JP3838780B2 - 耐火性シート状成形体及びシート積層体 - Google Patents
耐火性シート状成形体及びシート積層体 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、天井材、床材、間仕切り壁等の建築材料に使用される耐火性シート状成形体及びシート積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築材料には、耐火性、即ち、それ自体が燃えにくく断熱性に優れ、更には火炎を裏面に廻すことがない性能が要求される。耐火性の試験方法としては、例えば表面から加熱して裏面温度を測定する方法があり、建築材料においては、表面を1000℃程度に加熱した際に裏面温度が260℃よりも低くなることが要求されている。
【0003】
このような耐火性に優れた建築材料としては、石膏、パーライト、ALC等の材料からなる耐火壁が広く用いられている。しかしながら、これらの材料に充分な耐火性を発揮させるためには、厚みを増す必要があり、厚みを増すと施工性に問題があった。
【0004】
特開昭61−1753号公報には、耐火壁の周縁に加熱膨張層を付設したものが開示されている。しかしながら、この技術は、耐火壁の収縮により目地部に隙間が発生するのを防止することによって、火炎が裏面に廻るのを阻止することを主目的とするものであり、断熱性に劣るという問題点があった。
【0005】
特開平6−80909号公報には、セメント、含水無機物等からなる組成物の微粉を吹きつける方法が開示されている。しかしながら、この方法は、現場での吹きつけ施工を必要とするため施工性に劣り、また、厚みが均一にならない場合は充分な耐火性を発揮することができなかった。更には、施工する際に微粉が飛散するために、健康面への影響が大きかった。
【0006】
施工性を向上するため、2枚の金属板の間に、不燃性の無機質材料又は樹脂からなる板を挟みこんだ建築パネルも開発されているが、1000℃で加熱した場合には、裏面温度が基準値260℃よりも高くなり、耐火性能という点では不充分であった。
【0007】
また、樹脂に多量の加熱膨張性の無機質材料を混入した耐火性樹脂シートが建築材料として検討されている。このような樹脂シートは、加熱により膨張して耐火断熱層(燃焼残渣)を形成し、耐火性能を発現する。
上記樹脂シートは、通常、燃焼時に鋼材や壁材自身の温度上昇を防ぐ目的で、柱、壁材等の建築材料に貼り合わせて使用されることが多い。このため、垂直部位に使用する場合には、燃焼時及び燃焼後共に、柱、壁材等から断熱層となる燃焼残渣が崩れ落ちることなく、保持されていることが必要となる。
このため、燃焼残渣の強度(形状保持性)が、耐火性能を発現する材料の重要な性能因子である。
【0008】
上記耐火断熱層を形成し耐火性能を発現する材料として、例えば中和処理された熱膨張性黒鉛が使用されている。しかし、従来の中和処理された熱膨張性黒鉛の膨張開始温度は180℃以上であり、180℃より低い温度では熱膨張性黒鉛の耐火断熱層が形成され難いため、小規模火災や火災初期の温度上昇の低い条件下、又は壁等の熱伝導が遅い構造体では耐火性能が十分に発揮されないという問題点があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、中和処理された熱膨張性黒鉛を含有する樹脂組成物から形成され、小規模火災や火災初期の温度上昇の低い条件下、又は壁等の熱伝導が遅い構造体において、耐火断熱層を形成して耐火性能を十分に発揮することができる耐火性シート状成形体及びシート積層体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明(以下、第1発明という)の耐火性シート状成形体は、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質よりなる樹脂分、リン化合物、膨張開始温度が140〜180℃の中和処理された熱膨張性黒鉛並びに無機充填剤を含有し、上記樹脂分100重量部に対して、リン化合物と中和処理された熱膨張性黒鉛との合計量が20〜200重量部、並びに、無機充填剤が50〜500重量部からなり、かつ、中和処理された熱膨張性黒鉛とリン化合物との重量比が0.01〜9である樹脂組成物から形成されてなることを特徴とする。
【0011】
第1発明の耐火性シート状成形体は、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質よりなる樹脂分、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛ならびに無機充填剤を含有する樹脂組成物(I)から形成される。
