JP3880305B2 - トナー - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真、静電記録などの画像形成方法における静電荷潜像を顕像化するためのトナーまたはトナージェット方式の画像形成方法に使用されるトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法としては米国特許第2,297,691号明細書、特公昭42−23910号公報および特公昭43−24748号公報等に記載されているような多数の方法が知られている。電子写真法は一般には光導電性物質を利用した種々の手段により感光体に静電荷像を形成し、次いで該静電荷像をトナーを用いて現像し、必要に応じて中間転写体を介して、または介さずに紙の如き転写材にトナー像を転写した後、加熱、圧力、加熱加圧あるいは溶剤蒸気等によりトナー像を転写材に定着して複写物またはプリントを得るものである。また、転写されずに感光体上に残ったトナーは種々の方法でクリーニングされ、上述の各工程が繰り返される。
【0003】
トナーは、現像されるべき静電潜像の極性に応じて、正または負の電荷を有する必要がある。トナーに電荷を保有させるためにはトナーの成分である樹脂の摩擦帯電性を利用することもできるが、この方法ではトナーの帯電が安定しないので、濃度の立ち上がりが遅く、カブリが生じ易い。そこで、所望の摩擦帯電性をトナーに付与するために、荷電制御剤がトナーに添加される。
【0004】
今日、当該技術分野で知られている荷電制御剤は、負摩擦帯電性荷電制御剤として、モノアゾ染料の金属錯塩、ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、芳香族ジオール等の金属錯塩、酸成分を含む樹脂等が知られている。正摩擦帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、アジン染料、トリフェニルメタン系染顔料、4級アンモニウム塩、4級アンモニウム塩を側鎖に有するポリマー等が知られている。
【0005】
しかしながら、荷電制御剤として用いられるアゾ染料構造の金属錯体の多くは、一般に安定性に乏しく、例えば、機械的な摩擦や衝撃、温度や湿度条件の変化、電気的衝撃、光照射等により分解または変化して初期の荷電制御性が失われ易い。また、実用レベルの帯電付与性を有するものであっても電荷の安定性に問題があったり、製造方法等の違いにより荷電制御効果を持たない不純化学物質を含むことが多く、品質の安定性及び信頼性等の点で諸問題を残していた。
【0006】
特開平9−169919号公報に開示されているモノアゾ染料の金属錯塩化合物は摩擦帯電付与という観点からは優れたものであるが、環境変動、経時、使用状況に関わらず安定した現像が得られるまでには至っていない。
【0007】
また、特開平11−7164号公報には、モノアゾ化合物を配位子とするアモルファス状の金属錯塩からなる荷電制御剤が記載されており、アルキル基を有するモノアゾ化合物の例示もなされている。しかしながら、本公報には、アルキル基を有するモノアゾ化合物を配位子とする金属錯塩からなる荷電制御剤を含有させて、トナーを製造した例は記載されておらず、また荷電制御剤とトナーの樹脂成分との関係についても考慮されていない。また、アモルファス状の金属錯塩は、トナー中での分散性及び帯電性には優れたものであるが、比較的軟らかいために、トナーの長期の使用によって、感光体にトナーが付着したり、トナーの劣化が進んで現像性が徐々に低下したりする場合があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の問題点を解消したトナーを提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、高速なプロセススピードにおいても、低温定着性と耐オフセット性に優れたトナーを提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、高解像、高精細画像の形成が可能なトナーを提供することを目的とする。
【0011】
本発明はトナー粒子中で各成分が均一に分散しており、長期間の使用においても、初期と同様な優れた画像を得ることができるトナーを提供することを課題とする。
【0012】
本発明は、長期の保存性にも優れ、環境に対する安定性にも優れたトナーを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、結着樹脂、着色剤および有機金属化合物を少なくとも含有するトナー粒子を有するトナーであって、
前記有機金属化合物は、1以上のアルキル基と、鉄原子と結合可能な2個の水酸基とを有するモノアゾ化合物より生成され得るアゾ鉄化合物であり、
前記トナーのテトラハイドロフラン可溶成分のゲル透過クロマトグラフィにより測定される分子量分布において、分子量3,000〜50,000の領域に少なくとも1つピークを有し、分子量50,000より大きく10,000,000以下の領域に少なくとも1つピークまたはショルダーを有することを特徴とするトナーに関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、鋭意検討の結果、1以上のアルキル基と鉄と結合可能な2個の水酸基とを有するモノアゾ化合物より生成され得るアゾ鉄化合物を荷電制御剤としてトナーに含有させ、且つトナーのテトラハイドロフラン(THF)可溶成分が、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)により測定される分子量分布において、特定の領域にピーク及び/又はショルダーを持つようにすることにより、長期に亘るトナーの帯電安定性やトナー混合時の帯電均一性が維持されつつ、高温高湿、低温低湿環境下においても良好な帯電性を示すトナーが得られることを見いだした。
【0015】
本発明に係るアゾ系鉄化合物としては、例えば下記式(d)、(e)、(f)で表されるアゾ鉄化合物が挙げられる。
【0016】
【外7】
Figure 0003880305
【0017】
【外8】
Figure 0003880305
【0018】
【外9】
Figure 0003880305
【0019】
(式(d)、(e)、(f)中、A及びBは、それぞれ独立してo−フェニレン又は1,2−ナフチレンを表し、少なくともA又はBのいずれかに1以上のアルキル基を有し、また、A、Bはそれぞれハロゲン原子を置換基としてさらに有していても良く、Mは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン及び有機アンモニウムイオンからなるグループより選ばれるカチオンを表す。)
【0020】
本発明で用いられるアゾ鉄化合物はトナー中での分散性が良好であり、トナーの帯電量分布を均一とすることができ、安定した帯電の立ち上がりや、良好な現像性をトナーに付与することができる。また、本発明のトナーはGPCにより測定される分子量が比較的低分子量の成分と比較的高分子量の成分とを併せ持つことにより、幅広い温度領域において被定着材へのトナーの良好な定着性能が得られる。また、上記モノアゾ化合物より生成され得るアゾ鉄化合物はアルキル基を有しているため、トナーの結着樹脂と馴染みやすく、溶融粘度の異なる低分子量成分、高分子量成分のいずれにも十分に分散することができる。このため、従来用いられてきたモノアゾ化合物を用いた場合に生じる、該モノアゾ化合物のトナー中での分散不良に起因する耐久後半での現像性の低下を引き起こすことがなく、長期にわたって良好な現像性をトナーにもたらすことができる。
【0021】
また、本発明のアゾ鉄化合物は、結晶性であることが、トナーの長期の耐久使用時の現像性の低下を抑えられるという点において好ましい。結晶性のアゾ鉄化合物は比較的硬いため、長期の使用による劣化を抑制することができる。また、硬いことによってトナー表面の摩擦帯電性も向上し、より高い現像性をトナーにもたらすことができる。従来、結晶性のアゾ鉄化合物をトナーに用いると、硬いために感光体を傷つけたり、トナー粒子から脱落しやすい等の問題点があったが、本発明のアゾ鉄化合物はアルキル基を有しているのでトナーへの分散性が高く、アゾ鉄化合物のトナーからの脱落が抑制され、且つ、耐久時にトナー表面でのアゾ鉄化合物の露出度が増加することを抑えられるので、感光体への傷の発生が抑制される。更に本発明のトナーはGPCにより測定される分子量が比較的低分子量の成分と高分子量の成分を合わせ持つことで適度な粘度を有するので、結晶性のアゾ鉄化合物とトナー中の他の成分との付着性が高まり、トナー中での結晶性のアゾ鉄化合物の分散性を長期に渡って維持することができる。
【0022】
アゾ系鉄化合物が結晶性であることは、アゾ鉄化合物のX線回折スペクトルを分析することによって確認できる。X線回折スペクトルが結晶性であることを示すというのは、X線回折パターンが図1のように顕著な回折ピークを示すことと定義する。これは、2θ=5°乃至30°(θはブラッグ角)の範囲におけるアゾ鉄化合物のX線回折スペクトルについて複数のピークを有するものである。好ましくは、2θ=10°乃至25°(θはブラッグ角)の範囲におけるアゾ鉄化合物のX線回折スペクトルについて5°毎の範囲で1つ以上のピークを有するものである。複数の回折ピークが得られる場合、結晶化度が計算でき、多重ピーク分離法により算出した全体の強度の総計に対する結晶部分の強度の総計の比率(結晶化度)が50%を超えるものが好ましい。結晶性であることの効果は、結晶化度が大きいほど高く、より良い耐久性を得るためには、結晶化度が55%以上であることがより好ましく、更に60%以上が好ましい。
【0023】
アゾ鉄化合物が結晶性のものであるかどうかの確認は、例えば次の条件で測定することができる。
【0024】
例えば株式会社マックサイエンス社製のX線回折装置 MXP3システムにより、CuKα線によるX線回折スペクトルを測定する。そのX線回折スペクトルを2θ=5°乃至30°の範囲(θはブラッグ角)でスムージング処理したスペクトルを更に全体のスペクトルと結晶部分のスペクトルに分離する。その分離したチャートの各スペクトルについて2θ=5°乃至30°の範囲(θはブラッグ角)で結晶化度測定法により全体の強度の総計、及び結晶部分の強度の総計を求め、以下の式により結晶化度を算出する。
