JP3870618B2 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、電子写真法、静電記録法および静電印刷法等のような画像形成方法に使用される静電荷像現像用トナーに関し、特にフルカラー静電複写機やフルカラーレーザービームプリンタ等のフルカラー画像形成装置に好適に使用される静電荷像現像用トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法でのフルカラー画像形成方法は、マゼンタトナー、シアントナー、イエロートナーのトナー像を重ね合わせてフルカラー画像を得るため、定着時、各色のトナー層が熱によって瞬時に溶融し、混色、発色するように、シャープメルト性を有することがトナーの最も大きな要求特性であった(特開昭51−144625号公報、特開昭59−57256号公報等)が、このようなトナーは、粘性が高く弾性が非常に低く、トナーが熱溶融した際の分子間凝集力が小さいため、熱ローラーへのオフセット(特に高温時のオフセット)が問題となっていた。このような問題は、特に、繰り返し使用によるローラー劣化時、及びフルカラー画像(例えば写真画像)のような、トナー記録体(紙など)上のトナー量及びトナー付着面積の大きい画像を複写する時、顕著であった。このため、補助的に高温オフセット性を向上させる目的で定着ローラにシリコンオイル等の離型性オイルを塗布する試みがなされているが、このオイルによる画像のテカリという新たな問題が生じていた。
【0003】
一方、高画質のフルカラープリンターや複写機が普及するにつれ、カラー画像の出力枚数が飛躍的に増加し、さらなる高速化が求められている近年では、連続複写時に画像光沢の変化が小さいトナーが求められている。光沢の変化が大きいと同じ色でも異なった色に見える傾向が強く、光沢の変化は人の見た目、すなわち人が感じる色彩および色再現性に大きく影響を与える。
【0004】
しかしながら、従来のシャープメルト性を重視したトナーを使用した場合、連続複写時に画像光沢が大きく変化するという問題が生じている。この問題は複写の高速化によりさらに顕著になる。このような光沢の変化は定着ローラー表面の熱が徐々に紙に奪われて定着ローラー温度が低下することに起因すると考えられる。さらには、A4紙を縦に用いて連続複写した後、A4紙を横に用いて複写した場合、光沢の変化が1枚の画像上において生じて問題となっている。詳しくは、A4紙を縦に用いた場合、定着ローラーの両端部分は定着に共されないのに対して、A4紙を横に用いた場合、定着ローラーは中央部分だけでなく上記両端部分も定着に供されるため、A4縦の複写時に定着ローラーの中央部分と両端部分との間で温度差が生じ、その後A4横の複写を行ったとき1枚の画像上で、光沢の高い部分と低い部分が表れると考えられる。以上のような連続複写による光沢の変化および1枚の複写画像上の光沢の変化の問題は、寒冷地や電源投入直後において特に顕著である。
【0005】
このような問題を解決する技術手段として、例えば特開平5−142963号公報、特開平8−101530号公報、特開平8−234480号公報、特開平8−334930号公報、特開平9−34163号公報、特開平9−160409号公報、および特開平10−97098号公報で、トナーあるいはそれに用いられる樹脂の粘弾性に着目した技術が報告されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの技術では粘弾性測定温度が高すぎるために実際に光沢が決定される剥離時の状態を正確に把握できていなかったり、あるいは、規定した値が高すぎるため、適切な光沢感を持つ画像は得られない。すなわち、上記の技術によるトナーでは周囲の環境変動若しくは多数枚連続複写等によって定着ローラ温度が変動したり、定着ローラに温度差が生じると、適正な光沢感のある画像が得られない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであって、周囲の環境変動若しくは多数枚複写等によって定着ローラ温度が変動したり、定着ローラに温度差が生じても、適正な光沢感のある画像が得られ、さらに、耐オフセット性に優れた静電荷像現像用トナーを提供することを目的とする。
【0008】