【0012】
上記樹脂分としては特に限定されず、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリブテン、ブチルゴム、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ニトリルゴム等が挙げられる。
【0013】
中でも、クロロプレン系樹脂、塩素化ブチル系樹脂等のハロゲン化された樹脂は、それ自体難燃性が高く、さらに熱による脱ハロゲン化反応により、架橋が起こり、加熱後の残渣の強度が向上する点において好ましい。
上記樹脂分として例示したものは、非常に柔軟でゴム的性質を持っていることから、上記無機充填剤を高充填することが可能であり、得られる樹脂組成物が柔軟でフレキシブルなものとなる。より柔軟でフレキシブルな樹脂組成物を得るためには、非加硫ゴムやポリエチレン系樹脂が好適に用いられる。
【0014】
上記樹脂分は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
樹脂分の溶融粘度、柔軟性、粘着性等の調整のため、2種以上の樹脂分をブレンドしたものをベース樹脂として用いてもよい。
【0015】
上記樹脂分には、耐火性能を阻害しない範囲で、架橋や変性が施されてもよい。上記樹脂分の架橋や変性を行う場合は、予め樹脂分に架橋や変性を施してもよく、後述のリン化合物や無機充填剤等の他の成分の配合時又は配合した後で架橋や変性を施してもよい。
【0016】
上記架橋方法については、特に限定されず、上記樹脂分について通常行われる架橋方法、例えば、各種架橋剤、過酸化物等を使用する架橋方法、電子線照射による架橋方法などが挙げられる。
【0017】
上記樹脂分の溶融、軟化温度は、後述する中和処理された熱膨張性黒鉛の膨張開始温度以下であることが好ましい。
【0018】
上記リン化合物としては特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類;下記一般式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、耐火性の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム類、及び、下記一般式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、費用等の点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
【0019】
【化1】
【0020】
式中、R1 及びR3 は、水素原子、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6〜16のアリール基を表す。R2 は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
【0021】
上記赤リンは、少量の添加で難燃効果が向上する。上記赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。
【0022】
上記ポリリン酸アンモニウム類としては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取扱い性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。
市販品としては、例えば、ヘキスト社製「AP422」、「AP462」、チッソ社製「テラージュC60」、「テラージュC70」、「テラージュC80」等が挙げられる。
【0023】
上記一般式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。なかでも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点においては好ましい。
上記リン化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記中和処理された熱膨張性黒鉛とは、従来公知の物質である熱膨張性黒鉛を中和処理したものである。上記熱膨張性黒鉛は、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理することにより生成するグラファイト層間化合物であり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
【0025】
