JP3835838B2 - 塗布フィルム - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、生産性、帯電防止性、接着性に優れた新規な塗布層を持つ二軸延伸ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
二軸延伸ポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平面性、平滑性、耐熱性、耐薬品性、透明性等において優れた特性を示すことから、磁気記録媒体のベースフィルム、製版用フィルムをはじめとして幅広い用途に使用されている。
しかしながら、このように優れた特性をもつ反面、プラスチックフィルム共通の問題として静電気を帯びやすく、フィルム加工時あるいは加工製品の走行性不良や汚れやすい等の問題を生ずる。また、耐薬品性、耐溶剤性に優れる反面、各種の上塗り剤との接着性に劣る。例えば、印刷インクや磁性層との接着性が不十分である場合がある。
【0003】
上記のような問題点を解決する方法の一つに、ポリエステルフィルムの表面にいわゆる下引き層を設けることが知られている。特に、フィルム製造工程中で塗布する「塗布延伸」法が経済的かつ特性上も興味深い。これはインラインコーティングとも言われている。そして従来は、縦延伸後横延伸前に実施されてきた。その理由は、特公昭41−8470号公報に記載されているとおりである。すなわち、縦延伸前に塗布した場合には、加工条件によってはフィルムの延伸性に問題が生じたり、延伸性が良好であっても延伸ロールとの粘着を生じて塗布層の表面が荒れたり、延伸ロールへ塗布層が剥離する場合があったからである。
【0004】
ところで、上記の問題を解決するには、帯電防止性であり、かつ上塗り剤易接着である塗布層を設ける必要があった。そしてこのための塗料をいかに調整するかに高い技術が要求された。帯電防止性のみを発揮させる塗料処方、易接着性のみを発揮させる処方、それぞれは比較的容易であるが、両者を兼ね備えた処方の開発は非常に難しい。その一つの理由は、単純に両方の塗料を混ぜただけでは、ほとんどの場合、両方の特性を満足させられないことにある。さらに別の理由としては、塗料のポットライフが短いことが上げられる。この理由は、帯電防止剤と他のバインダーを混合した場合に、帯電防止剤が凝集剤として働く場合が多いからである。工業的に安価で多量に入手できる帯電防止剤としては、有機系のノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性の親水性の強い化合物が挙げられる。これらの中には分散剤として働く化合物もあるが凝集剤として働く化合物も多い。特に強い帯電防止性を発揮するカチオン性帯電防止剤ではその傾向が強い。例えば、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドなどいずれも高い電荷密度をもつ高分子電解質である。これらは、他の水溶性または水分散性バインダーの凝集剤として働く。このため、上記のような帯電防止剤とバインダーを配合した塗料はそのポットライフが短く、工業的な生産効率が非常に悪い。特にカチオン型の高分子帯電防止剤は、排水の水処理に使用される化合物もあり、この傾向が一層顕著である。また、導電性微粒子を帯電防止剤として利用することも知られているが、この場合も混合するバインダーによっては塗料のポットライフが短い問題がやはり発生する。これが顕著になると、塗料の増粘、あるいは凝集物が生じる。このためコーティングした際に塗布外観が悪くなり、塗布スジやブツが発生する。また、導電性微粒子の分散性が悪くなるため、帯電防止性能が低下する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の問題点に関して鋭意検討した結果、ポリエステルフィルム製造工程中に特定の方法で特定の化合物を塗布することで上記の問題を解決し、かつ予想外の効果が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は、(1)未延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に帯電防止性塗布剤を塗布、乾燥して塗布層を形成し、(2)その後、少なくとも縦方向に延伸し、(3)さらに前記塗布層の少なくとも一つの面の上に、塗布剤または印刷剤組成物との接着性が向上する易接着層を塗布した後に横方向に延伸することにより製造されることを特徴とする塗布フィルムに存する。
