送する。静電ブロー機構44に搬送された基板202は、該静電ブロー機構44において静電気が除去された後、第2の搬送機構46を介して次の色素塗布機構48に搬送され、6つのスピンコート装置52のうち、いずれか1つのスピンコート装置52に投入される。スピンコート装置52に投入された基板202は、その一主面上に色素溶液が塗布された後、高速に回転されて色素溶液の厚みが均一にされた後、乾燥処理が施される。これによって、図9Bに示すように、基板202の一主面上に色素記録層204が形成されることになる。
【0064】
即ち、スピンコート装置52に投入された基板202は、図2に示すスピナーヘッド装置402に装着され、固定具420により水平に保持される。次に、加圧式タンクから供給された色素溶液は、バルブ装置408によって所定量が調整され、基板202上の内周側にノズル406を通して滴下される。
【0065】
このノズル406は、上述したように、その先端面及びその先端面から1mm以上の範囲の外側又は内側、あるいは両方の壁面がフッ素化合物からなる表面を有しているため、色素溶液の付着が生じにくく、また、これが乾燥して色素の析出やその堆積物が生じにくく、従って、塗膜を塗膜欠陥などの障害を伴うことなくスムーズに形成させることができる。
【0066】
なお、色素溶液としては色素を適当な溶剤に溶解した色素溶液が用いられる。色素溶液中の色素の濃度は一般に0.01〜15重量%の範囲にあり、好ましくは0.1〜10重量%の範囲、特に好ましくは0.5〜5重量%の範囲、最も好ましくは0.5〜3重量%の範囲にある。
【0067】
駆動モータによってスピナーヘッド装置402は高速回転が可能である。基板202上に滴下された色素溶液は、スピナーヘッド装置402の回転により、基板202の表面上を外周方向に流延し、塗膜を形成しながら基板202の外周縁部に到達する。
【0068】
特に、本実施の形態では、図11に示すような処理手順で基板202上に色素溶液を塗布する。まず、図11のステップS1において、基板202を回転数=約270rpmまで上昇させると同時に、溶液供給装置400における支持板410(図3参照)を水平方向に回転させてノズル406を例えば基板202の半径46mmの位置までもっていく。
【0069】
その後、ステップS2において、基板202の回転数を270rpmとしたまま、色素溶液の塗布を開始し、その状態で支持板410を水平方向に回転させてノズル406を基板202上の所定の位置Ps(図4及び図12参照)まで約2秒で移動させる。
【0070】
ここで、所定の位置Psとは、図4及び図12に示すように、基板202の外周端部P1から5mm以上内周寄りの位置であって、前記基板202上における内周側の塗布しない部分、即ち、色素記録層204として形成されるべき領域の内周側の端部P0から5mm以上、好ましくは10mm以上、更に好ましくは15mm以上外周寄りの位置である。本実施の形態では半径23mmの位置としている。
【0071】
次に、ステップS3において、色素溶液の塗布を開始し、一度内周側に移動した後、色素溶液の塗布を行いながら、支持板410を水平方向に回転させてノズル406を半径40mmの位置まで約3秒かけて移動させ、同時に基板202の回転数を550rpmまで上昇させる。
【0072】
その後、ステップS4において、色素溶液の塗布を停止し、支持板410を水平方向に回転させてノズル406を元の位置(初期状態)に戻す。
【0073】
次に、ステップS5において、基板202の回転数を630rpmまで6秒かけて上昇させる。
【0074】
その後、ステップS6において、基板202の回転数を6.3秒かけて1400rpmまで上昇させる。
【0075】
そして、ステップS7において、基板202の回転数を1.7秒かけて2200rpmまで上昇させ、その後、基板202の回転数(=2200rpm)を5秒間維持させる。
【0076】
ステップS5〜ステップS7での回転数の上昇によって、基板202の外周縁部に達した余分の色素溶液は、更に遠心力により振り切られ、基板202の縁部の周囲に飛散する。飛散した余分の色素溶液は、図2及び図3に示すように、飛散防止壁404に衝突し、更にその下方に設けられた受皿に集められた後、ドレイン424を通して回収される。塗膜の乾燥はその形成過程及び塗膜形成後に行われる。塗膜(色素記録層)の厚みは、一般に20〜500nmの範囲に、好ましくは50〜300nmの範囲に設けられる。
【0077】