上述のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和することにより、上記中和処理された熱膨張性黒鉛とする。
【0026】
上記脂肪族低級アミンとしては、特に限定されず、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
上記アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、特に限定されず、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
上記中和処理された熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP−EG」、UCAR Carbon社製「GRAFGuard#160」、「GRAFGuard#220」等が挙げられる。
【0027】
上記中和処理された熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュより小さくなると、黒鉛の膨張度が小さいため、所定の耐火断熱層が得られず、粒度が20メッシュより大きくなると、黒鉛の膨張度が大きいという利点はあるが、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質と混練する際に分散性が悪くなり、物性の低下が避けられない。
【0028】
上記中和処理された熱膨張性黒鉛としては、膨張開始温度140〜180℃のものが用いられる。膨張開始温度が、140℃未満では熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質との混練時に膨張して耐火性能が低下し、180℃を超えると小規模火災や火災初期の温度上昇の低い条件下や、壁等の熱伝導が遅い構造体では耐火性能が十分に発揮されなくなる。
【0029】
上記無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム、石膏繊維、けい酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化けい素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム「MOS」(商品名)、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化けい素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥などが挙げられる。
これらの中でも、含水無機物及び金属炭酸塩が好ましい。
【0030】
一般的に、上記無機充填剤は、骨材的な働きをすることから、残渣強度の向上や熱容量の増大に寄与すると考えられる。上記無機充填剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記無機充填剤の粒径としては、0.5〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜50μmである。
また、粒径の大きい無機充填剤と粒径の小さいものとを組み合わせて使用することがより好ましく、このような組み合わせによって、シート状成形体の力学的性能を維持したまま、高充填化することが可能となる。
【0032】
上記樹脂組成物(I)において、リン化合物及び中和処理された熱膨張性黒鉛の配合量は、樹脂分100重量部に対して20〜200重量部が好ましい。
配合量が、20重量部未満では加熱後の燃焼残渣量が不十分となり、200重量部を超えると機械的物性の低下が大きくなり、使用に耐えられなくなる。
【0033】
上記中和処理された熱膨張性黒鉛とリン化合物との重量比(熱膨張性黒鉛/リン化合物)は0.01〜9である。中和処理された熱膨張性黒鉛の配合比率が多くなると、燃焼時に膨張した黒鉛が飛散し、十分な膨張断熱層が形成されず、リン化合物との配合比率が多くなると、十分な膨張断熱層が形成されないため、十分な断熱性能が得られない。
【0034】
次に、請求項2記載の発明(以下、第2発明という)の耐火性シート状成形体について説明する。
第2発明の耐火性シート状成形体は、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質よりなる樹脂分、リン化合物、膨張開始温度が140〜180℃と180℃を超えて250℃以下の2種の中和処理された熱膨張性黒鉛の混合物並びに無機充填剤を含有し、樹脂分100重量部に対して、リン化合物と2種の中和処理された熱膨張性黒鉛の混合物との合計量20〜200重量部、並びに、無機充填剤50〜500重量部からなり、かつ、膨張開始温度が140〜180℃の中和処理された熱膨張性黒鉛と180℃を超えて250℃以下の中和処理された熱膨張性黒鉛との重量比が0.1〜10であり、リン化合物と2種の中和処理された熱膨張性黒鉛の混合物との重量比が0.01〜9である樹脂組成物から形成されてなることを特徴とする。
