JP3914666B2 - 熱収縮性積層フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、収縮包装、収縮結束包装、収縮ラベル等に使用される熱収縮性積層フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
収縮包装や収縮結束包装、プラスチック容器の収縮ラベル、ガラス容器の破壊飛散防止包装、キャップシール等に広く使用される熱収縮性フィルムの材質としては、塩化ビニル系樹脂が最も良く知られている。これは、塩化ビニル系樹脂により作られた熱収縮性フィルムが、機械強度、剛性、光学特性、収縮特性等の実用性に優れ、コストも低いからである。
【0003】
しかし、塩化ビニル系樹脂は、廃棄後の燃焼時に塩素ガス等の副生成物が発生するという環境問題の観点から、塩化ビニル系樹脂以外の材料が要望されている。
【0004】
このような材料の1つとして、スチレン系樹脂が挙げられる。このスチレン系樹脂からなる延伸フィルムは、高い透明性や光沢性、剛性を有し、かつ、優れた低温収縮特性を有することから、熱収縮性フィルムとして使用することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、廃プラスチックをリサイクルする際に、材質の異なるプラスチックを分離する方法として、水に対する浮力差を利用した液比重分離法が用いられる。この方法を用いて、スチレン系樹脂からなる熱収縮ラベルを被覆したポリエチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル系樹脂製ボトルの粉砕品を分離しようとした場合、飽和ポリエステル系樹脂の比重は、1.300〜1.500と水より重く、また、スチレン系樹脂の比重は、1.030〜1.060と水より若干重い。このため、飽和ポリエステル系樹脂とスチレン系樹脂が共に水に沈むため、飽和ポリエステル系樹脂を高精度で分離することが難しくなる。
【0006】
また、一般的に、熱収縮性フィルムの表面又は裏面にグラビア印刷法等により印刷を施すと、印刷の分だけ比重は大きくなる。このため、この熱収縮性フィルムを熱収縮ラベルとして飽和ポリエステル系樹脂製ボトルに使用する場合、リサイクル時に上記液比重分離法で高精度に分別するためには、熱収縮性フィルムの印刷後の比重が1.0未満となるように、熱収縮性フィルムの組成を決定する必要がある。上記印刷の分の比重を考慮した場合、熱収縮性フィルムの比重は、0.96未満とする必要がある。
【0007】
比重を0.96未満とする熱収縮性フィルム用の材料としては、エチレン系樹脂やプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂があげられる。しかし、オレフィン系樹脂からなる延伸フィルムは、フィルムの剛性不足、収縮時の収縮不足、低温収縮性の不良、自然収縮(常温よりやや高い温度、例えば夏場においてフィルムが本来の使用前に少し収縮してしまうこと)等の問題が生じやすい。また、一般的にオレフィン系樹脂からなるフィルムは印刷適正が悪く、フィルムに印刷処理を施す場合、フィルム印刷面にコロナ放電処理等の表面処理を施す必要がある。
【0008】
そこで、この発明の課題は、スチレン系樹脂が有する高い透明性や光沢性、優れた低温収縮性、印刷適正を損なうことなく、比重を0.96未満とする熱収縮性フィルムを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明は、密度が0.94g/cm3 未満のオレフィン系樹脂と接着樹脂からなる層を中間層とし、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸エステル系モノマーからなる共重合体の連続相中に、分散粒子としてゴム状弾性体を1〜20重量%含有し、損失弾性率のピーク温度が50〜95℃の範囲にあるゴム状弾性分散スチレン系樹脂を表面層及び裏面層として積層体を形成し、この積層体の各層の厚みが、(表面層+裏面層)/中間層=1/1.5〜1/6であり、この積層体を少なくとも一軸方向に2〜6倍延伸して熱収縮性積層フィルムを得ることにより上記課題を解決したのである。
【0010】
中間層にオレフィン系樹脂を用い、また、各層が所定の厚みを有するので、得られる熱収縮性積層フィルムの比重を0.960未満にすることができ、印刷を施しても、熱収縮性積層フィルム全体の比重が1.000未満とすることができる。
