JP4082662B2 - 熱収縮性積層フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低温収縮性に優れるとともに、剛性のある腰の強い、自然収縮性等に優れた特に収縮ラベル用として品質上のバランスが良好な熱収縮性積層フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
収縮包装や収縮結束包装、あるいはプラスチック容器の収縮ラベル、ガラス容器の破壊飛散防止包装やキャップシ−ルなどに広く利用される熱収縮性フィルムの材質としては、ポリ塩化ビニル(PVC)が最もよく知られている。これは、PVCから作られた熱収縮性フィルムが、機械強度、剛性、光学特性、収縮特性等の実用特性、およびコスト性も含めて、ユーザーの要求を比較的広く満足するからである。しかしながら、PVCは廃棄物処理の問題等があることから、PVC以外の材料からなる熱収縮性フィルムが要望されていた。
【0003】
このようなPVC以外の材料の一つとして、ポリエステル系樹脂を主たる材料としたポリエステル系熱収縮性フィルムが提案され使用されている。このポリエステル系熱収縮性フィルムは室温での剛性、いわゆる腰の強さが良好で、自然収縮(常温よりやや高い温度、例えば夏場においてフィルムが本来の使用前に少し収縮してしまうこと)率が小さく自然収縮性は非常に良好なものの、PVC系と比較すると、加熱収縮時に収縮斑やしわが発生し易い問題や、ラベルの回収のために消費者が実施するミシン目での開封が困難という問題があった。
【0004】
また、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)を主たる材料とするポリスチレン系熱収縮性フィルムが提案され使用されているが、このポリスチレン系フィルムは、PVCフィルムに比べ、収縮仕上がり性は良好であるが、より低温収縮性を付与すると自然収縮率が大きくなり、スリ−ブ状に加工したラベルの折り径が減少しラベルを容器に被覆できにくくなるという問題があった。
ポリスチレン系熱収縮性フィルムとしては、上記SBSやスチレン系エラストマー樹脂等の各種ポリスチレン系樹脂を組合せて積層構造とした熱収縮性積層フィルムも提案されている。(例えば特開平11−77917号、特開平11−284313号)
これらの積層フィルムは自然収縮性、低温収縮性、腰の強さ等に改善はある程度みられるものの、耐破断性を満足するものはなかった。
積層フィルムでは、通常、中心層にてフィルムの腰の強さを付与することが層構成の基本的考え方となっている。そこで、フィルムに耐破断性を付与するためには表裏層に耐破断性に優れた樹脂を配したり、中間層に耐破断性に優れた樹脂を混合したり、中間層を薄くすることがなされている。しかし、その結果フィルム全体の腰の強さが低下してしまうという欠点があった。そのため、腰の強さを維持したまま耐破断性を付与することが困難であった。
【0005】
近年、ペットボトルに被覆する収縮ラベル用途では、需要の増大が見込まれているため、ボトルへのラベル被覆工程において比較的短時間、なおかつ比較的低温で高度な収縮仕上がり外観が得られることが要求され、また、自然収縮性の小さいフィルムが要求されるようになってきている。
つまり、最近のペットボトルおよびビンにおけるシュリンクフィルムのラベリング工程は主に蒸気シュリンカーが主流となっており、さらに無菌充填や、内容物の温度による品質低下等を回避するために、シュリンカーの温度を下げる必要が出てきている。
そのため、フィルムはなるべく低温で収縮を開始することを要求され、シュリンカーに入り、ラベルが低温の状態において収縮を開始するとともに、シュリンカー通過後、優れた収縮仕上がりが得られることを要求されている。
【0006】
また廃棄物の量を減少するという問題から、フィルムを薄肉化することが要求されており、それに伴い肉厚が薄くても腰の強いフィルムが要求されている。さらにラベルを被覆した容器をリサイクルして使用するために、使用後の容器とラベルを分別して回収する必要があり、ラベルを容器から剥がし易くするためにラベルにミシン目を入れているが、ラベルを被覆した容器が落下等でミシン目より破れて商品価値を損なうというトラブルが発生し、耐破断性の改良が要求されている。
【0007】