【0035】
第2発明の耐火性シート状成形体は、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質からなる樹脂分、リン化合物、膨張開始温度が140〜180℃と180℃を超えて250℃以下の2種の中和処理された熱膨張性黒鉛の混合物並びに無機充填剤を含有する樹脂組成物(II)から形成される。
【0036】
上記樹脂組成物(II)における樹脂分、リン化合物及び無機充填剤としては、樹脂組成物(I)と同様のものが用いられる。
【0037】
上記樹脂組成物(II)において、中和処理された熱膨張性黒鉛として、膨張開始温度が140〜180℃であるものと、180℃を超えて250℃以下であるものとの2種の混合物が用いられる。このように膨張開始温度の異なる2種の熱膨張性黒鉛を用いることによって、幅広い温度範囲で耐火断熱層を形成し、様々な火災条件下で良好な耐火性能を発揮することができる。
【0038】
上記混合物において、膨張開始温度が140〜180℃の中和処理された熱膨張性黒鉛(以下、EG1という)と、180℃を超えて250℃以下の中和処理された熱膨張性黒鉛(以下、EG2という)との重量比(EG1/EG2)は、0.1〜10の範囲に制限される。混合物中、EG1の割合が多くなると混練時に膨張する熱膨張性黒鉛が多くなって耐火性能が低下し、EG2の割合が多くなると火災初期の低温条件や壁等の熱伝導が遅い構造体では十分な耐火性能が発揮され難くなる。
【0039】
上記膨張開始温度が140〜180℃の中和処理された熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、UCAR Carbon社製「GRAFGuard#160」(膨張開始温度が約160℃)が挙げられ、膨張開始温度が180℃を超えて250℃以下の中和処理された熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、UCAR Carbon社製「GRAFGuard#220」(膨張開始温度が約220℃)が挙げられる。
【0040】
上記樹脂組成物(II)において、各成分の含有量は、上記樹脂組成物(I)と同様の理由により、樹脂分100重量部に対して、リン化合物と2種の中和処理された熱膨張性黒鉛の混合物との合計量20〜200重量部、並びに、無機充填剤50〜500重量部である。
【0041】
また、上記リン化合物と2種の中和処理された熱膨張性黒鉛の混合物(EG1+EG2)との重量比(リン化合物/熱膨張性黒鉛の混合物)は、上記樹脂組成物(I)と同様の理由により、0.01〜9である。
【0042】
次に、請求項3記載の発明(以下、第3発明という)のシート積層体について説明する。
第3発明のシート積層体は、耐火性シート状成形体からなるA層とB層とが積層されたシート積層体であって、A層とB層との合計厚みが0.1〜15mm、かつ、A層とB層との厚み比(A層/B層)が0.01〜100であり、A層が、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質よりなる樹脂分100重量部に対して、リン化合物と膨張開始温度が140〜180℃の中和処理された熱膨張性黒鉛との合計量20〜200重量部、並びに、無機充填剤が50〜500重量部からなり、かつ、中和処理された熱膨張性黒鉛とリン化合物との重量比が0.01〜9である樹脂組成物から形成され、B層が、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質よりなる樹脂分100重量部に対して、リン化合物と膨張開始温度が180℃を超えて250℃以下の中和処理された熱膨張性黒鉛との合計量20〜200重量部、並びに、無機充填剤50〜500重量部からなり、かつ、中和処理された熱膨張性黒鉛とリン化合物との重量比が0.01〜9である樹脂組成物から形成されてなることを特徴とする。
【0043】
第3発明のシート積層体は、耐火性シート状成形体からなるA層とB層とが積層されたものであって、A層とB層との合計厚みが0.1〜15mm、かつ、A層とB層との厚み比(A層/B層)が0.01〜100である。
【0044】