【0011】
また、表面層及び裏面層にスチレン系樹脂を用いるので、印刷のための表面処理等は不要となり、得られる熱収縮性積層フィルムは、高い光沢性や優れた印刷適正、低温収縮性を有する。したがって、得られる積層体は、熱収縮性フィルムとして有用な特徴を有する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を説明する。
【0013】
この発明にかかる熱収縮性積層フィルム(以下、「積層フィルム」と略する。)は、オレフィン系樹脂と接着樹脂からなる層を中間層とし、ゴム状弾性体分散スチレン系樹脂を表面層及び裏面層として積層体を形成したものである。
【0014】
上記オレフィン系樹脂は、低密度のオレフィン系樹脂である。この樹脂の例としては、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレン(以下、「LLDPE」と略する。)、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びそのけん化物、アイオノマー樹脂、ポリプロピレン、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、又は、これらの混合物等が挙げられる。上記LLDPEは、エチレンとα−オレフィンの共重合体であり、この共重合体に使用されるα−オレフィンの例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。上記オレフィン系樹脂の中でも、LLDPEが好ましい。
【0015】
上記オレフィン系樹脂の密度は、0.94g/cm3 未満がよく、0.870〜0.930g/cm3 が好ましい。密度が0.940g/cm3 以上だと、上記オレフィン樹脂を用いて積層フィルムを形成し、かつ、これに印刷処理を施したとき、全体の比重が1.000以上となる場合が生じやすい。このとき、飽和ポリエステル系樹脂製ボトルの被覆用として使用した場合のリサイクル時、液比重分離法で精度よく分別しにくくなる。一方、密度が0.870g/cm3 未満となると十分なフィルム剛性が得られにくくなる場合がある。
【0016】
また、上記オレフィン系樹脂の示差走査熱量計により測定される融点は、高くても120℃が好ましく、80〜110℃がより好ましい。120℃を越えると、得られる積層フィルムの低温延伸が困難となる場合があり、良好な低温収縮特性を得られない場合が生じる。
【0017】
さらに、上記オレフィン系樹脂のメルトフローインデックス(以下、「MI」と略する。)は、0.1〜20g/10分がよく、0.5〜5.0g/10分がより好ましい。MIが0.1g/10分未満の場合は、溶融押出時の押出負荷が大きくなる場合がある。また、20g/10分を越えると、延伸安定性が低下する場合がある。
【0018】
上記接着樹脂とは、上記オレフィン系樹脂からなる層と表面層及び裏面層の接着性を向上させるために用いられる樹脂である。この接着樹脂の例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びその変成体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等のエチレン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂等があげられる。
【0019】
上記の接着樹脂として用いられるスチレン系樹脂とは、スチレン系重合体ブロックとスチレン系モノマー以外の共重合可能なモノマーからなる重合体ブロックのブロック共重合体、又はその部分水添又は完全水添した水添ブロック共重合体をいう。例えば、スチレン系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック重合体、このブロック共重合体の共役ジエン系重合体ブロックを部分水添、又は完全水添した水添ブロック共重合体等があげられる。このブロック共重合体のスチレン系重合体ブロックには、例えば、スチレン、α−メイルスチレン、p−メチルスチレン等の単独重合体、それらの共重合体、又は、スチレン系モノマー以外の共重合可能なモノマーをブロック内に含む共重合体等がある。また、共役ジエン系重合体ブロックには、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等の単独重合体、それらの共重合体、又は、共役ジエン系モノマーと共重合可能なモノマーを簿ロック内に含む共重合体等があげられる。
