JP2004181708A - 積層ポリエステルフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】フィルム表面へのオリゴマー析出が少なく、優れた帯電防止性能を有し、埃等の付着が防止され、光学的欠陥の少ないポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】厚さ30〜200μmのポリエステルフィルムの片面に、厚さ3〜15μmの活性化エネルギー線硬化樹脂層を有し、もう一方の面に、4級アンモニウム塩基を有する化合物を含有する塗布層を有し、当該塗布層表面の表面固有抵抗が1×1013Ω/□以下であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし
【解決手段】厚さ30〜200μmのポリエステルフィルムの片面に、厚さ3〜15μmの活性化エネルギー線硬化樹脂層を有し、もう一方の面に、4級アンモニウム塩基を有する化合物を含有する塗布層を有し、当該塗布層表面の表面固有抵抗が1×1013Ω/□以下であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層ポリエステルフィルムに関し、詳しくは、ポリエステルフィルムにおいて、フィルム表面へのオリゴマー析出が少なく、良好な帯電防止性能を有し、埃等の付着が防止され、光学的欠陥の少ない塗布層を設け、かつ、該塗布層の反対面に、ハードコート層が積層された、透明性の良好な積層ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
二軸延伸ポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、透明性等の優れた特性を有することから、磁気記録媒体のベースフィルム、製版用フィルム、包装用フィルム、光学用フィルムを始めとする幅広い用途に使用されている。
しかし、プラスチックフィルム共通の問題として、静電気が発生して帯電しやすいという欠点を有し、そのためフィルム加工時あるいは加工製品の走行性不良や、周囲の埃等を引きつけるという問題を起こす。
【0003】
一般に、ポリエステルフィルムの帯電防止方法としては、有機スルホン酸塩等の低分子量のアニオン性界面活性剤タイプである化合物を練り込む方法、金属化合物を蒸着する方法、アニオン性化合物やカチオン性化合物、あるいはいわゆる導電性化合物を表面に塗布する方法等がある。
アニオン性化合物を練り込む方法は、安価に製造できるという利点があるものの、帯電防止効果において限界がある。さらに低分子量化合物を用いるため、いわゆるブルーミングによりアニオン性化合物がポリエステルフィルム表面に集まり、ポリエステルフィルムと上塗り層との接着力が低下したり、アニオン性化合物がフィルムや搬送ロールに転着したりする等の問題が生じる。またこのため、帯電防止性能の耐久性も低下する。
【0004】
金属化合物を蒸着する方法は、帯電防止性が優れ、近年は透明導電性フィルムとして用途が拡大しているものの、製造コストが高く、特定の用途には向いているが、一般の帯電防止フィルムとしては利用し難い。
導電性カーボンなどの導電性化合物を塗布する方法は、帯電防止効果が比較的良好であると共に比較的安価に製造できる利点があるものの、フィルムの透明性が悪化するという欠点がある。
このようなことから、帯電防止剤として高分子量アニオン性化合物や高分子量カチオン性化合物をフィルムに塗布する方法がポリエステルフィルムの帯電防止法として広く採用されている。
【0005】
また、特に近年ポリエステルフィルムの用途が多様化するにつれて、フィルムの加工、使用条件も多様化し、例えばポリエステルフィルムを100℃以上の高温で放置すると、フィルム表面に内部から浸出してきたオリゴマーが析出してしまうため、こうした条件でフィルムを加工、あるいは使用することによる種々の問題が生じている。
従来、オリゴマーの析出を防止する方法としては、固相重合により原料中に含まれるオリゴマーの低減を図ったり、また、末端封鎖剤を用いてポリエステルフィルムの耐加水分解性を向上させることなどが行われてきたが、より厳しい条件下においてはオリゴマーの析出防止を満足するところまでは至らなかったり、製造コストが高くなりすぎたりする等の問題がある。
また、前述のようにポリエステルフィルムの表面改質を目的として、各種の塗布フィルムが提案されているが、塗布する組成によっては、オリゴマーの析出を促進してしまう問題が生じている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−289168号公報
