JP3976917B2 - 負摩擦帯電性のトナーおよび現像方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真、静電記録のような画像形成方法における静電荷像を現像するための負摩擦帯電性のトナー又はトナージェット方式の画像形成方法に使用される負摩擦帯電性のトナーおよび現像方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
トナーは、現像される静電荷像の極性及び現像方法(ノーマル現像又は反転現像)に応じて、正または負の電荷を有する必要がある。
【0003】
トナーに電荷を保有せしめるためには、トナーの成分である樹脂の摩擦帯電性を利用することもできるが、この方法ではトナーの帯電が安定しないので、濃度の立ち上がりが遅く、カブリ易い。そこで、所望の摩擦帯電性をトナーに付与するために帯電制御剤を添加することが行われている。
【0004】
今日、当該技術分野で知られている帯電制御剤としては、負摩擦帯電性帯電制御剤として、モノアゾ染料の金属錯塩、ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、芳香族ジオールの如き金属錯塩、酸成分を含む樹脂が知られている。正摩擦帯電性帯電制御剤として、ニグロシン染料、アジン染料、トリフェニルメタン系染顔料、4級アンモニウム塩、4級アンモニウム塩を側鎖に有するポリマー等が知られている。
【0005】
しかしながら、これらの帯電制御剤のほとんどは、有色でありカラートナーには使えないものが多い。そして、カラートナーに適用可能な、無色、白色あるいは淡色のものは、性能的に改善すべき点がある。それらはハイライト部の均一性が得られにくかったり、耐久試験での画像濃度の変動が大きい等の改善すべき点を有する。
【0006】
この他、改善すべき点として、画像濃度とカブリのバランスが取りにくい、高湿環境で、十分な画像濃度を得にくい、樹脂への分散性が悪い、保存安定性、定着性、耐オフセット性に悪影響を与えるという点が挙げられる。
【0007】
従来、芳香族カルボン酸類の金属錯体又は金属塩は、特開昭53−127726号公報、特開昭57−111541号公報、特開昭57−124357号公報、特開昭57−104940号公報、特開昭61−69073号公報、特開昭61−73963号公報、特開昭61−267058号公報、特開昭62−105156号公報、特開昭62−145255号公報、特開昭62−163061号公報、特開昭63−208865号公報、特開平3−276166号公報、特開平4−84141号公報、特開平8−160668号公報に提案されている。しかしながら、これらの公報に提案されているのは、摩擦帯電付与という観点からはいずれも優れたものであるが、簡易な現像器構成で環境変動、経時、使用状況に関わらず、安定した現像性の得られるものは少ない。また、高速機において長期耐久時おいても安定した現像性が得られるものも少ない。更に、他の原材料の影響があり、他の原材料への制約が発生するものも多い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点を解消した負摩擦帯電性のトナーを提供することにある。
【0009】
本発明の目的は、低湿下で使用しても、高湿下で使用しても高い画像品質が安定して得られ、経時において画像欠陥を生じない負摩擦帯電性のトナーおよび該トナーを使用する現像方法を提供することにある。
【0010】
本発明の目的は、補給タイプ、使い切りカートリッジタイプの現像器のいずれにおいても劣化したトナーが発生しにくく、優れた現像性の得られる負摩擦帯電性のトナーおよび該トナーを使用する現像方法を提供することにある。
【0011】
本発明の目的は、長期耐久でも静電荷像に忠実な画像を得続けることのできる負摩擦帯電性のトナーおよび該トナーを使用する現像方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも結着樹脂、着色剤及び有機金属化合物を有する負摩擦帯電性のトナーであり、
有機金属化合物がジルコニウムと、芳香族ジオール,芳香族ヒドロキシカルボン酸,芳香族モノカルボン酸及び芳香族ポリカルボン酸からなるグループから選択される芳香族化合物とが配位又は/及び結合している有機ジルコニウム化合物であって、
該有機ジルコニウム化合物が後述の式(1)、(2)、(32)又は(33)のいずれかの一般式で示される構造を有する化合物であることを特徴とする負摩擦帯電性のトナーに関する。
【0013】
さらに、本発明は、現像剤担持体上に、現像剤層厚規制手段によって負の摩擦電荷を有する一成分系現像剤の層厚を規制して一成分系現像剤の薄層を形成し、静電荷像保持体上の静電荷像を、該静電荷像保持体と対向して配置された該現像剤担持体に担持されている該一成分系現像剤で現像する現像方法であり、
該一成分系現像剤は負摩擦帯電性のトナーを有し、
負摩擦帯電性のトナーが、上記構成のトナーであることを特徴とする現像方法に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、芳香族ジオール、芳香族モノカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸又は/及び芳香族ヒドロキシカルボン酸とジルコニウム化合物とが反応した有機ジルコニウム化合物(例えば、有機ジルコニウム錯化合物又は有機ジルコニウム塩)を用いることにより、立ち上がりの良さを保持しつつ、高湿環境においても高い帯電量を得、低湿環境においても帯電過剰となることのないトナー得ることができることを見い出した。また、本発明で使用する有機ジルコニウム化合物は透明性に優れ、カラートナーにとっても、鮮明な色彩画像が得られるので好ましい。また、本発明の有機ジルコニウム化合物は、ジルコニウム元素基準でハフニウム元素を20wt%未満で含んでいても良い。
【0015】
有機ジルコニウム化合物としては、
(i)金属元素としてジルコニウムを有し、配位子として芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ポリカルボン酸を配位しているジルコニウム錯体;
(ii)金属元素としてジルコニウムを有し、配位子として芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ポリカルボン酸を配位しているジルコニウム錯塩;又は
(iii)金属イオンとしてジルコニウムイオンを有し、酸イオンとして芳香族カルボン酸イオン、芳香族ヒドロキシカルボン酸イオン又は芳香族ポリカルボン酸イオンを有しているカルボン酸ジルコニウム塩
が挙げられる。
【0016】
配位子として、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸を1〜4個キレート形成しているジルコニウム錯体あるいはジルコニウム錯塩が好ましい。また、これらジルコニウム錯体又は錯塩に、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族カルボン酸又は芳香族ポリカルボン酸のカルボキシアニオンを1〜6個配位させても良い。
【0017】
有機ジルコニウム塩の場合は、芳香族カルボン酸イオン、芳香族ヒドロキシカルボン酸イオン、芳香族ポリカルボン酸イオンを1〜4個有しているものが好ましく、更には1〜3個有しているものが好ましい。またキレート形成数の異なる錯体,錯塩あるいは配位子の異なる錯体,錯塩の混合物であってもよい。また酸イオンの数の異なる塩の混合物であってもよい。
【0018】
また、有機ジルコニウム化合物は、有機ジルコニウム錯化合物と有機ジルコニウム塩との混合物であっても良い。
【0019】
さらに、上記ジルコニウム化合物を磁性体を含有する磁性トナーに使用したり、あるいは有機ジルコニウム化合物を有するトナーを一成分系現像方法に適用することにより、優れた現像性が得られることを見いだした。すなわち、少ない摩擦帯電機会で素速い帯電の立ち上がりと、高い帯電量を必要とする磁性トナーや一成分現像用トナーにとって、本発明で使用する有機ジルコニウム化合物はこれらの要件を満たす好適な負帯電制御剤となるのである。非磁性一成分現像方法に用いられる非磁性トナーにも最適である。
【0020】
有機ジルコニウム化合物は、酸価を有する結着樹脂と共に用いると、トナーの構成成分が保有する水分子の持つ極性を利用し、帯電が強調される効果の寄与を大きいものとすることができる。また、融点の異なるワックスあるいは組成成分の異なるワックスを二種類以上と用いることで非常に分散性を良好にすることができ、耐久性や帯電均一性を向上させることができる。
【0021】
有機ジルコニウム化合物を使用したトナーは、低湿又は高湿環境での帯電量が十分になるだけでなく、長期の耐久での濃度低下も抑えられる。有機ジルコニウム化合物の使用は、特に種々の異種元素を有する磁性酸化鉄を含有する磁性トナーにとって最適になる。異種元素の酸化物、水酸化物、異種元素を取り込んだ酸化鉄、異種元素を混晶させた酸化鉄が、水分子を吸着し、水分子の極性を利用した帯電の向上及び安定化を効果的に行うことができる。また酸価を有する結着樹脂と共に用いると一層効果的に帯電の向上及び安定化を行うことができる。
【0022】
本発明に使用する有機ジルコニウム化合物は、ジルコニウムイオンが八配位をとりやすくカルボキシル基又は水酸基の酸素を配位又は結合し易い。結着樹脂として官能基にカルボキシル基を有するスチレン系樹脂又はポリエステル系樹脂の如き酸価を有する結着樹脂と用いると、結着樹脂中へのなじみがよく分散性に優れ、トナー粒子中からの脱落を防ぎ、帯電均一化と帯電の耐久安定性が得られる。更には、有機ジルコニウム化合物はトナーの透明性への影響が小さく、鮮やかな色彩を表現するカラートナーを形成するのに好ましいものとなる。また、結着樹脂のカルボキシル基、水酸基のジルコニウムイオンヘの配位を介し、ポリマー鎖の架橋を施すことができるため、結着樹脂をゴム弾性の大きいものとすることができ、離型性に優れ、定着部材の汚れを効果的に防止できる。従って、THF不溶分を結着樹脂が有する程度に架橋しているのが良い。また、トナー製造時の溶融混練時に混練物にシェアをかけることができ、磁性体、顔料、染料の分散を向上させることができ、着色力の高い、色味の鮮明なトナーとすることができる。
【0023】
本発明に使用する有機ジルコニウム化合物は、摩擦帯電能力にすぐれ、高い帯電量が得られるので、高い帯電量を必要とする磁性トナーにとって好適な荷電制御剤となるのである。さらに、有機ジルコニウム化合物自体の良好な結着樹脂への分散性に加え、結着樹脂に酸価を有するものを用いると磁性体の分散性向上に働くので、耐久性、帯電均一性が得られるようになるのである。
【0024】
また、本発明に使用する有機ジルコニウム化合物は、トナーに用いる結着樹脂の表面張力に何らかの影響を及ぼし、複数種のワックスと用いると、非常に離型性に優れることが見いだされた。このことから耐オフセット性に優れ、定着部材汚れ防止に効果のあるトナーを形成することができる。また、酸価を有する結着樹脂と共に用いると特にこの効果は顕著である。
【0025】
また、本発明の有機ジルコニウム化合物は、放置によるトナーの現像性の低下が小さいことが特徴的である。例えば、高湿下で使用した後、休止してしばらく放置した後、再び使用し始めた際に、画像濃度の低下を少ないものとすることができる。
【0026】
さらに、本発明の有機ジルコニウム化合物は、帯電量不良トナー粒子の発生が少なく、飛散するトナー粒子が少ないことが特徴的である。例えば、磁性トナーにおいては凝集力の低下する低湿下では飛散が多くなり、コロナ帯電方式では、飛散トナーが帯電ワイヤーに付着し、放電異常を生じ、一次帯電においては静電像の帯電異常から筋状の画像異常が発生したり、転写帯電においては筋状の転写不良を発生しやすくなるが、本発明のトナーではこれらの現象を低減することができる。接触帯電方式においては、接触転写部で飛散トナーによる汚れが転写紙等に転移し、裏汚れを生じることがあるが、本発明のトナーはこれらの現象も低減できる。
【0027】
トナー粒子飛散現象は、非磁性トナーにおいては、静電気力のみでトナー担持体に拘束されているので高湿下の方が顕著となるが、この飛散現象も本発明のトナーは低減することができ、機内飛散等による画像汚れを減少させることができる。また、非磁性トナーは低湿下で帯電不良粒子の発生の影響で、ハーフトーンなどに濃度ムラが発生することがあるが、この現象も本発明のトナーは低減させることができる。
【0028】
本発明に使用される芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ポリカルボン酸のジルコニウム錯体あるいはジルコニウム錯塩又は有機ジルコニウム塩の如き有機ジルコニウム化合物を以下により具体的に説明する。
【0029】
一般式(l)又は(2)に好ましいジルコニウム錯体あるいは錯塩を示す。
【0030】
【化15】
一般式(1)において、Arは置換基としてアルキル基、アリール基、アルアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基又はカルバモイル基を有していてもよい芳香族残基を表わし、X及びYは−O−、−CO−O−を表わし、X及びYは同じであっても異なっていてもよく、Lは中性配位子、水、アルコール、アンモニア、アルキルアミン又はピリジンを表わし、C1は1価のカチオン、水素、1価の金属イオン、アンモニウム又はアルキルアンモニウムを表わし、C2は2価のカチオン又は2価の金属イオンを表し、nは2,3又は4を表わし、mは0,2又は4を表わす。各錯体または各錯塩において配位子となる芳香族カルボン酸類、芳香族ジオール類は同じものであっても異なるものであってもよく、またn又は/及びmの数の異なる錯化合物の混合物であっても良い。対イオンのC1及びC2が異なる錯塩の混合物であっても良い。結着樹脂中への錯体又は錯塩の分散性向上の観点あるいは帯電性向上の観点から、芳香族残基(Ar)としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環又はフェナントレン環が好ましく、置換基としてはアルキル基、カルボキシル基又は水酸基が好ましく、Lとしては水が好ましく、C1としては水素、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、アルキルアンモニウムが好ましい。
【0031】
【化16】
