JP3849723B2 - ブレーキ倍力装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ブレーキ倍力装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来一般に、ブレーキ倍力装置は、シェル内に摺動自在に設けたバルブボデイと、このバルブボデイの外周部に設けたパワーピストンと、このパワーピストンの前後に形成した定圧室と変圧室と、上記バルブボデイ内に設けた弁機構と、上記定圧室と弁機構とを連通する定圧通路と、上記変圧室と弁機構とを連通する変圧通路と、上記弁機構を構成する弁プランジャを進退動させて上記各通路の連通状態を切換える入力軸とを備えている。
また上記構成を有するブレーキ倍力装置において、上記弁機構を構成する真空弁座又は大気弁座を進退動可能に設け、かつ該弁座にこれを進退動させるソレノイドを連動させたものも知られている(特開平4−262958号公報)。
かかる構成を有する自動ブレーキ倍力装置によれば、上記ソレノイドを励磁することにより上記真空弁座と弁体と着座させて真空弁を閉じさせるとともに、弁体を大気弁座から離座させて大気弁を開かせることができるので、ブレーキペダルが踏み込まれなくてもブレーキ作動を行なわせることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来一般のブレーキ倍力装置はブレーキ踏力を補助するものであるが、特に急制動時に踏力が不足した場合を考慮したものではない。
他方、自動ブレーキ倍力装置は、ブレーキペダルの踏込みの有無に拘らずブレーキ倍力装置を作動させるもので、やはり急制動時に踏力が不足した場合を考慮したものではない。
本発明はそのような事情に鑑み、急制動時に踏力が不足した場合にそれを補えるようにしたブレーキ倍力装置を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち、請求項1に記載した第1の発明は、シェル内に摺動自在に設けたバルブボデイと、このバルブボデイの外周部に設けたパワーピストンと、このパワーピストンの前後に形成した定圧室と変圧室と、上記バルブボデイ内に設けた弁機構と、上記定圧室と弁機構とを連通する定圧通路と、上記変圧室と弁機構とを連通する変圧通路と、上記弁機構を構成する弁プランジャを進退動させて上記各通路の連通状態を切換える入力軸とを備えたブレーキ倍力装置において、
上記バルブボデイの外周にアウターボデイを摺動自在に設けて、該アウターボデイとバルブボデイとの間に上記変圧室に連通する第2変圧通路を形成するとともに、該アウターボデイがバルブボデイに対して進退動されることによってそれぞれ開閉作動され、該アウターボデイが一方の摺動端に保持された非作動時に上記第2変圧通路が大気に連通するのを閉じる第2大気弁と、該アウターボデイが他方の摺動端に位置された作動時に上記定圧通路を閉じる第2真空弁とを設け、
また上記バルブボデイにシリンダを設けるとともに、上記アウターボデイにピストンを設けて該ピストンを上記シリンダ内に摺動自在に嵌合し、該ピストンのフロント側に真空室を、リヤ側に圧力室をそれぞれ形成し、上記真空室を上記定圧室に、上記圧力室を第2真空弁よりも弁機構側の定圧通路にそれぞれ連通させ、
さらに上記バルブボデイに、上記弁プランジャがバルブボデイに対して相対的に大きく前進された際に開かれて上記圧力室を変圧通路に連通させる開閉弁を設け、かつ上記弁プランジャが予め定めた位置よりも後退されたらアウターボデイを非作動位置に復帰させる連動部材を設けたものである。
また、請求項4に記載した第2の発明は、シェル内に摺動自在に設けたバルブボデイと、このバルブボデイの外周部に設けたパワーピストンと、このパワーピストンの前後に形成した定圧室と変圧室と、上記バルブボデイ内に設けた弁機構と、上記定圧室と弁機構とを連通する定圧通路と、上記変圧室と弁機構とを連通する変圧通路と、上記弁機構を構成する弁プランジャを進退動させて上記各通路の連通状態を切換える入力軸とを備えたブレーキ倍力装置において、
