JP3919535B2 - 乾式トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法、トナージェット法などを利用した記録方法に用いられるトナーに関するものである。詳しくは、本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ、プロッター等に利用し得る画像記録装置に用いられるマゼンタトナーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、デジタルフルカラー複写機やプリンターが実用化され、解像力,階調性はもとより、色むらのない色再現性に優れた高画質画像が得られるようになってきた。
【0003】
デジタルフルカラー複写機においては、色画像原稿を、B(ブルー),G(グリーン),R(レッド)の各色フィルターで色分解した後、オリジナル画像に対応した20〜70μmのドット径からなる潜像をY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),Bk(ブラック)の各色トナーを用い、加熱加圧定着時の減色混合作用を利用して再現している白黒複写機と比べ多量のトナーを感光体から中間転写体を介して、又は、介さずに転写材に転写させる必要がある。
【0004】
カラートナーの中でも、マゼンタトナーは、肌色を再現するのに重要であり、さらに、人物像における肌の色調はハーフトーンであることから、優れた現像性も要求される。
【0005】
従来、電子写真方式には、熱可塑性樹脂と共に着色剤である顔料と帯電制御剤などとを混練し粉砕したトナーが一般に用いられている。この場合、特にマゼンタトナーにおいては、着色剤である顔料が分散されにくいため着色力が高まらず、また、顔料の分散粒子が光を散乱させ、トナーの透明性を低下させるという問題を生じやすかった。このため、複数のカラートナーを重ね合わせて形成した多色画像の色再現性が劣り、またオーバーヘッドプロジェクター(OHP)用の透明シートに転写・定着して形成した画像の投影画像は、暗く、彩度が低くなるという欠点を有していた。特に上記の如く問題点は、懸濁重合法や乳化重合法によりトナーを製造した際に生じ易いといった傾向があった。
【0006】
これらの問題に対しては、主にマゼンタトナーに用いる顔料や染料の改良、顔料や染料の併用による改良が提案されている。例えば特開平1−224777号公報には、キナクリドン系顔料及びキサンテン系染料を併用することにより鮮明なマゼンタ色のトナーが得られ、耐光性が向上することが開示されている。また特開平2−13968号公報には、キナクリドン系顔料及びメチン系顔料を併用することにより定着ローラーを汚染することなく鮮明なカラー画像が得られることが開示されている。
【0007】
一方、特開平11−52625号公報では、C.I.Pigment Red48類に分類される赤色顔料とL*a*b*表色系においてb*値が−5以下であるキナクリドン系顔料等の赤色顔料を全顔料に対して2〜30質量%の混合比率で併用することにより、良好なマゼンタ色のトナーが得られ、トナーの帯電特性や耐光性が向上し、更には定着ローラーへの耐熱性を改善させる方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、これらの提案によっても、1)色再現する為に分光反射特性に優れ、鮮明なマゼンタ色を有すること、2)着色剤の樹脂に対する分散性が良好で高着色を有すること、3)環境において安定した摩擦帯電特性を有すること、4)透明性が良好であること、などのすべての要求特性を十分に満足するマゼンタトナーは得られていない。
【0009】
乾式現像法に適用されるトナーは、一般に、主成分として、結着樹脂、着色剤及びワックス成分を含有してなる着色樹脂微粒子(トナー粒子)であり、通常、その粒子径は個数平均径で6〜15μm程度である。この様な着色樹脂微粒子からなるトナーの製造方法としては、結着樹脂、染顔料及び/又は磁性体の如き着色剤、ワックス成分等を溶融粉砕し、混練物を冷却後、粉砕し、更に粉砕物を分級してトナー粒子を得る、所謂、粉砕法によってトナーを得るのが一般的である。
【0010】
このような方法によって得られるトナーは、現像される静電荷像の帯電極性に応じて、正又は負の電荷を有するように構成する必要がある。トナーに電荷を保有せしめるためには、トナーの主成分である結着樹脂の摩擦帯電性を利用することもできるが、これだけではトナーの帯電性は低いものになる。そこで、所望の摩擦帯電性をトナーに付与するために荷電制御剤をトナー中に添加することが行われている。この様な荷電制御剤を含有するトナーは、比較的高い摩擦帯電量を示す場合があるものの、一般に、高湿下におけるトナーの帯電量や低湿下における帯電速度の低下がみられる。
【0011】
この原因の一つとして、トナー粒子中や粒子表面に存在する荷電制御剤付近での水分の吸脱着が挙げられ、環境の雰囲気変化による荷電制御剤中の吸着水分量の増減がトナーの帯電特性に影響を与えていると考えられる。
【0012】
今日、当該技術分野で知られている荷電制御剤としては、負帯電性のものとして、モノアゾ染料の金属錯塩、サリチル酸の金属錯塩、ナフトエ酸の金属錯塩、ジカルボン酸の金属錯塩、銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
【0013】
