JP3838114B2 - メンブレンを有する半導体装置およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体基板の一面側にエッチングにより空洞部を形成するとともに該空洞部を覆うようにメンブレンを形成してなるメンブレンを有する半導体装置およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の半導体装置の製造方法を図1、図10を参照して説明する。図1、図10に示す半導体装置は、例えば複数の熱電対の起電力を利用したサーモパイル型の赤外線センサに適用されるものであり、図1は概略平面図、図10は概略断面図である。
【0003】
半導体基板としてのシリコン基板10の一面11側には、空洞部13が形成されており、空洞部13の周囲において当該一面11の上にはエッチングストッパとなる酸化シリコン14が形成されている。
【0004】
この酸化シリコン14の上には、各種配線や膜等を積層してなるセンシング部としてのメンブレン20が形成されている。つまり、メンブレン20は空洞部13を覆うようにシリコン基板10の一面11上に設けられている。
【0005】
メンブレン20は、図10に示すように、シリコン基板10の一面11側から、窒化シリコン膜(SiN膜)21、酸化シリコン膜(SiO2膜)22、機能膜として働く多結晶シリコン配線23、層間絶縁膜24、配線として働くアルミ配線25、保護膜26が順次積層されてなるものである。
【0006】
なお、図1においては、メンブレン20のうち、膜21、22、24、26は省略し、多結晶シリコン配線(斜線ハッチングにて図示)23、およびアルミ配線25のみ示してある。
【0007】
複数本の多結晶シリコン配線23およびアルミ配線25が直列に接続されることによって、複数回折り返された折り返し形状を有する赤外線センサの熱電対23、25が構成されている。そして、複数個の折り返し部つまりコンタクトホール25aの各々が、両配線23、25の接合部となっており、この接合部25aにてゼーベック効果によって起電力が発生するようになっている。
【0008】
また、空洞部13の内周に位置するメンブレン20には、厚さ方向に貫通するエッチングホール27が設けられている。
【0009】
このような半導体装置は、一般に、次のようにして製造される。シリコン基板10の一面11上において空洞部13となるべき領域に対応する領域に、多結晶シリコン等からなる犠牲層(図示せず)を形成し、その後、メンブレン20を構成する各層を積層、パターニングしてメンブレン20を形成し、続いて、エッチングホール27を形成する。
【0010】
そして、エッチングホール27を通じて、KOHやTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドライド)等のシリコンウェットエッチング液を供給し、上記犠牲層およびシリコン基板10をエッチングすることで、空洞部13を形成する。こうして、図1、図10に示す半導体装置が製造される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記シリコンのエッチングは、以下の化学式1に示す化学反応で行われるため、水素が発生する。
【0012】
【化1】
Si+4OH-→Si(OH)4+4e-
4H2O+4e-→2H2↑+4OH-
エッチングにおいて、エッチングホール27からの水素排出速度が水素生成速度よりも遅い条件となる場合、空洞部13内に水素気泡が溜まり、メンブレン20の破壊を引き起こし、歩留まりが低下するという不具合がある。
【0013】
これは、図10中の破線A1、A2に示すように、エッチングがA1、A2と進行するにつれて深さ方向だけでなく横方向へのエッチング量も増大していくため、エッチングの進行とともに、単位時間あたりに発生する水素発生量も増大することによる。
【0014】
この不具合を防止するためには、▲1▼水素排出速度を大きくする、▲2▼水素生成速度を抑制する、という方法が考えられる。
【0015】
しかしながら、▲1▼はエッチングホール27を大きくすることが効果的であるが、メンブレン20における機能膜や配線等の制約によりエッチングホール27のレイアウトが制約を受け、所望の形状や大きさのエッチングホール27を形成できない場合が多い。また、▲2▼は、シリコンのエッチングレートを下げることが効果的だが、エッチング時間が長くなるという問題がある。
【0016】
これを解決する方法として、特開平6−202580号公報に記載されているように、シリコンのエッチング液に界面活性剤を添加する方法が提案されている。
【0017】
それによれば、メンブレンの破壊防止を実現できるとされているものの、本発明者等の検討によれば、エッチングレートが極めて遅くなったり、異方性が損なわれ、図10のB部に示すように平坦なシリコンエッチング面を得ることができないという不具合が確認された。
【0018】
本発明は上記問題に鑑み、メンブレンを有する半導体装置において、所望のエッチングホールを形成できない場合でも、空洞部をエッチング形成する際のエッチングレートを落とすことなく歩留まり良くメンブレンを形成できるようにすることを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、半導体基板(10)の一面(11)側に、エッチングにより空洞部(13)を形成するとともに空洞部を覆うようにメンブレン(20)を形成してなる半導体装置の製造方法において、N型の半導体基板の一面に、所定の厚さのP型層(12)を形成する工程と、P型層の上に少なくとも窒化シリコン膜(21)/酸化シリコン膜(22)/層間絶縁膜(24)/保護膜(26)が順次積層されてなるメンブレンを形成する工程と、メンブレンのうち空洞部に対応する部位に、メンブレンを貫通するエッチングホール(27)を形成する工程と、N型の半導体基板とP型層との間のPN接合に対して逆電圧を印加した状態で、エッチングホールを介してP型層にエッチング液を注入しP型層をエッチングして除去することにより、空洞部を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0020】
それによれば、N型の半導体基板とP型層との間のPN接合に対して逆電圧を印加した状態とすることで、当該PN界面からP型層側へ空乏層が形成される。そして、半導体基板側が高い電圧側となり、PN接合近傍で電圧低下が大きいため、P型層のエッチングは進行する。
【0021】
しかし、PN接合近傍までP型層のエッチングが進行すると、電位の高い被エッチング表面すなわち空乏層が露出し、露出面に陽極酸化膜が生成されるため、エッチングレートが大幅に低下する。つまり、深さ方向のエッチングが実質的に停止する。その後は、横方向へエッチングが進行し、所望の大きさの空洞部が形成される。
【0022】
このように、本発明では、空洞部をエッチング形成する際に、深さ方向のエッチングはある時点で停止し、その後は実質的に横方向のエッチングのみになる。そのため、エッチングの進行とともに水素発生量が増大するのを極力抑制することができ、メンブレンの破壊を抑制できる。
【0023】