上記バルブボデイの外周部に筒状のアウターボデイを軸方向に移動可能に設けて、上記バルブボデイの外周部と上記アウターボデイの内周部との間に第2変圧通路を形成し、また上記弁機構とは別に上記アウターボデイの移動により開閉される第2大気弁および第2真空弁を設けて、上記弁プランジャが上記バルブボデイに対して相対的に大きく前進されて上記アウターボデイが上記バルブボデイに対して移動された際に、上記弁機構および上記変圧通路に加えて、上記第2変圧通路を介して上記変圧室に大気を導入するとともに、上記弁プランジャが上記バルブボデイに対して予め定めた位置よりも後退するまでは、上記弁機構の切換状態に係らず上記第2変圧通路を介して上記変圧室に大気を導入し続けるように構成したものである。
【0005】
【作用】
上記第1の発明によれば、非作動時には、上記アウターボデイは一方の摺動端に保持されて第2大気弁が閉じているので、変圧室が第2変圧通路を介して大気に連通することはない。またこの状態では、弁機構は変圧通路と定圧通路とを連通させて変圧室を定圧室に連通させており、かつ第2真空弁が開いているので、圧力室には真空が導入されて真空室と同圧になっており、したがってアウターボデイが作動されることがない。
この状態から急制動以外の通常の制動が行なわれた際には、弁プランジャはバルブボデイに対して相対的に大きく前進されることがないので、上記開閉弁は閉じたままとなり、したがって圧力室が変圧通路に連通されることがないので、上記アウターボデイは一方の摺動端に保持されたままとなっている。この際には弁機構が作動されるので、従来と同様にして倍力作用が行なわれる。
他方、急制動が行なわれた際には、弁プランジャはバルブボデイに対して相対的に大きく前進されるので上記開閉弁が開かれ、それにより圧力室が変圧通路に連通されて圧力室と真空室との間に差圧が発生する。上記アウターボデイはその差圧力により前進端に保持されるようになるので、第2真空弁が閉じられるとともに第2大気弁が開いて変圧室が第2変圧通路を介して大気に連通される。この状態では、弁機構および変圧通路を介して大気が変圧室に導入されるとともに、この弁機構とは別個に第2変圧通路を介しても大気が変圧室に導入されて、倍力作用が行なわれる。
この際、ブレーキペダルの踏込みが解除されて弁プランジャがバルブボデイに対して予め定めた位置よりも後退されなければ、倍力作用が継続して行なわれる。つまり、仮にブレーキペダルの踏込み力が弱くて上記弁プランジャがバルブボデイに対して僅かに後退され、それによって弁機構の通常の作用により流路が切換わり、変圧通路と定圧通路とが連通したとしても、上記第2真空弁が閉じているので変圧室が定圧室に連通することがない。そして変圧室には上記第2変圧通路を介して大気が導入され続けるので、倍力作用が継続して行なわれるようになる。したがって、ブレーキペダルの踏込み力が弱くても強力な制動力を得ることができる。
他方、上記ブレーキペダルの踏込みが解除されて弁プランジャがバルブボデイに対して予め定めた位置よりも後退されると、上記連動部材がアウターボデイを後退させて元の非作動位置に復帰させるので、第2大気弁が閉じるとともに第2真空弁が開いた最初の状態に復帰し、また弁機構も最初の状態に復帰しているので、ブレーキ倍力装置は元の非作動状態に復帰されるようになる。
また、上記第2の発明によれば、入力軸が緩やかに前進される通常の制動が行なわれた際には、弁プランジャはバルブボデイに対して相対的に大きく前進されないので、上記第2変圧通路を介して上記変圧室に大気が導入されず、従来と同様に上記弁機構及び上記変圧通路を介して上記変圧室に大気が導入される。そのため、従来と同様にして倍力作用が行なわれる。
