JP3980752B2 - 荷電制御剤及び静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電荷像現像用トナー、並びにそのトナーの帯電量を制御又は安定化するためのモノアゾ系のアモルファス状金属錯塩からなる荷電制御剤及びその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法を利用した複写機、プリンター等においては、無機又は有機光導電材料を含有する感光層を備えた感光体上に形成された静電潜像を現像するために、着色剤及び定着用の樹脂などを有する種々のトナーが用いられている。
【0003】
このようなトナーの帯電性は、静電潜像を現像するシステムにおいては特に重要な因子である。そこでトナーの帯電量を適切に制御または安定化するために、トナー中に正電荷又は負電荷付与性の荷電制御剤が加えられることが多い。
【0004】
従来実用化されている荷電制御剤のうち、トナーに負電荷を付与するものとしては、モノアゾ化合物の1:2型金属錯塩染料やアルキルサリチル酸等の芳香族オキシカルボン酸の金属錯体を挙げることができる。
【0005】
しかしながら、荷電制御剤として提案されているアゾ染料構造の金属錯体の多くは、一般に安定性に乏しく、例えば、機械的摩擦や衝撃、温度や湿度条件の変化、電気的衝撃や光照射等により、分解又は変質して荷電制御性が失われることとなり易い。また、実用レベルの帯電付与性を有するものであっても、電荷の安定性に不十分な点があったり、製造の方法や条件次第で、荷電制御効果を持たない不純化学物質を含むことが多く、荷電制御剤としての品質の安定性及び信頼性等の諸問題を残していた。
【0006】
このような問題を解決し得る荷電制御剤としては、例えば下記構造の金属錯塩が知られている。
【0007】
【化2】
【0008】
【化3】
[上記各式中、Xは、H(水素)、ハロゲン、−SO2NH2、ニトロ基、アルキル基等を示し、Aは、H(水素)、アルカリ金属、アミン等を示す。]
このような金属錯塩染料は、モノアゾ染料2分子が3価金属原子1個に配位した所謂1:2型アゾ含金属染料である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の発明者は、この1:2型アゾ含金属染料が一般に硬い結晶性を有するため、荷電制御剤としてトナーに用いられた場合に、トナー粒子の表面に一部露出した結晶によって、長期にわたる使用の結果感光体を傷付けるおそれがあり、その硬い結晶性に起因して摩擦帯電時にトナー粒子から比較的脱落し易い等の、解決すべき課題を見出した。
【0010】
本発明は、従来技術に存した上記のような課題に鑑み行われたものであって、その第1の目的は、荷電制御性(帯電付与性及び安定性)、並びに耐熱性及び耐光性に優れ、トナー用樹脂に対する分散性及び濡れ性が良好であると共に、トナーに用いられた場合に、感光体を傷付けることがほとんどなく、摩擦帯電時にトナー粒子から脱落し難い荷電制御剤及びその製法を提供することにある。
【0011】
また本発明の第2の目的は、耐環境性(温度や湿度の変化に対する荷電制御特性の安定性)、保存安定性(荷電制御特性の経時的安定性)及び耐久性(トナーが多数回繰返し使用された場合の荷電制御特性の安定性)に優れ、帯電の立上がりが良好であり、含有する荷電制御剤により感光体を傷付けることがほとんどなく、摩擦帯電時に荷電制御剤が脱落し難く、安定した複写画像が得られる静電荷像現像用トナーを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の荷電制御剤は、
モノアゾ化合物を配位子とする金属錯塩からなる荷電制御剤であって、
その金属錯塩がアモルファス状であることを特徴とする。(請求項1)
この荷電制御剤は、上記金属錯塩のX線回折スペクトルが、その金属錯塩がアモルファス状であることを示すものとすることができる。(請求項2)
また、この荷電制御剤は、多重ピーク分離法による上記金属錯塩の結晶化度が、2θ=5°乃至30°の範囲(θはブラッグ角)において50%以下であるものとすることができる。(請求項3)
この結晶化度は、30%以下であることが好ましい。(請求項4)
また、本発明の荷電制御剤は、上記金属錯塩が下記一般式(I)で表わされる金属錯塩であるものとすることができる。(請求項5)
【0013】
【化4】
〔一般式(I)中、
(R1)0-pは0乃至p個の置換基R1を意味し、
R1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、アルケニル基、核置換されていてもよいアリール基、核置換されていてもよいアラルキル基、又は−SO2N( R11) 2基[2個のR11は互いに同一であっても異なっていてもよく、H(水素)、低級アルキル基、核置換されていてもよいアリール基、若しくは核置換されていてもよいアラルキル基を示す。]を示し、
pは、1乃至4の整数を示す。
【0014】
R2は、水素、枝分れしていてもよいアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、アルケニル基、核置換されていてもよいアリール基、核置換されていてもよいアラルキル基、−SO3L[Lは、H(水素)、Na、K、NH+ 4、有機アンモニウム]、−SO2N( R11) 2基[2個のR11は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H(水素)、低級アルキル基、アリール基、若しくはアラルキル基を示す。]、又は−CON( R12) 2基[R12は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H(水素)、低級アルキル基、核置換されていてもよいアリール基、若しくは核置換されていてもよいアラルキル基を示す。]を示す。
【0015】
jは、金属Mに配位したモノアゾ化合物の個数であって、1、2、3又は6を示す。
(MX+)m は、原子価xの金属m個を示し、mは、1、2又は4を示す。
