JP3547317B2 - 熱収縮性ポリスチレン系積層フィルム - Google Patents

熱収縮性ポリスチレン系積層フィルム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に好適な特性を有する熱収縮性フィルムに関する。
【0002】
【従来技術とその課題】
収縮包装や収縮結束包装、あるいはプラスチック容器の収縮ラベル、ガラス容器の破壊飛散防止包装やキャップシールなどに広く利用される熱収縮性フィルムの材質としては、ポリ塩化ビニル(PVC)が最もよく知られている。これは、PVCから製造された熱収縮性フィルムが、機械強度、剛性、光学特性、収縮特性等の実用特性、およびコスト性も含めて、消費者の要求を比較的広く満足するからである。
【0003】
ところが、PVCは熱収縮性フィルムとしての優れた実用特性とコスト性を有しているものの、廃棄後燃焼すると塩素を含んだガスを発生し焼却炉を損傷し易い等の問題から、PVC以外からなる熱収縮性フィルムが要望されていた。
【0004】
このようなPVC以外の材料の一つとして、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(以下「SBS」と表記することがある)を主たる材料とするポリスチレン系熱収縮性フィルムが提案され使用されているが、このポリスチレン系フィルムは、PVCフィルムに比べ、収縮仕上がり性は良好なものの、自然収縮(常温よりやや高い温度、例えば夏場においてフィルムが本来の使用前に少し収縮してしまうこと)率が大きい等の問題を有している。このため、収縮仕上がり性が良好であり、かつ低温収縮性に優れフィルムの腰が強く、しかも自然収縮が少ない(耐自然収縮性)ポリスチレン系の熱収縮フィルムが求められていた。
【0005】
そこでビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素とからなるブロック共重合体と、ビニル芳香族炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとの共重合体の配合樹脂を延伸したフイルムが特開昭61−25819号(登録1671483)や特開平5−104630号にて提案されている。このフィルムは、SBSフィルムの欠点である自然収縮性を低減させ、さらにフィルムの腰が強くなるという特徴を有しているものの、耐衝撃性や収縮仕上がり性が不十分であることが分った。また特開平10−58540号公報には上記配合樹脂の損失正接のピーク温度の範囲によって良好なフィルムになることが示されている。しかし、該公報で規定されている弾性率特性では耐衝撃性は改良されるが、十分な収縮仕上がり性が得られないことが分った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素とからなるブロック共重合体と、ビニル芳香族炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとの共重合体を配合してなる混合重合体を中間層とし、スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素からなるブロック共重合体を主成分とした樹脂を表裏層とした積層フィルムを延伸することによって、単層では解決の困難であった上記の諸問題を解決することを見出し本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明の要旨は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素とからなるブロック共重合体と、ビニル芳香族炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとの共重合体を配合してなる混合重合体を中間層とし、スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とからなるブロック共重合体を主成分とした混合重合体であって該スチレン系炭化水素を該混合樹脂の総重量に対して77重量%以上含有する混合重合体を表裏層として中間層に積層し、少なくとも1軸に延伸したフィルムであって、80℃×10秒の熱収縮率が少なくとも一方向において10%以上であると共に下記方法により測定される耐熱融着性:
フィルムをMD60mm×TD30mmの大きさに切り取り、キャスティングロールに接した面同士を2枚重ねて、10mm幅のヒートシールバーを有するヒートシール機に、バーの長手方向にフィルムのMDを合わせセットした後、片側より加熱し、1.0kgf/cm の圧力で60秒間ヒートシールした後5分間放置してシール部を剥離し、破れずに剥離できるところの該加熱温度の最高値(耐熱融着性)
が96℃以上であることを特徴とする熱収縮性ポリスチレン系積層フィルムにある。
