JP5438928B2 - 熱収縮性フィルム、熱収縮性ラベル、及び該ラベルを装着した容器 - Google Patents

熱収縮性フィルム、熱収縮性ラベル、及び該ラベルを装着した容器 Download PDF

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Description

本発明は、熱収縮性フィルム、熱収縮性ラベル、及び該ラベルを装着した容器に関し、詳細には、多様な印刷が施される用途において使用可能な熱収縮性フィルム、熱収縮性ラベル、及び該ラベルを装着した容器に関する。
収縮包装、収縮結束包装、プラスチック容器(ペットボトル等)の収縮ラベル、ガラス容器の破壊飛散防止包装、キャップシール等に、熱収縮性フィルムが広く使用されている。中でも、飲料用ペットボトルのラベルには、商品名や使用上の注意等の情報伝達だけでなく意匠性を持たせるために、美麗なデザインも取り入れた多種多様な印刷が施されている。特に近年の印刷技術の向上は著しく、印刷スピードの高速化、高度なグラデーション図柄の印刷も可能となったため、最近ではグラビア印刷においてグラデーションを伴う図柄がますます頻繁に使用されるようになっている。
飲料用ペットボトルのラベルの材質として、これまでポリ塩化ビニル(PVC)が主に使用されてきた。しかし、PVCは廃棄物処理の問題等があることから、ポリスチレンを含む共重合体を主たる材料としたポリスチレン系熱収縮性フィルムや、ポリエステル系樹脂を主たる材料としたポリエステル系熱収縮性フィルムへの置き換えが進められてきた。
ポリスチレン系熱収縮性フィルムは、熱収縮させたときの仕上がりが良好であることから、飲料用ペットボトルに広く使用されている。しかし、近年のグラビア印刷に代表されるグラデーション図柄の印刷の増加に伴い、グラデーション図柄部分において、色の濃淡変化が滑らかにならず急激に変化し、境界線を引いたような見栄えとなる不具合(以下、この不具合を「ジャンピング」という。)が生じやすいという課題が顕在化している。
一方、ポリエステル系熱収縮性フィルムは、高度なグラデーション図柄の印刷においてもジャンピングは生じ難い。しかしながら、ポリスチレン系熱収縮性フィルムと比較して、熱収縮させたときに収縮斑や皺が入りやすいという課題がある。
上記ポリスチレン系熱収縮性フィルムの印刷性を改善すべく、特許文献1には、特定量のビスアミド系滑剤を配合したフィルムが提案されている。また特許文献2には、特定のポリマーと特定の飽和型のモノ脂肪酸アミドを配合したフィルムが開示されている。また特許文献3には、特定のポリマーと特定量の脂肪酸モノアマイド、並びに特定量の脂肪酸ビスアマイドを配合したフィルムが開示されている。また特許文献4には、ポリスチレン系樹脂に紫外線吸収剤と不飽和脂肪酸アミド系滑剤を特定量配合した3層構造からなるフィルムが提案されている。また特許文献5には、コロナ処理またはプラズマ処理による印刷性の改善が提案されている。
特開平8−90731号公報 特開平10−60204号公報 特開平11−228783号公報 特開2002−326324号公報 特開2004−1414号公報
しかし、特許文献1から4に記載の方法では、印刷インキの密着性、耐ブロッキング性、経時的な滑性、紫外線吸収性等のバランスにおいて、ある程度効果が認められるものの、いずれもジャンピングの抑制としては不十分であった。また、特許文献5に記載の方法は、コロナ処理又はプラズマ処理の処理条件の安定化が困難であることや、処理状態の経時変化により印刷性が低下することから、好ましくない。
そこで、本発明は、ジャンピングを抑制することができ、印刷適性が改善された、熱収縮性フィルム、熱収縮性ラベル、および該ラベルを装着した容器を提供することを課題とする。
以下、本発明について説明する。
第1の本発明は、ビニル芳香族炭化水素系樹脂層からなるフィルム、または、少なくと
も1層のビニル芳香族炭化水素系樹脂層を表層に有する積層フィルムであって、
当該ビニル芳香族炭化水素系樹脂層は、(I)ビニル芳香族炭化水素の重合体と(II)ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体とを含むビニル芳香族炭化水素系樹脂100質量部に対して、脂肪酸ビスアマイドを0.01質量部以上0.08質量部以下含み、10点平均粗さが0.50μm以上1.2μm以下であるとともに、損失弾性率のピークを75℃以上95℃以下に有し、フィルムまたは積層フィルムの主収縮方向の80℃における最大収縮応力が2.5MPa以上7.0MPa以下であり、下記条件(1)を満たすことを特徴とする熱収縮性フィルムである。
(1)ビニル芳香族炭化水素系樹脂層からなるフィルムまたは少なくとも1層のビニル芳
香族炭化水素系樹脂層のヌレ指数が34dyne/cm以
本発明の熱収縮性フィルムにおいて、所定量の脂肪酸ビスアマイドを含有させることにより、ビニル芳香族炭化水素系樹脂層の印刷がなされる面のヌレ性を向上させることができる。
本発明のような最大収縮応力を備えた熱収縮性フィルムにおいては、ビニル芳香族炭化水素系樹脂層のインキ溶剤浸透時間が短くな。また、熱収縮性フィルムの収縮力が大きすぎて、ラベル等に入れたミシン目が収縮加工段階で破断してしまうような問題がない。
本発明の熱収縮性フィルムにおいて、ビニル芳香族炭化水素系樹脂層を表裏層とし、熱可塑性樹脂層を中間層とすることができ、この場合、中間層を構成する熱可塑性樹脂としては、表裏層とは異なるビニル芳香族炭化水素系樹脂を挙げることができる。
第2の本発明は、本発明の熱収縮性フィルムを用いた、熱収縮性ラベルである。
第3の本発明は、本発明の熱収縮性ラベルを装着した容器である。
第1の本発明の熱収縮性フィルムは、印刷層が形成される面が、ビニル芳香族炭化水素系樹脂層からなるフィルムまたはビニル芳香族炭化水素系樹脂層により構成され、所定の条件(1)および(2)を満たすものである。これにより、第1の本発明の熱収縮性フィルムは、ジャンピングが抑制されており、印刷適性が改善されている。また、第2の本発明の熱収縮性ラベルは、第1の本発明の熱収縮性フィルムを用いているため、グラデーションを伴う図柄に最適な熱収縮性ラベルを提供できる。また、第3の本発明の容器は、本発明の第2の熱収縮性ラベルを装着しているため、鮮やかな印刷ラベルを伴う容器を提供できる。
以下、本発明の熱収縮性フィルム、本発明の熱収縮性ラベル、および本発明の容器について詳細に説明する。
[本発明の熱収縮性フィルム(第1の本発明)]
第1の本発明の熱収縮性フィルムは、ビニル芳香族炭化水素系樹脂層からなるフィルム、または、少なくとも1層のビニル芳香族炭化水素系樹脂層を表層に有する積層フィルムであり、印刷層が形成される面がビニル芳香族炭化水素系樹脂層からなるフィルムまたは少なくとも1層のビニル芳香族炭化水素系樹脂層(以下、「ビニル芳香族炭化水素系樹脂層等」という。)で構成されることを特徴とする。
