JP3902709B2 - 定着部付鉄筋 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄筋コンクリート構造、プレキャスト鉄筋コンクリート構造等に用いられる定着部付鉄筋に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉄筋コンクリート構造に用いる鉄筋は、その端部をU字状或いはL字状等に曲げて定着部としており、この定着部によって他の鉄筋やコンクリートに対して定着していた。また、この代わりに、鉄筋としてねじ鉄筋を用い、それにねじ付定着板をねじ込んでおき、ねじ鉄筋に対してねじ付定着板を所望位置に位置決めした後、そのねじ鉄筋とねじ付定着板の間にモルタル等の充填材を注入して固定する構成のものも知られていた(例えば、特許第2662150号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの従来の構造にはいずれにも問題があった。すなわち、端部をU字状或いはL字状等に曲げた構造の鉄筋は、コンクリートに対する定着強度を大きくするためにU字状或いはL字状等の部分を大きくせざるを得ず、このためかさばって、狭い場所での施工が困難であり、また、鉄筋端部の曲げ加工が困難でコスト高となるという問題があった。一方、ねじ付定着板を用いたものでは、資材が高価になり、しかも、ねじ付定着板をねじ付鉄筋に固定する際、両者の間に確実にモルタル等の充填材を注入する作業にコストがかかるという問題もあった。また、ねじ鉄筋にしか適用できないという問題もあった。
【0004】
本発明は、上述の問題点に鑑みて為されたもので、ねじ鉄筋に限らず、任意の鉄筋に適用可能でありながら、他の鉄筋やコンクリート等に定着するための定着部をコンパクトな構造とし、現場での施工を容易とすると共に低コストで製造可能な且つ定着強度の大きい定着部付鉄筋を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の定着部付鉄筋は、他の鉄筋やコンクリートに定着させるための定着部として、鉄筋に熱間据込加工を施して拡径部を形成し、更にその拡径部につながる鉄筋の根元部分に、鉄筋の通常部分よりも外径を大きくした補強部を設けたものである。鉄筋に形成した拡径部は、鉄筋の周囲に拡がった形状とできるため、従来の鉄筋端部をU字状或いはL字状等に曲げて構成した定着部に比べて外形寸法(鉄筋の軸線に直角方向の最大寸法)を小さくしながら大きい作用面積を持たせ且つ変形しにくくすることができ、このため小さい外形寸法でも、他の鉄筋やコンクリートに対する大きい定着強度を具えたものとなる。また、拡径部は鉄筋の一部として完全な一体構造で形成されるため、鉄筋に定着板をねじや溶接接合で固定した場合に比べて、鉄筋の直線状の部分と拡径部との連結強度が大きく且つ品質が安定しており、鉄筋間のばらつきが小さい。また、拡径部につながる部分に設けた補強部は、拡径部と通常部分との連結部の強度を大きくし、拡径部に移行する部分での急激な形状変化によってその部分に過大な応力が生じてもそれに耐えることを可能とする。従って、本発明の定着部付鉄筋を用いることで強度の大きいコンクリート構造体を形成できる。また、拡径部の外形寸法を、従来の鉄筋端部をU字状或いはL字状等に曲げて構成した定着部よりも小さくできるため、本発明の定着部付鉄筋は、輸送、保管等の取り扱いが容易であり、現場での施工や取り扱いも容易となる。
【0006】
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の定着部付鉄筋は、鉄筋に、定着部として、熱間据込加工によって拡径部を形成したことを特徴とする。本発明に使用する鉄筋は、熱間据込加工可能なものであれば任意であり、従来使用されている任意のものを用いることができるが、熱間据込加工を簡易に実施する上からは直径が10〜20mm程度のものが本発明の好ましい適用対象となる。鉄筋の周面は平滑なものでも、ねじ等を形成したものでもよい。
【0008】
鉄筋に拡径部を形成する位置は、通常は鉄筋端部であるが、必要に応じ、鉄筋軸線方向の中間位置に設けても良い。また、1本の鉄筋に形成する拡径部の個数は任意であり、1個でも複数個でもよい。更に、本発明における拡径部からなる定着部は、従来の定着部と併用することもでき、例えば、鉄筋の一端に拡径部を形成して定着部とし、他端は従来と同様にU字状或いはL字状に湾曲させて定着部としてもよく、この態様は施工現場での寸法合わせに有用である。