上記シート積層体の厚みは、0.1mm未満では膨張しても十分な厚みの耐火断熱層が形成されず、15mmを超えると重くなって取扱い性が悪くなる。
また、A層とB層との厚み比において、A層の比率が増加すると混練時の温度上昇によって膨張して火災時の耐火性能が低下し、B層の比率が増加すると温度上昇の低い条件や熱伝導が遅い構造体で、十分な耐火性能が発揮され難くなるので、厚み比(A層/B層)は0.01〜100に制限される。
【0045】
上記シート積層体において、A層は、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質よりなる樹脂分、リン化合物と膨張開始温度が140〜180℃の中和処理された熱膨張性黒鉛、並びに、無機充填剤を含有する樹脂組成物 (III)から形成され、B層は、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質よりなる樹脂分、リン化合物と膨張開始温度が180℃を超えて250℃以下の中和処理された熱膨張性黒鉛、並びに、無機充填剤を含有する樹脂組成物(IV)から形成される。
【0046】
上記樹脂組成物 (III)及び(IV)における樹脂分、リン化合物及び無機充填剤としては、樹脂組成物(I)と同様のものが用いられる。
上記樹脂組成物 (III)において、中和処理された熱膨張性黒鉛は、膨張開始温度140〜180℃のものが用いられる。また、上記樹脂組成物(IV)において、中和処理された熱膨張性黒鉛は、膨張開始温度が180℃を超えて250℃以下のものが用いられる。
【0047】
上記樹脂組成物 (III)及び(IV)において、各成分の含有量は、上記樹脂組成物(I)と同様の理由により、樹脂分100重量部に対して、リン化合物と中和処理された熱膨張性黒鉛との合計量20〜200重量部、並びに、無機充填剤50〜500重量部である。
【0048】
上記樹脂組成物 (III)及び(IV)において、上記リン化合物と中和処理された熱膨張性黒鉛との重量比(リン化合物/熱膨張性黒鉛の混合物)は、上記樹脂組成物(I)と同様の理由により、0.01〜9である。
【0049】
上記シート積層体は、膨張開始温度の異なる中和処理された熱膨張性黒鉛を含有するA層とB層とを積層することによって、幅広い温度範囲で耐火断熱層を形成することができる。
【0050】
本発明において、上記水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の含水無機物は、加熱時の脱水反応によって生成した水のために吸熱が起こり、温度上昇が低減されて高い耐熱性が得られる点、及び、加熱残渣として酸化物が残存し、これが骨材となって働くことにより残渣強度が向上するので特に好ましい。水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムは、脱水効果を発揮する温度領域が異なるため、併用すると脱水効果を発揮する温度領域が広がり、より効果的な温度上昇抑制効果が得られることから、併用することが好ましい。
【0051】
上記炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩は、上記リン化合物との反応で膨張を促進すると考えられ、特に、リン化合物として、ポリリン酸アンモニウムを使用した場合に、高い膨張効果が得られる。また、上記金属炭酸塩は有効な骨材として働き、燃焼後に形状保持性の高い燃焼残渣を形成する。
【0052】
上記金属炭酸塩の中でも、さらに、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸亜鉛等の周期律表IIb族金属の炭酸塩などが好ましい。
【0053】
上記樹脂組成物には、樹脂組成物の物性を損なわない範囲で、難燃剤、酸化防止剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料等が添加されてもよい。また、後述の耐火性シート状成形体又はシート積層体に粘着性を付与するために粘着付与剤が添加されてもよい。
【0054】
上記樹脂組成物は、上記各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、二本ロール等従来公知の混練装置を用いて溶融混練することにより得ることができる。得られた樹脂組成物は、例えば、プレス成形、押出成形、カレンダー成形等、従来公知の成形方法によって、耐火性シート状成形体とすることができる。
【0055】
上記シート積層体は、A層用及びB層用耐火性シート状成形体を積層することにより得られる。積層方法としては、例えば、プレス成形、共押出成形等、従来公知の方法が挙げられる。