(A+)n は、H+、NH+ 4、Na+、K+及び有機アンモニウムからなる群から選ばれたn個の対イオンを示し、n=2j−mx、2j≧mxである(n=0の場合もあり得る)。但し、j=1の場合は、x=2である。〕
この荷電制御剤における上記金属錯塩の中心原子は、2価又は3価の金属(例えば、Fe、Co、Zn、Cu、Cr、Al等)であることが好ましく、特に、原子価2又は3の鉄であることが好ましい。(請求項6)
上記のような本発明のモノアゾ化合物を配位子とする金属錯塩からなる荷電制御剤は、モノアゾ化合物を配位子とする結晶性金属錯塩(例えば一般式(I)で表わされる金属錯塩)を有機溶媒中で湿式ミリングすることにより、又はその結晶性金属錯塩を有機溶媒に溶解させた後、水に再分散させることにより得ることが可能である。(請求項7、8)
また、本発明の静電荷像現像用トナーは、上記のモノアゾ化合物を配位子とするアモルファス状金属錯塩からなる荷電制御剤、トナー用樹脂及び着色剤を備えてなるものである。(請求項9)
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明における荷電制御剤は、アモルファス状の上記一般式(I)で表わされる金属錯塩であることが好ましい。
【0017】
上記一般式(I)で表わされる金属錯塩は、以下に示す金属錯塩群を包含するものである。
(i) 一般式(I)におけるj=2、(MX+)m=(MX+)1、(A+)n=(A+)4-Xである1:2型金属錯塩群。以下本明細書においては、次式1のように記載する。
式1:[(D)2・(MX+)](A+)4-X
(ii) 一般式(I)におけるj=3、(MX+)m=(MX+)2、(A+)n=(A+)6-2Xである2:3型金属錯塩群。以下本明細書においては、次式2のように記載する。
式2:[(D)3・(MX+)2](A+)6-2X
(iii) 一般式(I)におけるj=6、(MX+)m=(MX+)4、(A+)n=(A+)12-4Xである4:6型金属錯塩群。以下本明細書においては、次式3のように記載する。
式3:[(D)6・(MX+)4](A+)12-4X
(iv) 一般式(I)におけるj=1、(MX+)m=(MX+)1、(A+)n=(A+)2-X(但し、x=2のみ)である1:1型金属錯塩群。以下本明細書においては、次式4のように記載する。
式4:[(D)1・(M2+)](A+)2-X
上記式1乃至4において、Dは、金属化可能な2個のOH基を有するモノアゾ化合物が金属Mに配位した配位子である。式1で示される化合物(金属錯塩)群は、2つのモノアゾ化合物が1つの金属Mに配位した金属錯塩、式2で示される化合物群は、3つのモノアゾ化合物が2つの金属Mに配位した金属錯塩、式3で示される化合物群は、6つのモノアゾ化合物が4つの金属Mに配位した金属錯塩、式4で示される化合物群は、1つのモノアゾ化合物が1つの2価の金属Mに配位した金属錯塩である。それぞれの対イオンである(A+)の個数nは、母体化合物の持つ負電荷を中和するに必要な(2j−mx)であり、2j≧mxを満足するものである。
【0018】
本発明における荷電制御剤は、上記の各化合物群の中から選ばれた何れか1種のアモルファス状の金属錯塩からなるものであってもよく、例えば、式1と式2で示される2つの化合物群の中からそれぞれ1種ずつ選ばれたアモルファス状の金属錯塩の混合物であってもよく、式1と式2で示される2つの化合物群の中からそれぞれ1種ずつ選ばれたアモルファス状の金属錯塩と式3又は式4で示される化合物群の中から1種選ばれたアモルファス状の金属錯塩少量との混合物であってもよく、式1と式2と式3と式4で示される4つの化合物群の中からそれぞれ1種ずつ選ばれたアモルファス状の金属錯塩の混合物であってもよい。ここで、「1種」と言うのは、モノアゾ配位子Dが同一であるアモルファス金属錯塩を意味する。
【0019】
なお、式2及び式3でそれぞれ示されるモノアゾ金属化合物は、質量分折(FAB−MSスペクトル分折、FD−MSスペクトル分折等)により確認された新規化合物であって、特願平7−297414において開示されている。
【0020】
本発明における荷電制御剤は、上記金属錯塩のX線回折スペクトルが、その金属錯塩がアモルファス状であることを示すものとすることができる。X線回折スペクトルがアモルファス状であることを示すというのは、X線回折パターンが、例えば、図1及び図4のように全く回折ピークを示さないことや、図5のように顕著な回折ピークを示さないことを意味する。これは、2θ=5°乃至30°(θはブラッグ角)の範囲における金属錯塩のX線回折スペクトルについて多重ピーク分離法により算出した全体の強度の総計に対する結晶部分の強度の総計の比率が50%以下であるものと定義することができる。本発明における荷電制御剤として好ましいのは、この結晶化度が30%以下の金属錯塩である。
【0021】
一般式(I)における置換基R1の例としては、
Cl、Br、I、F等のハロゲン;
ニトロ基;
メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−オクチル、tert−オクチル、2−エチルヘキシル、n−デシル、ドデシル基等の枝分れしていてもよい、好ましくは炭素数1乃至20のアルキル基、より好ましくは炭素数1乃至12のアルキル基;トリフルオロメチル等のハロ置換アルキル基、メトキシプロピル、2−エチルヘキシルオキシプロピル等のアルコキシ置換アルキル基;
シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等のシクロアルキル基;
アリル基、イソプロペニル、ブテニル等のアルケニル基、
ベンジル、低級アルキル置換ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、ナフチルメチル、ナフチルエチル等の炭素数1乃至3の低級アルキル等によって核置換されていてもよいアラルキル基;
フェニル、ナフチル、低級アルキル置換フェニル、低級アルキル置換ナフチル、ハロゲン化フェニル、ハロゲン化ナフチル等の炭素数1乃至3の低級アルキル又はハロゲンによって核置換されていてもよいアリール基;