また、特に、エッチングレートを落とす必要もなくなる。さらに、PN接合近傍で、P型層のエッチングを効果的に停止できるため、エッチング面は平坦なものにできる。
【0024】
よって、本発明によれば、所望のエッチングホールを形成できない場合でも、空洞部をエッチング形成する際のエッチングレートを落とすことなく歩留まり良くメンブレンを形成することができる。
【0025】
また、請求項2に記載の発明では、半導体基板(10)の一面(11)側に、エッチングにより空洞部(13)を形成するとともに空洞部を覆うようにメンブレン(20)を形成してなる半導体装置の製造方法において、N型の半導体基板の一面に、所定の厚さのP型層(12)を形成する工程と、P型層のうち空洞部となるべき領域を除く領域の上にエッチングストッパ用の膜(14)を形成する工程と、P型層における空洞部となるべき領域上に、犠牲層(30)を形成する工程と、P型層の上に犠牲層およびエッチングストッパ用の膜を介して少なくとも窒化シリコン膜(21)/酸化シリコン膜(22)/層間絶縁膜(24)/保護膜(26)が順次積層されてなるメンブレンを形成する工程と、メンブレンのうち空洞部に対応する部位に、メンブレンを貫通し、メンブレンの表面から犠牲層に到達するエッチングホール(27)を形成する工程と、エッチングストッパ用の膜をエッチングストッパとして犠牲層およびP型層をエッチングして除去することにより空洞部を形成する工程であって、エッチングホールを介してエッチング液を注入し犠牲層を等方性エッチングして除去し、この後、N型の半導体基板とP型層との間のPN接合に対して逆電圧を印加した状態で、P型層をエッチングして除去することにより、空洞部を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0026】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の製造方法において、P型層(12)を形成した後、P型層における空洞部(13)となるべき領域を取り囲むように、P型層の内部にN型の囲み層(15)を形成する工程を行い、続いて、メンブレン(20)を形成し、空洞部(13)を形成する工程では、囲み層とP型層との間のPN接合に対しても逆電圧を印加した状態でP型層のエッチングを行うことを特徴とする。
【0027】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の製造方法において、P型層(12)を空洞部(13)に対応した形状にパターニング形成した後、メンブレン(20)を形成することを特徴とする。
【0028】
これら請求項3や請求項4の製造方法によれば、犠牲層を用いないで、P型層のエッチング領域つまり空洞部のサイズを規定することができる。
【0029】
また、請求項5に記載の発明では、半導体基板(40)の一面(41)側に、エッチングにより空洞部(13)を形成するとともに空洞部を覆うようにメンブレン(20)を形成してなる半導体装置の製造方法において、半導体基板の一面上に第1のP型拡散層(42)を形成する工程と、第1のP型拡散層の上に、第1のP型拡散層よりも低濃度の第2のP型拡散層またはN型拡散層(43)を所定の厚さ形成する工程と、第2のP型拡散層またはN型拡散層の上にメンブレンを形成する工程と、メンブレンのうち空洞部に対応する部位に、メンブレンを貫通するエッチングホール(27)を形成する工程と、エッチングホールを介してエッチング液を注入して第2のP型拡散層またはN型拡散層をエッチングして除去することにより、空洞部を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0030】
本発明は、高濃度(高不純物濃度)のP型拡散層では、エッチングレートが大幅に低下することを利用したものである。
【0031】
それによれば、高濃度な第1のP型拡散層まで、第2のP型拡散層またはN型拡散層のエッチングが進行すると、高濃度な第1のP型拡散層が露出し、エッチングレートが大幅に低下する。つまり、深さ方向のエッチングが実質的に停止する。その後は、横方向へエッチングが進行し、所望の大きさの空洞部が形成される。
【0032】
このように、本発明によっても、上記請求項1に記載の発明と同様、空洞部をエッチング形成する際に、深さ方向のエッチングはある時点で停止し、その後は実質的に横方向のエッチングのみになるため、エッチングの進行とともに水素発生量が増大するのを極力抑制することができる。
【0033】
そのため、請求項1と同様、特に、エッチングレートを落とす必要もなくなる。さらに、高濃度な第1のP型拡散層で、第2のP型拡散層またはN型拡散層のエッチングを効果的に停止できるため、エッチング面は平坦なものにすることができる。
【0034】
よって、本発明によれば、所望のエッチングホールを形成できない場合でも、空洞部をエッチング形成する際のエッチングレートを落とすことなく歩留まり良くメンブレンを形成することができる。
【0035】
また、請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の製造方法において、第2のP型拡散層またはN型拡散層(43)を形成した後、第2のP型拡散層またはN型拡散層における空洞部(13)となるべき領域上に、エッチング液によりエッチングされる犠牲層(30)を形成する工程を行い、続いて、メンブレン(20)を形成することを特徴とする。
【0036】
請求項5の製造方法においても、請求項6の製造方法のように、犠牲層を用いた製造方法としても良い。
【0037】
また、請求項7に記載の発明では、請求項5に記載の製造方法において、第2のP型拡散層またはN型拡散層(43)を形成した後、第2のP型拡散層またはN型拡散層における空洞部(13)となるべき領域を取り囲むように、第2のP型拡散層またはN型拡散層の内部に第1のP型拡散層(42)と同じ濃度のP型の囲み層(45)を形成する工程を行い、続いて、メンブレン(20)を形成することを特徴とする。
【0038】
また、請求項8に記載の発明では、請求項5に記載の製造方法において、第2のP型拡散層またはN型拡散層(43)を空洞部(13)に対応した形状にパターニング形成した後、メンブレン(20)を形成することを特徴とする。
【0039】
請求項5の製造方法においても、請求項7や請求項8の製造方法のようにすれば、犠牲層を用いないで、P型層のエッチング領域つまり空洞部のサイズを規定することができる。
【0040】
また、請求項9に記載の発明では、N型の半導体基板(10)と、半導体基板の一面(11)上に形成されたP型層(12)と、P型層の上に少なくとも窒化シリコン膜(21)/酸化シリコン膜(22)/層間絶縁膜(24)/保護膜(26)が順次積層されてなるメンブレン(20)とを備え、メンブレンの下においてP型層の一部が除去されることにより空洞部(13)が形成されており、空洞部に対応するメンブレンには、厚さ方向に貫通する貫通孔(27)が形成されていることを特徴とする。
【0041】
本発明の半導体装置は、請求項1または請求項2に記載の製造方法により適切に製造されるもので、その効果は、請求項1または請求項2の発明と同様である。
【0042】
