JP3162018B2 - 熱収縮性ポリスチレン系積層フィルム - Google Patents

熱収縮性ポリスチレン系積層フィルム

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JP3162018B2
JP3162018B2 JP19388098A JP19388098A JP3162018B2 JP 3162018 B2 JP3162018 B2 JP 3162018B2 JP 19388098 A JP19388098 A JP 19388098A JP 19388098 A JP19388098 A JP 19388098A JP 3162018 B2 JP3162018 B2 JP 3162018B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、収縮包装、収縮結
束包装、収縮ラベル等の用途に好適な特性、特に透明
性、常温での剛性(腰)、耐破断性等の機械的強度、耐
熱融着性および収縮仕上がり性等の特性のバランスに優
れた熱収縮性積層フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】収縮包装や収縮結束包装、あるいはプラ
スチック容器の収縮ラベル、ガラス容器の破壊飛散防止
包装やキャップシールなどに広く利用される熱収縮性フ
ィルムの材質としては、ポリ塩化ビニル(以下「PV
C」と表記することがある)が最も良く知られている。
これは、PVCから作られた熱収縮性フィルムが、機械
強度、剛性、光学特性、収縮特性等の実用特性、および
コスト性も含めて、ユーザーの要求を比較的広く満足す
るからである。
【0003】ところが、PVCは熱収縮性フィルムとし
ての優れた実用特性とコスト性を有しているものの、廃
棄後焼却すると塩素を含んだ有毒ガスを発生するという
こと等から、近年PVC以外の材料が要望されるように
なってきた。
【0004】このようなPVC以外の材料の一つとし
て、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(以下「S
BBC」と表記することがある)を主たる材料とするポ
リスチレン系熱収縮性フィルムが提案され使用されてい
るが、このポリスチレン系フィルムは、PVC系フィル
ムに比べ、収縮仕上がり性は良好なものの、室温におけ
る剛性が乏しく、自然収縮(常温よりやや高い温度、例
えば夏場においてフィルムが本来の使用前に少し収縮し
てしまうこと)率が大きいことや、耐破断性に劣る等の
問題を有している。また、その重合方法に起因して、比
較的高価な材料となることは避け難かった。
【0005】このような問題点を解決すべく、本発明者
らは、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸エステ
ルモノマーからなる共重合体の連続相中にゴム状弾性体
を分散させたゴム状弾性体分散ポリスチレン系樹脂に着
目し検討を行い、特開平9−29838号公報等で提案
したように押出条件と延伸条件等を制御し、特定の収縮
特性を与えることで、剛性と耐破断性、低自然収縮性や
透明性が良好で収縮仕上がり性も向上した熱収縮性フィ
ルムを得ることが出来た。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近年ま
すます需要向上が見込まれているペットボトルのラベル
用途等では、比較的短時間(数秒〜十数秒程度)での収
縮加工に対応でき、また高度な収縮仕上がり外観が要求
されるようになってきている。これに対して上記内容の
ゴム状弾性体分散ポリスチレン系樹脂を用い、押出条件
と延伸条件等を制御し、特定の収縮特性を与えること
で、剛性と耐破断性、低自然収縮性や透明性が良好で収
縮仕上がり性も向上した熱収縮性フィルムとなるもの
の、前述した用途における収縮加工工程においてシワ入
りやアバタ、印刷柄や文字のゆがみ等の収縮斑、特に印
刷柄や文字のゆがみが頻発するといった問題点があっ
た。また前記SBBC系フィルムと比較して、ボトリン
グ時にラベルどうしが接触した場合、熱融着してフィル
ムの破れを生じやすいといった問題点があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討
を重ねた結果、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル
酸エステルモノマーよりなるスチレン系共重合体の連続
相中に、ゴム状弾性体を分散させたゴム状弾性体分散ポ
リスチレン樹脂を中間層とし、さらにビニル芳香族系炭
化水素と共役ジエン系炭化水素からなるブロック共重合
体を主成分とし特定の貯蔵弾性率(E’)範囲の樹脂を
表裏層とした積層フィルムを延伸することにより、特定
の収縮特性を付与することによって、単層では解決が困
難であった上記課題を解決できることを見出だし本発明
を完成するに至った。
【0008】すなわち本発明の主旨は、スチレン系モノ
マーと(メタ)アクリル酸エステルモノマーからなる共
重合体の連続相に、分散粒子としてゴム状弾性体を1〜
20重量%含有し、損失弾性率 (E”)のピーク温度が50
〜85℃の範囲にあるゴム状弾性体分散ポリスチレン樹脂
を中間層とし、ビニル芳香族系炭化水素と共役ジエン系
炭化水素とからなるブロック共重合体にスチレン系重合
体を配合してなる混合重合体または異なった種類の上記
ブロック共重合体を2種類以上配合してなる混合重合体
樹脂からなり、振動周波数10 Hz で測定した90℃におけ
る貯蔵弾性率(E')が2.0 × 109 dyn/cm2〜9.0× 109
dyn/cm2の範囲である樹脂を表裏層として積層し延伸し
たフィルムであって、90℃ 温水中10秒の熱収縮率が少
なくとも一方向において30%以上であるとともに、該フ
ィルムの前記方向と直交する方向への90℃ 温水中10秒
の最大のネックイン率が20%以下であることを特徴とす
る熱収縮性ポリスチレン系積層フィルムに存する。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の熱収縮性フィルムの中間層を構成する樹脂は、
スチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸エステルモノ