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のフィルムを構成するポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸またはそのエステルとグリコールとを主たる出発原料として得られるポリエステルであり、例えば、繰り返し構造単位の80%以上がエチレンテレフタレート単位またはエチレン−2,6−ナフタレート単位または1,4−シクロヘキサンテレフタレートを有するポリエステルを指す。そして、上記の範囲を逸脱しない条件下であれば、他の第三成分を含有していてもよい。
【0008】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸以外に、例えば、イソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシエトキシ安息香酸等)等を用いることができる。グリコール成分としては、エチレングリコール以外に、例えば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上を用いることができる。
【0009】
かかるポリエステルの極限粘度は、通常0.45以上、好ましくは0.50〜1.0、さらに好ましくは0.52〜0.80の範囲である。極限粘度が0.45未満では、フィルム製造時の生産性が低下したり、フィルムの機械的強度が低下するという問題が生ずることがある。一方、ポリマーの溶融押出安定性の点から、極限粘度は1.0を超えないことが好ましい。
【0010】
本発明のポリエステルフィルムは、フィルムに滑り性を与えて取扱い性を向上する目的で、ポリエステルに粒子を含有させ、フィルム表面に適度な突起を形成させてもよい。かかる粒子の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子、およびポリエステル重合時に生成させる析出粒子を挙げることができる。
【0011】
本発明において、フィルムに含有させる粒子の粒径と量はその用途にもよるが、平均粒径は、好ましくは0.005〜5.0μm、さらに好ましくは0.01〜3.0μmの範囲である。平均粒径が5.0μmを超えるとフィルム表面が粗面化しすぎてしまう傾向がある。また薄いフィルムでは絶縁性が低下したりすることがある。さらに粒子がフィルム表面から脱落しやすくなり、フィルム使用時の「粉落ち」の原因となる恐れがある。粒子の平均粒径が0.005μm未満では、この粒子による突起形成が不十分な傾向があり、その結果、滑り性改良効果が弱くなる恐れがある。すなわち、粒子を大量に添加しないと滑り性改良効果効果が現れず、大量に添加するとフィルムの機械的特性が損なわれる恐れがある。
【0012】
また、粒子含有量はポリエステルに対し、0.0000〜30.0重量%、さらには0.010〜20.0重量%であることが望ましい。粒子量が多くなるとフィルムの機械的特性が損なわれる傾向がある。最低量はフィルムの使用用途により異なる。高透明フィルムでは少ないほど好ましく、適度な滑り性を与えるため含まれる粒子も少ないほど好ましい。磁気記録用途では滑り性は重要な特性であり、添加する粒子径にも依存するが通常0.1重量%以上は必要である。また、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの白色顔料を添加して製造する白色フィルムでは、通常2重量%以上は必要である。ただし、これは遮光率の高いフィルムを製造する場合であり、半透明のフィルムではこの下限はより小さくてもよい。
【0013】
フィルム中に、かかる粒子を2種類以上配合してもよく、同種の粒子で粒径の異なるものを配合してもよい。いずれにしても、フィルムに含有する粒子全体の平均粒径、および合計の含有量が上記した範囲を満足することが好ましい。
粒子を含むポリエステルの製造に際して、粒子はポリエステルの合成反応中に添加してもポリエステルに直接添加してもよい。合成反応中に添加する場合は、粒子をエチレングリコール等に分散させたスラリーとして、ポリエステル合成の任意の段階で添加する方法が好ましい。一方、ポリエステルに直接添加する場合は、乾燥した粒子として、または、水あるいは沸点が200℃以下の有機溶媒中に分散したスラリーとして、2軸混練押出機を用いてポリエステルに添加混合する方法が好ましい。なお、添加する粒子は、必要に応じ、事前に解砕、分散、分級、濾過等の処理を施しておいてもよい。
粒子の含有量を調節する方法としては、上記した方法で高濃度に粒子を含有するマスター原料を作っておき、それを製膜時に、実質的に粒子を含有しない原料で希釈して粒子含有量を調節する方法が有効である。
【0014】