他方、入力軸が急激に前進されて急制動が行なわれた際には、弁プランジャはバルブボデイに対して相対的に大きく前進されるので、上記弁機構および上記変圧通路に加えて上記第2変圧通路を介して上記変圧室に大気が導入される。そして、上記弁プランジャが上記バルブボデイに対して予め定めた位置よりも後退するまでは上記弁機構及び上記変圧通路を介して上記変圧室に大気が導入され続ける。したがって、ブレーキペダルの踏込み力が弱くても強力な制動力を得ることができる。
なお、上記ブレーキペダルの踏込みが解除されて弁プランジャがバルブボデイに対して予め定めた位置よりも後退されると、上記弁機構、上記変圧通路および上記第2変圧通路を介しての上記変圧室への大気の導入が停止される。これによりブレーキ倍力装置は非作動状態に復帰する。
【0006】
【実施例】
以下図示実施例について本発明を説明すると、図1において、シェル1内に概略筒状のバルブボデイ2を摺動自在に設けてあり、かつバルブボデイ2のリヤ側に形成した筒状部2aに筒状のアウターボデイ3を、後に詳述するように一定の範囲だけ軸方向に摺動できるように設けている。そして上記アウターボデイ3の外周面をシール部材4により気密を保ってシェル1の外部に突出させている。
上記バルブボデイ2の外周部にはパワーピストン11を設けてあり、このパワーピストン11の背面にダイアフラム12を張設して、パワーピストン11の前後にそれぞれ定圧室Aと変圧室Bとを形成している。そして上記バルブボデイ2の筒状部2a内に弁機構13を収納してあり、この弁機構13によって定圧室A、変圧室Bおよび大気との間の流体回路を切り換えることができるようにしている。
【0007】
上記弁機構13は、バルブボデイ2内に摺動自在に嵌合した弁プランジャ14と、この弁プランジャ14に形成した環状の大気弁座15aと、この大気弁座15aを囲んで上記バルブボデイ2に形成した環状の真空弁座16aと、さらに両弁座15a、16aに図1の右方からポペットリターンスプリング17の弾撥力によって着座する弁体18とを備えている。上記弁プランジャ14の右端部に図示しないブレーキペダルに連動させた入力軸19を連結してあり、上記弁機構13は入力軸19に連動して作動されるようになっている。そしてこの弁機構13は、通常はバルブリターンスプリング20によって図示非作動状態に保持されている。
上記真空弁座16aと弁体18とから構成される真空弁16の外周側の空間は、バルブボデイ2に形成した概略軸方向の定圧通路21(21a〜21e)を介して定圧室Aに連通させてあり、この定圧室A内には常時負圧が導入されるようになっている。他方、上記真空弁16よりも内周側で、大気弁座15aと弁体18とから構成される大気弁15よりも外周側の空間は、バルブボデイ2に形成した半径方向の通路22aとアウターボデイ3に形成した貫通孔22bとからなる変圧通路22を介して変圧室Bに連通させている。
そしてさらに、上記大気弁15よりも内周側の空間は、バルブボデイ2の筒状部2aの内周面と入力軸19の外周面との間隙に形成した圧力通路23と、該圧力通路23に設けたフィルタ24と、上記アウターボデイ3を覆うダストカバー25に設けた多数の貫通孔25aと、さらに該貫通孔25aに設けたフィルタ26とを介して大気に連通させている。
【0008】
上記バルブボデイ2に形成した半径方向の変圧通路22内には二股状のキー部材31を遊嵌貫通させて該キー部材31をバルブボデイ2の軸方向に所要量だけ変位可能に設けてあり、かつこのキー部材31を上記弁プランジャ14に股がらせて該弁プランジャ14に形成した環状溝14a内に係合させている。
上記キー部材31のバルブボデイ2から突出した端部は、図示非作動状態ではシェル1の内壁面に当接するようになっており、従来周知のように、それによって次の入力軸19の前進時に直ちに弁機構13の流路が切換えられるようにしている。
また、上記弁プランジャ14の左側にはプレートプランジャ32およびリアクションディスク33を順次配設し、このリアクションディスク33はプッシュロッド34の右端部に形成した凹部内に配設してある。そして上記プッシュロッド34の左端部を図示しないシール部材を介してフロントシェル1の軸部から摺動自在に外部に突出させてマスターシリンダのピストンに連動させている。さらに、上記バルブボデイ6はリターンスプリング35によって、通常は図示非作動位置に保持している。