マーよりなるスチレン系共重合体の連続相に、分散粒子
としてゴム状弾性体を1〜20重量%含有し、損失弾性
率(E”)のピーク温度が50〜85℃の範囲にあるゴ
ム状弾性体分散ポリスチレン系樹脂であり、連続相を共
重合体とすることにより分散粒子と屈折率を合わせ透明
性を維持するとともに、ゴム状弾性体の効果により耐衝
撃性を付与したものである。
【0010】ここで連続相におけるスチレン系モノマー
は、下記一般式(A)で示される構成単位からなり、
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは、下記一般式
(B)で示される構成単位からなる。
【0011】
【式1】
【0012】
【化2】
【0013】スチレン系モノマーとしては、スチレン、
α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等を挙げるこ
とができる。また、(メタ)アクリル酸エステル系モノ
マーとしては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル
(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)ア
クリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリ
ル(メタ)アクリレート等を用いることができる。ここ
で、上記(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び
/又はメタクリレートを示している。
【0014】スチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸
エステル系モノマーとの比率は、この連続相の屈折率が
後述のゴム状弾性体の屈折率に近くなるように選択され
るが、一般にスチレン系モノマー/(メタ)アクリル酸
エステル系モノマーの重量比は30〜90/70〜10
重量%の範囲で、他の特性も考慮しながら適宜調整され
る。
【0015】本発明において最も好適に用いられるスチ
レン系モノマーはスチレンであり、一方、(メタ)アク
リル酸エステルモノマーはメチルメタクリレート(以下
「MMA」と表記する)およびブチルアクリレート(以
下「BA」と表記する)である。この理由は、工業的に
非常に多く生産されているため原料としてのコスト性に
優れ、しかも重合時の反応性が高く原料生産上のコスト
性にも優れるばかりか、ランダム性の高い共重合が可能
で、三者の組合せによって損失弾性率(E”)のピーク
温度をはじめとする各種のフィルム特性の制御が容易な
ためである。
【0016】これらの共重合比は、スチレン/MMA/
BA=30〜90/7〜67/3〜25重量%の範囲で
調整される。MMAの共重合比はより好ましくは20〜
60重量%の範囲であるが、この範囲外では、連続相の
屈折率をゴム状弾性体分散粒子の屈折率に近くなるよう
に設定することが困難になり透明性が低下し、熱収縮性
フィルムとしてのクリアーなディスプレー効果が低下し
て、一般的に好ましくない。またBAの共重合比が上記
範囲以外では損失弾性率のピーク温度を本発明の範囲に
調整することが難しくなる。
【0017】このスチレン系共重合体からなる連続相中
には、分散粒子としてゴム状弾性体を含有している。こ
こでいうゴム状弾性体としては、常温でゴム的性質を示
すものであればよいが、連続相への分散性や屈折率を考
慮して、一成分としてスチレンを含むものが好ましく、
例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブ
タジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレン共重
合体、あるいはこれらの水素添加物を用いることができ
る。特に、スチレン含量が10〜50重量%のものが好
適である。
【0018】ゴム状弾性体の含有率は、中間層を構成す
る樹脂全体(連続相+分散粒子)の1〜20重量%、よ
り好ましくは3〜18重量%の範囲とすればよく、1重
量%未満では得られる熱収縮フィルムの耐衝撃性が低く
好ましくない。また、20重量%を超えると、熱収縮フ
ィルムの剛性(腰)が低下し、例えば、収縮ラベルとし
て被覆対象物に機械による自動装着を行う工程で所定の
位置に装着できなかったり、フィルムが折れ曲がるとい
った不具合が生じる。
【0019】ゴム状弾性体が形成する分散粒子の粒子径
は0.1〜1.5μmの範囲、より好ましくは0.2〜
1.2μmの範囲のものが適している。分散粒子径が
0.1μm未満のものでは衝撃強度の向上効果が発現し
にくい。一方、分散粒子径が1.5μmを越えるもので
は、衝撃強度向上効果は発現するが、透明性が低下して
しまう。なお分散粒子径は、原料ペレットから超薄切片
法により調整した試料を透過型電子顕微鏡を用いて撮影
した写真から求めた数平均粒子径である。
【0020】本発明の熱収縮性フィルムにおいては、上
記組成からなる中間層の損失弾性率(E”)のピーク温
度を50〜85℃、より好ましくは、60〜80℃の範
囲に調整することが重要である。
【0021】損失弾性率(E”)のピーク温度が50℃
未満であると、得られる熱収縮フィルムの自然収縮が非
常に大きくなり寸法安定性に欠けるフィルムとなり実用
上好ましくない。一方、85℃を越えると、ペットボト
ルのラベル用途等の比較的短時間(数秒〜十数秒程度)
での収縮加工および高度な収縮仕上がり外観が要求され
る収縮加工工程への適応性のある収縮率、収縮開始温
度、収縮勾配等の収縮特性を付与し難くなり好ましくな
い。
【0022】自然収縮率はできるだけ小さいほうが好ま
しいが、一般的に熱収縮性フィルムの自然収縮率が1%
未満、より好ましくは0.5%未満であれば実用上問題
を生じない。
【0023】この損失弾性率(E”)のピーク温度は、
主に連続相の組成に依存し、例えば好適に用いられるス
チレン/MMA/BA系では、剛直なMMA成分はピー
ク温度を高め、柔軟なBA成分はピーク温度を下げるの
でこれらの成分比で損失弾性率(E”)のピーク温度を
調整することができる。また、後述するように可塑剤等
の添加により損失弾性率(E”)のピーク温度を調整す