また、上記の突起形成剤以外の添加剤として、必要に応じて、帯電防止剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、着色剤(染料、顔料)、光線遮断剤、紫外線吸収剤などを含有していてもよい。
本発明のポリエステルフィルムは、最終的に得られる特性が本発明の用件を満足する限り、多層構造となっていても構わない。例えば、共押出し積層フィルムであってもよい。この場合、ベースフィルムに関する上記の記述は、最表面層のポリエステルに適用される。
【0015】
二軸延伸ポリエステルフィルムの製造は、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれかで実施されるが、特に逐次二軸延伸が多く行われている。すなわち、溶融押し出ししたポリエステルを冷却ドラムの上で冷却し未延伸フィルムを作成し、これを周速差のある一群のロールで延伸(縦延伸)し、この後フィルムの長手方向と垂直な方向にクリップで保持しつつ延伸(横延伸)する。この変形として、縦延伸、横延伸を何回かに分割して実施してもよい。また分割しその一部ずつを交互に実施してもよい。例えば、高強度フィルムを再延伸法で製造する方法がこれに相当する。
【0016】
本発明における未延伸フィルムとは、例えば、面配向度(△P)が0.000〜0.010の範囲のフィルムのことであり、好ましくはΔPが0.000〜0.005の範囲であり、さらに好ましくは0.000〜0.002の範囲である。△Pが小さいと、塗布層と基材ポリエステルフィルムとの層間接着性に優れるので好ましい。
なお、面配向度(△P)は、フィルムの主配向方向の屈折率をnγ、主配向方向と直角方向の屈折率をnβ、厚み方向の屈折率をnαとすると
【0017】
【数1】
ΔP=(nγ+nβ)/2−nα
で与えられる。
【0018】
本発明で用いる帯電防止性塗布剤とは、その塗布剤中に帯電防止剤を含有する塗布層である。ここでの帯電防止剤とは、例えば、有機系の化合物で、適度に吸湿して静電気を逃がす効果を持つ化合物、有機電子伝導性の化合物、そして導電性微粒子である。
有機系の吸湿して静電気を逃がす化合物とは、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性の化合物等のいわゆる帯電防止剤と称されてきた化合物である。
ノニオン系帯電防止剤では、ポリエーテル化合物、またはその誘導体が挙げられ、具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリオキシエチレンジアミン、ポリエーテル/ポリエステル/ポリアミドブロック共重合体がこれに該当する。
【0019】
アニオン系帯電防止剤としては、スルホン酸、カルボン酸、リン酸、ホウ酸およびそれらの塩を持つ化合物が挙げれれる。これらの中では、その帯電防止性の強さと工業的に入手しやすいことから、スルホン酸系帯電防止剤がよく使用される。例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸リチウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸カリウム、ポリスチレンスルホン酸セシウム、ポリスチレンスルホン酸アンモニウム等である。もちろん、他の共重合できるモノマーと、スチレンスルホン酸およびその塩、との共重合体も含まれる。また、低分子のスルホン酸系化合物も有効である。例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル等が挙げられる。例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸エステルナトリウム塩、セチル硫酸エステルナトリウム塩、ステアリル硫酸エステルナトリウム塩、オレイル硫酸エステルナトリウム塩等である。
【0020】
カチオン系帯電防止剤としては、低分子化合物として、第1級アミンの塩酸塩、第2級アミンの塩酸塩、第3級アミンの塩酸塩、第4級アンモニウム塩が代表的である。用いられるアミンとしては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ラウリルアミン、ジラウリルアミン、ラウリルジメチルアミン、ステアリルアミン、ジステアリルアミン、ステアリルジメチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、ピリジン、モルホリン、グアニジン、ヒドラジン等が挙げられる。