−SO2NH2、− SO2N( アルキル) 2、− SO2NH( フェニル) 、− SO2NH( ベンジル) 等のSO2N( R11) 2基[2個のR11は互いに同一であっても異なっていてもよく、H(水素)、炭素数1乃至3の低級アルキル基、炭素数1乃至3の低級アルキル若しくはハロゲンによって核置換されていてもよいアリール基、又は炭素数1乃至3の低級アルキルによって核置換されていてもよいアラルキル基を示す。]
等が挙げられる。
【0022】
(R1)0-pの好ましい例としては、p個の置換基R1のうち1個又は2個がクロル、アルキル基、ニトロ基、− SO2NH2であるもの;p=2で、2個の異なるR1がアルキル基とニトロ基のもの;p=2で、2個の異なるR1がアルキル基と他の置換基であるもの、及びp=0、すなわち置換基R1を持たないものが挙げられる。
【0023】
一般式(I)におけるR2の例としては、
H(水素);
Cl、Br、I、F等のハロゲン;
ニトロ基;
メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−オクチル、tert−オクチル、2−エチルヘキシル、n−デシル、ドデシル基等の枝分れしていてもよい、好ましくは炭素数1乃至20のアルキル基、より好ましくは炭素数1乃至12のアルキル基;アリル基、イソプロペニル、ブテニル等のアルケニル基;
ベンジル、低級アルキル置換ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、ナフチルメチル、ナフチルエチル等の炭素数1乃至3の低級アルキル等によって核置換されていてもよいアラルキル基;
フェニル、ナフチル、低級アルキル置換フェニル、低級アルキル置換ナフチル、ハロゲン化フェニル、ハロゲン化ナフチル等の炭素数1乃至3の低級アルキル又はハロゲンによって核置換されていてもよいアリール基;
−SO3L[Lは、H(水素)、Na、K、NH+ 4、有機アンモニウム];
−SO2NH2、− SO2N(アルキル) 2、− SO2NH( フェニル) 、− SO2NH( ベンジル) 等のSO2N(R11) 2基[2個のR11は互いに同一であっても異なっていてもよく、H(水素)、炭素数1乃至3の低級アルキル基、炭素数1乃至3の低級アルキル若しくはハロゲンによって核置換されていてもよいアリール基、又は炭素数1乃至3の低級アルキルによって核置換されていてもよいアラルキル基を示す。];
−CONH2、− CONH( アルキル) 、− CON( アルキル) 2、− CONH( フェニル) 、− CONH( ベンジル) 等のCON( R12) 2基[R12は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H(水素)、炭素数1乃至3の低級アルキル基、炭素数1乃至3の低級アルキル若しくはハロゲンによって核置換されていてもよいアリール基、又は炭素数1乃至3の低級アルキル等によって核置換されていてもよいアラルキル基を示す。]
等が挙げられる。
【0024】
R2の好ましい例としては、2−ナフトール(β− ナフトール)に基づくもの(R2=H)、アルキル−2−ナフトールに基づくもの(R2=アルキル)、ナフトールAS類に基づく、例えばR2が次式で示されるアミド基であるものが挙げられる。
【0025】
【化5】
[( R13) 0-2は0乃至2個の置換基R13を意味し、R13は、ハロゲン(例えばCl、Br、I、F等)、炭素数1乃至3の低級アルキル基(メチル、エチル等)、炭素数1乃至3の低級アルコキシ基(メトキシ、エトキシ等)、ニトロ基等を示す。]
本発明におけるモノアゾ化合物を配位子とするアモルファス状の金属錯塩又は同じ化学構造の結晶性の金属錯塩の製造は、前記配位子Dに対応する金属化可能なモノアゾ化合物と金属化剤とを、水系、有機溶媒系、又は水−有機溶媒系で反応させることにより行い得、これらの金属錯塩は、周知の1:2型のアゾ系含金属錯塩染料と同様に、例えばプロトン酸の形、ナトリウム塩やアンモニウム塩の形、或いはアミン塩の形で取り出すことができる。すなわち、上記アモルファス状又は結晶性の金属錯塩は、次式で表されるモノアゾ化合物:
【0026】
【化6】
[式中、(R1)0-p及びR2は上記と同意義。]
を、水および/または有機溶媒中で、好ましくは水溶性有機溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)中で、常法により2価又は3価金属化剤(例えば、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄)と反応させることにより得られる。一般に、有機溶媒中での反応物は、適当量の水に分散させて反応生成物を析出せしめ、それを濾過して濾取する。次いで、その濾取物は、水洗、乾燥される。
【0027】
このような金属化反応に用いる有機溶媒としては、水に可溶なメタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、エチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系、エーテル系、グリコール系有機溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスホキシド等の非プロトン性極性溶媒などを挙げることができる。好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスホキシド等の非プロトン性極性溶媒である。
【0028】
有機溶媒の使用量は、特に限定的でないが、金属錯塩における配位子として用いるモノアゾ化合物(Dに対応)に対して重量比で2乃至5倍量とすることができる。
【0029】
前記モノアゾ化合物における2個の−OH基とキレート結合し得る金属原子の例としては、鉄( III) 、クロム、アルミニウム等の3価の金属、鉄( II) 、コバルト、ニッケル等の2価の金属、チタン、ケイ素等の4価の金属を挙げることができる。本発明において好ましいのは2価又は3価の鉄である。