上記の荷電制御剤の多くは、電荷付与能力としては十分に高いものが多いが、制御性に乏しいため、使用し得る結着樹脂や他の材料に制限があった。
【0014】
一方、特開昭63−184762号公報では、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸を構成モノマーとして有する荷電制御樹脂を含有するトナー、また、特開平8−123096号公報では、該荷電制御樹脂と特定のモノアゾ染料のFe錯塩を併用し、且つ該モノアゾ染料のFe錯塩のトナー中の存在比を特定したトナーに関する技術が開示されている。しかしながら、該荷電制御樹脂は結着樹脂に対する分散性が良好であるため、前者の場合には効率良く荷電制御能力を発揮するには添加量を増やす必要を生じた。また、トナーの着色力については、全く考慮されていない。一方、後者の場合、該モノアゾ染料のFe錯塩のトナー中の存在比を特定することにより画像形成装置とのマッチングがある程度改善されるが、トナーの帯電性自身については使用環境の影響に対して改善の余地があるばかりか、有彩色の荷電制御剤を用いることを必須としているため、カラー用トナーへの適応を非常に困難なものとしている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述の如き問題点を解決した乾式トナーを提供するものである。
【0016】
すなわち、本発明の目的は、着色力に優れ、鮮明な色彩が得られる乾式トナーを提供することにある。本発明の更なる目的は、OHPシートの定着画像において投影画像の色空間が広く、透明性に優れた乾式トナーを提供することにある。本発明の更なる目的は、負荷電性に優れ、良好な電子写真特性を達成し得る乾式トナーを提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、重合性単量体、キナクリドン系着色剤、モノアゾ系着色剤及び含硫黄重合体を少なくとも含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で懸濁重合する工程を含む製造法で製造されたトナーであって、
該トナーは、少なくとも結着樹脂、キナクリドン系着色剤及びモノアゾ系着色剤、含硫黄重合体を含有し、該トナー中のキナクリドン系着色剤とモノアゾ系着色剤の総含有量が1〜20質量%で、含有量の質量比率がキナクリドン系着色剤:モノアゾ系着色剤=25:75〜75:25であることを特徴とする乾式トナーに関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の乾式トナーは、少なくとも結着樹脂、キナクリドン系着色剤及びモノアゾ系着色剤、含硫黄重合体を含有する乾式トナーであって、該トナー中のキナクリドン系着色剤とモノアゾ系着色剤の総含有量が1〜20質量%で、含有量の質量比率がキナクリドン系着色剤:モノアゾ系着色剤=25:75〜75:25であることを特徴とするものである。
【0019】
本発明者らは、鋭意検討の結果、トナー中の着色剤を上記の如く選択/配合し、且つトナー中に含硫黄重合体を含有させることによって、トナーの現像特性、色調、着色力、耐光性及び帯電特性等をバランス良く改善することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
本発明者らの知見によれば、トナー中の着色剤を上記の如く選択/配合し、且つトナー中に含硫黄重合体を含有させることによって、トナーの現像特性、色調、着色力、耐光性及び帯電特性等がバランス良く改善される。これらの理由については必ずしも明らかではないが、トナー粒子中に一次粒子の構造が類似するキナクリドン系着色剤とモノアゾ系着色剤を混在させることによってそれぞれの顔料組成物自身の再凝集が抑制され、両顔料組成物間の相互作用に基づく共存効果により両顔料組成物間での比較的緩やかな再凝集状態が生み出されることによって、望ましい発色性が付与されると共に、トナー製造時において含硫黄重合体が分散剤として働き着色剤の分散性を更に向上させることにより、色調、着色力、透明性及び帯電特性が著しく改善されると考えられる。更に、それぞれの顔料組成物自身は再凝集が抑制されると共に、トナー粒子表面では粒子表面に存在する含硫黄重合体の荷電制御効果によってトナー粒子への帯電付与と逆電荷保持の防止が行われるため、トナーに望ましい現像特性や帯電特性が付与されたものと推定している。
【0021】
本発明に係るキナクリドン系着色剤としては、下記構造式[1]で示される顔料組成物が挙げられ、これらを単独、もしくは併用して用いることができる。
【0022】
【化4】
〔X1及びX2は、水素原子、又はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれる置換基を示す。〕
【0023】
これらの中でも、C.I.Pigment Red 122、C.I.Pigment Red 202、又はC.I.Pigment Violet 19(それぞれカラーインデックス第4版記載の名称による)が、色相や耐光性といった物理的安定性の観点から好ましく用いられる。
【0024】
一方、本発明に係るモノアゾ系着色剤としては、下記構造式[2]で示される顔料組成物が挙げられ、これらを単独、もしくは併用して用いることができる。
【0025】
【化5】