また第4級アンモニウム塩の例としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、セチルピリジニウムブロミド、ステアラミドメチルピリジニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムメトサルフェート等が挙げられる。高分子カチオン系帯電防止剤としては、第4級アンモニウム塩型スチレン重合体、第4級アンモニウム塩型アミノアルキル(メタ)アクリレート重合体、第4級アンモニウム塩型ジアリルアミン重合体等が挙げられる。具体的には、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートの4級化物、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド等である。
【0021】
両性系帯電防止剤としては、アミン塩型カチオンを有するカルボン酸塩型両性界面活性剤、第4級アンモニウム塩型のカチオンを有するカルボン酸塩型両性界面活性剤(いわゆるベタイン型両性界面活性剤)が有名である。例えば、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等が挙げられる。
【0022】
有機電子伝導性の化合物としては、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレン)、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(アリレンビニレン)、ポリアセン等があげられる。これらは、従来高価であり、また通常溶媒への溶解性があまり良くない。しかし、例えば、スルホン酸残基を導入することによって水に溶解するようになったタイプも開発されている。
導電性微粒子としては、カーボンブラック、金属微粉末、金属酸化物微粉末が。挙げられる例えば、銀、銅、ニッケル等の微粉末、または酸化アンチモン、酸化インジウムなどの微粉末である。
【0023】
本発明における帯電防止性塗布剤とは、その塗布剤中に上記帯電防止剤のほかに、バインダーを含有していてもよい。上記帯電防止剤のうち、有機高分子を採用した場合にはそれだけで十分な皮膜を形成する場合が多い。しかし有機高分子系帯電防止剤の中には、塗膜がポリエステルの延伸に追随しない場合もある。この場合、適当な柔軟性を持つバインダーを混合するとよい。また有機高分子系帯電防止剤の中には、逆に形成した塗膜が柔らかすぎる場合もある。この場合にはやや硬いバインダーを混合するとよい。帯電防止剤として有機低分子を採用した場合には塗膜が柔らかすぎる場合が多い。また導電性微粒子を採用した場合には、バインダーと併用する必要がある。
【0024】
ここでいうバインダーとは、有機系の高分子であり具体的には以下の化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物であり、これらを水系塗料の形で帯電防止剤と混合する、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、クロロプレン、スチレン系樹脂、カーボネート系樹脂、アリレート系樹脂、ビニルブチラール系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、上記の複合ポリマーが挙げられる。複合ポリマーとは、ランダム、ブロック、グラフトの各共重合体、シェル−コア型結合体である。
【0025】
本発明における帯電防止性塗布剤とは、上記以外に架橋剤、ワックス、架橋有機粒子、無機粒子を含んでいてもよい。特にポリエステル中に粒子の少ない高透明フィルムを基材とする場合、帯電防止性塗布層中にワックス、または粒子を含んでいると良い。これは、フィルムの縦延伸行程中でのロールによる傷入りを防止するからである。
架橋剤は一般に種々の化合物が知られているが、水系塗料で使用しやすい架橋剤としては、例えば、アミノ樹脂、特にメラミン系架橋剤と尿素系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン化合物、ブロックイソシアネート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコーアルミネートカップリング剤、反応性のビニル化合物が挙げられる。
【0026】
ワックスとしては、天然ワックス、合成ワックス、それらの配合したワックスの中から選ばれたワックスが挙げられる。天然ワックスとは、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油ワックスである。合成ワックスとしては、合成炭化水素、変性ワックス、水素化ワックス、脂肪酸、酸アミド、アミン、イミド、エステル、ケトンが挙げられる。これらの中で使いやすいワックスとしては、カルナウバワックス、ポリエチレンワックス、そして粘度平均分子量500〜20000のポリマーである、ポリプロピレン、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックまたはグラフト結合体が挙げられる。