また、上述のステップS1〜ステップS7における色素塗布処理においては、図示しない空調システムによって、塗布設備14に送り込む清浄な空気の風速を約0.4m/sec以下に設定している。つまり、基板202の色素塗布面に対する空調風速を約0.4m/sec以下に設定するようにしている。
【0078】
前記ステップS7での処理が終了した段階で、基板202の回転を停止させて基板202に対する色素溶液の塗布処理が終了する。
【0079】
ここで、色素記録層204に用いられる色素は特に限定されない。使用可能な色素の例としては、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、イミダゾキノキサリン系色素、ピリリウム系・チオピリリウム系色素、アズレニウム系色素、スクワリリウム系色素、Ni、Crなどの金属錯塩系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、インドフェノール系色素、インドアニリン系色素、トリフェニルメタン系色素、メロシアニン系色素、オキソノール系色素、アミニウム系・ジインモニウム系色素及びニトロソ化合物を挙げることができる。これらの色素のうちでは、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、アズレニウム系色素、スクワリリウム系色素、オキソノール系色素及びイミダゾキノキサリン系色素が好ましい。
【0080】
色素記録層204を形成するための塗布剤の溶剤の例としては、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどのエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルムなどの塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミドなどのアミド;シクロヘキサンなどの炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール;2,2,3,3−テトラフロロ−1−プロパノールなどのフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などを挙げることができる。
【0081】
前記溶剤は使用する色素の溶解性を考慮して単独または二種以上を適宜併用することができる。好ましくは、2,2,3,3−テトラフロロ−1−プロパノールなどのフッ素系溶剤である。なお、色素溶液中には、所望により退色防止剤や結合剤を添加してもよいし、更に酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、そして潤滑剤など各種の添加剤を、目的に応じて添加してもよい。
【0082】
退色防止剤の代表的な例としては、ニトロソ化合物、金属錯体、ジインモニウム塩、アミニウム塩を挙げることができる。これらの例は、例えば、特開平2−300288号、同3−224793号、及び同4−146189号等の各公報に記載されている。
【0083】
結合剤の例としては、ゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴムなどの天然有機高分子物質;およびポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物などの合成有機高分子を挙げることができる。
【0084】
結合剤を使用する場合に、結合剤の使用量は、色素100重量部に対して、一般に20重量部以下であり、好ましくは10重量部以下、更に好ましくは5重量部以下である。
【0085】
なお、色素記録層204が設けられる側の基板202の表面には、平面性の改善、接着力の向上および色素記録層204の変質防止などの目的で、下塗層が設けられてもよい。
【0086】
下塗層の材料としては例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトルエン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質、およびシランカップリング剤などの表面改質剤を挙げることができる。
【0087】
下塗層は、前記物質を適当な溶剤に溶解または分散して色素溶液を調整した後、この色素溶液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコートなどの塗布法を利用して基板表面に塗布することにより形成することができる。下塗層の層厚は一般に0.005〜20μmの範囲、好ましくは0.01〜10μmの範囲で設けられる。