本発明はまた、低温定着性および耐ブロッキング性にも優れた静電荷像現像用トナーを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも結着樹脂及び着色剤を含有した静電荷像現像用トナーであって、前記結着樹脂が結着樹脂Aと結着樹脂Bを含み、該結着樹脂Aは数平均分子量が2,500〜6,000、重量平均分子量が8,000〜25,000、軟化点が80℃〜125℃、ガラス転移点が50℃〜80℃であり、該結着樹脂Bは数平均分子量が4,000〜10,000、重量平均分子量が40,000〜250,000、軟化点が110℃〜150℃、ガラス転移点が60℃〜85℃であり、結着樹脂Aと結着樹脂Bの重量比は20:80〜95:5であり、周波数0.1(Hz)における貯蔵弾性率(G’)が2×103(Pa)となる温度が90〜110℃であることを特徴とする静電荷像現像用トナーに関する。
【0010】
本発明の発明者等は、記録体へのトナー定着時(詳しくは、記録体上のトナーが定着ローラーによって定着される際においてトナー(画像)が定着ローラーから剥離されるとき)におけるトナー挙動に着目し、画像の光沢は画像表面の平滑性に依存し、画像表面の平滑性は画像表面と定着ローラーとの接着力に依存し、上記接着力はトナーの弾性体として挙動する特性(弾性特性)に依存すること、および当該弾性特性の指標となる貯蔵弾性率(以下「G’」と略記する)の値が2×103Paとなるときが最適な画像光沢(光沢度15から40)を示す画像表面状態(平滑性)であることを見出し、さらにはこの温度が特定温度範囲内に有るとき、定着ローラ温度が変動しても低温定着により良好な光沢の画像を得ることができることを見出した。
【0011】
詳しくは、光沢は、画像表面の平滑性が低すぎると表面の微少な凹凸により入射光が散乱して不足し、画像表面の平滑性が高すぎると入射光の反射率が高すぎて強すぎる(画像全体がぎらついたような感じが強くなる)。また、画像表面の平滑性は、画像と定着ローラーの接触面の接着力が小さい時は画像が容易に剥離するため高くなり、上記接着力が大きい時は剥離が困難になって剥離面に糸曳きが発生するため、画像表面に凹凸が形成されて低くなる。さらには、画像表面と定着ローラーとの接着力は両者の濡れ性および親和力、ならびにトナー層の弾性反発による回復力(弾性特性)のバランスによって決まるが、トナー層の弾性反発による回復力への依存性が顕著に高いと考えられる。
【0012】
【発明の実施の態様】
本発明のトナーは、周波数0.1(Hz)における貯蔵弾性率(G’)が2×103(Pa)となる温度が90〜110℃、好ましくは95〜110℃である。当該温度が90℃未満であると得られる画像の光沢が高くなりすぎて画像がぎらついたり、定着ローラーにトナーが付着し、付着トナーが紙等の記録体に再付着する現象(以下、オフセットという)が特に比較的高い定着温度で発生する。一方、上記温度が110℃を越えると得られる画像の光沢が不足したり、オフセットが特に比較的低い定着温度で発生したり、得られた画像の記録体への定着強度が低下して画像が剥離し易くなる。このように本発明においては周波数0.1(Hz)における貯蔵弾性率(G’)が2×103(Pa)となる温度を比較的低い特定の温度範囲に制御することにより、周囲の環境変動若しくは多数枚複写等によって定着ローラ温度が変動したり、定着ローラに温度差が生じても適正な光沢感のある画像が得られるとともに耐オフセット性が向上し、さらには定着時のローラへのオイル塗布量の低減や低温での定着が可能となると考えられる。また、このような本発明のトナーは耐熱性にも優れ、すなわち高温での保管時、凝集するのを回避できる(耐ブロッキング性)。
【0013】
本明細書中、貯蔵弾性率(G’)は物質の粘弾性関数の弾性項を示し、物質自体の弾性の度合いを示す指標である。G’が大きいほど測定された物質は弾性体として挙動する傾向が強く、逆にG’が小さいほど測定された物質は粘性体として挙動する傾向が強いことを意味する。また、周波数0.1(Hz)における貯蔵弾性率(G’)が2×103(Pa)となる温度は下記条件下で粘弾性測定装置(レオメーター;ストレステック型、レオロジカ社製)を用いて測定された値を用いている;
測定治具;直径20mmパラレルプレート
測定周波数;0.1Hz