【0020】
これらの接着樹脂として用いられるスチレン系樹脂の例としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(以下、「SBS」と略する。)及びその水素添加物や、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、及びその水素添加物等があげられる。
【0021】
上記接着樹脂として用いられるスチレン系樹脂の中でも好適に使用されるものとしては、SBSの水素添加物であり、通常、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(以下、「SEBS」と略する。)と称され、例えば、日本合成ゴム株式会社製の”ダイナロン”、シェル化学株式会社製の”クレイトンG”、旭化成工業株式会社製の”タフテック”等の商品名で市販されている。
【0022】
上記ブロック共重合体の構造及び各ブロック部分の構造は、特に限定されず、ブロック共重合体の構造としては、例えば、直線型、塁型等があげられる。また、各ブロック部分の構造としては、例えば完全対称ブロック、非対称ブロック、テトラブロック、テーパードブロック、ランダムブロック等があげられる。
【0023】
中間層に使用する上記ブロック共重合体中のスチレン含量は20〜75重量%がよく、より好ましくは30〜70重量%である。スチレン含量が20%未満の場合は、接着樹脂としての効果が得られにくく、また、75重量%を越えると、得られる積層フィルムの透明性が低下する場合がある。
【0024】
上記オレフィン系樹脂に対する接着樹脂の混合割合は、使用する接着樹脂中のスチレン含量にもよるが、中間層を構成する樹脂混合物全体に対して5〜50重量%がよく、20〜40重量%がより好ましい。5重量%より少ないと、接着樹脂としての効果が発現しにくく、また50重量%より多いと、得られる積層フィルムの比重が0.96を越えてしまう場合が生じやすくなる。
【0025】
上記表面層及び裏面層を構成するMS系樹脂は、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸エステル系モノマーからなる共重合体の連続相中に、分散粒子としてゴム状弾性体を1〜20重量%含有し、損失弾性率のピーク温度が50〜95℃の範囲にある樹脂であり、連続相を共重合とすることにより、分散粒子と屈折率を合わせて透明性を維持すると共に、ゴム状弾性体の効果により耐衝撃性を付与したものである。
【0026】
ここで連続相におけるスチレン系モノマーは、下記一般式〔A〕で示される構造式を有し、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは、下記一般式〔B〕で示される構造式を有する。
【0027】
【化1】
【0028】
ここで、式中、R1 は水素又はメチル基を示し、メチル基が好んで選択される。R2 は水素又はアルキル基を示し、炭素数1〜5のアルキル基が好んで選択される。
【0029】
【化2】
【0030】
ここで、式中、R3 は水素又はアルキル基を示し、メチル基が好んで選択される。R4 は水素又はアルキル基を示し、炭素数1〜20のアルキル基が好んで選択される。
【0031】
上記のスチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等があげられる。また、上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリルレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートがあげられる。なお、上記(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを示す。
【0032】
上記のスチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの混合比率は、上記連続相の屈折率が選択した上記ゴム状弾性体分散粒子の屈折率に近くなるように選択されるが、通常スチレン系モノマー/(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが30〜90/70〜10(重量比)の範囲で、他の特性も考慮しながら適宜調整される。
【0033】