【0009】
鉄筋に熱間据込加工によって形成する拡径部は、他の鉄筋やコンクリート等に対して定着部として作用するものであれば、その形状や寸法は任意であり、使用場所に応じて適宜設定すればよい。拡径部を鉄筋の軸線方向に見た形状としては、製造が容易なことから円状が推奨されるが、必要に応じ、楕円状、長円状、矩形状等としてもよい。拡径部の寸法の目安としては、外形寸法(拡径部が円形の場合は外径、その他の場合は最大寸法)は、鉄筋の通常部分(熱間据込加工を施していない部分)の径(以下鉄筋径という)dに対して2〜5倍程度に設定することが好ましく、厚さは鉄筋径dに対して0.5〜2倍程度に設定することが好ましい。
【0010】
本発明の定着部付鉄筋は更に、拡径部につながる鉄筋の根元部分に、鉄筋の通常部分よりも外径を大きくした補強部を設けることも特徴とする。この補強部を設けることで、拡径部と通常部分との連結部の強度を大きくでき、拡径部に移行する部分での急激な形状変化によってその部分に過大な応力が生じてもそれに耐えることが可能となる。
【0011】
拡径部の鉄筋軸線と交叉している面(鉄筋の通常部分につながる側の面)には、その周縁部に、該拡径部に交叉する他の鉄筋を捕捉するための係止突起を設けることが好ましい。この係止突起を設けると、拡径部に他の鉄筋を定着させた際に、他の鉄筋が拡径部から外れにくくなり、定着強度を大きくできる。また、係止突起を設ける場合には、その係止突起に向き合う補強部の表面を平面状に形成することが好ましい。この構成とすると、拡径部に他の鉄筋を係止させた際に他の鉄筋を補強部の平面状の表面と係止突起との間に安定して保持することができる。
【0012】
拡径部を備えた定着部付鉄筋は、鉄筋の軸線方向の一部領域を塑性変形容易な温度に加熱し、その加熱領域を軸線方向に圧縮して半径方向外方に塑性変形させる熱間据込加工を施して拡径部を形成することで製造できる。ここで、加熱領域を軸線方向に圧縮するには、鉄筋の加熱領域に隣接した部分を加熱領域に向かって押し込めばよい。
【0013】
熱間据込加工を鉄筋の端部に施す場合には、鉄筋の端部を塑性変形容易な温度に加熱し、その加熱領域の鉄筋の端面を、形成すべき拡径部の外側端面を成形するための成形面を備えた型に押し付けると共に加熱領域に鉄筋軸線方向の圧縮力を作用させ、外径が増大するように塑性変形させて拡径部を形成する構成とすればよく、この構成により、鉄筋端部に前記型によって定まる形状の外側端面を持った拡径部を形成できる。
【0014】
前記した熱間据込加工を行うに当たって、鉄筋の加熱温度は、塑性変形抵抗がきわめて小さくなる赤熱状態となる温度以上とすることが好ましいが、物性変化を抑制する上からは低いことが好ましく、これらを勘案して、800〜1000°C程度に設定することが好ましい。鉄筋の加熱領域の温度は全体がほぼ一定となるようにしてもよいし、塑性変形量の大きい部分(例えば、鉄筋端部に熱間据込加工を施す場合には先端部分)が高くなるような、適当な温度分布を設けてもよい。鉄筋の加熱手段としては、特に限定されるものではないが誘導加熱が好ましい。誘導加熱を利用すると、鉄筋を局部的に急速加熱することができ、処理時間を短くできる。
【0015】
熱間据込加工によって拡径部を形成する際、その拡径部の形状を適当な型を使用して規制することが好ましく、例えば、拡径部の外周面を規制する成形面を備えた型を用いることが推奨される。この型を用いると、拡径部の外周面の形状及び寸法を所望のようにすることができるのみならず、鉄筋の据込量を調整することにより拡径部の厚みを調整することもできる。
【0016】
鉄筋に定着部として形成する拡径部は通常、1回の熱間据込加工で形成できるが、特に大きい拡径部を要求される場合などには1回の熱間据込加工では困難な場合がある。そのような場合には、熱間据込加工を複数回繰り返せばよい。
【0017】
周縁部に他の鉄筋を捕捉するための係止突起を備えた拡径部を形成するには、熱間据込加工時に係止突起を形成可能な型を用いることで1度に拡径部と係止突起を形成することも可能であるが、材料の流れが悪い場合などには係止突起の形状が不安定となる恐れがある。そこで、熱間据込加工によって鉄筋に係止突起のない拡径部を形成した後、その拡径部を型押し成形して、拡径部の端面の周縁部に係止突起を形成する方法を採ることが、確実に係止突起を形成できるので推奨される。また、この型押しの際に使用する型の選定によって、係止突起を作るのみならず、拡径部の形状を所望のように整形することもできる。