一般式(2)において、Arは置換基としてアルキル基、アリール基、アルアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基又はカルバモイル基を有していてもよい芳香族残基を表わし、X及びYは−O−、−CO−O−を表わし、X及びYは同じであっても異なっていてもよく、Lは中性配位子、水、アルコール、アンモニア、アルキルアミン又はピリジンを表わし、Aは、アニオン、ハロゲン、水酸イオン、カルボン酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、シアンイオン又はチオシアンイオンを表わし、Aは相互に異なるイオンを有していても良く、C1は1価のカチオン、水素、1価の金属イオン、アンモニウム又はアルキルアンモニウムを表わし、C2は2価のカチオン又は2価の金属イオンを表し、nは1,2,3又は4を表わし、kは1,2,3,4,5又は6を表わし、mは0,1,2,3又は4を表わす。各錯体または各錯塩において配位子となるアニオンA、芳香族カルボン酸類及び芳香族ジオール類は同じものであっても異なるものであってもよく、またn又は/及びmの数の異なる錯化合物の混合物であっても良い。対イオンのC1及びC2が異なる錯塩の混合物であっても良い。結着樹脂中への錯体又は錯塩の分散性向上の観点あるいは帯電性向上の観点から、芳香族残基(Ar)としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環又はフェナントレン環が好ましく、置換基としてはアルキル基、カルボキシル基又は水酸基が好ましく、Lとしては水が好ましく、C1としては水素、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、アルキルアンモニウムが好ましく、Aとしては水酸イオン又はカルボン酸イオンが好ましい。
【0032】
さらに、好ましいジルコニウム錯体又は錯塩を一般式(3),(4),(5),(6),(7)及び(8)に示す。
【0033】
【化17】
一般式(3),(4)及び(5)において、Rは水素、アルキル基、アリール基、アルアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、カルボキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基又はカルバモイル基を表わし、相互に連結して脂肪族環、芳香環あるいは複素環を形成しても良く、この場合この環に置換基Rを有していても良く、置換基Rを1乃至8個持っていてもよく、それぞれ同じであっても、異なっていてもよく、C1は1価のカチオン、水素、アルカリ金属、アンモニウム又はアルキルアンモニウムを表わし、lは1〜8の整数を表わし、nは2,3又は4を表わし、mは0,2又は4を表わし、各錯体または錯塩において配位子となる芳香族カルボン酸類又は芳香族ジオール類は同じものであっても異なるものであってもよく、またn又は/及びmの数の異なる錯化合物の混合物であっても良い。また、対イオンのC1が異なる錯塩の混合物であっても良い。結着樹脂中への錯体又は錯塩の分散性向上の観点あるいは帯電性向上の観点から、置換基Rとしてはアルキル基、アルケニル基、カルボキシル基又は水酸基が好ましく、C1としては水素、ナトリウム、カリウム、アンモニウム又はアルキルアンモニウムが好ましい。
【0034】
特に好ましいのは、一般式(4)で表わされる錯化合物あるいはカウンターイオンを有さない、一般式(3),(4)又は(5)においてn=2の場合のジルコニウム中性錯体であり、優れた環境安定性が得られ、結着樹脂中への分散性にも優れ、良好な耐久性が得られる。
【0035】
【化18】
一般式(6)、(7)及び(8)において、Rは水素、アルキル基、アリール基、アルアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、カルボキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基又はカルバモイル基を表わし、相互に連結して脂肪族環、芳香環あるいは複素環を形成しても良く、この場合この環に置換基Rを有していても良く、置換基Rを1乃至8個持っていてもよく、それぞれ同じであっても、異なっていてもよく、Aは、アニオン、ハロゲン、水酸イオン、カルボン酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、シアンイオン又はチオシアンイオンを表わし、Aは相互に異なるイオンを有していても良く、C1は1価のカチオン、水素、1価の金属イオン、アンモニウム又はアルキルアンモニウムを表わし、nは1,2,3又は4を表わし、kは1,2,3,4,5又は6を表わし、mは0,1,2,3又は4を表わす。各錯体または各錯塩において配位子となる芳香族カルボン酸類、芳香族ジオール類は同じものであっても異なるものであってもよく、またn又は/及びmの数の異なる錯化合物の混合物であっても良い。カチオンC1又は/及びアニオンAが異なる2種以上の錯化合物の混合物であっても良い。
【0036】
結着樹脂中への錯体又は錯塩の分散性の向上の観点あるいは帯電性向上の観点から、置換基Rとしては、アルキル基、アルケニル基、カルボキシル基、水酸基が好ましく、C1としては水素、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、アルキルアンモニウムが好ましく、Aとしては水酸イオン又はカルボン酸イオンが好ましい。
【0037】
特に好ましいのは、一般式(7)で表わされる錯化合物あるいは、カウンターイオンを有さない、一般式においてn=2の場合のジルコニウム中性錯体であり、優れた環境安定性が得られ、結着樹脂中への分散性にも優れ、良好な耐久性が得られる。
【0038】
本発明に用いられるジルコニウム錯体あるいは錯塩は、六配位または八配位の錯化合物で、八配位の中には、配位子が橋かけした複核錯化合物となり示性式上六配位となる錯化合物があり、また、水酸基などの配位子が橋かけし、次々と錯化合物を重合した複核錯化合物などもある。
【0039】
このような錯化合物の構造の代表的なものを、以下の一般化学式(9)〜(29)でその構造を例示する。以下の構造の中には配位子Lを持たないものも包含する。
【0040】
【化19】
【0041】
【化20】
【0042】
【化21】
【0043】
【化22】
【0044】
【化23】
【0045】
また、芳香族環の水酸基又はカルボキシル基が異なるジルコニウムに配位した構造を有する錯化合物であってもよく、例えば部分構造として式(30)に示されるものである。
【0046】
【化24】
【0047】
具体的構造では式(31)で表わされる。
【0048】
【化25】
【0049】
ここで、pは1以上の整数を表わし、qは2以上の整数を表わし、式(31)ではアニオン配位子、中性配位子及び対カチオンは省略してある。
【0050】
本発明に使用される好ましい芳香族カルボン酸のジルコニウム塩を一般式(32)及び(33)に示す。
【0051】
【化26】
一般式(32)及び(33)において、Arは置換基としてアルキル基、アリール基、アルアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、カルボキシル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基又はカルバモイル基を有していてもよい芳香族残基を表わし、A1は1価のアニオン、ハロゲンイオン、水酸イオン、硝酸イオン又はカルボン酸イオンを表わし、A2は2価のアニオン、硫酸イオン、リン酸水素イオン又は炭酸イオンを表わし、nは1,2,3又は4を表わす。各金属塩においてアニオンA1、アニオンA2、酸イオンとなる芳香族カルボン酸類及び芳香族ヒドロキシカルボン酸は同じものであっても異なるものであってもよい。また、nの数が異なる塩の混合物であっても良い。結着樹脂中への金属塩の分散性向上の観点あるいは帯電性向上の観点から、芳香族残基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環又はフェナントレン環が好ましく、置換基としてはアルキル基、カルボキシル基、水酸基又はアシルオキシ基が好ましい。
【0052】
更に好ましい金属塩は一般式(34)及び(35)で表わせるジルコニウム塩である。
【0053】
【化27】
一般式(34)及び(35)において、Rは水素、アルキル基、アリール基、アルアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、アミド基又はカルバモイル基を表わし、相互に連結して脂肪族環、芳香環あるいは複素環を形成しても良く、この場合この環に置換基Rを有していても良く、置換基Rを1乃至8個持っていてもよく、それぞれ同じであっても、異なっていてもよく、A1は1価のアニオン、ハロゲンイオン、水酸イオン、硝酸イオン又はカルボン酸イオンを表わし、A2は2価のアニオン、硫酸イオン、リン酸水素イオン又は炭酸イオンを表し、1は1〜8の整数を表わし、nは1、2、3又は4を表わす。各金属塩においてアニオンA1、アニオンA2及び酸イオンとなる芳香族カルボン酸類は同じものであっても異なるものであってもよい。また、nの数が異なる塩の混合物であっても良い。結着樹脂中への金属塩の分散性向上の観点あるいは帯電性向上の観点から、置換基としてはアルキル基、アルケニル基、カルボキシル基、水酸基又はアシルオキシ基が好ましく、優れた環境安定性が得られ、結着樹脂中への分散性にも優れ、優れた耐久性が得られる。
更に好ましい金属塩は一般式(36)及び(37)で表わせるジルコニウム塩である。
【0054】
更に好ましい金属塩は一般式(36)及び(37)で表わせるジルコニウム塩である。
【0055】
【化28】
一般式(36)及び(37)において、Rは水素、アルキル基、アリール基、アルアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、アミド基又はカルバモイル基を表わし、相互に連結して脂肪族環、芳香環あるいは複素環を形成しても良く、この場合この環に置換基Rを有していても良く、置換基Rは1から8個持っていてもよく、それぞれ同じであっても、異なっていてもよく、A1は1価のアニオン、ハロゲンイオン、水酸イオン、硝酸イオン又はカルボン酸イオンを表わし、A2は2価のアニオン、硫酸イオン、リン酸水素イオン又は炭酸イオンを表し、lは1〜7の整数を表わし、nは1,2,3又は4を表わす。各金属塩においてアニオンA1、アニオンA2及び酸イオンとなる芳香族カルボン酸類は同じものであっても異なるものであってもよい。また、nの数が異なる塩の混合物であっても良い。結着樹脂中への金属塩の分散性向上の観点あるいは帯電性向上の観点から、置換基としてはアルキル基、アルケニル基、カルボキシル基、水酸基又はアシルオキシ基が好ましく、優れた環境安定性が得られ、結着樹脂中への分散性にも優れ、優れた耐久性が得られる。
【0056】
本発明の有機ジルコニウム化合物は、塩化酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、有機酸ジルコニウムなどのジルコニウム化合物を水、アルコール、アルコール水溶液に溶解し、芳香族カルボン酸、芳香族ジオールおよびこれらのアルカリ金属塩を添加するか、あるいは芳香族カルボン酸、芳香族ジオールとアルカリ剤を添加することにより合成される。これらの有機ジルコニウム化合物は、アルコール水溶液などで再結晶し、アルコール洗浄で精製する。また、錯塩の場合は、生成物を鉱酸、アルカリ剤、アミン剤で処理することにより種々のカウンターイオンを持つ錯塩が得られる。本発明においては、ジルコニウム錯塩のカウンターイオンに水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオンなど複数種有しているものも含む。
【0057】
以下に、本発明に用いられる有機ジルコニウム化合物の具体例を挙げるが、ここでは、示性式を示す。水分子を2〜4個配位しているものも含まれるが、ここでは水分子の記載を省略する。また、カウンターイオンは複数種有するものも含むが、ここでは一番多いカウンターイオンのみを記載する。
【0058】
【化29】
【0059】
【化30】
【0060】
【化31】
【0061】
【化32】
【0062】
【化33】
【0063】
【化34】
【0064】
【化35】
【0065】
【化36】
【0066】
【化37】
【0067】
【化38】
【0068】
【化39】
【0069】
【化40】
【0070】
【化41】
【0071】
【化42】
【0072】
【化43】
【0073】
【化44】
【0074】
【化45】
【0075】
【化46】
【0076】
【化47】
【0077】
【化48】
【0078】
【化49】
【0079】
【化50】
【0080】
【化51】
【0081】
【化52】
【0082】
【化53】
【0083】
【化54】
【0084】
【化55】
【0085】
【化56】
【0086】
本発明に使用する有機ジルコニウム化合物をトナーに添加する方法としては、トナー粒子の内部に添加する方法とトナー粒子に外添する方法がある。トナー粒子に内添する場合の好ましい添加量としては結着樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部、より好ましくは、0.5〜5重量部の範囲で用いられる。また、トナー粒子に外添する場合は、0.01〜5重量部が好ましく、特にメカノケミカル的にトナー粒子表面に固着させるのが好ましい。
【0087】
また本発明に使用する有機ジルコニウム化合物は、従来の技術で述べたような公知の電荷制御剤と組み合わせて使用することもできる。例えば、他の電荷制御剤として有機金属錯体、金属塩又はキレート化合物が挙げられる。具体的には、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、ヒドロキシカルボン酸金属錯体、ポリカルボン酸金属錯体、ポリオール金属錯体などがあげられる。そのほかには、カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、エステル類などのカルボン酸誘導体や芳香族系化合物の縮合体などもあげられる。またビスフェノール類、カリックスアレーンの如きフェノール誘導体が挙げられる。
【0088】
本発明に使用される結着樹脂の種類としては、スチレン系樹脂、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニール、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂が挙げられる。
【0089】
スチレン系共重合体のスチレンモノマーに対するコモノマーとしては、ビニルトルエンの如きスチレン誘導体;アクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル;メタクリル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチルの如きメタクリル酸エステル;マレイン酸、マレイン酸ブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチルの如き二重結合を有するジカルボン酸;アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン;塩化ビニル;酢酸ビニル、安息香酸ビニルの如きビニルエステル;エチレン、プロピレン、ブチレンの如きエチレン系オレフィン;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトンの如きビニルケトン;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテルが挙げられる。これらのビニル系単量体が単独もしくは2つ以上用いられる。
【0090】