従って、主に低温収縮性を兼ね備えつつ、自然収縮率を抑えられ、収縮仕上がり性に優れ、更にフィルムの腰が強く、かつ耐破断性に優れた品質バランスのとれた熱収縮性積層フィルムの開発が望まれている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、積層フィルムの表裏層に高弾性率樹脂を配することによりフィルム全体の腰の強さを付与し、中間層において耐破断性を付与することによって従来の積層構成、すなわち中間層によりフィルムの腰の強さを維持する構成では達成困難であったフィルムの腰の強さと耐破断性の両特性を満足できることを見出したものである。
その要旨とするところは表裏層と中心層を構成する樹脂は、(a)スチレン含有量が80重量%以上であり、25℃での貯蔵弾性率(E’)が2.0×10 9 Pa以上で、かつ損失弾性率(E”)のピーク温度が30℃以上70℃以下に一つ存在するスチレン−ブタジエンブロック共重合体と、(b)ブタジエン含有量が20〜50重量%であり、損失弾性率(E”)の少なくとも 1 つのピーク温度が−30℃以下−80℃以上に存在するスチレン−ブタジエンブロック共重合体のそれぞれ混合物であり、表裏層は(a)を70重量%以上含み、中心層は(b)を40重量%以上60重量%以下含み、かつ、この混合物を用いて積層し、少なくとも1軸に延伸したフィルムであって、主収縮方向の70℃温水中の10秒間の熱収縮率が7%以上であり、主収縮方向と直角方向に測定した引張弾性率が1200MPa以上であることを特徴とする熱収縮性積層フィルムにある。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱収縮性積層フィルムでは、表裏層に弾性率の高い樹脂を配することによって、従来の中間層に弾性率の高い樹脂を配してきた積層フィルムでは達成困難であった耐破断性とフィルムの腰の強さを両立することが可能となったのである。つまり、本発明の熱収縮性積層フィルムでは、そのフィルムの腰の強さは外側の表裏層の弾性率に支配されることになる。
従って、従来の積層フィルムのように中間層においてフィルムの腰の強さを維持しようとした場合には、積層構成の厚みの半分以上は中間層にする必要があったため、耐破断性を付与するために軟質系樹脂を中間層にブレンドしたり、表裏層に耐破断性を付与する樹脂を配する必要があった。しかし、フィルムの腰の強さを担う中間層に軟質樹脂をブレンドした場合はその弾性率が低下してしまい、表裏層において耐破断性を付与する場合にはやはり相当の厚み比を必要としてしまい、フィルムの腰の強さと耐破断性を両立することが困難となるのである。
【0010】
一方、本発明のように表裏層においてフィルムの腰の強さを維持しようとした場合には中間層に配するよりも積層比を占める割合が少なくてすむことが判明した。
従って、耐破断性を付与する中心層を厚くした場合でも、表裏層に高弾性率の樹脂を配することによって、フィルムの腰を強く維持したまま耐破断性を付与することが可能となるのである。
腰の強さを付与する表裏層は25℃での貯蔵弾性率(E’)が1.5×109Pa以上で、かつ損失弾性率(E”)のピーク温度が30℃以上70℃以下に一つ存在することが好ましい。25℃での貯蔵弾性率(E’)が1.5×109Pa以下ではフィルムの腰を強く維持することが困難となり、さらにまた、損失弾性率(E”)のピ−ク温度が30℃未満に存在する樹脂では、常温におけるフィルムの腰の強さが確保されず、また自然収縮率が大きくなるという問題があり、ピ−ク温度が70℃を超える温度域に存在する樹脂では、低温での収縮性が充分発現できない。
【0011】
一方、中間層は耐破断性を付与する役割を担っているため、表裏層よりも低くかつ損失弾性率(E”)の少なくとも1つのピーク温度が−30℃以下−80℃以上に存在する樹脂を使用する必要がある。損失弾性率(E”)のピ−ク温度が−30℃を超える温度域にしかない樹脂では、フィルムの伸び特性を充分に付与することができない。
【0012】
本発明フィルムを構成する樹脂としては下記の樹脂を用いることが好ましい。つまり、表裏層および中心層を構成する樹脂が(a)スチレン含有量が80重量%以上であり、25℃での貯蔵弾性率(E’)が2.00×109Pa以上で、かつ損失弾性率(E”)のピーク温度が30℃以上70℃以下に一つ存在するスチレン−ブタジエンブロック共重合体と(b)ブタジエン含有量が20〜50重量%であり、損失弾性率(E”)の少なくとも1つのピーク温度が−30℃以下(−80℃以上)に存在スチレン−ブタジエンブロック共重合体の混合物であり、表裏層においては(a)が70重量%以上含まれ、中心層においては(b)が40重量%以上60重量%以下含まれることが好ましい。