測定歪;Max5%
測定温度;60℃〜200℃まで毎分2℃の割合で昇温する。
【0014】
詳しくは、まず、130℃で保持した下部プレート上に該トナーをのせ、5分間この状態を保持して該トナーを十分溶融させた後、上部プレートをトナー厚みが1.0mmになるようにセットして、余分な該トナーを取り除き、常温まで冷却する。冷却後、上記条件下にて温度に対するG’の変化を追跡し、G’が2×103(Pa)となるときの温度を得る。なお、G’はプレートの材質および面精度等に依存しない。
【0015】
また、本発明のトナーは、適正とされる画像の光沢度範囲において光沢度の温度依存性が小さい。すなわち、本発明のトナーにおいて、光沢度が15〜40を示す定着温度幅は15℃以上、好ましくは20℃以上である。このように適正光沢度範囲を示す定着温度幅が広いため、周囲の環境変動若しくは多数枚複写等によって定着ローラ温度が変動したり、定着ローラに温度差が生じても、適正な光沢感のある画像が得られる。画像の光沢の変化についての問題は、適正とされる画像の光沢度範囲において光沢度の温度依存性が高いため、定着ローラーの温度変化によって画像光沢度が適正範囲外にはずれることが原因と考えられる。一般に、定着温度を上昇させると得られる画像の光沢度も上昇する。
【0016】
本明細書中、画像の光沢度は光沢度計(GM−060;ミノルタ社製)を用いて測定した値を用いているが、上記計測器を用いなければならないというわけではない。計測器によって光沢度、特に適正とされる光沢度範囲は異なるため、他の計測器を用いる場合は、当該計測器による適正光沢度範囲を示す定着温度幅が上記範囲内になればよい。
【0017】
本発明のトナーは少なくとも結着樹脂および着色剤からなり、所望により離型剤、荷電制御剤等を含んでいてもよい。
【0018】
本発明のトナーを構成する結着樹脂としては上記のようなトナーを得ることができれば、従来から電子写真の分野で公知のいかなる樹脂を用いてよく、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂等が挙げられる。
【0019】
また結着樹脂としては、分子量の異なる2種類の樹脂(結着樹脂A;低分子量体、結着樹脂B;高分子量体)を用いることが好ましい。詳しくは、数平均分子量(Mn)が2,000〜8,000、好ましくは2,500〜6,000、より好ましくは3,000〜6,000であり、重量平均分子量(Mw)が7,000〜30,000、好ましくは8,000〜25,000、より好ましくは9,000〜20,000である結着樹脂Aと、Mnが3,000〜12,000、好ましくは4,000〜10,000、より好ましくは4,000〜7,000であり、Mwが30,000〜250,000、好ましくは40,000〜250,000、より好ましくは40,000〜100,000である結着樹脂Bを用いることが好ましい。このとき結着樹脂Aと結着樹脂Bは互いに相溶性を有することが好ましい。上記のような結着樹脂Aを用いることは高温下でのトナー保存性(耐ブロッキング性)、トナーの記録部材に対する定着強度および樹脂強度の観点から好ましく、また上記のような結着樹脂Bを用いることは温度変化に対する光沢変化の抑制効果、定着時の耐高温オフセット性およびトナーの記録部材に対する定着強度の観点から好ましい。
【0020】
本明細書中、樹脂の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(807−IT型:日本分光工業社製)を用いて測定された値を用いている。詳しくは、カラムを40℃に保ちながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフランを1kg/cm2で流し、測定する試料30mgをテトラヒドロフラン20mlに溶解し、この溶液0.5mgを上記のキャリア溶媒と共に装置内に導入して、ポリスチレン換算により求める。
【0021】