【0088】
色素記録層204が形成された基板202は、第3の搬送機構50を介して次の裏面洗浄機構54に搬送され、基板202の一主面の反対側の面(裏面)が洗浄される。その後、基板202は、第4の搬送機構56を介して次の番号付与機構58に搬送され、図12に示すように、基板202の一主面又は裏面における内周側の透明部分474に対してロット番号等の刻印476がインクジェットによって行われる。
【0089】
その後、基板202は、第5の搬送機構60を介して次の検査機構62に搬送され、基板202の欠陥の有無や色素記録層204の膜厚の検査が行われる。この検査は、基板202の裏面から光を照射してその光の透過状態を例えばCCDカメラで画像処理することによって行われる。この検査機構62での検査結果は次の選別機構68に送られる。
【0090】
上述の検査処理を終えた基板202は、その検査結果に基づいて選別機構68によって正常品用のスタックポール64か、NG用のスタックポール66に搬送選別される。
【0091】
正常品用のスタックポール64に所定枚数の基板202が積載された段階で、正常品用のスタックポール64はこの塗布設備14から取り出されて、次の後処理設備16に搬送され、該後処理設備16のスタックポール収容部80に収容される。この搬送は、台車で行ってもよいし、自走式の自動搬送装置で行うようにしてもよい。
【0092】
正常品用のスタックポール64がスタックポール収容部80に収容された段階で、第6の搬送機構82が動作し、スタックポール64から1枚ずつ基板202を取り出して、後段の第1の静電ブロー機構84に搬送する。第1の静電ブロー機構84に搬送された基板202は、該第1の静電ブロー機構84において静電気が除去された後、第7の搬送機構86を介して次のスパッタ機構88に搬送される。
【0093】
スパッタ機構88に投入された基板202は、図9Cに示すように、その一主面中、周縁部分(エッジ部分)206を除く全面に光反射層208がスパッタリングによって形成される。
【0094】
光反射層208の材料である光反射性物質はレーザ光に対する反射率が高い物質であり、その例としては、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Biなどの金属及び半金属あるいはステンレス鋼を挙げることができる。
【0095】
これらのうちで好ましいものは、Cr、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Al及びステンレス鋼である。これらの物質は単独で用いてもよいし、あるいは二種以上を組み合わせて用いてもよい。または合金として用いてもよい。特に好ましくはAgもしくはその合金である。
【0096】
光反射層208は、例えば、前記光反射性物質を蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングすることにより記録層の上に形成することができる。反射層の層厚は、一般的には10〜800nmの範囲、好ましくは20〜500nmの範囲、更に好ましくは50〜300nmの範囲で設けられる。
【0097】
光反射層208が形成された基板202は、第8の搬送機構90を介して次のエッジ洗浄機構92に搬送され、図10Aに示すように、基板202の一主面中、エッジ部分206が洗浄されて、該エッジ部分206に形成されていた色素記録層204が除去される。その後、基板202は、第9の搬送機構102を介して次の第2の静電ブロー機構94に搬送され、静電気が除去される。
【0098】
その後、基板202は、同じく前記第9の搬送機構102を介してUV硬化液塗布機構96に搬送され、基板202の一主面の一部分にUV硬化液が滴下される。その後、基板202は、同じく前記第9の搬送機構102を介して次のスピン機構98に搬送され、高速に回転されることにより、基板202上に滴下されたUV硬化液の塗布厚が基板全面において均一にされる。
【0099】
この実施の形態においては、前記光反射層208の成膜後から前記UV硬化液の塗布までの時間が2秒以上、5分以内となるように時間管理されている。
【0100】
その後、基板202は、同じく前記第9の搬送機構102を介して次のUV照射機構100に搬送され、基板202上のUV硬化液に対して紫外線が照射される。これによって、図10Bに示すように、基板202の一主面上に形成された色素記録層204と光反射層208を覆うようにUV硬化樹脂による保護層210が形成されて光ディスクDとして構成されることになる。