〔R1,R2,R3はそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アニリド、及びスルファモイル基から選ばれる置換基を示す。R4は下記の群より選ばれ、下記の群中の置換基R5〜R8は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基から選ばれる置換基を示す。〕
【0026】
【化6】
【0027】
これらの中でも、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 31、C.I.Pigment Red 146、C.I.Pigment Red 147、C.I.Pigment Red 150、C.I.Pigment Red 176、C.I.Pigment Red 184、C.I.Pigment Red 185、又はC.I.Pigment Red 269(それぞれカラーインデックス第4版記載の名称による)が、上記キナクリドン系着色剤の再凝集抑制による分散性の改善、更には発色性や帯電特性の向上等の点から好ましく用いられる。
【0028】
本発明の乾式トナー中のキナクリドン系着色剤とモノアゾ系着色剤の総含有量は1〜20質量%、好ましくは3〜10質量%であって、且つ、両者の含有量の質量比率は、キナクリドン系着色剤:モノアゾ系着色剤=25:75〜75:25を満足するように配合される。
【0029】
トナー中のキナクリドン系着色剤とモノアゾ系着色剤の総含有量が1質量%未満の場合は、着色剤としての機能を十分に果たすことができない。また、20質量%を超える場合には、トナー粒子中での着色剤の存在状態が過剰となり、キナクリドン系着色剤とモノアゾ系着色剤の共存効果が消失し、着色剤の再凝集が進行するため、透明性や帯電特性に悪影響を及ぼすようになる。
【0030】
また、キナクリドン系着色剤とモノアゾ系着色剤の含有量の質量比率が、キナクリドン系着色剤:モノアゾ系着色剤=25:75〜75:25の範囲外である場合には共存効果が消失するばかりか、モノアゾ系着色剤の含有比率が25質量%未満の場合には十分な着色力が得られず、75質量%を超える場合には耐光性等に新たな問題を生じる。
【0031】
更に、本発明に係るモノアゾ系着色剤は、従来公知の方法により、その表面を処理することができるが、特にロジン化合物による処理が着色剤の再凝集を防止し、トナー粒子中での着色剤の分散性が向上し、更にはトナーの帯電特性を好ましい状態にすることができるので、上記の如き特性が一層改善される。
【0032】
本発明に係るモノアゾ系着色剤を好ましく処理できるロジン化合物としては、天然ロジン(トール油ロジン、ガムロジン、ロッドロジンなど)、あるいは天然ロジンから抽出して得られる精製ロジン(アビエチン酸など)、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)、合成ロジン(スチレンアクリルロジン酸など)、更には、上記ロジンのアルカリ金属塩やエステル化合物を挙げることができる。
【0033】
上記の如きロジン化合物により、着色剤を処理する方法としては、(1)ロジン化合物と着色剤を乾式混合した後、必要に応じて溶融混練等の熱処理を施す乾式混合法、(2)着色剤製造時の着色剤の合成溶液中にロジンのアルカリ水溶液を加えた後、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、又はマンガン等のレーキ金属塩を添加し、ロジンを不溶化することで着色剤表面に被覆処理を施す湿式処理法等が挙げられる。
【0034】
着色剤中にロジン化合物を1〜40質量%、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは10〜20質量%含有させることによって、上記の如き特性を一層良好なものとすることができる。
【0035】
本発明に用いられる含硫黄重合体としては、側鎖にスルホン酸基を有する高分子型化合物等が挙げられ、特にスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系モノマーを共重合比で2質量%以上、好ましくは5質量%以上含有し、且つガラス転移温度(Tg)が40〜90℃、重量平均分子量が10,000〜15,000であるスチレン及び/又はスチレン(メタ)アクリル酸共重合体からなる高分子型化合物を用いた場合、トナー粒子に求められる熱特性に影響を及ぼすことなく、好ましい帯電特性を享受することができ、さらに着色剤の分散性が十分なものとなる。
【0036】
上記のスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系モノマーとしては、下記一般式[3]で表されるものが好ましく、具体的には、2−アクリルアミド−2−メチルプロパン酸や2−メタクリルアミド−2−メチルプロパン酸等が挙げられる。
【0037】
【化7】
〔上記一般式[3]中、R9は水素原子、又はメチル基を示し、R10とR11は、それぞれ水素原子、C1〜C10のアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアルコキシ基を示し、nは1〜10の整数を示す。〕
【0038】
本発明に係る含硫黄重合体は、トナー粒子中に結着樹脂100質量部に対して2〜10質量部含有させることにより、トナー粒子が逆電荷を保持しにくくなり、帯電状態を一層良好なものとすることができる。
【0039】