また、本発明において結着樹脂Aは軟化点(Tm)が75℃〜130℃、好ましくは80℃〜125℃、より好ましくは85℃〜115℃であり、ガラス転移点(Tg)が45℃〜85℃、好ましくは50℃〜80℃、より好ましくは55℃〜75℃であることが、トナーの耐ブロッキング性、トナーの記録部材に対する定着強度および各トナーにおける混色性(色の再現性)の観点からより好ましい。結着樹脂BはTmが105℃〜155℃、好ましくは110℃〜150℃、より好ましくは110℃〜135℃、Tgが55℃〜85℃、好ましくは60℃〜85℃、より好ましくは60℃〜75℃であることが、温度変化に対する光沢変化の抑制効果、定着時の耐高温オフセット性およびトナーの記録部材に対する定着強度の観点からより好ましい。
【0022】
本明細書中、樹脂の軟化点(Tm)は以下の方法に従って得られた値を用いている。まず、測定する試料1.0gを秤量し、フローテスター(CFT−500:島津製作所社製)を用い、h1.0mm×φ1.0mmのダイを使用し、昇温速度3.0℃/min、予熱時間180秒、荷重30kg、測定温度範囲60〜160℃の条件で測定を行ない、上記の試料が1/2流出したときの温度を樹脂軟化点(Tm)とする。
【0023】
また、樹脂のガラス転移点(Tg)は以下の方法に従って得られた値を用いている。示差走査熱量計(DSC−200:セイコーインスツルメンツ社製)を用い、測定する試料10mgを精密に秤量して、これをアルミニウムパンに入れ、リファレンスとしてα−アルミナをアルミニウムパンに入れたものを用い、昇温速度30℃/minで常温から200℃まで昇温させた後、これを冷却し、昇温速度10℃/minで20℃〜120℃の間で測定を行ない、この昇温過程で30℃〜90℃の範囲におけるメイン吸熱ピークのショルダー値をTgとする。
【0024】
結着樹脂として上記のような結着樹脂Aおよび結着樹脂Bを用いるとき、結着樹脂Aと結着樹脂Bの重量比(A:B)は5:95〜95:5、好ましくは20:80〜95:5、より好ましくは60:40〜90:10であることが、トナーの低温定着性、温度変化に対する光沢変化の抑制効果及び定着時の耐高温オフセット性の観点から望ましい。
【0025】
さらに本発明においては、上記の結着樹脂Aおよび結着樹脂Bとしてポリエステル樹脂を用いることが好ましい。詳しくは、結着樹脂Aおよび結着樹脂Bのポリエステル樹脂を構成するモノマーは特に制限されず公知の酸モノマーおよびアルコールモノマーを用いることができる。
【0026】
酸モノマーとしては2個以上のカルボキシル基を有すれば特に制限されず、例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ドデセニル無水コハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシルプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、ならびにこれらの酸の低級アルキルエステル等が挙げられる。これらのうち好ましい酸モノマーとしては、例えば、フマル酸、テレフタル酸、無水トリメリット酸、コハク酸等が挙げられる。酸モノマーは2種以上組み合わせて用いて良い。
【0027】
アルコールモノマーとしては2個以上の水酸基を有すれば特に制限されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAおよびその誘導体、水素添加ビスフェノールA、グリセリン、ソルビトール、1,4−ソルビタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。これらのうち好ましいアルコールモノマーとしてはビスフェノールA誘導体、特に、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0028】
本発明において結着樹脂Bを構成するモノマーとしては、3価以上のモノマー(酸モノマーおよびアルコールモノマーを含む)を、当該樹脂を構成する全モノマーに対して3〜50モル%、好ましくは5〜25モル%の割合で用いることが好ましく、3価以上のモノマーとして3価の酸モノマーを用いることがコストの観点からより好ましい。また、負帯電性トナーを得る場合、3価の酸モノマーを用いることは帯電性の面で有利である。3価の酸モノマーとしては酸モノマーとして例示した上記の化合物のうち、3個のカルボキシル基を有する化合物が挙げられる。
【0029】