結晶化度(%)=(結晶部分の強度の総計/全体の強度の総計)×100
【0025】
本発明におけるアゾ鉄化合物を生成し得る上記モノアゾ化合物は、下記式(a)、(b)、(c)で示される化合物であることが、帯電の立ち上がりや、画像濃度、カブリ、画質など現像性の安定を図るために好ましい。
【0026】
【外10】
Figure 0003880305
【0027】
(式中、R1〜R8はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基を表し、R1〜R8のうち少なくとも一つはアルキル基である。)
【0028】
【外11】
Figure 0003880305
【0029】
(式中、R9〜R18はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基を表し、R9〜R18のうち少なくとも一つはアルキル基である。)
【0030】
【外12】
Figure 0003880305
【0031】
(式中、R19〜R30はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基を表し、R19〜R30のうち少なくとも一つはアルキル基である。)
【0032】
上記のモノアゾ化合物の如くアルキル基を置換基として有するモノアゾ化合物を用いると、高い帯電量が得られ、高画像濃度で、忠実に潜像を再現した画像が得られるために好ましい。
【0033】
また、上記モノアゾ化合物としては、その分子中に少なくとも1つのアルキル基を置換基として有するものであれば、そのアルキル基の位置は特に限定されないが、上記式(b)においては、R13〜R18の位置、更にはR15の位置にアルキル基を有することが、安定した帯電性をトナーに付与するという点から特に好ましい。
【0034】
上記モノアゾ化合物としては、炭素数4〜12(より好ましくは炭素数6〜10)のアルキル基を置換基として有するモノアゾ化合物が好ましい。炭素数4〜12のアルキル基を置換基として有するモノアゾ化合物は、アルキル基の存在により、トナー中の結着樹脂との相溶性が良好となるため、高く、且つ安定した帯電量が得られるようになり、高画像濃度を有し、潜像が忠実に再現された高精細の画像が得られるようになる。より好ましくは、炭素数が4〜12であり、3級炭素を有するアルキル基を置換基として有するモノアゾ化合物であり、更に好ましくは、炭素数が6〜10であり、3級炭素を有するアルキル基を置換基として有するモノアゾ化合物であり、最も好ましくは、
【0035】
【外13】
Figure 0003880305
【0036】
を置換基として有するモノアゾ化合物である。3級炭素を有するアルキル基を置換基として有するモノアゾ化合物は、帯電保持能力が高いため、経時による帯電量の変化が小さくなり、また、トナー中でのより均一な分散が可能となり、トナーの帯電性がより均一なものとなる。
【0037】
また、モノアゾ化合物は、アゾ結合を挟む両側の構造において、一方がアルキル基を有し、他方がハロゲン原子を有する構造が好ましく、ハロゲン原子としては、塩素原子が特に好ましい。
【0038】
さらに、上記式(a)〜(c)のモノアゾ化合物の中では、特に(b)の構造を有するモノアゾ化合物が好ましい。
【0039】
以下に、本発明で好ましく用いられるモノアゾ化合物の具体例を挙げる。
【0040】
【外14】
Figure 0003880305
【0041】
【外15】
Figure 0003880305
【0042】
【外16】
Figure 0003880305
【0043】
【外17】
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【0044】
【外18】
Figure 0003880305
【0045】
【外19】
Figure 0003880305
【0046】
【外20】
Figure 0003880305
【0047】
【外21】
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【0048】
【外22】
Figure 0003880305
【0049】
【外23】
Figure 0003880305
【0050】
【外24】
Figure 0003880305
【0051】
【外25】
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【0052】
【外26】
Figure 0003880305
【0053】
【外27】
Figure 0003880305
【0054】
【外28】
Figure 0003880305
【0055】
【外29】
Figure 0003880305
【0056】
【外30】
Figure 0003880305
【0057】
【外31】
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【0058】
【外32】
Figure 0003880305
【0059】
【外33】
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【0060】
【外34】
Figure 0003880305
【0061】
【外35】
Figure 0003880305
【0062】
【外36】
Figure 0003880305
【0063】
【外37】
Figure 0003880305
【0064】
【外38】
Figure 0003880305
【0065】
【外39】
Figure 0003880305
【0066】
【外40】
Figure 0003880305
【0067】
【外41】
Figure 0003880305
【0068】
【外42】
Figure 0003880305
【0069】
【外43】
Figure 0003880305
【0070】
【外44】
Figure 0003880305
【0071】
【外45】
Figure 0003880305
【0072】
【外46】
Figure 0003880305
【0073】
【外47】
Figure 0003880305
【0074】
【外48】
Figure 0003880305
【0075】
【外49】
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【0076】
【外50】
Figure 0003880305
【0077】
本発明におけるアゾ鉄化合物のトナーへの好ましい添加量としては、結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部の範囲で用いられる。
【0078】
また、本発明のアゾ鉄化合物は、トナーに一般に用いられる公知の荷電制御剤と組み合わせて使用してもよい。例えば、他の有機金属錯体、金属塩、キレート化合物などがあり、具体的にはアセチルアセトン金属錯体、ヒドロキシカルボン酸金属錯体、ポリカルボン酸金属錯体、ポリオール金属錯体が挙げられる。その他、カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、エステル類の如きカルボン酸誘導体や芳香族系化合物の縮合体もあげられる。またビスフェノール類、カリックスアレーンの如きフェノール誘導体も用いられる。
【0079】
本発明で用いられるアゾ鉄化合物は、鉄とモノアゾ化合物の反応生成物であって、上記モノアゾ化合物が鉄原子に配位したアゾ鉄化合物である。このアゾ鉄化合物は鉄錯体、鉄錯塩、あるいはこれらの混合物であり、例えば、上記一般式(d)、(e)、(f)で表せるアゾ鉄化合物あるいはこれらの混合物である。本発明においては、アルキル基を有するモノアゾ化合物と鉄が反応していることによって、他の金属を用いた場合と比べて熱的、経時的により安定した化合物となり、トナーに良好な帯電性能を付与することができる。
【0080】
本発明で用いられるアゾ鉄化合物は、鉄原子と結合可能なモノアゾ化合物を、水及び/又は有機溶媒中(好ましくは有機溶媒中)で鉄化剤と反応させることにより得ることができる。
【0081】
一般に、有機溶媒中で得られた反応生成物は、適当量の水に分散させ、析出物を濾取して水洗し、乾燥させることにより取り出すことができる。このような鉄化反応に用いる有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、エチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、エチレングリコール、プロピレングリコールの如きアルコール系、エーテル系、又はグリコール系有機溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドの如き非プロトン性極性溶媒;の如き水に可溶な有機溶媒を挙げることができる。上記有機溶媒として好ましいものは、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールであり、結晶性のアゾ鉄化合物を合成するという点において好ましい。また、他の溶媒中で得られたアゾ鉄化合物を、上記有機溶媒中で再結晶させることも好ましい。
【0082】
この有機溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、配位子として用いられる上記モノアゾ化合物に対して質量比で2〜5倍量である。
【0083】
また、上記鉄化剤として好適なものの例としては、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄が挙げられる。鉄化剤は、一般に、配位子となるモノアゾ化合物1モルに対して、鉄原子当量で1/3〜2当量、好ましくは1/2〜2/3当量が用いられる。
【0084】
本発明のトナーは、THF可溶成分のGPCにより測定される分子量分布において分子量3,000〜50,000の領域に少なくとも1つのピークを有し、好ましくは分子量3,000〜30,000、特に好ましくは3,000〜25,000の領域にピークを有する。更に、分子量50,000より大きく10,000,000以下の領域にも、少なくとも1つのピークまたはショルダーを有しており、好ましくは分子量100,000〜10,000,000、より好ましくは分子量100,000〜5,000,000、特に好ましくは100,000〜1,500,000の領域にピークまたはショルダーを有する。