又、本発明は混合重合体がポリスチレン( GPPS )をさらに含むことを特徴とする上記フィルムである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の熱収縮性フィルムの中間層を構成する樹脂の一つはビニル芳香族炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとの共重合体である。
このビニル芳香族炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとの共重合体のビニル芳香族炭化水素とは、スチレン系炭化水素であり、例えばスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等がある。
【0009】
また脂肪族不飽和カルボン酸エステルとは、、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等を用いることができる。ここで上記(メタ)アクリレートとはアクリレート及び/又はメタクリレートを示している。
【0010】
本発明に最も好適に用いられる樹脂のビニル芳香族炭化水素はスチレンであり、脂肪族不飽和カルボン酸エステルはブチル(メタ)アクリレート(以下「BA」と表記する)である。
【0011】
本発明フイルムの剛性(弾性率)および耐自然収縮性はこの樹脂を中間層に配合することによって付与される。剛性のあるスチレン系樹脂としてはポリスチレンが挙げられるが、このポリスチレン樹脂は非常に高いビカット軟化温度を有しているため、BAを共重合しビカット軟化温度を調整することによって熱収縮フィルムに非常に適した樹脂となる。
【0012】
スチレンとBAの共重合比は使用用途によって適宜調整されるが一般的にはスチレンが98〜50重量%、より好ましくは95〜75重量%の範囲がよい。スチレンが50重量%未満ではビカット軟化温度は低下するが積層フィルムの剛性を付与させる役目を果たせなくなり、また98重量%を越えるものではビカット軟化温度が高すぎて積層フィルムの収縮性、特に低温収縮性に劣り易い。
【0013】
上記樹脂は室温より主に収縮開始温度までは非常に高い弾性率を保持しつつ、収縮温度領域において急激に弾性率の低下を示す。この特徴を持つ該樹脂を中間層に配合することによって本発明積層フィルムに剛性と耐自然収縮性を付与させることができる。
【0014】
しかし、上記樹脂はフィルムの腰や耐自然収縮性を付与させる反面、硬くて脆い性質がある。そのため該樹脂を単独で使用することは非常に困難である。耐破断性を付与させる目的でビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素からなるブロック共重合体を少なくとも1種以上配合することによって、フィルムに強い腰を有し、耐自然収縮性に優れ、さらに耐破断性をも付与させることが可能となる。
【0015】
上記ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素からなるブロック共重合体のビニル芳香族炭化水素ブロックとは、スチレン系炭化水素ブロックであり、例えばスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等の単独重合体、それらの共重合体及び/又はスチレン系炭化水素以外の共重合可能なモノマーをブロック内に含む共重合体等がある。
【0016】
また、共役ジエン系炭化水素により構成される共役ジエン系炭化水素ブロックには、例えばブタジエン、イソプレン、1、3−ペンタジエン等の単独重合体、それらの共重合体及び/又は共役ジエン系炭化水素以外の共重合可能なモノマーをブロック内に含む共重合体がある。
【0017】
本発明において最も好適に用いられる樹脂の組成はスチレン系炭化水素がスチレンであり、共役ジエン系炭化水素がブタジエンのいわゆるスチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)である。
【0018】
このSBSに関しては特に限定されないが、本発明フィルムの耐破断性はこの樹脂を配合することによって付与される。そのために損失弾性率のピーク温度が−100℃から−30℃の範囲に少なくとも1つ存在することが好ましい。この温度範囲にピーク温度が存在するSBS樹脂は非常に破断性が向上するためである。またスチレンの含有量としては50〜95重量%、より好ましくは60〜90重量%である。スチレン量が50重量%未満ではフィルムの剛性が低下してしまい、95重量%を越えるものでは耐破断性が低下する。さらに、スチレン−ブタジエンブロック共重合体はフィルムの耐破断性や収縮仕上がり性等を改良する目的で、2種類以上配合しても構わない。
【0019】