【0056】
本発明の耐火性シート状成形体、シート積層体は、例えば、鉄骨等の耐火被覆材として用いられる。耐火被覆材として用いる場合は、構成として鉄骨の周囲に上記耐火性シート状成形体又はシート積層体を配置し、さらにその外側に不燃性材料からなるシートを配置することが好ましい。配置方法に関しては、内側から順を追って行ってもよく、鉄骨に対して予め積層しておいた耐火性シート状成形体又はシート積層体と不燃性材料からなるシートとを配置してもかまわない。
【0057】
上記耐火性シート状成形体、シート積層体は、例えば、火災の際に熱を受けて膨張することにより耐火断熱層を形成し、この耐火断熱層によって鉄骨へ熱が伝わるのを防止する。従って、この耐火断熱層は、鉄骨の全周で隙間なく形成されることが好ましい。また、上記不燃性材料からなるシートとしては、上記耐火性シート状成形体又はシート積層体の膨張によって形成される耐火断熱層に追随してある程度変形し、耐火断熱層の形状が崩れないように保持し得る材料が好ましい。
【0058】
上記不燃性材料からなるシートとしては、不燃性を有するものであれば特に限定されず、例えば、鋼板、亜鉛メッキ鋼板、ステンレス板、アルミ・亜鉛合金板、アルミニウム板等の金属板材料;珪酸カルシウム板、繊維混入珪酸カルシウム板、炭酸カルシウム板、石膏ボード板、強化石膏板、パーライトセメント板、繊維強化セメント板、木片セメント板、木粉セメント板、スラグ石膏板等の無機質板;ロックウール保温板、セラミックウールブランケット、アルミナシリカ繊維フェルト、セラミック紙、水酸化アルミ紙等のシート状物が挙げられる。
上記不燃性材料からなるシートは、これらのシート状物が複数枚貼り合わされたものであってもよい。
【0059】
上記不燃性材料からなるシートとして好ましくは、厚みの薄い金属板(箔)である。厚みの薄い金属板は、耐火性シート状成形体又はシート積層体が膨張する際に変形や湾曲することによって、破れや切断を起こさずに膨張を吸収する。
上記金属板の厚みは、0.1〜1mmが好ましい。厚みが、0.1mm未満では防炎材料や形状保持材として機能せず、1mmを超えると湾曲による膨張代の確保が難しくなる。
【0060】
また、火災時の膨張代確保のために空間を設けたり、燃焼時に熱収縮し空間確保につながる材料として、ハニカム構造体や発泡体を耐火性シート状成形体もしくはシート積層体の片側又は両側に配置してもよい。このとき使用される発泡体としては、一般にあるイソシアヌレートフォーム、ウレタンフォーム、ポリプロピレンフォーム等いずれのものも使用可能であり、厚みとしては耐火性シート状成形体やシート積層体の膨張性能に合わせて設定するのが好ましい。
【0061】
上記シート状成形体又はシート積層体は、熱照射量50kW/cm2 の条件下で完全燃焼させた際に、初期厚み(D0)と燃焼後の厚み(D1)との関係が、D1 /D0 =1.1〜20であるようになされてことが好ましい。
D1 /D0 が、1.1未満では加熱によって膨張しても十分な断熱性を発現せず、20を超えると発泡倍率が高くなり過ぎて燃焼残渣の強度が不足する。
【0062】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施例を説明する。
(実施例1,2、比較例1,2)
表1に示した配合量の、樹脂分、水添石油樹脂、ポリリン酸アンモニウム、中和処理された熱膨張性黒鉛、水酸化アルミニウム、及び、炭酸カルシウムを二軸押出機に供給し溶融混練した後、Tダイより押出成形して3mm厚の耐火性シート状成形体を得た。
【0063】
(実施例3)
表1に示した配合量の、樹脂分、水添石油樹脂、ポリリン酸アンモニウム、中和処理された熱膨張性黒鉛、水酸化アルミニウム、及び、炭酸カルシウムを二軸押出機に供給し溶融混練した後、Tダイより押出成形して、1mm厚のA層用及びB層用耐火性シート状成形体を得た。このA層用耐火性シート状成形体1枚とB層用耐火性シート状成形体2枚を重ね合わせてプレス成形し、3mm厚のシート積層体を得た。
【0064】
上記耐火性シート状成形体及びシート積層体につき下記項目の性能評価を行い、その結果を表1に示した。
(1)膨張倍率
40mm×40mm×3mm厚の耐火性シート状成形体又はシート積層体(試験片)をホットプレート上に置き、異なる昇温速度で30℃から450℃まで昇温し、450℃で1時間保持した。次いで、25℃まで冷却した後試験片の厚みを測定し、加熱前後の厚み比から膨張倍率(加熱後の厚み/加熱前の厚み)を算出した。
〔昇温速度〕
(イ)30℃から450℃まで20分間かけて昇温(昇温速度20℃/分)