結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂の場合、樹脂成分のTHF可溶分のGPCによる分子量分布で、分子量3千〜5万の領域に少なくとも1つピークが存在し、分子量10万以上の領域に少なくとも1つピークが存在するのが好ましい。また、THF可溶分は、分子量分布10万以下の成分が50〜90%となるような結着樹脂も好ましい。
【0091】
さらに好ましくは、分子量5000〜3万の領域に、最も好ましくは5000〜2万の領域にメインピークを有するのが良い。また、分子量105〜108の領域(より好ましくは、分子量105〜107の領域)にサブピークを有するのが良い。
【0092】
結着樹脂がポリエステル系樹脂の場合は、樹脂成分のTHF可溶成分の分子量分布で、分子量3千〜5万の領域に少なくとも1つピークが存在するのが好ましい。また、THF可溶分は、分子量10万以下の成分が60〜100%となるような結着樹脂も好ましい。さらに好ましくは、分子量5千〜2万の領域に少なくとも1つピークが存在するのが良い。
【0093】
分子量分布において、この様なピークを有する結着樹脂で構成されるトナーは、定着性、耐オフセット性及び保存性がバランス良く保たれる。
【0094】
本発明で用いる有機ジルコニウム化合物を含有したトナーは、高湿あるいは低湿環境下においても帯電特性の変動が少なく、安定した現像特性を保持できると同時に、酸価を有する結着樹脂を用いた場合、分散性が非常によい上、トナーからの該有機ジルコニウム化合物の欠落が少ない為、耐久安定性に優れる。
【0095】
結着樹脂中のカルボキシル基又は/及び水酸基のジルコニウムへの配位を介したポリマー鎖の架橋により、トナーの結着樹脂成分にゴム弾性を発現させることができる。
【0096】
この結果、離型性に優れたトナーとすることができ、耐オフセット性に優れるばかりでなく、定着部材の汚染を防止するとともに、定着部での分離不良による転写材のつまり(ジャム)を防ぐことができる。
【0097】
また、トナー粒子を強靭なものとすることができ現像の耐久安定性が得られ、またクリーニング部での破砕を防止しクリーニング性が安定する。また、トナーの流動性を向上させ、その変化も小さくなるので現像及びクリーニングの安定化の向上に寄与する。
【0098】
更に、定着画像のグロスが抑えられ、濃度変動を小さくできる。また、定着画像も強靭になるので定着安定性が向上し、両面複写,多重複写やドキュメントフィーダーを利用した際にも、各部材を汚すことが少なくなるので、画像への汚れの発生を減少させることができる。本発明ではこの架橋がTHF不溶分が生じる程度になると、より効果的である。
【0099】
好ましくはTHF不溶分が1〜70wt%(結着樹脂基準)、更に好ましくは5〜60wt%(結着樹脂基準)であるとき上記効果が十分に発揮される。70wt%を超えると定着性に低下し始めるので注意が必要である。
【0100】
また、ジルコニウムとカルボキシル基又は/及び水酸基の架橋構造は、ジルコニウム原子が大きいこと、酸素原子と結合をつくりやすいことなどから他のアルミニウム,クロム,鉄又は亜鉛が形成した架橋構造より強固でありながら柔軟性富んだものとなる。
【0101】
従って、離型性や強靭性がより優れる反面、定着性が低下しにくい。同量の架橋成分やTHF不溶分を含んでいてもその添加効果は大きく、バランスがよい。
【0102】
また、ジルコニウムによる架橋の方が少量でもその効果は大きく、多くなってもその弊害は小さなものとすることができる。
【0103】
また、本発明のトナーは、現像剤担持体との摩擦帯電プロセスにおいて、優れた帯電付与能力を示すことが明らかになった。すなわち、酸価を有する結着樹脂と有機ジルコニウム化合物を含有したトナーについて、現像剤担持体材質との帯電能力をみると、現像剤担持体表面との少ない接触でも大きな帯電量が発生することがわかった。
【0104】
本発明で用いられる結着樹脂は酸価が、1mgKOH/g乃至100mgKOH/gであることが好ましく、1mgKOH/g乃至70mgKOH/gがさらに良く、更に好ましくは1mgKOH/g乃至50mgKOH/gが良く、特には2mgKOH/g乃至40mgKOH/gであることが好ましい。結着樹脂の酸価が1mgKOH/g未満の場合は、有機ジルコニウム化合物との相互作用による現像安定性や耐久安定効果を十分に発揮しきれなかったり、架橋効果が現れにくい。一方、100mgKOH/gを超える場合は結着樹脂の吸湿性が強くなり、画像濃度が低下し、カブリが増加する傾向がある。
【0105】
本発明において、トナー組成物の結着樹脂成分の酸価は、以下の方法により求める。
【0106】
<酸価の測定>
基本操作はJIS K−0070に準ずる。
1)試料は予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂及び架橋された結着樹脂以外の成分の酸価及び含有量を予め求めておく。試料の粉砕品0.5〜2.0(g)を精秤し、重合体成分の重さをW(g)とする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤又は磁性体等の酸価及び含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
2)300(ml)のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(4/1)の混合液150(ml)を加え溶解する。
3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する(例えば、京都電子株式会社製の電位差滴定装置AT−400(win workstation)とABP−410電動ビュレットを用いての自動滴定が利用できる)。
4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB(ml)とする。
5)次式により酸価を計算する。fはKOHのファクターである。
【0107】
酸価(mgKOH/g)={(S−B)×f×5.61}/W
【0108】
本発明において、結着樹脂又はトナーの結着樹脂のTHF(テトラハイドロフラン)を溶媒としたGPCによる分子量分布は次の条件で測定される。
【0109】
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば東ソー社製あるいは昭和電工社製の分子量が102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。なお、カラムをしては、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807、800Pの組み合わせや、東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKgurd columnの組み合わせを挙げることができる。
【0110】
また、試料は以下の様にして作製する。
【0111】
試料をTHF中に入れ、数時間放置した後、十分振とうしTHFとよく混ぜ(試料の合一体が無くなるまで)、更に12時間以上静置する。その時THF中への放置時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2〜0.5μm、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー社製)などが使用できる。)を通過させたものをGPCの試料とする。また、試料濃度は、樹脂成分が、0.5〜5mg/mlとなるように調整する。
【0112】
本発明において、結着樹脂そのもの又はトナーの結着樹脂中のTHF不溶分は以下のようにして測定される。
【0113】
トナーサンプル0.5〜1.0gを秤量し(W1g)、円筒濾紙(例えば東洋濾紙社製No.86R)を入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてTHF200mlを用いて10時間抽出し、溶媒によって抽出された可溶成分溶液をエバポレートした後、100℃で数時間真空乾燥し、THF可溶樹脂成分量を秤量する(W2g)。トナー中の樹脂成分以外の重さを求める(W3g)。THF不溶分は下記式から求められる。
【0114】
【数1】
【0117】
結着樹脂の酸価を調整するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸、ビニル酢酸、イソクロトン酸、アンゲリカ酸などのアクリル酸及びそのα−或いはβ−アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、アルケニルコハク酸、イタコン酸、メサコン酸、ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和ジカルボン酸及びそのモノエステル誘導体又は無水物が挙げられる。このようなモノマーは単独、或いは混合して、他のモノマーと共重合させることにより所望の結着樹脂を作ることができる。この中でも、特に不飽和ジカルボン酸のモノエステル誘導体を用いることが酸価値をコントロールする上で好ましい。
【0118】
例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノアリル、マレイン酸モノフェニル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノフェニルなどのようなα,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステル類;n−ブテニルコハク酸モノブチル、n−オクテニルコハク酸モノメチル、n−ブテニルマロン酸モノエチル、n−ドデセニルグルタル酸モノメチル、n−ブテニルアジピン酸モノブチルのようなアルケニルジカルボン酸のモノエステル類などが挙げられる。
【0119】
以上のようなカルボキシル基含有モノマーは、結着樹脂を構成するための全モノマー100重量部に対し0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜15重量部添加すればよい。
【0120】
上記のようなジカルボン酸のモノエステルモノマーが選択される理由としては、水系の懸濁液に対して溶解度が低く、一方、有機溶媒や他のモノマーへの溶解度の高いエステルの形で用いるのが好ましいからである。
【0121】
本発明において、上記のような方法で得られた共重合体中のカルボン酸基及びカルボン酸エステル部位はアルカリ処理を行い、ケン化させても良い。即ち、アルカリのカチオン成分と反応させて、カルボン酸基或いはカルボン酸エステル部位を極性官能基に変化させても良い。
【0122】
このアルカリ処理は、結着樹脂製造後、重合時に使用した溶媒中にアルカリ水溶液として投入し、撹拌しながら行なえばよい。本発明に用いることのできるアルカリとしては、Na,K,Ca,Li,Mg,Baの如きアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物;Zn,Ag,Pb,Niの如き遷移金属の水酸化物;アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、ピリジウム塩の如き4級アンモニウム塩の水酸化物が挙げられる。特に好ましい例として、NaOHやKOHが挙げられる。
【0123】
本発明において上記ケン化反応は、共重合体中のカルボン酸基及びカルボン酸エステル部位の全てに渡って行われる必要はなく、部分的にケン化反応が進行し、極性官能基に変わっていればよい。
【0124】
また、ケン化反応に用いるアルカリの量は、結着樹脂中の極性基の種類、分散方法、構成モノマーの種類などにより一概に決定し難いのであるが、結着樹脂の酸価の0.02〜5倍当量であればよい。0.02倍当量より少ない場合はケン化反応が十分でなく、反応によって生じる極性官能基の数が少なくなり、結果として後のケン化による架橋反応が不十分となる。逆に5倍当量を超える場合は、カルボン酸エステル部位などの官能基に対し、エステルの加水分解、ケン化反応による塩の生成などによって官能基に悪影響を及ぼす。
【0125】
酸価の0.02〜5倍当量のアルカリ処理を施した時は、処理後の残存カチオン濃度が5〜1000ppmの間に含まれ、アルカリの量を規定するのに好ましく用いることができる。
【0126】
トナーの結着樹脂及び結着樹脂を含む組成物は、トナーの保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が45〜75℃、好ましくは50〜70℃である。Tgが45℃より低いと高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなる。また、Tgが75℃を超えると、定着性が低下する傾向にある。
【0127】
本発明の結着樹脂の合成方法として本発明に用いることの出来る重合法として、溶液重合法、乳化重合法や懸濁重合法が挙げられる。
【0128】
このうち、乳化重合法は、水にほとんど不溶の単量体(モノマー)を乳化剤で小さい粒子として水相中に分散させ、水溶性の重合開始剤を用いて重合を行う方法である。この方法では反応熱の調節が容易であり、重合の行われる相(重合体と単量体からなる油相)と水相とが別であるから停止反応速度が小さく、その結果重合速度が大きく、高重合度のものが得られる。更に、重合プロセスが比較的簡単であること、及び重合生成物が微細粒子であるために、トナーの製造において、着色剤及び荷電制御剤その他の添加物との混合が容易であること等の理由から、トナー用バインダー樹脂の製造方法として有利な点がある。
【0129】
しかし、添加した乳化剤のため生成重合体が不純になり易く、重合体を取り出すには塩析などの操作が必要で、この不便を避けるためには懸濁重合が好都合である。
【0130】
懸濁重合においては、水系溶媒100重量部に対して、モノマー100重量部以下(好ましくは10〜90重量部)で行うのが良い。使用可能な分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分ケン化物、リン酸カルシウム等が用いられ、一般に水系溶媒100重量部に対して0.05〜1重量部使用される。重合温度は50〜95℃が適当であるが、使用する重合開始剤、生成するポリマーによって適宜選択される。
【0131】
本発明に用いられる結着樹脂は、以下に例示する様な多官能性重合開始剤単独あるいは単官能性重合開始剤と併用して生成することが好ましい。
【0132】
多官能構造を有する多官能性重合開始剤の具体例としては、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン及び2,2−t−ブチルパーオキシオクタンの如き1分子内に2つ以上のパーオキサイド基の如き重合開始機能を有する官能基を有する多官能性重合開始剤;及びジアリルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート及びt−ブチルパーオキシイソプロピルフマレートの如き1分子内に、パーオキサイド基の如き重合開始機能を有する官能基と重合性不飽和基の両方を有する多官能性重合開始剤が挙げられる。
【0133】