本発明に係るトナーを製造する方法としては、結着樹脂、本発明に係る着色剤、ワックス成分等を加圧ニーダー等により溶融混練した後、冷却した混練物を所望のトナー粒径に微粉砕し、更に微粉砕物を分級して粒度分布を調整してトナーにする粉砕法;特公昭36−10231号公報、特開昭59−53856号公報及び特開昭59−61842号公報に記載されている懸濁重合法を用いて直接トナーを製造する方法;特公昭56−13945号公報等に記載のディスク又は多流体ノズルを用いて溶融混練物を空気中に霧化して球状トナーを製造する方法;及びソープフリー重合法に代表される乳化重合法等、公知の方法を用いることが可能であるが、懸濁重合法によりトナーを製造することが好ましい。
【0040】
懸濁重合法により製造されるトナーは、結着樹脂、本発明に係る着色剤、極性樹脂、ワックス成分、荷電制御樹脂、及び重合開始剤を混合して重合性単量体組成物を調製し、重合性単量体組成物を水系媒体中へ分散して重合性単量体組成物の粒子を生成し、水系媒体中で重合性単量体組成物の粒子中のスチレンモノマーを重合して生成される。本発明に用いられるキナクリドン系着色剤やモノアゾ系着色剤は、親水性の官能基を多く有しているため、水系分散媒体中で重合性単量体組成物の造粒粒子を重合してトナー粒子を形成する際、キナクリドン系着色剤やモノアゾ系着色剤が単独で存在する場合には、分散質である重合性単量体組成物と水系媒体の界面に向け移行し、結果としてトナー粒子表面近傍で再凝集を生じる。このようなキナクリドン系着色剤やモノアゾ系着色剤の再凝集物は、上述したように、得られたトナー粒子の帯電量や帯電速度等に対して悪影響を及ぼす。
【0041】
これに対して、キナクリドン系着色剤とモノアゾ系着色剤を上記の如き関係を満足する配合量の範囲内に適宜調整し、重合性単量体組成物の一部分と共に予め分散/混合した後に懸濁重合法によりトナーを製造することによって、キナクリドン系着色剤やモノアゾ系着色剤の単独での再凝集が防止されると共に、トナー粒子中にキナクリドン系着色剤とモノアゾ系着色剤の相互作用を保ったまま内包化することが可能となり、得られるトナーに望ましい帯電特性や発色性を付与することができる。
【0042】
特に、本発明のトナーを懸濁重合法や乳化重合法により製造した場合、着色剤の分散不良に起因する問題を未然に防止できるだけではなく、本発明に係る含硫黄重合体は上記の如き構造を有するため、トナー粒子表面付近に配向し、優れた帯電特性を付与すると共に、上記の如き着色剤を用いた場合には、該着色剤のトナー粒子表面近傍への移行も防止するため、より一層帯電特性が改善される。更に、懸濁重合法においては、該荷電制御樹脂がトナー粒子表面付近に均一に配向し、水中の分散剤と引き合うことで該粒子表面を分散剤で均一に覆うことにより、粒子同士の合一を防ぎ、優れた造粒安定性を示し、製造面において好ましい効果をもたらす。
【0043】
本発明に用いられるトナーの結着樹脂としては、一般的に用いられているスチレン−(メタ)アクリル共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。重合法により直接トナー粒子を得る方法においては、それらを形成するための単量体が用いられる。具体的にはスチレン;o−(m−,p−)メチルスチレン、m−(p−)エチルスチレンの如きスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸メチル,(メタ)アクリル酸エチル,アクリル酸プロピル,(メタ)アクリル酸ブチル,(メタ)アクリル酸オクチル,(メタ)アクリル酸ドデシル,(メタ)アクリル酸ステアリル,(メタ)アクリル酸ベヘニル,(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル,(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル,(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルの如き(メタ)アクリル酸エステル系単量体;ブタジエン,イソプレン,シクロヘキセン,(メタ)アクリロニトリル,アクリル酸アミドの如きエン系単量体が好ましく用いられる。これらは、単独、または、一般的には出版物ポリマーハンドブック第2版III−p139〜192(John Wiley&Sons社製)に記載の理論ガラス転移温度(Tg)が、40〜75℃を示すように単量体を適宜混合して用いられる。理論ガラス転移温度が40℃未満の場合にはトナーの保存安定性や耐久安定性の面から問題が生じやすく、一方75℃を超える場合はトナーのフルカラー画像形成の場合において、OHP画像の透明性が低下する。
【0044】
本発明において、上述の結着樹脂と共にポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂等の極性樹脂を併用することができる。
【0045】
例えば、懸濁重合法等により直接トナーを製造する場合には、分散工程から重合工程に至る重合反応時に極性樹脂を添加すると、トナー粒子となる重合性単量体組成物と水系分散媒体の呈する極性のバランスに応じて、添加した極性樹脂がトナー粒子の表面に薄層を形成したり、トナー粒子表面から中心に向け傾斜性をもって存在するように制御することができる。この時、本発明に係る着色剤や含硫黄重合体と相互作用を有するような極性樹脂を用いることによって、トナー中への該着色剤の存在状態を望ましい形態にすることが可能である。
