JP3890806B2 - 建設機械の熱交換装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設機械において、エンジンと作動油とを冷却するための熱交換装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
建設機械の一例としての油圧ショベルは、下部走行体に上部旋回体を旋回可能に設置することにより大略構成されるものであり、下部走行体には左右一対からなる履帯式走行手段が設けられており、また上部旋回体には作業機として土砂の掘削手段を備えている。そして、下部走行体を構成する履帯式走行手段による走行、上部旋回体の旋回は油圧モータにより行われるものであり、また掘削手段の駆動は油圧シリンダで行われる。従って、これら油圧モータ及び油圧シリンダからなる油圧アクチュエータに圧油を供給するために、油圧ショベルには油圧ポンプが搭載されており、この油圧ポンプからの圧油が各油圧アクチュエータに供給される。また、油圧ポンプはエンジンにより駆動される。
【0003】
エンジンにはラジエータが付設され、このラジエータからエンジンに冷却水を循環することによりオーバーヒートしないように冷却する。また、作動油タンクからの作動油を油圧ポンプで吸い込んで、この油圧ポンプにより加圧して各油圧アクチュエータに供給され、また油圧アクチュエータからの戻り油は作動油タンクに還流する。この間には作動油の温度が上昇することになるので、作動油の温度が異常に上昇しないように冷却するために、オイルクーラが設けられる。以上のラジエータ及びオイルクーラは熱交換器であって、これらの2つの熱交換器はユニット化されて、エンジンまたは油圧ポンプにより駆動される冷却ファンから供給される冷却風により各熱交換器を冷却する。そして、ラジエータ内を流れるエンジン冷却水の温度と、オイルクーラ内を流れる作動油の温度とは概略同じ状態にするのが一般的である。
【0004】
さらに、エンジンには過給機を備えたものもあり、この過給機によって燃料に混合される空気を過給状態にされる。このためにコンプレッサが設けられるが、このコンプレッサと吸気マニホールドとの間の配管の途中に、その内部を流れる空気を冷却するためのインタクーラが介装される。そして、このインタクーラも前述した冷却ファンにより冷却されることになる。従って、この場合には、熱交換器ユニットとしては、前述したラジエータ及びオイルクーラに加えて、さらにインタクーラからなる3つの熱交換器をユニット化したもので構成される。ただし、インタクーラにおいては外気をコンプレッサにおける圧縮熱による温度上昇を抑制するためのものであり、エンジン冷却水や作動油程は高温にならないことから、これらラジエータやオイルクーラと比較して放熱面積は小さくて良いが、過給用の空気はエンジン冷却水及び作動油より低い温度を必要とするために、冷却風の流れの最上流側に配置するのが一般的である。
【0005】
以上のことから、ラジエータ,オイルクーラ及びインタクーラからなる熱交換器ユニットとしては、例えば特開平8−303241号公報に示されているように、冷却ファンによる冷却風の流れの上流側から順にインタクーラ,オイルクーラ,ラジエータの順に配列され、かつこれら各熱交換器のうち、オイルクーラとラジエータとはほぼ同じ放熱面積となし、インタクーラはこれらより小さい放熱面積を有するものとするのが一般的である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ラジエータとオイルクーラとの2つの熱交換器をユニット化したものと、それらにインタクーラを加えた3つの熱交換器をユニット化したものと比較すると、ラジエータ及びオイルクーラの放熱面積を変えないとすれば、インタクーラを設置した方が冷却効率が低くなる。つまり、インタクーラが冷却風の上流側に配置されている分だけ、オイルクーラ及びラジエータにおけるインタクーラと対面する位置での冷却風の流通量が減少して冷却効率が低下する。従って、これらオイルクーラ及びラジエータの冷却効率を所定のレベルとなるように維持するには、それらの放熱面積をより大きくする必要がある。放熱面積を大きくするには、放熱フィンの面積を大きくすることが考えられるが、そうすると、各熱交換器における通風量を十分得ることができなくなる。従って、オイルクーラ及びラジエータの通風部の面積を広くし、かつ冷却ファンによる送風量も大きくしなければならず、従って熱交換装置の全体構成が大型化することになる。