【0013】
先に記載した(a)の樹脂は主にフィルムの腰の強さを付与するために用いる樹脂であり、(b)は耐破断性を付与する樹脂である。
従って、表裏層には弾性率の高い(a)樹脂を主体とし、中心層には耐破断性を付与する(b)を表裏層より多く含ませることによって、本件が発明したフィルムを作成することが可能となる。
従来の積層フィルムはフィルムの腰の強さを維持する原料として主にスチレン−ブチルアクリレート共重合体や透明性を維持するため連続相にアクリル系樹脂が共重合されたゴム分散型ポリスチレンを用いてきた。しかし、これらの原料は重合成分としアクリル成分が含まれているため、表裏層に配した場合、印刷前のフィルム物性においては非常に良好な耐破断性とフィルムの腰の強さを示すものの、印刷時のインキによって劣化してしまうという欠点があった。また、ゴム分散型ポリスチレン系樹脂を用いた場合は白化してしまうという欠点があった。従って、印刷を必要とする用途や透明性を必要とする用途には展開することが困難であった。
一方、腰の強さを付与する原料がスチレン−ブタジエンのブロック共重合体の場合には表裏層に配し印刷しても、先に述べたアクリルが重合されているポリマーのようり大幅な溶剤劣化が生じなくなる。従って、腰の強さを付与する樹脂としてはスチレン−ブタジエンのブロック共重合体を使用することが好ましいのである。
【0014】
次に各(a)、(b)の樹脂について説明する。腰の強さを付与することを目的とする(a)樹脂はスチレン含有量が80重量%以上であり、25℃での貯蔵弾性率(E’)が2.00×109Pa以上で、かつ損失弾性率(E”)のピーク温度が30℃以上70℃以下に一つ存在するスチレン−ブタジエンブロック共重合体であることが好ましく、表裏層においては70重量%以上含まれることが好ましい。貯蔵弾性率(E’)が2.00×109Pa未満の樹脂では、常温におけるフィルムの腰の強さが確保されず好ましくなく、表裏層はフィルムの腰の強さを付与する役割を担っているため(a)樹脂が70重量%以上、より好ましくは80重量%以上必要である。本フィルムの表裏層を構成する(a)樹脂は上記のスチレン−ブタジエンブロック共重合体の単独でもよいし、また2種以上の組み合わせでも構わない。
【0015】
また、損失弾性率(E”)のピ−ク温度が30℃未満に存在する樹脂では、常温におけるフィルムの腰の強さが確保されず、また自然収縮率が大きくなるという問題があり、ピ−ク温度が70℃を超える温度域に存在する樹脂では、低温での収縮性が充分発現できない。よって、フィルムの腰の強さと低温収縮のバランスから損失弾性率(E”)のピ−ク温度は、30〜70℃、好ましくは40℃〜68℃の範囲にあるものを用いる。
【0016】
次に耐破断性を付与する樹脂(b)はブタジエン含有量が20〜50重量%であり、損失弾性率(E”)の少なくとも1つのピーク温度が−30℃以下−80℃以上に存在するスチレン−ブタジエンブロック共重合体であることが好ましい。損失弾性率(E”)のピ−ク温度が−30℃を超える温度域にしかない樹脂では、フィルムの伸び特性を充分に付与することができない。またブタジエンが20重量%未満では伸び特性をやはり十分に付与することが困難となり、60重量%を越えると、腰の強さの低下および加工時のブタジエンの架橋によるゲルなどによってフィルム外観を損なうこととなる。中心層では本フィルムの耐破断性を付与する役割を担っているため40重量%以上60重量%以下含まれることが、より好ましい。
40重量%未満ではフィルムの耐破断性を付与することが困難となり、一方60重量%を越えるとフィルム中間層の弾性率が大幅に低下してしまい、フィルムの腰の強さを維持することが困難となる。
【0017】
本発明で使用するスチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)については、工業的に非常に多くの種類のスチレン−ブタジエンブロック共重合体が生産され、共重合組成比、共重合の構造、ブロック部分の構造、分子量等が様々に異なっている。
つまり屈折率や熱的性質をはじめとする特性が異なったスチレン−ブタジエンブロック共重合体が生産されており、要求に応じて様々なスチレン−ブタジエンブロック共重合体を重合することが可能である。これは主にスチレン−ブタジエンブロック共重合体が溶液中におけるリビング重合によって重合されているため、スチレンブロックとブタジエンブロックを各々重合過程において添加量を調整したりスチレンとブタジエンの重合反応速度の違いを利用して、組成比、構造、熱的特性を調整することが可能であるからである。