本発明フィルムにおいて、ビニル芳香族炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとの共重合体の配合量は中間層全体の30重量%以上、より好ましくは50重量%以上あることが好ましい。30重量%未満では積層フィルムに剛性、耐自然収縮性を付与させることが困難となる。またビニル芳香族炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとの共重合体とビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素とからなる1種類以上のブロック共重合体を配合してなる混合重合体の配合量は中間層全体の70重量%以上、より好ましくは90重量%以上あることが好ましい。上記混合重合体が70重量%未満では積層フィルムに上記に示した特性を付与させることが困難となるからである。
【0020】
本発明フィルムの中間層樹脂としては、上記に示した特定のビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素からなるブロック共重合体と、ビニル芳香族炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとの共重合体以外の重合体、例えばスチレン系重合体、一般にはポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−スチレン共重合体等を配合しても構わない。
【0021】
上述した内容の中間層は本発明フィルムがもつ優れた特性のうち、特に剛性、耐自然収縮性、実用収縮率を発現させる機能を担っている。
つぎに、本発明積層フィルムの表裏層の主体となる樹脂は、スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とからなるブロック共重合体を主成分とした樹脂である。
【0022】
スチレン系炭化水素により構成されるスチレン系炭化水素ブロックには、例えばスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等の単独重合体、それらの共重合体及び/又はスチレン系炭化水素以外の共重合可能なモノマーをブロック内に含む共重合体等がある。
【0023】
共役ジエン系炭化水素により構成される共役ジエン系炭化水素ブロックには、例えばブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等の単独重合体、それらの共重合体及び/又は共役ジエン系炭化水素以外の共重合可能なモノマーをブロック内に含む共重合体がある。
【0024】
ブロック共重合体の構造および各ブロック部分の構造は特に限定されない。ブロック共重合体の構造としては、例えば直線型、星型等がある。また、各ブロック部分の構造としては、例えば完全対称ブロック、非対称ブロック、テトラブロック、テーパードブロック、ランダムブロック等がある。
また、共重合組成比、ブロック共重合の構造および各ブロック部分の構造、分子量、重合方法の異なるブロック共重合体を2種類以上配合されているものでもよい。
【0025】
上記の表裏層において最も好適に用いられる樹脂の組成は、スチレン系炭化水素はスチレンであり、共役ジエン系炭化水素がブタジエンのいわゆるスチレン−ブタジエン共重合体(SBS)を主体とする混合物である。この理由は、工業的に非常に多くの種類の樹脂(共重合組成比、共重合の構造、ブロック部分の構造、分子量等が様々に異なっている)、つまり屈折率や熱的性質をはじめとする特性が異なった樹脂が生産されているため、要求特性に応じて複数の異なったスチレン−ブタジエン共重合体を組み合わせることによってフィルム特性の制御が容易に行えるからである。
【0026】
また、必要に応じて上記スチレン−ブタジエン共重合体混合物以外にもスチレン系重合体を配合することもできる。本発明において最も好適に用いられるスチレン系重合体はポリスチレン(GPPS)である。本発明の積層フィルムは主に中間層を構成する樹脂によって剛性を付与しているが、収縮仕上がり性を低下させない範囲でポリスチレンを混合することによって表裏層の剛性の向上も期待できる。本発明のフィルムにおいて、表裏層は中間層を構成する樹脂単層では成し得ない耐熱融着性を改良する機能を担っている。すなわち、中間層を構成する樹脂は高温において(ビカット軟化温度以上)急激に弾性率が低下するため、単層では十分な耐熱融着性を得ることが出来ない。そのため高温での弾性率を高くしたSBS原料を表裏層にすることによって積層フィルムに耐熱融着性を付与させるのである。
【0027】
また、本発明フィルムでは中間層を構成する樹脂の単層フィルムでは十分に成し得ない収縮仕上がり性を向上させる目的も担っている。中間層を構成する混合樹脂においては先に述べた通り収縮温度領域いおいて急激に弾性率が低下してしまうため、SBSフィルムと比較して十分な収縮仕上がり性を得ることが難しい。しかし、表裏層にSBSフィルムを配することにより高温での急激な弾性率の低下を和らげることによって良好な収縮仕上がりをもつフィルムを得ることが可能となる。
【0028】
上述した内容の表裏層は本発明の積層フィルムがもつ優れた特性うち、特に良好な収縮仕上がり性、耐熱融着性発現させる機能を担っている。