これらの内、より好ましいものは、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート及び2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、及びt−ブチルパーオキシアリルカーボネートである。
【0134】
これらの多官能性重合開始剤は、トナーの結着樹脂として要求される種々の性能を満足する為には、単官能性重合開始剤と併用されることが好ましい。特に該多官能性重合開始剤の半減期10時間を得る為の分解温度よりも低い半減期10時間を有する重合開始剤と併用することが好ましい。
【0135】
具体的には、ベンゾイルパーオキシド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシクメン、ジ−t−ブチルパーオキシドの如き有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノアゾベンゼンの如きアゾおよびジアゾ化合物が挙げられる。
【0136】
これらの単官能性重合開始剤は、前記多官能性重合開始剤と同時にモノマー中に添加しても良いが、該多官能性重合開始剤の効率を適正に保つ為には、重合工程において該多官能性重合開始剤の示す半減期を経過した後に添加するのが好ましい。
【0137】
これらの開始剤は、効率の点からモノマー100重量部に対し0.05〜2重量部で用いるのが好ましい。
【0138】
結着樹脂は架橋性モノマーで架橋されていることも好ましい。
【0139】
架橋性モノマーとしては主として2個以上の重合可能な二重結合を有するモノマーが用いらる。具体例としては、芳香族ジビニル化合物(例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等);アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び、以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);ポリエステル型ジアクリレート化合物類(例えば、商品名MANDA(日本化薬))が挙げられる。多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0140】
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100重量部に対して、0.0001〜1重量部、好ましくは0.001〜0.5重量部の範囲で用いることが好ましい。
【0141】
これらの架橋性モノマーのうち、トナーの定着性,耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
【0142】
その他の合成方法としては、塊状重合方法、溶液重合方法を用いることが出来る。しかしながら、塊状重合法では、高温で重合させて停止反応速度を速めることで、任意の重合体を得ることができるが、反応をコントロールしにくい問題点がある。その点、溶液重合法では、溶媒によるラジカルの連鎖移動の差を利用して、また、開始剤量や反応温度を調整することで低分子量重合体を温和な条件で容易に得ることができ、本発明で用いる樹脂組成物中の低分子量体を得るには好ましい。特に、開始剤使用量を最小限に抑え、開始剤が残留することによる影響を極力抑えるという点で、加圧条件下での溶液重合法も好ましい。
【0143】
本発明の結着樹脂を得る為のモノマーとしては、次のようなものが挙げられる。
【0144】
スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの如きスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きエチレン不飽和モノオレフィン;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、沸化ビニルの如きハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸(2−エチルヘキシル)、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸ステアリル、アクリル酸(2−クロルエチル)、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸誘導体もしくはメタクリル酸誘導体が挙げられる。これらのビニル系モノマーは単独もしくは2つ以上のモノマーを混合して用いられる。
【0145】
これらの中でもスチレン系共重合体、スチレンアクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
【0146】
また、本発明の結着樹脂が、少なくともスチレン系重合体成分又はスチレン系共重合体成分を65重量部以上含有することが有機ジルコニウム化合物との混合性の点で好ましい。
【0147】
結着樹脂を製造する方法として、溶液重合法により高分子量重合体と低分子量重合体を別々に合成した後にこれらを溶液状態で混合し、次いで脱溶剤する溶液ブレンド法、また、押出機等により溶融混練するドライブレンド法、溶液重合法等により得られた低分子量重合体を溶解した高分子量重合体を構成するモノマーに溶解し、懸濁重合を行い、水洗・乾燥し、樹脂組成物を得る二段階重合法等も挙げられる。しかしながら、ドライブレンド法では、均一な分散、相溶の点で問題があり、また、二段階重合法だと均一な分散性等に利点が多いものの、低分子量分を高分子量分以上に増量することが困難であり、低分子量重合体成分の存在下では、分子量の大きい高分子量重合体の合成が困難であるだけでなく、不必要な低分子量重合体が副生成する等の問題があることから、該溶液ブレンド法が最も好適である。また、低分子量重合体成分に所定の酸価を導入する方法としては、水系の重合法に比べて酸価の設定が容易である溶液重合が好ましい。
【0148】
結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いることが好ましく、ポリエステル樹脂の組成について以下に説明する。
【0149】
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また式(A)で表わされるビスフェノール及びその誘導体が挙げられる。
【0150】
【化57】
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0〜10である。)。
【0151】
さらに、2価のアルコール成分として式(B)で示されるジオール
【0152】
【化58】
であり、x′,y′は0以上の整数であり、かつ、x′+y′の平均値は0〜10である。)
が挙げられる。
【0153】
2価の酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などのベンゼンジカルボン酸又はその無水物、低級アルキルエステル;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸又はその無水物又はその低級アルキルエステル;n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸の如きアルケニルコハク酸もしくはアルキルコハク酸、又はその無水物又はその低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸又はその無水物又はその低級アルキルエステル等のジカルボン酸及びその誘導体が挙げられる。
【0154】
また、架橋成分としても働く3価以上のアルコール成分と3価以上の酸成分を併用することが好ましい。
【0155】
3価以上の多価アルコール成分としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等が挙げられる。
【0156】
また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル;
次式
【0157】
【化59】
(式中、Xは炭素数1以上の側鎖を1個以上有する炭素数1〜30のアルキレン基又はアルケニレン基)で表わされるテトラカルボン酸及びこれらの無水物及びそれらの低級アルキルエステルの如き多価カルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
【0158】
アルコール成分としては40〜60mol%、好ましくは45〜55mol%、酸成分としては60〜40mol%、好ましくは55〜45mol%であることが好ましい。
【0159】
また3価以上の多価の成分は、全成分中の1〜60mol%であることも好ましい。
【0160】
該ポリエステル樹脂も通常一般に知られている縮重合によって得られる。
【0161】
本発明に用いられる磁性体としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金及びその混合物が用いられ、その磁性体表面或いは内部に非鉄元素を含有するものが好ましい。
【0162】
本発明に用いられる磁性体は、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄及びその混合物が好ましく用いられる。
【0163】
中でもリチウム、ベリリウム、ボロン、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、イオウ、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、錫、鉛、亜鉛、カルシウム、バリウム、スカンジウム、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、銅、ニッケル、ガリウム、インジウム、銀、パラジウム、金、白金、タングステン、モリブデン、ニオブ、オスミウム、ストロンチウム、イットリウム、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、ビスマスから選ばれる少なくとも一つ以上の元素を含有する磁性酸化鉄であることが好ましい。特にリチウム、ベリリウム、ボロン、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛及びガリウムが好ましい。最も好ましくは、異種元素としてマグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン及びジルコニウムからなるグループから選択される元素を含む磁性酸化鉄である。これらの元素は酸化鉄結晶格子の中に取り込まれても良いし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていても良いし、表面に酸化物あるいは水酸化物として存在しても良い。また、酸化物として含有されているのが好ましい形態である。
【0164】
これらの元素は、磁性体生成時に各々の元素の塩を混在させpH調整により、粒子中に取り込むことが出来る。また、磁性体粒子生成後にpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより粒子表面に析出させることが出来る。
【0165】
これらの元素を有する磁性体は、結着樹脂に対し馴染みが良く、非常に分散性が良い。更にこの分散性のよさが、本発明で用いられる有機ジルコニウム化合物の分散性を向上することができ、本発明の有機ジルコニウム化合物の効果を十分に発揮することが出来る。磁性体が分散メディアとして働き、有機ジルコニウム化合物の分散を磁性体の分散性の良さが援助し、有機ジルコニウム化合物の分散性を向上させる。また、これらの磁性体は水分子を吸着し、有機ジルコニウム化合物が、水分子による帯電に強調を発揮しやすくする効果を持っている。この効果は酸価を有する結着樹脂と共に用いると一層効果的に発揮できる。
【0166】
またこれらの磁性体は、粒度分布が揃い、その結着樹脂中への分散性とあいまって、トナーの帯電性を安定化することが出来る。また近年はトナー粒径の小径化が進んできており、重量平均粒径2.5乃至10μmのような場合でも、帯電均一性が促進され、トナーの凝集性も軽減され、画像濃度の向上、カブリの改善等現像性が向上する。特に重量平均粒径2.5乃至6.0μmのトナーにおいてはその効果は顕著であり、極めて高精細な画像が得られる。重量平均粒径は2.5μm以上である方が十分な画像濃度が得られて好ましい。一方でトナーの小粒径化が進むとジルコニウム化合物の遊離も生じやすくなるが、本発明のトナーは帯電均一性に優れているので多少のジルコニウム化合物が存在してもスリーブ汚染の影響を受けにくくなる。磁性トナーは、重量平均粒径が好ましくは2.5乃至10μm(より好ましくは、2.5乃至6.0μm)が良い。非磁性トナーの場合でも、重量平均粒径は2.5〜10μmより好ましくは2.5乃至6.0μmが良い。
【0167】
トナーの重量平均粒径及び粒度分布はコールターカウンター法を用いて行なうが、例えばコールターマルチサイザー(コールター社製)を用いることが可能である。電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えばISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2.00μm以上のトナー粒子の体積,個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。それから本発明に係る体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D4)を算出する。
【0168】
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを用いる。
【0169】
これらの異種元素の含有率は、磁性酸化鉄の鉄元素を基準として0.05〜10重量%であることが好ましい。更に好ましくは0.1〜7重量%であり、特に好ましくは0.2〜5重量%、更には0.3〜4重量%である。0.05重量%より少ないと、これら元素の含有効果が得られなく、良好な分散性、帯電均一性が得られなくなる。10重量%より多くなると、電荷の放出が多くなり帯電不足を生じ、画像濃度が低くなったり、カブリが増加することがある。
【0170】
また、これら異種元素の含有分布において、磁性体の表面に近い方に多く存在しているものが好ましい。たとえば、酸化鉄の鉄元素の溶解率が20%のときの異種元素の溶解率が、全異種元素の存在量の20%〜100%が好ましい。さらには25%〜100%がよく、30%〜100%が特に好ましい。表面存在量を多くすることにより分散効果や電気的拡散効果を、より向上させることができる。
【0171】
これらの磁性体は個数平均粒径が0.05〜1.0μmが好ましく、さらには0.1〜0.5μmのものが好ましい。磁性体はBET比表面積は2〜40m2/g(より好ましくは、4〜20m2/g)のものが好ましく用いられる。形状には特に制限はなく、任意の形状のものが用いられる。磁気特性としては、磁場795.8kA/m下で飽和磁化が10〜200Am2/kg(より好ましくは、70〜100Am2/kg)、残留磁化が1〜100Am2/kg(より好ましくは、2〜20Am2/kg)、抗磁力が1〜30kA/m(より好ましくは、2〜15kA/m)であるものが好ましく用いられる。これらの磁性体は結着樹脂100重量部に対し、20〜200重量部で用いられる。