【0046】
上記極性樹脂の添加量は、結着樹脂100質量部に対して1〜25質量部使用するのが好ましく、より好ましくは2〜15質量部である。1質量部未満ではトナー粒子中での極性樹脂の存在状態が不均一となり、逆に25質量部を超えるとトナー粒子表面に形成される極性樹脂の薄層が厚くなるため、好ましくない。
【0047】
本発明に用いられる極性樹脂としては、具体的には、ポリエステル樹脂,エポキシ樹脂,スチレン−アクリル酸共重合体,スチレン−メタクリル酸共重合体,スチレン−マレイン酸共重合体が挙げられる。特にピーク分子量が3000〜10,000のポリエステル樹脂がトナー粒子の流動性、負摩擦帯電特性、透明性を良好にすることができるので好ましい。
【0048】
本発明において使用し得るワックス成分としては、具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムの如き石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスの如き天然ワックス及びそれらの誘導体等が挙げられ、誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含まれる。また、高級脂肪族アルコールの如きアルコール;ステアリン酸、パルミチン酸の如き脂肪族或いはその化合物;酸アミド、エステル、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物ワックス、動物ワックスが挙げられる。これらは単独、もしくは併せて用いることができる。
【0049】
本発明に用いられるワックス成分としては、「ASTM D3418−82」に準じて測定されたDSC曲線における主体吸熱ピーク温度(融点)が30〜120℃、より好ましくは40〜90℃の範囲にある化合物が、定着性、更には透明性を良好にすることができ好ましい。
【0050】
さらに、本発明においては、トナー粒子の機械的強度を高めると共に、トナー粒子の分子量を制御するために、結着樹脂の合成時に架橋剤を用いることが好ましい。
【0051】
本発明のトナーに用いられる架橋剤としては、2官能の架橋剤として、ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA日本化薬)、及び上記のジアクリレートをジメタクリレートに代えたものが挙げられる。
【0052】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシ、ポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0053】
これらの架橋剤は、前記単量体100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部用いることが良い。
【0054】
本発明のトナーを懸濁重合法により製造する場合、重合開始剤としては、具体的には、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドの如き過酸化物系重合開始剤が用いられる。これらの重合開始剤の使用量は、目的とする重合度により変化するが、一般的には、重合性ビニル系単量体100質量部に対して5〜20質量部用いられる。重合開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、10時間半減期温度を参考に、単独又は混合して使用される。
【0055】
本発明のトナーを懸濁重合法により製造する場合、水系分散媒体調製時に使用する分散剤としては、公知の無機系及び有機系の分散剤を用いることができる。具体的には、無機系の分散剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナが挙げられる。また、有機系の分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンを用いることができる。
【0056】
また、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンダデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムを用いることができる。
【0057】
本発明のトナーを懸濁重合法により製造する場合、水系分散媒体調製時に使用する分散剤としては、無機系の難水溶性の分散剤が好ましく、しかも酸に可溶性である難水溶性無機分散剤を用いるとよい。また、本発明においては、難水溶性無機分散剤を用い、水系分散媒体を調製する場合に、これらの分散剤が重合性ビニル系単量体100質量部に対して、0.2〜2.0質量部となるような割合で使用することが好ましい。また、本発明においては、重合性単量体組成物100質量部に対して300〜3,000質量部の水を用いて水系分散媒体を調製することが好ましい。
【0058】
本発明において、上記したような難水溶性無機分散剤が分散された水系分散媒体を調製する場合には、市販の分散剤をそのまま用いて分散させてもよいが、細かい均一な粒度を有する分散剤粒子を得るために、水等の液媒体中で、高速撹拌下、上記したような難水溶性無機分散剤を生成させて調製してもよい。例えば、リン酸三カルシウムを分散剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸三カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散剤を得ることができる。