なお、上述した内容の熱収縮性積層フィルムでの厚み比は、積層フィルムの総厚みによっても異なるが、ほぼ表裏層厚みが総厚みの10%〜70%であることが好ましく、20%〜40%がより好ましい。表裏層の厚みが10%未満のものでは、表裏層によって主に付与される収縮仕上がり性や耐熱融着性が低下してしまい、70%を越えるものでは剛性、耐自然収縮性が低下する。また、コスト面の観点からは上記範囲内でできるだけ中間層を厚くすることが好ましい。なお、本発明のフイルムの表裏層の厚み比および構成成分は、収縮特性やカール防止等の点から同一厚み、同一組成に調整することが好ましいが、必ずしも同じにする必要はない。
【0029】
さらに製品用途に応じ、本発明フィルムに低温収縮性を付与させる目的で上記樹脂100重量部に対して可塑剤及び/又は粘着付与樹脂を1〜10重量部、さらに好ましくは2〜8重量部添加することが可能である。可塑剤もしくは粘着付与樹脂の量が1重量部未満では可塑化が十分達成されず、低温収縮性を添加によって発現させる効果が得られ難く、可塑剤もしくは粘着付与樹脂の量が10重量部を越えると溶融粘度の低下等により良好なフィルムを得ることが難しくなる。
本発明に用いられる可塑剤としては以下のものを例示することができる。
【0030】
▲1▼:ジオクチルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート等の脂肪族エステル系可塑剤、
▲2▼:ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等の芳香族エステル系可塑剤、▲3▼:ポリ(1,4−エチレンアジペート)、ポリ(1,4−エチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系可塑剤(例えば大日本インキ化学工業(株)製の「ポリサイザーシリーズ」)、
▲4▼トリクレジルホスフェート、トリフエニルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤。
【0031】
また、粘着付与樹脂としては以下のものを例示することができる。
▲1▼:ロジン、変成ロジン、重合ロジン、ロジングリセリンエステル等のロジン系、
▲2▼:αピネン重合体、βピネン重合体、ジペンテン重合体、テルペン−フェノール重合体、αピネン−フェノール共重合体等のポリテルペン系樹脂、
▲3▼:シクロペンタジエン−イソプレン−(1,3−ペンタジエン)−(1−ペンテン)の共重合体・(2−ペンテン)−ジシクロペンタジエンの共重合体、1,3−ペンタジエン主体の樹脂等のC系石油樹脂、
▲4▼:インデン−スチレン−メチルインデン−αメチルスチレン共重合体等のC〜C10系のタール系石油樹脂、
▲5▼:ジシクロペンタジエン主体の樹脂等のDCPD系石油樹脂、及び上記▲1▼〜▲5▼の部分水添品や完全水添品。
【0032】
また、以上の可塑剤もしくは粘着付与樹脂は1種又は2種以上混合して用いてもよい。特に透明性と低温収縮性等の収縮特性の改良効果とのバランスから可塑剤としては、フタル酸系、ポリエステル系の可塑剤が、粘着付与樹脂としては、重合度200以下の水添テルペン樹脂、及び同じくC系水添石油樹脂が好適に使用できる。
【0033】
また、本発明の積層フィルムでは、上記に示した可塑剤もしくは粘着付与樹脂以外にも目的に応じて各種の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、無機フィラー等を各用途に応じて適宜添加できる。
【0034】
つぎに本発明積層フィルムの製造方法を具体的に説明するが、下記製造方法には限定されない。中間層、表裏層用に各々上記内容で配合されたポリスチレン系樹脂を別々の押出機によって溶融させ、得られた溶融体をダイ内で合流させて押出す製造方法が一般的である。押出に際しては、Tダイ法、チューブラー法等の既存の方法を採用できる。溶融押出された積層樹脂は、冷却ロール、空気、水等で冷却された後、熱風、温水、赤外線、マイクロウエーブ等の適当な方法で再加熱され、ロール法、テンター法、チューブラ法等により、1軸または2軸に延伸される。
【0035】
延伸温度は積層フィルムを構成している樹脂の軟化温度や熱収縮性フィルムの要求用途によって変える必要があるが、概ね60〜130℃、好ましくは80〜120℃の範囲で制御される。
【0036】
延伸倍率は、フィルム構成組成、延伸手段、延伸温度、目的の製品形態に応じて1.5〜6倍の範囲で適宜決定される。また、1軸延伸にするか2軸延伸にするかは目的の製品の用途によって決定される。
また、延伸した後、フィルムの分子配向が緩和しない時間内に速やかに、当フィルムの冷却を行うことも、収縮性を付与して保持する上で重要な技術である。
【0037】
延伸後の本発明フィルムは80℃×10秒の熱収縮率が少なくとも一方向において10%以上であることが必要である。収縮率が10%未満の場合、収縮フィルムとして実用的な機能を発揮せず、シュリンカー等の温度条件を調節しても良好な収縮仕上がり性を得ることが難しくなる。
【0038】
【実施例】