【0172】
磁性酸化鉄中の元素量は、蛍光X線分析装置SYSTEM3080(理学電機工業(株)社製)を使用し、JIS K0119蛍光X線分析通則に従って、蛍光X線分析を行なうことにより測定することができる。元素分布については、塩酸又はフッ酸溶解しながらの元素量をプラズマ発光分光(ICP)により測定定量し、各元素の全溶時の濃度に対する各溶解時の各元素濃度からその溶解率を求めることにより得られる。
【0173】
また、個数平均径は透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることが出来る。磁性体の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業社製)を用いて外部磁場795.8kA/mの下で測定した値である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置オートソープ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試科表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出する。
【0174】
本発明に用いられるワックスには次のようなものがある。例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;または、それらのブロック共重合物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろうの如き植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろうの如き動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラタムの如き鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部または全部を脱酸化したものが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類の如き飽和直鎖脂肪酸;ブランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコールの如き飽和アルコール;ソルビトールの如き多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
【0175】
好ましく用いられるワックスとしては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン;高分子量ポリオレフィン重合時にえられる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン;低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒の如き触媒を用いて重合したポリオレフィン;放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン;高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス;ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス;炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基の如き官能基を有する炭化水素系ワックス;炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物;これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸の如きビニルモノマーでグラフト変性したワックスが挙げられる。
【0176】
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は融液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
【0177】
本発明に使用するワックスは、定着性と耐オフセット性のバランスを取る為に融点が70〜140℃であることが好ましく、更には70〜120℃であることが好ましい。70℃未満では耐ブロッキング性が低下し、140℃を超えると耐オフセット効果が発現しにくくなる。
【0178】
本発明のトナーにおいては、これらのワックス総含有量は、結着樹脂100重量部に対し、0.2〜20重量部で用いられ、好ましくは0.5〜10重量部で用いるのが効果的である。
【0179】
本発明においてワックスの融点は、DSCにおいて測定されるワックスの吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度をもってワックスの融点とする。
【0180】
本発明においてワックス又はトナーの示差走査熱量計によるDSC測定では、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。例えば、パーキンエルマー社製のDSC−7が利用できる。
【0181】
測定方法は、ASTM D3418−82に準じて行う。本発明に用いられるDSC曲線は、1回昇温,降温させ前履歴を取った後、温度速度10℃/minで、昇温させた時に測定されるDSC曲線を用いる。
【0182】
本発明に使用する有機ジルコニウム化合物は、2種類以上の異なるワックスと用いると、更に優れた効果が得られる。ワックスには、トナーに対して、可塑化作用と離型作用を発揮し、同時に用いるとどちらかの作用が強調されるようになる。有機ジルコニウム化合物が存在すると、これらの効果が際だって現れるようになり、それぞれのワックスを単独に用いたときよりもその作用が効果的に働くようになる。ワックスにより可塑化されると、有機ジルコニウム化合物の分散が良くなり、それにつれてもう一つのワックスの離型性がより鮮明に現れるようになる。この時、酸価を有する結着樹脂と共に用いるとなお一層効果的である。
【0183】
2種のワックスを選択する条件として、同様構造のワックスの場合は、相対的に、融点の低いワックスが可塑化作用を発揮し、融点の高いワックスが離型作用を発揮する。この時、融点の差が10℃〜100℃の場合に、機能分離が効果的に発現する。10℃未満では機能分離効果が表れにくく、100℃を超える場合には相互作用による機能の強調が行われにくい。
【0184】
この場合、少なくとも一方のワックスの融点が好ましくは70〜120℃(更には好ましくは70〜100℃)であることが、機能分離効果を発揮しやすくなるので良い。
【0185】
また、相対的に、枝別れ構造のものや官能基の如き極性基を有するものや主成分とは異なる成分で変成されたものが可塑作用を発揮し、より直鎖構造のものや官能基を有さない無極性のものや未変成のストレートなものが離型作用を発揮する。好ましい組み合わせとしては、エチレンを主成分とするポリエチレンホモポリマー又はコポリマーとエチレン以外のオレフィンを主成分とするポリオレフィンホモポリマー又はコポリマーの組み合わせ;ポリオレフィンとグラフト変成ポリオレフィンの組み合わせ;アルコールワックス,脂肪酸ワックス又はエステルワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせ;フイシャートロプシュワックス又はポリオレフィンワックスとパラフィンワックス又はマイクロクリスタリンワックスの組み合わせ;フイッシャートロプシュワックスとポリオレフィンワックスの組み合わせ;パラフィンワックスとマイクロクリスタリンワックスの組み合わせ;カルナバワックス,キャンデリラワックス,ライスワックス又はモンタンワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせが挙げられる。
【0186】
いずれの場合においてもトナーのDSC測定において観測される吸熱ピークにおいて70〜120℃の領域に最大ピークのピークトップ温度があることが好ましく、更には好ましくは70〜110℃の領域に最大ピークを有しているのが良い。このことにより、トナーの保存性と定着性のバランスをとりやすくなる。
【0187】
本発明のトナーに使用できる着色剤としては、任意の適当な顔料又は染料が挙げられる。例えば顔料として、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等がある。これらは定着画像の光学濃度を維持するために必要な量が用いられ、結着樹脂100重量部に対し0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜10重量部の添加量が良い。また、同様の目的で、更に染料が用いられる。例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、メチン系染料があり、結着樹脂100重量部に対し0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜10重量部の添加量が良い。
【0188】
本発明においては、シリカ、アルミナ、酸化チタンの如き無機酸化物や、カーボンブラック、フッ化カーボンの如き粒径の細かい粒子の無機微粉体をトナー粒子に外添することが好ましい。
【0189】
シリカ微粉体、アルミナ微粉体又は酸化チタン微粉体は、トナー粒子表面に分散させた時に細かい粒子となる方が流動性付与性が高くなるので好ましい。個数平均粒径としては5〜100nmになるものが良く、さらに好ましくは5〜50nmが良い。BET法で測定した窒素吸着による比表面積では30m2/g以上(特に60〜400m2/g)の範囲のものが母体微粉体として好ましく、表面処理された微粉体としては、20m2/g以上(特に40〜300m2/g)の範囲のものが好ましい。
【0190】
これらの微粉体の適用量は、トナー粒子100重量部に対して、0.03〜5重量部添加した時に適切な表面被覆率になる。
【0191】
本発明に用いる無機微粉体の疎水化度としては、メタノールウエッタビリティーで30%以上の値を示すのが好ましく、更に好ましくは50%以上である。疎水化処理剤としては、含ケイ素表面処理剤であるシラン化合物とシリコーンオイルが好ましい。
【0192】
例えば、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ブチルトリメトキシシランの如きアルキルアルコキシシラン;ジメチルジクロルシラン、トリメチルクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、ヘキサメチルジシラザン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジビニルクロルシラン、ジメチルビニルクロルシランの如きシランカップリング剤を用いることができる。
【0193】
本発明のトナーは、キャリアと混合して二成分現像剤として使用しても良い。キャリアの抵抗値は、キャリア表面の凹凸度合い、被覆する樹脂の量を調整して106〜1010Ω・cmにするのが良い。
【0194】
キャリア表面を被覆する樹脂としては、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、シリコーン樹脂、フッ素含有樹脂、ポリアミド樹脂、アイオノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂或いは、これらの混合物を用いることができる。
【0195】
キャリアコアの磁性材料としては、フェライト、鉄過剰型フェライト、マグネタイト、γ−酸化鉄等の酸化物や、鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらの合金を用いることができる。また、これらの磁性材料に含まれる元素としては、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムが挙げられる。
【0196】
本発明で用いられる各種特性付与を目的とした添加剤としては、例えば、以下のようなものが用いられる。
【0197】
(1)研磨剤:金属酸化物(チタン酸ストロンチウム,酸化セリウム,酸化アルミニウム,酸化マグネシウム,酸化クロムなど)、窒化物(窒化ケイ素など)・炭化物(炭化ケイ素など)、金属塩(硫酸カルシウム,硫酸バリウム,炭酸カルシウム)など。
【0198】
(2)滑剤:フッ素系樹脂粉末(ポリフッ化ビニリデン,ポリテトラフルオロエチレンなど)、脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸カルシウムなど)など。
【0199】
(3)荷電制御性粒子:金属酸化物(酸化錫,酸化チタン,酸化亜鉛,酸化ケイ素,酸化アルミニウムなど)、カーボンブラック、樹脂微粒子など。
【0200】
これら添加剤は、トナー粒子100重量部に対し、0.05〜10重量部が用いられ、好ましくは、0.1〜5重量部が用いられる。これら添加剤は、単独で用いても、また、複数併用しても良い。
【0201】
磁性トナーの場合は、2種以上の無機酸化物あるいは金属酸化物の微粉体を用いることが現像の耐久安定性、放置後の現像安定性を得る上で好ましい。非磁性一成分現像方法の場合は、酸化チタン又はアルミナを用いることが流動性向上、画像均一性を得る為に好ましい。
【0202】
本発明のトナーを製造する方法としては、上述したようなトナー構成材料をボールミルその他の混合機により十分混合した後、熱ロールニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて良く混練し、冷却固化後、機械的に粉砕し、粉砕粉を分級することによってトナーを得る方法が好ましい。他には、結着樹脂を構成すべき単量体に所定の材料を混合して乳化懸濁液とした後に、重合させてトナーを得る重合法トナー製造法;コア材及びシェル材から成るいわゆるマイクロカプセルトナーにおいて、コア材あるいはシェル材、あるいはこれらの両方に所定の材料を含有させる方法;結着樹脂溶液中に構成材料を分散した後、噴霧乾燥することによりトナーを得る方法が挙げられる。さらに必要に応じ所望の添加剤とトナー粒子とをヘンシェルミキサーの如き混合機により十分に混合し、本発明のトナーを製造することができる。
【0203】
次に本発明のトナーが好ましく用いられる現像方法について説明する。
【0204】
図1において、公知のプロセスにより形成された静電荷像を担持する像保持体、例えば電子写真感光ドラム7は、矢印B方向に回転される。現像剤担持体としての現像スリーブ14は、ホッパー9から供給された一成分現像剤としてのトナー10を担持して、矢印A方法に回転することにより、現像スリーブ14と感光ドラム7とが対向した現像部Dにトナー10を搬送する。現像スリーブ14内には、トナー10が磁性トナーである場合には、現像スリーブ14上に磁気的に吸引及び保持するために、磁石11が配置されている。トナー10は現像スリーブ14との摩擦により、感光ドラム7上の静電荷像を現像可能な摩擦帯電電荷を得る。