【0030】
上記アモルファス状又は結晶性の金属錯塩を合成するのに好適に用いられる金属化剤としては、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、硝酸第二鉄等の鉄化合物;蟻酸クロム、硫酸クロム、塩化クロム、硝酸クロム等のクロム化合物、硫酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム等のアルミニウム化合物;及び塩化ニッケル、塩化コバルト、四塩化チタン等の金属塩化物;テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシシランが挙げられる。
【0031】
金属化剤の使用量は、一般に、配位子となるモノアゾ化合物1当量に対して、金属1/3乃至2原子当量、好ましくは1/2乃至2/3原子当量が用いられる。
【0032】
上記のように合成すると、通常、
1:2型金属錯塩(上記式1)と少量の2:3型金属錯塩(上記式2)及び微量の1:1型金属錯塩(上記式4)を含む混合物;
2:3型金属錯塩(上記式2)と少量の4:6型金属錯塩(上記式3)含む混合物;
1:2型金属錯塩(上記式1)と2:3型金属錯塩(上記式2)と微量の4:6型金属錯塩(上記式3)又は1:1型金属錯塩(上記式4)を含む混合物
等、反応条件等により様々な混合物として得られる。
【0033】
このような混合物として得られる反応生成物の生成比率は、目的物や目的物を得るための反応条件によっても異なるが、鉄錯塩の場合は、概ね、1:2型金属錯塩が主に生成するか、1:2型と2:3型の混合物として得られる。これらの混合物から単一化合物を分離することは実際的ではない上、本発明における荷電制御剤は、単一物である必要は全くない。しかし、それぞれの生成物はFD−MS分析によって確認できる。
【0034】
本発明者は、生成物を単離すべく種々のクロマト分離を試みたが、単離は困難であった。そこで、上記金属錯塩の確認は、分子イオンピークのみを強く示すことが知られているFD−MS法で行った。
【0035】
FD法(Field Desorption)、FAB法(Fast Atom Bonbardment) は、ソフトなイオン化法であるため、フラグメンテーションを起こしにくく、そのため単純なスペクトルを与え、分子イオンピークのみを強く示すことが知られている[科学と工業 水野、64,578,507(1990) 、科学と工業 水野ら、66, 569(1992) ]。
【0036】
一方、得られた生成物(混合物)がアモルファス状のものであるか、結晶性のものであるかの確認は、CuK α線によるX線回折スペクトルで行った。多重ピーク分離法による上記金属錯塩の結晶化度が、2θ=5°乃至30°の範囲(θはブラッグ角)において50%以下であれば、本発明におけるアモルファス状の金属錯塩であるとすることができる。好ましくは30%以下である。
【0037】
公知の方法で製造される金属錯塩(染料)の多くは、一般に結晶性であるが、例えば、後記実施例1の方法で合成された金属錯塩は、そのX線回折スペクトルからアモルファス状であることが確認された。これに対し、後記実施例2の方法で合成された金属錯塩は、結晶性のX線回折スペクトルを与えた。
【0038】
合成により得られた金属錯塩が結晶性のものである場合は、これを有機溶剤(例えば、イソプロパノールのようなアルコール系溶剤)中で、湿式ミリングするか、後記実施例3のようにDMF等の有機溶媒に溶解させた後、これを水に再分散させることにより、アモルファス状の金属錯塩に変換して本発明の荷電制御剤として用いることができる。
【0039】
結晶性金属錯塩を湿式ミリング又は溶解後の再分散によりアモルファス金属錯塩に変換するための有機溶剤としては、上記金属化反応における反応溶媒と同様のもの、例えば、
1価のアルコール系:
メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、
グリコールモノエーテル系:
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレンクリコールモノメチルエーテル、
エチレングリコールジエーテル系:
エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、エチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、
グリコール系:
エチレングリコール、プロピレングリコール、
非プロトン性極性溶媒:
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスホキシド
等を挙げることができる。
【0040】
また、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等のベンゼン系溶剤も使用するができる。
【0041】
上記のような溶剤を用いる湿式ミリング(湿式分散)においては、顔料分散等に使用する各種の分散機[例えば、ボールミル、コロイダルミル、ペイントシェーカー、サンドミル(例えば、ビーズミル、スーパーミル、アジテータミル、ダイノーミル( 商品名) )]を使用することができる。湿式ミリングの際の摩砕媒体としては、例えば、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、磁製ビーズ、或いは、タングステンカーバイト製若しくはステンレススチール製ビーズ等を使用することができる。
【0042】
前記配位子Dに対応する金属化可能な2個のOH基を有するモノアゾ化合物の例としては、次のD1乃至D27を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。なお、これらのモノアゾ化合物におけるジアゾ成分に付された置換基R1の置換位は、フェノール(誘導体)に基づくものである。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【化7】