ることも可能である。また、本発明フィルムの中間層は
主成分である上記内容のゴム状弾性体分散ポリスチレン
系樹脂の他に、他の樹脂をブレンドすることもできる。
ただし、前述したように該樹脂は連続相を共重合体とす
ることにより分散粒子と屈折率を合わせ透明性を維持し
ているので、他の樹脂をブレンドすると多くの場合透明
性が低下してしまう。よって他の樹脂をブレンドする場
合は、できるだけ該樹脂と屈折率が近い樹脂を選択する
ことが好ましい。
【0024】中間層の主体原料となる上記内容のゴム状
弾性体分散ポリスチレン系樹脂の製造は、連続相形成原
料溶液中にゴム状弾性体を溶解し、攪拌しながら重合す
る方法によることができる。ゴム状弾性体粒子は、フィ
ルム製膜までのいかなる工程でも添加することが可能で
あるが、重合時に重合槽中のモノマーおよび重合溶媒に
添加し分散することが最も効果的である。モノマーおよ
び重合溶媒は粘度が低く分散が容易であり、また重合時
にゴム状弾性体の粒子表面にモノマーがグラフト重合
し、連続相重合体への親和性が著しく高まり、透明性と
耐衝撃性向上効果が最も発現しやすい。分散粒子の粒子
径は、ゴム状弾性体の種類や分子量にも依存するが、重
合槽の撹拌羽根の回転数にも大きく依存する。本発明で
は、この回転数を調整し、分散粒子径を制御することが
望ましい。
【0025】上述した内容の中間層は、本発明のフィル
ムが持つ優れた特性のうち、特に剛性(腰)、低自然収
縮性、実用収縮率、透明性、低コスト性を発現させる機
能を担っている。
【0026】つぎに、本発明フィルムの表裏層を構成す
る樹脂は、ビニル芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化
水素とからなるブロック共重合体またはこのブロック共
重合体にスチレン系重合体を配合してなる混合重合体ま
たは異なった種類のブロック共重合体を2種類以上配合
してなる混合重合体樹脂であり、振動周波数10Hzで
測定した貯蔵弾性率(E’)が90℃で2.0×109
dyn/cm2 〜9.0×109 dyn/cm2 の範囲
のものである。
【0027】ビニル芳香族系炭化水素により構成される
ビニル芳香族系炭化水素ブロックには、例えばスチレ
ン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メ
チルスチレン等の単独重合体、それらの共重合体及び/
又はスチレン系炭化水素以外の共重合可能なモノマーを
ブロック内に含む共重合体等がある。
【0028】共役ジエン系炭化水素により構成される共
役ジエン系炭化水素ブロックには、例えばブタジエン、
イソプレン、1、3−ペンタジエン等の単独重合体、そ
れらの共重合体及び/又は共役ジエン系炭化水素以外の
共重合可能なモノマーをブロック内に含む共重合体があ
る。
【0029】ブロック共重合体の構造および各ブロック
部分の構造は特に限定されない。ブロック共重合体の構
造としては、例えば直線型、星型等がある。また、各ブ
ロック部分の構造としては、例えば完全対称ブロック、
非対称ブロック、テトラブロック、テーパードブロッ
ク、ランダムブロック等がある。さらに、ブロック共重
合の構造および各ブロック部分の構造、分子量、重合方
法の異なるブロック共重合体を2種類以上配合されてい
るものでもよい。
【0030】上記の表裏層において最も好適に用いられ
る樹脂の組成は、ビニル芳香族系炭化水素がスチレンで
あり、共役ジエン系炭化水素がブタジエンのいわゆるス
チレン−ブタジエンブロック共重合体(SBBC)を主
体とする混合物である。この理由は、工業的に非常に多
くの種類の樹脂(共重合の構造、ブロック部分の構造、
分子量等が様々に異なっている)、つまり屈折率や熱的
性質をはじめとする特性が異なった樹脂が生産されてい
るため、要求特性に応じて複数の異なったスチレン−ブ
タジエンブロック共重合体を組み合わせることによって
各種のフィルム特性の制御が容易に行えるからである。
【0031】また、必要に応じて上記スチレン−ブタジ
エン共重合体混合物以外にもスチレン系重合体を配合す
ることもできる。最も好適に用いられるスチレン系重合
体は汎用ポリスチレン(以下「GPPS」と表記するこ
とがある)である。本発明フィルムは主に中間層を構成
する樹脂によって剛性を付与しているが、収縮特性を阻
害しない範囲で表裏層の剛性も上げることができる。
【0032】本発明の積層フィルムにおいて、表裏層は
中間層を構成する樹脂単層では透明性が出にくいことを
改良する機能を担っている。すなわち、中間層を構成す
る樹脂は損失弾性率(E”)のピーク温度以上の温度領
域で連続相が軟化して急激に貯蔵弾性率(E’)が低下
するため、単層では特に高温での延伸加工時に分散して
いるゴム状弾性体がフィルム表面に突出しやすく、透明
性の低下したフィルムとなってしまうが、前述した樹脂
から構成される表裏層を積層し延伸することによりこの
現象を防止し、透明性を保持させることができる。
【0033】通常、熱収縮フィルムに要求される透明性
としては、全ヘーズで10%以下であることが好まし
く、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以
下である。全ヘーズが10%を越えるようなフィルムで
はクリアーなディスプレー効果が低下して好ましくな
い。
【0034】また、上記表裏層を構成する樹脂について
は、振動周波数10Hzで測定した貯蔵弾性率(E’)
が90℃で2.0×109 dyn/cm2 〜9.0×1
9dyn/cm2 の範囲、より好ましくは、3.0×
109 dyn/cm2 〜7.0×109 dyn/cm2
の範囲のものを使用することが重要である。
【0035】このように90℃における貯蔵弾性率
(E’)を規定する最大の目的は、ペットボトルのラベ
ル用途等の比較的短時間(数秒〜十数秒程度)での収縮
加工および高度な収縮仕上がり外観が要求される収縮加
工工程への適応性のある収縮率を保持しつつ、シワ入り
やアバタ、印刷柄や文字のゆがみ等の収縮斑を発生する
収縮挙動の安定性と相関性のあるネックイン率を抑制す
ると同時にボトリング時にラベルどうしが接触した場合
の熱融着を防止する機能(以下「耐熱融着性」と表記す
る)を付与することである。
【0036】90℃における貯蔵弾性率(E’)が2.