【0018】
具体的に述べると、スチレン−ブタジエンブロック共重合体においてピュアブロックの場合−90℃付近と110℃付近の2個所にそれぞれブタジエンブロック、スチレンブロックに起因する損失弾性率のピークが存在する。また、ピュアブロックのスチレンおよびブタジエンブロックにブタジエン成分およびスチレン成分を各々導入されたランダムブロックになると損失弾性率の各ピークは低温側のピークは高温側へ、高温側のピークは低温側へそれぞれシフトする。また、各ブロックの分子量や全体の分子量、ブタジエンにおいては1,4結合と1,2結合によっても損失弾性率のピーク温度や貯蔵弾性率の低下具合が変化する。従って、ブロックの共重合過程を調整することによって、損失弾性率の2つのピーク温度の位置、そのピークにおける貯蔵弾性率の低下度合いを調整することによって所定の粘弾性特性を持つポリマーを合成させることが可能となる。
スチレンとブタジエンによって重合されるスチレンーブタジエンブロック共重合体(SBS)において上記粘弾性条件を満たすことが出来れば特に限定しないが、本発明に示した、表裏層を主に構成するスチレン−ブタジエンブロック共重合体の損失弾性率のピーク温度範囲と25℃での貯蔵弾性率の両方を満たすことが可能となる重合方法を以下に述べる。
【0019】
通常スチレンの一部を仕込んで重合を完結させた後、スチレンモノマーとブタジエンモノマーの混合物を仕込んで重合反応を続行させる。このようにすると重合活性の高いブタジエンの方から優先的に重合し、最後にスチレンの単独モノマーからなるブロックが生じる。例えば先ず、スチレンを単独重合させ、重合完結後、スチレンモノマーとブタジエンモノマーの混合物を仕込んで重合を続行させると両スチレンブロックの中間にスチレン・ブタジエンモノマー比が次第に変化するスチレン・ブタジエン共重合体部位をもつスチレン−ブタジエンブロック共重合体が得られる。この重合過程をスチレンとブタジエンの混合割合を変え複数回実施することもあるが、この様な部位を持たせることによって上記粘弾性特性を持つポリマーを得ることが可能となる。この場合には前述したブタジエンブロックとスチレンブロックに起因する2つのピークが明確には確認出きず、見かけ上1つのピークのみが存在するようになる。つまりピュアブロック、ランダムブロックのSBSのようなブロック構造ではブタジエンブロックに起因するTgが0℃以下に主に存在してしまうために25℃での貯蔵弾性率が所定の値にすることが難しくなってしまう。
【0020】
一方中間層を主に構成するスチレン−ブタジエンブロック共重合体の損失弾性率のピ−ク温度を満たすためには、スチレン−ブタジエンブロック共重合体をピュアブロックかランダムブロックとなるように重合させるが、その際、ブタジエンの組成比や、ブタジエンブロック内のスチレン組成比を調整することで実施可能となる。
また、本発明の熱収縮性積層フィルムでは、特性を阻害しない範囲で他の樹脂や添加剤を組み合わせることも可能である。但し、透明性を維持する目的からは屈折率が出来るだけ近い樹脂、または透明性を大きく低下させない樹脂(主にポリスチレン系樹脂、例えばポリスチレン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンエラストマー、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合、エチレン−スチレン共重合、水添スチレンーブタジエン共重合体等)を選択することが好ましい。
【0021】
上記樹脂組成からなる本発明の熱収縮性積層フィルムについては、主収縮方向の70℃温水中での10秒間の熱収縮率が7%以上であることが必要である。本収縮率が7%未満であると、低温収縮性が不十分となってしまい、本来の目的は達成できない。また、自然収縮性を小さくするという意味では、30℃環境下にて30日後の収縮率が1.5%以下であることが好ましい。
また主収縮方向の23℃における引張伸び率が70%以上でありかつ主収縮方向と直角方向の0℃における引張伸び率が100%以上であることが好ましい。
【0022】
フィルムの主収縮方向の23℃における伸び率が低いと、PETボトルのラベル等に設けられたミシン目でラベル破袋をおこし易くなり、また、顕著に低い場合にはスリ−ブ加工時の折り目に引き裂きの力が加わると破れて穴開きとなってしまう。主収縮方向と直角方向(フィルム流れ方向)の低温での伸び率が低いと、低温環境下の印刷、スリ−ブ加工等フィルム流れ方向に張力が加わるときに破断して、トラブルを起こし易くなる。よって、上記トラブルがなく使用できるためには、主収縮方向の23℃における伸び率は70%以上、主収縮方向と直角方向の0℃における伸び率は100%以上のフィルムが好ましい。