また、請求項10に記載の発明では、請求項9に記載の半導体装置において、空洞部(13)を区画するP型層(12)の側面には、空洞部を取り囲むようにN型の囲み層(15)が形成されていることを特徴とする。
【0043】
本発明の半導体装置は、請求項3に記載の製造方法により適切に製造されるもので、その効果は請求項3の発明と同様である。
【0044】
また、請求項11に記載の発明では、半導体基板(40)と、半導体基板の一面(41)上に形成された第1のP型拡散層(42)と、第1のP型拡散層の上に形成され第1のP型拡散層よりも低濃度の第2のP型拡散層またはN型拡散層(43)と、第2のP型拡散層またはN型拡散層の上に形成されたメンブレン(20)とを備え、メンブレンの下において第2のP型拡散層またはN型拡散層の一部が除去されることにより空洞部(13)が形成されており、空洞部に対応するメンブレンには、厚さ方向に貫通する貫通孔(27)が形成されていることを特徴とする。
【0045】
本発明の半導体装置は、請求項5または請求項6に記載の製造方法により適切に製造されるもので、その効果は、請求項5または請求項6の発明と同様である。
【0046】
また、請求項12に記載の発明では、請求項11に記載の製造方法において、空洞部(13)を区画する第2のP型拡散層またはN型拡散層(43)の側面には、空洞部を取り囲むように、第1のP型拡散層(42)と同じ濃度のP型の囲み層(45)が形成されていることを特徴とする。
【0047】
本発明の半導体装置は、請求項7に記載の製造方法により適切に製造されるもので、その効果は請求項7の発明と同様である。
【0050】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0051】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。本実施形態は、本発明のメンブレンを有する半導体装置を、複数の熱電対の起電力を利用したサーモパイル型の赤外線センサに適用したものとして説明する。なお、以下の各実施形態相互において同一部分には図中、同一符号を付してある。
【0052】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る赤外線センサS1の概略平面構成は、上記図1に示され、その概略断面構成は図2に示される。なお、図1中のハッチングは、各部の識別を容易にするために施したもので断面を示すものではない。
【0053】
赤外線センサS1は、N型シリコン基板(本発明でいう半導体基板)10を備え、このN型シリコン基板10は、図1に示すように、平面矩形状をなしている。図1、図2に示すように、N型シリコン基板10の一面11の上には、平面形状が矩形枠状をなすP型層12が形成されている。このP型層12は、図1では点々ハッチングにて示してある。
【0054】
この矩形枠状のP型層12の中空部は、P型層12の中央部をエッチング除去することにより形成された矩形状の空洞部13として構成されている。つまり、シリコン基板10の一面11側には、エッチングにより形成された空洞部13が備えられている。
【0055】
ここで、限定するものではないが、N型シリコン基板10の厚さは例えば数百μmであり、P型層12の厚さは例えば十数μmである。また、空洞部13の平面サイズは例えば1mm□のものにすることができる。
【0056】
そして、図2に示すように(図1では省略)、P型層12の上には、P型層12と略同一の平面矩形状をなす酸化シリコン膜14が形成されている。この酸化シリコン膜14は、後述する空洞部13をエッチング形成する際のエッチングストッパとなるものであり、以下、エッチングストッパ用酸化シリコン膜14ということとする。
【0057】
また、図2に示すように、エッチングストッパ用酸化シリコン膜14の上には、各種配線や膜等を積層してなるセンシング部としてのメンブレン20が、空洞部13を覆うように形成されている。つまり、メンブレン20は空洞部13を覆うようにN型シリコン基板10の一面11上に設けられている。
【0058】
このメンブレン20は、図2に示すように、N型シリコン基板10の一面11側から、窒化シリコン膜(SiN膜)21、酸化シリコン膜(SiO2膜)22、機能膜として働く多結晶シリコン配線23、配線として働く層間絶縁膜24、アルミ配線25、および保護膜26が順次積層されてなるものである。
【0059】
なお、上述したが、図1においては、メンブレン20のうち、膜21、22、24、26は省略し、多結晶シリコン配線(斜線ハッチングにて図示)23およびアルミ配線25のみ示してある。
【0060】
図2に示すように、窒化シリコン膜21および酸化シリコン膜22は、シリコン基板10の一面11上のほぼ全域に形成されている。これら窒化シリコン膜21および酸化シリコン膜22はCVD法等により成膜され、下部絶縁膜21、22として構成されるものである。
【0061】
多結晶シリコン配線23は、酸化シリコン膜22の上に形成されており、図1に示すように、空洞部13の中央部から空洞部13の外側のN型シリコン基板10の部分に渡って、複数本放射状に形成されている。この多結晶シリコン配線23は、CVD法等により成膜されたもので配線抵抗を下げるために不純物を導入してある。
【0062】
層間絶縁膜24は、図2に示すように、多結晶シリコン配線23の上および多結晶シリコン配線23が形成されていない酸化シリコン膜22の上に、形成されている。この層間絶縁膜24は、メンブレン20内の各種配線の電気的絶縁を行うものであり、本例では、CVD法等により成膜された酸化シリコン膜よりなる。
【0063】
アルミ配線25は、層間絶縁膜24の上に形成されており、図1に示すように、隣接する各多結晶シリコン配線23の間を接続するように、複数本放射状に形成されている。このアルミ配線25は、スパッタ法や蒸着法等により形成されたアルミニウムよりなり、各アルミ配線25は、層間絶縁膜24に形成された開口部(コンタクトホール)25aを介して多結晶シリコン配線23と電気的に接続されている。なお、層間絶縁膜24は、アルミ配線25と多結晶シリコン配線23とが電気的接続部以外で重ならない場合は、省略が可能である。
【0064】
このようにして、複数本の多結晶シリコン配線23およびアルミ配線25が直列に接続されることによって、赤外線センサS1の熱電対が構成されており、この熱電対23、25は、図1に示す様に、複数回折り返された折り返し形状を有している。複数個の折り返し部つまりコンタクトホール25aの各々が、両配線23、25の接合部となっており、この接合部25aにてゼーベック効果によって起電力が発生するようになっている。
【0065】
そして、熱電対23、25の両端部のアルミ配線25にはそれぞれ、図1、図2に示す様に、外部と電気的に接続するためのアルミパッド25bが形成されている。そして、空洞部13上に位置する接合部25aが温接点、空洞部13の外側のシリコン基板10の部分に位置する接合部25aが冷接点となり、両接点の温度差に基づく熱電対23、25の電圧が、上記両アルミパッド25bの間に出力されるようになっている。
【0066】