【0085】
本発明において、例えば「分子量3,000〜50,000の領域にピークを有する」とは、GPC測定によって得られた分子量分布を示すチャートにおいて上記領域中にピークの頂点が存在することを意味する。また、例えば「分子量50,000より大きく10,000,000以下の領域にショルダーを有する」とは、GPC測定によって得られた分子量分布を示すチャートにおいて、上記領域中に曲線の微分値が極値となる点、即ち変曲点が存在することを意味する。
【0086】
分子量分布において、トナーがこの様なピークを有することによって、定着性、耐オフセット性及び保存性がバランスよく保たれると共に、耐久性、均一帯電性をトナーに付与することができる。
【0087】
また、本発明のような分子量分布を有するトナーと上記アゾ鉄化合物とを組み合わせて用いることにより、更に以下のような優れた効果が得られる。すなわち、本発明におけるアゾ鉄化合物は、アルキル基を有しているためトナー中で均一に分散し、且つトナー中の結着樹脂成分、特に定着性に寄与する低分子量成分を可塑化する作用をもたらすので定着性が向上する。また、同時に結着樹脂の高分子量成分も適度に可塑化されるため、低分子量成分と高分子量成分との相溶性が向上し、高分子量成分がトナー中に均一に分散されるようになり、定着時における定着部材に対するトナーの離型効果が高まる。
【0088】
また、本発明のトナーは、低分子量成分と高分子量成分とをバランスよく有しているために適度な硬さを有しており、滑り性に富んだものである。本発明のアゾ鉄化合物は高い帯電性能を有するために、付着力が高く、周辺部材、特に感光体へのトナー融着を起こしやすいものであるが、本発明のトナーは滑り性に富んでいるので、高温高湿環境下のようなトナー付着が生じやすい場合においても、長期にわたって感光体へのトナー付着が抑制される。分子量3,000〜50,000の領域にピークを有さないと、トナーの定着性が不十分になると共に、アゾ鉄化合物の分散性が不十分となり、現像性、耐トナー融着性が低下してしまう。また、分子量50,000より大きく10,000,000以下の領域にピークを有さないと、トナーの耐高温オフセット性が低下し、また、アゾ鉄化合物の分散性、トナーの滑り性が不十分となり、現像性の低下や感光体へのトナー融着を引き起こす。
【0089】
トナー或いは結着樹脂のTHF(テトラハイドロフラン)を溶媒としたGPCによる分子量分布は、例えば次の条件で測定することができる。
【0090】
まず、40℃のヒートチャンバ中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラハイドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、試料のTHF溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。
【0091】
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば東ソー社製または昭和電工社製の分子量が102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良い。例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807,800Pの組み合わせや、東ソー社製のTSKgelG1000H(HXL),G2000H(HXL),G3000H(HXL),G4000H(HXL),G5000H(HXL),G6000H(HXL),G7000H(HXL),TSKguardcolumnの組み合わせを挙げることができる。
【0092】
分子量分布測定のための試料は次のようにして作製する。トナーまたは結着樹脂の試料をTHFに入れ、数時間放置した後、十分振とうしてTHFと良く混ぜ(試料の合一体がなくなるまで)、更に12時間以上静置する。このときTHF中への試料の放置時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.45〜0.5μm、例えば、マイショリディスクH−25−5東ソー社製、エキクロディスク25CR ゲルマン サイエンス ジャパン社製などが利用できる)を通過させたものを、GPCの測定試料とする。試料濃度は、樹脂成分が0.5〜5mg/mlとなるように調整する。
【0093】
本発明のトナーに使用される結着樹脂の種類としては、スチレン系樹脂、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂が挙げられる。
【0094】
スチレン系共重合体のスチレンモノマーに対するコモノマーとしては、ビニルトルエンの如きスチレン誘導体;アクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル;メタクリル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチルの如きメタクリル酸エステル;マレイン酸;マレイン酸ブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチルの如き二重結合を有するジカルボン酸エステル;アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン;塩化ビニル;酢酸ビニル、安息香酸ビニルの如きビニルエステル;エチレン、プロピレン、ブチレンの如きエチレン系オレフィン;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトンの如きビニルケトン;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテルが挙げられる。これらのビニル系単量体が単独もしくは併用して用いられる。
【0095】
本発明で用いられる結着樹脂は、酸価が1〜100mgKOH/gであることが好ましく、1〜70mgKOH/gであることがより好ましく、更には1〜50mgKOH/gであることが好ましく、特には2〜40mgKOH/gであることが好ましい。結着樹脂の酸価が上記範囲より小さい場合は、結着樹脂と上記モノアゾ化合物との相互作用による良好な現像性や長期の現像安定性が十分に発揮されない場合がある。一方、結着樹脂の酸価が上記範囲よりも大きい場合は、結着樹脂の吸湿性が強くなり、画像濃度が低下し、カブリが増加する傾向がある。
【0096】
本発明では、酸価を有する結着樹脂を用いることにより、アゾ鉄化合物の帯電付与能力がより強調され、トナーの早い帯電立ち上がりを実現し、高い帯電量を付与することができる。
【0097】
また、トナーから測定される酸価が0.5〜100mgKOH/gであるときに上記効果が十分に発揮される。さらには0.5〜50mgKOH/gであるとき、特には1.0〜40mgKOH/gであることが好ましい。
【0098】
本発明において、トナー及び結着樹脂成分の酸価は、以下の方法により求める。
【0099】
〈酸価の測定〉
基本操作はJIS K−0070に準ずる。
1)試料は、予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂以外の成分の酸価および含有量を予め求めておく。トナーまたは結着樹脂の粉砕品0.5〜2.0gを精秤する。このときの重合体成分の重さをW(g)とする。
2)300mlのビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(4/1)の混合液150mlを加え溶解する。
3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する(例えば、京都電子株式会社製の電位差滴定装置AT−400(win workstation)とABP−410電動ビュレットを用いての自動滴定が利用できる)。
4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とする。同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB(ml)とする。
5)次式により酸価を計算する。fはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)={(S−B)×f×5.61}/W
【0100】
結着樹脂の酸価を調整するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸、ビニル酢酸、イソクロトン酸、アンゲリカ酸の如きアクリル酸及びそのα−或いはβ−アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、アルケニルコハク酸、イタコン酸、メサコン酸、ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和ジカルボン酸及びそのモノエステル誘導体又は無水物が挙げられる。これらのモノマーを、単独、或いは混合して他のモノマーと共重合させることにより所望の結着樹脂を得ることができる。この中でも、特に不飽和ジカルボン酸のモノエステル誘導体を用いることが酸価をコントロールする上で好ましい。
【0101】
不飽和カルボン酸のモノエステル誘導体としては、具体的には、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノアリル、マレイン酸モノフェニル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノフェニルの如きα,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステル類;n−ブテニルコハク酸モノブチル、n−オクテニルコハク酸モノメチル、n−ブテニルマロン酸モノエチル、n−ドデセニルグルタル酸モノメチル、n−ブテニルアジピン酸モノブチルの如きアルケニルジカルボン酸のモノエステル類が挙げられる。