【0047】
【化8】
【0048】
【化9】
【0049】
【化10】
【0050】
【化11】
【0051】
【化12】
【0052】
【化13】
本発明における荷電制御剤としてのアモルファス状金属錯塩の例としては、下記化合物例(1 )乃至(33)のもの又はその錯塩化合物の少なくとも1種を含んでなる前記のような混合物を挙げることができる。
(1) :[(D11)2・(Fe3+)1](H +)
(2) :[(D11)2・(Fe3+)1](NH+ 4)
(3) :[(D11)3・(Fe3+)2]
(4) :[(D5)2・(Fe3+)1](H +)
(5) :[(D5)2・(Fe3+)1](K +)
(6) :[(D6)2・(Fe3+)1](H +)
(7) :[(D6)2・(Fe3+)1](N(CH3) + 4)
(8) :[(D23)2・(Fe3+)1](NH+ 4)
(9) :[(D7)2・(Fe3+)1](K +)
(10):[(D26)2・(Fe3+)1](Na+)
(11):[(D25)2・(Fe3+)1](H +)
(12):[(D8)2・(Fe3+)1](H +)
(13):[(D21)2・(Fe3+)1](NH+ 4)
(14):[(D21)3・(Fe3+)2]
(15):[(D24)2・(Fe3+)1](NH+ 4)
(16):[(D24)2・(Fe3+)1](H +)
(17):[(D2)2・(Fe3+)1](H +)
(18):[(D1)3・(Fe3+)2]
(19):[(D1)2・(Fe3+)1](H +)
(20):[(D1)3・(Fe3+)2]
(21):[(D1)6・(Fe3+)4]
【0053】
【化14】
(23):[(D11)1・(Fe2+)1]
(24):[(D11)2・(Fe2+)1](H +)2
(25):[(D11)3・(Fe2+)2](H +)2
(26):[(D11)6・(Fe2+)4](H +)4
(27):[(D24)2・(Fe2+)1](H +)2
(28):[(D24)2・(Fe2+)1](NH+ 4)2
(29):[(D24)3・(Fe2+)2](NH+ 4)2
(30):[(D24)3・(Fe2+)2](H +)2
(31):[(D21)2・(Fe2+)1](NH+ 4)2
(32):[(D21)3・(Fe2+)2](NH+ 4)2
(33):[(D1)1・(Fe2+)1]
本発明における荷電制御剤としてのモノアゾ系のアモルファス状金属錯塩の物理的特性及び化学的特性は、特に限定されないが、その平均粒子径は、20μm以下、好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下の微粉砕物であることが望ましい。本発明におけるアモルファス状金属錯塩のトナー用樹脂に対する相溶性(濡れ性)は、同じ化学構造の結晶性の金属錯塩に比し顕著に向上する。
【0054】
次に、本発明の静電荷像現像用トナーは、本発明における荷電制御剤としての上記アモルファス状金属錯塩の少なくとも1種と、トナー用樹脂と、着色剤を備えてなるものである。すなわち、例えば本発明の荷電制御剤の1種を含有するものであってもよく、例えば配位子D及び金属Mが同一の前記のような数種の金属錯塩の混合物を含有するものであってもよい。
【0055】
本発明の静電荷像現像用トナーは、荷電制御剤として、上記アモルファス状金属錯塩の1種又は2種以上の混合物が、トナー用樹脂100重量部に対して0.1乃至10重量部配合されたものが望ましい。荷電制御剤のより好ましい配合量は、トナー用樹脂100重量部に対して0.5乃至5重量部である。
【0056】
本発明のトナーに用いられる樹脂としては、次のような公知のトナー用樹脂(結着樹脂)を例示することができる。すなわち、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ビニルメチルエーテル樹脂、スチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂である。これらの樹脂は単独で或いは数種をブレンドして用いることもできる。また、本発明の荷電制御剤は、静電粉体塗料に含有させて樹脂粉体の電荷の制御(増強)のために用いることもできる。その場合の塗料用樹脂としては、アクリル系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、又はポリアミド系の熱可塑性樹脂;フェノール系、エポキシ系、ポリエステル系等の熱硬化性樹脂を、単独で或いは数種をブレンドして用いることができる。
【0057】
本発明の静電荷像現像用トナーにおいては、着色剤として公知の多数の染料、顔料を用いることができる。用い得る着色剤の具体例は次のとおりである。すなわち、キノフタロンイエロー、イソインドリノンイエロー、ペリノンオレジン、ペリノンレッド、ペリレンマルーン、ローダミン6Gレーキ、キナクリドンレッド、アンスアンスロンレッド、ローズベンガル、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、ジケトピロロピロール系の有機顔料;カーボンブラック、チタンホワイト、チタンイエロー、群青、コバルトブルー、べんがら、アルミニウム粉、ブロンズ等の無機顔料並びに金属粉などを挙げることができる。
【0058】
本発明の静電荷像現像用トナーは、例えば次のように製造される。
【0059】
すなわち、上記のようなトナー用樹脂、着色(好ましくはカーボンブラック)、及び本発明の荷電制御剤、並びに必要に応じて磁性材料(例えば、鉄やコバルト等の強磁性金属微粉、フェライト)、流動性改質剤(例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン)、オフッセト防止剤(例えば、ワックス、低分子量のオレフィンワックス)などをボールミルその他の混合機により充分混合した後、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等の熱混練機を用いて溶融混練し、その混練物を冷却固化させた後、その固化物を粉砕及び分級することにより、平均粒径5乃至20μmのトナーを得ることができる。