本発明において、結着樹脂として上記のような結着樹脂Aおよび結着樹脂Bを用いるとき、結着樹脂Aおよび結着樹脂Bと異なる他の樹脂を混合して用いてよい。他の樹脂としては結着樹脂Aおよび結着樹脂Bと相溶性を有すれば特に制限されず、結着樹脂として例示した前述の樹脂が使用可能である。他の樹脂の使用量は結着樹脂A、結着樹脂Bおよび他の樹脂からなる混合結着樹脂に対して10重量%以下が好適である。
【0030】
また、本発明に用いる結着樹脂はトナーのOHP透光性、低温定着性および樹脂の粉砕性の観点からテトラヒドロフラン不溶分(以下、THF不溶分という)が5重量%以下であることが好ましい。本発明の結着樹脂においてはTHF不溶分は少ないほど好ましく、0重量%であることが最も好ましい。本明細書中、THF不溶分は、試料(2.0g)をTHF(250ml)に常温で溶解させて放置したときの濾紙不溶分(重量%)である(アドバンテック社製No.5B)。
【0031】
本発明のトナーを構成する着色剤は特に限定されるものではなく、従来から電子写真の分野で公知の顔料および染料を用いることができ、以下のものが例示できる。例えば、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、銅フタロシアニン、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド184、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ソルベント・イエロー162、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を挙げることができる。
着色剤の含有量は特に限定的ではないが、通常、結着樹脂100重量部に対して2〜10重量部であることが望ましい。
【0032】
本発明において着色剤はトナー粒子中での分散性の観点から、使用される結着樹脂と相溶性のある樹脂中に着色剤を予め分散させたマスターバッチとして使用することが好ましい。具体的には、使用される結着樹脂と相溶性のある樹脂、好ましくは使用される結着樹脂と着色剤を重量比(樹脂/着色剤)約100/15〜100/50で混合し、溶融・混練した後、冷却し、粉砕してマスターバッチを得ることができる。マスターバッチは0.5〜4.0mmのメッシュをパスしたものを用いることが好ましく、その使用量は、使用されるマスターバッチ中に含まれる着色剤の量が上記範囲内になるような量であればよい。
【0033】
本発明のトナーには、所望により離型剤、荷電制御剤等を適宜配合することができる。
【0034】
離型剤は特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、サゾールワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、ホホバ油ワックス、蜜ろうワックス等が使用可能である。離型剤の含有量は特に限定的ではないが、通常、結着樹脂100重量部に対して0.5〜7重量部であることが望ましい。
【0035】
本発明のトナーは、その帯電性をさらに安定化させるために必要に応じて荷電制御剤を用いることができる。荷電制御剤としては、一般に公知である、トナーを負荷電性に制御する負荷電性制御剤を使用してよく、特に限定されるものではない。例えば、サリチル酸誘導体の金属錯体、カリックスアレン系化合物、有機ホウ素化合物、含フッ素4級アンモニウム塩系化合物、モノアゾ金属錯体、芳香族ヒドロキシカルボン酸系金属錯体、芳香族ジカルボン酸系金属錯体等が挙げられる。この中で、カラートナー用には無色(白色)のものが好適に用いられる。荷電制御剤の含有量は特に限定的ではないが、通常、結着樹脂100重量部に対して0.5〜5重量部であることが望ましい。
磁性粉としては、鉄粉、酸化鉄粉、フェライト、ニッケル等を使用できる。磁性粉の含有量は特に限定的ではないが、通常、結着樹脂100重量部に対して0.5〜10重量部であることが望ましい。
【0036】
本発明のトナーは従来から知られている公知の方法、例えば、粉砕法、乳化分散造粒法等により製造することができる。製造容易性、生産性の観点から粉砕法を採用することが好ましい。粉砕法を採用する場合、本発明のトナーは、例えば、上記の結着樹脂および着色剤、ならびに所望により離型剤、荷電制御剤を混合し、溶融、混練した後、冷却し、粗粉砕、微粉砕、分級することにより得られる。得られる本発明のトナーの体積平均粒径は4〜10μmに制御されていることが好ましい。