0×109 dyn/cm2 未満であると、得られる熱収
縮フィルムのネックイン率抑制効果が低かったり、耐熱
融着性が発現し難くなり好ましくない。一方、9.0×
109 dyn/cm2 を越えると必要な収縮率が得られ
難くなるという問題がある。上述したように表裏層は本
発明の積層フィルムが持つ優れた特性のうち、特に良好
な収縮仕上がり性、耐熱融着性、透明性を発現させる機
能を担っている。
【0037】次に、本発明の最も重要な構成要件とし
て、前述した内容に加えて、本発明のフィルムはその収
縮率に関して以下に記載する〜の条件を満足すこと
が必要である。
【0038】すなわち本発明のフィルムは90℃温水
中10秒の熱収縮率が少なくとも一方向において30%
以上、好ましくは35%以上、さらに好ましくは40%
以上であることが必要である(以下上記収縮方向を「主
収縮方向」と表記する)。また、本発明のフィルムは
ネックイン率、本発明では主収縮方向の両端部を固定し
た時の該収縮方向と直交する方向への90℃温水中10
秒での最大の収縮率とし、この数値が20%以下、さら
に好ましくは18%以下であることが必要である。
【0039】以下にその理由を説明する。まず、の要
件の役割は、ペットボトルのラベル用途等の比較的短時
間(数秒〜十数秒程度)での収縮加工工程への適応性を
判断する指標となる。例えばペットボトルのラベル用途
に適用される熱収縮性フィルムに要求される必要収縮率
はその形状によって様々であるが一般に20〜40%程
度である。また、現在ペットボトルのラベル装着用途に
工業的に最も多く用いられている収縮加工機としては、
収縮加工を行う加熱媒体として水蒸気を用いる蒸気シュ
リンカーと一般に呼ばれているものである。さらに熱収
縮性フィルムは被覆対象物への熱の影響などの点からで
きるだけ低い温度で十分熱収縮することが必要である。
このような工業生産性も考慮して、上記条件における主
収縮方向の熱収縮率が30%未満のフィルムは収縮加工
時間内に十分に被覆対象物に密着することができず好ま
しくない。
【0040】また、主収縮方向と直交する方向の収縮率
は、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下
である。主収縮方向と直交する方向への収縮率が10%
を越えるフィルムでは収縮後の印刷柄や文字のゆがみ等
が生じやすく、ラベル用熱収縮フィルムとして好ましく
ない。
【0041】つぎに、の要件で示す指標は本発明のフ
ィルムの収縮過程の挙動が極めて安定していることを意
味している。本発明において該ネックイン率は主収縮方
向が140mm、該方向と直交する方向が100mmの
長方形サンプルにおいて測定したものであり、このサン
プル形状は一般的に使用されているラベル用熱収縮フィ
ルムの折り径長と巾長の、各々平均的な値である。
【0042】すなわち、該ネックイン率が20%を越え
るフィルムでは収縮加工工程においてシワ入りやアバ
タ、印刷柄や文字のゆがみ等の収縮斑、特に、印刷柄や
文字のゆがみが頻発し、熱収縮性フィルムとしてのディ
スプレー効果が低下したり、時には印刷しているバーコ
ードが読み取れないといった問題が発生し実用上好まし
くない。
【0043】該ネックイン率が大きいと該収縮斑が頻発
しやすい理由は明確ではないが、該ネックイン率が大き
いフィルムでは、被覆対象物にフィルムを収縮させる際
に、主収縮方向に収縮過程のフィルムの一部が最大外形
部に密着した直後、つまり主収縮方向が拘束された直
後、収縮応力が主収縮方向と直交する方向にも大きな影
響を与え収縮過程の挙動が極めて不安定になり、シワ入
りやアバタ、印刷柄や文字のゆがみ等の収縮斑、特に、
印刷柄や文字のゆがみが頻発しやすくなるものと思われ
る。
【0044】なお、上述した内容の熱収縮性積層フィル
ムでの各層の厚み比は、(表層+裏層)/中間層=1/
1〜1/5であることが好ましく、1/2〜1/4がよ
り好ましい。表裏層厚みの合計が(表層+裏層)/中間
層=1/5未満となると表裏層による収縮特性改良の発
現効果が低下してしまい、一方(表層+裏層)/中間層
=1/1を越えるとフィルムの腰やコスト性が低下して
しまう。
【0045】また、本発明のフィルムの表裏層の厚み比
および構成成分は、収縮特性やカール防止等の点から概
略同じ厚み、同一組成に調整することが好ましいが、必
ずしも同じにする必要はない。
【0046】本発明の積層フィルムは製品用途に応じて
低温収縮性等の収縮特性を改良する目的で表裏層及び/
又は中間層に可塑剤及び/又は粘着付与樹脂を1〜10
重量部、さらに好ましくは2〜8重量部添加することが
可能である。添加量が1重量部未満であると、低温収縮
性等の収縮特性の改良効果が十分得られず、一方10重
量部を越えると、溶融粘度が低くなり過ぎ押出成形が困
難になったり、良好なフィルムの機械的物性が得られな
かったり、自然収縮が大きくなり過ぎたり、また、表裏
層に多量に添加した場合は耐熱融着性が低下して好まし
くない。なお、添加量は中間層、表裏層において同量で
も異なった量でもよい。
【0047】本発明の積層フィルムに用いられる可塑剤
としては、具体例として以下のものが挙げられる。 a)ジオクチルセバケート、ジオクチルアジペート、ジ
イソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート等の脂
肪族エステル系可塑剤、 b)ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオク
チルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジシクロヘ
キシルフタレート等の芳香族エステル系可塑剤、 c)ポリ(1、4ーエチレンアジペート)、ポリ(1、
4−エチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系
可塑剤、 d)トリクレジルホスフェート、トリフエニルホスフェ
ート等のリン酸エステル系可塑剤。
【0048】また、粘着付与樹脂としては、具体例とし
て以下のものが挙げられる。 a)ロジン、変性ロジン、重合ロジン、ロジングリセリ
ンエステル等のロジン系、b)αピネン重合体、βピネ