【0205】
現像部Dに搬送されるトナー10の層厚を規制するために、磁性トナーである場合には強磁性金属からなる規制磁性ブレード8が、現像スリーブ14の表面から約200〜300μmのギャップ幅を持って現像スリーブ14に臨むように、ホッパー9から垂下されている。磁石11の磁極N1からの磁力線がブレード8に集中することにより、現像スリーブ14上にトナー10の薄層が形成される。ブレード8としては非磁性ブレードを使用することもできる。また、トナー10が非磁性トナーである場合には、ウレタンゴム、シリコーンゴム、チップブレードなどの弾性ブレードが用いられる。
【0206】
現像スリーブ14上に形成されるトナー10の薄層の厚みは、現像部Dにおける現像スリーブ14と感光ドラム7との間の最小間隙よりも更に薄いものであることが好ましい。このようなトナー薄層により静電荷像を現像する方式の現像装置(即ち非接触型現像装置)に、本発明の現像方法は特に有効である。しかし、現像部において、トナー層の厚みが現像スリーブ14と感光ドラム7との間の最小間隙以上の厚みである現像装置(即ち接触型現像装置)にも、本発明の現像方法は適用することができる。
【0207】
以下、非接触型現像装置の例を説明する。
【0208】
上記現像スリーブ14には、これに担持された一成分現像剤であるトナー10を飛翔させるために、電源15により現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときは、静電荷像の画像部(トナー10が付着して可視化される領域)の電位と背景部の電位との間の値の電圧が、現像スリーブ14に印加されることが好ましい。一方、現像画像の濃度を高め或は階調性を向上するために、現像スリーブ14に交番バイアス電圧を印加して、現像部Dに向きが交互に反転する振動電界を形成してもよい。この場合、上記画像部の電位と背景部の電位の間の値を有する直流電圧成分が重畳された交番バイアス電圧を現像スリーブ14に印加することが好ましい。
【0209】
また、高電位部と低電位部を有する静電荷像の高電位部にトナーを付着させて可視化する、いわゆる正規現像では、静電荷像の極性と逆極性に帯電するトナーを使用し、一方、静電荷像の低電位部にトナーを付着させて可視化する、反転現像では、トナーは静電荷像の極性と同極性に帯電するトナーを使用する。高電位と低電位というのは、絶対値による表現である。いずれにしても、トナー10は現像スリーブ14との摩擦により静電荷像を現像するための極性に帯電する。
【0210】
図2の現像装置では、現像スリーブ14上のトナー10の層厚を規制する部材として、ウレタンゴム,シリコーンゴムの如きゴム弾性を有する材料、或はリン青銅,ステンレス鋼の如き金属弾性を有する材料で形成された弾性板17を使用し、この弾性板17を現像スリーブ14に圧接させていることが特徴である。このような現像装置では、現像スリーブ8上に更に薄いトナー層を形成することができる。図2の現像装置のその他の構成は、図1に示した現像装置と基本的に同じで、図2において図1に付した符号と同一の符号は同一の部材を示す。
【0211】
上記のようにして現像スリーブ14上にトナー層を形成する図2に示すような現像装置は、弾性板17によりトナーを現像スリーブ14上に擦りつけるため、トナーの摩擦帯電量も多くなり、画像濃度の向上が図られる。また、非磁性一成分トナーにおいては、このような現像装置が用いられる。
【0212】
本発明に用いられる現像剤担持体であるスリーブは、円筒状基体と、該基体表面を被覆する被膜層(樹脂層)を有することも好ましい。その構成は図3に示したようなものである。該樹脂層1は、結着樹脂4、場合によっては導電性物質2、充填剤3、固体潤滑剤5等を含有し、円筒状基体6上に被覆されている。導電性物質2が含有されている場合、樹脂層1は導電性なのでトナーの過剰帯電が防止できる。また充填剤3が含有されている場合には、トナーによる該樹脂層1の摩耗を防ぎ、更に充填剤3の帯電付与性により、トナーの帯電も好適にコントロールできる。また、固体潤滑剤5が含有される場合には、トナーとスリーブとの離型性が向上され、その結果トナーのスリーブ上への融着が防止できる。
【0213】
本発明のスリーブにおいて、樹脂層に導電性物質を含有させる場合、該樹脂層の体積抵抗が106Ω・cm以下、好ましくは103Ω・cm以下であるものがよい。樹脂層の体積抵抗が106Ω・cmを超える場合には、トナーのチャージアップが発生しやすくなり、ブロッチの発生や現像特性の劣化を引き起こすことがある。
【0214】
また、該樹脂層の表面粗さは、JIS中心線平均粗さ(Ra)で0.2〜3.5μmの範囲にあることが好ましい。Raが0.2μm未満ではスリーブ近傍のトナーの帯電量が高くなりすぎ、鏡映力によりトナーがスリーブ上に引きつけられ、新たなトナーがスリーブから帯電付与を受けられず、現像性が低下する。Raが3.5μmを超えると、スリーブ上のトナーコート量が増加しすぎてトナーが十分な帯電量を得られず、かつ不均一な帯電となり、画像濃度の低下や濃度ムラの原因となる。
【0215】
次に該樹脂層1を構成する各材料について説明する。
【0216】
図3において導電性物質2としては、例えばアルミニウム、銅、ニッケル、銀の如き金属粉体;酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズの如き金属酸化物;カーボンファイバー、カーボンブラック、グラファイトの如き炭素同素体が挙げられる。このうちカーボンブラックは特に電気伝導性に優れ、高分子材料に充填して導電性を付与したり、添加量のコントロールで、ある程度任意の導電度を得ることができるために好適に用いられる。本発明に使用するカーボンブラックの個数平均粒径は0.001〜1.0μm、好ましくは0.01μm〜0.8μmのものが良い。カーボンブラックの個数平均粒径が1μmを超える場合には、樹脂層の体積抵抗を制御しづらくなり好ましくない。
【0217】
導電性物質の使用量としては、結着樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜300重量部であり、より好ましくは1〜100重量部である。
【0218】
充填剤3としては、従来より公知のトナー用ネガ帯電性荷電制御剤、あるいはポジ帯電性荷電制御剤を添加しても良い。このほかの物質として、例えばアルミナ、アスベスト、ガラス繊維、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、シリカ、ケイ酸カルシウムの如き無機化合物;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、PMMA、メタクリレートのターポリマー(例えばポリスチレン/n−ブチルメタクリレート/シランターポリマー)、スチレン−ブタジエン系共重合体、ポリカプロラクトン;ポリカプロラクタム、ポリビニルピリジン、ポリアミドの如き含窒素化合物;ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラクロロフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシル化エチレン、ポリテトラフルオロアルコキシエチレン、フッ素化エチレンプロピレン−ポリテトラフルオロエチレン共重合体、トリフルオロクロロエチレン−塩化ビニル共重合体といった高度にハロゲン化された重合体;ポリカーボネート、ポリエステルが挙げられる。このうちシリカ及びアルミナが、それ自身の硬さ及びトナーに対する帯電制御性を有するので好ましく用いられる。
【0219】
充填剤の使用量としては、結着樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜500重量部、より好ましくは1〜200重量部である。
【0220】
固体潤滑剤5としては、例えば二硫化モリブデン、窒化硼素、グラファイト、フッ化グラファイト、銀−セレン化ニオブ、塩化カルシウム−グラファイト、滑石が挙げられる。このうちグラファイトは潤滑性と共に導電性を有し、高すぎる電荷を有するトナーを減少させ、現像に好適な帯電量を持たせる働きがあることから好適に用いられる。
【0221】
固体潤滑剤の使用量としては、結着樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜300重量部であり、より好ましくは1〜150重量部である。
【0222】
場合によっては、該導電性物質2、該充填剤3や固体潤滑剤5が分散される結着樹脂4としては、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂の如き樹脂が用いられる。特に熱硬化性もしくは光硬化性の樹脂が好ましい。
【0223】
また本発明におけるスリーブ表面の樹脂層中の導電性物質、或いは充填剤や固体潤滑剤を表面に好適に露出させるために、または、表面を平滑化処理して均一な凹凸表面を作るために、後述の磨き加工等の手段により表面を平滑化処理することにより、さらに好ましい性能を付与することが可能である。特に、ベタ黒やハーフトーン画像に発生する縦スジ現象や初期の画像濃度の立上がりに効果があり、特に高温高湿下での効果が大きい。フェルトや砥粒の付着した帯状研磨材での磨き加工を施すことで、スリーブの表面凹凸を均一に仕上げることができるので、スリーブ上のトナーコート量が均一化し、その結果スリーブとの摩擦帯電を受けたトナーのみが現像領域に搬送されるようになる。従って、上記効果が得られるものと考えられる。
【0224】
上記のように平滑化処理を施した後も、コート層表面はJIS B 0601におけるRaで0.2〜3.5μmの範囲の凹凸を保持していることが好ましく、より好ましくは0.3〜2.5μm程度である。理由は前記と同様である。
【0225】
円筒基体6としては、非磁性金属円筒管、樹脂円筒が好ましく用いられ、例えば、ステンレス円筒管、アルミニウム円筒管、銅合金円筒管等の非磁性の円筒管が用いられる。円筒管を作製する方法としては、引き抜き法や押し出し法があり、更に円筒管自体の寸法精度を上げる場合には、切削や研磨を施して所定の寸法精度とする。円筒管の真直度は30μm以下であることが好ましく、さらには20μm以下が好ましく良好な画像が得られる。また必要に応じて適度な凹凸を表面に付与するためにサンドブラストや研磨により粗面を形成してもよい。ブラストに用いられる砥粒は定形粒子でも不定形粒子でも構わない。
【0226】
次に、本発明の現像方法を適用し得る画像形成方法を、図4に概略的に示す接触帯電手段及び接触転写手段を有する画像形成装置を参照しながら説明する。本発明の現像方法は、コロナ帯電方式及び/又はコロナ転写方式を使用する画像形成方法にも適用できる。
【0227】
光導電層801a及び導電性基層801bを有する回転ドラム型の感光体801は、図面上時計の針の回転方向に所定の周速(プロセススピード)で回転される。導電性弾性層802a及び芯金802bを有している帯電ローラ802は、帯電バイアス電源803によりバイアスが印加されている。帯電ローラ802は、感光体801に押圧力により圧接されており、感光体801の回転に伴い従動回転する。
【0228】
帯電ローラ802にバイアスV2が印加されることで感光体801の表面が所定の極性・電位に帯電される。次いで画像露光804によって静電荷像が形成され、現像手段805によりトナー画像として順次可視化されていく。
【0229】
現像手段805を構成する現像スリーブには、現像バイアス印加手段813よりバイアスV1が印加される。現像により潜像保持体上に形成されたトナー像は、転写バイアス電源807により転写バイアスV3が印加された転写材808を感光体801に押圧する当接転写手段としての転写ローラー806(導電性弾性層806a,芯金806b)により転写材808に静電転写され、転写材上のトナー像は、加熱ローラ811a及び加圧ローラ811bを有する加熱加圧手段811により加熱加圧定着される。トナー画像転写後の感光体801面では転写残りトナーの如き付着汚染物質を、感光体801にカウンター方向に圧接した弾性クリーニングブレードを具備したクリーニング装置809で清浄面化され、更に除電露光装置810により除電されて、繰り返して作像される。
【0230】
一次帯電手段としては、以上のごとく接触帯電手段として帯電ローラー802を用いて説明したが、帯電ブレード、帯電ブラシの如き接触帯電手段でもよく、更に、非接触のコロナ帯電手段でもよい。接触帯電手段の方が帯電工程におけるオゾンの発生が少ない。転写手段としては、以上のごとく転写ローラー806を用いて説明したが転写ブレード又は転写ベルトの如き接触帯電手段でもよく、更に非接触のコロナ転写手段でもよい。当接転写手段の方が転写工程におけるオゾンの発生が少ない。
【0231】
【実施例】
以下、実施例をもって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0232】
実施例に用いられる樹脂を表1に、ワックスを表2に、磁性体を表3に記す。スチレン系樹脂は溶液重合法により合成し、ポリエステル樹脂は脱水縮合法により合成した。磁性体はマグネタイト生成時に内部に存在する元素の塩を添加しpHを調整しながら、マグネタイト粒子を生成させ、磁性体1〜5を得た。磁性体1は珪酸塩を、磁性体2は珪酸塩とアルミニウム塩を、磁性体3は燐酸塩を、磁性体4はマグネシウム塩を添加してマグネタイト粒子を製造した。磁性体5は亜鉛塩を添加して、マグネタイト粒子の核を生成させた後、珪酸塩を添加しpHを調整して、磁性体を得た。磁性体6は燐酸塩を添加して、マグネタイト粒子の核を生成させた後、珪酸塩を添加しpHを調整して、磁性体を得た。特に塩を添加せずにマグネタイト粒子を生成させ、磁性体8を得た。磁性体8生成後、ジルコニウム塩を添加してpH調整しマグネタイト粒子表面に、ジルコニアを析出させて磁性体7を得た。
【0233】
【表1】
【0234】
【表2】
【0235】
【表3】
【0236】
実施例1
結着樹脂D 100重量部
着色剤〔磁性体(α)〕 90重量部
有機ジルコニウム化合物(38) 2重量部
ワックス(a)(融点90℃) 2重量部
ワックス(c)(融点135℃) 4重量部
【0237】
上記材料をヘンシェルミキサーで前混合した後、130℃に設定した二軸混練押し出し機によって、溶融混練した。溶融混練時に徐々に混練物の粘度が上昇したことから、新たな架橋が形成されたことが確認された。
【0238】
得られた混練物を冷却し、カッターミルで粗粉砕した後、ジェット気流を用いた微粉砕機で粉砕し、得られた微粉砕粉末をコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径7.5μmの磁性トナーを得た。磁性トナー100重量部に対し、シリカ微粉体100重量部に対してヘキサメチルジシラザン20重量部で疎水化処理したメタノールウエッタビリティ65%,BET比表面積260m2/gの疎水性シリカ微粉体を1.0重量部とチタン酸ストロンチウム微粉体3.0重量部とを外添混合して磁性トナーNo.1を調製した。磁性トナーNo.1は重量平均粒径が7.5μmであった。磁性トナーNo.1の物性を表5に示す。
【0239】