【0102】
以上のようなカルボキシル基含有モノマーは、結着樹脂を構成する全モノマー100質量部に対し0.1〜50質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜30質量部、更には0.2〜15質量部添加すればよい。
【0103】
上記のようなジカルボン酸のモノエステルモノマーが選択される理由としては、水系の懸濁液に対して溶解度が低く、一方、有機溶媒や他のモノマーへの溶解度の高いエステルの形で用いることができるためである。
【0104】
トナーの結着樹脂は、トナーの保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が45〜80℃、好ましくは50〜70℃である。Tgが上記範囲よりも低いと、高温環境下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなる。また、Tgが上記範囲よりも高いと、定着性が低下する傾向にある。
【0105】
本発明に係る結着樹脂の合成方法として、用いることの出来る重合法としては、溶液重合法、乳化重合法や懸濁重合法が挙げられる。
【0106】
このうち、乳化重合法は、水にほとんど不溶の単量体(モノマー)を乳化剤で小さい粒子として水相中に分散させ、水溶性の重合開始剤を用いて重合を行う方法である。この方法では反応熱の調節が容易であり、重合の行われる相(重合体と単量体からなる油相)と重合開始剤を含む相とが、別の相であるため停止反応速度が小さい。その結果、重合速度を大きくすることができ、高重合度の重合体粒子を得ることができる。更に、重合プロセスが比較的簡単であること、及び重合生成物が微細粒子であるために、トナーの製造において、着色剤、アゾ鉄化合物及び荷電制御剤その他の添加物との混合が容易であること等の理由から、トナー用の結着樹脂の製造方法として有利な点がある。
【0107】
しかし、乳化重合法では、添加される乳化剤のため生成重合体が不純になり易く、重合体を取り出すには塩析などの操作が必要で、この不便を避けるためには懸濁重合が好都合である。
【0108】
懸濁重合においては、水系溶媒100質量部に対して、モノマー100質量部以下(好ましくは10〜90質量部)で行うのが良い。使用可能な分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分ケン化物、リン酸カルシウムが用いられ、一般に水系溶媒100質量部に対して0.05〜1質量部使用される。重合温度は50〜95℃が適当であるが、使用する重合開始剤、生成するポリマーによって適宜選択される。
【0109】
本発明に用いられる結着樹脂は、以下に例示する様な多官能性重合開始剤を単独あるいは単官能性重合開始剤を用いて生成することが好ましい。
【0110】
多官能構造を有する多官能性重合開始剤の具体例としては、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、α,α’−ビス−(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−t−ブチルパーオキシオクタンおよび各種ポリマーオキサイドの如き1分子内に2つ以上のパーオキサイド基の如き重合開始機能を有する官能基を有する多官能性重合開始剤;及びジアリルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート及びt−ブチルパーオキシイソプロピルフマレートの如き1分子内にパーオキサイド基の如き重合開始機能を有する官能基と重合性不飽和基との両方を有する多官能性重合開始剤が挙げられる。
【0111】
これらの内、より好ましいものは、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート及び2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、及びt−ブチルパーオキシアリルカーボネートである。
【0112】
これらの多官能性重合開始剤は、トナーの結着樹脂として要求される種々の性能を満足する為には、単官能性重合開始剤と併用されることが好ましく、特に、半減期10時間を得る為の分解温度が、多官能性重合開始剤よりも低い単官能重合開始剤と併用することが好ましい。
【0113】
このような単官能性重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、t−ブチルパーオキシクメン、ジ−t−ブチルパーオキシドの如き有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノアゾベンゼンの如きアゾおよびジアゾ化合物が挙げられる。
【0114】
これらの単官能性重合開始剤は、前記多官能性重合開始剤と同時にモノマー中に添加しても良いが、多官能重合開始剤を添加した後に、単官能重合開始剤を添加することが好ましく、更には、該多官能性重合開始剤の効率を適正に保つ為には、重合工程において該多官能性重合開始剤の示す半減期を経過した後に添加するのが好ましい。
【0115】
これらの開始剤は、効率の点から、モノマー100質量部に対し0.01〜10質量部で用いるのが好ましく、0.05〜2質量部で用いるのがより好ましい。
【0116】
また、結着樹脂は架橋性モノマーで架橋されていることも好ましい。
【0117】
架橋性モノマーとしては主として2個以上の重合可能な二重結合を有するモノマーが用いられる。具体例としては、芳香族ジビニル化合物(例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン);アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び、以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);さらにはポリエステル型ジアクリレート化合物類(例えば、商品名MANDA(日本化薬))が挙げられる。多官能の架橋性モノマーとしては、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0118】
これらの架橋性モノマーは、他のモノマー成分100質量部に対して、0.00001〜1質量部、好ましくは0.001〜0.05質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0119】
これらの架橋性モノマーのうち、トナーの定着性,耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
【0120】
その他の合成方法としては、塊状重合方法、溶液重合方法を用いることが出来る。塊状重合法は高温で重合させて停止反応速度を速めることで、任意の重合体を得ることができるが、反応をコントロールしにくい問題点がある。その点、溶液重合法では、溶媒によるラジカルの連鎖移動の差を利用して、また、開始剤量や反応温度を調整することで低分子量重合体を温和な条件で容易に得ることができ、本発明で用いる結着樹脂を含む組成物中の低分子量体を得るには好ましい。特に、開始剤使用量を最小限に抑え、開始剤が残留することによる影響を極力抑えるという点で、加圧条件下での溶液重合法も好ましい。
【0121】
本発明の結着樹脂を得る為のモノマーとしては、次のようなものが挙げられる。スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、ビニルトルエンの如きスチレンおよびその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きエチレン不飽和モノオレフィン;ブタジエンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、弗化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル;メタクリル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きメタクリル酸エステル類;アクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;マレイン酸、マレイン酸ブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチルの如き二重結合を有するジカルボン酸及びジカルボン酸エステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸誘導体もしくはメタクリル酸誘導体が挙げられる。これらのビニル系モノマーは単独もしくは2つ以上のモノマーを混合して用いられる。
【0122】
これらの中でもスチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
【0123】
結着樹脂を製造する方法として、溶液重合法により高分子量重合体と低分子量重合体を別々に合成した後にこれらを溶液状態で混合し、次いで脱溶剤する溶液ブレンド法、また、押出機等により溶融混練するドライブレンド法、溶液重合法等により得られた低分子量重合体を溶解した高分子量重合体を構成するモノマーに溶解し、懸濁重合を行い、洗浄・乾燥し、樹脂組成物を得る二段階重合法も挙げられる。しかしながら、ドライブレンド法では、均一な分散、相溶の点で問題がある。また、二段階重合法は均一な分散性等に利点が多いが、溶液ブレンド法は低分子量分を高分子量分以上に増量することができ、低分子量重合体成分の存在下で分子量の大きい高分子量重合体の合成ができ、不必要な低分子量重合体が副生成するといった問題が少ないことから、溶液ブレンド法が最も好適である。また、低分子量重合体成分に所定の酸価を導入する方法としては、水系の重合法に比べて酸価の設定が容易である溶液重合が好ましい。
【0124】
また、本発明において結着樹脂として用いられるポリエステル樹脂を用いる場合には、組成は以下の通りである。
【0125】
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また式(A)で表されるビスフェノール及びその誘導体が挙げられる。