【0101】
保護層210は、色素記録層204などを物理的及び化学的に保護する目的で光反射層208の上に設けられる。保護層210は、基板202の色素記録層204が設けられていない側にも耐傷性、耐湿性を高める目的で設けることもできる。保護層210で使用される材料としては、例えば、SiO、SiO2 、MgF2 、SnO2 、Si3 N4 等の無機物質、及び熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、そしてUV硬化性樹脂等の有機物質を挙げることができる。
【0102】
保護層210は、例えば、プラスチックの押出加工で得られたフイルムを接着剤を介して光反射層208上及び/または基板202上にラミネートすることにより形成することができる。あるいは真空蒸着、スパッタリング、塗布等の方法により設けられてもよい。また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の場合には、これらを適当な溶剤に溶解して色素溶液を調整したのち、この色素溶液を塗布し、乾燥することによっても形成することができる。
【0103】
UV硬化性樹脂の場合には、上述したように、そのまま、もしくは適当な溶剤に溶解して色素溶液を調整したのちこの色素溶液を塗布し、UV光を照射して硬化させることによって形成することができる。これらの色素溶液中には、更に帯電防止剤、酸化防止剤、UV吸収剤等の各種添加剤を目的に応じて添加してもよい。保護層210の層厚は一般には0.1〜100μmの範囲で設けられる。
【0104】
その後、光ディスクDは、第10の搬送機構104を介して次の欠陥検査機構106と特性検査機構108に搬送され、色素記録層204の面と保護層210の面における欠陥の有無や光ディスクDの基板202に形成されたグルーブ200による信号特性が検査される。これらの検査は、光ディスクDの両面に対してそれぞれ光を照射してその反射光を例えばCCDカメラで画像処理することによって行われる。これらの欠陥検査機構106及び特性検査機構108での各検査結果は次の選別機構114に送られる。
【0105】
上述の欠陥検査処理及び特性検査処理を終えた光ディスクDは、各検査結果に基づいて選別機構114によって正常品用のスタックポール110か、NG用のスタックポール112に搬送選別される。
【0106】
正常品用のスタックポール110に所定枚数の光ディスクDが積載された段階で、該スタックポール110が後処理設備16から取り出されて図示しないラベル印刷工程に投入される。
【0107】
このように、本実施の形態に係る製造システム10においては、基板202を回転させながら色素記録層204を形成するための色素溶液を基板202上に塗布する場合に、色素溶液の塗布開始時点t0からバルブ全開となる時点t1までの時間τsを0.1秒以上、1秒以下にして、色素溶液を吐出するバルブ装置408のバルブの開き速度を遅くするようにしたので、塗布開始時点t0において色素溶液がノズル406から急激に吐出するということがなくなり、色素溶液が基板202に落下した時点での色素溶液の四方への飛散を防止することができる。その結果、外観不良の発生を防止することができ、光ディスクDの歩留まりの向上を図ることができる。
【0108】
特に、本実施の形態では、色素溶液の塗布の開始位置Psを基板202上における内周側の塗布しない部分P0から5mm以上離れた位置、つまり、色素記録層204として形成されるべき領域の内周側の端部P0から5mm以上外周側寄りの位置としている。
【0109】
塗布の開始位置Psが基板202上における内周側の塗布しない部分P0から十分離れていれば、色素溶液が飛散しても問題とならない。飛散した飛沫がその後の塗布処理で流れ去ってしまうからである。
【0110】
塗布開始直後においては、色素溶液の吐出量が時間の経過に伴って過渡的に変化し、安定しないため、最内周から少し離れた位置で塗布を開始することが好ましい。最内周から塗布を開始すると、塗布むらの原因となり、色素記録層204の内周端がきれいな円形にならなくなるおそれがあるからである。
【0111】
本実施の形態では、色素溶液の塗布開始時点t0から一旦、内周側にノズル406を動かすようにしているため、色素記録層204の内周端がきれいな円形となる。
【0112】