また、保護膜26は、アルミ配線25の上およびアルミ配線25が形成されていない層間絶縁膜24の上に、形成されている。この保護膜26はCVD法等にて成膜された酸化シリコン膜や窒化シリコン膜等よりなる。本例では酸化シリコン膜としている。また、この保護膜26には、上記アルミパッド25bを露出させるための開口部が形成されている。
【0067】
以上のように、メンブレン20は、各配線および各膜21〜26により構成されている。そして、空洞部13の内周に位置するメンブレン20には、厚さ方向に貫通する貫通孔27が設けられている。この貫通孔27は、後述する空洞部13のエッチング形成の際にエッチングホール27として機能するものである。
【0068】
また、図示しないが、メンブレン20の上には、赤外線吸収膜が形成されていても良い。この赤外線吸収膜は、例えば空洞部13上の中央に相当する部位にて、上記温接点である接合部25aを覆うように形成する。この赤外線吸収膜は、赤外線を吸収して温接点の温度を効率よく上昇させるためのものであり、例えば、ポリエステル樹脂にカーボン(C)を含有させ焼き固めたものである。
【0069】
このような構成を有する本実施形態の赤外線センサS1は、次のように作動する。空洞部13上のメンブレン20に位置する温接点25aは、空洞部13の外側のN型シリコン基板10(厚肉部)上に位置する冷接点25aよりも熱引き性が小さい。
【0070】
そのため、メンブレン20上にて赤外線を受光すると、温接点の方が冷接点よりも高温となる。そして、温接点と冷接点との温度差に応じた熱電対23、25の電圧が、両アルミパッド25bから出力されることで、赤外線の検出が可能となっている。
【0071】
次に、上記赤外線センサS1の製造方法について説明する。図3および図4は、本製造方法を上記図2に対応した断面にて示す工程図である。なお、本製造方法は、通常ウェハ状態にて行われ、該ウェハに上記赤外線センサS1を複数個のチップ単位で製造した後、ダイシングカットするものである。
【0072】
[図3に示す工程]
図3には、次に述べるP型層形成工程からエッチングホール形成工程までの工程を行った状態が示されている。
【0073】
まず、N型の半導体基板としてのN型シリコン基板10の一面11の略全域に、所定の厚さのP型層12を形成する(P型層形成工程)。具体的に、P型層12は、エピタキシャル成長や、不純物(ボロン等)の拡散等の方法により形成することができる。
【0074】
次に、P型層12のうち空洞部13となるべき領域(つまり、P型層12のうち除去されて中空部となる領域)を除く領域の上に、CVD、スパッタ、熱酸化等によりエッチングストッパ用酸化シリコン膜14を形成する(エッチングストッパ形成工程)。
【0075】
次に、P型層12における空洞部13となるべき領域上に、シリコンのエッチング液によりエッチングされる犠牲層30を形成する(犠牲層形成工程)。具体的に、犠牲層30はCVD等により成膜された多結晶シリコン等とすることができる。
【0076】
次に、P型層12の上に犠牲層30およびエッチングストッパ用酸化シリコン膜14を介して、メンブレン20を形成する(メンブレン形成工程)。本例では、まず、CVD法等により窒化シリコン膜21および酸化シリコン膜22を形成し、その上に、多結晶シリコンを成膜し、これをフォトリソグラフ法等によりパターニングして多結晶シリコン配線23を形成する。
【0077】
次に、CVD法等にて層間絶縁膜24を成膜し、層間絶縁膜24における所望の部位に、フォトリソグラフ法等により上記コンタクトホール25aを形成した後、スパッタ法や蒸着法等によりアルミニウムの膜を成膜し、これをフォトリソグラフ法等によりパターニングしてアルミ配線25および上記アルミパッド25bを形成する。
【0078】
次に、CVD法等にて酸化シリコン膜からなる保護膜26を成膜し、これをフォトリソグラフ法等によりパターニングして、上記アルミパッド25bを露出させるための開口部を形成する。こうして、各配線および各膜21〜26によりなるメンブレン20が形成される。
【0079】
次に、メンブレン20のうち空洞部13に対応する部位に、メンブレン20を厚さ方向に貫通し、メンブレン20の表面から犠牲層30に到達する貫通孔27すなわちエッチングホール27を形成する(エッチングホール形成工程)。具体的に、エッチングホール27は、ドライまたはウェットエッチング等により形成することができる。ここまでの状態が図3に示されている。
【0080】
[図4に示す工程]
次に、図4に示す空洞部形成工程を行う。メンブレン20が形成されたN型シリコン基板10をKOHやTMAH等のシリコンウェットエッチング液31に浸漬させ、エッチングホール27を介して犠牲層30およびP型層12にエッチング液31を注入する。
【0081】
このシリコンウェットエッチングを行うとき、エッチング液31中にPt等からなる対向電極32を配設し、N型シリコン基板10がアノード、エッチング液31がカソードとなるように、電源33によって、N型シリコン基板10および対向電極(カソード電極)32に所定の電圧(例えば数V)を印加する。なお、N型シリコン基板10への電気接続は、該基板10にメタライズ処理を施す等により可能である。
【0082】
このように、N型シリコン基板10とP型層12との間の接合部すなわちPN接合に対して逆電圧を印加した状態で、エッチングホール27を介して犠牲層30およびP型層12にエッチング液31を注入し、エッチングストッパ用酸化シリコン膜14をエッチングストッパとして、これら両層12、30をエッチングして除去する。
【0083】
それによれば、まず、犠牲層30が等方性エッチングされて除去されるため、除去されるべきP型層12の表面全体に、エッチング液31が効率よく行き渡る。このことにより、たとえ、エッチングホール27の数を少なくしても、P型層12を効率よく所望領域にてエッチングすることができるとともに、P型層12のエッチング領域つまり空洞部13のサイズを規定しやすくできる。
【0084】
そして、犠牲層30の次にP型層12がエッチングされる。このP型層12のエッチング時には、上記PN接合に対して逆電圧を印加した状態とすることで、当該PN界面からP型層12側へ空乏層(図示せず)が形成される。そして、N型シリコン基板10側が高電圧側となり、PN接合近傍で電圧低下が大きいため、P型層12のエッチングは進行する。
【0085】
しかし、PN接合近傍までP型層12のエッチングが進行すると、電位の高い被エッチング表面すなわち上記空乏層が露出し、露出面に陽極酸化膜が生成されるため、エッチングレートが大幅に低下する。つまり、深さ方向(基板10の厚さ方向)のエッチングが実質的に停止する。
【0086】
その後は、横方向(基板10の面方向)へP型層12のエッチングが進行し、エッチングストッパ用酸化シリコン膜14により、横方向へのエッチングが終息し、所望の大きさの空洞部13が形成される。
【0087】
このようにして、空洞部13が形成され、赤外線センサS1ができあがる。なお、この後、メンブレン20の上に上記赤外線吸収膜を形成しても良い。この後、ダイシングカットを行い、チップ毎に分断する。
【0088】
このように、本実施形態の製造方法によれば、空洞部13をエッチング形成する際に、深さ方向のエッチング量を制御することにより水素気泡の生成速度を落とし、メンブレン20の破壊を抑制できる。つまり、深さ方向のエッチングはある時点で停止し、その後は実質的に横方向のエッチングのみになるため、エッチングの進行とともに水素発生量が増大するのを極力抑制することができ、メンブレン破壊を抑制できる。