(ロ)30℃から450℃まで85分間かけて昇温(昇温速度5℃/分)
【0065】
(2)耐火性能
100mm×100mm×0.5mm厚のステンレス板の裏面に、耐火性シート状成形体又はシート積層体(試験片)を重ね合わせ垂直に設置した状態で、コーンカロリーメーター(アトラス社製「CONE2A」)を用いて、ステンレス板側に35kW/m2 の照射熱量を照射したときの膨張開始時間と1時間放置後の裏面温度を測定した。
【0066】
【表1】
【0067】
表1から中和処理された熱膨張性黒鉛の膨張開始温度により1時間後の表面温度が大きく異なることが分かる。
【0068】
尚、表1中で使用した成分は下記の通りである。
・メタロセンPE(ポリエチレン):ダウケミカル社製「EG8200」
・ブチルゴム:エクソン化学社製「ブチルゴム#065」
・ポリブテン:出光石油化学社製「ポリブテン100R」
・水添石油樹脂:トーネックス社製「エスコレッツ5320」
【0069】
・ポリリン酸アンモニウム:チッソ社製「テラージュC60」
・中和処理された熱膨張性黒鉛:
▲1▼:UCAR Carbon社製「GRAFGuard#160」
▲2▼:UCAR Carbon社製「GRAFGuard#220」
▲3▼:東ソー社製「GREP−PG」
・水酸アルミニウム:昭和電工社製「H−42M」
・炭酸カルシウム:白石カルシウム社製「ホワイトンSB赤」
【0070】
【発明の効果】
本発明の耐火性シート状成形体及びシート積層体は、従来より低温で膨張する中和処理された熱膨張性黒鉛を含有することにより、小規模火災や火災初期の温度上昇の低い条件下、又は壁等の熱伝導が遅い構造体において、耐火断熱層を形成して耐火性能を十分に発揮する。また、従来より低温及び高温で膨張する2種の中和処理された熱膨張性黒鉛を含有することにより、幅広い温度範囲で耐火断熱層を形成し、様々の火災条件下で耐火性能を発揮する。
Claims (3)
- 熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質よりなる樹脂分、リン化合物、膨張開始温度が140〜180℃の中和処理された熱膨張性黒鉛並びに無機充填剤を含有し、上記樹脂分100重量部に対して、リン化合物と中和処理された熱膨張性黒鉛との合計量20〜200重量部、並びに、無機充填剤50〜500重量部からなり、かつ、中和処理された熱膨張性黒鉛とリン化合物との重量比が0.01〜9である樹脂組成物から形成されてなることを特徴とする耐火性シート状成形体。
- 熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質よりなる樹脂分、リン化合物、膨張開始温度が140〜180℃と180℃を超えて250℃以下の2種の中和処理された熱膨張性黒鉛の混合物並びに無機充填剤を含有し、上記樹脂分100重量部に対して、リン化合物と2種の中和処理された熱膨張性黒鉛の混合物との合計量20〜200重量部、並びに、無機充填剤50〜500重量部からなり、かつ、膨張開始温度が140〜180℃の中和処理された熱膨張性黒鉛と180℃を超えて250℃以下の中和処理された熱膨張性黒鉛との重量比が0.1〜10であり、リン化合物と2種の中和処理された熱膨張性黒鉛の混合物との重量比が0.01〜9である樹脂組成物から形成されてなることを特徴とする耐火性シート状成形体。
- 耐火性シート状成形体からなるA層とB層とが積層されたシート積層体であって、A層とB層との合計厚みが0.1〜15mm、かつ、A層とB層との厚み比(A層/B層)が0.01〜100であり、A層が、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質よりなる樹脂分100重量部に対して、リン化合物と膨張開始温度が140〜180℃の中和処理された熱膨張性黒鉛との合計量20〜200重量部、並びに、無機充填剤が50〜500重量部からなり、かつ、中和処理された熱膨張性黒鉛とリン化合物との重量比が0.01〜9である樹脂組成物から形成され、B層が、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質よりなる樹脂分100重量部に対して、リン化合物と膨張開始温度が180℃を超えて250℃以下の中和処理された熱膨張性黒鉛との合計量20〜200重量部、並びに、無機充填剤50〜500重量部からなり、かつ、中和処理された熱膨張性黒鉛とリン化合物との重量比が0.01〜9である樹脂組成物から形成されてなることを特徴とするシート積層体。
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