【0059】
【実施例】
以下、具体的実施例によって本発明を説明するが、本発明はなんらこれらに限定されるものではない。
【0060】
実施例に使用される含硫黄重合体の具体例を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
(トナーの製造例1)
高速撹拌装置TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を具備した2リットル用4つ口フラスコ中に、イオン交換水700質量部と0.1mol/リットル−Na3PO4水溶液800質量部を投入し、高速撹拌装置の回転数を12000rpmに設定し、65℃に加温せしめた。ここに1.0mol/リットル−CaCl2水溶液70質量部を添加し、微小な難水溶性分散安定剤Ca3(PO4)2を含む水系分散媒体を調製した。
【0063】
一方、
・キナクリドン系着色剤 4質量部
(C.I.Pigment Red 122)
・キナクリドン系着色剤 1質量部
(C.I.Pigment Violet 19)
・モノアゾ系着色剤 3質量部
[C.I.Pigment Red 150 2.9質量部
ロジン化合物のカルシウム塩(アビエチン酸カルシウム) 0.1質量部]
・スチレン単量体 47質量部
・含硫黄重合体(R−1) 3質量部
・ポリエステル系樹脂(ピーク分子量=7000) 5質量部
からなる混合物をアトライター(三井金属社製)を用い3時間分散し、顔料分散組成物を調製した。
【0064】
更に、別容器にて、
・スチレン単量体 30質量部
・2−エチルヘキシルアクリレート単量体 23質量部
・ジビニルベンゼン単量体 0.3質量部
・エステルワックス(融点=60℃) 10質量部
からなる混合物に前記顔料分散組成物63質量部を添加し、65℃に加温しながら分散、溶解せしめた後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5質量部を添加し、分散質としての重合性ビニル系単量体組成物を調製した。
【0065】
次に、前記水系分散媒体中に該重合性単量体組成物を投入し、内温65℃のN2雰囲気下で、高速撹拌装置の回転数を15000rpmに維持しつつ、5分間撹拌し、該重合性単量体組成物を造粒した。その後、撹拌装置をパドル撹拌羽根を具備したものに換え、200rpmで撹拌しながら同温度に保持し、重合性ビニル系単量体の重合転化率がほぼ100%になったところで重合反応を完了した。
【0066】
重合終了後、加熱減圧下で残存モノマーを留去し、次いで、冷却後に希塩酸を添加して難水溶性分散剤を溶解せしめた。更に水洗浄を数回繰り返した後、円錘型リボン乾燥機(大川原製作所製)を用い、乾燥処理を行い、重合体粒子(A)を得た。
【0067】
上記重合体粒子(A)100質量部とシリコーンオイル処理シリカ微粉体(BET;200m2/g)1.5質量部をヘンシェルミキサー(三井金属社製)で乾式混合して、トナー(A)とした。該トナー(A)の円相当個数平均径は5.7μmであった。
【0068】
(トナーの製造例2〜5)
キナクリドン系着色剤とモノアゾ系着色剤の種類と添加量、及び含硫黄重合体の種類と添加量を変更する以外は、前記トナーの製造例1と同様にして、重合体粒子(B)〜(E)を得た後、トナー(B)〜(E)を調製した。
【0069】
(トナーの製造例6)
下記材料を予め混合物し、二軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕し、粗粉砕物をジェットミルで微粉砕し、得られた微粉砕物を分級して分級粉(F)とした。
・結着樹脂 100質量部
[スチレン−2−エチルヘキシルアクリレート−ジビニルベンゼン共重合体
ピーク分子量=1.6万、Mw/Mn=5.0、Tg=60℃]
・キナクリドン系着色剤 8質量部
(C.I.Pigment Red 122)
・モノアゾ系着色剤 4質量部
(C.I.Pigment Red 146)
・含硫黄重合体(R−2) 3質量部
・パラフィンワックス(融点=65℃) 10質量部
【0070】
上記分級粉(F)を用い、前記トナーの製造例1と同様にして、トナー(F)を調製した。
【0071】
(比較用トナーの製造例1)
モノアゾ系着色剤を用いず、キナクリドン系着色剤として「C.I.Pigment Red 122」8質量部を用いることに変更する以外は、前記トナーの製造例1と同様にして比較用重合体粒子(a)を得た後、比較用トナー(a)を調製した。
【0072】
(比較用トナーの製造例2)
キナクリドン系着色剤を用いず、モノアゾ系着色剤として「C.I.Pigment Red 184」5質量部を用い、含硫黄重合体として「R−3」1質量部を用いることに変更する以外は、前記トナーの製造例1と同様にして比較用重合体粒子(b)を得た後、比較用トナー(b)を調製した。
【0073】
(比較用トナーの製造例3)
キナクリドン系着色剤として「C.I.Pigment Red 202」4質量部、またモノアゾ系着色剤として「C.I.Pigment Red 146」4質量部を用い、含硫黄重合体をカリックスアレーンに変更する以外は、前記トナーの製造例1と同様にして比較用重合体粒子(c)を得た後、比較用トナー(c)を調製した。
【0074】
(比較用トナーの製造例4)