なお、基板202の外で塗布を開始してしまうと、色素溶液が基板202の外周端部P1に当たったときに様々な方向に飛散し、塗布部近辺を汚してしまったり、基板202の裏面に溶液が付着するなどの問題が生ずる。
【0113】
従って、塗布の開始位置Psは、本実施の形態のように、基板202上が好ましく、更に好ましくは基板202の外周端部P1から5mm以上内周寄りがよい。また、前記基板202上における内周側の塗布しない部分P0から5mm以上、好ましくは10mm以上、更に好ましくは15mm以上外周寄りがよい。
【0114】
一方、色素溶液にかかる圧力、即ち加圧タンク452での圧力は、本実施の形態では1kgf/cm2 以下にしている。一般に、基板202に色素溶液を塗布する場合、急激に色素溶液の吐出が開始されるときに、色素溶液の四方への飛散が発生するが、色素溶液にかかる圧力が少ないときには、大きく飛散しないために外観不良等の問題は生じない。
【0115】
しかし、圧力が低すぎると、単位時間の吐出量が少なくなって、塗布速度が遅くなるため、規定量の色素溶液を塗布するのに時間がかかり、その結果、スループットの減少を招き、生産効率が低下するおそれがある。
【0116】
従って、色素溶液にかかる圧力の好ましい範囲は、上述したように、上限については1kgf/cm2 以下、好ましくは0.8kgf/cm2 以下、最も好ましくは0.6kgf/cm2 以下である。下限については、0.02kgf/cm2 以上、好ましくは0.05kgf/cm2 以上、最も好ましくは0.1kgf/cm2 以上である。
【0117】
【実施例】
次に、1つの実験例について説明する。この実験例は、図1に示す製造システム10にて光ディスクDを作製する場合において、サンプル(実施例1〜4並びに比較例1〜3)に関し、第1のスピードコントローラ462の開度を変えたときの飛散確率、塗布速度が安定するまでの時間及び塗布率をみたものである。
【0118】
ここで、飛散確率は、図12において、基板202上の内周側の透明部分474(飛沫が付着してほしくない部分)に付着した飛沫の分布に基づいて求めたもので、飛沫がまったく付着していない場合は0%となる。
【0119】
また、塗布速度が安定するまでの時間は、図5に示すように、色素溶液の塗布開始時点t0から色素溶液の塗布速度が一定になる時点(バルブ全開となる時点)t1までの時間τsを指す。塗布率は、基板202への色素溶液の塗布状態を色素記録層204の膜厚検査で求めたものであり、正常に塗布された場合を100%とした。
【0120】
色素記録層204の形成は以下の通りである。下記の一般式(1)で表されるシアニン色素化合物2.65gと下記の一般式(2)で表される退色防止剤0.265gを組み合わせて配合し、これらを下記の一般式(3)で表される2,2,3,3−テトラフロロ−1−プロパノール100ccに溶解して記録層形成用の色素溶液を調製した。
【0121】
【化1】
【0122】
【化2】
【0123】
【化3】
【0124】
その後、表面にスパイラル状のグルーブ(トラックピッチ:1.6μm、グルーブ幅:0.4μm、グルーブの深さ:0.16μm)が射出成形により形成されたポリカーボネート基板(直径:120mm、厚さ:1.2mm)のそのグルーブ側の表面に、回転数を270rpm〜2000rpmまで変化させながら前記色素溶液をスピンコートにより塗布し、色素記録層204(グルーブ内の厚さ:約200nm)を形成した。色素溶液の塗布処理は図11に示すステップに沿って行った。また、加圧タンクの圧力を0.3kgf/cm2 とした。
【0125】
この実験結果を図13に示す。この実験結果から、安定するまでの時間τsが0.1秒より長い実施例1〜実施例4並びに比較例1については、飛散確率が0%であり、外観不良がないことがわかる。
【0126】
しかし、比較例1については、第1のスピードコントローラ462の開度を5%よりも低い2%としているため、色素溶液の吐出量不足により、塗布されない部分が生じ、塗布率が20%であった。
【0127】
従って、この実験結果から、第1のスピードコントローラ462の開度として5%以上、50%以下が好ましい範囲であり、更に好ましくは20以上、50%以下であることがわかる。
【0128】
なお、この発明に係る光情報記録媒体の製造方法は、上述の実施の形態に限らず、この発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0129】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る光情報記録媒体の製造方法によれば、色素溶液の飛散を防止することができ、外観不良の発生防止並びに光情報記録媒体の歩留まりの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る製造システムの一例を示す構成図である。