【0089】
また、本製造方法では、通常のシリコンウェットエッチング液31によりシリコンエッチング(シリコンの異方性エッチング)を行うため、特に、エッチングレートが落ちるようなことも無い。さらに、PN接合近傍で、P型層12のエッチングを効果的に停止できるため、エッチング面は平坦なものにできる。
【0090】
また、このような作用効果を奏する本製造方法は、図1および図2に示す構成を有する半導体装置としての赤外線センサS1に適切に適用できる。
【0091】
よって、本第1実施形態によれば、所望のエッチングホール27を形成できない場合でも、空洞部13をエッチング形成する際のエッチングレートを落とすことなく歩留まり良くメンブレン20を形成することのできる半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【0092】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置としての赤外線センサS2の製造方法を示す概略断面図である。図5には、上記第1実施形態の製造方法におけるエッチングホール形成工程までの工程を行った状態が示されている。
【0093】
本実施形態の製造方法は、図5に示すように、P型層12を形成した後、P型層12における空洞部13となるべき領域を取り囲むように、P型層12の内部にN型の囲み層15を形成する工程(囲み層形成工程)を行い、続いて、メンブレン20を形成する点が、上記第1実施形態と主として相違する。この相違点について主として説明する。
【0094】
この囲み層形成工程では、具体的には、上記のP型層形成工程を行った後、マスクを用いて、P型層12内に選択的に不純物(リン等)の拡散を行う等により、N型拡散層としての囲み層15を形成することができる。
【0095】
その後は、上記のエッチングストッパ形成工程および犠牲層形成工程を行うことなく、メンブレン形成工程を行う。そのため、図5に示すセンサS2には、上記したエッチングストッパ用酸化シリコン膜14および犠牲層30は存在せず、P型層12の上に直接メンブレン20が形成されている。
【0096】
そして、本実施形態においても、エッチングホール形成工程を行った後、上記図4に示したのと同様の空洞部形成工程を行う。このとき、本実施形態では、囲み層15とP型層12との間のPN接合に対しても逆電圧を印加した状態でP型層12のエッチングを行う。
【0097】
図5に示すように、囲み層15がN型シリコン基板10に到達していれば、電圧印加時にN型シリコン基板10と囲み層15は同電位となるので、N型シリコン基板10に設ける電極は一つでよい。また、囲み層15がN型シリコン基板10に到達していない場合には、N型シリコン基板10の一面11の適所に、囲み層15と導通する電極を設け、この電極を通じて囲み層15に正電圧を印加すればよい。
【0098】
本実施形態の空洞部形成工程によれば、N型シリコン基板10とP型層12の間のPN接合および囲み層15とP型層12との間のPN接合に対して逆電圧を印加した状態とすることで、両PN界面からP型層12側へ空乏層(図示せず)が形成される。そして、N型シリコン基板10側が高電圧側となり、上記2つのPN接合近傍で電圧低下が大きいため、P型層12のエッチングは進行する。
【0099】
すると、まず、上記第1実施形態と同様、P型層12の深さ方向(基板10の厚さ方向)のエッチングが実質的に停止する。その後は、横方向(基板10の面方向)へP型層12のエッチングが進行し、P型層12との間のPN接合近傍の空乏層が露出した時点で、横方向へのエッチングが終息し、所望の大きさの空洞部13が形成される。
【0100】
このように、本実施形態の製造方法によっても、上記第1実施形態と同様、空洞部13をエッチング形成する際に、深さ方向のエッチング量を制御することにより水素気泡の生成速度を落とし、メンブレン20の破壊を抑制できる。また、本製造方法においても、第1実施形態と同様の理由から、エッチングレートが落ちるようなことがなく、エッチング面は平坦なものにできる。
【0101】
本実施形態の製造方法により製造された赤外線センサS2は、図5において囲み層15に囲まれた部分のP型層12が除去されて、空洞部13(図5中、括弧付きの符号13として示す)が形成されたものである。
【0102】
つまり、できあがった赤外線センサS2においては、空洞部13の側面となるP型層12の内周端面、すなわち、空洞部13を区画するP型層12の側面に、空洞部13を取り囲むようにN型の囲み層15が形成されている。
【0103】
このように、本第2実施形態によっても、所望のエッチングホール27を形成できない場合でも、空洞部13をエッチング形成する際のエッチングレートを落とすことなく歩留まり良くメンブレン20を形成することのできる半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【0104】
また、本実施形態においては、囲み層15が空洞部13のエッチング形成におけるエッチングストッパの役割を果たすため、上記第1実施形態に採用した犠牲層30を用いることなく、P型層12のエッチング領域つまり空洞部13のサイズを規定することができる。
【0105】
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置としての赤外線センサS3の製造方法を示す概略断面図である。図6には、上記第1実施形態の製造方法におけるエッチングホール形成工程までの工程を行った状態が示されている。
【0106】
本実施形態の製造方法は、図6に示すように、P型層形成工程においてP型層12を空洞部13に対応した形状にパターニングして形成した後、メンブレン20を形成する工程を行う点が、上記第1実施形態と相違する。この相違点について主として説明する。
【0107】
このP型層形成工程では、具体的には、マスクを用いて不純物の拡散やイオン注入を行う等により、パターニングされたP型層12を形成することができる。
【0108】
その後は、上記のエッチングストッパ形成工程および犠牲層形成工程を行うことなく、メンブレン形成工程を行う。そのため、図6に示すセンサS3には、上記したエッチングストッパ用酸化シリコン膜14および犠牲層30は存在せず、パターニングされたP型層12およびN型シリコン基板10の一面11の上に直接メンブレン20が形成されている。
【0109】
そして、本実施形態においても、上記同様のエッチングホール形成工程を行った後、上記図4に示したのと同様の空洞部形成工程を行うことにより、赤外線センサS3ができあがる。本実施形態の製造方法により製造された赤外線センサS3は、図6においてパターニングされたP型層12が除去されて、空洞部13が形成されたものである。
【0110】
このように、本第3実施形態によっても、所望のエッチングホール27を形成できない場合でも、空洞部13をエッチング形成する際のエッチングレートを落とすことなく歩留まり良くメンブレン20を形成することのできる半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【0111】