【0007】
ところで、ラジエータはエンジン冷却水を冷却してエンジンに供給するものであり、またインタクーラにより冷却した空気もエンジンに供給される。従って、インタクーラから供給される過給用の空気によってもエンジンは冷却される。つまり、インタクーラを設けることによって、エンジン冷却水による水冷だけでなく、インタクーラから供給される低温の過給空気がエンジンを冷却する空冷機能を発揮するから、全体としてエンジンの冷却効率は向上することになる。この点を考慮すれば、ラジエータの放熱面積は必ずしも大きくする必要はなく、むしろ放熱面積を少なくしても良いということになる。本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、オイルクーラを格別大型化することなく、また冷却ファンによる冷却風量を格別増大させることなく、エンジン及び作動油を必要な程度で有効に冷却できるようにすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、本発明は、冷却ファンによる冷却風の流路に、上流側から順にインタクーラ,オイルクーラ及びラジエータを配列した熱交換器ユニットを備えた建設機械の熱交換装置であって、前記熱交換器ユニットを構成する3個の熱交換器のうち、前記インタクーラの通風部の面積を最小となし、前記冷却風の流路に直列に配列した前記オイルクーラと前記ラジエータとでは、冷却風の流路に前記ラジエータの通風部の欠落箇所を設け、前記ラジエータを前記オイルクーラより通風部の面積が小さくなる構成としたことをその特徴とするものである。
【0009】
ここで、インタクーラは冷却ファンによる冷却風の流れにおいて、オイルクーラの前面部に配置されておれば、どの位置であっても良く、このインタークーラからの配管を引き回す上等で便利な位置に設ければ良いが、ラジエータがオイルクーラと重なり合わない位置に配置すると、オイルクーラにおける通風部の全体にほぼ均一な風量が得られる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。まず、図1に本発明の第1の実施の形態を示すものであって、同図において、1はエンジンルームであって、このエンジンルーム1は周囲をカバー部材1aにより覆われた空間となっており、内部にはエンジン2が設けられており、このエンジン2には冷却ファン3が取り付けられており、この冷却ファン3の周囲にはラジエータシュラウド4が設けられている。また、エンジンルーム1を構成するカバー部材1aのうち、上面部において、冷却ファン3の前方位置には外気の取り入れ口5が開口している。冷却ファン3はエンジン2により回転駆動されて、同図に矢印で示した方向に冷却風を流通させるようにしている。
【0011】
以上の冷却風の流通路には、3つの熱交換器が相互に所定の間隔を置いた状態で連結することにより熱交換器ユニット10を構成している。ここで、熱交換器ユニット10は、冷却風の上流側から順に、インタクーラ11,オイルクーラ12及びラジエータ13が配列されている。エンジン2が起動すると、これと同時に冷却ファン3が回転して、図1に矢印で示したように、外気取り入れ口5から外気がエンジンルーム1内に取り込まれ、インタクーラ11,オイルクーラ12及びラジエータ13を順次通過する間に、過給用の空気,作動油及びエンジン冷却水からなる被冷却用流体が冷却される。そして、これら被冷却用流体と熱交換して加熱状態になった空気がエンジンルーム1内で熱交換器ユニット10の前部側に循環するのを防止するために、サーキュレーション防止壁6がエンジンルーム1のカバー部材1aの上部壁の内面とラジエータシュラウド4の上部との間に設けられている。
【0012】
ここで、これらインタクーラ11,オイルクーラ12及びラジエータ13からなる熱交換器は、いずれも流入及び流出用の配管やタンク等からなる機構部と、それぞれの被冷却流体を流通させる間に冷却風と熱交換させる放熱部とから構成される。機構部はそれぞれの熱交換器に応じて異なる構成となるが、放熱部は被冷却流体の種類等により実質的に差異はない。