【0027】
有機粒子としては、炭素−炭素二重結合を一分子中に2個以上含有する化合物(例えばジビニルベンゼン)により架橋構造を達成したポリスチレンまたはポリアクリレートポリメタクリレートが挙げられる。さらに縮合反応のより合成される熱硬化性樹脂の粒子として、メラミン−ホルムアルデヒド、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド、フェノール−ホルムアルデヒド、エポキシ等が挙げられる。さらにポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂の粒子、架橋シリコーン樹脂の粒子が挙げられる。またこれらの粒子の表面は、有機物で表面処理されていてもよい。例えば、界面活性剤、分散剤としての高分子、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などで表面処理されていてもよい。
【0028】
無機粒子としては、二酸化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化バリウム、カーボンブラック、硫化モリブデン、酸化アンチモン、等が挙げられる。これらの中では、二酸化ケイ素が安価であり、かつ粒子径が多種あるので利用しやすい。またこれらの粒子の表面は、有機物で表面処理ざれていてもよい。例えば、界面活性剤、分散剤としての高分子、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などで表面処理されていてもよい。
【0029】
その他の添加剤として、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等を含んでいてもよい。
本発明における塗布剤は、安全衛生上、水を媒体とする塗布剤であることが望ましいが、本発明の要旨を越えない範囲内で、水溶性または水分散性樹脂の助剤として有機溶剤を含有していてもよい。上記記載の中の「水系塗料」についても同様である。水を主な媒体とする場合は、上記に詳述した化合物を界面活性剤などによって強制分散化した塗布剤であってもよいが、自己分散型の塗布剤が塗料の分散安定性の点から好ましい。自己分散型塗布剤とは、上記化合物に化学結合により各種親水性基を導入した塗布剤である。例えば、ノニオン性としては水酸基、ポリエーテル、アニオン性としてはスルホン酸、カルボン酸、リン酸およびそれらの塩、カチオン性としては四級アンモニウム塩のようなオニウム塩のような親水性成分が挙げられるが、これらの化学種を共重合やグラフト処理により導入し、自己分散型の塗布剤とすることができる。
【0030】
本発明における易接着性層とは、上記帯電防止剤を構成する化合物群から帯電防止剤を除いた化合物群の中から選ばれる化合物で構成される層である。あるいは、帯電防止剤を含んでいても実質的に帯電防止性を発揮しない程度の微量である場合である。その組成は、フィルムの上に塗布、印刷される化合物とよく接着するようにするため、上に塗布、印刷される化合物により適宜変更される。主成分としてはバインダーであり、助剤として架橋剤、粒子などが挙げられる。
【0031】
上述の塗布液をポリエステルフィルムに塗布する方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーターあるいはこれら以外の塗布装置を用いることができる。
塗布液を塗布後乾燥する際のフィルムの到達温度の上限は、好ましくは最終的に得られるフィルムの(Tg+20℃)であり、さらに好ましくは(Tg+10℃)であり、最も好ましくは(Tg+5℃)である。なお、Tgはフィルムのガラス転移温度を意味する。フィルムの到達温度が高すぎると、フィルムの製膜性が悪化する。
【0032】
このようにして得られる塗布層の厚さは、それぞれの層に関して最終製品における乾燥固形分として、好ましくは0.005〜1.0μmの範囲であり、さらに好ましくは0.01〜0.5μmの範囲であり、最も好ましくは0.015〜0.2μmの範囲である。塗布層の厚さは、薄くすることが好ましい。特に塗布層厚みが1.0μmを超えるとブロッキング等の問題が生ずる傾向がある。一方、塗布層の厚みが0.005μm未満の場合には、所望の性能が得られないことがあり、また塗布ムラや塗布ヌケが生じやすくなる傾向がある。