また、本実施形態においては、P型層12が予め空洞部13の形状にパターニングされているため、上記第1実施形態に採用した犠牲層30を用いることなく、P型層12のエッチング領域つまり空洞部13のサイズを規定することができる。
【0112】
(第4実施形態)
図7は、本発明の第4実施形態に係る半導体装置としての赤外線センサS4の製造方法を示す概略断面図である。図7には、上記第1実施形態の製造方法におけるエッチングホール形成工程までの工程を行った状態が示されている。
【0113】
本実施形態は、高濃度のP型拡散層ではシリコンエッチングレートが低下するという現象を用い、エッチング量を制御するものである。そのため、上記第1実施形態と比べて、シリコン基板40の一面41上において、シリコン基板40とメンブレン20との間の層構成が主として相違する。この相違点について主として説明する。
【0114】
まず、図7を参照して、製造方法について述べる。本実施形態の半導体基板としてのシリコン基板40はN型でもP型でも良い。このシリコン基板40の一面41の略全域に、ボロン等のP型不純物による不純物拡散やイオン注入等を行い、シリコン基板40の一面41上に、第1のP型拡散層としてのP++型拡散層42を形成する(第1のP型拡散層形成工程)。
【0115】
このP++型拡散層42に対して、リン等のN型不純物による不純物拡散やイオン注入等を行い、P++型拡散層42よりも低濃度のP+型拡散層(第2のP型拡散層)43を形成する。この際、P+型拡散層43はP++型拡散層42よりも深くしない。こうして、P++型拡散層42の上に、P+型拡散層43が所定の厚さ形成された形となる(第2のP型拡散層またはN型拡散層形成工程)。
【0116】
図7中の破線に示すように、このP+型拡散層43の一部および犠牲層30が除去されて空洞部13が形成される。ここで、限定するものではないが、シリコン基板40の厚さは例えば数百μmであり、P++型拡散層42の厚さは例えば数μm、P+型拡散層43の厚さは例えば十数μmである。
【0117】
また、空洞部13の平面サイズは例えば1mm□のものにすることができる。また、P++型拡散層42の濃度は例えばTMAHにてエッチングする場合、1020個・cm-3以上であり、P+型拡散層43の濃度は例えば1016個・cm-3程度である。
【0118】
なお、本実施形態では、P+型拡散層43に代えてN−型拡散層43でも良い。この場合、P+型拡散層43の場合と同様に、P++型拡散層42に対して、リン等のN型不純物による不純物拡散やイオン注入等を行い、N−型拡散層43を形成することができる。このN−型拡散層43の濃度は特に限定されない。以下、P+型拡散層43とした場合について述べるが、N−型拡散層43の場合も同様である。
【0119】
次に、P+型拡散層43のうち空洞部13となるべき領域(つまり、P+型拡散層43のうち除去されて中空部となる領域)を除く領域の上に、エッチングストッパ用酸化シリコン膜14を形成する(エッチングストッパ形成工程)。次に、P+型拡散層43における空洞部13となるべき領域上に、犠牲層30を形成する(犠牲層形成工程)。
【0120】
次に、P+型拡散層43の上に犠牲層30およびエッチングストッパ用酸化シリコン膜14を介して、メンブレン20を形成する(メンブレン形成工程)。その後、エッチングホール(貫通孔)27を形成する(エッチングホール形成工程)。ここまでの状態が、図7に示されている。
【0121】
次に、エッチングホール27を介して上記シリコンウェットエッチング液31(上記図4参照)を注入して、犠牲層30およびP+型拡散層43をエッチングして除去することにより、空洞部13を形成する(空洞部形成工程)。このとき、上記図4のように電圧印加は行わない。
【0122】
この空洞部13の形成のエッチングにおいては、高濃度なP++型拡散層42までP+型拡散層43のエッチングが進行すると、P++型拡散層42が露出し、エッチングレートが大幅に低下する。つまり、本実施形態では、第1実施形態のような電気化学的なエッチングストップを行うものではなく、P++型拡散層42自身のエッチング性によって、深さ方向のエッチングが実質的に停止する。
【0123】
その後は、横方向へP+型拡散層43のエッチングが進行し、エッチングストッパ用酸化シリコン膜14により、横方向へのエッチングが終息し、所望の大きさの空洞部13が形成される。
【0124】
このように、本第4実施形態によっても、上記第1実施形態の製造方法と同様、空洞部13をエッチング形成する際に、深さ方向のエッチングはある時点で停止し、その後は実質的に横方向のエッチングのみになるため、エッチングの進行とともに水素発生量が増大するのを極力抑制することができる。
【0125】
また、第1実施形態と同様、特に、エッチングレートを落とす必要もなくなり、さらに、P++型拡散層42で、P+型拡散層43のエッチングを効果的に停止できるため、エッチング面は平坦なものにできる。
【0126】
こうして、本実施形態の製造方法により適切に製造された赤外線センサS4は、図7において犠牲層30および破線で示す部分のP+型拡散層43が除去されて、空洞部13が形成されたものである。
【0127】
つまり、できあがった赤外線センサS4は、シリコン基板10と、シリコン基板10の一面11上に形成されたP++型拡散層42と、P++型拡散層42の上に形成されP++型拡散層42よりも低濃度のP+型拡散層43またはN−型拡散層43と、P+型拡散層43またはN−型拡散層43の上に形成されたメンブレン20とを備え、メンブレン20の下においてP+型拡散層43またはN−型拡散層43の一部が除去されることにより空洞部13が形成されており、空洞部13に対応するメンブレン20には、厚さ方向に貫通する貫通孔27が形成されたものになる。
【0128】
以上、本第4実施形態によれば、所望のエッチングホール27を形成できない場合でも、空洞部13をエッチング形成する際のエッチングレートを落とすことなく歩留まり良くメンブレン20を形成することのできる半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【0129】
(第5実施形態)
図8は、本発明の第5実施形態に係る半導体装置としての赤外線センサS5の製造方法を示す概略断面図である。本実施形態は上記第4実施形態を変形したものであり、図8には、上記第4実施形態の製造方法におけるエッチングホール形成工程までの工程を行った状態が示されている。
【0130】
本実施形態の製造方法は、図8に示すように、P+型拡散層43またはN−型拡散層43を形成した後、P+型拡散層43またはN−型拡散層43における空洞部13となるべき領域を取り囲むように、P+型拡散層43またはN−型拡散層43の内部にP++型拡散層42と同じ濃度の囲み層45を形成する工程(囲み層形成工程)を行い、続いて、メンブレン20を形成する点が、上記第4実施形態と主として相違する。この相違点について主として説明する。
【0131】
本実施形態の囲み層形成工程では、P++型拡散層42を形成し、42P+型拡散層43またはN−型拡散層43を形成した後、マスクを用いて不純物(ボロン等)の拡散を行う等により、P++型拡散層42と同じ濃度の囲み層45を形成することができる。