ン重合体、ジペンテン重合体、テルペンーフェノール共
重合体、αピネン−フェノール共重合体等のポリテルペ
ン系樹脂、 c)シクロペンタジエン−イソプレン−(1,3−ペン
タジエン)−(1−ペンテン)の共重合体、(2−ペン
テン)−ジシクロペンタジエンの共重合体、1,3−ペ
ンタジエン主体の樹脂等のC5 系石油樹脂、 d)インデン−スチレン−メチルインデン−αメチルス
チレン共重合体等のC8〜C10系のタール系石油樹脂、 e)ジシクロペンタジエン主体の樹脂等のDCPD系石
油樹脂、およびa)〜e)の部分水添品や完全水添品。
【0049】また、以上の可塑剤、粘着付与樹脂は1種
又は2種以上混合して用いてもよい。特に透明性と低温
収縮性等の収縮特性の改良効果とのバランスから可塑剤
としては、フタル酸系、ポリエステル系の可塑剤が、粘
着付与樹脂としては、重合度200以下の水添テルペン
樹脂および同じくC5 系水添石油樹脂が好適に使用され
る。
【0050】また、本発明の積層フィルムでは、上記に
示した可塑剤、粘着付与樹脂以外にも成形加工性やフィ
ルムの物性等を微調整する目的で、本発明の効果を阻害
しない範囲で、表裏層及び/又は中間層に他の高分子材
料や各種の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、
酸化防止剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、無機
フィラー等を適宜添加することも可能である。
【0051】次に本発明積層フィルムの製造方法を具体
的に説明するが下記製造方法には何ら限定されない。中
間層用、表裏層用に各々前述した内容で配合されたポリ
スチレン系樹脂を別々の押出機によって溶融させ、得ら
れた溶融体をダイ内で合流させて押し出す製造方法が一
般的である。押出に際しては、Tダイ法、チューブラ法
などの既存のどの方法を採用してもよい。溶融押出され
た積層樹脂は、冷却ロール、空気、水等で冷却された
後、熱風、温水、赤外線、マイクロウエーブ等の適当な
方法で再加熱され、ロール法、テンター法、チューブラ
法等により、1軸または2軸に延伸される。
【0052】延伸温度は積層フィルムを構成している樹
脂の軟化温度や熱収縮性フィルムに要求される用途によ
って変える必要があるが、概ね60〜130℃、好まし
くは80〜120℃の範囲で制御される。60℃未満で
は、延伸過程における材料の弾性率が高くなり過ぎ延伸
性が低下し、フィルムの破断を引き起こしたり、厚み斑
が生じる等、延伸が不安定になり易い。また、ネックイ
ン率の改良効果が発現しなかったり自然収縮性が発生し
易くなる。一方、130℃を越えると、収縮特性が発現
しなかったり、延伸過程における材料の弾性率が低くな
り過ぎ、材料が自重で垂れ下がって延伸そのものが不可
能になったりする。
【0053】延伸倍率は、フィルム構成組成、延伸手
段、延伸温度、目的の製品形態に応じて、主収縮方向に
は1.5〜6倍、好ましくは2〜5倍の範囲で1軸また
は2軸に適宜決定される。また、1軸延伸の場合でもフ
ィルム物性改良等の目的で主収縮方向と直交する方向に
1.05〜1.8倍程度の弱延伸を付与することも効果
的である。また、延伸した後フィルムの分子配向が緩和
しない時間内に速やかに、該フィルムの冷却を行うこと
も、収縮性を付与して保持する上で重要な技術である。
【0054】
【実施例】以下に実施例でさらに詳しく説明するが、こ
れらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。な
お、フィルムについての種々の測定値および評価は次の
ようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの引
取り(流れ)方向を縦方向、その直交方向を横方向と規
定した。
【0055】1)熱収縮率 フィルムを縦100mm、横100mmの大きさに切り
取り、90℃の温水バスに10秒間浸漬し収縮量を測定
した。熱収縮率は、縦、横それぞれの方向について、収
縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表示した。
【0056】2)ネックイン率 フィルムを主収縮方向に140mm以上、主収縮方向と
直交する方向に100mmの大きさに切り取り、内寸長
さ140mm、幅120mmの固定枠治具に主収縮方向
の両端を固定した状態で取り付けた後、90℃の温水バ
スに10秒間浸漬し、主収縮方向と直交する方向の最大
の収縮率を求め、この値をネックイン率とし%値で表示
した。
【0057】3)全ヘーズ JISK7105に準拠し、フィルム厚み50μmで測
定した。
【0058】4)収縮仕上がり性 縦横10mm間隔の格子目を印刷したフィルムを縦10
0mm、横298mmの大きさに切り取り、横方向の両
端を10mm重ねて溶剤等で接着し円筒状にした。この
円筒状フィルムを、内容量1.5リットル円筒型のペッ
トボトル(胴部最大直径90mm、フィルム上端部がボ
トルに密着するために必要な収縮率は34%である)に
装着し、蒸気加熱方式の長さ3mの収縮トンネル中を回
転させずに、10秒間で通過させた。吹き出し蒸気温度
は99℃、トンネル内雰囲気温度は90〜94℃であっ
た。フィルム被覆後、発生したシワ入り、アバタ、格子
目の歪みの大きさおよび個数、フィルムの密着性を総合
評価した。
【0059】評価基準の(◎)は、シワ入り、アバタ、
格子目の歪みがほとんどなく、かつフィルムの密着性も
良好なもの、(○)は、シワ入り、アバタはなく、格子
目の歪みは若干あるが、フィルムの密着性は良好なも
の、(△)は、シワ入り、アバタ、格子目の歪みが各々
若干あるが、フィルムの密着性は実用上問題のないも
の、(×)は、シワ入り、アバタ、格子目の歪みが目立
つか、明らかに収縮不足部分があるものである。
【0060】5)自然収縮率 フィルムから縦100mm、横1000mmの大きさに
サンプルを切り取り、30℃の雰囲気の恒温槽に30日
間放置し、主収縮方向について、収縮前の原寸に対する
収縮量を測定し、その比率を%値で表示した。
【0061】6)耐熱融着性 フィルムを縦60mm、横30mmの大きさに切り取