【0033】
従来のポリエステルフィルム製造工程内塗布法としては、縦方向に延伸された一軸延伸フィルムに塗布液を塗布した後、適当な乾燥を施し、あるいは乾燥を施さず一軸延伸フィルムを直ちに横方向に延伸し熱処理を行う方法(以下従来工程内塗布法と略記)が一般的であった。
本発明では、未延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に帯電防止層を設け、その後、少なくとも一方向に延伸し、次いで前記帯電防止層の少なくとも一つの面の上に易接着層を設けることにより、インライン2層塗布フィルムを得るところに特徴がある。このような構成を採用することで、従来にない帯電防止性かつ易接着性のフィルムを安定して製造できる。すなわち、以下のような利点がある。
【0034】
▲1▼従来混合凝集してしまうような帯電防止剤と易接着性を示すバインダーの組み合わせを2層に分割することで使用できるようになった。すなわち、本発明では、塗布剤を、帯電防止剤を含む塗布剤と、接着性を発揮する塗布剤とに分割することができ、塗料として安定した塗布剤を使用できるようになった。
▲2▼従来2層塗布するには、少なくとも第2層目を設けるためにオフラインコーティングを利用せざるを得なかった。この場合は、塗布、乾燥行程を別途設けて実施することになる。そこで、高いクリーン度を要求される場所を別途建設する必要性、コーター、ドライヤ−を別途導入する必要性、乾燥時のフィルム物性の変化といった問題を生ずる。本発明では、コーター、ドライヤーこそ導入する必要があるものの、新たに高いクリーン度のコーターの建物を建設する必要はない。またフィルム物性は通常の二軸延伸ポリエステルフィルムの範囲を自由に採用し得る。すなわち、オフラインコーティングでは達成できないフィルムである。そして、フィルム製造と同時に塗布フィルムができるというインラインコーティングの利点は大きい。
【0035】
▲3▼同じ化合物をインラインコーティングとオフラインコーティングした場合、基材との接着力はインラインコーティングの方が優れている。すなわち第2層目をオフラインコーティングでも設けた場合より接着性に優れる。この点でも、本発明のフィルムは従来にないフィルムである。
▲4▼帯電防止剤を含む塗料を低速度で塗布することができ、塗布面状の改良につながる。一般に帯電防止剤は界面活性剤の性質を示したり、水溶性高分子であったりする。このため、帯電防止剤を含む塗布剤は高粘度であったり、泡立ちやすい場合が多い。そこで高速度できれいに塗布することが難しい。すなわち、塗布スジや塗布ムラが発生しやすい。この点、本発明のフィルムは、帯電防止剤を含む塗布剤を低速度で塗布するので、上記の欠陥が少ないフィルムである。
次に、本発明のフィルムの製造法を具体的に説明する。
【0036】
ポリエステル原料を、押出装置に供給し、ポリエステルの融点以上の温度で溶融押出してスリット状のダイから溶融シートとして押し出す。次に、溶融シートを、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未延伸シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高める必要があり、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0037】
静電印加密着法とは、通常、シートの上面側にシートの流れと直交する方向に線状電極を張り、当該電極に約5〜10kVの直流電圧を印加することによりシートに静電荷を与え、ドラムとの密着性を向上させる方法である。また、液体塗布密着法とは、回転冷却ドラム表面の全体または一部(例えばシート両端部と接触する部分のみ)に液体を均一に塗布することにより、ドラムとシートとの密着性を向上させる方法である。本発明においては必要に応じ両者を併用してもよい。
本発明においてはこの段階で上述の帯電防止性塗布液を少なくとも一つの面に塗布後乾燥処理を施す必要がある。
【0038】
このようにして得られた塗布処理未延伸シートをまず縦方向に延伸する。延伸温度範囲は70〜150℃、延伸倍率は2.5〜6倍の範囲とするのが好ましい。延伸は一段階または二段階以上で行うことができる。この後、先の帯電防止性塗布層の少なくとも一つの面の上に易接着性層を塗布して設ける。次に横方向、すなわち、縦方向と直交する方向に一軸配向フィルムを一旦ガラス転移点以下に冷却するか、または冷却することなく例えば90〜150℃の温度範囲に予熱して、さらにほぼ同温度の下で2.5〜5倍、好ましくは3.0〜4.5倍に延伸を行い、二軸に配向したフィルムを得る。
【0039】