<ビニル芳香族炭化水素系樹脂>
本発明において、ビニル芳香族炭化水素系樹脂は、下記(I)〜(III)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
(I)ビニル芳香族炭化水素の重合体
(II)ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体
(III)ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加誘導体
((I)ビニル芳香族炭化水素の重合体)
ビニル芳香族炭化水素の重合体の単量体単位としては、例えば、スチレン、p−、m−またはo−メチルスチレン、2,4−、2,5−、3,4−または3,5−ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等のアルキルスチレン;o−、m−またはp−クロロスチレン、o−、m−またはp−ブロモスチレン、o−、m−またはp−フルオロスチレン、o−メチル−p−フルオロスチレン等のハロゲン化スチレン;o−、m−またはp−クロロメチルスチレン等のハロゲン化置換アルキルスチレン;p−、m−またはo−メトキシスチレン、o−、m−またはp−エトキシスチレン等のポリアルコキシスチレン;o−、m−、またはp−カルボキシメチルスチレン等のカルボキシアルキルスチレン;p−ビニルベンジルプロピルエーテル等のアルキルエーテルスチレン;p−トリメチルシリルスチレン等のアルキルシリルスチレン;さらにはビニルベンジルジメトキシホスファイド等が挙げられ、特に一般的なものとしてスチレンが挙げられる。これらは1種のみならず2種以上を混合して使用してもよい。
ビニル芳香族炭化水素の重合体の重量(質量)平均分子量(Mw)は、50,000以上、好ましくは80,000以上であり、かつ500,000以下、好ましくは450,000以下、さらに好ましくは400,000以下である。ビニル芳香族炭化水素の重合体の重量(質量)平均分子量(Mw)が50,000以上であれば、フィルムの劣化が生じるような欠点もなく好ましい。さらに、ビニル芳香族炭化水素の重合体の重量(質量)平均分子量(Mw)500,000以下であれば、流動特性を調整する必要なく、押出性が低下するなどの欠点もないため好ましい。
ビニル芳香族炭化水素の重合体のメルトフローレート(MFR)測定値(測定条件:温度200℃、荷重49N)は、1g/10分以上、好ましくは2g/10分以上であり、20g/10分以下、好ましくは18g/10分以下、さらに好ましくは15g/10分以下である。MFRが1以上であれば、押出成型時に適度な流動粘度が得られ、生産性を維持又は向上できる。また、MFRが20以下であれば、適度な樹脂の凝集力が得られるため、良好なフィルム強伸度が得られ、フィルムを脆化し難くすることができる。
ビニル芳香族炭化水素の重合体は、ビニル芳香族炭化水素と共重合可能なモノマーとの共重合体であってもよい。ビニル芳香族炭化水素と共重合可能なモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族不飽和カルボン酸エステルを挙げることができる。中でも、ビニル芳香族炭化水素のスチレンとブチル(メタ)アクリレートの共重合体が好適に用いられ、スチレン含有率が70質量%以上90質量%以下の範囲であり、Tg(損失弾性率E’’のピーク温度)が50℃以上90℃以下、メルトフローレート(MFR)測定値(測定条件:温度200℃、荷重49N)が2g/10分以上15g/10分以下の範囲のものが好適に用いられる。
((II)ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体)
次にビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体について説明する。なお、本明細書において、特に説明がない限り、「ブロック共重合体」とは、ピュアブロック共重合体、ランダムブロック共重合体、及びテーパーブロック構造を有する共重合体のいずれの態様も含む意味である。また、ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体は単独で用いてもよいし、ビニル芳香族炭化水素の含有率の異なる2種以上のビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体を混合して用いてもよい。さらに、ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体は、共重合可能なモノマーをも重合させたものでもよいし、それらの混合物であってもよい。また、ビニル芳香族炭化水素の重合体との混合物であってもよい。
ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体で用いられるビニル芳香族炭化水素単量体単位としては、(I)ビニル芳香族炭化水素の重合体で例示したものを挙げることができる。また、共役ジエン単量体単位としては、一対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、1種のみならず2種以上を含んでいてもよい。共役ジエンを例示すれば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。中でも1,3−ブタジエン、イソプレン、またはこれらの混合物を好適に用いることができる。
上記ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体は、ビニル芳香族炭化水素または共役ジエンと共重合可能なモノマーとの共重合させたものでもよい。
ビニル芳香族炭化水素と共重合可能なモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族不飽和カルボン酸エステルを挙げることができる。中でも、ブチル(メタ)アクリレートが好適に用いられる。一方、共役ジエンと共重合可能なモノマーとしては、例えば、アクリロニトリルが挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの両方を意味する。