【0060】
また、結着樹脂溶液中に材料を分散した後、噴霧乾燥することにより得る方法、或いは、結着樹脂を構成すべき単量体に所定材料を混合して乳化懸濁液とした後に重合させてトナーを得る重合法トナー製造法等を応用することができる。
【0061】
本発明のトナーを2成分現像剤として用いる場合には、本発明のトナーをキャリヤー粉と混合して用い、磁気ブラシ現像法等により現像することができる。
【0062】
キャリヤーとしては、公知のものが全て使用可能である。例示するならば、粒径50乃至200μm程度の鉄粉、ニッケル粉、フェライト粉、ガラスビーズ等、及びこれらの表面をアクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、フッ化エチレン系樹脂等でコーティングしたものなどを挙げることができる。
【0063】
本発明のトナーを1成分現像剤として用いる場合には、上記のようにしてトナーを製造する際に、例えば鉄粉、ニッケル粉、フェライト粉等の強磁性材料製の微粉体を適量添加分散させて用いることができる。この場合の現像法としては、例えば接触現像法、ジャンピング現像法等を挙げることができる。
【0064】
【発明の効果】
本発明の荷電制御剤は、その物理的及び化学特性により、トナー用樹脂に対する分散性及び濡れ性が良好であると共に、トナーに用いられた場合に、感光体を傷付けることがほとんどなく、摩擦帯電時にトナー粒子から脱落し難く、負電荷付与性及び安定性、並びに、耐環境性、保存安定性及び耐久性に優れる。また、本発明の荷電制御剤の製法によれば、このような荷電制御剤を製造することができる。
【0065】
更に、本発明の静電荷像現像用トナーは、この荷電制御剤を含有する点において、荷電制御性、耐環境性、保存安定性、及び耐久性に優れ、含有する荷電制御剤により感光体を傷付けることがほとんどなく、摩擦帯電時に荷電制御剤が脱落し難く、然も様々な樹脂組成のトナーに用いられてもそのトナーの品質の安定性及び信頼性が保持され、良質なトナー画像を形成する。
【0066】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の記述においては、「重量部」を「部」と略す。
【0067】
実施例1
4−tert−アミル−6−ニトロ−2−アミノフェノールとβ− ナフトールを用いて一般的なジアゾ化カップリング反応により合成したモノアゾ化合物(D11)18.9g(0.05mol) をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)500mlに加え撹拌した。
【0068】
この液に炭酸ナトリウム3.2g(0.03mol) を加えて70℃に昇温させ、硫酸第一鉄・7水和物8.3g(0.03mol) を加えて5時間反応させた。
【0069】
この反応液を水に分散させ、得られた沈殿物を濾取してこれを水洗し、乾燥させることにより、19.6g(収率96.8%)のアモルファス状鉄錯塩(D11をリガンドとする2:3型鉄錯塩[(D11)3・(Fe2+)2](H+)2及びD11をリガンドとする1:2型鉄錯塩[(D11)2・(Fe2+)1](H+)を主体とする混合物
)を得た。
【0070】
この生成物のX線回折スペクトルを図1に示す。
【0071】
金属化反応がDMFのような非プロトン性極性溶媒、或は水系で行われた場合、その反応生成物はアモルファス状錯体(結晶化度が50%以下)として得られることが多い。
実施例2
4−クロル−2−アミノフェノールとナフトールASを用いて一般的なジアゾ化カップリング反応により合成したモノアゾ化合物(D21)のウエットケーキ(固形分換算0.05mol)をエチレングリコール500mlに分散させた。
【0072】
この液に水酸化ナトリウム4.0g(0.1mol)を加え、次いで、塩化第二鉄4.9g(0.03mol) を加えた後110乃至120℃で5時間反応させて金属化を行った。
【0073】
これを室温まで放冷させた後、析出した生成物を濾取してこれを水洗し、乾燥させることにより、18.5g(収率93.2%)の結晶性鉄錯塩(D21をリガンドとする2:3型鉄錯塩[(D21)3・(Fe3+)2]及びD21をリガンドとする1:2型鉄錯塩[(D21)2・(Fe3+)1](H+)を主体とする混合物)を得た。
【0074】
この生成物のX線回折スペクトルを図2に示す。また、株式会社マックサイエンス社製のX線回折装置 MXP3システムによりこの生成物のX線回折スペクトルを2θ=5°乃至30°の範囲(θはブラッグ角)でスムージング処理したスペクトルを更に全体のスペクトルと結晶部分のスペクトルに分離したチャートを図3に示す。図3の各スペクトルについて2θ=5°乃至30°の範囲(θはブラッグ角)で結晶化度測定法により求めた全体の強度の総計は3569.3、結晶部分の強度の総計は2208.0、結晶化度[(結晶部分の強度の総計/全体の強度の総計)×100]は61.9%であった。
【0075】
金属化反応がエチレングリコールのような多価アルコールやエチレングリコールモノアルキルエーテルのようなグリコールモノエーテル溶媒中で行われた場合、その反応生成物は結晶性錯体として得られることが多い。
この結晶性鉄錯塩5gと粒径2mmのガラスビーズ300mlとイソプロパノール150mlを500mlの広口ガラス瓶中に密封し、ペイントシェーカーで10時間振とうした。広口ガラス瓶の内容物からメッシュの金網を用いてガラスビーズを除去した後、得られた分散液をエバポレーションによって乾固させることにより、アモルファス状鉄錯塩を得た。
【0076】
得られた生成物のX線回折スペクトルを図4に示す。
【0077】
実施例3