【0132】
その後は、上記のエッチングストッパ形成工程および犠牲層形成工程を行うことなく、メンブレン形成工程を行う。そのため、図8に示すセンサS5には、上記したエッチングストッパ用酸化シリコン膜14および犠牲層30は存在せず、P+型拡散層43またはN−型拡散層43の上に直接メンブレン20が形成されている。
【0133】
そして、本実施形態においても、エッチングホール形成工程を行った後、上記第4実施形態と同様の要領で空洞部形成工程を行う。それにより、P+型拡散層43またはN−型拡散層43のエッチングは、深さ方向はP++型拡散層42によりストップし、横方向は囲み層45によりストップする。こうして、所望の大きさの空洞部13が形成される。
【0134】
このように、本実施形態の製造方法によっても、上記第4実施形態と同様、空洞部13をエッチング形成する際に、深さ方向のエッチング量を制御することにより水素気泡の生成速度を落とし、メンブレン20の破壊を抑制できる。また、本製造方法においても、エッチングレートが落ちるようなことがなく、エッチング面は平坦なものにできる。
【0135】
本実施形態の製造方法により製造された赤外線センサS5は、図8において囲み層45に囲まれた部分のP+型拡散層43またはN−型拡散層43が除去されて、空洞部13(図8中、括弧付きの符号13として示す)が形成されたものである。
【0136】
つまり、できあがった赤外線センサS5においては、空洞部13の側面となるP+型拡散層43またはN−型拡散層43の内周端面、すなわち、空洞部13を区画するP+型拡散層43またはN−型拡散層43の側面に、空洞部13を取り囲むようにP++型拡散層42と同じ濃度の囲み層45が形成されている。
【0137】
このように、本第4実施形態によっても、所望のエッチングホール27を形成できない場合でも、空洞部13をエッチング形成する際のエッチングレートを落とすことなく歩留まり良くメンブレン20を形成することのできる半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【0138】
また、本実施形態においては、囲み層45が空洞部13のエッチング形成におけるエッチングストッパの役割を果たすため、上記第4実施形態に採用した犠牲層30を用いることなく、P+型拡散層43またはN−型拡散層43のエッチング領域つまり空洞部13のサイズを規定することができる。
【0139】
(第6実施形態)
図9は、本発明の第6実施形態に係る半導体装置としての赤外線センサS6の製造方法を示す概略断面図である。本実施形態は上記第4実施形態を変形したものであり、図9には、上記第4実施形態の製造方法におけるエッチングホール形成工程まで行った状態が示されている。
【0140】
本実施形態の製造方法は、図9に示すように、第2のP型拡散層またはN型拡散層形成工程においてP+型拡散層43またはN−型拡散層43を空洞部13に対応した形状にパターニングして形成した後、メンブレン20を形成する工程を行う点が、上記第4実施形態と相違する。この相違点について主として説明する。
【0141】
この第2のP型拡散層またはN型拡散層形成工程では、具体的には、マスクを用いて不純物の拡散やイオン注入を行う等により、パターニングされたP+型拡散層43またはN−型拡散層43を形成することができる。
【0142】
その後は、上記のエッチングストッパ形成工程および犠牲層形成工程を行うことなく、メンブレン形成工程を行う。そのため、図9に示すセンサS6には、上記したエッチングストッパ用酸化シリコン膜14および犠牲層30は存在せず、P+型拡散層43またはN−型拡散層43、およびP++型拡散層42の上に直接メンブレン20が形成されている。
【0143】
そして、本実施形態においても、上記同様のエッチングホール形成工程を行った後、上記第4実施形態と同様の要領で空洞部形成工程を行うことにより、赤外線センサS6ができあがる。本実施形態の製造方法により製造された赤外線センサS6は、図9においてパターニングされたP+型拡散層43またはN−型拡散層43が除去されて、空洞部13が形成されたものである。
【0144】
つまり、TMAH等のエッチング液31を用いて製造された赤外線センサS6は、シリコン基板40と、シリコン基板40の一面41上に形成され濃度が1020個・cm-3以上であるP++型拡散層42と、P++型拡散層42の上に形成されたメンブレン20とを備え、メンブレン20とP++型拡散層42との間には空洞部13が形成されており、空洞部13に対応するメンブレン20には、厚さ方向に貫通する貫通孔27が形成されているものである。
【0145】
このように、本第6実施形態によっても、所望のエッチングホール27を形成できない場合でも、空洞部13をエッチング形成する際のエッチングレートを落とすことなく歩留まり良くメンブレン20を形成することのできる半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【0146】
また、本実施形態においては、P+型拡散層43またはN−型拡散層43が予め空洞部13の形状にパターニングされているため、上記第4実施形態に採用した犠牲層30を用いることなく、P+型拡散層43またはN−型拡散層43のエッチング領域つまり空洞部13のサイズを規定することができる。
【0147】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した赤外線センサ以外にも、半導体基板の一面側にエッチングにより空洞部を形成するとともに該空洞部を覆うようにメンブレンを形成してなるメンブレンを有する半導体装置であれば適用可能であり、例えば、圧力センサ、フローセンサ、ガスセンサ等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】半導体装置としての赤外線センサの概略平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る赤外線センサの概略断面図である。
【図3】上記第1実施形態に係る赤外線センサの製造方法を示す工程図である。
【図4】図3に続く製造方法を示す工程図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る赤外線センサの製造途中の状態を示す概略断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る赤外線センサの製造途中の状態を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る赤外線センサの製造途中の状態を示す概略断面図である。
【図8】本発明の第5実施形態に係る赤外線センサの製造途中の状態を示す概略断面図である。
【図9】本発明の第6実施形態に係る赤外線センサの製造途中の状態を示す概略断面図である。
【図10】従来の半導体装置としての赤外線センサの概略断面図である。
【符号の説明】
10…N型シリコン基板、11…N型シリコン基板の一面、12…P型層、
13…空洞部、15…N型の囲み層、20…メンブレン、