【0018】
拡径部の根元部分に補強部を備えた鉄筋を製造するには、熱間据込加工時に拡径部と補強部を形成可能な型を用いればよく、これにより一度に拡径部と補強部を形成することができる。また、拡径部と補強部の形成を二度に分けてそれぞれ熱間据込加工で形成することもできる。例えば、鉄筋端部に熱間据込加工を施して一定外径の長い補強部を形成し、次いでその補強部の先端に再度熱間据込加工を施して拡径部を形成することができる。拡径部に形成した係止突起に向き合う補強部の表面を平面状に形成するには、補強部を熱間据込加工で形成する際に補強部の表面を平面状にする型を用いる方法でもよいし、補強部を熱間据込加工で形成した後、その補強部を型押し成形或いはしごき成形を行う方法を採用してもよい。
【0019】
【実施例】
以下、図面を参照して、本発明の理解を容易にするための参考例及び実施例を説明する。図1(a)は参考例である定着部付鉄筋1Aの概略側面図、(b)はその鉄筋1Aの端部の概略断面図、(c)は図1(b)のA−A矢視断面図である。この定着部付鉄筋1Aは、一定径の鉄筋部分即ち通常部分1aの両側の端部にそれぞれ、定着部として、熱間据込加工によって円板状の拡径部1bを形成したものである。この拡径部1bは、鉄筋端部をU字状或いはL字状に曲げた通常の定着部に比べて、外寸を小さくしても大きい作用面積を確保できるので、他の鉄筋やコンクリートに対する定着強度を大きくできる。しかも、拡径部1bは通常部分1aと完全に一体構造として(継ぎ目のない形態で)作られているので、拡径部1bと通常部分1aとの連結強度が大きく且つその強度は安定しており、例えば、拡径部1bに相当する円板を溶接等によって鉄筋に接合する場合に比べて強度が大きく且つ鉄筋間における品質のばらつきがない。このため、この定着部付鉄筋1Aを用いた鉄筋コンクリート構造では、強度の大きい構造体を形成できる。
【0020】
図2は図1に示す定着部付鉄筋1Aの1使用例を示す概略断面図であり、3は鉄筋コンクリートの柱、4はそれに接合された鉄筋コンクリートの梁である。この定着部付鉄筋1Aは柱3と梁4に埋設されており、且つその拡径部1bを柱3に埋設した鉄筋5に係止させている。この構成により梁4と柱3とのきわめて強固な接合構造が得られる。
【0021】
図3は図1に示す定着部付鉄筋1Aを製造するための熱間据込加工を行う状態を示すものである。図3(a)に示すように、まず、一定径に作られている通常の鉄筋1の端部の適当な長さを誘導コイルからなる加熱装置7で塑性変形容易な温度、例えば、赤熱温度以上に加熱する。次に、鉄筋1の加熱領域に隣接した位置をプレスのクランプ(図示せず)によって把持し、その鉄筋1の端面を、型8の成形面8aに押し付け、図3(b)に示すように、プレスによって鉄筋1に軸線方向の圧縮力Pを加えて加熱領域を圧縮する。これにより、鉄筋1の加熱領域が外径が増大するように塑性変形し、円板状の拡径部1bが形成され、通常部分1aの一端に拡径部1bを形成した定着部付鉄筋1Aが形成される。なお、図面に示す実施例では型8の成形面8aの中央には隆起部8aaを設けているが、この隆起部8aaは、鉄筋1の加熱領域を塑性変形させる際に半径方向外方への材料の流れを助成するための設けたものであり、これがなくても支障なく熱間据込加工可能であれば、隆起部8aaは省略してもよい。
【0022】
図3に示すように、鉄筋1を型8の成形面8aに押し付けて外径が増大するように塑性変形させ拡径部1bを形成した場合、その拡径部1bは半径方向外方に行くに従って肉厚が薄くなる傾向がある。このため、成形面8aを平坦面とした場合、形成された拡径部1bの鉄筋軸線と交叉している面のうち、成形面8aとは反対側にある面即ち内側端面1baは鉄筋1Aの軸線に対して傾斜した円錐状となる。もし、内側端面1baを鉄筋軸線に対して直角としたい場合には、図4に示すように、成形面9aが円錐状に凹んだ型9を用いればよい。この型9を用いることにより、内側端面1baが鉄筋軸線に対して直角となった拡径部1bを備えた定着部付鉄筋1Bを製造できる。
【0023】