【特許文献2】特開2001−62960号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、フィルム表面へのオリゴマー析出が少なく、優れた帯電防止性能を有し、埃等の付着が防止され、光学的欠陥の少ないポリエステルフィルムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記実情に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、特定構成の積層ポリエステルフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、厚さ30〜200μmのポリエステルフィルムの片面に、厚さ3〜15μmの活性化エネルギー線硬化樹脂層を有し、もう一方の面に、4級アンモニウム塩基を有する化合物を含有する塗布層を有し、当該塗布層表面の表面固有抵抗が1×1013Ω/□以下であることを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルとは、ジカルボン酸成分とグリコール成分との重縮合により得られるポリエステルである。これらのジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸等が、グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0010】
本発明において用いられるポリエステルとしては、代表的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられるが、その他に上記の酸成分やグリコール成分を共重合したポリエステルであってもよく、必要に応じて他の成分や添加剤を含有していてもよい。
本発明におけるポリエステルフィルムには、取扱いを容易にするために、易滑性を付与する目的で粒子を含有させてもよい。このような目的で使用される粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子、さらに、ポリエステル製造工程時の析出粒子等を用いることができる。
【0011】
用いる粒子の粒径や含有量はフィルムの用途や目的に応じて選択されるが、平均粒径に関しては、通常は0.005〜5.0μm、好ましくは0.01〜3.0μmの範囲である。平均粒径が5.0μmを超えると、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎたり、粒子がフィルム表面から脱落しやすくなったりすることがある。平均粒径が0.005μm未満では、表面粗度が小さすぎて、十分な易滑性が得られない場合がある。粒子含有量については、ポリエステルに対し、通常0.001〜30.0重量%であり、好ましくは0.01〜10.0重量%である。粒子量が多くなるとフィルムの機械的特性や透明性が損なわれる傾向があり、少なければ易滑性が劣る傾向がある。
【0012】
また、必要に応じて上記の粒子のほかにも添加剤を加えてもよい。このような添加剤としては、例えば、帯電防止剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、染料、顔料、光線遮断剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
本発明におけるポリエステルフィルムは、本発明の要件を満たしていれば多層構造であってもよく、多層構造の場合は、ポリエステルでない層が含まれても構わない。また、塗布層はフィルムの片面のみに設けていても、両面に設けていても、本発明の概念に当然含まれるものであり、少なくとも片面の塗布層が本発明の要件を満足していればよい。
【0013】
本発明のポリエステルフィルムは、塗布層表面の表面固有抵抗が1×1013Ω/□以下であることを特徴とする塗布フィルムであり、好ましくは表面固有抵抗が1×1012Ω/□以下、さらに好ましくは1×1010Ω/□以下である。表面固有抵抗が1×1013Ω/□を超える場合は、ロール状に巻いたフィルムを巻出した時や、重ね合わせた単枚状のフィルムを順次搬送するような時に、フィルム同士の密着や加工不良、異物や埃の付着といった問題を引き起こす。
【0014】
また、本発明のポリエステルフィルムにおいては、フィルムを180℃で30分間熱処理した後における塗布層表面のポリエステルオリゴマー量が3.0mg/m2以下であることが好ましい。熱処理後の塗布層表面のポリエステルオリゴマー量がこれらの範囲を超えると、ポリエステルフィルムの用途が限定されたりする。例えば、離型層を設けたポリエステルフィルムに粘着層を設けて、他の部材に貼り合わせて後、ポリエステルフィルムと離型層を取り除くような離型フィルムとして用いる場合、フィルムより析出したオリゴマーが粘着層の中で結晶化し、輝点等の光学欠陥となる問題が知られている。その他にも、透明フィルムの場合はヘーズアップにより外観を損なったり、上塗り層を設けて使用する場合には上塗り層との密着性が低下したり、あるいは加工装置を汚し生産性を低下させたりと言った問題が発生することがある。
【0015】
上記のような様々な問題を解決するため、本発明ではポリエステルフィルムに、オリゴマーの析出を封止する性能を示す塗布層を設けてなる。
本発明において、フィルムに設けられる塗布層を構成する成分としては、4級アンモニウム塩基を有する化合物を必須とし、必要に応じてポリビニルアルコール等を併用することが好ましい。
【0016】