本発明において好適に用いられるビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体としては、ビニル芳香族炭化水素単量体単位がスチレンであり、共役ジエン単量体単位がブタジエンであるスチレン−ブタジエン共重合体(SBS)が挙げられる。SBSのスチレン含有率は60質量%以上、好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。またスチレン含有率は95質量%以下、好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。スチレンの含有率が95質量%以下であれば、耐衝撃性の効果が発揮でき、また60質量%以上とすることにより、室温前後の温度でのフィルムの弾性率が保持され、良好な腰の強さが得られる。
また、本発明で好適に用いられるビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体の他の例としては、スチレン−イソプレン−ブタジエンブロック共重合体(SIBS)が挙げられる。SIBSにおいて、スチレン/イソプレン/ブタジエンの質量%の比は、(60〜90)/(5〜40)/(5〜30)であることが好ましく、(60〜85)/(10〜30)/(5〜25)であることがより好ましく、(60〜80)/(10〜25)/(5〜20)であることがさらに好ましい。ブタジエン単量体単位の含有率が多くイソプレン単量体単位の含有率が少ないと、押出機内部等で加熱されたブタジエンが架橋反応を起こして、ゲル状物が増す場合がある。一方、ブタジエン単量体単位の含有率が少なくイソプレン単量体単位の含有率が多いと、原料単価が上昇し、製造コストが嵩む場合がある。
ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体の重量(質量)平均分子量(Mw)は、100,000以上、好ましくは150,000以上であり、かつ500,000以下、好ましくは400,000以下、さらに好ましくは300,000以下である。ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体の重量(質量)平均分子量(Mw)が100,000以上であれば、フィルムの劣化が生じるような欠点もなく好ましい。さらに、ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体の重量(質量)平均分子量(Mw)が500,000以下であれば、流動特性を調整する必要なく、押出性が低下するなどの欠点もないため好ましい。
ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体のメルトフローレート(MFR)測定値(測定条件:温度200℃、荷重49N)は、2g/10分以上、好ましくは3g/10分以上であり、15g/10分以下、好ましくは10g/10分以下、さらに好ましくは8g/10分以下である。MFRが2以上であれば、押出成型時に適度な流動粘度が得られ、生産性を維持又は向上できる。また、MFRが15以下であれば、適度な樹脂の凝集力が得られるため、良好なフィルム強伸度が得られ、フィルムを脆化し難くすることができる。
ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体の製法については、例えば、ビニル芳香族系炭化水素のモノマーのみで重合完結後、続いて共役ジエンのモノマーを連続的に重合させ、その後、ビニル芳香族炭化水素のモノマーを連続的に重合させる方法が挙げられる。例えば、ビニル芳香族系炭化水素がスチレンであり、共役ジエンがブタジエンであるスチレン−ブタジエンブロック共重合体の場合、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックの順に重合させることによりピュアブロック構造を有する共重合体が得られる。また、ランダムブロック共集合体であれば、例えば、スチレンモノマーとブタジエンモノマーとの比率が異なる混合物を重合させ、次いでスチレンモノマーとブタジエンモノマーの比率が前のものと異なる混合物を重合させると、スチレンブロックにブタジエンが、ブタジエンブロックにスチレンが混ざり込んだランダムブロック構造を有する共重合体が得られる。また、スチレンを単独重合させ、重合完結後、スチレンモノマーとブタジエンモノマーの混合比を徐々に変化させた混合物を仕込んで順次重合を続行させ、その後スチレンブロックを重合させると、スチレンブロック間にスチレン・ブタジエンモノマー比が次第に変化するスチレン・ブタジエン共重合体部位をもつテーパードブロック構造を有する共重合体が得られる。重合反応においては、重合活性の高いブタジエンの方から優先的に重合されることは念頭においておく必要がある。各温度での貯蔵弾性率の調整については、スチレンの組成比やブロック構造を調整することが必要である。
分子量に関してはMFR測定値(測定条件:温度200℃、荷重49N)が2g/10分以上15g/10分以下で調整される。
((III)ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加誘導体)
本発明において、ビニル芳香族炭化水素−共役ジエンブロック共重合体の水素添加誘導体は、水素添加される前の共役ジエン単量体単位に基づく不飽和二重結合に対し、水素が添加されたものである。ビニル芳香族炭化水素−共役ジエンブロック共重合体中の全構成単位に対するビニル芳香族炭化水素単位の含有率は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。前記含有率が60質量%以上であれば、フィルムの透明性が維持され、また前記含有率が90質量%以下であれば、伸不足に起因する耐キレ性の低下を抑えられ、またポリマー作製上の観点からは水素添加における還元触媒の安全化の効果を確保できるため好ましい。
また、水添前のビニル芳香族炭化水素−共役ジエンブロック共重合体中の共役ジエン単位には、共役ジエンが1位及び4位の炭素で重合し、2位及び3位の炭素間に二重結合を有する構造のもの、および、共役ジエンが1位及び2位の炭素(又は、3位及び4位の炭素)で重合し、3位及び4位の炭素間(または1位及び2位の炭素間)に二重結合を有する構造のものの2種類が存在する。前者の2位及び3位の炭素間に二重結合を有する構造を有するものは、二重結合の位置から、シス体とトランス体の2つの異性体構造を有する(以下、この構造を、「シス構造」または「トランス構造」と称する。)。一方、後者の3位および4位の炭素間(または1位及び2位の炭素間)に二重結合を有する構造のものは、得られるビニル芳香族炭化水素−共役ジエンブロック共重合体において、二重結合は側鎖の位置に配される(以下、この構造を「ビニル構造」と称する。)。