【0037】
また、本発明のトナーに外添剤やクリーニング剤を添加、混合してもよい。外添剤を用いる場合には、シリカ微粒子、二酸化チタン微粒子、アミルナ微粒子、フッ化マグネシウム微粒子、炭化ケイ素微粒子、炭化ホウ素微粒子、炭化チタン微粒子、炭化ジルコニウム微粒子、窒化ホウ素微粒子、窒化チタン微粒子、窒化ジルコニウム微粒子、マグネタイト微粒子、二硫化モリブデン微粒子、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸マグネシウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子等を使用することができる。なお、これらの微粒子は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイル等で疎水化処理して用いることが好ましい。外添剤の使用量はトナーに対して0.1〜3.0重量%であることが好ましい。
【0038】
また、クリーニング剤として乳化重合、ソープフリー乳化重合、非水分散重合等の湿式重合法または気相法等により造粒したスチレン系、アクリル系、メタクリル系、ベンゾグアナミン、シリコーン、テフロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の各種の有機微粒子を単独であるいは上記外添剤と組み合わせて用いることができる。
【0039】
本発明のトナーは、キャリアを使用しない1成分現像剤、キャリアとともに使用する2成分現像剤のいずれにおいても使用可能であるが、2成分現像剤として使用することが好ましい。本発明のトナーとともに使用するキャリアとしては、公知のキャリアを使用することができ、例えば、鉄粉、フェライト等の磁性粒子よりなるキャリア、磁性粒子表面を樹脂等の被覆剤で被覆したコートキャリア、あるいは結着樹脂中に磁性微粉末を分散してなる分散型キャリア等いずれも使用可能である。本発明において好ましいキャリアは、平均粒径20〜70μm、好ましくは30〜60μmを有する。
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、これに限定されるものではない。
【0040】
【実施例】
(結着樹脂の製造)
実施例及び比較例のトナーにおける結着樹脂として、表1および表2に示す結着樹脂A(低分子量体)および結着樹脂B(高分子量体)を下記のようにして製造した。樹脂の製造にあたっては、アルコールモノマー成分として、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、BPA−POと略す)と、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、BPA−EOと略す)を用い、また、酸モノマー成分として、テレフタル酸(以下、TPAと略す)、フマル酸(以下、FAと略す)、無水トリメリット酸(以下、TMAと略す)を用いた。
【0041】
具体的には、表1および表2に示すようなモノマーのモル比率になるように各モノマーを計量し、これらを2リットルの4つ口フラスコ内に入れ、この4つ口フラスコに還流冷却器と水分離装置と窒素ガス導入管と温度計と攪拌装置とを取り付けて、上記の窒素ガス導入管からこのフラスコ内に窒素を導入すると共にマントルヒーターで加熱しながら、これらを攪拌して反応させるようにした。この時の反応温度は180℃〜240℃であった。そして、この反応中において酸価を測定しながら反応状態を追跡し、所定の酸価に達した時点でそれぞれ反応を終了させて結着樹脂A−1〜A−5およびB−1〜B−6を得た。この時の反応時間は5時間〜10時間であった。
【0042】
得られた樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、ガラス転移点(Tg)、軟化点(Tm)およびTHF不溶分(重量%)を測定し、それぞれの樹脂のモノマー組成比(モル比)とともに表1および表2に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
(実施例及び比較例)