着色剤として「C.I.Pigment Red 57:1」5質量部を用い、含硫黄重合体をカリックスアレーンに変更する以外は、前記トナーの製造例6と同様にして分級品(d)を得た後、比較用トナー(d)を調製した。
【0075】
(比較用トナーの製造例5)
キナクリドン系着色剤として「C.I.Pigment Red 19」2質量部、またモノアゾ系着色剤として「C.I.Pigment Red 184」7質量部を用い、含硫黄重合体をカリックスアレーン2質量部に変更する以外は、前記トナーの製造例6と同様にして分級品(e)を得た後、比較用トナー(e)を調製した。
【0076】
上記トナーの製造例及び比較用トナーの製造例の主な処方内容について、表2にまとめた。
【0077】
(トナーの製造例7)
着色剤として「C.I.Pigment Blue 15:3」5質量部を用いることを変更する以外は、前記トナーの製造例1と同様にして重合体粒子を得た後、シアントナーを調製した。
【0078】
(トナーの製造例8)
着色剤として「C.I.Pigment Yellow 93」7質量部を用いることを変更する以外は、前記トナーの製造例1と同様にして重合体粒子を得た後、イエロートナーを調製した。
【0079】
〔実施例1〕
画像形成装置として、レーザービームプリンター(キヤノン製:LBP−2160)を改造して用いた。このプロセスカートリッジにトナーの製造例1で得られたトナー(A)を投入し、転写材として複写機用普通紙(75g/m2)を用い、単色モードにて印字面積比率4%の文字画像を28枚(A4サイズ)/分のプリントアウト速度で5,000枚分をプリントアウトした後、プリントアウト画像を評価したところ、画像濃度、画像カブリ抑制は良好であり、いずれもプリント初期と同等であった。
【0080】
また、0.1mg/cm2から1.0mg/cm2の範囲で転写紙上のトナー量の異なる数種類のベタ画像を作成し、転写紙上のトナー量と画像濃度の関係を評価したところ、転写紙上のトナー量が比較的少量であっても十分な画像濃度の画像が得られ、着色力の高さが確認できた。
【0081】
また、転写紙上のトナー量が0.6mg/cm2程度のベタ画像を作成し、画像耐光性を評価したところ、優れた耐光性を示した。
【0082】
更に、マゼンタトナー(A)に加え、トナーの製造例7で得られたシアントナーとトナーの製造例8で得られたイエロートナーを用い、上記と同様にして、複写機用普通紙(75g/m2)にフルカラー画像をプリントアウトしたところ、2次色以上の重ね合わせにおいても良好であり、色再現性の優れた画像が得られた。また、OHPシート「CG3700」(3M社製)上にプリントアウトしOHP投影画像を評価したところ、透明性に優れ、さらに2次色以上の重ね合わせにおいても良好であり、色空間が広く優れた投影画像が得られた。
【0083】
これらの評価結果を表3にまとめて示した。
【0084】
尚、評価方法及びその評価基準は次の通りであり、後述の実施例の2〜5、参考例1及び比較実施例1〜5もこれらに従っている。
【0085】
(評価方法)
(1)画像濃度
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に一辺が5mmの正方形のベタ画像をプリントアウトし、「X−Rite504」(X−Rite社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。
A:1.40以上
B:1.30以上、1.40未満
C:1.20以上、1.30未満
D:1.20未満
【0086】
(2)画像力ブリ
ベタ白画像形成時の感光体上の転写残余のトナーをマイラーテープによってテーピングして剥ぎ取り、それを紙上に貼ったものについて反射濃度を「X−Rite504」で測定する。得られた反射濃度から、マイラーテープをそのまま紙上に貼った時の反射濃度を差し引いた数値を用いて評価した。数値が小さいほど、画像カブリが抑制されていることになる。
A:0.03未満
B:0.03以上、0.07未満
C:0.07以上、0.15未満
D:0.15以上
【0087】
(3)着色力
0.1mg/cm2から1.0mg/cm2の範囲で転写紙上にトナー量の異なる数種類のベタ画像を作成し、それらの画像濃度を「X−Rite504」を用いて測定し、転写紙上のトナー量と画像濃度の関係を求めた後、特に転写紙上のトナー量が0.5mg/cm2の場合に対応する画像濃度をもって相対的に着色力を評価した。
A:転写紙上のトナー量が0.5mg/cm2で、画像濃度が1.4以上
B:転写紙上のトナー量が0.5mg/cm2で、画像濃度が1.35以上、1.40未満
C:転写紙上のトナー量が0.5mg/cm2で、画像濃度が1.20以上、1.35未満
D:転写紙上のトナー量が0.5mg/cm2で、画像濃度が1.20未満
【0088】
(4)画像耐光性
転写紙上のトナー量が0.6mg/cm2程度のベタ画像を作成し、カーボンアークランプを光源とした紫外線オートフェードメーター「FAL−AU」(スガ試験機社製)を用い、「JIS K 7102」に準じて評価した。最大照射時間を240時間とし、光照射前後の画像濃度の維持率を算出し、画像の耐光性を評価した。画像濃度維持率(%)が100%に近い程、画像耐光性に優れることになる。
A:90%以上
B:80%以上、90%未満
C:70%以上、80%未満
D:70%未満
【0089】
(5)普通紙上色再現性