27…エッチングホール、30…犠牲層、40…シリコン基板、
41…シリコン基板の一面、42…P++型拡散層、
43…P+型拡散層またはN−型拡散層、
45…P++型拡散層と同じ濃度の囲み層。
Claims (12)
- 半導体基板(10)の一面(11)側に、エッチングにより空洞部(13)を形成するとともに前記空洞部を覆うようにメンブレン(20)を形成してなる半導体装置の製造方法において、
N型の前記半導体基板の一面に、所定の厚さのP型層(12)を形成する工程と、
前記P型層の上に少なくとも窒化シリコン膜(21)/酸化シリコン膜(22)/層間絶縁膜(24)/保護膜(26)が順次積層されてなる前記メンブレンを形成する工程と、
前記メンブレンのうち前記空洞部に対応する部位に、前記メンブレンを貫通するエッチングホール(27)を形成する工程と、
前記N型の前記半導体基板と前記P型層との間のPN接合に対して逆電圧を印加した状態で、前記エッチングホールを介して前記P型層にエッチング液を注入し前記P型層をエッチングして除去することにより、前記空洞部を形成する工程とを備えることを特徴とするメンブレンを有する半導体装置の製造方法。 - 半導体基板(10)の一面(11)側に、エッチングにより空洞部(13)を形成するとともに前記空洞部を覆うようにメンブレン(20)を形成してなる半導体装置の製造方法において、
N型の前記半導体基板の一面に、所定の厚さのP型層(12)を形成する工程と、
前記P型層のうち前記空洞部となるべき領域を除く領域の上にエッチングストッパ用の膜(14)を形成する工程と、
前記P型層における前記空洞部となるべき領域上に、犠牲層(30)を形成する工程と、
前記P型層の上に前記犠牲層および前記エッチングストッパ用の膜を介して少なくとも窒化シリコン膜(21)/酸化シリコン膜(22)/層間絶縁膜(24)/保護膜(26)が順次積層されてなる前記メンブレンを形成する工程と、
前記メンブレンのうち前記空洞部に対応する部位に、前記メンブレンを貫通し、前記メンブレンの表面から前記犠牲層に到達するエッチングホール(27)を形成する工程と、
前記エッチングストッパ用の膜をエッチングストッパとして前記犠牲層および前記P型層をエッチングして除去することにより前記空洞部を形成する工程であって、前記エッチングホールを介してエッチング液を注入し前記犠牲層を等方性エッチングして除去し、この後、前記N型の前記半導体基板と前記P型層との間のPN接合に対して逆電圧を印加した状態で、前記P型層をエッチングして除去することにより、前記空洞部を形成する工程とを備えることを特徴とするメンブレンを有する半導体装置の製造方法。 - 前記P型層(12)を形成した後、前記P型層における前記空洞部(13)となるべき領域を取り囲むように、前記P型層の内部にN型の囲み層(15)を形成する工程を行い、続いて、前記メンブレン(20)を形成し、
前記空洞部(13)を形成する工程では、前記囲み層と前記P型層との間のPN接合に対しても逆電圧を印加した状態で前記P型層のエッチングを行うことを特徴とする請求項1に記載のメンブレンを有する半導体装置の製造方法。 - 前記P型層(12)を前記空洞部(13)に対応した形状にパターニング形成した後、前記メンブレン(20)を形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
- 半導体基板(40)の一面(41)側に、エッチングにより空洞部(13)を形成するとともに前記空洞部を覆うようにメンブレン(20)を形成してなる半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板の一面上に第1のP型拡散層(42)を形成する工程と、
前記第1のP型拡散層の上に、前記第1のP型拡散層よりも低濃度の第2のP型拡散層またはN型拡散層(43)を所定の厚さ形成する工程と、
前記第2のP型拡散層またはN型拡散層の上に前記メンブレンを形成する工程と、
前記メンブレンのうち前記空洞部に対応する部位に、前記メンブレンを貫通するエッチングホール(27)を形成する工程と、
前記エッチングホールを介してエッチング液を注入して前記第2のP型拡散層またはN型拡散層をエッチングして除去することにより、前記空洞部を形成する工程とを備えることを特徴とするメンブレンを有する半導体装置の製造方法。 - 前記第2のP型拡散層またはN型拡散層(43)を形成した後、前記第2のP型拡散層またはN型拡散層における前記空洞部(13)となるべき領域上に、前記エッチング液によりエッチングされる犠牲層(30)を形成する工程を行い、続いて、前記メンブレン(20)を形成することを特徴とする請求項5に記載のメンブレンを有する半導体装置の製造方法。
- 前記第2のP型拡散層またはN型拡散層(43)を形成した後、前記第2のP型拡散層またはN型拡散層における前記空洞部(13)となるべき領域を取り囲むように、前記第2のP型拡散層またはN型拡散層の内部に前記第1のP型拡散層(42)と同じ濃度のP型の囲み層(45)を形成する工程を行い、続いて、前記メンブレン(20)を形成することを特徴とする請求項5に記載のメンブレンを有する半導体装置の製造方法。
- 前記第2のP型拡散層またはN型拡散層(43)を前記空洞部(13)に対応した形状にパターニング形成した後、前記メンブレン(20)を形成することを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
- N型の半導体基板(10)と、
前記半導体基板の一面(11)上に形成されたP型層(12)と、
前記P型層の上に少なくとも窒化シリコン膜(21)/酸化シリコン膜(22)/層間絶縁膜(24)/保護膜(26)が順次積層されてなるメンブレン(20)とを備え、
前記メンブレンの下において前記P型層の一部が除去されることにより空洞部(13)が形成されており、
前記空洞部に対応する前記メンブレンには、厚さ方向に貫通する貫通孔(27)が形成されていることを特徴とするメンブレンを有する半導体装置。 - 前記空洞部(13)を区画する前記P型層(12)の側面には、前記空洞部を取り囲むようにN型の囲み層(15)が形成されていることを特徴とする請求項9に記載のメンブレンを有する半導体装置。
- 半導体基板(40)と、
前記半導体基板の一面(41)上に形成された第1のP型拡散層(42)と、
前記第1のP型拡散層の上に形成され前記第1のP型拡散層よりも低濃度の第2のP型拡散層またはN型拡散層(43)と、
前記第2のP型拡散層またはN型拡散層の上に形成されたメンブレン(20)とを備え、
前記メンブレンの下において前記第2のP型拡散層またはN型拡散層の一部が除去されることにより空洞部(13)が形成されており、
前記空洞部に対応する前記メンブレンには、厚さ方向に貫通する貫通孔(27)が形成されていることを特徴とするメンブレンを有する半導体装置。 - 前記空洞部(13)を区画する前記第2のP型拡散層またはN型拡散層(43)の側面には、前記空洞部を取り囲むように、前記第1のP型拡散層(42)と同じ濃度のP型の囲み層(45)が形成されていることを特徴とする請求項11に記載のメンブレンを有する半導体装置。
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