実施例1〜12、比較例1〜2のトナーを製造するにあたって、結着樹脂は、表3に示した結着樹脂Aと結着樹脂Bを、表3に示した重量比で、ヘンシェルミキサーにてドライブレンドしたものを使用した。
また、各実施例および比較例においては、それぞれの実施例および比較例で使用される上記結着樹脂樹脂とシアン着色剤(C.I.ピグメントブルー15−3:東洋インキ製造社製)とを7:3の割合(重量比)で加圧ニーダーにて混練し、選られた混練物をフェザーミルで粉砕して顔料マスターバッチを得た。
【0046】
上記結着樹脂93重量部、上記顔料マスターバッチ10重量部、ポリプロピレンWAX(100−TS;三洋化成工業社製)2重量部をヘンシェルミキサーで混合し、この混合物を2軸押出混練機により混練した。次に、このように混練した混練物を冷却した後、この混練物をフェザーミルで粗粉砕し、更にジェットミルで微粉砕し、これを分級して、体積平均粒径7.8μmのトナー粒子を得た。得られたトナー粒子に対して、外添剤として疎水性シリカ(H2000;クラリアント社製)を0.8重量%、下記のようにして製造した疎水化度60%の疎水性チタニアAを1.0重量%の割合で加え、これらをヘンシェルミキサーにより混合し、添加処理を行ない、実施例1〜12または比較例1〜2のトナーを得た。
【0047】
(疎水性チタニアAの製造)
平均1次粒子径が50nmのチタニア(STT−30;チタン工業社製)を水系中で混合攪拌しながらn−ヘキシルトリメトキシシランを固形分換算でチタニアの20重量%になるように添加混合し、これを乾燥し解砕して疎水化度60%の疎水性チタニアAを得た。
【0048】
上記トナーと混合させるキャリアとして、下記のようにして製造した樹脂被覆キャリアを用いた。
【0049】
(キャリアの製造方法)
まず、攪拌器とコンデンサーと温度計と窒素導入管と滴下装置とを備えた容量500mlのメスフラスコに、メチルエチルケトンを100重量部加える一方、これとは別に窒素雰囲気下80℃で100重量部のメチルエチルケトンに、メチルメタクリレートを36.7重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを5.1重量部、3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランを58.2重量部及び1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)を1重量部溶解させた溶液を調整し、この溶液を上記のフラスコ内に2時間にわたって滴下して、5時間熟成させて樹脂を得た。次に、得られた樹脂に対して架橋剤としてイソホロンジイソシアネート/トリメチロールプロパンアダクト(IPDI/TMP系:NCO%=6.1%)をOH/NCOモル比率が1/1となるように加えた後、メチルエチルケトンで希釈して固形比3重量%のコート樹脂溶液を得た。そして、平均粒径が50μmの焼成フェライト粉(F−300;パウダーテック社製)からなるコア材に対して、上記のコート樹脂溶液を被覆樹脂量がコア材に対して1.5重量%になるようにしてスピラコーター(岡田精工社製)により塗布し、これを乾燥させ、得られたキャリアを熱風循環式オーブン中にて160℃で1時間放置して焼成し、この焼成物を冷却した後、フェライト粉バルクを目開き106μmと75μmのスクリーンメッシュを取り付けたフルイ振とう器を用いて解砕して樹脂被覆キャリアを得た。
【0050】
得られた各トナー6重量部に対して、上記樹脂被覆キャリアを94重量部混合させてスターターとした。このスターターを用いて以下の評価を行なった。
【0051】
(画像光沢度測定方法)
光沢度の測定は、画像定着温度を122℃〜170℃の範囲において3℃刻みで変化させながら、市販のフルカラー複写機(CF−900;ミノルタ社製)にて、1.5cm×1.5cmのベタ画像<付着量2.0mg/cm2>をとり、それぞれの画像の光沢度を光沢度計(GM−060;ミノルタ社製)を用いて測定した。
【0052】
評価方法
(適正光沢発生温度)
光沢度が、適正光沢の下限値である15となる温度を評価した。この温度が、145℃未満のものを◎、145℃以上150℃未満のものを○、150℃以上155℃未満のものを△(実用上問題ない)、155℃以上のものを×(実用上問題あり)とした。