【0126】
【外51】
Figure 0003880305
【0127】
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0〜10である)
さらに、2価のアルコール成分として式(B)で示されるジオールが挙げられる。
【0128】
【外52】
Figure 0003880305
【0129】
2価の酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如き芳香族ジカルボン酸又はその無水物、低級アルキルエステル;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸又はその無水物又はその低級アルキルエステル;n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸の如きアルケニルコハク酸もしくはアルキルコハク酸、又はその無水物又はその低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸又はその無水物又はその低級アルキルエステルの如きジカルボン酸及びその誘導体が挙げられる。
【0130】
また、架橋成分としても働く3価以上のアルコール成分と3価以上の酸成分を併用することが好ましい。
【0131】
3価以上の多価アルコール成分としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンが挙げられる。
【0132】
また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル;次式
【0133】
【外53】
Figure 0003880305
【0134】
(式中、Xは炭素数1以上の側鎖を1個以上有する炭素数1〜30のアルキレン基又はアルケニレン基を表す。)
で表わされるテトラカルボン酸及びこれらの無水物及びそれらの低級アルキルエステル等の多価カルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
【0135】
アルコール成分としては40〜60mol%、好ましくは45〜55mol%、酸成分としては60〜40mol%、好ましくは55〜45mol%であることが好ましい。また3価以上の多価アルコールの成分は、全成分中の1〜60mol%であることが好ましい。
【0136】
上記ポリエステル樹脂も通常一般に知られている縮重合によって得られる。
【0137】
本発明のトナーを磁性1成分トナーに適用する場合には、該トナーに磁性体が含有される。本発明において用いられる磁性体としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルの如き金属、或いはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムの如き金属との合金及びその混合物が用いられ、その磁性体表面或いは内部に非鉄元素を含有するものが好ましい。
【0138】
本発明に用いられる磁性体は、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライトの磁性酸化鉄及びその混合物が好ましく用いられる。本発明においては、これらの磁性体は、トナーに良好な帯電性および磁気特性を付与すると同時に、着色剤としての役割も果たす。
【0139】
上記磁性酸化鉄の中でも特に、リチウム、ベリリウム、ボロン、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、イオウ、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、錫、鉛、亜鉛、カルシウム、バリウム、スカンジウム、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、銅、ニッケル、ガリウム、インジウム、銀、パラジウム、金、白金、タングステン、モリブデン、ニオブ、オスミウム、ストロンチウム、イットリウム、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、ビスマスから選ばれる少なくとも一つ以上の元素を含有する磁性酸化鉄であることが好ましい。特にリチウム、ベリリウム、ボロン、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛及びガリウムが好ましい。最も好ましくは、異種元素としてマグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン及びイオウからなるグループから選択される元素を含む磁性酸化鉄である。これらの元素は酸化鉄結晶格子の中に取り込まれても良いし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていても良いし、表面に酸化物あるいは水酸化物として存在しても良い。また、酸化物として含有されているのが好ましい形態である。
【0140】
これらの元素は、磁性体生成時の鉄塩水溶液中に各々の元素の塩を混在させ、pH調整することにより粒子中に取り込むことが出来る。また、磁性体粒子生成後に、磁性体粒子を含むスラリー状の液のpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより粒子表面に析出させることが出来る。
【0141】
これらの元素を有する磁性酸化鉄は、結着樹脂に対し馴染みが良く、非常に分散性が良い。更に、この分散性のよさが、本発明で用いられるアゾ鉄化合物の分散性を更に高めるように作用し、本発明のアゾ鉄化合物の効果を十分に発揮することが出来る。磁性体が分散メディアとして働き、アゾ鉄化合物の分散を磁性体の分散性の良さが援助し、アゾ鉄化合物の分散性を向上させる。また、これらの磁性体は水分子を吸着し、アゾ鉄化合物が、水分子による帯電に強調を発揮しやすくする効果を持っている。
【0142】
また、これらの磁性体の粒度分布を揃えることにより、結着樹脂中への分散性の向上とあいまって、トナーの帯電性を安定化することが出来る。
【0143】
本発明における磁性酸化鉄に含有される異種元素の含有率は、磁性酸化鉄を基準として0.05〜10質量%であることが好ましい。更に好ましくは0.1〜7質量%であり、特に好ましくは0.2〜5質量%、最も好ましくは0.3〜4質量%である。異種元素の含有率が上記範囲よりも少なすぎる場合には、これら元素の含有効果が得られなく、良好な分散性、帯電均一性が得られにくくなる。また、異種元素の含有量が上記範囲よりも多すぎる場合には、電荷の放出が多くなり帯電不足を生じ、画像濃度が低くなったり、カブリが増加したりすることがある。
【0144】
また、これら異種元素の含有分布において、磁性体の表面に近い方に多く存在しているものが好ましい。たとえば、酸化鉄の鉄元素の溶解率が20%のとき(即ち、磁性体質量を基準として、20質量%が溶解されたとき)の異種元素の溶解率が、全異種元素の存在量の20〜100%であることが好ましい。さらには25〜100%がよく、30〜100%が特に好ましい。異種元素の表面存在量を多くすることにより、分散効果や電気的拡散効果を、より向上させることができる。
【0145】
これらの磁性体は個数平均粒径が、0.05〜1.0μmであることが好ましく、さらには0.1〜0.5μmのものが好ましい。磁性体はBET比表面積が2〜40m2/g(より好ましくは、4〜20m2/g)のものが好ましく用いられる。形状には特に制限はなく、任意の形状のものが用いられる。磁気特性としては、磁場795.8kA/m下で飽和磁化が10〜200Am2/kg(より好ましくは、70〜100Am2/kg)、残留磁化が1〜100Am2/kg(より好ましくは、2〜20Am2/kg)、抗磁力が1〜30kA/m(より好ましくは、2〜15kA/m)であるものが好ましく用いられる。これらの磁性体は結着樹脂100質量部に対し、20〜200質量部で好ましく用いられる。より好ましくは40〜150質量部で用いられる。
【0146】
磁性酸化鉄中の元素量は、蛍光X線分析装置SYSTEM3080(理学電機工業(株)社製)を使用し、JIS K0119蛍光X線分析通則に従って、蛍光X線分析を行うことにより測定することができる。元素分布については、塩酸又はフッ酸溶解しながらの元素量をプラズマ発光分光(ICP)により測定定量し、各元素の全溶時の濃度に対する各溶解時の各元素濃度からその溶解率を求めることにより得られる。
【0147】
また、磁性酸化鉄の個数平均粒径は透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることが出来る。磁性体の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業社製)を用いて外部磁場795.8kA/mの下で測定した値である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置オートソープ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試科表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出する。
【0148】
また近年は、トナー粒径の小径化が進んできており、重量平均粒径が2.5〜10μmのような場合でも、帯電均一性が促進され、トナーの凝集性も軽減され、画像濃度の向上、カブリの改善等現像性が向上する。特に、重量平均粒径が2.5〜6.0μmのトナーにおいてはその効果は顕著であり、極めて高精細な画像が得られる。重量平均粒径は2.5μm以上である方が十分な画像濃度が得られて好ましい。一方で、トナーの小粒径化が進むとアゾ鉄化合物の遊離も生じやすくなるが、本発明のトナーは帯電均一性に優れているので多少のアゾ鉄化合物が存在してもスリーブ汚染の影響を受けにくくなる。磁性トナーは、重量平均粒径が好ましくは2.5〜10μm(より好ましくは、2.5〜6.0μm)が良い。非磁性トナーの場合でも、重量平均粒径は2.5〜10μm(より好ましくは2.5〜6.0μm)が良い。