り、キャスティングロールに接した面どうしを2枚重ね
て、10mm幅のヒートシールバーを有するヒートシー
ル機に、バーの長手方向にフィルムの縦方向を合わせ、
該フィルムの中央にセットした後、所定の温度で片面よ
り加熱し、1.5kgf/cm2 の圧力で60秒間ヒー
トシールした。その後、5分間放置してヒートシール部
を剥離し、破れずに剥離できる最高温度を調査した。ま
た、該温度が100℃以上のものを良好とした。
【0062】7)損失弾性率(E”)のピーク温度・貯
蔵弾性率(E’) 粘弾性スペクトロメーターVES−F3(岩本製作所
(株)製)を用い、振動周波数10Hzで測定した。な
お測定値は、表裏、中間層を構成する原料とも各々単独
で押出した0.5mm厚みのシートをサンプルとし縦方
向と横方向の測定の平均値を採用した。
【0063】(実施例1)ブタジエン7重量%とスチレ
ン5重量%とからなるスチレンーブタジエン共重合体を
分散粒子とし、スチレン46重量%、メチルメタクリレ
ート30重量%、ブチルアクリルレート12重量%から
なる共重合体が連続相となった、損失弾性率のピーク温
度が75℃であるゴム状弾性体分散ポリスチレン系樹脂
を中間層用の原料とし、また、スチレン82重量%とブ
タジエン18重量%とからなるブロック共重合体30重
量%、スチレン75重量%とブタジエン25重量%とか
らなるブロック共重合体70重量%の混合樹脂を表裏層
用の原料とした。これらの原料を各々別々の混練押出機
によって溶融押出し、3層Tダイ内で合流させたのち、
表層/中間層/裏層の3層構造からなる溶融体をキャス
トロールで冷却し、総厚み0.20mmの3層シートを
採取した。続いてこのシートをテンター延伸設備を用い
て、延伸温度105℃、横方向に4.0倍延伸した後、
冷風で急冷して、厚み比が表層/中間層/裏層=1/5
/1、約50μmの熱収縮性積層フィルムを得た。
【0064】このフィルムの全ヘーズは3.4%で、ネ
ックイン率は11.5%であった。収縮仕上がりの状態
は、シワ入りやアバタ、格子目の歪み等の収縮斑はほと
んどなく、かつフィルムの密着性も良好であった。ま
た、耐熱融着性は105℃と良好なものであった。得ら
れたフィルムの評価結果をまとめて表1に示した。な
お、表裏層を構成する原料の90℃での貯蔵弾性率
(E’)は4.3×109 dyn/cm2 であった。
【0065】(実施例2)実施例1において、表裏層用
の原料として、スチレン82重量%とブタジエン18重
量%とからなるブロック共重合体50重量%、スチレン
71重量%とブタジエン29重量%とからなるブロック
共重合体40重量%、汎用ポリスチレン10重量%の混
合樹脂を用いた以外は全く同様にして積層フィルムを得
た。この積層フィルムの全ヘーズは3.6%で、ネック
イン率は7.2%であった。収縮仕上がりの状態は、シ
ワ入りやアバタ、格子目の歪み等の収縮斑は見られな
く、かつフィルムの密着性も良好であった。また、耐熱
融着性は114℃と非常に良好なものであった。なお、
表裏層を構成する原料の90℃での貯蔵弾性率(E’)
は6.9×109 dyn/cm2 であった。
【0066】(実施例3)実施例1において、表裏層用
の原料として、スチレン82重量%とブタジエン18重
量%とからなるブロック共重合体50重量%、スチレン
71重量%とブタジエン29重量%とからなるブロック
共重合体40重量%、スチレン86重量%、ブチルアク
リレート14重量%からなる共重合体10重量%の混合
樹脂を用いた以外は全く同様にして積層フィルムを得
た。この積層フィルムの全ヘーズは4.2%で、ネック
イン率は12.6%であった。収縮仕上がりの状態は、
シワ入りやアバタはなく、若干の格子目の歪みは見られ
たが、フィルムの密着性は良好であった。また、耐熱融
着性は108℃と良好なものであった。なお、表裏層を
構成する原料の90℃での貯蔵弾性率(E’)は3.8
×109 dyn/cm2 であった。
【0067】(実施例4)実施例1において、中間層用
の原料としてブタジエン4重量%とスチレン2.7重量
%とからなるスチレンーブタジエン共重合体を分散粒子
とし、スチレン47.3重量%、メチルメタクリレート
38重量%、ブチルアクリルレート8重量%からなる共
重合体が連続相となった、損失弾性率のピーク温度が7
7℃である樹脂を用い、延伸温度を110℃とした以外
は全く同様にして積層フィルムを得た。このフィルムの
全ヘーズは3.2%で、ネックイン率は14.2%であ
った。収縮仕上がりの状態は、シワ入りやアバタはな
く、若干の格子目の歪みは見られたが、フィルムの密着
性は良好であった。
【0068】(実施例5)実施例1において、中間層用
の原料としてブタジエン7重量%とスチレン5重量%と
からなるスチレンーブタジエン共重合体を分散粒子と
し、スチレン48重量%、メチルメタクリレート30重
量%、ブチルアクリルレート10重量%からなる共重合
体が連続相となった、損失弾性率のピーク温度が79℃
である樹脂を用い、延伸温度を115℃とした以外は全
く同様にして積層フィルムを得た。このフィルムの全ヘ
ーズは3.3%で、ネックイン率は14.8%であっ
た。収縮仕上がりの状態は、シワ入りやアバタはなく、
若干の格子目の歪みは見られたが、フィルムの密着性は
良好であった。
【0069】(実施例6)実施例1において、中間層用
の原料としてブタジエン4重量%とスチレン2.7重量
%とからなるスチレンーブタジエン共重合体を分散粒子
とし、スチレン51.3重量%、メチルメタクリレート
22重量%、ブチルアクリルレート20重量%からなる
共重合体が連続相となった、損失弾性率のピーク温度が
65℃である樹脂を用い、延伸温度を100℃とした以
外は全く同様にして積層フィルムを得た。このフィルム
の全ヘーズは4.9%で、ネックイン率は13.5%で
あった。収縮仕上がりの状態は、シワ入りやアバタはな
く、若干の格子目の歪みは見られたが、フィルムの密着
性は良好であった。
【0070】(実施例7)実施例2において、可塑剤と
してジオクチルフタレート(DOP)を表裏層、中間層
とも3重量部添加し、延伸温度を100℃とした以外は
実施例1と全く同様にして積層フィルムを得た。このフ
ィルムの全ヘーズは2.8%で、ネックイン率は16.