4級アンモニウム塩基を有する化合物とは、分子中の主鎖や側鎖に、4級アンモニウム塩基を含む構成要素を持つものを指す。そのような構成要素としては例えば、ピロリジウム環、アルキルアミンの4級化物、さらにこれらをアクリル酸やメタクリル酸と共重合したもの、N−アルキルアミノアクリルアミドの4級化物、ビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩、2−ヒドロキシ3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。さらに、これらを組み合わせて、あるいは他の樹脂と共重合させても構わない。また、これらの4級アンモニウム塩の対イオンとなるアニオンとしては例えば、ハロゲン、アルキルサルフェート、アルキルスルホネート、硝酸等のイオンが挙げられる。
【0017】
また本発明においては、4級アンモニウム塩基を有する化合物は高分子化合物であることが望ましい。分子量が低すぎる場合は、塗布層中から容易に除去されて経時的に性能の低下を引き起こしたり、塗布層がべたついたりするおそれがある。また、分子量が低いと耐熱安定性に劣る場合がある。このような不具合を生じないためには、4級アンモニウム塩基を有する化合物の数平均分子量が、通常は1000以上、さらには2000以上、特に5000以上であることが望ましい。また一方で、かかる化合物は分子量が高すぎる場合は、塗布液の粘度が高くなりすぎる等の不具合を生じる場合がある。そのような不具合を生じないためには、数平均分子量が500000以下であることが好ましい。
【0018】
本発明で用いるポリビニルアルコールは、通常の重合反応によって合成することができ、水溶性であることが好ましい。
ポリビニルアルコールの重合度は、特に限定されるものではないが、通常100以上、好ましくは300〜40000のものが用いられる。重合度が100以下の場合、塗布層の耐水性が低下する傾向がある。ポリビニルアルコールのけん化度は、特に限定されるものではないが、通常70モル%以上、好ましくは80モル%以上、99.9モル%以下であるポリ酢酸ビニルけん化物が実用上用いられる。
【0019】
さらに塗布層中には、必要に応じて上記以外の水溶性または水分散性のバインダー樹脂の1種もしくは2種以上を併用することができる。かかるバインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂等が挙げられる。これらは、それぞれの骨格構造が共重合等により実質的に複合構造を有していてもよい。複合構造を持つバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂グラフトポリエステル、アクリル樹脂グラフトポリウレタン、ビニル樹脂グラフトポリエステル、ビニル樹脂グラフトポリウレタン等が挙げられる。
【0020】
さらに必要に応じて、塗布層中に架橋反応性化合物を含んでいてもよい。架橋反応性化合物は、主に塗布層構成成分中に含まれる官能基と架橋反応することで、塗布層の凝集性、表面硬度、耐擦傷性、耐溶剤性、耐水性を改良することができ好ましい。
本発明のフィルムの塗布層は、界面活性剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、帯電防止剤、有機系潤滑剤、有機粒子、無機粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0021】
塗布層構成成分中に占める、4級アンモニウム塩基を有する化合物の比率は、通常10〜99重量%、好ましくは20重量%〜95重量%である。比率がこれらの範囲より高すぎたり低すぎたりした場合は、所望の帯電防止性能、オリゴマー析出防止性能が得られない場合がある。
本発明において用いる塗布液は、取扱い上、作業環境上、水溶液または水分散液であることが望ましいが、水を主たる媒体としており、本発明の要旨を越えない範囲であれば、有機溶剤を含有していてもよい。
【0022】
塗布液の固形分濃度には特に制限はないが、通常0.3〜65重量%、好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜20重量%である。濃度がこれらの範囲より高すぎる場合も低すぎる場合も、機能を十分に発現するために必要な厚さの塗布層を設けることが困難となることがある。
塗布層の厚さは乾燥厚さで、通常0.003〜1.5μm、好ましくは0.005〜0.5μm、さらに好ましくは0.01〜0.3μmである。塗布層の厚さが0.003μm未満の場合は十分な性能が得られない恐れがあり、1.5μmを超えるとフィルム同士のブロッキングが起こりやすくなる。
【0023】
ポリエステルフィルムに塗布層を設ける方法は、ポリエステルフィルムを製造する工程中で塗布液を塗布する方法が好適に採用される。例えば、未延伸フィルムに塗布した後、延伸する方法、一軸延伸フィルムに塗布した後、延伸する方法、二軸延伸フィルムに塗布した後、延伸する方法等がある。特に、未延伸または一軸延伸フィルムに塗布液を塗布した後、テンターにおいて乾燥および延伸を同時に行う方法が経済的である。
【0024】
ポリエステルフィルムに塗布液を塗布する方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような塗布技術を用いることができる。具体的には、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、カレンダコーター、押出コーター、バーコーター等のような技術が挙げられる。