【0149】
トナーの重量平均粒径及び粒度分布の測定はコールターカウンター法を用いて行うことができるが、コールターマルチサイザー(コールター社製)を用いることが可能である。電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えばISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2.00μm以上のトナー粒子の体積,個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。それから本発明に係る体積分布から求めた重量平均粒径(D4)を算出する。
【0150】
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを用いる。
【0151】
本発明のトナーはワックスを含有してもよい。本発明に用いられるワックスには次のようなものがある。例えばパラフィンワックスおよびその誘導体、モンタンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、カルナバワックスおよびその誘導体などである。誘導体には酸化物やビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。
【0152】
本発明のトナーにおいては、これらのワックス総含有量は、結着樹脂100質量部に対し、0.1〜15質量部で用いられ、好ましくは0.5〜12質量部で用いるのが効果的である。また、複数のワックスを併用してもよい。
【0153】
本発明のトナーは、着色剤を含有する。本発明のトナーに使用できる着色剤としては、上記磁性酸化鉄の他、任意の適当な顔料又は染料が挙げられる。例えば顔料として、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキベンガラ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルーが挙げられる。これらは定着画像の光学濃度を維持するために必要充分な量が用いられ、結着樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部の添加量が良い。また、同様の目的で、更に染料が用いられる。例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、メチン系染料があり、結着樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜10質量部の添加量が良い。
【0154】
本発明においては、さらに、シリカ、アルミナ、酸化チタンの如き無機酸化物や、カーボンブラック、フッ化カーボンの如き粒径の細かい粒子の無機微粉体をトナー粒子に外添することが好ましい。
【0155】
シリカ、アルミナまたは酸化チタン微粉体は、トナー粒子表面に分散させた時に細かい粒子となる方が、流動性付与性が高くなるので好ましい。個数平均粒径としては5〜200nmになるものが良く、さらに好ましくは10〜100nmが良い。BET法で測定した窒素吸着による比表面積では30m2/g以上(特に60〜400m2/g)の範囲のものが母体微粉体として好ましく、表面処理された微粉体としては、20m2/g以上(特に40〜300m2g)の範囲のものが好ましい。
【0156】
これらの微粉体の適用量は、トナー粒子100質量部に対して、0.03〜5質量部添加した時に適切な表面被覆率になる。
【0157】
本発明に用いる無機微粉体の疎水化度としては、メタノールウェッタビリティーで30%以上の値を示すのが好ましく、更に好ましくは50%以上である。疎水化処理剤としては、含ケイ素表面処理剤であるシラン化合物とシリコーンオイルが好ましい。
【0158】
例えば、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ブチルトリメトキシシランの如きアルキルアルコキシシランや、ジメチルジクロルシラン、トリメチルクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、ヘキサメチルジシラザン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジビニルクロルシラン、ジメチルビニルクロルシランの如きシラン化合物を用いることができる。
【0159】
本発明のトナーは、キャリアと混合して二成分現像剤として使用しても良い。キャリアの抵抗値は、キャリア表面の凹凸度合い、被覆する樹脂の量を調整して106〜1010cmにするのが良い。
【0160】
キャリア表面を被覆する樹脂としては、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、シリコーン樹脂、フッ素含有樹脂、ポリアミド樹脂、アイオノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂或いは、これらの混合物を用いることができる。
【0161】
キャリアコアの磁性材料としては、フェライト、鉄過剰型フェライト、マグネタイト、γ−酸化鉄の如き酸化物や、鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらの合金を用いることができる。また、これらの磁性材料に含まれる元素としては、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムが挙げられる。
【0162】
また、トナーの現像性、耐久性を向上させるために次の無機粉体を添加することも好ましい。マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、鉄、ジルコニウム、クロム、マンガン、ストロンチウム、錫、アンチモンの如き金属の酸化物;チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウムの如き複合金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウムの如き金属塩;カオリンなどの粘土鉱物;アパタイトなどリン酸化合物;炭化ケイ素、窒化ケイ素の如きケイ素化合物;カーボンブラックやグラファイトの如き炭素粉末が挙げられる。中でも、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化コバルト、二酸化マンガン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウムが好ましい。
【0163】
さらに、次のような滑剤粉末をトナーに添加することもできる。テフロン、ポリフッ化ビニリデンの如きフッ素樹脂;フッ化カーボンの如きフッ素化合物が挙げられる。
【0164】
本発明のトナーを製造する方法としては、上述したようなトナー構成材料をボールミルその他の混合機により十分混合した後、熱ロールニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて良く混練し、冷却固化後、粉砕機を用いて機械的に粉砕し、分級機により粉砕粉を分級することによってトナーを得る方法が好ましい。他には、結着樹脂を構成すべき単量体に所定の材料を混合して乳化懸濁液とした後に、重合させてトナーを得る重合法トナー製造法;コア材及びシェル材から成るいわゆるマイクロカプセルトナーにおいて、コア材あるいはシェル材、あるいはこれらの両方に所定の材料を含有させる方法;結着樹脂溶液中に構成材料を分散した後、噴霧乾燥することによりトナーを得る方法が挙げられる。さらに必要に応じ所望の添加剤とトナー粒子とをヘンシェルミキサーの如き混合機により十分に混合し、本発明のトナーを製造することができる。
【0165】
例えば混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられ、混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押出機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられ、粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェッ、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製)が挙げられ、分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクッシファイアー(日新エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられ、粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩いが挙げられる。
【0166】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。また、実施例中「部」は「質量部」を意味する。
【0167】
[アゾ鉄化合物製造例1]
4−クロロ−2−アミノフェノールと6−t−オクチル−2−ナフトールの一般的なジアゾ化カップリング反応により合成したモノアゾ化合物を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に加えて攪拌した。この溶液に炭酸ナトリウムを加えて70℃に昇温させ、硫酸鉄(II)・7水和物を加えて5時間反応させた。その後、室温まで放冷し、析出した生成物を濾取してイソプロパノール中に加え、再度70℃で加熱溶解し、室温まで放冷してアゾ鉄化合物を結晶化した。そして濾過、水洗し、乾燥させて、下記式で表されるアゾ鉄化合物(1)を得た。アゾ鉄化合物(1)の結晶化度は、68.0%であった。アゾ鉄化合物(1)のX線回折スペクトルを図1に示す。
【0168】
【外54】
Figure 0003880305
【0169】
[アゾ鉄化合物製造例2]