【0009】
次に、上記アウターボデイ3のリヤ側端部と該リヤ側端部に対向させて上記バルブボデイ2に形成した弁座2bとから第2大気弁41を、またアウターボデイ3のフロント側端部と該フロント側端部に対向させて上記バルブボデイ2に形成した弁座2cとから第2真空弁42をそれぞれ構成している。
上記第2大気弁41と第2真空弁42とはそれぞれアウターボデイ3の進退動に応じて開閉作動されるようになっており、アウターボデイ3とバルブボデイ2との間に弾装したばね43により該アウターボデイ3がリヤ側の摺動端に保持された非作動時には、上記第2大気弁41が閉じられるとともに第2真空弁42が開かれ、またアウターボデイ3が上記ばね43に抗してフロント側の摺動端に保持された作動時には、上記第2大気弁41が開かれるとともに第2真空弁42が閉じられるようになっている。
上記第2大気弁41は、アウターボデイ3とバルブボデイ2との間に形成した第2変圧通路44と大気との間の連通を開閉するようになっている。この第2変圧通路44は、上記アウターボデイ3の内周面に形成した軸方向に沿うスプライン状の溝から構成してあり、該第2変圧通路44は上記変圧通路22に連通されて、常時変圧室Bに連通している。なお、第2変圧通路44のフロント側はアウターボデイ3に固定したシール部材45によってシールしてある。
他方、上記第2真空弁42は、上記定圧通路21の途中を開閉することができるようになっており、これにより第2真空弁42が閉じた状態では、弁機構13の流路がどのように切換わっても、該弁機構13に負圧が導入されることがないようにしている。
【0010】
上記アウターボデイ3は、アクチエータ50によって進退動されるようになっている。このアクチエータ50は、上記アウターボデイ3のフロント側端部の外周に半径方向外方に突出させて形成したピストン51と、上記バルブボデイ2に設けられて上記ピストン51が摺動自在に嵌合されたシリンダ52とから構成してある。
図示実施例では、上記シリンダ52はバルブボデイ2に形成した環状の凹部2dと、この凹部2dのリヤ側でバルブボデイ2に連結した断面L字形の筒状部材53と、上記凹部2dのフロント側すなわち底部側でバルブボデイ2に連結したプレート状部材54とから構成してある。そしてアウターボデイ3は上記筒状部材53とプレート状部材54とを摺動自在に貫通し、それぞれの部材53、54の軸部に設けたシール部材55、56によって気密が保持されている。
また、上記ピストン51とシリンダ52との間にダイアフラム57を張設してピストン51のフロント側に真空室58を、リヤ側に圧力室59をそれぞれ形成し、上記真空室58をプレート状部材54に穿設した貫通孔54aを介して上記第2真空弁42よりも定圧室A側の定圧通路21dに、また圧力室59を第2真空弁42よりも弁機構13側の定圧通路21bにそれぞれ連通させている。
このとき、上記ピストン51の受圧面積は、すなわち真空室58と圧力室59との間に発生する差圧力の大きさは、アウターボデイ3をリヤ側に付勢する上記ばね43の弾撥力よりも大きく設定してあり、それにより圧力室59に大気が導入された際にはばね43に抗してアウターボデイ3をフロント側の摺動端に保持することができるようにしている。
他方、上記差圧力は、上記ばね43の弾撥力とバルブリターンスプリング20の弾撥力との合計よりも小さく設定してあり、後に詳述するようにアウターボデイ3にバルブリターンスプリング20の弾撥力が作用した際には、アウターボデイ3をフロント側の摺動端から元のリヤ側の摺動端に復帰させることができるようにしている。
【0011】