複写機用普通紙(75g/m2)上のフルカラー画像を目視評価すると共に、「X−Rite SP68」(X−Rite社製)にて測定し、国際照明委員会で規格されたL*a*b*表色系の明度L*、赤または緑の度合いを表すa*、黄または青の度合いを表すb*で決定される色空間立体の体積を求めた。数値が大きいほど色空間が広く、小さいほど色再現性が乏しいことを意味する。
【0090】
<色空間体積>
A:250万以上
B:200万以上250万未満
C:150万以上200万未満
D:150万未満
【0091】
<目視評価>
A:マゼンタ、2次色(赤色、青色)いずれの色再現性も優れる
B:マゼンタの色再現性は優れるが、2次色(赤色、青色)はやや劣る
C:マゼンタ、2次色(赤色、青色)いずれの色再現性もやや劣る
D:マゼンタ、2次色(赤色、青色)いずれの色再現性も劣る
【0092】
(6)フルカラー投影画像色再現性及び透明性
OHPシート「CG3700」(3M社製)上のフルカラー画像をOHP「9550」(3M社製)にて透過画像とし、白色壁面に投影した画像を目視評価すると共に、分光放射輝度計「PR650」(フォトリサーチ社製)にて測定し、国際照明委員会で規格されたL*a*b*表色系の明度L*、赤または緑の度合いを表すa*、黄または青の度合いを表すb*で決定される色空間立体の体積を求めた。数値が大きいほど色空間が広く、小さいほど色再現性が乏しいことを意味する。
【0093】
<色空間体積>
A:250万以上
B:200万以上250万未満
C:150万以上200万未満
D:150万未満
【0094】
<目視評価>
A:鮮やかで、且つ透明性に優れる
B:透明性は良好で、マゼンタの色再現性は優れるが、2次色(赤色、青色)はやや劣る
C:透明性はやや劣り、マゼンタ、2次色(赤色、青色)いずれの色再現性もやや劣る
D:くすみがあり、マゼンタ、2次色(赤色、青色)いずれの色再現性も劣る
【0095】
〔実施例2〜5、参考例1及び比較例1〜5〕
トナーとして、トナー(B)〜(F)、及び比較用トナー(a)〜(e)を使用する以外は実施例1と同様にして評価した。結果を表3に示した。
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、少なくともキナクリドン系着色剤とモノアゾ系着色剤とを含有する乾式トナーにおいて、該トナー中のキナクリドン系着色剤とモノアゾ系着色剤を好ましく選択/配合し、更に含硫黄重合体を含有することによって、トナー粒子中での発色性や分散性を向上させることを可能とし、良好な着色力及び帯電特性を有すると共に、耐光性に優れた極めて鮮明な色彩が得られ、OHP透明性に優れたトナーが提供される。
Claims (9)
- 重合性単量体、キナクリドン系着色剤、モノアゾ系着色剤及び含硫黄重合体を少なくとも含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で懸濁重合する工程を含む製造法で製造されたトナーであって、
該トナーは、少なくとも結着樹脂、キナクリドン系着色剤及びモノアゾ系着色剤、含硫黄重合体を含有し、該トナー中のキナクリドン系着色剤とモノアゾ系着色剤の総含有量が1〜20質量%で、含有量の質量比率がキナクリドン系着色剤:モノアゾ系着色剤=25:75〜75:25であることを特徴とする乾式トナー。 - 含硫黄重合体がスルホン酸基を有する重合体であることを特徴とする請求項1に記載の乾式トナー。
- キナクリドン系着色剤が、C.I.Pigment Red 122、C.I.Pigment Red 202、又はC.I.PigmentViolet 19(それぞれカラーインデックス第4版記載の名称による)の群から選ばれるいずれかであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の乾式トナー。
- モノアゾ系着色剤が、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 146、C.I.Pigment Red 147、C.I.Pigment Red 150、C.I.Pigment Red 184、又はC.I.Pigment Red 269(それぞれカラーインデックス第4版記載の名称による)の群から選ばれるいずれかであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の乾式トナー。
- モノアゾ系着色剤が、ロジン化合物で処理されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の乾式トナー。
- 含硫黄重合体が、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系モノマーを共重合比で2質量%以上含有し、ガラス転移温度(Tg)が40〜90℃のスチレン及び/又はスチレン(メタ)アクリル酸共重合体からなる高分子型化合物であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の乾式トナー。
- 乾式トナーが、フルカラー画像形成時にマゼンタ色のトナー像の形成に供されるマゼンタトナーであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の乾式トナー。
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