磁性トナーNo.1を、市販のコロナ帯電手段を有する電子写真複写機(NP−6085,キヤノン社製)の改造機(フェノール樹脂:グラファイト=3:1の樹脂層を現像スリーブの基体上に有する現像スリーブ装着)を用いて、温度23℃,湿度5%RHの環境に引き続き30℃,80%RHの環境で各々50,000枚、計100,000枚の複写試験を行った。この際、定着ローラーのクリーニングウエッブを取り除き複写試験を行った。現像スリーブ上のトナーはマイナスの摩擦電荷を有していた。その結果、両環境で画像濃度が高くカブリのない高精細な画像が得られた。結果を表6及び7に記す。別途、常温常湿環境下において、5万枚の耐久試験をおこなった。結果を表8に示す。
【0240】
画像濃度は、マクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して、反射濃度を測定を行い、直径5mmの円形画像を測定した。カブリは、反射濃度計(リフレクトメーターモデル TC−6DS 東京電色社製)を用いて行い、画像形成後の白地部反射濃度最悪値をDs、画像形成前の転写材の反射平均濃度をDrとし、Ds−Drをカブリ量としてカブリの評価を行った。数値の少ない方がカブリ抑制が良い。画質の評価としては、画像比率が5〜100%の5%毎の20階調の網点画像を複写し、何階調表現できるかで評価した。階調数が多いほど高精細に複写できたことになる。定着部材の汚れは、次に基準で評価した。
A:定着部材に汚れ無し
B:定着部材に少し汚れあり
C:定着部材が汚れているが、画像には影響なし
D:定着部材が汚れ、画像にもオフセットが発生
【0241】
高温高湿(30℃,80%RH)下での耐久では、5万枚耐久終了後この環境に3日間放置したのち画像を出し、画像濃度を測定した。
【0242】
常温低湿(23℃,5%RH)下での耐久では、ワイヤー汚れによる画像欠陥がないか調査し、次の基準で評価した。
A:画像欠陥なし
B:ハーフトーン画像で欠陥が認められる
C:ベタ画像で欠陥が認められる
D:通常画像でも欠陥が認められる
【0243】
実施例2〜14
表4に記載の処方で実施例1と同様にして磁性トナーNo.2〜14を作製し、同様の試験をした。各磁性トナーの物性を表5に示し、評価結果を表6,7及び8に記す。
【0244】
比較例1〜4
有機ジルコニウム化合物(38)のかわりに、下記有機亜鉛化合物(172),有機化合物(173),有機アルミニウム化合物(174)又は有機クロム化合物(175)を使用することを除いて実施例1と同様にして磁性トナーNo.15〜18を調製し、実施例1と同様にして評価した。各磁性トナーの処方及び物性を表4及び5に示し、評価結果を表6,7及び8に示す。
【0245】
有機金属化合物(172)乃至(175)は、配位している水分子を省略して記載した。
【0246】
【化60】
【0247】
比較例5〜8
有機ジルコニウム化合物(88)のかわりに、上記有機亜鉛化合物(172),有機鉄化合物(173),有機アルミニウム化合物(174)又は有機クロム化合物(175)を使用することを除いて実施例8と同様にして磁性トナーNo.19〜22を調製し、実施例8と同様にして評価した。各磁性トナーの処方及び物性を表4及び5に示し、評価結果を表6,7及び8に示す。
【0248】
【表4】
【0249】
【表5】
【0250】
【表6】
【0251】
【表7】
【0252】
【表8】
【0253】
実施例1〜14及び比較例1〜8の定着温度領域は、下記評価方法で測定した。
【0254】
<定着温度領域評価試験>
市販の複写機NP6085(キヤノン(株)社製)の定着器を外部へ取り外し、複写機外でも動作し、定着温度を任意に設定可能にし、プロセススピードを500mm/secとなるように改造した外部定着器を用い、80g/m2紙を用いた未定着画像を通紙することにより定着性を評価した。150〜200℃の温度範囲で5℃おきに温調して、各々の温度で未定着画像の定着を行い、得られた画像を4.9kPaの加重をかけたシルボン紙で往復5回摺擦し、摺擦前後の画像濃度低下率が10%以下になる点を定着開始温度とした。この温度が低いほど定着性に優れている。
【0255】
また上記定着器をプロセススピードを100mm/secとなるようにした外部定着器を用い、60g/m2紙を用いた未定着画像を通紙することにより耐オフセット性を評価した。評価に際して、190〜240℃の温度範囲で5℃おきに温調して、オフセットの様子を観察し、オフセットの発生しない最高温度をもって評価した。この温度が高いほど耐オフセット性に優れている。(評価環境:常温/常湿(23℃,60%RH))
【0256】
これらの非オフセット最高温度と定着開始温度の差を定着温度領域とした。この温度領域が広いほど定着性能の高いトナーである。評価試験では、定着温度領域最低温度の設定条件と定着温度領域最高温度の測定条件が異なりより厳しい設定になっているので、実製品上では更に広い定着温度領域を持つことになる。
【0257】
実施例15
結着樹脂C 100重量部
着色剤〔磁性体(α)〕 100重量部
有機ジルコニウム化合物(39) 2重量部
ワックス(b)(融点130℃) 2重量部
ワックス(d)(融点115℃) 4重量部
【0258】
上記材料をヘンシェルミキサーで前混合した後、130℃に設定した二軸混練押し出し機によって、溶融混練した。溶融混練時に混練物の粘度が徐々に上昇したことが確認された。
【0259】
得られた混練物を冷却し、カッターミルで粗粉砕した後、ジェット気流を用いた微粉砕機で粉砕し、得られた微粉砕粉末をコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径6.5μmの磁性トナーを得た。磁性トナー100重量部に対し、シリカ微粉体100重量部に対しヘキサメチルジシラザン10重量部とジメチルシリコーン10重量部で疎水化処理したメタノールウエッタビリティ80%,BET比表面積120m2/gの疎水性シリカ微粉体1.2重量部を外添混合して磁性トナーNo.23を調製した。磁性トナーNo.23は重量平均粒径が6.5μmであった。磁性トナーの物性を表10に示す。
【0260】
磁性トナーNo.23を、市販の帯電ローラを使用する接触帯電方式のLBPプリンター(LBP−430,キヤノン社製)を用いて、23℃,5%RHの環境と30℃,80%RHの各環境下でおのおの4,000枚のプリント試験を行った。現像スリーブ上のトナーはマイナスの摩擦電荷を有していた。その結果、両環境で画像濃度が高くカブリのない高精細な画像が得られた。評価結果を表11及び12に示す。さらに、常温常湿環境下での4000枚の耐久試験をおこなった。評価結果を表13に示す。
【0261】
画質は、孤立ドット(約70μm×約80μmの大きさのドット)を100個画像形成し、確実にドットを現像しているドット数を計測し、100個のうち何ドット(ドット面積の約60%以上にトナーがのっているドットの数)あるかによって評価した。このドット画像をA4サイズ縦送りで手前,中央及び奥の3ケ所に設け、各像でドット数を計測し、その平均値を求めた。このドット数の多い方が高画質といえるものである。
【0262】
30℃,80%RH下での耐久では、4000枚耐久終了後この環境に3日間放置したのち画像を出し、画像濃度を測定した。
【0263】
23℃,5%RH下での耐久では、飛散による画像裏汚れがないか調査し、次の基準で評価した。
A:裏汚れなし
B:まれに、わずかな汚れがみられる
C:時々、わずかな汚れがある
D:汚れの程度の多いものがある
【0264】
実施例16〜25
表9に記載の処方で実施例15と同様にトナーNo.24〜33を作製し、同様の試験をした。結果を表11,12及び13に記す。
【0265】
比較例9〜12
有機ジルコニウム化合物(39)のかわりに、前記有機亜鉛化合物(172),有機鉄化合物(173),有機アルミニウム化合物(174)又は有機クロム化合物(175)を使用することを除いて実施例15と同様にして磁性トナーNo.34〜37を調製し、実施例15と同様にして評価した。各磁性トナーの処方及び物性を表9及び10に示し、評価結果を表11,12及び13に示す。
【0266】
比較例13〜16
有機ジルコニウム化合物(51)のかわりに、前記有機亜鉛化合物(172),有機鉄化合物(173),有機アルミニウム化合物(174)又は有機クロム化合物(175)を使用することを除いて実施例22と同様にして磁性トナーNo.38〜41を調製し、実施例22と同様にして評価した。各磁性トナーの処方及び物性を表9及び10に示し、評価結果を表11,12及び13に示す。
【0267】
比較例17〜21
有機ジルコニウム化合物(74)のかわりに、前記有機亜鉛化合物(172),有機鉄化合物(173),有機アルミニウム化合物(174)又は有機クロム化合物(175)を使用することを除いて実施例23と同様にして磁性トナーNo.42〜45を調製し、実施例23と同様にして評価した。各磁性トナーの処方及び物性を表9及び10に示し、評価結果を表11,12及び13に示す。
【0268】
【表9】
【0269】
【表10】
【0270】
【表11】
【0271】
【表12】
【0272】
【表13】
【0273】
実施例15〜25及び比較例9〜20の定着温度領域は、下記評価方法で測定した。
【0274】
<定着温度領域評価試験>
市販のLBPプリンターLBP−430(キヤノン(株)社製,プロセススピード:50.4mm/sec)の定着器を外部へ取り外し、プリンター外でも動作し、定着温度を任意に設定可能にし、定着スピードを50.0mm/secとなるように改造した外部定着器を用い、80g/m2紙を用いた未定着画像を通紙することにより定着性を評価した。120〜200℃の温度範囲で5℃おきに温調して、各々の温度で未定着画像の定着を行い、得られた画像を4.9kPaの加重をかけたシルボン紙で往復5回摺擦し、摺擦前後の画像濃度低下率が10%以下になる点を定着開始温度とした。この温度が低いほど定着性に優れている。
【0275】
またオフセットの様子を観察し、オフセットの発生しない最高温度をもって評価した。この温度が高いほど耐オフセット性に優れている。(評価環境:常温/常湿(23℃,60%RH))
【0276】
これらの非オフセット最高温度と定着開始温度の差を定着温度領域とした。この温度領域が広いほど定着性能の高いトナーである。
【0277】
実施例26
結着樹脂H 100重量部
着色剤(銅フタロシアニン) 4重量部
有機ジルコニウム化合物(40) 2重量部
【0278】
上記材料をヘンシェルミキサーで予備混合した後、100℃に設定した二軸混練押し出し機にて混練した。溶融混練時に混練物の粘度が徐々に上昇するのが確認された。
【0279】
得られた混練物を冷却し、カッターミルで粗粉砕した後、ジェット気流を用いた粉砕機を用いて微粉砕し、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径8.5μmの非磁性のシアントナーを得た。得られたシアントナー100重量部に、硫酸法で製造されたアナターゼ型チタニア微粉体100重量部にイソブチルトリメトキシシラン10重量部とジメチルシリコーン10重量部で処理した疎水性チタニア微粉体(メタノールウエッタビリティ65%、BET比表面積75m2/g)1.5重量部を外添混合してシアントナーNo.1を調製した。シアントナーNo.1は重量平均粒径が8.5μmであった。シアントナーNo.1の物性を表14に示す。
【0280】
得られたシアントナーNo.1について、次に示す各評価試験を行った。
【0281】
<画像評価試験>
帯電ローラを使用する接触帯電方式の市販のカラープリンター(LBP−2030,キヤノン社製)を下記の如く改造したものを用い、低温低湿下(温度15℃,湿度10%RH)および高温高湿下(温度30℃,湿度80%RH)の各環境下においてそれぞれ3000枚プリントを行い、画像濃度、カブリを評価した。現像スリーブ上のトナーはマイナスの摩擦電荷を有していた。さらに、常温常湿環境下でも3000枚の耐久試験をおこなった。
【0282】
現像スリーブとしては、外径16mm,肉厚0.8mmのアルミニウム円筒管の表面を研磨加工して、円筒管の振れが10μm以下、表面粗さがRz表記で4μm以下にして用いた。このスリーブを垂直に立てて、一定速度で回転させるとともに上下端部にマスキングを施し、スプレーガンを一定速度で下降させながら塗料(フェノール樹脂中間体125重量部、カーボンブラック5重量部、結晶性グラファイト45重量部、メタノール41重量部、イソプロピルアルコール284重量部)を塗布した。スリーブ両端のマスキング幅は3mmに設定した。これを乾燥炉にて160℃で20分間乾燥硬化させた後、導電性樹脂コートスリーブ表面に、帯状のフェルトを39.2N(4kgf)の押しあて荷重をもって摺擦させ表面磨き加工を行い、膜厚の均一な導電性樹脂層コートスリーブを得た。
【0283】
この導電性樹脂層の膜厚は10μm、表面粗さRaは6点平均で0.87μmであり、更に鉛筆硬度を測定したところ、2Hであった。このスリーブに両端にフランジを取り付けて現像スリーブとした。
【0284】
画像濃度は、「マクベス反射濃度計」(マクベス社製)を用いて測定した。カブリは、「反射濃度計」(東京電色技術センター社製)を用いて、転写紙の反射濃度と、ベタ白をコピーした後の転写紙の反射濃度とを測定し、その差分をカブリ値とし、その値が小さい方がカブリ抑制が良い。カブリの測定は、画像形成前の転写材、及び画像形成後の白地部について、反射濃度計(リフレクトメーターモデル TC−6DS 東京電色社製)を用いて反射濃度を測定し、平均値を求める。画像形成前後での反射濃度の差をカブリの評価とする。
【0285】
画質は、孤立ドットを100個画像形成し100個のうち何ドット表すことできたかによって評価する。ドット再現数が多い方が高画質といえるものである。
【0286】
画質は、孤立ドット(約70μm×約80μmの大きさのドット)を100個画像形成し、確実にドットを現像しているドット数を計測し、100個のうち何ドット(ドット面積の約60%以上にトナーがのっているドットの数)あるかによって評価した。このドット画像をA4サイズ縦送りで手前,中央及び奥の3ケ所にそれぞれ設け、各像でドット数を計測し、その平均値を求めた。このドット数の多い方が高画質といえるものである。
【0287】
30℃,80%RH下での耐久では、3000枚耐久終了後この環境に3日間放置したのち画像を出し、画像濃度を測定した。
【0288】
また飛散による画像裏汚れがないか調査し、次の基準で評価した。
A:裏汚れなし
B:まれに、わずかな汚れがみられる
C:時々、わずかな汚れがある
D:汚れの程度の多いものがある
【0289】
23℃,5%RH下の耐久では、ハーフトーン部に画像濃度ムラないか調査し、次の基準で評価した。
A:発生なし
B:まれにわずかに発生する
C:時々わずかに発生する
D:ムラ発生時に発生面積が広範囲に及ぶ
【0290】
評価結果を表15,16及び17に示す。
【0291】
比較例21〜23
有機ジルコニウム化合物(40)のかわりに、前記有機亜鉛化合物(172),有機鉄化合物(173)又は有機アルミニウム化合物(174)を使用することを除いて実施例26と同様にしてシアントナーNo.2〜4を調製し、実施例26と同様にして評価した。各シアントナーの処方及び物性を表14に示し、評価結果を表15,16及び17に示す。有機クロム化合物(175)は、濃い紫色であり、シアントナーに使用する荷電制御剤としては不適当であった。