図3、図4に示す参考例では型8、9が、拡径部1bの外側端面のみを規制する成形面8a、9aを備えている。この構成の型8、9を用いる場合には、鉄筋1の据込量(軸線方向の押し込み量)によって拡径部1bの外径及び肉厚が定まるので、外径及び肉厚を所望のように調整することは困難である。図5は拡径部1bの外径及び肉厚を調整しうる型10を使用した参考例を示すものである。この参考例の型10は、拡径部1bの外側端面を規制する成形面10aと外周面を規制するほぼ円筒状の成形面10bを備えている。この型10を用いて鉄筋の熱間据込加工を行うと、形成される拡径部1bの外径が成形面10bで規制されるため、鉄筋の押し込み量を大きくすることで拡径部1bの肉厚を大きくすることができ、所望肉厚の且つ所望外径の拡径部1bを備えた定着部付鉄筋1Cを製造できる。なお、型10の成形面10bにはゆるい抜きテーパを付けておくことが好ましい。
【0024】
以上の参考例では形成される拡径部1bの内側端面は型規制しない状態で熱間据込加工を行っているが、拡径部1bの内側端面を型規制することも可能である。図6はその場合の実施例を示すもので、図6(a)に示すように、先端に成形面12aを備えたクランプ12で鉄筋1を把持し、そのクランプ12より突出した鉄筋部分を赤熱状態に加熱し、クランプ12をプレス(図示せず)で型10に向かって移動させることで、図6(b)に示すように、鉄筋1の先端の加熱領域を据込加工する。これにより、型10の成形面10a、10b及びクランプ12の成形面12aで形状を規制された拡径部1bが形成され、定着部付鉄筋1Dが製造される。この参考例の定着部付鉄筋1Dは、拡径部1bの内側端面の形状を成形面12aで規制できるので、その成形面12aの形状設定により、例えば鉄筋の通常部分1aから拡径部1bに移行する根元の部分1bbをゆるやかな湾曲面とすることができ、これによりこの部分に応力集中が生じて破損するということを防止できる。
【0025】
なお、このクランプ12を用いる場合において、型10の代わりに図3、図4に示す型8、9等を用いてもよい。また、クランプ12を成形用の型として使用する代わりに、図6(b)に示すクランプ12の位置に、クランプ12と同様に先端に成形面を備え、且つ鉄筋を摺動させうる貫通穴を備えた型(内型という)を位置させ、その内型で規制しながら鉄筋に熱間据込加工を施す構成としてもよい。この場合には、内型で拡径部の内側端面の形状を規制することができる他、据込のために押し込まれる鉄筋1の加熱領域を内側型に形成した貫通穴で案内できるので、この加熱領域が座屈することがなく、安定して据込加工を行うことができる。
【0026】
以上に示した参考例の拡径部1bは鉄筋軸線方向に見た形状が円形のものであるが、この形状は任意に変更可能である。例えば、図7(a)、(b)はそれぞれ、他の参考例による定着部付鉄筋1E、1Fを示す図1(b)と同様な概略断面図であり、定着部付鉄筋1Eの拡径部1bは楕円形、定着部付鉄筋1Fの拡径部1bは長円形である。これらの形状の拡径部1bは熱間据込加工の際に拡径部外周面を型規制することで容易に形成できる。図7(a)、(b)に示すような細長い形状の拡径部1bを採用すると、定着部付鉄筋1E、1F等を鉄筋が密集した部分に配筋する作業を容易とすることができるとか、積み重ねて保管する際の必要なスペースを小さくできる等の利点が得られる。また、細長い拡径部1bを用いる場合において、それらの拡径部は左右対象に設ける場合に限らず、図7(c)、(d)に示す定着部付鉄筋1E′、1F′のように、片側への(図面では右側への)突出量を小さくしてもよい。このように突出量を小さくすると、この突出量の小さい側をコンクリート壁の壁面側とすることで、その壁面との間のコンクリートのかぶり量を大きくすることができ、鉄筋の腐食防止効果を高めることができる。なお、図7(c)、(d)に示す定着部付鉄筋1E′、1F′の拡径部1bは、熱間据込加工のみによって形成してもよいし、熱間据込加工と曲げ加工を併用してもよい。
【0027】