アゾ鉄化合物製造例1において、4−クロロ−2−アミノフェノールを4−t−ペンチル−2−アミノフェノールに替えて、モノアゾ化合物を合成した以外は、アゾ鉄化合物製造例1と同様の方法を用いて、下記式で表されるアゾ鉄化合物(2)を得た。アゾ鉄化合物(2)の結晶化度は、67.2%であった。
【0170】
【外55】
Figure 0003880305
【0171】
[アゾ鉄化合物製造例3]
アゾ鉄化合物製造例1において、4−クロロ−2−アミノフェノールを2−アミノフェノールに替えて、モノアゾ化合物を合成した以外は、アゾ鉄化合物製造例1と同様の方法を用いて、下記式で表されるアゾ鉄化合物(3)を得た。アゾ鉄化合物(3)の結晶化度は、66.8%であった。
【0172】
【外56】
Figure 0003880305
【0173】
[アゾ鉄化合物製造例4]
アゾ鉄化合物製造例1において、6−t−オクチル−2−ナフトールを6−t−ブチル−2−ナフトールに替えて、モノアゾ化合物を合成した以外は、アゾ鉄化合物製造例1と同様の方法を用いて、下記式で表されるアゾ鉄化合物(4)を得た。アゾ鉄化合物(4)の結晶化度は、65.8%であった。
【0174】
【外57】
Figure 0003880305
【0175】
[アゾ鉄化合物製造例5]
アゾ鉄化合物製造例1において、6−t−オクチル−2−ナフトールを6−メチル−2−ナフトールに替えて、モノアゾ化合物を合成した以外は、アゾ鉄化合物製造例1と同様の方法を用いて、下記式で表されるアゾ鉄化合物(5)を得た。アゾ鉄化合物(5)の結晶化度は、63.0%であった。
【0176】
【外58】
Figure 0003880305
【0177】
[アゾ鉄化合物製造例6]
アゾ鉄化合物製造例1において、6−t−オクチル−2−ナフトールを3−n−ブチル−2−ナフトールに替えて、モノアゾ化合物を合成した以外は、アゾ鉄化合物製造例1と同様の方法を用いて、下記式で表されるアゾ鉄化合物(6)を得た。アゾ鉄化合物(6)の結晶化度は、64.8%であった。
【0178】
【外59】
Figure 0003880305
【0179】
[アゾ鉄化合物製造例7]
アゾ鉄化合物製造例1において、2−ナフトールと4−メチル−2−アミノフェノールと用いて合成したモノアゾ化合物を使用する以外は、アゾ鉄化合物製造例1と同様の方法を用いて、下記式で表されるアゾ鉄化合物(7)を得た。アゾ鉄化合物(7)の結晶化度は、62.2%であった。
【0180】
【外60】
Figure 0003880305
【0181】
[アゾクロム化合物製造例]
アゾ鉄化合物製造例1において、2−ナフトールと4−t−ペンチル−2−アミノフェノールとを用いて合成したモノアゾ化合物を使用し、硫酸鉄・7水和物を蟻酸クロム(III)に替えて、中心金属をCrとする以外は、アゾ鉄化合物製造例1と同様の方法を用いて、下記式で表されるアゾクロム化合物(8)を得た。アゾクロム化合物(8)の結晶化度は、60.7%であった。
【0182】
【外61】
Figure 0003880305
【0183】
[アゾ鉄化合物製造例9]
アゾ鉄化合物製造例1において、6−t−オクチル−2−ナフトールを2−ナフトールに替えて、モノアゾ化合物を合成した以外は、アゾ鉄化合物製造例1と同様の方法を用いて、下記式で表されるアゾ鉄化合物(9)を得た。アゾ鉄化合物(9)の結晶化度は、59.6%であった。
【0184】
【外62】
Figure 0003880305
【0185】
[アゾ鉄化合物製造例10]
アゾ鉄化合物製造例7において、イソプロパノール中での結晶化工程を行わずに、N,N−ジメチルホルムアルデヒド(DMF)中に反応液を分散させ、濾過・水洗し、乾燥させてアモルファス状のアゾ鉄化合物(10)を得た。アゾ鉄化合物(10)の結晶化度は、13.8%であった。
【0186】
結着樹脂の製造例を以下に示す。
【0187】
[重合体製造例1]
四つ口フラスコ内にキシレン300部を投入し、攪拌しながらフラスコ内を十分に窒素で置換した後、昇温して還流させ、この還流下でスチレン68.8部、アクリル酸n−ブチル22部、マレイン酸モノブチル9.2部及びジ−tert−ブチルパーオキサイド1.8部の混合液を4時間かけて滴下した後、2時間保持して重合を完了した後、脱溶剤し低分子量重合体(L1)を得た。この重合体(L1)のGPC及び酸価測定を行ったところ、ピーク分子量15000、酸価30.0mgKOH/gであった。
【0188】
[重合体製造例2〜6]
重合体製造例1においてマレイン酸モノブチル、スチレン、アクリル酸n−ブチルの量および重合開始剤量を表1に示すように変え、更に適宜ジビニルベンゼンを添加した以外は重合体製造例1と同様の方法により、低分子量重合体(L2)〜(L6)を得た。重合体(L2)〜(L6)のピーク分子量及び酸価の値を表1に示す。
【0189】
[重合体製造例7]
四つ口フラスコ内に脱気水180部とポリビニルアルコールの2質量%水溶液20部を投入した後、スチレン78.4部、アクリル酸n−ブチル20部、マレイン酸モノブチル1.6部、及び2.2−ビス(4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン0.18部の混合液を加え、攪拌して懸濁液とした。フラスコ内を十分に窒素で置換した後、90℃まで昇温して重合を開始した。同温度で24時間保持して重合を完了し、高分子量重合体(H1)を得た。その後重合体(H1)を瀘別し、水洗、乾燥した後、GPC及び酸価測定を行ったところ、ピーク分子量800000、酸価5.1mgKOH/gであった。そのピーク分子量及び酸価の値を表1に示す。
【0190】
[重合体製造例8〜10]
重合体製造例7においてマレイン酸モノブチル、スチレンおよびアクリル酸n−ブチルの量ならびに重合開始剤量を表1に示すように変え、更に適宜ジビニルベンゼンを添加した以外は、重合体製造例7と同様の方法により、高分子量重合体(H2)〜(H4)を得た。重合体(H2)〜(H4)のピーク分子量及び酸価の値を表1に示す。
【0191】
[重合体製造例11]
重合体製造例1においてマレイン酸モノブチル、スチレン、アクリル酸n−ブチルの量及び重合開始剤量を表1に示すように変え、更に適宜ジビニルベンゼンを添加した以外は、重合体製造例1と同様の方法により、高分子量重合体(H5)を得た。重合体(H5)のピーク分子量及び酸価の値を表1に示す。
【0192】
【表1】
Figure 0003880305
【0193】
[結着樹脂製造例1]
重合体(L1)と重合体(H1)とを70:30の質量比でキシレン溶液中で混合して、結着樹脂1を得た。
【0194】
[結着樹脂製造例2〜7]
結着樹脂製造例1において、混合する重合体の種類を表2に示すように変えた以外は結着樹脂製造例1と同様にして、結着樹脂2〜7を得た。
【0195】
【表2】
Figure 0003880305
【0196】
[磁性体製造例]
磁性酸化鉄の生成において、添加する元素の塩の種類および添加量を変化させ、さらにpHを調整することにより、表3に示す磁性体a〜cを得た。なお、表3中の含有元素の量は、磁性酸化鉄を基準とした質量%である。
【0197】
【表3】
Figure 0003880305

【0198】
実施例1
結着樹脂1 100質量部
磁性体a 95質量部
ポリプロピレンワックス 4質量部
アゾ鉄化合物(1) 2質量部
上記混合物を、130℃に加熱された二軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕し、粗粉砕物をジェットミルで微粉砕し、得られた微粉砕粉を固定壁型風力分級機で分級して分級粉を生成した。さらに、得られた分級粉をコアンダ効果を利用した多分割分級装置(日鉄鉱業社製エルボジェット分級機)で超微粉及び粗粉を同時に厳密に分級除去して、重量平均粒径(D4)6.8μmの負帯電性のトナー1を得た。
【0199】
得られたトナー1のGPCにおける分子量分布、重量平均粒径および酸価の測定は、前述の如くして行った。
【0200】
GPCにおける分子量分布の測定には、数種の単分散ポリスチレン標準試料(東ソー社製のF−850、F−80、F−4、A−2500、F−450、F−40、F−2、A−1000、F−288、F−20、F−1、A−500、F−128、F−10、A−5000)用い、カラムとしては、昭和電工社製のshodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807,800Pを組み合わせたものを用いた。
【0201】
GPC測定用の試料の作製において、サンプル処理フィルターとしては、東ソー社製のマイショリディスクH−25−5を用いた。試料濃度は、樹脂成分が0.1mg/mlとなるように調整した。
【0202】
酸価およびトナーの重量平均粒径は、発明の実施の形態において述べた方法により測定した。
【0203】
トナー物性を表4に示す。このトナー1を100質量部と疎水性シリカ微粉体1.2質量部とをヘンシェルミキサーで混合して現像剤を調製した。
【0204】
次に、この調製された現像剤を以下に示すような方法によって評価した。評価結果を表5に示す。
【0205】
(画出し試験)
上記トナーをプロセスカートリッジに入れ、キヤノン製レーザービームプリンターLBP−930を、A4横送りで40枚/分となるように改造し、更に定着器の加熱ローラと加圧ローラ間の総圧を30kg、ニップを8mmに設定した。この時のプロセススピードは200mm/secであった。
【0206】
図2に、本実施例において用いたプロセスカートリッジの概略説明図を示す。現像装置1は、現像剤(トナー)13を収容するための現像剤容器2と、現像剤容器2内の現像剤13を現像剤容器2から静電潜像保持体(感光体ドラム)3に対面した現像域へと担持し搬送する現像スリーブ6と、現像スリーブ6にて担持され、現像域へと搬送される現像剤を所定厚さに規制し現像スリーブ上に現像剤薄層を形成するための弾性ブレード8とを有しており、現像スリーブ6は磁石15を内蔵している。その他、7はクリーニングブレード、9はブレード支持部材、14はクリーナーを表す。
【0207】
上記設定条件で常温常湿環境下(25℃、相対湿度60%)、高温高湿環境下(32.5℃、相対湿度80%)及び低温低湿環境下(15℃、相対湿度10%)において画出し試験(画像形成試験)を行い、得られた画像を下記の項目について評価した。プリント速度は6枚/20minとした。
【0208】