このゴム状弾性体分散スチレン系樹脂の連続相を構成するモノマーとして最も好適に用いられるスチレン系モノマーはスチレンであり、また、最も好適に用いられる(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは、メチルメタクリレート(以下、「MMA」と略する。)及びブチルアクリレート(以下、「BA」と略する。)である。これは、これらは工業的に非常に多く生産されているため原料としてのコスト性に優れ、しかも重合時の反応性が高く、原料生産上のコスト性にも優れるばかりか、ランダム性の高い共重合が可能で、三者の組合せによって損失弾性率のピーク温度をはじめとする特性の制御が容易なためである。
【0034】
これらの共重合比は、スチレン/MMA/BA=30〜90/7〜67/3〜25(重量比)の間で調整するのが好ましい。MMAの共重合比のより好ましい範囲は20〜60重量%であるが、この範囲外では、連続相の屈折率をゴム状弾性体分散粒子の屈折率に近くなるように設定することが困難となる場合が生じやすく、透明性が低下し、熱収縮性フィルムとしてのクリアーなディスプレイ効果が低下して好ましくない場合が生ずることがある。また、BAの共重合比が上記範囲外となる場合は、損失弾性率のピーク温度を本発明の範囲内に調整することが困難となる。
【0035】
上記ゴム状弾性体分散スチレン系樹脂の損失弾性率のピーク温度は50〜95℃の範囲にあることがよい。損失弾性率のピーク温度が50℃未満だと、得られる積層フィルムの自然収縮率が大きくなり、寸法安定性が低下する場合が生じる。また、95℃を越えると収縮率不足が生じやすくなり、収縮仕上がり性が低下し好ましくない。
【0036】
この損失弾性率のピーク温度は、主に連続相の組成に依存する。スチレン/MMA/BAの系でいうと、剛直なMMA成分はピーク温度を高め、柔軟なBA成分はピーク温度を下げるので、これらの成分比でピーク温度を調整することができる。
【0037】
上記スチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸エステル系モノマーからなる共重合体の連続相中には、分散粒子としてゴム状弾性体を含有する。このゴム状弾性体としては、常温でゴム的性質を示すものであればよいが、連続相への分散性や屈折率を考慮して、一成分としてスチレンを含むものが好ましく、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、あるいはこれらの水素添加物等があげられる。特に、スチレン含量が10〜50重量%のものが好適である。
【0038】
上記ゴム状弾性体の含有量は、上記ゴム状弾性体分散スチレン系樹脂に対して1〜20重量%がよく、3〜15重量%が好ましい。1重量%未満では得られる積層フィルムの耐衝撃性(耐破断性)が低くなり、20重量%を超えると得られる積層フィルムの剛性が低下し、例えば収縮ラベルとして被覆対象物に被覆する工程で所定の位置に被覆できない等の不具合を生じる。
【0039】
上記ゴム状弾性体が形成する分散粒子の粒子径は、0.1〜1.5μmの範囲が好ましい。分散粒子径が0.1μm未満のものは、得られる積層フィルムの耐衝撃性の効果を十分発現しない場合がある。また、1.5μmを超えるものは、耐衝撃性を十分に付与することができるが、透明性が低下する場合が生じる。なお、分散粒子径は、原料ペレットから超薄切片法により調整した試料を透過型電子顕微鏡を用いて撮影した写真から求めた数平均粒子径をいう。
【0040】
上記ゴム状弾性体分散スチレン系樹脂の製造は、連続相形成用の原料溶液中にゴム状弾性体を溶解させ、攪拌しながら重合する方法により行うことができる。上記ゴム状弾性体から形成される分散粒子は、フィルム製膜までのいかなる工程でも添加することができるが、重合時に重合槽中のモノマー及び重合溶液に添加し分散することが最も効果的である。この場合、モノマー及び重合溶液は、粘度が低く分散が容易であり、また重合時にゴム状弾性体の粒子表面にモノマーがグラフト重合し、上記連続相への親和性が著しく高まり、透明性と耐衝撃性向上効果を最も発現し易い。分散粒子の粒子径は、ゴム状弾性体の種類や分子量にも依存するが、重合槽の攪拌羽根の回転数にも大きく依存する。したがって、重合槽の攪拌羽根の回転数を調整することにより、分散粒子の粒子径を調整することができる。
【0041】
上記ゴム状弾性体分散スチレン系樹脂には、上記の主成分以外に他の樹脂をブレンドすることができる。この場合、上記のように連続相と分散相の屈折率を合わせて透明性を維持しているため、その屈折率ができるだけ近い樹脂(主にスチレン系樹脂)を選択することが好ましい。