8%であった。収縮仕上がりの状態は、シワやアバタは
なく、若干の格子目の歪みは見られたが、フィルムの密
着性は良好であった。また、耐熱融着性は106℃と良
好なものであった。なお、中間層を構成する原料の損失
弾性率のピーク温度は70℃、表裏層を構成する原料の
90℃での貯蔵弾性率(E’)は3.2×109 dyn
/cm2 であった。
【0071】(実施例8)実施例1において、延伸温度
を90℃とした以外は全く同様にしてフィルムを得た。
このフィルムの全ヘーズは3.8%で、ネックイン率は
18.7%であった。収縮仕上がりの状態は、シワ入り
やアバタ、格子目の歪みがそれぞれ若干は見られたが、
フィルムの密着性は良好であった。
【0072】(比較例1)実施例1において、中間層用
の原料としてブタジエン4重量%とスチレン2.7重量
%とからなるスチレンーブタジエン共重合体を分散粒子
とし、スチレン45.3重量%、メチルメタクリレート
48重量%からなる共重合体が連続相となった、損失弾
性率のピーク温度が103℃である樹脂を用い、延伸温
度を125℃とした以外は全く同様にして積層フィルム
を得た。このフィルムの90℃温水中10秒の熱収縮率
は2%しかなく、熱収縮フィルムとしては実用性のない
ものであった。
【0073】(比較例2)実施例1において、中間層用
の原料としてブタジエン4重量%とスチレン2.7重量
%とからなるスチレンーブタジエン共重合体を分散粒子
とし、スチレン51.3重量%、メチルメタクリレート
15重量%、ブチルアクリレート27重量%からなる共
重合体が連続相となった、損失弾性率のピーク温度が4
8℃である樹脂を用い、延伸温度を95℃とした以外は
全く同様にして積層フィルムを得た。このフィルムは、
低温収縮性はあるものの自然収縮率が7.85%と非常
に大きく、寸法安定性のないものであった。
【0074】(比較例3)実施例1において、表裏層用
の原料として、スチレン71重量%とブタジエン29重
量%とからなるブロック共重合体樹脂を用いた以外は全
く同様にして積層フィルムを得た。このフィルムの全ヘ
ーズは3.4%で、ネックイン率は28.5%であっ
た。収縮仕上がりの状態は、密着性は良好であったもの
の、シワ入りと格子目の歪みが多く目立つものであっ
た。また、耐熱融着性は97℃と低いものであった。な
お、表裏層を構成する原料の90℃での貯蔵弾性率
(E’)は9.7×108 dyn/cm2 であった。
【0075】(比較例4)実施例1において、表裏層用
の原料として、スチレン82重量%とブタジエン18重
量%とからなるブロック共重合体20重量%、スチレン
71重量%とブタジエン29重量%とからなるブロック
共重合体80重量%の混合樹脂を用いた以外は全く同様
にして積層フィルムを得た。このフィルムの全ヘーズは
3.9%で、ネックイン率は24.0%であった。収縮
仕上がりの状態は、密着性は良好であったものの、格子
目の歪みがあり目立つものであった。また、耐熱融着性
は99℃であった。 なお、表裏層を構成する原料の9
0℃での貯蔵弾性率(E’)は1.7×109 dyn/
cm2 であった。
【0076】(比較例5)実施例1において、表裏層用
の原料として、汎用ポリスチレン樹脂を表裏層原料とし
延伸温度を130℃とした以外は全く同様にして積層フ
ィルムを得た。このフィルムは、耐熱融着性が117℃
と非常に良好であったが、延伸性が悪く、また、90℃
温水中10秒の熱収縮率が1%しかなく、熱収縮フィル
ムとしては実用性のないものであった。なお、表裏層を
構成する樹脂の90℃での貯蔵弾性率(E’)は2.3
×1010dyn/cm2 であった。
【0077】(比較例6)実施例1において、表裏層用
の原料として、スチレン82重量%とブタジエン18重
量%とからなるブロック共重合体50重量%、スチレン
71重量%とブタジエン29重量%とからなるブロック
共重合体10重量%、スチレン86重量%、ブチルアク
リレート14重量%からなる共重合体40重量%の混合
樹脂を用いた以外は全く同様にして積層フィルムを得
た。このフィルムの全ヘーズは3.2%で、ネックイン
率は31.3%であった。収縮仕上がりの状態は、密着
性は良好であったものの、特に格子目の歪みが多く目立
つものであった。また、耐熱融着性は103℃と良好な
ものであった。なお、表裏層を構成する原料の90℃で
の貯蔵弾性率(E’)は3.5×109 dyn/cm2
であった。
【0078】(比較例7)実施例1において、表裏層用
の原料としてブタジエン7重量%とスチレン5重量%と
からなるスチレンーブタジエン共重合体を分散粒子と
し、スチレン46重量%、メチルメタクリレート30重
量%、ブチルアクリルレート12重量%からなる共重合
体が連続相となった、損失弾性率のピーク温度が75℃
である樹脂を用い、実質的に単層構成にした以外は全く
同様にして積層フィルムを得た。このフィルムの全ヘー
ズは7.6%、ネックイン率は34.5%であった。収
縮仕上がりの状態は、密着性は良好であったものの、特
に格子目の歪みが多く目立つものであった。また、耐熱
融着性は94℃と低いものであった。なお、表裏層を構
成する原料の90℃での貯蔵弾性率(E’)は2.3×
108 dyn/cm2 であった。
【0079】(比較例8)比較例7において、延伸温度