(1)画像濃度
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に15000枚プリントアウトし、プリント開始時及び終了時の画像濃度の評価を行った。なお、画像濃度は「マクベス反射濃度計」(マクベス社製)を用い、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。
【0209】
(2)カブリ
低温低湿環境下、通常の複写機用普通紙(75g/m2)に15000枚画出しし、プリント開始時及び終了時のカブリの評価を行った。リフレクトメーター(東京電色(株)製)により測定した転写紙の白色度と、ベタ白をプリント後の転写紙の白色度との比較からカブリを算出した。数値が低いほどカブリが少ないことを意味する。
【0210】
(3)静電潜像保持体へのトナー融着
高温高湿環境下での15000枚の画出し後の静電潜像保持体表面、及びベタ黒画像を観察することにより、トナーの評価を行った。
A:静電潜像保持体上にトナー融着が見られない。
B:静電潜像保持体上にはかすかなトナー融着が見られるが、画像上には影響が現れていない。
C:ベタ黒画像上に白い点の画像抜けが見られる。
D:ベタ黒画像上に白い点及び流れ星状の画像抜けが見られる。
【0211】
(4)低温定着性、耐高温オフセット性の評価
上記画像形成装置の加熱加圧ローラ定着器を、加熱ローラの表面温度が120〜250℃まで外部から変更できるように改造した。常温常湿環境下、この加熱ローラ表面の温度を5℃刻みで変更させながら画出しを行った。
【0212】
(低温定着性)
得られたプリントアウト画像を50g/cm2の加重をかけながら柔和な薄紙により摺擦し、摺擦前後での画像濃度の低下率(%)が10%以下となる最低の温度を定着開始温度として測定した。尚、試験紙には定着性に関して厳しい90g/m2のものを用いた。
【0213】
(耐高温オフセット性)
画像面積率約5%のサンプル画像をプリントアウトし、画像上の汚れを観察した。表5には、画像上に汚れが発生しない最高温度を高温オフセットフリー始点として示した。尚、試験紙にはオフセットが発生しやすい60g/m2のものを用いた。
【0214】
実施例2〜16
表4に記載されているようにトナーの処方を変えた以外は、実施例1と同様の方法を用いてトナー2〜16を製造し、トナー1と同様の方法により物性の測定を行った。トナー物性を表4に示す。更にこれらトナー2〜16について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表5に示す。尚、実施例16は参考例として示すものである。
【0215】
比較例1〜4
表4に記載されているようにトナーの処方を変えた以外は、実施例1と同様の方法を用いて比較用トナー1〜4を製造し、トナー1と同様の方法により物性の測定を行った。トナー物性を表4に示す。更にこれら比較用トナー1〜4について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0216】
比較例5
実施例1において、アゾ鉄化合物(1)の代わりに、下記式で表される荷電制御剤(11)を用い、更に表4に記載されているようにトナーの処方を変えた以外は、実施例1と同様の方法を用いて比較用トナー5を製造し、トナー1と同様の方法により物性の測定を行った。トナー物性を表4に示す。更に比較用トナー5について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0217】
【外63】
Figure 0003880305
【0218】
【表4】
Figure 0003880305
【0219】
【表5】
Figure 0003880305
【0220】
【発明の効果】
本発明によれば、低温定着性、耐高温オフセット性に優れ、且つ高温高湿及び低温低湿環境下においても高い現像性を維持することができ、画像の汚れが抑制されたトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アゾ鉄化合物(1)のX線回折スペクトルである。
【図2】本発明の実施例で用いたプロセスカートリッジの概略説明図である。

Claims (19)

  1. 結着樹脂、着色剤および有機金属化合物を少なくとも含有するトナー粒子を有するトナーであって、
    前記有機金属化合物は、1以上のアルキル基と、鉄原子と結合可能な2個の水酸基とを有するモノアゾ化合物より生成され得るアゾ鉄化合物であり、該アゾ鉄化合物は結晶化度が50%を超えるものであり、
    前記トナーのテトラハイドロフラン可溶成分のゲル透過クロマトグラフィにより測定される分子量分布において、分子量3,000〜50,000の領域に少なくとも1つピークを有し、分子量50,000より大きく10,000,000以下の領域に少なくとも1つピークまたはショルダーを有することを特徴とするトナー。
  2. 該モノアゾ化合物が、下記一般式()で表されることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
    【外1】
    Figure 0003880305
    (式中、R〜R18はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基を表し、R〜R18のうち少なくとも一つがアルキル基である。)
  3. モノアゾ化合物の有するアルキル基が、炭素数4〜12のアルキル基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
  4. モノアゾ化合物の有するアルキル基が、炭素数4〜12であり、3級炭素を有するアルキル基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
  5. モノアゾ化合物の有するアルキル基が、炭素数6〜10であり、3級炭素を有するアルキル基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
  6. モノアゾ化合物が、上記一般式(b)で表される化合物であり、式中、R13〜R18のうち少なくとも一つがアルキル基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
  7. モノアゾ化合物が、上記一般式(b)で表される化合物であり、式中、R13〜R18のうち少なくとも一つがアルキル基であり、該アルキル基が、炭素数4〜12であり、3級炭素を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
  8. モノアゾ化合物が、上記一般式(b)で表される化合物であり、式中、R13〜R18のうち少なくとも一つがアルキル基であり、該アルキル基が、炭素数6〜10であり、3級炭素を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
  9. アゾ鉄化合物が、下記一般式(d)で表されることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のトナー。
    【外2】
    Figure 0003880305
    (式(d)中、A及びBは、それぞれ独立してo−フェニレン又は1,2−ナフチレンを表し、少なくともA又はBのいずれかに1以上のアルキル基を有し、また、A、Bはそれぞれハロゲン原子を置換基としてさらに有していても良く、Mは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン及び有機アンモニウムイオンからなるグループより選ばれるカチオンを表す。)
  10. アゾ鉄化合物が、結着樹脂100質量部に対し0.1〜10質量部含有されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のトナー。
  11. アゾ鉄化合物が、結着樹脂100質量部に対し0.5〜5質量部含有されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のトナー。
  12. トナーが、テトラハイドロフラン可溶成分のゲル透過クロマトグラフィにより測定される分子量分布において、分子量3,000〜50,000の領域に少なくとも1つピークを有し、分子量100,000〜10,000,000の領域に少なくとも1つピークまたはショルダーを有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のトナー。
  13. トナーが、テトラハイドロフラン可溶成分のゲル透過クロマトグラフィにより測定される分子量分布において、分子量3,000〜30,000の領域に少なくとも1つピークを有し、分子量100,000〜5,000,000の領域に少なくとも1つピークまたはショルダーを有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のトナー。
  14. トナーの酸価が、0.5〜100mgKOH/gであることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載のトナー。
  15. トナーの酸価が、1.0〜40mgKOH/gであることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載のトナー。
  16. 着色剤が磁性酸化鉄であり、結着樹脂100質量部に対して20〜200質量部含有されていることを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載のトナー。
  17. 磁性酸化鉄が、磁性酸化鉄基準で異種元素を0.05〜10質量%の割合で含有することを特徴とする請求項16に記載のトナー。
  18. 異種元素がアルミニウム、ケイ素から選択される元素であることを特徴とする請求項17に記載のトナー。
  19. トナーの重量平均粒径が2.5〜10μmであることを特徴とする請求項1乃至18のいずれかに記載のトナー。
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