実施例2で得られた結晶性鉄錯塩10gを100mlのDMFに加えて70℃で加熱溶解させた後、その溶液を500mlの水に分散させた。この混合液に、撹拌下、食塩(NaCl)5gを添加し、それを50℃に加熱した後、濾過し、濾取物を水洗し、乾燥させることにより、9.7gのアモルファス状鉄錯塩(D21をリガンドとする2:3型鉄錯塩[(D21)3・(Fe3+)2]及びD21をリガンドとする1:2型鉄錯塩[(D21)2・(Fe3+)1](H+)を主体とする混合物)を得た。
【0078】
この生成物のX線回折スペクトルを図5に示す。また、株式会社マックサイエンス社製のX線回折装置 MXP3システムによりこの生成物のX線回折スペクトルを2θ=5°乃至30°の範囲(θはブラッグ角)でスムージング処理したスペクトルを図6に、更に全体のスペクトルと結晶部分のスペクトルに分離したチャートを図7に示す。図7の各スペクトルについて2θ=5°乃至30°の範囲(θはブラッグ角)で結晶化度測定法により求めた全体の強度の総計は4889.0、結晶部分の強度の総計は682.6、結晶化度[(結晶部分の強度の総計/全体の強度の総計)×100]は14.0%であった。
【0079】
次に、本発明の静電荷像現像用トナーについての実施例を、実施例I乃至VIを挙げて説明する。
【0080】
実施例I
スチレンーアクリル共重合樹脂
[三洋化成社製、ハイマーSMB600]・・・100部
低重合ポリプロピレン
[三洋化成社製、ビスコール550P]・・・3部
カーボンブラック
[三菱化成社製、MA−100]・・・7部
荷電制御剤
[実施例1で得られたアモルファス状鉄錯塩]・・・2部
上記配合物を高速ミルで均一に予備混合しプレミックスを調製した。このプレミックスを加熱ロールで溶融混練し、この混練物を冷却した後、超遠心粉砕機で粗粉砕した。得られた粗砕物を分級機付のエアージェットミルを用いて微粉砕することにより、粒径5乃至15μmの黒色トナーを得た。
【0081】
得られたトナー5部に対して鉄粉キャリヤー(パウダーテック社製 商品名:TEFV200/300)95部を混合して現像剤を調製した。
【0082】
得られた現像剤をよく撹拌し、帯電量をブローオフ法(東芝ケミカル社製のブローオフ帯電量測定機[商品名:TB−200]を使用)にて測定したところ、本現像剤のブローオフ帯電量は−21.0μC/gであった。この現像剤のブローオフ帯電量は、低温低湿においても高温高湿においても安定であり、保存安定性も良好であった。また、この現像剤を用いて市販の複写機により繰り返し実写したところ、帯電安定性及び持続性が良好で、オフセット現象も認められず、画像の濃度低下やカブリ等のない良質な画像が得られた。
【0083】
この現像剤の帯電特性を図8及び図10に示す。図8乃至図10において、横軸は現像剤の混合時間( 分) 、縦軸は帯電量(−μC/g)を示す。
【0084】
実施例II
実施例Iで用いた荷電制御剤をモノアゾ化合物(D1)を配位子とするアモルファス鉄錯塩に代えた以外は実施例Iと同様にしてトナー及び現像剤を調製し、評価した。
【0085】
本現像剤のブローオフ帯電量は−23.3μC/gであった。この現像剤のブローオフ帯電量は、低温低湿においても高温高湿においても安定であり、保存安定性も良好であった。また、この現像剤を用いて繰返し実写したところ、実施例Iと同様に帯電安定性及び持続性が良好で、オフセット現象も認められず、画像の濃度低下やカブリ等のない良質な画像が得られた。
【0086】
この現像剤の帯電特性を図10に示す。
【0087】
実施例III
実施例Iで用いた荷電制御剤を、モノアゾ化合物(D2)を配位子とするアモルファス鉄錯塩に、樹脂をスチレン−n−ブチルメタクリレート共重合物に代えた以外は実施例Iと同様にしてトナー及び現像剤を調製し、評価した。
【0088】
本現像剤のブローオフ帯電量は−20.9μC/gであった。この現像剤のブローオフ帯電量は、低温低湿においても高温高湿においても安定であり、保存安定性も良好であった。また、この現像剤を用いて繰返し実写した場合ところ、実施例Iと同様に帯電安定性及び持続性が良好で、オフセット現象も認められず、画像の濃度低下やカブリ等のない良質な画像が得られた。
【0089】
この現像剤の帯電特性を図10に示す。
【0090】
実施例IV
実施例Iで用いた荷電制御剤を実施例2で得られたアモルファス鉄錯塩に代えた以外は実施例Iと同様にしてトナー及び現像剤を調製し、評価した。
【0091】
本現像剤のブローオフ帯電量は−28.3μC/gであった。この現像剤のブローオフ帯電量は、低温低湿においても高温高湿においても安定であり、保存安定性も良好であった。また、この現像剤を用いて繰返し実写した場合ところ、実施例Iと同様に帯電安定性及び持続性が良好で、オフセット現象も認められず、画像の濃度低下やカブリ等のない良質な画像が得られた。
【0092】
この現像剤の帯電特性を図10に示す。
【0093】
実施例V
ポリエステル樹脂
[日本合成化学社製、HP−301]・・・100部
低重合ポリプロピレン
[三洋化成社製、ビスコール550P]・・・3部
カーボンブラック
[三菱化成社製、MA−100]・・・7部
荷電制御剤
[実施例3で得られたアモルファス状鉄錯塩]・・・2部
上記配合物を実施例Iと同様に処理して黒色トナー及び現像剤を調製し、評価したところ、本現像剤のブローオフ帯電量は−24.5μC/gであった。この現像剤のブローオフ帯電量は、低温低湿においても高温高湿においても安定であり、保存安定性も良好であった。また、この現像剤を用いて繰返し実写した場合ところ、実施例Iと同様に帯電安定性及び持続性が良好で、オフセット現象も認められず、画像の濃度低下やカブリ等のない良質な画像が得られた。
【0094】
この現像剤の帯電特性を図9に示す。
【0095】
実施例VI
スチレン−2−エチルヘキシルメタクリレート
共重合樹脂・・・100部
四三酸化鉄
[戸田工業社製,EPT−500]・・・40部
低重合ポリプロピレン
[三洋化成社製、ビスコール550P]・・・3部
カーボンブラック
[三菱化成社製、MA−100]・・・7部
荷電制御剤
化合物例(1) ・・・1.5部
化合物例(3) ・・・0.2部