さらに、ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加誘導体の重量(質量)平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による重量平均分子量(Mw)で、30,000以上、好ましくは50,000以上であり、300,000以下、好ましくは200,000以下である。重量(質量)平均分子量(Mw)が30,000以上であれば、十分な伸びを付与でき、耐キレ性を向上させることができる。一方、重量(質量)平均分子量(Mw)が300,000以下であれば、溶融押出工程での圧力上昇が抑えられ、生産性の悪化、厚み振れを抑えることができる。
本発明の熱収縮性フィルムは、印刷層が形成される面をビニル芳香族炭化水素系樹脂層等で形成する。ビニル芳香族炭化水素系樹脂は耐溶剤性に乏しいため、任意の溶剤を使用した場合、印刷後のフィルムの耐キレ性や剛性が損なわれてしまう場合がある。そこで、ビニル芳香族炭化水素系樹脂の場合、インキ内の顔料やバインダー樹脂を分散させる溶剤として、基材に浸透しにくく、かつ比較的表面張力の高いアルコール系のインキを使用する必要がある。
しかしこのようなアルコール系のインキを使用した場合、グラビア印刷では、フィルム基材に転写したインキが基材に溶剤浸透しにくいため、インキが基材になかなか定着せず、結局定着する前にインキ中の溶剤が揮発してしまう。その結果、インキが凝集してしまい、はじいた状態となってしまうことがある。グラビア印刷図柄は、インキがフィルム基材上に網点で転写されて構成されており、グラデーション図柄の色の濃淡変化は、網点の大きさが徐々に変化することで表現可能となる。しかし、前述のようにインキがはじいた状態となってしまうと、インキの網点面積が小さくなり、ジャンピングを引き起こしやすくなる。このような理由から、印刷層が形成される面がビニル芳香族炭化水素系樹脂層等である場合には、その耐溶剤性の乏しさが原因でジャンピングが発生しやすくなる。
インキの網点面積を大きくするためには、第1条件として印刷加工が施される面のヌレ性を上げて、インキが狙った所定の網点面積にしっかり広がるようにすることが必要である。さらに第2条件として、広がったインキがその網点面積を維持して基材に定着することが必要である。インキを基材に定着させるためには、顔料を包含したバインダー樹脂を分散させたインキ溶剤が基材に浸透し、バインダー樹脂を基材に密着させる必要がある。しかし、インキ溶剤の浸透に長時間かかると、インキ中のインキ溶剤の乾燥等でインキの表面張力が上がり、インキをはじいてしまうので、インキ溶剤浸透時間をある一定時間内にすることが第2条件において重要である。
すなわち、上記の2つの条件を満たすようにすることで、印刷適性に優れたジャンピングの発生しない熱収縮性フィルムを得ることができる。
<印刷層が形成されるビニル芳香族炭化水素系樹脂層等のヌレ性(第1条件)>
本発明の熱収縮性フィルムでは、第1条件であるヌレ性を改善する目的で、印刷層が形成されるビニル芳香族炭化水素系樹脂層等のヌレ指数を34dyne/cm以上、好ましくは35dyne/cm以上とする。ヌレ指数が34dyne/cm未満であると、インキが転写しても即座にはじいてしまい、インキの網点面積が狙った網点面積より小さくなり好ましくはない。一方、ヌレ指数の上限は特に制限はないが、フィルムの滑り性との関係で好ましくは39dyne/cm以下、より好ましくは38dyne/cm以下である。
印刷層が形成されるビニル芳香族炭化水素系樹脂層等のヌレ指数を34dyne/cm以上にするためには、滑り性を付与する添加剤である滑剤の種類・添加量を調整し、あるいはビニル芳香族炭化水素系樹脂層等の表面の粗さを調整することで達成することができる。
本発明において使用可能な滑剤としては、例えば、脂肪酸ビスアマイド系、炭化水素ワックス系等が挙げられるが、中でも脂肪酸ビスアマイド系を好適に用いることができる。脂肪酸ビスアマイド系は好適に用いられるが、添加量により、ヌレ性に大きく影響する。
脂肪酸ビスアマイドとしては、例えば、N−ステアリルステアリン酸アマイド、N−オレイルオレイン酸アマイド、N−ステアリルオレイン酸アマイド、N−オレイルステアリン酸アマイド、N−ステアリルエルカ酸アマイド、N−オレイルパルミチン酸アマイド、メチロールステアリン酸アマイド、メチロールベヘン酸アマイド等の置換アマイド類、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスカプリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスイソステアリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘン酸アマイド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アマイド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アマイド等の飽和脂肪酸ビスアマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アマイド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アマイド等の不飽和脂肪酸ビスアマイドが挙げられる。中でもエチレンビスステアリン酸アマイドが好適に用いられる。
脂肪酸ビスアマイドは添加量が多いとヌレ性が下がってしまうため、ヌレ性を上げるためには脂肪酸ビスアマイドの添加量を所定量以下に調整しつつ添加する必要がある。一方、添加量が少なすぎると、フィルムの滑り性が悪くなり、巻物にする際に端面が揃わなかったり、印刷や製袋加工の際のフィルム走行時に搬送ロール上での滑り不良等でシワが入ったりなどの問題が発生する場合がある。後述する表面粗さとの兼ね合いもあるが、ヌレ性を34dyne/cm以上に保ち適度な滑り性を付与するには、印刷層が形成される面を構成するビニル芳香族炭化水素系樹脂層における、ビニル芳香族炭化水素系樹脂100質量部に対して、0.08質量部以下、より好ましくは0.07質量部以下であり、かつ0.01質量部以上、より好ましくは0.02質量部以上添加される。
次にビニル芳香族炭化水素系脂層等の表面の粗さを調整する方法について説明する。ビニル芳香族炭化水素系樹脂層等に表面粗さを付与するには、ビニル芳香族炭化水素系樹脂では、ハイインパクトポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン)で表面を粗す手法が一般的に取られる。表面粗さは、ハイインパクトポリスチレンに含まれるゴム粒子径やフィルムの延伸条件にて調整することができる。例えば、表面粗さを小さくするには、比較的小さなゴム粒子径を有するハイインパクトポリスチレンを添加したり、低温下で延伸したりすればよい。一方、表面粗さを大きくするには、比較的大きなゴム粒子径を有するハイインパクトポリスチレンを添加したり、比較的高温で延伸したりすればよい。但し、あまり小さなゴム粒子径を有するハイインパクトポリスチレンを使用し、あるいは低温下で延伸してしまうと、粗さが少なくなりすぎて、フィルムの滑り性が低下し、前述したような問題が発生するので注意が必要である。