さらに上記バルブボデイ2に、上記弁プランジャ14が該バルブボデイ2に対して相対的に大きく前進された際に開かれる開閉弁63を設けている。この開閉弁63はバルブボデイにリテーナを介して固定されたシール部材からなり、通常は弁プランジャ14の外周面に摺接してその部分をシールしているが、弁プランジャ14が相対的に大きく前進されて該シール部材が弁プランジャ14に形成したリヤ側の小径部に位置した際には、該シール部材の内周面と弁プランジャ14の外周面との間に間隙が形成されるようになっている。
そしてその際には、開閉弁63のリヤ側に位置する変圧通路22と、開閉弁63のフロント側に形成されて上記定圧通路21bに連通する通路64とが連通され、それによって上記アクチエータ50の圧力室59をダイアフラム57に穿設した貫通孔57a、上記定圧通路21bおよび通路64を介して変圧通路22に連通させることができるようにしている。
また上記定圧通路21bおよび通路64はバルブボデイ2の半径方向に一直線上で形成してあり、これら通路内に連動部材65を設けている。この連動部材65は上記キー部材31と同様に二股状に形成してあり、該連動部材65の内方端部を上記弁プランジャ14に股がらせて該弁プランジャ14に形成した環状溝14b内に係合させている。
さらに、上記連動部材65の外方端部は上記アウターボデイ3に係合させてあり、アウターボデイ3がリヤ側端部に移動されている非作動状態において、弁プランジャ14が非作動位置から相対的に大きく前進された際には該弁プランジャ14とアウターボデイ3とを連動させてアウターボデイ3を前進させることができるようにしてある。他方、アウターボデイ3がフロント側端部に移動されている作動状態において、上記弁プランジャ14がバルブボデイ2に対して予め定めた位置よりも後退された際にも弁プランジャ14とアウターボデイ3とを連動させて、アウターボデイ3を非作動位置に復帰させることができるようにしている。
【0012】
以上の構成において、非作動状態ではアウターボデイ3はばね43の弾撥力によってリヤ側の後退端に保持され、第2大気弁41が閉じるとともに第2真空弁42が開いている。また弁機構13の大気弁15は閉じており、真空弁16が開いている。
この非作動状態からブレーキペダルが踏込まれて入力軸19が前進されると、弁プランジャ14がバルブボデイ2に対して前進されるが、急制動以外の通常の制動によって入力軸19が前進された際には弁プランジャ14はバルブボデイ2に対して相対的に大きく前進されることがないので、上記開閉弁63は閉じたままとなっており、また連動部材65が弁プランジャ14とアウターボデイ3とを連動させることがないので、アウターボデイ3はリヤ側の摺動端に保持されたままとなって、非作動状態を保持している。
他方、弁機構13は上記弁プランジャ14の前進によってその流路が切換えられ、従来周知のように真空弁16が閉じるとともに大気弁15が開くので、大気はフィルタ26、24、圧力通路23および変圧通路22を介して変圧室B内に導入されるようになる。これにより変圧室Bと定圧室Aとの間に差圧が発生するので、パワーピストン11が前進されて倍力作用が行なわれる。
【0013】
次に、急制動によって入力軸19が前進された際には、弁プランジャ14がバルブボデイ2に対して相対的に大きく前進されるので、上記開閉弁63が開かれるとともに、連動部材65が弁プランジャ14とアウターボデイ3とを連動させてアウターボデイ3をばね43に抗して前進させるようになる。また、弁機構13もその流路を切換えるようになる。
その結果、大気は弁機構13を介して、すなわち上記フィルタ26、24、圧力通路23および変圧通路22を介して変圧室B内に導入されるとともに、第2変圧通路44を介しても変圧室B内に導入されるようになる。これと同時に、上記開閉弁63が開くことにより、変圧通路22内に導入された大気は開閉弁63を流通して通路64に流入し、さらに定圧通路21bを介してアクチエータ50の圧力室59内に流入する。