【0053】
(適正光沢発現温度幅)
光沢度が40となる温度から15となる温度を減じた温度幅を評価した。画像光沢が好ましく感じられる光沢度は15〜40の範囲であるため、この光沢度を示す温度幅が広いほど、定着ローラ温度が変化しても画像光沢の変化は小さい、すなわち上記光沢度範囲における光沢度の温度依存性は小さいといえる。
温度幅が20℃以上のものを◎、20℃未満15℃以上のものを○、15℃未満のものを×(実用上問題あり)とした。
【0054】
(定着下限温度)
定着温度を120℃〜170℃の範囲において2℃刻みで変化させながら、市販のフルカラー複写機(CF−900;ミノルタ社製)にて、1.5cm×1.5cmのベタ画像<付着量2.0mg/cm2>をとり、それぞれの画像を真ん中から2つに折り曲げてその画像の剥離性を目視にて評価し、画像が若干剥離した時の定着温度と全く剥離しない下限の定着温度との間の温度を定着下限温度とした。この定着下限温度が、142℃未満を◎、142以上146℃未満を○、146℃以上152℃未満を△(実用上問題なし)、152℃以上を×(実用上問題あり)とした。
【0055】
(高温オフセット性)
市販のフルカラー複写機(CF−900;ミノルタ社製)の定着システム速度を1/2にして、定着温度を130℃〜190℃の範囲において5℃刻みで変化させながらハーフトーン画像をとり、オフセットの状態を目視で評価し、オフセットが発生する温度を評価した。このオフセット発生温度が168℃以上のものを◎、160℃以上168℃未満のものを○、155℃以上160℃未満のものを△(実用上問題ない)、155℃未満のものを×(実用上問題あり)とした。
【0056】
(耐ブロッキング性)
トナー5gを50ccのガラス管に入れて、50℃で24時間保管し、その後トナーの凝集度合いを評価した。凝集トナーがほとんどないものを◎、凝集トナーが見られるが実用上問題ないものを○、凝集トナーが多くみられ、実用上問題あるものを×をした。
【0057】
【表3】
【0058】
(疎水化度の測定方法)
本明細書中、外添剤の疎水化度は以下に従って測定された値を用いている。200mlのビーカーに純水50mlを入れて、これに測定する試料を0.2g添加し、これを攪拌しながら、無水硫酸ナトリウムで脱水したメタノールをビュレットから加え、液面上に試料がほぼ見られなくなった点を終点とし、要したメタノールの量(ml)から下記式によって疎水化度を算出した。
疎水化度=[メタノール使用量/(50+メタノール使用量)]×100
【0059】
【発明の効果】
本発明のトナーにより、周囲の環境変動若しくは多数枚連続複写等によって定着ローラ温度が変動したり、定着ローラに温度差が生じても適正な光沢感のある画像が得られるという優れた効果が得られる。すなわち、連続複写等により定着ローラ温度が低下しても継続して適正な光沢感のある画像が得られ、また定着ローラに温度差が生じても1枚の画像に光沢の変化は現れない。さらには、定着時のローラへのオイル塗布量の低減や低温での定着が可能となり、耐オフセット性、耐ブロッキング性が向上するという優れた効果も得られる。
Claims (2)
- 少なくとも結着樹脂及び着色剤を含有した静電荷像現像用トナーであって、前記結着樹脂が結着樹脂Aと結着樹脂Bを含み、該結着樹脂Aは数平均分子量が2,500〜6,000、重量平均分子量が8,000〜25,000、軟化点が80℃〜125℃、ガラス転移点が50℃〜80℃であり、該結着樹脂Bは数平均分子量が4,000〜10,000、重量平均分子量が40,000〜250,000、軟化点が110℃〜150℃、ガラス転移点が60℃〜85℃であり、結着樹脂Aと結着樹脂Bの重量比は20:80〜95:5であり、周波数0.1(Hz)における貯蔵弾性率(G’)が2×103(Pa)となる温度が90〜110℃であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
- 前記結着樹脂のテトラヒドロフラン不溶分が5重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
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