【0292】
【表14】
【0293】
【表15】
【0294】
【表16】
【0295】
【表17】
【0296】
上記実施例26及び比較例21〜23並びに後述する実施例27乃至29及び比較例24乃至34の定着温度領域は、下記評価方法で測定した。
【0297】
<定着温度領域評価試験>
市販の複写機CLC−800(キヤノン(株)社製)の定着器を外部へ取り外し、複写機外でも動作し、定着温度を任意に設定可能にし、プロセススピードを100mm/secとなるように改造した外部定着器を用い、80g/m2紙を用いた未定着画像を通紙することにより定着性を評価した。120〜200℃の温度範囲で5℃おきに温調して、各々の温度で未定着画像の定着を行い、得られた画像を4.9kPaの加重をかけたシルボン紙で往復5回摺擦し、摺擦前後の画像濃度低下率が10%以下になる点を定着開始温度とした。この温度が低いほど定着性に優れている。
【0298】
またオフセットの様子を観察し、オフセットの発生しない最高温度をもって評価した。この温度が高いほど耐オフセット性に優れている。(評価環境:常温/常湿(23℃,60%RH))
【0299】
これらの非オフセット最高温度と定着開始温度の差を定着温度領域とした。この温度領域が広いほど定着性能の高いトナーである。
【0300】
実施例27
結着樹脂H 100重量部
着色剤(ジメチルキナクリドン) 5重量部
有機ジルコニウム化合物(65) 2重量部
【0301】
上記材料をヘンシェルミキサーで予備混合した後、100℃に設定した二軸混練押し出し機にて混練した。溶融混練時に混練物の粘度が徐々に上昇するのが確認された。
【0302】
得られた混練物を冷却しカッターミルで粗粉砕した後、ジェット気流を用いた粉砕機を用いて微粉砕し、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径8.5μmの非磁性のマゼンタトナーを得た。熱分解法で製造されたγ型アルミナ微粉体100重量部にn−ブチルトリメトキシシラン10重量部、ジメチルシリコーン5重量部で処理した疎水性アルミナ微粉体(メタノールウエッタビリティ70%、BET比表面積82m2/g)1.5重量部を、マゼンタトナー100重量部に加え外添混合してマゼンタトナーNo.1を調製した。マゼンタトナーの物性を表18に示す。
【0303】
マゼンタトナーNo.1を用い、実施例26と同様のランニング試験を行った。画像濃度、カブリ、画質等の現像性評価結果を表19,20及び21に示す。現像スリーブ上のトナーはマイナスの摩擦電荷を有していた。
【0304】
比較例24〜26
有機ジルコニウム化合物(65)のかわりに、前記有機亜鉛化合物(172),有機鉄化合物(173)又は有機アルミニウム化合物(174)を使用することを除いて実施例27と同様にしてマゼンタトナーNo.2〜4を調製し、実施例27と同様にして評価した。各トナーの物性を表18に示し、評価結果を表19,20及び21に示す。有機クロム化合物(175)は、濃い紫色のため、マゼンタトナーに使用する荷電制御剤としては不適当であった。
【0305】
【表18】
【0306】
【表19】
【0307】
【表20】
【0308】
【表21】
【0309】
実施例28
結着樹脂H 100重量部
着色剤〔ジスアゾ顔料(C.I.Pig.Yellow17)〕 3重量部
有機ジルコニウム化合物(93) 2重量部
【0310】
上記材料をヘンシェルミキサーで予備混合した後、100℃に設定した二軸混練押し出し機にて混練した。溶融混練時に混練物の粘度が徐々に上昇するのが確認された。
【0311】
得られた混練物を冷却しカッターミルで粗粉砕した後、ジェット気流を用いた粉砕機を用いて微粉砕し、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径8.5μmの非磁性のイエロートナーを得た。火焔分解法で製造されたδ型アルミナ微粉体100重量部にn−ブチルトリメトキシシラン10重量部及びジメチルシリコーン5重量部で処理した疎水性アルミナ微粉体(メタノールウエッタビリティ75%、BET比表面積77m2/g)1.5重量部を、イエロートナー100重量部に加え外添混合してイエロートナーNo.1を調製した。イエロートナーNo.1の物性を表22に示す。
【0312】
イエロートナーNo.1を用い、実施例26と同様のランニング試験を行った。画像濃度、カブリ、画質等の現像性評価結果を表23,24及び25に示す。現像スリーブ上のイエロートナーはマイナスの摩擦電荷を有していた。
【0313】
比較例27〜29
有機ジルコニウム化合物(93)のかわりに、前記有機亜鉛化合物(172),有機鉄化合物(173)又は有機アルミニウム化合物(174)を使用することを除いて実施例28と同様にしてイエロートナーNo.2〜4を調製し、実施例28と同様にして評価した。各イエロートナーの物性を表22に示し、評価結果を表23,24及び25に示す。有機クロム化合物は濃い紫色のため、イエロートナーに使用する荷電制御剤としては不適当であった。
【0314】
【表22】
【0315】
【表23】
【0316】
【表24】
【0317】
【表25】
【0318】
実施例29
結着樹脂H 100重量部
着色剤(カーボンブラック) 4重量部
有機ジルコニウム化合物(57) 2重量部
【0319】
上記材料をヘンシェルミキサーで予備混合した後、100℃に設定した二軸混練押し出し機にて混練した。溶融混練時に混練物の粘度が徐々に上昇するのが確認された。
【0320】
得られた混練物を冷却しカッターミルで粗粉砕した後、ジェット気流を用いた粉砕機を用いて微粉砕し、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径8.5μmの非磁性のブラックトナーを得た。ブラックトナーNo.1の物性を表26に示す。
【0321】
得られたブラックトナー100重量部に、硫酸法で製造されたルチル型チタニア微粉体100重量部にイソブチルトリメトキシシラン10重量部とジメチルシリコーン10重量部で処理した疎水性チタニア微粉体(メタノールウエッタビリティ70%、BET比表面積59m2/g)1.5重量部を外添混合してブラックトナーNo.1を調製した。
【0322】
ブラックトナーNo.1を用い、実施例26と同様のランニング試験を行った。画像濃度、カブリ、画質等の現像性評価結果を表27,28及び29に示す。現像スリーブ上のブラックトナーはマイナスの摩擦電荷を有していた。
【0323】
比較例30〜34
有機ジルコニウム化合物(57)のかわりに、前記有機亜鉛化合物(172),有機鉄化合物(173),有機アルミニウム化合物(174),有機クロム化合物(175)又は下記有機ケイ素化合物(176)を使用することを除いて実施例29と同様にしてトナーNo.2〜6を調製し、実施例29と同様にして評価した。各トナーの物性を表26に示し、評価結果を表27,28及び29に示す。
【0324】
【化61】
【0325】
【表26】
【0326】
【表27】
【0327】
【表28】
【0328】
【表29】
【0329】
【発明の効果】
本発明は、複写機、プリンター等の仕様モードや低速機、高速機等のプロセススピードや補給タイプ、使い切りカートリッジタイプ等の使用形態に関わらず、優れた現像性が得られるトナーおよび現像方法である。また、本発明はどのような電子写真出力装置においても、定着部材からの画像汚れの発生を抑制するトナーおよび現像方法である。更に本発明は、使用環境によらず高画質の得られるトナーであって、経時よっても変化せず、長期にわたり潜像に忠実な画像の得られるトナーおよび現像方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の現像方法に使用し得る現像剤担持体が組み込まれる現像剤補給系現像装置の一例(規制部材に磁性ブレードを使用)を示す概略図である。
【図2】本発明の現像方法に使用し得る現像剤担持体が組み込まれる現像剤補給系現像装置の一例(規制部材に弾性ブレードを使用)を示す概略図である。
【図3】本発明の現像方法に使用し得る現像剤担持体の一部分の断面の概略図である。
【図4】本発明の現像方法が適用し得る画像形成方法の概略的説明図である。
Claims (45)
- 少なくとも結着樹脂、着色剤及び有機金属化合物を有する負摩擦帯電性のトナーであり、
有機金属化合物がジルコニウムと、芳香族ジオール,芳香族ヒドロキシカルボン酸,芳香族モノカルボン酸及び芳香族ポリカルボン酸からなるグループから選択される芳香族化合物とが配位又は/及び結合している有機ジルコニウム化合物であって、
該有機ジルコニウム化合物が下記式(1)、(2)、(32)又は(33)のいずれかの一般式で示される構造を有する化合物であることを特徴とする負摩擦帯電性のトナー。
- 有機ジルコニウム化合物は、下記式(3),(4)又は(5)で示される構造を有している請求項1に記載のトナー。
- 有機ジルコニウム化合物は、下記式(6),(7)又は(8)で示される構造を有している請求項1に記載のトナー。
- 有機ジルコニウム化合物が下記式(34)又は(35)で示される構造を有している請求項1に記載のトナー。
- 有機ジルコニウム化合物が下記式(36)又は(37)で示される構造を有している請求項1に記載のトナー。
- 有機ジルコニウム化合物が結着樹脂100重量部当り0.1〜10重量部トナー粒子に内添されている請求項1乃至5のいずれかに記載のトナー。
- 有機ジルコニウム化合物が結着樹脂100重量部当り0.5〜5重量部トナー粒子に内添されている請求項1乃至5のいずれかに記載のトナー。
- 結着樹脂は、酸価が1乃至100mgKOH/gである請求項1乃至7のいずれかに記載のトナー。
- 結着樹脂がカルボキシル基又は酸無水物基を有している請求項1乃至8のいずれかに記載のトナー。
- 着色剤が磁性酸化鉄である請求項1乃至9のいずれかに記載のトナー。
- 磁性酸化鉄は、鉄元素基準で異種元素を0.05乃至10重量%で含有している磁性酸化鉄微粒子である請求項10に記載のトナー。
- ワックスがさらに含有されている請求項1乃至11のいずれかに記載のトナー。
- ワックスは、ワックスAとワックスBを少なくとも含有しており、ワックスAとワックスBとは融点が相違している請求項12に記載のトナー。
- ワックスAとワックスBとは、融点が10乃至100℃相違している請求項13に記載のトナー。
- ワックスは、ワックスCとワックスDを少なくとも含有しており、ワックスCとワックスDとは組成成分が相違している請求項12に記載のトナー。
- ワックスCとワックスDとは融点が相違している請求項15に記載のトナー。
- ワックスCとワックスDとは、融点が10乃至100℃相違している請求項16に記載のトナー。
- トナーは、重量平均粒径が2.5乃至10μmである請求項1乃至17のいずれかに記載のトナー。
- 異種元素が、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、ジルコニウム及び亜鉛からなるグループから選択される元素である請求項11に記載のトナー。
- 異種元素がマグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン及びジルコニウムからなるグループから選択される元素である請求項11に記載のトナー。
- トナーに含まれる結着樹脂は、テトラヒドロフラン(THF)不溶分を含有している請求項1乃至20のいずれかに記載のトナー。
- 結着樹脂は、THF不溶分を1〜70wt%(結着樹脂基準)含有している請求項21に記載のトナー。
- 結着樹脂は、THF不溶分を5〜60wt%(結着樹脂基準)含有している請求項21に記載のトナー。
- 結着樹脂は、酸価が1乃至100mgKOH/gである請求項21乃至23のいずれかに記載のトナー。
- 結着樹脂は、酸価が1乃至70mgKOH/gである請求項21乃至23のいずれかに記載のトナー。
- 結着樹脂は、酸価が1乃至50mgKOH/gである請求項21乃至23のいずれかに記載のトナー。
- 結着樹脂は、酸価が2乃至40mgKOH/gである請求項21乃至23のいずれかに記載のトナー。
- 結着樹脂は、スチレン−アクリル樹脂であり、THF可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)のクロマトグラムにおいて、分子量3000〜5万の領域に少なくとも1つのピークが存在し、分子量10万以上の領域に少なくとも1つのピークが存在する請求項1乃至27のいずれかに記載のトナー。
- 結着樹脂は、分子量5000〜3万の領域にメインピークを有する請求項28に記載のトナー。
- 結着樹脂は、分子量5000〜2万の領域にメインピークを有する請求項28に記載のトナー。
- 結着樹脂は、ポリエステル樹脂であり、THF可溶分のGPCのクロマトグラムにおいて、分子量3000〜5万の領域に少なくとも1つのピークを有する請求項1乃至27のいずれかに記載のトナー。
- ワックスは、融点が70〜140℃である請求項12に記載のトナー。
- ワックスは、融点が70〜120℃である請求項12に記載のトナー。
- ワックスは、結着樹脂100重量部当り0.2〜20重量部含有されている請求項12、32及び33のいずれかに記載のトナー。
- ワックスは、結着樹脂100重量部当り0.5〜10重量部含有されている請求項12、32及び33のいずれかに記載のトナー。
- ワックスA又はワックスBは、融点が70〜120℃である請求項14に記載のトナー。
- ワックスA又はワックスBは、融点が70〜100℃である請求項14に記載のトナー。
- トナーは、DSCの吸熱曲線において温度70〜120℃の領域に吸熱の最大ピークを有する請求項1乃至37のいずれかに記載のトナー。
- トナーは、DSCの吸熱曲線において温度70〜110℃の領域に吸熱の最大ピークを有する請求項1乃至37のいずれかに記載のトナー。
- 磁性酸化鉄は、結着樹脂100重量部当り20〜200重量部含有されている請求項10に記載のトナー。
- 着色剤は、非磁性の着色剤であり、結着樹脂100重量部当り0.1〜20重量部含有されている請求項1乃至9のいずれかに記載のトナー。
- 現像剤担持体上に、現像剤層厚規制手段によって負の摩擦電荷を有する一成分系現像剤の層厚を規制して一成分系現像剤の薄層を形成し、静電荷像保持体上の静電荷像を、該静電荷像保持体と対向して配置された該現像剤担持体に担持されている該一成分系現像剤で現像する現像方法であり、
該一成分系現像剤は負摩擦帯電性のトナーを有し、
負摩擦帯電性のトナーが、請求項1乃至41のいずれかに記載されたトナーであることを特徴とする現像方法。 - 現像剤担持体は、基体上に導電性物質を含有している樹脂層を有している請求項42に記載の現像方法。
- 一成分系現像剤が負の摩擦電荷を有する磁性トナーを有する請求項42又は43に記載の現像方法。
- 一成分系現像剤が負の摩擦電荷を有する非磁性トナーを有する請求項42又は43に記載の現像方法。
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