JP3858547B2 - 砥石 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱硬化性樹脂を焼成したアモルファスカーボンからなる結合相に超砥粒等の砥粒が分散配置された砥石に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
レジンボンド砥石は超砥粒を保持する樹脂結合相が比較的軟質で脆いために比較的硬い被削材に対して研削を行った場合、研削面の目詰まりや超砥粒の摩耗による切れ味の低下が起こるより早く超砥粒を支える樹脂結合相が破砕または摩耗して超砥粒が脱落する。そのためレジンボンド砥石は研削面の目詰まりや超砥粒の摩耗による切れ味低下が起き難く、メタルボンド砥石等と比較して研削を効率よく行え、しかも樹脂結合相で保持された超砥粒に弾性効果があるためにメタルボンド砥石を用いた場合よりも被削材のダメージが小さく仕上げ面が良好である。そのため、例えば半導体ウエーハ等の被削材の鏡面研削等、小さい面粗さが要求される研削に用いられるという利点を有している。
その反面、レジンボンド砥石はフェノール樹脂等で構成される樹脂結合相の耐熱性が小さく摩耗が激しい欠点を有するために寿命が短い。
【0003】
このようなレジンボンド砥石の欠点を改善しようとした技術として、例えば特開昭60−232873号公報に開示された砥石がある。この砥石は結合相としてガラス状炭素(アモルファスカーボン)を用いており、砥石の製造に際して、フェノール樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と砥粒の混合物を不活性雰囲気中で800℃以上の温度で焼結したものである。
これによって耐熱硬化性樹脂が炭化されてガラス状炭素となり砥粒同士を結合させるというものである。このガラス状炭素は2500℃以上の温度で安定し耐熱性と耐久性に優れているとしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、通常のフェノール樹脂を焼成してガラス状炭素とする場合、砥粒とフェノール樹脂の混合物を先ず固化させ、次にこの固化体を不活性雰囲気中で800℃以上の温度でガラス状炭素に変換するが、このガラス状炭素に変換する際にガスによる発泡作用が生じるために焼成後に生成されるガラス状炭素は脆弱で砥粒保持力が小さいという欠点がある。
本発明は、このような実情に鑑みて、従来のガラス状炭素よりも強度と砥粒保持力の高いアモルファスカーボンを結合相とする砥石を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る砥石は、結合相中に砥粒が分散配置されてなる砥石において、結合相がフェノール−ホルムアルデヒド樹脂をアモルファスカーボン化したアモルファスカーボン粒で構成され、前記砥粒の粒径が2〜4μmとされるとともに、前記アモルファスカーボン粒は平均粒径が5〜50μmであって、このアモルファスカーボン粒は前記砥粒よりも粒径が大きくされていて、これらアモルファスカーボン粒の粒界に前記砥粒が偏析されて成ることを特徴とする。隣り合う複数のアモルファスカーボン粒の粒界に超砥粒等の砥粒が偏析されるために砥粒のピッチが一定になり、しかもフェノール−ホルムアルデヒド樹脂をアモルファスカーボン化することでこのアモルファスカーボン粒からなる結合相の砥粒保持力が高く、結合相の硬さはショア硬さにして100〜120となり硬度が大きく耐摩耗性が高い。しかもアモルファスカーボン粒が固体潤滑剤として機能するために研削時の被削材に対する接触抵抗が小さい。
【0006】
尚、アモルファスカーボン粒は平均粒径が5〜50μmであってもよい。
アモルファスカーボン粒の平均粒径が50μmを越えると砥粒の切れ刃間隔が大きくなって被削材の面粗度が悪くなり、5μm未満になると砥粒の保持力が低下する。
【0007】
また本発明に係る砥石は、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂と砥粒の混合物を焼結した固化体を形成し、その後この固化体を高温の不活性雰囲気中で焼成することでフェノール−ホルムアルデヒド樹脂がアモルファスカーボン化されてアモルファスカーボン粒からなる結合相を構成し、これらアモルファスカーボン粒の粒界に砥粒が偏析されて成ることを特徴とする。フェノール−ホルムアルデヒド樹脂粒は焼結時に溶解することなく砥粒との混合物として固化体をなし、この固化体を高温の不活性雰囲気で焼成してフェノール−ホルムアルデヒド樹脂をアモルファスカーボン化する際に、クラックやガスふくれを発生することがなく、形成されるアモルファスカーボンが緻密であり強度も高い。そのために砥粒保持力が高く、また固化体の焼成時にアモルファスカーボン粒の粒界に自動的に砥粒が集合させられることになり、砥粒はアモルファスカーボン粒の粒界毎に均一なピッチで配置される。しかもフェノール−ホルムアルデヒド樹脂をアモルファスカーボン化することで結合相の硬度が大きく耐摩耗性が高い。また焼結に際して、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂と砥粒の混合物を200℃程度の低温で焼結固化させ、更に非酸化性雰囲気中で500〜950℃程度の温度で焼成することでフェノール−ホルムアルデヒド樹脂をアモルファスカーボン化してもよい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面により説明する。図1は実施の形態による砥石の部分縦断面図である。実施の形態による砥石1は、例えば硬脆材料の鏡面研削用の砥石であり、砥粒層2はカップ型砥石等の台金の略リング状先端部に固定されていてもよいし、台金を設けることなく砥粒層2のみによって砥石が構成されていても良い。図1に示すように砥粒層2は結合相3中にダイヤモンドまたはcBN等からなる超砥粒4が分散配置されており、結合相3はフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を焼成して分散配置されてなる多数のアモルファスカーボン粒6からなり、隣り合うアモルファスカーボン粒6,6の粒界に複数の超砥粒4…を偏析した状態で配置されている。アモルファスカーボン粒6は超砥粒4よりも粒径が大きいために超砥粒4が隣り合うアモルファスカーボン粒6,6の間である粒界に打ち込まれる形で挟持固着されて配列されている。