かくして得られたフィルムを、30%以内の伸長、制限収縮、または定長下で1秒〜5分間熱処理する。この際、熱処理工程内または熱処理後に縦方向に10%以内、好ましくは5%以内の弛緩処理する等の手法も、特に縦方向の熱収縮率を好適な範囲とするために採用することができる。熱処理温度は、延伸条件にもよるが、好ましくは180〜250℃、さらに好ましくは200〜230℃の範囲である。熱処理温度が250℃を超えるとフィルム密度が高くなりすぎる傾向がある。また、塗布層の一部が熱分解を生ずる場合もある。一方、180℃未満では、フィルムの熱収縮率が大きくなって好ましくない。
なお、塗布剤のフィルムへの塗布性、接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理や放電処理を施してもよい。また、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの塗布層の接着性、塗布性などを改良するために、塗布層形成後に塗布層に放電処理を施してもよい。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中の評価方法は下記のとおりである。実施例および比較例中、「部」とあるのは「重量部」を示す。
(1)ポリマーの極限粘度 [η] (dl/g)
ポリマー1gをフェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlに溶解し、30℃で測定した。
(2)面配向度(ΔP)
アタゴ光学社製アッベ式屈折計を用い、フィルム面内の屈折率の最大値nγ、それに直角の方向の屈折率nβ、およびフィルム厚さ方向の屈折率nαを測定し、前述の数式より面配向度ΔPを算出した。なお、屈折率の測定は、ナトリウムD線を用い、23℃で行った。
【0041】
(3)表面固有抵抗(ρs)
横川・ヒューレット・パッカード(株)の、内側電極50mm径、外側電極70mm径の同心円型電極である16008A(商品名)に23℃、50%RHの雰囲気下で試料を設置し、100Vの電圧を印加し、同社の高抵抗計である4329A(商品名)で試料の表面固有抵抗を測定した。
(4)UV硬化インキとの接着性
東洋インキ製造(株)オフセット印刷インク”FDOL藍APNロ”を、明製作所(株)製のオフセット印刷装置であるRIテスター”RI−2”にて2μmの厚さとなるように試料フィルム面に転写させ、これを、ウシオ電機(株)UV照射装置”UVC−402/1HN:302/1MH”に通し、水銀灯出力80W/cm、ラインスピード10m/分、ランプとフィルム間隔100mmの条件でインクを硬化させた。これを直ちにセロテープ剥離試験にかけ、インクの接着性を評価した。
【0042】
(5)セロテープ剥離試験
試料フィルムのインク層の上にニチバン(株)製”セロテープ”(18mm幅)を気泡の入らないよう7cmの長さに貼り、この上を3kgの手動式荷重ロールにて一定荷重をかけ密着させる。この後、試料フィルムを固定し、セロテープの一端を1kgの錘に接続し、この錘が45cmの距離自然落下した後に180度方向の剥離が開始するようにして、剥離試験を行った。接着性は次の5段階評価による。
評価5:セロテープ面側にインキが全く剥離しない
評価4:0%を超えて多く、かつ10%未満、インキがセロテープ面側に剥離する
評価3:10%以上50%未満のインキがセロテープ面側に剥離する
評価2:50%以上100未満のインキがセロテープ面側に剥離する
評価1:100%インキがセロハンテープ面側に剥離する
【0043】
(塗布剤の調整)
下記表1に示す水性塗料原液を配合し、下記表2に示す組成の水性塗料を調整した。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
比較例1
極限粘度0.65であり、粒子径0.1μmのSiO2 を0.05重量%含むポリエチレンテレフタレートを常法により乾燥して押出機に供給し、290℃で溶融してシート状に押出し、静電印加密着法を用いて冷却ロール上で急冷し、無定形シートとした。未延伸シートの△Pは0.000であった。得られた未延伸シートをロール延伸法を用いて縦方向に85℃で2.5倍延伸した後、さらに95℃で1.3倍延伸した。一軸延伸フィルムに次いでフィルムをテンターに導いて、横方向に120℃で4.2倍延伸し、225℃で熱処理を行い、最終生産速度140m/分で、基材ポリエステルフィルムの厚さ38μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムきわめて透明性に優れたフィルムであった。しかしながら、インク接着性、帯電防止性にかけている。フィルムの表面固有抵抗、インク接着性を下記表3に示す。