上記定圧通路21b内に流入した大気の一部は、第2真空弁42を介して定圧室Aに逃げようとするが、この際には連動部材65によってアウターボデイ3が前進され、それによって第2真空弁42の流路面積が狭められているので、上記圧力室59と真空室58との間に差圧が発生する。この際、弁プランジャ14はブレーキペダルの踏込みにより前進されているので、アウターボデイ3には弁プランジャ14および連動部材65を介してバルブリターンスプリング20の弾撥力が作用することがなく、したがって上記差圧力はばね43に抗してアウターボデイ3をさらに前進させて前進端に保持するようになる。それによって第2真空弁42が完全に閉じられるとともに、アウターボデイ3は上記差圧力によってその状態に保持される。
【0014】
この状態では、ブレーキペダルの踏込みが解除されて弁プランジャ14がバルブボデイ2に対して予め定めた位置よりも後退されなければ、ブレーキペダルの踏込み力が弱くて相対的に弁プランジャ14がバルブボデイ2に対して僅かに後退されたとしても、倍力作用が継続して行なわれる。
つまり図2に示すように、上記弁プランジャ14がバルブボデイ2に対して僅かに後退された場合には、弁機構13の通常の作用により流路が切換わり、大気弁15が閉じるとともに真空弁16が開くようになる。真空弁16が開くと、従来装置では変圧室Bの大気が定圧室Aに逃げるようになるが、本実施例では第2真空弁42が閉じているので、変圧室Bの大気が定圧室Aに逃げることができない。他方、上記大気弁15が閉じても第2大気弁41が開いているので、大気は継続して変圧室B内に供給され続けるので、ブレーキ倍力装置はやがて全負荷状態となる。
これにより、ブレーキペダルの踏込み力が弱くても強力な制動力を得ることができる。またこの際、プッシュロッド34に作用するブレーキ反力はリアクションディスク33を介してプレートプランジャ32および弁プランジャ14に作用するが、ブレーキペダルの踏込み力が弱い場合には上記プレートプランジャ32および弁プランジャ14はブレーキ反力を受けて後退され、プレートプランジャ32がバルブボデイ2の段部に当接する(図2の状態)。これによりブレーキ反力はバルブボデイ2によって受けられるようになるので、弁プランジャ14および入力軸19にはブレーキ反力が作用しなくなり、したがってブレーキ倍力装置が全負荷状態となってもブレーキペダルがブレーキ反力によって重くなることがない。
【0015】
さらに上述した状態からブレーキペダルの踏込みが解除されると、弁プランジャ14は予め定めた位置を越えて大きく後退されるようになる。すると、バルブリターンスプリング20の弾撥力が弁プランジャ14および連動部材65を介してアウターボデイ3に作用するようになるので、該アウターボデイ3は上記アクチエータ50の真空室58と圧力室59との差圧力に抗して後退されるようになり、それによって第2真空弁42を開くとともに第2大気弁41を閉じさせる。すると、上記第2大気弁41の閉鎖により変圧室Bへの大気の供給が停止されるとともに、この際には既に弁機構13の大気弁15が閉じ、真空弁16が開いているので、変圧室B内の大気は上記真空弁16および第2真空弁42を介して定圧室Aに逃げ、それによって定圧室Aと変圧室B間の差圧力が減少する。またこれと同時に、上記アクチエータ50の圧力室59内の大気も定圧室Aに逃げるので、やがてバルブボデイ2およびパワーピストン11は元の非作動位置に復帰されるようになる。
【0016】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、ブレーキペダルの踏込み力が弱くても強力な制動力を得ることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図。
【図2】図1と異なる状態を示す断面図。
【符号の説明】
1 シェル 2 バルブボデイ 3 アウターボデイ
11 パワーピストン 13 弁機構 14 弁プランジャ
15 大気弁 16 真空弁 19 入力軸
21 定圧通路 22 変圧通路 32 プレートプランジャ