表面粗さは一定面積内の10点平均粗さを指標とする。ヌレ性を34dyne/cm以上に保ち適度な滑り性を付与するには、前述の滑剤の種類と添加量との兼ね合いもあるが、平均粗さは、好ましくは0.50μm以上、より好ましくは0.60μm以上であり、1.2μm以下、好ましくは1.1μm以下である。
<印刷が形成されるビニル芳香族炭化水素系樹脂層等のインキ溶剤浸透時間(第2条件)>
第2条件であるインキ溶剤浸透時間は、2−プロパノール/酢酸ノルマルプロピルの質量比が60/40である混合溶剤3μlをフィルムの印刷面上に滴下してから、フィルムの滴下部分が白濁を開始するまでの時間が3秒以下、好ましくは2秒以下であることが必要である。3秒より長くかかると、基材にインキが定着する前にインキがはじかれてしまい、インキの網点面積が小さくなり好ましくない。
2−プロパノール/酢酸ノルマルプロピルの質量比が60/40である溶剤を3μl滴下してから、フィルムが白濁を開始するまでの時間を3秒以下に調整するには、印刷が形成されるビニル芳香族炭化水素系樹脂層等の構成成分を調整する必要がある。インキ溶剤浸透時間におけるインキ溶剤として2−プロパノール/酢酸ノルマルプロピルを選定する理由は、熱収縮性フィルムの印刷が形成されるビニル芳香族炭化水素系樹脂層等において、インキ溶剤としてアルコール類と酢酸エステル類の混合溶剤が一般的に用いられるからである。更に具体的には2−プロパノールと酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピルが使用されるのが通常である。本溶剤が素早く印刷がなされる面の層に浸透すれば、インキがはじかれることなく網点面積を忠実に再現することができるが、浸透速度が遅いと、インキ中の溶剤が先に乾燥してしまい、インキ全体の表面張力がアップして、結果的にインキがはじき、網点面積を忠実に再現できないこととなる。
インキ溶剤の浸透時間を短くするには、印刷層が形成されるビニル芳香族炭化水素系樹脂層等の構成成分のうち、インキ溶剤と親和性の高い成分、すなわちビニル芳香族炭化水素単量体単位を多く含有するビニル芳香族炭化水素系樹脂を多く使用する必要がある。しかし、このような樹脂を単に多く使用するだけでは、耐キレ性に劣り、フィルムを適性幅にして巻物にするスリット工程や印刷工程等でフィルムが破断してしまう等の問題がある。そこで、ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体又はビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加誘導体等の耐キレ性を付与可能な成分を適度に混合する必要がある。
印刷層が形成されるフィルムまたは樹脂層が、ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体で構成される場合、ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体のブロック構造がランダムブロックであると、ビニル芳香族炭化水素単位と共役ジエン単位とが相溶化した状態となり、ビニル芳香族炭化水素が単独で存在するものより溶剤の親和性が悪くなる。よってそのような相溶化を防止するために、ビニル芳香族炭化水素単位が主のブロックが比較的長いピュアブロックの配合比率を高くするか、ランダムブロックの配合比率を低くする必要がある。
ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体のブロック構造は粘弾性の損失弾性率のピーク位置で判断することができる。ピュアブロック共重合体では、損失弾性率のピークが、ビニル芳香族炭化水素ブロックに起因する物と共役ジエンブロックに起因する物の2本になる。ランダムブロック共重合体に近づくにつれ、ビニル芳香族炭化水素ブロック中には共役ジエンが、共役ジエンブロック中にはビニル芳香族炭化水素が含まれるようになるので、2本のピークが近づくことになる。
テーパードブロックの場合、ビニル芳香族炭化水素ブロック内に共役ジエンが濃度勾配をもった状態で存在するので、ビニル芳香族炭化水素ブロックに起因する損失弾性率のピークも共役ジエンブロックに起因する損失弾性率のピークもなく、ビニル芳香族炭化水素ブロックよりに幅広いピークが一つ存在することとなる。よってテーパードブロックの場合は、ビニル芳香族炭化水素ブロックの構成比率が高いほど、ビニル芳香族炭化水素の性質が強くなり、溶剤との親和性が高くなってインキ溶剤浸透速度が速くなるので、言い換えれば損失弾性率のピークがビニル芳香族炭化水素ブロックよりにあるほど、インキ溶剤浸透時間が短いこととなる。
ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体とビニル芳香族炭化水素の重合体との混合物で構成される場合も、当該共重合体のブロック構造がランダムブロックであると、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンが相溶化した状態となり、インキ溶剤の親和性が悪くなる。よって前記相溶化を防止する為に、ビニル芳香族炭化水素が主のブロックが比較的長いピュアブロックの配合比率を高くするか、ランダムブロックの配合比率を低くする必要がある。また、テーパードブロックを使用する場合は、よりビニル芳香族炭化水素の損失弾性率のピーク位置に近いピーク位置をもつものを使用する必要がある。
ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加誘導体を使用する場合も、前述のビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体と同様に考えればよい。即ち、ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加誘導体の場合、インキ溶剤の親和性を上げる為には、水素添加前のビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体について、ビニル芳香族炭化水素が主のブロックが比較的長いピュアブロックの配合比率を高くするか、ランダムブロックの配合比率を低くする必要がある。また、テーパードブロックを使用する場合は、よりビニル芳香族炭化水素の損失弾性率のピーク位置に近いピーク位置をもつものを使用する必要がある。
これまで説明したことから、インキ溶剤浸透時間を短くする為には、結局印刷がなされる面の層はどのようなブロック構造を配合したとしても、該層を形成する樹脂組成物の損失弾性率のピーク温度をビニル芳香族炭化水素に起因する損失弾性率のピーク温度にできるだけ近づけることが必要であることがわかる。