【0025】
本発明の積層フィルムは、30〜200μm、好ましくは50〜200μm厚みのフィルムとした場合、優れた効果を発揮する。フィルム厚みが30μm未満の場合は、ハードコート層を形成した際にハードコート層に用いる硬化樹脂の硬化収縮により、カールが生じるため好ましくない。
次に本発明の中のポリエステルフィルムの製造方法について具体的に説明するが、本発明のフィルムは以下の製造例に何ら限定されるものではない。
【0026】
すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、押出機を用い、口金から溶融シ−トを押出し、冷却ロ−ルで冷却固化して未延伸シ−トを得る方法が好ましい。この場合、シ−トの平面性を向上させるため、シ−トと回転冷却ドラムとの密着性を高める必要があり、静電印加密着法及び/又は液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0027】
次いで、得られた未延伸フィルムは二軸方向に延伸して二軸配向される。すなわち、まず、前記の未延伸シ−トを一方向にロ−ルまたは、テンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は、通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸を行う。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜115℃であり、延伸倍率は、通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き、130℃〜250℃の範囲の温度で30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸延伸フィルムを得る。延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆるインラインコ−ティングを施すことができる。それは、以下に限定するものではないが、例えば、1段目の延伸が終了して、2段目の延伸前に、帯電防止性、滑り性、接着性等の改良、2次加工性改良等の目的で、水溶液、水系エマルジョン、水系スラリー等のコ−ティング処理を施すことができる。
【0028】
上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を用いることもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となる様に行うのが好ましい。また、前記の未延伸シ−トを面積倍率が10〜40倍になる様に同時二軸延伸を行うことも可能である。更に、必要に応じて熱処理を行う前または後に再度縦および/または横方向に延伸してもよい。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムにハードコートを形成してなり、ハードコート層としては、活性エネルギー線硬化樹脂層を採用する。
【0029】
活性エネルギー線硬化樹脂層の硬化成分としては、不飽和ポリエステル樹脂系、アクリル系、付加重合系、チオール・アクリルのハイブリッド系、カチオン重合系、カチオン重合とラジカル重合のハイブリッド系などを使用することができる。これらの中では、硬化性、耐擦傷性、表面硬度、可撓性および耐久性などの観点でアクリル系の硬化成分が好ましい。
上記のアクリル系硬化成分は、活性エネルギー線重合成分としてのアクリルオリゴマーと反応性希釈剤とを含有する。そして、必要に応じ、光重合開始剤、光増感剤、改質剤を含有する。
【0030】
アクリルオリゴマーとしては、代表的には、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリロイル基またはメタアクリロイル基が結合されたオリゴマーが挙げられる。その他のアクリルオリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、メラミン、イソシアヌール酸、環状ホスファゼン等の剛直な骨格にアクリロイル基またはメタアクリロイル基が結合したオリゴマーが挙げられる。
【0031】
反応性希釈剤は、塗布剤の媒体として塗布工程での溶剤の機能を担うとともに、それ自体が多官能性または一官能性のアクリルオルゴマーと反応する基を有するため、塗膜の共重合成分となる。反応性希釈剤の具体例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0032】
光重合開始剤としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシー2ーフェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2−クロロチオキサントン、アントラキノン、フェニルジスルフイド、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン等が挙げられる。
【0033】
光増感剤としては、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール等の3級アミン系、トリフェニルホスフィン等のアルキルホスフィン系、β−チオジグリコール等のチオエーテル系などが挙げられる。