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、実施例に示す測定値および評価は次のように行った。ここで、フィルムの流れ方向をMD、その直交方向をTDと記載した。
【0039】
1)熱収縮率
フィルムを、MD100mm、TD100mmの大きさに切り取り、70℃及び80℃の温水バスに10秒間浸漬し収縮量を測定した。熱収縮率は、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表示した。
【0040】
2)収縮仕上がり性
10mm間隔の格子目を印刷したフィルムをMD100mm×TD298mmの大きさに切り取り、TDの両端を10mm重ねて溶剤等で接着し円筒状にした。この円筒状フィルムを、容量1.5リットルの円筒型ペットボトルに装着し、蒸気加熱方式の長さ3mの収縮トンネル中を回転させずに、10秒間で通過させた。吹き出し蒸気温度は98℃、トンネル内雰囲気温度は91〜96℃であった。
【0041】
フィルム被覆後、発生したシワ、アバタ、歪みの大きさおよび個数を総合的に評価した。評価基準は、シワ、アバタ、格子目の歪みがなく密着性が良好なものを(◎)、シワ、アバタ、格子目の歪みがほとんどなく密着性も実用上問題のないものを(○)、シワ、アバタ、格子目の歪みが若干あるか、収縮不足が若干目立つものを(△)、シワ、アバタ、格子目の歪みがあるか、収縮不足が目立ち実用上問題のあるものを(×)とした。
【0042】
3)自然収縮率
フィルムをMD50mm×TD1000mmの大きさに切り取り30℃の雰囲気の恒温槽に30日間放置し、TD方向の収縮量を原寸に対する収縮量の比率を%値で表示した。
【0043】
4)耐熱融着性
フィルムをMD60mm×TD30mmの大きさに切り取り、キャスティングロールに接した面同士を2枚重ねて、10mm幅のヒートシールバーを有するヒートシール機に、バーの長手方向にフィルムのMDを合わせセットした後、所定の温度で片側より加熱し、1.0kgf/cmの圧力で60秒間ヒートシールした。その後、5分間放置してシール部を剥離し、破れずに剥離できる最高温度を調査した。
【0044】
5)全ヘーズ
JISK7105に準拠し、フィルム厚み50μmで測定した。
【0045】
6)引張破断伸度(耐破断性評価)
JISK7127に準拠し、引張速度200mm/分で、雰囲気温度23℃におけるフィルムのMD方向の引張破断伸度を測定した。
【0046】
[実施例1]
スチレン83重量%とブチルアクリレート17重量%とからなる共重合体70重量%とスチレン75重量%とブタジエン25重量%とからなるブロック共重合体30重量%の混合樹脂を中間層原料とし、スチレン75重量%とブタジエン25重量%とからなるブロック共重合体50重量%、スチレン82重量%とブタジエン18重量%とからなるブロック共重合体40重量%、ポリスチレン10重量%の混合樹脂を表裏層原料とし、それぞれの原料を別々の押出機で溶融押出しし、ダイ内で合流させて、表層/中間層/裏層の3層構造からなる溶融体をキャストロールで冷却し総厚み260μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを105℃の温度の雰囲気のテンター延伸設備内でTD方向に4.7倍延伸して、約50μm(表層/中間層/表層=1/6/1)の熱収縮性積層フィルムを得た。 得られたフィルムの特性評価結果を表1に示した。
【0047】
[実施例2]
スチレン83重量%とブチルアクリレート17重量%とからなる共重合体50重量%とスチレン75重量%とブタジエン25重量%とからなるブロック共重合体50重量%の混合樹脂を中間層原料とした以外は実施例1と同様な方法で熱収縮性積層フィルムを得た。
【0048】
[実施例3]
スチレン83重量%とブチルアクリレート17重量%とからなる共重合体50重量%、スチレン75重量%とブタジエン25重量%とからなるブロック共重合体30重量%、スチレン80重量%とブタジエン20重量%とからなるブロック共重合体20重量%の混合樹脂を中間層原料とした以外は実施例1と同様な方法で熱収縮性積層フィルムを得た。
【0049】
[実施例4]
スチレン83重量%とブチルアクリレート17重量%とからなる共重合体50重量%、スチレン75重量%とブタジエン25重量%とからなるブロック共重合体45重量%、ポリスチレン5重量%の混合樹脂を中間層原料とした以外は実施例1と同様な方法で熱収縮性積層フィルムを得た。
【0050】
[実施例5]
実施例2の中間層原料と同様な樹脂を中間層原料とし、スチレン75重量%とブタジエン25重量%とからなるブロック共重合体70重量%、スチレン82重量%とブタジエン18重量%とからなるブロック共重合体30重量%の混合樹脂を表裏層原料とする以外は実施例1と同様な方法で熱収縮性積層フィルムを得た。 [実施例6]
実施例1の中間層原料にポリエステル系可塑剤(「ポリサイザーW2610」:大日本インキ化学工業(株)製)を3部添加した樹脂を中間層とし、延伸温度を101℃とした以外は実施例1と同様な方法で熱収縮性積層フィルムを得た。