一般的に使用されるビニル芳香族炭化水素はスチレンで、共役ジエンはブタジエンであるが、スチレンの損失弾性率のピーク温度は110℃であり、ブタジエンのそれは−90℃にある。よって、インキ溶剤の浸透時間を短くする為には、印刷層が形成されるビニル芳香族炭化水素系樹脂層等がスチレン−ブタジエンブロック共重合体か或いはスチレンーブタジエンブロック共重合体の水素添加誘導体から選ばれた1種又は2種の混合物である場合、又はそれらとポリスチレンの混合物である場合、当該層を構成する樹脂の損失弾性率のピーク温度を110℃に近づける必要がある。
しかし熱収縮性フィルムは一般に、50℃〜100℃の温度領域で収縮する必要があり、印刷層が形成されるビニル芳香族炭化水素系樹脂層等だけとはいっても損失弾性率のピーク温度が100℃以上にあれば、その層が柱となって熱収縮を阻害してしまう。よって、熱収縮性を阻害させずかつインキ溶剤浸透時間を短くするには、損失弾性率のピークを、その下限を好ましくは75℃以上、より好ましくは80℃以上とし、その上限を好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下とする必要がある。なお、熱収縮性フィルムにおける印刷層が形成されるビニル芳香族炭化水素系樹脂層等が樹脂混合物により形成されている場合は、該樹脂混合物が上記範囲の損失弾性率のピークを示すことが必要とされる。
また、印刷層が形成されるビニル芳香族炭化水素系樹脂層等の厚さについては、全層の厚さに対して5%以上、好ましくは7%以上であれば厚み比率が安定し、フィルムの特性が安定する。印刷層が形成されるビニル芳香族炭化水素系樹脂層等がそのような厚みにあり、かつ損失弾性率のピーク温度が前述の位置にあれば、フィルム全体の主収縮方向の80℃における最大収縮応力がある一定以上の値となる。よって全体のフィルムの80℃における最大収縮応力が2.5MPa以上、好ましくは2.7MPa以上、さらに好ましくは2.9MPa以上である場合、インキ溶剤浸透時間が短くなり好ましいこととなる。
しかし、当該収縮応力が大きくなるとインキ溶剤浸透時間は短くなるものの、収縮させた時に図柄に歪みが生じたり、ラベル等に用いられる際に廃棄しやすいようにミシン目を入れることがあるが、ミシン目が開きすぎて、収縮加工段階で破断してしまったりする。よって最大収縮応力は7.0MPa以下、好ましくは6.5MPa以下に設定する必要がある。
(他の添加成分)
本発明において、特性を阻害しない範囲で、印刷層が形成される面の印刷層内に他の樹脂や熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、核剤、難燃剤、着色剤等の添加剤を加えてもよい。特に滑剤については、印刷が形成されるビニル芳香族炭化水素系樹脂層等のヌレ性が34dyne/cm以上であることを満足すれば、その特性を阻害しない滑剤を併用しても差し支えない。
<他の構成層:印刷が形成されるビニル芳香族炭化水素系樹脂層以外の層>
第1の本発明の熱収縮性フィルムは、上記したビニル芳香族炭化水素系樹脂からなる単層フィルムであってもよいし、該層を表層に備えた積層フィルムであってもよい。積層フィルムの場合、ビニル芳香族炭化水素系樹脂層以外の他の層としては、その材質や、層の数は特に制限はない。他の層を、上記したビニル芳香族炭化水素系樹脂(同一または異なる種類のもの)や、他の樹脂を混合した樹脂組成物で構成してもよいし、フィルムの特性を阻害しない範囲であれば異質の材料で構成してもよい。異質の材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。透明性、層間の接着性並びに生産性の観点からは、同質の材料、ポリエステル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、およびポリオレフィン系樹脂のいずれかの樹脂で構成されるのが好ましい。
<熱収縮性フィルムの製造方法>
第1の本発明の熱収縮性フィルムの製造方法について、説明する。熱収縮性フィルムは、単層フィルムまたは積層フィルムとして構成されるが、該層または各層を構成する樹脂組成物を、一軸押出機または二軸(同方向、異方向)押出機によって押し出し、少なくとも1軸に延伸して製造される。
押出方法としては、Tダイ法、チューブラ法等の既存の方法を採用することができる。また、積層フィルムを製造する場合、共押出や、単層毎に押し出した後に重ね合わせる方法等を採用することができる。溶融押出された樹脂は、冷却ロール、空気、水等で冷却された後、熱風、温水、赤外線等の適当な方法で再加熱され、ロール法、テンター法、チューブラ法等により、1軸または2軸に延伸される。
延伸温度は、単層フィルムまたは積層フィルムを構成する各樹脂の軟化温度や、得られる単層フィルムまたは積層フィルムに要求される用途によって変える必要があるが、概ね60℃以上130℃以下、好ましくは80℃以上120℃以下の範囲で制御される。
上記延伸処理において、主収縮方向(単層フィルムまたは積層フィルムの長さ方向と直角方向(TD))の延伸倍率は、単層フィルムまたは積層フィルムの構成組成、延伸手段、延伸温度、目的の製品形態に応じて2倍以上7倍以下の範囲で適宜決定される。また、1軸延伸にするか2軸延伸にするかは、目的の製品の用途によって決定される。
より具体的には、積層フィルムの場合、中間層が所望の割合になるように各原料を押出機で溶融し、Tダイにて押出した溶融体をキャストロールで冷却し厚さ200μm以上400μm以下の未延伸フィルムを得ることが好ましい。そして、この未延伸フィルムを流れ方向(MD)に1.0倍以上1.5倍以下延伸後、その直角方向(TD)に3倍以上8倍以下延伸し、熱処理を行い、厚さ約30μm以上70μm以下のフィルムを製作することができる。但し、延伸温度と熱処理温度は、収縮温度領域において所望の熱収縮率が得られるように設定する必要がある。
さらに、延伸、熱処理後、フィルムの分子配向が緩和しない時間内に速やかに、得られたフィルムの冷却を行うことも、収縮性を付与・保持する上で重要である。前記範囲内の延伸倍率で延伸した二軸延伸フィルムは、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が大きくなりすぎることはなく、例えば、収縮ラベルとして用いる場合、容器に装着するとき容器の高さ方向にもフィルムが熱収縮する、いわゆる縦引け現象を抑えることができるため好ましい。延伸温度は、用いる樹脂のガラス転移温度や熱収縮性フィルムに要求される特性によって変える必要があるが、概ね50℃以上、好ましくは60℃以上であり、上限が130℃以下、好ましくは110℃以下の範囲で制御される。次いで、延伸したフィルムは、必要に応じて、自然収縮率の低減や熱収縮特性の改良等を目的として、50℃以上100℃以下程度の温度で熱処理や弛緩処理を行った後、分子配向が緩和しない時間内に速やかに冷却され、熱収縮性フィルムとなる。