改質剤としては、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、有機高分子、染料、顔料、安定剤などが挙げられる。これらは、活性エネルギー線による反応を阻害しない範囲で使用され、活性エネルギー線硬化樹脂層の特性を用途に応じて改良することができる。活性エネルギー線硬化樹脂層の組成物には、塗工時の作業性向上、塗工厚さのコントロールのため、有機溶剤を配合することができる。
【0034】
活性エネルギー線硬化樹脂層の形成は、硬化用樹脂組成物を前記の塗布層の表面に塗布した後に活性エネルギー線を照射して架橋硬化させることにより行う。活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線、α線、β線、γ線を使用することができる。活性エネルギー線の照射は、通常、塗布層側から行うが、フィルムとの密着性を高めるため、フィルム面側から行ってもよく、さらには、活性エネルギー線を反射し得る反射板をフィルム面側に設けてもよい。
【0035】
活性エネルギー線硬化樹脂層の厚さは、3.0〜15μm、好ましくは5〜15μmの範囲である。硬化樹脂層の厚さが3.0μm未満の場合は、表面硬度が不十分となり、15μmを超える場合は、硬化樹脂層の硬化収縮が大きくなり、フィルムが硬化樹脂層側にカールする。
本発明において硬化樹脂層側の表面硬度は、通常H以上、好ましくは2H以上である。H未満では製品となった時にキズが付きやすく、実用上好ましくない。
【0036】
本発明において、活性エネルギー線硬化樹脂層のベースフィルムへの接着性を改良するために、易接着層を施す以外の方法としてフィルムに化学処理や放電処理を施してもよい。また、必要に応じて帯電防止層等の中間層を設けてもよい。かかる易接着層や他の中間層を設ける方法としては、共押出法や塗布法を採用すればよい。
【0037】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中「部」とあるのは「重量部」を示す。
また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
【0038】
(1)ポリエステルの極限粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0039】
(2)平均粒径(d50)
(株)島津製作所社製遠心沈降式粒度分布測定装置SA−CP3型を用いてストークスの抵抗則に基づく沈降法によって粒子の大きさを測定した。
【0040】
(3)表面固有抵抗値
日本ヒューレット・パッカード社製高抵抗測定器(HP4339B)および測定電極(HP16008B)を使用し、23℃,50%RHの測定雰囲気でサンプルを十分調湿後、印可電圧100Vで1分後の塗布層の表面固有抵抗値を測定した。
【0041】
(4)フィルムの熱処理方法
A4サイズのケント紙と熱処理を行うポリエステルフィルムを重ね合わせ、その際、オリゴマー量を測定する面が外側になるようにゼムクリップ等で四隅をクリップし、ケント紙とポリエステルフィルムを止めた。
窒素雰囲気下で180℃のオーブンに前記ポリエステルフィルムを、30分間放置し熱処理を行った。
【0042】
(5)フィルム表面オリゴマー量測定法
上部が開放され、底辺の面積が250cm2となるように、ポリエステルフィルムを折って、四角の箱を作成する。塗布層を設けている場合は、塗布層面が内側となるようにする。
次いで、上記の方法で作成した箱の中に、DMF(ジメチルホルムアミド)10mlを入れ3分間放置後DMFを回収した。回収したDMFを液体クロマトグラフィー(島津LC−7A)に供給してDMF中のポリエステルのオリゴマー量を求め、このオリゴマー量の値を、DMFを接触させたフィルム面積で割って、フィルム表面オリゴマー量(mg/m2)とした。
【0043】
(6)フィルム表面オリゴマー量
上記(4)に示す方法にてフィルムを180℃、30分間熱処理し、次いで上記(5)に示す方法にて、当該フィルム表面のオリゴマー量を測定した。
【0044】
(7)埃付着性評価(アッシュテスト)
23℃,50%RHの測定雰囲気でポリエステルフィルムを十分調湿後、塗布層を綿布で10往復こする。これを、細かく砕いた煙草の灰の上に静かに近づけ、灰の付着状況を以下の基準で評価した。
○:フィルムを灰に接触させても付着しない。
△:フィルムを灰に接触させると少し付着する。
×:フィルムを灰に近づけただけで多量に付着する。
【0045】
(8)表面硬度
JIS K5400(1990)に従い、各種硬度の鉛筆を45°の角度で硬化樹脂層表面に当て、荷重1kgの下で引掻きを与え、そして、傷が発生したときの鉛筆の硬度を表面硬度とした。
【0046】
(9)カール値
100mm×100mmの大きさのサンプルを、凹面を上にして平らな面の上に置き、四隅の跳ね上がり高さを測定し平均値をカール値とした。
【0047】
(11)屈曲性
評価する活性エネルギー線硬化樹脂層を有する面を、JIS K 5600−5−1に記載されているタイプIの試験装置により求めた。
【0048】
(12)光学欠陥検査