図8は更に他の参考例を示すものであり、(a)は定着部付鉄筋1Gの端部の概略断面図、(b)はそのB−B矢視概略断面図である。この参考例では、鉄筋端部に形成する拡径部1bの鉄筋軸線に交叉している面即ち内側端面の周縁部に、この拡径部にて交叉する他の鉄筋14を捕捉するための係止突起1bcを設けたものである。この係止突起1bcを設けたことにより、施工時において拡径部1bに係止させた他の鉄筋14が外れにくく、このため施工が容易となり、且つコンクリート打設後は拡径部1bに対する鉄筋14の定着強度が大きくなる。なお、図示参考例では、拡径部1bに対して縦横のいずれの方向でも鉄筋14を捕捉できるように、係止突起1bcを4個設けているが、この個数は適宜増減可能である。
【0028】
図9は、図8に示す形状の拡径部1bを形成する方法の1例を示す概略断面図である。この例では、鉄筋先端に予め円板状の拡径部1bを形成しておき、その拡径部1bを受型16で支持させた状態で、拡径部1bの内側端面を押し型17によって型押し成形するものであり、これによって、拡径部1bの内側端面の周縁部に係止突起1bcを形成できる。なお、この型押し成形する場合に、拡径部1b外周面を適当な型で規制しておくことが好ましい。また、押し型17として、拡径部1bの内側端面のほぼ全域を型押し成形しうる成形面を備えたものを用いることで、拡径部1bの内側端面を所望の形状に整形することも可能である。
【0029】
なお、係止突起1bcの形成は、上記したような熱間据込加工で形成した拡径部に型押し加工を施す場合に限らず、拡径部を形成するための熱間据込加工と同時に行うこともできる。例えば、図6に示したように、鉄筋1をクランプ12で把持して熱間据込加工を施す場合において、そのクランプ12の先端の成形面12aを、係止突起を形成しうる形状としておき、このクランプ12の押し込み量を大きくして拡径部の形成と同時に係止突起を形成することもできる。
【0030】
図10は本発明の実施例を示すものであり、(a)は定着部付鉄筋1Hの端部の概略断面図、(b)はそのC−C矢視概略断面図である。定着部付鉄筋1Hは、前記した参考例で説明したような拡径部1bを備えると共にその拡径部1bにつながる鉄筋の根元部分に、鉄筋の通常部分1aよりも外径を大きくした補強部1cを設けたものである。この補強部1cを設けたことにより、拡径部1bと通常部分1aとの連結部の強度を大きくできるという利点が得られる。補強部1cを有する定着部付鉄筋1Hを製造するには、まず一定径の鉄筋の端部に熱間据込加工を施して、補強部1cとほぼ同一径で且つ補強部1cよりも長い円筒部を形成し、次いで、その円筒部の端部に熱間据込加工を施して拡径部1bを形成する方法を採ることができる。なお、円筒部を形成するための熱間据込加工は公知の任意の方法を用いればよい。また、一定径の鉄筋端部にまず、熱間据込加工を施して拡径部1bを形成し、次いで、その拡径部1bの根元の鉄筋部分に熱間据込加工を施して補強部1cを形成する方法を採用することも可能である。
【0031】
更に、鉄筋に対する熱間据込加工によって拡径部1bと補強部1cを同時に形成することも可能である。図11はその場合の熱間据込加工中の状態を示す概略断面図である。この例では、拡径部1bの外側端面及び外周面を規制する成形面20a、20bを備えた外型20と、拡径部1bの内側端面及び補強部1cの外周面を規制する成形面22a、22bを備えた内型22を、図11に示す位置関係にセットしておき、先端を赤熱状態に加熱した鉄筋1を内型22を通して押し込むことで拡径部1bと補強部1cを同時に形成できる。
【0032】
図12は本発明の更に他の実施例を示すものであり、(a)は定着部付鉄筋1Jの端部の概略断面図、(b)はそのD−D矢視概略断面図である。この実施例は拡径部1bの根元に補強部1cを備えたものにおいて、その拡径部1bの内側端面の周縁部に、この拡径部に交叉する他の鉄筋14を捕捉するための係止突起1bcを設けたものであり、補強部1cによる効果と係止突起1bcによる効果を享受することができる。
【0033】
図13は、図12の定着部付鉄筋の一部を変形した定着部付鉄筋1Kを示すものである。この実施例では、図12のものと同様に、拡径部1bの内側端面の周縁部に係止突起1bcを設けると共にその拡径部1bの根元に補強部1cを備えたものであるが、その補強部1cの、係止突起1bcに向き合う表面を平面状に形成して平坦面1caとしている。このような平坦面1caを形成しておくと、拡径部1bに他の鉄筋14を係止した際にその鉄筋14を補強部1bの平坦面1caと係止突起1bcとの間に安定して保持することができる利点が得られる。なお、この平坦面1caは円筒状に形成した補強部1cを型押し成形或いはしごき成形して形成するとか、補強部1cを熱間据込加工で形成する際に平坦面1caを持った形状に成形することによって形成すればよい。