また第1の本発明の熱収縮性フィルムは、必要に応じてコロナ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面処理や表面加工、さらには、各種溶剤やヒートシールによる製袋加工やミシン目加工などを施すことができる。
第1の本発明の熱収縮性フィルムは、被包装物によってフラット状から円筒状等に加工して包装に供される。ペットボトル等の円筒状の容器で印刷を要するものの場合、まずロールに巻き取られた広幅のフラットフィルムの一面に必要な画像を印刷し、そしてこれを必要な幅にカットしつつ印刷面が内側になるように折り畳んでセンターシール(シール部の形状はいわゆる封筒貼り)して円筒状とすれば良い。センターシール方法としては、有機溶剤による接着方法、ヒートシールによる方法、接着剤による方法、インパルスシーラーによる方法が考えられる。この中でも、生産性、見栄えの観点から有機溶剤による接着方法が好適に使用される。
[熱収縮性ラベル及び該ラベルを装着した容器(第2、3の本発明)]
第1の本発明の熱収縮性フィルムは、印刷適性に優れているため、印刷層を形成して用いられるが、必要に応じて蒸着層、その他の機能層を形成することにより、ボトル(ブローボトル)、トレー、弁当箱、総菜容器、乳製品容器等の様々な成形品として用いることができる。特に第1の本発明の熱収縮性フィルムを食品容器(例えば清涼飲料水用または食品用のPETボトル、ガラス瓶、好ましくはPETボトル)用熱収縮性ラベル(第2の本発明)として用いる場合、複雑な形状(例えば、中心がくびれた円柱、角のある四角柱、五角柱、六角柱など)であっても該形状に密着可能であり、シワやアバタ等のない美麗なラベルが装着された容器が得られる。第3の本発明の容器は、通常の成形法を用いることにより作製することができる。
第1の本発明の熱収縮性フィルムは、優れた印刷適性とともに、収縮特性、収縮仕上がり性を有するため、高温に加熱すると変形を生じるようなプラスチック成形品の熱収縮性ラベル素材(第2の本発明)のほか、熱膨張率や吸水性等が本発明の熱収縮性フィルムとは極めて異なる材質、例えば金属、磁器、ガラス、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂から選ばれる少なくとも1種を構成素材として用いた包装体(容器)の熱収縮性ラベル素材として好適に利用できる。
第2の本発明の熱収縮性ラベルが利用できるプラスチック製容器を構成する材質としては、前記の樹脂の他、ポリスチレン、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−ブチルアクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、(メタ)アクリル酸−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。これらのプラスチック製容器は2種以上の樹脂類の混合物でも、積層体であってもよい。
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。但し、以下の実施例では、フィルムの流れ方向をMD、流れ方向と直角方向をTDとして記載する(主収縮方向がTDに相当する)。
<評価方法>
実施例に示す測定値および評価は次のように行った。
(グラデーション図柄の印刷適性評価)
日商グラビア社製のグラビア校正機「CM型」を用いて、次の通りグラデーション図柄の印刷を行い、ジャンピング(グラデーション図柄部分において、色の濃淡変化が滑らかにならず急激に変化し、境界線を引いたような見栄えとなる不具合)の発生の程度を評価した。
(1)インキ:大日精化工業社製「OS−M794墨」と希釈溶剤である「OS−M No.2」とを、23℃雰囲気下における粘度がザーンカップ♯3で25秒〜30秒となるよう調製し、印刷インキとした。
(2)グラデーション版:ナベプロセス社製の幅150mm、円周407mmのグラデーション版を使用した。
(3)試料:主収縮方向を幅方向とし、幅120mm、長さ700mmにフィルムを切り出して試料とした。
(4)印刷:日商グラビア社製のグラビア校正機「CM型」を用い、印刷速度は25m/min〜30m/minとして試料にグラデーション図柄の印刷を行い、印刷後は室温で自然乾燥させた。
(5)評価:インキが完全に乾燥した後、以下の基準で、グラデーション図柄におけるジャンピングの程度を目視評価した。
○:ジャンピングがあまり確認できない。
×:はっきりとジャンピングが確認できる。
(インキ溶剤浸透時間)
2−プロパノール/酢酸ノルマルプロピルの質量比が60/40である混合溶剤を作製し、マイクロシリンジを用いてフィルム面から10mmの位置から、22℃〜24℃の雰囲気温度で混合溶剤を3μl滴下した。フィルム面上に滴下してからフィルムが白濁を開始するまでの時間を測定した。滴下するフィルム面は印刷が形成されるビニル芳香族炭化水素系樹脂層等である。
(ヌレ指数)
JIS K6768の測定方法で行った。測定は印刷が形成されるビニル芳香族炭化水素系樹脂層等である。
(収縮応力)
フィルムをMD10mm、TD70mmの大きさに切り出し、50mmの間隔でチャックし、ロードセルにタルミがないように固定する。その後80±0.5℃のシリコーンオイルバスに試料片を60秒浸積させ、その間のフィルム主収縮方向(TD)の最大収縮応力を測定した。収縮応力は下記の式に当てはめて計算した。
収縮応力(MPa)=ロードセルにかかる荷重(N)/試料片の断面積(mm
(表面粗さ)
フィルムの任意な位置の、MD250μm、TD350μmを取り出し、TDに1.2μm、MDに1.2μm間隔で表面高さを調査し、10点平均粗さを調査する。測定は印刷が形成されるビニル芳香族炭化水素系樹脂層等である。
(粘弾性測定(損失弾性率測定))
粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティー計測制御社製)を用い、振動周波数10Hz、昇温速度3℃/分、測定温度−120℃から130℃の範囲で測定した。損失弾性率のピーク温度は、損失弾性率の温度依存曲線の傾きが零(一次微分が零)となる温度のことである。なお、測定フィルム(シート)は構成する樹脂を0.2mm〜1.0mm程度の厚み範囲で作成し、ほぼ無配向の方向を測定した。例えば、構成樹脂を押出機にて押出した後に、横方向を測定するか、もしくは熱プレスにて配向を緩和して測定しても構わない。また、延伸、未延伸に関わらず構成樹脂のフィルム、シートもしくはペレットを熱プレスにてシート化した後に測定してもよい。本実施例においては、ペレットを熱プレスしてシート化した後に測定した。