【0051】
[比較例1]
スチレン75重量%とブタジエン25重量%とからなるブロック共重合体45重量%、スチレン82重量%とブタジエン18重量%とからなるブロック共重合体50重量%、ポリスチレン5重量%の混合樹脂を中間層、表裏層共に用いた以外は実施例1と同様な方法で熱収縮性積層フィルムを得た。
【0052】
本フィルムは収縮仕上がり性は非常に良好であったが、自然収縮率が1.65%と大きい値を示した。
【0053】
[比較例2]
スチレン83重量%とブチルアクリレート17重量%とからなる共重合体を中間層原料とし、延伸温度を110℃とした以外は実施例1と同様な方法で熱収縮性積層フィルムを得た。
本フィルムは引張破断伸度が121%と低い値であった。
【0054】
[比較例3]
スチレン83重量%とブチルアクリレート17重量%とからなる共重合体50重量%とスチレン75重量%とブタジエン25重量%とからなるブロック共重合体50重量%の混合樹脂を中間層原料とし、ポリスチレン樹脂を表裏層とし、延伸温度を125℃とした以外は実施例1と同様な方法で熱収縮性積層フィルムを得た。本フィルムは収縮仕上がり性に実用上問題を生じる結果となった。
【0055】
[比較例4]
実施例1と同様な積層構成フィルムを延伸温度を135℃とし熱収縮性積層フィルムを得た。
本フィルムは80℃の収縮率が8%となり、収縮仕上がり性に問題を生じた。
[比較例5]
スチレン83重量%とブチルアクリレート17重量%とからなる共重合体50重量%とスチレン75重量%とブタジエン25重量%とからなるブロック共重合体50重量%の混合樹脂を中間層、表裏層共に用いた以外は実施例1と同様な方法で熱収縮性積層フィルムを得た。
得られたフィルムは引張破断伸度が119%、耐熱融着性が82℃と低い値であった。また、収縮仕上がり性もシワ、格子目の歪みが若干ある結果となった。
【0056】
[比較例6]
ポリスチレン樹脂50重量%とスチレン75重量%とブタジエン25重量%とからなるブロック共重合体50重量%の混合樹脂を中間層とし、延伸温度を115℃とした以外は実施例1と同様な方法で熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムは収縮仕上がり性において問題を生じた。
【0057】
【表1】
Figure 0003547317
【0058】
表1より実施例1〜6についてみると、中間層、表裏層とも本発明の組成であって、収縮率が規定範囲内にあるものは、熱収縮性フィルムとして優れた収縮仕上がり性を有し、かつ低い自然収縮性(自然収縮率:1.0%以下、より好ましくは0.5%以下)、耐熱融着性(耐熱融着温度:90℃以上)、耐破断性を有していることが分かる。一方、比較例1〜6のように原料組成、積層構成もしくは収縮率が規定範囲以外のフィルムでは収縮仕上がり性、自然収縮性、耐熱融着性、耐破断性のいずれかが不良となり、優れた熱収縮性フィルムを得ることは難しいことが分かる。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、中間層と表裏層からなる積層フィルムであって、各層が特定の原料組成をもつ特定のポリスチレン系樹脂からなり、単層では困難であった自然収縮率が低く、耐熱融着性、透明性、収縮仕上がり性のいずれの特性に優れた熱収縮性ポリスチレン系積層フィルムが得られる。

Claims (2)

  1. ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素とからなるブロック共重合体と、ビニル芳香族炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとの共重合体を配合してなる混合重合体を中間層とし、スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とからなるブロック共重合体を主成分とした混合重合体であって該スチレン系炭化水素を該混合樹脂の総重量に対して77重量%以上含有する混合重合体を表裏層として中間層に積層し、少なくとも1軸に延伸したフィルムであって、80℃×10秒の熱収縮率が少なくとも一方向において10%以上であると共に下記方法により測定される耐熱融着性:
    フィルムをMD60mm×TD30mmの大きさに切り取り、キャスティングロールに接した面同士を2枚重ねて、10mm幅のヒートシールバーを有するヒートシール機に、バーの長手方向にフィルムのMDを合わせセットした後、片側より加熱し、1.0kgf/cm の圧力で60秒間ヒートシールした後5分間放置してシール部を剥離し、破れずに剥離できるところの該加熱温度の最高値(耐熱融着性)
    が96℃以上であることを特徴とする熱収縮性ポリスチレン系積層フィルム。
  2. 表裏層の混合重合体が、ポリスチレン( GPPS) をさらに含むことを特徴とする請求項1記載のフィルム。
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