を95℃、延伸倍率を3.0倍とした以外は実施例1と
全く同様にして積層フィルムを得た。このフィルムの全
ヘーズは4.2%と改良されたものの、ネックイン率は
38.7%と逆に大きくなり、収縮仕上がりの状態は、
特に格子目の歪みがはなはだしかった。
【0080】(比較例9)比較例7において、延伸温度
を115℃、延伸倍率を3.0倍とした以外は実施例1
と全く同様にして積層フィルムを得た。このフィルムの
ネックイン率は24.3%と改良されたものの、全ヘー
ズは10.2%と非常に悪く、また、収縮仕上がりの状
態は、密着性は良好であったものの、格子目の歪みがあ
った。
【0081】(比較例10)実施例2において、中間層
用の原料として、スチレン82重量%とブタジエン18
重量%とからなるブロック共重合体50重量%、スチレ
ン71重量%とブタジエン29重量%とからなるブロッ
ク共重合体40重量%、汎用ポリスチレン10重量%の
混合樹脂を用い、実質的に単層構成にした以外は実施例
1と全く同様にしてフィルムを得た。このフィルムの全
ヘーズは3.5%、ネックイン率は6.8%であった。
収縮仕上がりの状態は、シワ入りやアバタ、格子目の歪
み等の収縮斑は見られなく、かつフィルムの密着性も良
好であった。しかしながら、自然収縮率が1.97%と
大きく実用上問題があった。
【0082】
【表1】
【0083】表1から実施例1〜8についてみると、中
間層、表裏層とも本発明の原料組成で、粘弾性特性が規
定範囲にあり、かつネックイン率等の特定の収縮特性を
有しており、熱収縮性フィルムとして優れた透明性、低
自然収縮性(自然収縮率1.0%未満)、耐熱融着性
(熱融着温度100℃以上)、良好な収縮仕上がり性を
発現することが分かる。一方、比較例1〜6のように中
間層および表裏層のいずれかが本発明の範囲外では収縮
率、自然収縮率、耐熱融着性、収縮仕上がり性のいずれ
かが不良となり、比較例7〜10のように各単層フィル
ムでは各特性のバランスが十分に優れた熱収縮性フィル
ムを得ることは難しいことが分かる。
【0084】
【発明の効果】本発明によれば、透明性、常温での腰、
常温域での寸法安定性(低自然収縮性)、耐破断性等の
機械的強度、耐熱融着性および収縮仕上がり性のバラン
スに優れた熱収縮性ポリスチレン系積層フィルムが得ら
れる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平10−333577(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 1/00 - 35/00 G09F 3/00 - 3/20

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】スチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸
    エステルモノマーからなる共重合体の連続相に、分散粒
    子としてゴム状弾性体を1〜20重量%含有し、損失弾性
    率 (E”)のピーク温度が50〜85℃の範囲にあるゴム状
    弾性体分散ポリスチレン樹脂を中間層とし、ビニル芳香
    族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とからなるブロッ
    ク共重合体にスチレン系重合体を配合してなる混合重合
    体または異なった種類の上記ブロック共重合体を2種類
    以上配合してなる混合重合体樹脂からなり、振動周波数
    10 Hz で測定した90℃における貯蔵弾性率(E')が2.0
    × 109 dyn/cm2〜9.0× 109 dyn/cm2の範囲である樹脂
    を表裏層として積層し延伸したフィルムであって、90℃
    温水中10秒の熱収縮率が少なくとも一方向において30
    %以上であるとともに、該フィルムの前記方向と直交す
    る方向への90℃温水中10秒の最大のネックイン率が20%
    以下であることを特徴とする熱収縮性ポリスチレン系積
    層フィルム。
  2. 【請求項2】 中間層の連続相中に含まれるスチレン系
    モノマーがスチレンであり、(メタ)アクリル酸エステ
    ル系モノマーが、メチルメタクリレートおよびブチル
    (メタ)アクリレートであり、その共重合比がスチレン
    /メチルメタクリレート/ブチル(メタ)アクリレート
    =30〜90/7〜67/3〜25重量%の範囲で調整
    され、また表裏層のビニル芳香族系炭化水素がスチレン
    であり、共役ジエン系炭化水素がブタジエンであること
    を特徴とする請求項1記載の熱収縮性ポリスチレン系積
    層フィルム。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のスチレン系積層フィルム
    の表裏層及び/又は中間層に、可塑剤及び/又は粘着付
    与樹脂を1〜10重量部の範囲で添加したことを特徴と
    する請求項1記載の熱収縮性ポリスチレン系積層フィル
    ム。
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