【0042】
このようにして得られたゴム状弾性体分散スチレン系樹脂から形成される層は、得られる積層体のもつ特性のうち、特に剛性、寸法安定性、実用収縮特性、印刷適正を発現させる機能を担う。
【0043】
なお、上記の各樹脂には、必要に応じて、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、無機フィラー等を適宜添加することができる。
【0044】
上記積層フィルムの各層の厚みは、(表面層+裏面層)/中間層=1/1.5〜1/6がよく、1/3〜1/5が好ましい。この値が1/6より小さくなると、剛性が低下する場合があり、また、得られる積層フィルムの自然収縮が大きくなり、寸法安定性に欠けるフィルムとなる場合があり、実用上好ましくない。1/1.5より大きくなると、得られる積層フィルムの比重が0.960以上となる場合が生じやすい。
【0045】
一般的に、熱収縮性フィルムの自然収縮率はできるだけ小さいほうが望ましく、例えば、30℃、30日程度の条件下で2%未満であれば実用上問題を生じない。
【0046】
上記の積層フィルムの製造は、特に限定されるものではなく、例えば、上記の表面層、裏面層及び中間層を別々の押出機によって溶融し、これをダイ内で積層させて押し出す方法があげられる。押出方法としては、Tダイ法、チューブラ法等、任意の方法を採用できる。溶融押出された積層樹脂は、冷却ロール、空気、水等で冷却された後、熱風、温水、赤外線、マイクロウェーブ等の適当な方法で再加熱され、ロール法、テンター法、チューブラ法等により、一軸又は二軸に延伸される。
【0047】
延伸温度は、積層フィルムを構成する上記各樹脂の軟化温度や上記積層フィルムに要求される用途によって変えられるが、60〜130℃がよく、80〜120℃が好ましい。60℃未満では、延伸過程における材料の弾性率が高くなり過ぎ延伸性が低下し、フィルムの破断を引き起こしたり、厚み斑が生じるなど、延伸が不安定になり易い。130℃を超えると、所望の収縮特性が発現しなかったり、延伸過程における材料の弾性率が低下し過ぎ、材料が自重で垂れ下がって延伸そのものが不可能になったりする。
【0048】
延伸倍率は、積層フィルムの構成組成、延伸手段、延伸温度、目的の製品形態に応じて、2〜6倍とするのがよい。さらに、一軸延伸とするか、二軸延伸とするかは、目的の用途によって決定される。また、一軸延伸の場合、横方向(フィルムの流れ方向と直角方向)に2〜6倍の延伸を付与し、縦方向(フィルムの流れ方向)に1.01〜1.8倍程度の弱延伸を付与してもよい。この場合、フィルムの機械物性改良の点で効果的である。
【0049】
また、延伸した後の積層フィルムの分子配向が緩和しない時間内に速やかに冷却するのも、収縮性を付与し、保持する上で重要である。
【0050】
延伸後の積層フィルムは、80℃の温水中で10秒間の熱収縮率が少なくとも、一方向において10%以上である必要がある。10%未満の場合は、熱収縮フィルムとして実用的な機能は発揮しえない場合が生じる。
【0051】
熱収縮性フィルムに要求される透明性としては、全ヘーズで10%以下であることが好ましく、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは、5%以下である。全ヘーズが10%を越えるようなフィルムでは、クリアーなディスプレー効果が低下してしまい、好ましくない。
【0052】
上記の延伸された積層フィルムの片面あるいは両面には、必要に応じてコロナ放電処理等の表面処理が施されてもよく、また、この表面又は裏面にグラビア印刷法等の任意の方法で印刷することができる。このとき、上記積層フィルムの密度の水に対する比、すなわち、比重は、印刷の分だけ比重は大きくなる。上記積層フィルムを飽和ポリエステル樹脂製ボトルの被覆材として使用した場合に、リサイクル時に水に対する浮力差を利用した液比重分離法を用いることを考慮すると、印刷処理前の上記積層フィルム全体の比重は、0.96未満がよく、0.80〜0.96が好ましい。これにより、印刷処理後の上記積層フィルム全体の比重が1.0未満となり、飽和ポリエステル樹脂と積層フィルムを構成する樹脂を高精度に分離することが可能となる。
【0053】
【実施例】
以下に、この発明について実施例を用いて説明する。なお、実施例に示す測定値及び評価は次にように行った。ここで、積層フィルムの引取り(流れ)方向を「縦」方向、その直行方向を「横」方向と記載する。