33 リアクションディスク 34 プッシュロッド
41 第2大気弁 42 第2真空弁 44 第2変圧通路
50 アクチエータ 51 ピストン 52 シリンダ
58 真空室 59 圧力室 63 開閉弁
65 連動部材

Claims (4)

  1. シェル内に摺動自在に設けたバルブボデイと、このバルブボデイの外周部に設けたパワーピストンと、このパワーピストンの前後に形成した定圧室と変圧室と、上記バルブボデイ内に設けた弁機構と、上記定圧室と弁機構とを連通する定圧通路と、上記変圧室と弁機構とを連通する変圧通路と、上記弁機構を構成する弁プランジャを進退動させて上記各通路の連通状態を切換える入力軸とを備えたブレーキ倍力装置において、
    上記バルブボデイの外周にアウターボデイを摺動自在に設けて、該アウターボデイとバルブボデイとの間に上記変圧室に連通する第2変圧通路を形成するとともに、該アウターボデイがバルブボデイに対して進退動されることによってそれぞれ開閉作動され、該アウターボデイが一方の摺動端に保持された非作動時に上記第2変圧通路が大気に連通するのを閉じる第2大気弁と、該アウターボデイが他方の摺動端に位置された作動時に上記定圧通路を閉じる第2真空弁とを設け、
    また上記バルブボデイにシリンダを設けるとともに、上記アウターボデイにピストンを設けて該ピストンを上記シリンダ内に摺動自在に嵌合し、該ピストンのフロント側に真空室を、リヤ側に圧力室をそれぞれ形成し、上記真空室を上記定圧室に、上記圧力室を第2真空弁よりも弁機構側の定圧通路にそれぞれ連通させ、
    さらに上記バルブボデイに、上記弁プランジャがバルブボデイに対して相対的に大きく前進された際に開かれて上記圧力室を変圧通路に連通させる開閉弁を設け、かつ上記弁プランジャが予め定めた位置よりも後退されたらアウターボデイを非作動位置に復帰させる連動部材を設けたことを特徴とするブレーキ倍力装置。
  2. 上記弁プランジャはバルブボデイに設けたプレートプランジャおよびリアクションディスクを介してプッシュロッドに連動しており、上記プレートプランジャは、ブレーキ反力により一定量後退されたらバルブボデイに当接するようになっていることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ倍力装置。
  3. 上記連動部材は、上記弁プランジャがバルブボデイに対して相対的に大きく前進された際にアウターボデイを前進させるようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブレーキ倍力装置。
  4. シェル内に摺動自在に設けたバルブボデイと、このバルブボデイの外周部に設けたパワーピストンと、このパワーピストンの前後に形成した定圧室と変圧室と、上記バルブボデイ内に設けた弁機構と、上記定圧室と弁機構とを連通する定圧通路と、上記変圧室と弁機構とを連通する変圧通路と、上記弁機構を構成する弁プランジャを進退動させて上記各通路の連通状態を切換える入力軸とを備えたブレーキ倍力装置において、
    上記バルブボデイの外周部に筒状のアウターボデイを軸方向に移動可能に設けて、上記バルブボデイの外周部と上記アウターボデイの内周部との間に第2変圧通路を形成し、また上記弁機構とは別に上記アウターボデイの移動により開閉される第2大気弁および第2真空弁を設けて、上記弁プランジャが上記バルブボデイに対して相対的に大きく前進されて上記アウターボデイが上記バルブボデイに対して移動された際に、上記弁機構および上記変圧通路に加えて、上記第2変圧通路を介して上記変圧室に大気を導入するとともに、上記弁プランジャが上記バルブボデイに対して予め定めた位置よりも後退するまでは、上記弁機構の切換状態に係らず上記第2変圧通路を介して上記変圧室に大気を導入し続けるように構成したことを特徴とするブレーキ倍力装置。
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