【0013】
従って、熱交換器における放熱部としては、通常、図2に示したように構成される。即ち、所定の幅を有する方形の支持枠体20内に、被冷却流体を流通させる細管21が上下方向に多数設けられており、これらの細管21には放熱フィン22が細管21と直交する方向に多数設けられている。放熱フィン22は熱伝達率の高い銅やアルミニウム等からなる金属薄板で構成されるのが一般的である。従って、この支持枠体20の内部が通風部であり、この通風部に冷却風を流通させることによって、細管21内を流れる被冷却流体を冷却する。
【0014】
熱交換器を構成する放熱部による熱交換効率は、放熱フィン22の材質が同じであれば、この放熱フィン22の全表面積、即ち放熱面積と、この放熱フィン22を通過する冷却風の風量とによって実質的に定まるものである。しかも、放熱フィン22による放熱面積と冷却風量とは相互依存性がある。つまり、通風部の面積を同じであって、放熱フィン22の放熱面積のみを大きくした場合には、この通風部における冷却風の流通が阻害されることになるから、必ずしも被冷却流体に対する熱交換効率が向上する訳ではない。以上のことから、インタクーラ11,オイルクーラ12及びラジエータ13という3つの熱交換器が冷却風の流れに対して直列に配列する構成とした場合には、インタクーラ11を設けないものと比較して、当然、これら各熱交換器における通風部に流通する冷却風量が減少して、それらの被冷却流体の冷却効率が低下する。とりわけ、オイルクーラ12及びラジエータ13の通風部におけるインタクーラ11が設置されている部分の後方位置での流通風量が低下する。
【0015】
ところで、インタクーラ11は、エンジン2に供給される過給用の空気を冷却するものであり、この過給用の空気によりエンジン2は空冷されることになる。従って、ラジエータ13から供給されるエンジン冷却水のみならず、インタクーラ11からの空気もエンジン2を冷却する際における冷媒として作用する。この結果、インタクーラ11を設けることによって、エンジン冷却水の温度上昇が抑制されることになって、このようにインタクーラ11によりエンジン2の冷却効率が向上する分だけラジエータ13による冷却効率の負担を軽減させることができる。
【0016】
以上のことから、まずインタクーラ11には、過給用の空気を所定の温度にまで冷却するという機能を発揮させるために必要な通風部の面積と放熱フィンによる放熱面積を持たせる。また、オイルクーラ12において、油圧アクチュエータから還流する作動油の温度を設定温度にまで低下させる冷却能力を持つように、その通風部の面積と放熱面積とを持たせる。一方、ラジエータ13においては、インタクーラ11によるエンジン2の冷却効率の向上が図られる分だけ通風部の面積を縮小して小型化を図るようにする。従って、ラジエータ13を小型化した分だけオイルクーラ12の通風部を通過する冷却風の風量が増大する。
【0017】
要するに、冷却風の通路に直列に配置される3個の熱交換器のうち、最上流側に位置するインタクーラ11の通風部の面積が最も小さくし、オイルクーラ12における通風部の面積を最も大きくし、ラジエータ13の通風部の面積はオイルクーラ12より小さくする。このように、ラジエータ13の通風部の面積を小さくしたことによって、オイルクーラ12の通風部の面積を大きくしたり、冷却ファン3による冷却風量を増量させたりしなくても、エンジン2及び作動油を有効に冷却できるようになり、全体としての熱交換装置の構成を小型化、コンパクト化することができる。
【0018】
而して、図1に示した実施の形態においては、インタクーラ11を配置した後方の位置にはラジエータ13が位置していない。つまり、同図にAで示した部分がオイルクーラ12の投影部におけるラジエータ13の欠落箇所となっている。このように構成すれば、通風部の点からは、冷却ファン3による冷却風の通路には、2個の熱交換器を配置したとほぼ同様の構成となる。これによって、3個の熱交換器を設けているにも拘らず、各熱交換器の通風部の面積及び冷却ファン3による冷却風の風量は、オイルクーラとラジエータとの2個の熱交換器を設けたものとほぼ同じ程度とすることができる。ただし、必ずしもラジエータの欠落箇所と対応する位置にインタクーラを配置する必要はなく、例えば図3に示したような構成や、また図4乃至図6に示した構成を採用することもできる。