(1)熱収縮率
積層フィルムを、縦100mm、横100mmの大きさに切り取り、80℃の温水バスに10秒間浸漬し収縮量を測定した。熱収縮率は、横方向について収縮前の原寸に対する収縮量の比(%)で表した。
(2)収縮仕上がり性
10mm間隔の格子目を印刷した積層フィルムを縦100mm×横298mmの大きさに切り取り、横方向の両端を10mm重ねてテトラヒドロフラン/シクロヘキサン=1/7溶液を用いて接着し、円筒状とした。この円筒状積層フィルムを、容量1.5リットルの円筒型ペットボトルに装着し、蒸気加熱方式で3mの収縮トンネル内を回転させずに、10秒間で通過させた。吹き出し蒸気温度は97℃、トンネル内雰囲気温度は87〜95℃であった。
フィルムの被覆後、発生したシワ入り、アバタ、歪みの大きさ及び個数を総合的に評価した。評価基準は、シワ入り、アバタはなく、格子目の歪みも実用上問題なく、かつフィルムの密着性が良好なものを○、シワ入り、アバタ、格子目の歪みは若干あるが、フィルムの密着性は実用上問題のないものを△、シワ入り、アバタ、格子目の歪みが目立つか、収縮不足が目立ち実用上問題のあるものを×とした。
(3)自然収縮率
フィルムを縦方向100mm×横方向1,000mmの大きさに切り取り、30℃の雰囲気の恒温槽に30日間放置し、横方向について、収縮前の原寸に対する収縮量の比(%)で表した。
(4)全ヘーズ
反射・透過率計HR−100((株)村上色彩技術研究所)を用いて、JIS
K7105に準拠し、フィルム厚70μmで測定した。
(5)引張弾性率
インテスコ精密万能材料試験機205型((株)インテスコ社製)を用いて、縦方向において、雰囲気温度23℃、チャック間を300mmとして、幅5mmのフィルム試験片を引張速度5mm/分で引張試験を行い、引張応力−歪み曲線を作成した。引張弾性率は、引張応力−歪み曲線の始めの直線部分を用いて、次式にって計算した。
E=σ/ε
E:引張弾性率
σ:直線上の2点間の単位面積(引張試験前のサンプルの平均断面積)当た
りの応力の差
ε:同じ2点間の歪みの差
(6)比重
フィルムを2mm×7mmに切り出し、JIS K7112に準拠して、浮沈法によって測定した。
(7)損失弾性率のピーク温度
粘弾性スペクトロメータVES−F3(岩本製作所(株)社製)を用い、振動周波数10Hzで測定した。なお、測定値は、表面層及び裏面層を構成する原料を単独で押出した厚み0.5mmのシートをサンプルとし、横方向及び縦方向の測定の平均値を採用した。
【0054】
(実施例1)
密度0.904g/cm3 、MI14g/10分のLLDPE(宇部興産(株)社製:ユミリット0540F)70重量%と、スチレン40重量%とブタジエン60重量%からなるブロック共重合体を完全水添したSEBS(旭化成工業(株)製:タフテックH1051)30重量%とを同方向2軸押出機を用いて溶融混練し、ペレットを得た。得られたペレットを中間層を形成するための65mmφ単軸押出機に入れて、180〜220℃にて溶融混練した。
【0055】
また、スチレン5重量%とブタジエン7重量%とからなるスチレン−ブタジエン共重合体を分散粒子とし、スチレン46重量%、メチルメタクリレート30重量%、ブチルアクリレート12重量%からなる共重合体が連続相となった、損失弾性率のピーク温度が75℃であるゴム状弾性体分散スチレン系樹脂を、表面層又は裏面層を形成するための40mmφ単軸押出機に入れて、180〜220℃にて溶融混練した。
【0056】
そして、各層の厚みの比が、表面層:中間層:裏面層=1:6:1となるように、各押出機の押出量を設定し、210℃に保った3層ダイスより下向きに共押出した。得られた積層体を冷却した後、95℃の温度の雰囲気の三菱重工(株)製テンター延伸設備内で横方向に3.0倍延伸して、厚み約70μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性を評価した。その結果を表1に示す。このフィルムの比重は0.954であり、横方向の熱収縮率は21%、全ヘーズは4.1%、自然収縮率は1.6%と良好であった。また、収縮仕上がりの状態は、シワ入りアバタはなく、格子の歪み等の収縮斑も実用上問題なく、フィルムの密着性も良好であった。
【0057】
(実施例2)