【0034】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の定着部付鉄筋は、鉄筋に、熱間据込加工によって拡径部を形成して定着部としたものであるので、従来用いられていた端部をU字状或いはL字状等に曲げた鉄筋構造よりもコンパクトとしながら、コンクリートや他の鉄筋に対する定着強度を大きくでき、現場での施工や取り扱いを容易とすることができるばかりでなく、強度の大きい鉄筋コンクリート構造を形成でき、更に、前記拡径部につながる鉄筋の根元部分に、鉄筋の通常部分よりも外径を大きくした補強部を設けているので、拡径部と通常部分との連結部の強度が大きく、このため、拡径部に移行する部分での急激な形状変化によってその部分に過大な応力が生じてもそれに耐えることが可能となり、この点からも強度の大きい鉄筋コンクリート構造を形成できるという効果を有している。また、製造が容易で大量生産に適しており、低コストで製造できるという効果も有している。
【0035】
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は参考例の定着部付鉄筋の概略側面図、(b)はその鉄筋の端部の概略断面図、(c)は(b)のA−A矢視断面図
【図2】 図1に示す定着部付鉄筋を用いたコンクリート構造の1例を示す概略断面図
【図3】 (a)、(b)は図1に示す定着部付鉄筋を製造するための熱間据込加工の手順を示す概略断面図
【図4】 図3とは異なる型を用いて熱間据込加工を行う状態を示す概略断面図
【図5】 図3、図4とは更に異なる型を用いて熱間据込加工を行う状態を示す概略断面図
【図6】 (a)、(b)は熱間据込加工の他の例による手順を示す概略断面図
【図7】 (a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、定着部付鉄筋の変形例を示す図1(c)と同一部分の概略断面図
【図8】 (a)は他の参考例の定着部付鉄筋の端部の概略断面図、(b)は(a)のB−B矢視断面図
【図9】 図8に示す定着部付鉄筋の拡径部を型押し成形する状態を示す概略断面図
【図10】 (a)は本発明の実施例による定着部付鉄筋の端部の概略断面図、(b)は(a)のC−C矢視断面図
【図11】 図10に示す定着部付鉄筋を熱間据込加工で形成する状態を示す概略断面図
【図12】 (a)は本発明の他の実施例による定着部付鉄筋の端部の概略断面図、(b)は(a)のD−D矢視断面図
【図13】 (a)は本発明の更に他の実施例による定着部付鉄筋の端部の概略断面図、(b)は(a)のE−E矢視断面図
【符号の説明】
1 鉄筋
1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H、1J、1K 定着部付鉄筋
1a 通常部分
1b 拡径部
1bc 係止突起
1c 補強部
8、9、10 型
8a、9a、10a、10b 成形面
12 クランプ
12a 成形面
14 鉄筋
16 受型
17 押し型
20 外型
22 内型
Claims (3)
- 鉄筋に、定着部として、熱間据込加工によって拡径部を形成し、更に、前記拡径部につながる鉄筋の根元部分に、鉄筋の通常部分よりも外径を大きくした補強部を設けたことを特徴とする定着部付鉄筋。
- 前記拡径部の鉄筋軸線と交叉している面の周縁部に、該拡径部にて交叉する他の鉄筋を捕捉するための係止突起を設けたことを特徴とする請求項1記載の定着部付鉄筋。
- 前記拡径部の鉄筋軸線と交叉している面の周縁部に、該拡径部にて交叉する他の鉄筋を捕捉するための係止突起を設け、更に、その係止突起に向き合う前記補強部の表面を平面状に形成したことを特徴とする請求項1記載の定着部付鉄筋。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP06107799A JP3902709B2 (ja) | 1999-03-09 | 1999-03-09 | 定着部付鉄筋 |
Applications Claiming Priority (1)
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