【図2】塗布設備に設置されるスピンコート装置を示す構成図である。
【図3】塗布設備に設置されるスピンコート装置を示す斜視図である。
【図4】スピンコート装置を構成する溶液供給装置を示す構成図である。
【図5】バルブ装置から吐出される色素溶液の量(吐出量)の時間の経過に伴う変化を示す特性図である。
【図6】バルブ装置のノズルを示す平面図である。
【図7】バルブ装置のノズルの一例を示す側面図である。
【図8】バルブ装置のノズルの他の例を一部省略して示す拡大断面図である。
【図9】図9Aは基板上にグルーブを形成した状態を示す工程図であり、図9Bは基板上に色素記録層を形成した状態を示す工程図であり、図9Cは基板上に光反射層を形成した状態を示す工程図である。
【図10】図10Aは基板のエッジ部分を洗浄した状態を示す工程図であり、図10Bは基板上に保護層を形成した状態を示す工程図である。
【図11】本実施の形態に係る製造システムにおいて、基板に色素溶液を塗布する場合の処理手順を示す工程ブロック図である。
【図12】基板上での塗布開始位置を説明するための図である。
【図13】実験例の結果を示す図表である。
【図14】色素溶液の塗布時に生じる色素溶液の飛散を示す説明図である。
【符号の説明】
10…製造システム 14…塗布設備
48…色素塗布機構 52…スピンコート装置
202…基板 204…色素記録層
400…溶液供給装置 406…ノズル
408…バルブ装置 452…加圧タンク
456…急速排気弁 458…流体の供給系
460…流体の排気系
462…第1のスピードコントローラ
464…第2のスピードコントローラ
466…入力ポート 468…バルブ装置本体
470…出力ポート 472…排気ポート
474…透明部分 476…刻印
D…光ディスク
Claims (6)
- 基板上に、レーザ光の照射により情報を記録することができる記録層を有するヒートモード型の光情報記録媒体の製造方法において、
前記記録層を形成するための溶液であって、色素をフッ素系溶剤に溶解した溶液を、前記基板を回転させながら前記基板上に塗布する場合に、
前記溶液の塗布開始から塗布終了までの前記基板の回転数が270〜550rpmの範囲内にあり、
前記溶液を供給するノズルの径が0.5mm以上、1.0mm以下であり、
前記溶液の塗布開始時点から前記溶液の塗布量を時間の経過に伴って過渡的に上昇させて最終的な一定の塗布量になるまでの時間が0.1秒以上、1秒以下であることを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。 - 請求項1記載の光情報記録媒体の製造方法において、
バルブの開閉によって前記溶液の前記基板に対する吐出の実行及び停止を行うバルブ装置を使用し、
前記バルブの開き速度を最高速度に対して5%以上、50%以下にすることを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。 - 請求項2記載の光情報記録媒体の製造方法において、
前記バルブの開閉が流体圧で行われる場合に、
前記バルブ装置に供給される流体の流量を制御するためのスピードコントローラを使用し、
前記流体の流量を決定する前記スピードコントローラの開度を5%以上、50%以下にすることを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の光情報記録媒体の製造方法において、
塗布を開始する位置が、前記基板上であることを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。 - 請求項4記載の光情報記録媒体の製造方法において、
塗布を開始する位置が、前記基板上における内周側の塗布しない部分から5mm以上離れていることを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の光情報記録媒体の製造方法において、
前記溶液にかかる圧力が1kgf/cm2以下であることを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。
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