実施例1において、表面層及び裏面層用の原料としてスチレン2.7重量%とブタジエン4重量%とからなるスチレン−ブタジエン共重合体を分散粒子とし、スチレン49.3重量%、メチルメタクリレート36重量%、ブチルアクリレート8重量%であるゴム状弾性体分散スチレン系樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性を評価した。その結果を表1に示す。このフィルムの比重は0.956であり、横方向の熱収縮率は19%、全ヘーズは4.0%、自然収縮率は1.5%と良好であった。また、収縮仕上がりの状態は、シワ入りアバタはなく、格子の歪み等の収縮斑も実用上問題なく、フィルムの密着性も良好であった。
【0058】
(比較例1)
実施例1で使用したLLDPEのみを65mmφ単軸押出機に入れて180〜220℃にて溶融混練し、ダイスより下向きに押出した。これを冷却した後、95℃の温度の雰囲気の三菱重工(株)製テンター延伸設備内で横方向に3.0倍延伸して、厚み約70μmのフィルムを得た。得られた積層フィルムの特性を評価した。その結果を表1に示す。このフィルムの比重は0.910であり、全ヘーズは1.2%と良好であったが、自然収縮率が2.8%と大きく、寸法安定性に欠けるフィルムであった。また、このフィルムの引張弾性率の値は18kgf/mm2 と低く、腰のないフィルムであった。収縮仕上がりの状態は、明らかに収縮不足の部分があった。
【0059】
(比較例2)
実施例1で使用したゴム状弾性体分散スチレン系樹脂のみを65mmφ単軸押出機に入れて180〜220℃にて溶融混練し、ダイスより下向きに押出した。これを冷却した後、95℃の温度の雰囲気の三菱重工(株)製テンター延伸設備内で横方向に3.0倍延伸して、厚み約70μmのフィルムを得た。得られた積層フィルムの特性を評価した。その結果を表1に示す。このフィルムの引張弾性率の値は214kgf/mm2 と高く、自然収縮率も0.4%と、フィルム剛性、寸法安定性に優れるものであったが、比重が1.081と0.960を越えるフィルムであった。収縮仕上がりの状態は、フィルムの密着性は良好であったが、格子目の歪みが多く目立つものであった。
【0060】
(比較例3)
実施例1において、各層の厚みの比が、表面層:中間層:裏面層=1:2:1となるように、各押出機の押出量を設定した以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性を評価した。その結果を表1に示す。このフィルムの引張弾性率の値は124kgf/mm2 と高く、自然収縮率も1.1%とフィルム剛性、寸法安定性に優れるものであったが、比重が0.994と0.960を越えるフィルムであった。収縮仕上がりの状態は、フィルムの密着性は良好であり、シワ入りやアバタはなかったが、格子目の歪みが若干あった。
【0061】
【表1】
【0062】
【発明の効果】
この発明によれば、印刷を施した後の熱収縮性積層フィルム全体の比重を1.000未満とすることができ、また、得られる熱収縮性積層フィルムは、良好な収縮仕上がり性、光沢性、剛性等を有する。このため、良好な熱収縮能を発揮すると共に、リサイクルを可能とし、熱収縮性積層フィルムの粉砕品と飽和ポリエステル系樹脂製ボトルの粉砕品を液比重分離法で精度よく分離することができる。
Claims (3)
- 密度が0.94g/cm3未満のオレフィン系樹脂と接着樹脂からなる層を中間層とし、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸エステル系モノマーからなる共重合体の連続相中に、分散粒子としてゴム状弾性体を1〜20重量%含有し、損失弾性率のピーク温度が50〜95℃の範囲にあるゴム状弾性分散スチレン系樹脂を表面層及び裏面層として積層体を形成し、
上記接着樹脂は、スチレン系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体を部分水添、又は完全水添した水添ブロック共重合体であり、
上記積層体の各層の厚みが、(表面層+裏面層)/中間層=1/1.5〜1/6であり、この積層体を少なくとも一軸方向に2〜6倍延伸した熱収縮性積層フィルム。 - 上記連続相を構成するスチレン系モノマーがスチレンであり、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが、メチル(メタ)クリレート及びブチル(メタ)アクリレートである請求項1に記載の熱収縮性積層フィルム。
- 比重が0.960未満である請求項1又は2に記載の熱収縮性積層フィルム。
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