【0019】
図3に示した熱交換器ユニット110の構成では、ラジエータ113の欠落箇所がBとなっており、上部側から、インタクーラ111,オイルクーラ112及びラジエータ113の3個の熱交換器が重なり合う領域と、オイルクーラ112とラジエータ113が重なり合う領域と、オイルクーラ112が単独で位置する領域とが形成されている。このように構成すると、オイルクーラ112が単独で位置する領域の通風量が最も大きくなるので、オイルクーラ112における熱交換効率が向上する。ここで、いずれの熱交換器においても、被冷却用流体の流入用配管と流出用配管(共に図示せず)とを接続するが、これらの配管接続部は上部側で行うのが一般的である。従って、インタクーラ111,オイルクーラ112及びラジエータ113の3個の熱交換器の上端部がほぼ同じ位置となっていると、配管の接続及び引き回しが容易になる。
【0020】
さらに、図4乃至図6に示した熱交換ユニット210では、配管の接続及び引き回しに便宜となるように、インタクーラ211,オイルクーラ212及びラジエータ213の3個の熱交換器の上端部がほぼ同じ位置とした上で、ラジエータ213のみの幅寸法を短くしている。従って、オイルクーラ212の投影部におけるラジエータ213の欠落箇所は、図5にCで示した部分となる。このように構成することによっても、オイルクーラ212における通風部を通過する冷却風量を最も多くすることができるようになる。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、熱交換器ユニットを構成する3個の熱交換器における通風部の面積は、オイルクーラが最も広く、次いでラジエータ、さらにインタクーラの順に小さくなるように設定したので、オイルクーラを格別大型化することなく、また冷却ファンによる冷却風量を格別増大させることなく、エンジン及び作動油を必要な程度で有効に冷却できる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す熱交換器ユニットの構成説明図である。
【図2】熱交換器における通風部の構成説明図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態を示す熱交換器ユニットの構成説明図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態を示す熱交換器ユニットの構成説明図である。
【図5】図4の熱交換ユニットの平面図である。
【図6】図5の正面図である。
【符号の説明】
1 エンジンルーム
2 エンジン
3 冷却ファン
10,110,210 熱交換器ユニット
11,111,211 インタクーラ
12,112,212 オイルクーラ
13,113,213 ラジエータ
20 支持枠体
21 細管
22 放熱フィン
Claims (3)
- 冷却ファンによる冷却風の流路に、上流側から順にインタクーラ,オイルクーラ及びラジエータを配列した熱交換器ユニットを備えた建設機械の熱交換装置において、前記熱交換器ユニットを構成する3個の熱交換器のうち、前記インタクーラの通風部の面積を最小となし、前記冷却風の流路に直列に配列した前記オイルクーラと前記ラジエータとでは、冷却風の流路に前記ラジエータの通風部の欠落箇所を設け、前記ラジエータを前記オイルクーラより通風部の面積が小さくなる構成としたことを特徴とする建設機械の熱交換装置。
- 前記インタクーラは前記ラジエータが前記オイルクーラと重なり合わない位置に配置する構成としたことを特徴とする請求項1記載の建設機械の熱交換装置。
- 前記インタクーラと前記ラジエータとによるエンジンの合計放熱量は前記オイルクーラによる放熱量とほぼ一致させるようにしたことを特徴とする請求項1記載の建設機械の熱交換装置。
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