【0009】
アモルファスカーボン粒6は略球形に近い多面体をなしていて粒径は特に限定されないが好ましくは50μm未満とされ、アモルファスカーボン粒6の粒径が50μm以上であると超砥粒4の分散ピッチが延びて研削効率が低下し被削材と結合相3との接触長さが増大する欠点が生じる。
ここで、アモルファスカーボン粒6の粒径を例えば10μm程度とし、超砥粒4の粒径を例えば2〜4μmとすると、超砥粒4は砥石1の研削面上にアモルファスカーボン粒6の粒径をピッチとして所定間隔で分散配置されていることになる。そしてアモルファスカーボン粒6は固体潤滑剤として機能する。
砥粒層2中のアモルファスカーボン粒6と超砥粒4の含有比率は体積(vol%)比で例えば95:5〜50:50の範囲とされる。ここで、超砥粒4の含有量が5vol%未満であると集中度が低下して研削効率が悪く、50vol%を越えるとアモルファスカーボン粒6による砥粒結合強度が低下して耐摩耗性が劣るという欠点が生じる。
またアモルファスカーボン粒6の硬さはショア硬さHs=100〜120に設定されており、ここでショア硬さHsが100未満になるとアモルファスカーボン粒6の強度が低下したり潤滑性が低下して砥石1が偏摩耗することを抑制できず、更に潤滑性が低いことから被削材との間の研削抵抗を低減して研削熱の発生を抑制できない。
【0010】
本実施の形態による砥石1は上述の構成を備えており、次にその製造方法について説明する。分子量2000以上で粒径30μm未満、例えば粒径10μmのフェノール−ホルムアルデヒド樹脂(例えば商品名「ベルパール」または「ユニベックス」)を例えばダイヤモンドの超砥粒4と例えば75:25の割合で混合して混合物中に超砥粒4を均一に分散配置させる。この混合物を約200℃で焼結して固化体にした後、非酸化性雰囲気で500〜950℃の温度で焼成する。これによってフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を炭素化してアモルファスカーボン粒6を焼成でき、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂粒は溶融することなくアモルファスカーボン化して粒化するので超砥粒4がアモルファスカーボン粒6の粒界に打ち込まれた状態で存在する。このようにして結合相3を構成するアモルファスカーボン粒6の粒界に超砥粒4が集合して配列されて砥石1が製作される。この砥石1の砥粒層2は、図1に示すようにその研削面においてアモルファスカーボン粒6の粒径をピッチとして超砥粒4が分散配置されたことになり、隣り合うアモルファスカーボン粒6,6の境界に沿って超砥粒が配列されている。
【0011】
そのため、この砥石1による研削時に超砥粒4は高い保持強度を以てアモルファスカーボン粒6で保持されて研削に供され、圧縮剛性も高いために精密な加工が可能となり、平坦度が高く面粗さが向上する。そして研削時に被削材と接触して摩耗するアモルファスカーボン粒6は固体潤滑剤として機能して潤滑性を向上できると共に耐熱性が高く破砕や摩耗が抑制できて砥石1の寿命を向上できる。
【0012】
上述のように本実施の形態によれば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂を焼成してなるアモルファスカーボン粒6で結合相を構成するために超砥粒4の保持強度と曲げ強度を高くすることができる上に、超砥粒4はアモルファスカーボン粒6の粒径寸法による一定ピッチで配列できて研削精度と効率がよい。
また、アモルファスカーボン粒6は固体潤滑相としての役割を果たし固体潤滑剤として機能するために研削時の結合相3の接触抵抗も小さく、従来潤滑剤として用いられていたCaF2、hBN、黒鉛(結晶質カーボン)等と比較して砥石1の耐摩耗性を向上させることができる。
【0013】
尚、潤滑剤としてアモルファスカーボン粒6とは別にその他の材料、例えばCaF2、hBN、黒鉛(結晶質カーボン)等を同時に結合相3中に分散配置してもよい。砥粒は超砥粒4に限らず一般砥粒を用いてもよい。
また本発明による砥石は鏡面研削に限定されることなく他の種類の研削にももちろん採用できる。
【0014】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る砥石は、結合相がフェノール−ホルムアルデヒド樹脂をアモルファスカーボン化したアモルファスカーボン粒で構成され、このアモルファスカーボン粒は前記砥粒よりも粒径が大きくされていて、これらアモルファスカーボン粒の粒界に前記砥粒が偏析されて成るから、砥粒の配置間隔が一定になり、アモルファスカーボン粒からなる結合相の砥粒保持力が高く硬さが大きい。しかもアモルファスカーボン粒が固体潤滑剤として機能するために研削時の被削材に対する接触抵抗が小さい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態による砥石の部分断面図である。
【符号の説明】
1 砥石
2 砥粒層
3 結合相
4 超砥粒
6 アモルファスカーボン粒
Claims (1)
- 結合相中に砥粒が分散配置されてなる砥石において、前記結合相がフェノール−ホルムアルデヒド樹脂をアモルファスカーボン化したアモルファスカーボン粒で構成され、前記砥粒の粒径が2〜4μmとされるとともに、前記アモルファスカーボン粒は平均粒径が5〜50μmであって、このアモルファスカーボン粒は前記砥粒よりも粒径が大きくされていて、これらアモルファスカーボン粒の粒界に前記砥粒が偏析されて成ることを特徴とする砥石。
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