上記配合物をボールミルで均一に予備混合し、プレミックスを調製した。このプレミックスを加熱ロールを用いて溶融混練し、この混練物を冷却した後、粗粉砕、微粉砕及び分級を行うことにより、粒径5乃至15μmの一成分系トナーを得た。
【0096】
このトナーを用いて市販の複写機により画像を形成したところ、カブリのない、細線再現性の良好な画像が得られた。また、連続複写においても画像濃度は安定しており、トナーの飛散による汚れも認められなかった。
【0097】
比較例1
実施例Iにおける本発明の荷電制御剤(実施例1で得られたアモルファス状鉄錯塩)を、実施例2に記載の結晶性鉄錯塩に代え、実施例Iと同様にしてトナー及び現像剤を作成し、帯電特性を比較した。結果を図8に示す。
【0098】
実写特性:5万枚程度複写した時点で、カブリが発生すると共に画像品質が低下した。また、有機感光体上に傷が認められた。
【0099】
比較例2
実施例Vにおける本発明の荷電制御剤(実施例3で得られたアモルファス状鉄錯塩)を、実施例2に記載の結晶性鉄錯塩に代え、実施例Vと同様にしてトナー及び現像剤を作成し、帯電特性を比較した。結果を図9に示す。
【0100】
実写特性:5万枚程度複写した時点でカブリが発生すると共に画像品質が低下した。また、有機感光体上に傷が認められた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたアモルファス状鉄錯塩のX線回折スペクトルである。
【図2】実施例2で得られた結晶性鉄錯塩のX線回折スペクトルである。
【図3】実施例2で得られた結晶性鉄錯塩のX線回折スペクトルをスムージング処理したものを全体のスペクトルと結晶部分のスペクトルに分離したチャートである。
【図4】実施例2で得られたアモルファス状鉄錯塩のX線回折スペクトルである。
【図5】実施例3で得られたアモルファス状鉄錯塩のX線回折スペクトルである。
【図6】実施例3で得られたアモルファス状鉄錯塩のX線回折スペクトルをスムージング処理したスペクトルである。
【図7】図6のスペクトルをスムージング処理したものを全体のスペクトルと結晶部分のスペクトルに分離したチャートである。
【図8】実施例Iのトナーを用いた現像剤と比較例1のトナーを用いた現像剤の帯電特性を示す。
【図9】実施例Vのトナーを用いた現像剤と比較例2のトナーを用いた現像剤の帯電特性を示す。
【図10】実施例I、II、III、及びIVの各トナーを用いた現像剤の帯電特性を示す。
Claims (9)
- モノアゾ化合物を配位子とする金属錯塩からなる荷電制御剤であって、その金属錯塩が、X線回折スペクトルの多重ピーク分離法による結晶化度が2θ=5°乃至30°の範囲(θはブラッグ角)において50%以下のアモルファス状であることを特徴とする荷電制御剤。
- 上記結晶化度が30%以下である請求項1記載の荷電制御剤。
- 上記金属錯塩が、下記一般式(I)で表わされる金属錯塩である請求項1又は2記載の荷電制御剤。
(R1)0-pは0乃至p個の置換基R1を意味し、
R1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、アルケニル基、核置換されていてもよいアリール基、核置換されていてもよいアラルキル基、又は−SO2N(R11)2基[2個のR11は互いに同一であっても異なっていてもよく、H(水素)、低級アルキル基、核置換されていてもよいアリール基、若しくは核置換されていてもよいアラルキル基を示す。]を示し、
pは、1乃至4の整数を示す。
R2は、水素、枝分れしていてもよいアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、アルケニル基、核置換されていてもよいアリール基、核置換されていてもよいアラルキル基、−SO3L[Lは、H(水素)、Na、K、NH+ 4、有機アンモニウム]、−SO2N(R11)2基[2個のR11は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H(水素)、低級アルキル基、アリール基、若しくはアラルキル基を示す。]、又は−CON(R12)2基[R12は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H(水素)、低級アルキル基、核置換されていてもよいアリール基、若しくは核置換されていてもよいアラルキル基を示す。]を示す。
jは、金属Mに配位したモノアゾ化合物の個数であって、1、2、3又は6を示す。
(MX+)mは、原子価xの金属m個を示し、mは、1、2又は4を示す。
(A+)nは、H+、NH+ 4、Na+、K+及び有機アンモニウムからなる群から選ばれたn個の対イオンを示し、n=2j−mx、2j≧mxである。但し、j=1の場合は、x=2である。〕 - 上記金属錯塩の中心原子が原子価2又は3の鉄である請求項1、2又は3記載の荷電制御剤。
- モノアゾ化合物を配位子とする結晶性金属錯塩を有機溶媒中で湿式ミリングすることにより、モノアゾ化合物を配位子とするアモルファス状の金属錯塩からなる荷電制御剤を得ることを特徴とする荷電制御剤の製法。
- モノアゾ化合物を配位子とする結晶性金属錯塩を有機溶媒中で湿式ミリングすることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の荷電制御剤の製法。
- モノアゾ化合物を配位子とする結晶性金属錯塩を有機溶媒に溶解させた後、水に再分散させることにより、モノアゾ化合物を配位子とするアモルファス状の金属錯塩からなる荷電制御剤を得ることを特徴とする荷電制御剤の製法。
- モノアゾ化合物を配位子とする結晶性金属錯塩を有機溶媒に溶解させた後、水に再分散させることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の荷電制御剤の製法。
- 請求項1、2、3又は4記載の荷電制御剤、トナー用樹脂及び着色剤を備えてなる静電荷像現像用トナー。
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