【0049】
比較例2〜8
比較例1と同様の方法にて未延伸シートを得た。このフィルムの片面に、表3に示す組成の塗布剤を塗布した。表3の「塗布I」とは、未延伸シートへの塗布を示し、「塗布II」とは、縦延伸後横延伸前にフィルムへの塗布を示す。いずれも、塗布厚さは、二軸延伸された後のポリエステルフィルム上での塗膜の乾燥固形分としての厚さを示す。塗布は以下の例もすべてロッドコーターによった。この後、このフィルムに70℃の温風を吹き付け、塗布液層を乾燥した。その後、比較例1と同様にして、シートをロール延伸法を用いて縦延伸、テンターにより横延伸、熱処理を実施して二軸延伸フィルムを得た。表面固有抵抗、インク接着性は二軸延伸後のフィルムについての測定値である。いずれも帯電防止性に優れたフィルムである。しかしインクとの接着性は不十分であった。これは、帯電防止剤が表面にブリードアウトし接着性を阻害したり、あるいは強い接着性を示すバインダーを使用することができない(比較例14参照)ためと推測される。比較例6では熱固定時に帯電防止剤の熱分解を生じ、表面固有抵抗値は比較例2〜8の中ではやや高い。また、比較例7、8は高透明フィルムにも関わらず、得られたフィルムの傷入りが少ない。
【0050】
比較例9〜12
比較例1と同様の方法にてフィルムを作成し、その行程中、縦延伸後横延伸前に表3の組成の塗料を塗布した。そのまま、テンターに導き乾燥させ、横延伸、熱処理を実施し、二軸延伸フィルムを得た。フィルムの特性は表3に示すとおりである。良好なインク接着性を示すが、帯電防止性に劣る。
【0051】
実施例1〜7
比較例1と同様の方法にて未延伸シートを得た。このフィルムの片面に、表3の「塗布I」に示す水性塗料を塗布した。この後フィルムに70℃の温風を吹き付け、塗布液層を乾燥した。その後、比較例1と同様にして、シートをロール延伸法を用いて縦延伸した。そしてテンターにより横延伸する前に、表3の「塗布II」に示す水性塗料を、上記「塗布I」に示す塗膜の上に塗布した。直ちにテンターに導き、乾燥、横延伸、熱処理を実施して二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの特性を表3に示す。いずれも帯電防止性と接着性を満たす優れたフィルムである。また実施例6、7ではフィルムへの傷入りが比較的少ない。
【0052】
比較例13
実施例1で使用した2種類の水性塗料(S1,T1)を混合してT5とし、これを比較例9と同様にして塗布した。ただし塗布厚さは二層分の厚さになるようにした。得られたフィルムの帯電防止性は優れるもののインク接着性に劣る。帯電防止剤が表層にブリードアウトするものと推測される。
比較例14
実施例4で使用した2種類の水性塗料(S4、T1)を混合し塗布を試みようとした。両者を混合すると直ちに塗料の凝集沈降がみられ、とうてい塗布はできなかった。
【0053】
実施例8〜10
実施例1〜7に示す方法により、表3の実施例8〜10の塗料を塗布し、二層塗布フィルムを得た。いずれも帯電防止性と接着性を満たす優れたフィルムである。
なお、T1,T3,T4の水性塗料は主樹脂はそれぞれB1,B3、B1である。しかしB1,B3は濡れ性が不十分なので単独では塗布抜けを生じる。これを低減させるため、濡れ性の優れたB2を副樹脂として添加した。
【0054】
比較例15
実施例4、8、9、10で使用している水性塗料S4を、縦延伸終了後横延伸前のフィルムに塗布した。しかし塗料の粘度が高いためきれいに塗布できず、塗布スジが発生した。これに対して、実施例4、8、9、10では縦延伸前の低速度で塗布するため、S4は塗布スジ無く塗布できた。
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
【表7】
【0058】
【発明の効果】
本発明のフィルム製造方法は、平坦なポリエステルフィルムを製造する際の傷入りを低減させ、かつ、高速度で塗布フィルムを製造できる点で、例えば高透明フィルム、あるいは磁気記録媒体用フィルムを安定して製造でき、その工業的価値は高い。
Claims (1)
- (1)未延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に帯電防止性塗布剤を塗布、乾燥して塗布層を形成し、(2)その後、少なくとも縦方向に延伸し、(3)さらに前記塗布層の少なくとも一つの面の上に、塗布剤または印刷剤組成物との接着性が向上する易接着層を塗布した後に横方向に延伸することにより製造されることを特徴とする塗布フィルム。
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