さらに、上記樹脂組成からなる本発明の熱収縮性積層フィルムについては主収縮方向と直角の方向に測定した引張弾性率が1200MPa以上あることが必要である。本フィルムの腰の強さは収縮仕上がり性を向上させる一因となり得る。これは、収縮フィルムが印刷・製袋された後にボトルの上からボトルに被せられる時に機械的に押し込まれる状態となるためにある一定のフィルムの腰の強さがない場合にはフィルムが折れてしまい収縮後にシワになる原因となっているからである。
従って、本発明にて規定した引張弾性率が1200MPa未満では先に述べたフィルムをボトルに被せる時にフィルムが折れてしまうことが多くなる。
【0023】
先に述べたフィルム特性を満たすことが可能であれば、表裏層、中心層の積層厚み比は特に限定されないが、腰の強さと耐破断性を両立する方法は各層のブレンド比によっても大幅に変わるが、耐破断性を付与する中間層が50%以上あることが好ましく、60%以上あることがより好ましい。
本フィルムは本規定を満たしていれば、中心層と表裏層の間に何層あって構わない。例えば、2種3層、3種5層などでも良いのである。
つぎに本発明積層フィルムの製造方法を具体的に説明するが下記製造方法には限定されない。中間層用、表裏層用に各々上記内容で配合されたポリスチレン系樹脂を別々の押出機によって溶融させ、得られた溶融体をダイ内で合流させて押出す製造方法が一般的である。押出に際しては、Tダイ法、チューブラ法等の既存の方法を採用してもよい。溶融押出された積層樹脂は、冷却ロール、空気、水等で冷却された後、熱風、温水、赤外線、マイクロウエーブ等の適当な方法で再加熱され、ロール法、テンター法、チューブラ法等により、1軸または2軸に延伸される。
【0024】
延伸温度は積層フィルムを構成している樹脂の軟化温度や熱収縮性積層フィルムに要求される用途によって変える必要があるが、概ね60〜130℃、好ましくは80〜120℃の範囲で制御される。
延伸倍率は、フィルム構成組成、延伸手段、延伸温度、目的の製品形態に応じて2〜7倍の範囲で適宜決定される。また、1軸延伸にするか2軸延伸にするかは目的の製品の用途によって決定される。
また、延伸した後フィルムの分子配向が緩和しない時間内に速やかに、当フィルムの冷却を行うことも、収縮性を付与して保持する上で重要な技術である。
【0025】
【実施例】
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、実施例に示す測定値および評価は次のように行った。
【0026】
1)熱収縮率
フィルムを、MD100mm、TD100mmの大きさに切り取り、主収縮方向(TD)の収縮量を70℃の温水バスに10秒間浸漬し測定した。熱収縮率は、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表示した。
【0027】
2)自然収縮率
フィルムをTDに1000mmの長さでけがき、30℃の雰囲気の恒温槽に30日間放置後、けがき間の長さA(mm)を測定し、下記式より自然収縮率(%)を算出した。
自然収縮率(%)=(1000−A)/1000×100
【0028】
3)引張弾性率
フィルムのMDの引張弾性率を測定しその値を腰の強さとした。
測定方法は、MDに350mmの長さで5mm幅の試験片を切り出し、これをチャック間300mmで23℃の恒温室に設置した引張試験機にセットする。これを、引張試験速度5mm/分で応力−歪曲線を求め試験開始直後の直線部を用いて、下記式より引張弾性率を求めた。
引張弾性率=直線上の2点間の元の平均断面積による応力差/同じ2点間の歪差
【0029】
4)引張伸び率
フィルムの各方向に幅15mm、長さ100mmで試験片を切り取り、その試験片をチャック間40mmで恒温槽付引張試験機(株式会社インテスコ製 IM20型)にセットする。これを23℃なら200mm/分で、0℃なら100mm/分の試験速度で引張り、下記式より引張伸び率を求めた。TDの伸び率は23℃で、MDの伸び率は0℃で各々求めた。
引張伸び率=[(破断した時のチャック間長さ−40mm)/40mm]×100
【0030】
5)粘弾性測定(貯蔵弾性率、損失弾性率)
粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティ−計測制御(株)製)を用い、振動周波数10Hz、昇温速度3℃/分、測定温度−120℃から120℃の範囲で測定した。測定試験片は測定する樹脂を1mm程度の厚みに無配向の状態となるように熱プレスした板を用いた。
【0031】
[実施例1]
樹脂▲1▼(スチレン/ブタジエン=92/8、E’=2.7×109Pa、E”ピーク温度62℃)50重量%、樹脂▲2▼(スチレン/ブタジエン=70/30、E’=3.2×108Pa、E”ピーク温度−43℃/100℃)50重量%の混合樹脂を中間層樹脂(E’=1.4×109Pa、E”ピーク温度−48/66℃)とし、樹脂▲1▼80重量%、樹脂▲2▼20重量%の混合樹脂を表裏層樹脂(E’=2.3×109Pa、E”ピーク温度−48/66℃)として、それぞれの原料を別々の押出機で溶融押出しし、ダイ内で合流させて、2種3層の層構成の溶融体をキャストロールで冷却し厚さ300μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを流れ方向(MD)に90℃で1.3倍延伸後、その直角方向(TD)に6倍延伸し、厚さ約50μm(積層比1/6/1)のフィルムを製作した。但し延伸温度は熱収縮率が12%となるように設定した。
得られたフィルムの特性データを表1に示した。
【0032】
[比較例1]
樹脂▲1▼80重量%、樹脂▲2▼20重量%の混合樹脂を中間層樹脂とし、樹脂▲1▼50重量%、樹脂▲2▼50重量%の混合樹脂を表裏層樹脂とした以外は実施例1と同様な方法にてフィルムを製作した。
【0033】
[比較例2]
樹脂▲3▼(スチレン/ブチルアクリレート=84/17、E’=2.11×109Pa、E”ピーク温度77℃)50重量%、樹脂▲2▼50重量%の混合樹脂を中間層樹脂とし、樹脂▲3▼80重量%、樹脂▲2▼20重量%の混合樹脂を表裏層樹脂とした以外は実施例1と同様な方法にてフィルムを製作した。
【0034】
[比較例3]
樹脂▲1▼80重量%、樹脂▲2▼20重量%の混合樹脂を中間層および表裏層とした以外は実施例1同様な方法にてフィルムを製作した。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
表1、2より本件規定を満たした積層フィルムを作成した熱収縮性積層フィルムは低温収縮性、自然収縮性、腰の強さに優れ、主収縮方向とその直角方向の両方向に一定の伸び率を付与できたバランスのとれたものとなっている。一方、本件規定の粘弾性特性範囲外の規定の樹脂を使用した場合、いずれかの特性に問題があるアンバランスなものとなっていることが分かる。
【発明の効果】
本発明によれば、低温収縮性に優れるとともに、剛性のある腰の強い、自然収縮性等に優れた特に収縮ラベル用として品質上のバランスが良好な熱収縮性積層フィルムが得られる。
Claims (3)
- 表裏層と中間層を積層してなる少なくとも3層の熱収縮性積層フィルムにおいて、
表裏層と中心層を構成する樹脂は、(a)スチレン含有量が80重量%以上であり、25℃での貯蔵弾性率(E’)が2.0×10 9 Pa以上で、かつ損失弾性率(E”)のピーク温度が30℃以上70℃以下に一つ存在するスチレン−ブタジエンブロック共重合体と、(b)ブタジエン含有量が20〜50重量%であり、損失弾性率(E”)の少なくとも 1 つのピーク温度が−30℃以下−80℃以上に存在するスチレン−ブタジエンブロック共重合体のそれぞれ混合物であり、表裏層は(a)を70重量%以上含み、中心層は(b)を40重量%以上60重量%以下含み、かつ、この混合物を用いて積層し、少なくとも1軸に延伸したフィルムであって、
主収縮方向の70℃温水中の10秒間の熱収縮率が7%以上であり、主収縮方向と直角方向に測定した引張弾性率が1200MPa以上であることを特徴とする熱収縮性積層フィルム。 - 主収縮方向の23℃における引張伸び率が70%以上であり、かつ主収縮方向と直角方向の0℃における引張伸び率が100%以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性積層フィルム。
- 30℃環境下にて30日保管後の主収縮方向の収縮率が1.5以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱収縮性積層フィルム。
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