実施例、比較例において使用したポリマー材料を表1に示す。
Figure 0005438928
(実施例1)
樹脂Kを85質量部、樹脂Oを15質量部、エチレンビスステアリン酸アミド0.08質量部と、表面を粗すために平均粒径2μmのゴム粒子径のHIPS(ハイインパクトポリスチレン)1.5質量部を混合し、押出機にて190℃〜210℃にて混練し、その溶融体を約70℃のキャスティングロールにて冷却し、未延伸シートを得た。この未延伸シートをMDに90℃で1.35倍のロール延伸、次いで、TDに95℃で5.5倍延伸し、70℃で熱処理を行い厚さ50μmの熱収縮性フィルムを得た。得られた熱収縮性フィルムの評価結果を表2に示す。なお、この場合TDが主収縮方向となる。
(比較例1)
樹脂Aを15質量部、樹脂Cを35質量部、樹脂Eを35質量部、樹脂Nを15質量部、エチレンビスステアリン酸アミド0.1質量部と、表面を粗すために平均粒径2μmのゴム粒子径のHIPS(ハイインパクトポリスチレン)1.5質量部を混合する以外は、実施例1と同様に熱収縮性フィルムを得た。得られた熱収縮性フィルムの評価結果を表3に示す。なお、この場合TDが主収縮方向となる。
(実施例2)
樹脂Kを85質量部、樹脂Oを15質量部、エチレンビスステアリン酸アミド0.08質量部と、表面を粗すために平均粒径2μmのゴム粒子径のHIPS(ハイインパクトポリスチレン)1.5質量部を混合してなる樹脂を印刷がなされる表裏層とし、樹脂Lを90質量部、樹脂Mを10質量部とからなる混合樹脂を中間層(印刷がなされない層)とし、外層と中間層の樹脂を別々の押出機にて190℃〜210℃にて混練し、200℃でTダイ内で合流させ、表層/中間層/裏層の2種3層構造からなる溶融体を約70℃のキャスティングロールにて冷却し、未延伸シートを得た。この未延伸シートをMDに90℃で1.35倍のロール延伸、次いで、TDに95℃で5.5倍延伸し、70℃で熱処理を行い厚さ50μmの熱収縮性フィルム(積層比:5μm/40μm/5μm)を得た。得られた熱収縮性フィルムの評価結果を表2に示す。なお、この場合TDが主収縮方向となる。
(実施例3)
樹脂Kを95質量部、樹脂Oを5質量部、エチレンビスステアリン酸アミド0.06質量部と、表面を粗すために平均粒径2μmのゴム粒子径のHIPS(ハイインパクトポリスチレン)1.5質量部を混合してなる樹脂を印刷が形成される表裏層とし、樹脂Lを90質量部、樹脂Mを10質量部とからなる混合樹脂を中間層(印刷がなされない層)とした以外は、実施例2と同様に熱収縮性フィルムを得た。得られた熱収縮性フィルムの評価結果を表2に示す。なお、この場合TDが主収縮方向となる。
(比較例2)
樹脂Dを20質量部、樹脂Jを80質量部、エチレンビスステアリン酸アミド0.1質量部と、表面を粗すために平均粒径2μmのゴム粒子径のHIPS(ハイインパクトポリスチレン)1.5質量部を混合してなる樹脂を印刷が形成される表裏層とし、樹脂Dを45質量部、樹脂Fを55質量部とからなる混合樹脂を中間層(印刷がなされない層)とし、積層比:6.25μm/37.5μm/6.25μmとする以外は実施例2と同様に熱収縮性フィルムを得た。得られた熱収縮性フィルムの評価結果を表3に示す。なお、この場合TDが主収縮方向となる。
(比較例3)
樹脂Dを20質量部、樹脂Jを80質量部、エチレンビスステアリン酸アミド0.05質量部と、表面を粗すために平均粒径2μmのゴム粒子径のHIPS(ハイインパクトポリスチレン)1.5質量部を混合してなる樹脂を印刷が形成される表裏層とし、樹脂Dを45質量部、樹脂Fを55質量部とからなる混合樹脂を中間層(印刷がなされない層)とし、積層比:6.25μm/37.5μm/6.25μmとする以外は実施例2と同様に熱収縮性フィルムを得た。得られた熱収縮性フィルムの評価結果を表3に示す。なお、この場合TDが主収縮方向となる。
(比較例4)
樹脂Bを10質量部、樹脂Gを80質量部、樹脂Nを10質量部、エチレンビスステアリン酸アミド0.1質量部と、表面を粗すために平均粒径2μmのゴム粒子径のHIPS(ハイインパクトポリスチレン)1.5質量部を混合してなる樹脂を印刷が形成される表裏層とし、樹脂Hを50質量部、樹脂Iを50質量部とからなる混合樹脂を中間層(印刷がなされない層)とする以外は実施例2と同様に熱収縮性フィルムを得た。得られた熱収縮性フィルムの評価結果を表3に示す。なお、この場合TDが主収縮方向となる。
Figure 0005438928
Figure 0005438928
表2、3の評価結果から、条件(1)と(2)のどちらの条件も満足するものが、ジャンピングがなく印刷適性が良好であった。また条件(1)か(2)のどちらかを満足しないものはジャンピングを発生させてしまうものとなった。
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う熱収縮性フィルム、熱収縮性ラベル、および、該ラベルを装着した容器もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

Claims (4)

  1. ビニル芳香族炭化水素樹脂層からなるフィルム、または、少なくとも1層のビニル芳香族炭化水素樹脂層を表層に有する積層フィルムであって、
    前記ビニル芳香族炭化水素樹脂層は、(I)ビニル芳香族炭化水素の重合体と(II)ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体とを含むビニル芳香族炭化水素系樹脂100質量部に対して、脂肪酸ビスアマイドを0.01質量部以上0.08質量部以下含み、10点平均粗さが0.50μm以上1.2μm以下であるとともに、損失弾性率のピークを75℃以上95℃以下に有し、
    前記フィルムまたは前記積層フィルムの主収縮方向の80℃における最大収縮応力が2.5MPa以上7.0MPa以下であり、
    下記条件(1)を満たすことを特徴とする熱収縮性フィルム。
    (1)ビニル芳香族炭化水素樹脂層からなるフィルムまたは少なくとも1層のビニル芳香族炭化水素系樹脂層のヌレ指数が34dyne/cm以
  2. 前記ビニル芳香族炭化水素系樹脂層を表裏層とし、熱可塑性樹脂層を中間層としてなり、前記中間層を構成する熱可塑性樹脂が、表裏層とは異なるビニル芳香族炭化水素系樹脂で構成される、請求項1に記載の熱収縮性フィルム。
  3. 請求項1又は2に記載の熱収縮性フィルムを用いたことを特徴とする熱収縮性ラベル。
  4. 請求項に記載の熱収縮性ラベルを装着した容器。
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