ポリエステルフィルムの表面(下記実施例、比較例において活性エネルギー線硬化樹脂層が設けられている面の反対面)に、下記(R−1)に示す離型層を塗布量が0.1g/m2(乾燥後)になるように設け、離型フィルムを得た。次いで、離型層上にアクリル系粘着剤を塗布し、180℃で5分間乾燥して厚さ20μmの粘着層を設けた。これをガラス板に接着し離型フィルムを取り除いて得られた粘着層サンプルを、偏光顕微鏡のステージ上に置き、サンプルを挟む2枚の偏光子がクロスニコルになるようセットして輝点等の光学異常欠陥を観察した。光学欠陥は大きさが0.5μm以上のもののみカウントし、その個数を粘着層の面積あたりに換算した後、以下の基準にて評価した。
○:光学欠陥が、0.5個/m2未満(実用上問題にならない)
△:光学欠陥が、0.5個/m2以上、1.0個/m2未満(実用上やや問題になる)
×:光学欠陥が、1.0個/m2以上(実用上問題になる)
・離型層(R−1)組成:硬化型シリコーン樹脂/硬化触媒/溶媒を重量比で100/5/2000、ただし溶媒はトルエン/MEKを重量比で1/1の比率で混合した溶媒。
【0049】
比較例1
固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートのチップを十分に乾燥した後、280〜300℃に加熱溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電密着法を用いて表面温度40〜50℃の鏡面冷却ドラムに密着させながら冷却固化させて、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを作成した。このフィルムを85℃の加熱ロール群を通過させながら長手方向に3.7倍延伸し、一軸配向フィルムとした。この一軸配向フィルムをテンター延伸機により100℃で幅方向に4.0倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施し、フィルム厚みが125μmの二軸延伸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
次いで、得られたフィルムに活性エネルギー線硬化樹脂を硬化後の厚さが10μmになるように塗布し、120W/cmのエネルギーの高圧水銀灯を使用し、照射距離100mmにて約10秒間照射した。
活性エネルギー線硬化樹脂としては、日本化薬製KAYARAD DPHAを77部、日本化薬製KAYARAD R−128Hを18部、チバ・ガイギー製IRGACURE651を5部より成る組成物を使用した。
【0050】
実施例1
フィルム製造工程の最中において、フィルムへの塗布と乾燥を行った。具体的には、比較例1と同様の手順によるフィルムの製造工程において、縦延伸後かつ横延伸前の一軸配向フィルムの片面に、下記表1に示す塗布液(A)を塗布した。その次にテンター延伸機における熱を利用して乾燥を行った。以降は比較例1と同様にし、厚みが125μmの基材フィルムの上に0.05g/m2の量の塗布層を設けた積層二軸延伸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
次いで、得られたフィルムの塗布層の反対面に活性エネルギー線硬化樹脂を比較例1と同様にして設けた。
【0051】
実施例2〜5および比較例2〜5
実施例1において、ポリエステルフィルムの厚さと塗布液(A)の組成と活性化エネルギー硬化樹脂層の厚さを下記表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして積層二軸延伸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0052】
<塗布液の調製>
実施例、比較例に用いた塗布液組成と配合比を下記に示す。
a:主鎖にピロリジウム環を有するポリマーである第一工業製薬社製シャロールDC−303P
b:ポリトリメチルアミノエチルメタクリレート4級化物
c:トリメチルアミノエチルメタクリレート4級化物/メチルメタクリレートを、重量組成比として65/35の割合で共重合した化合物
d:けん化度=88モル%、重合度=500のポリビニルアルコール
e:アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルを共重合した、Tgが約40℃のアクリル樹脂である、日本カーバイド工業製ニカゾール
f:メトキシメチロールメラミンである、大日本インキ化学工業製ベッカミン
g:平均粒径0.05μmのシリカゾル
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
以上、得られたフィルムの特性および実用特性を下記表3および4に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、静電気による汚れ等を防止し、高温下での使用後においてもオリゴマーの析出による問題が起きない、光学的欠陥の少ない活性エネルギー線硬化樹脂層を有する積層フィルムを提供することができ、その工業的な利用価値は高い。
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層ポリエステルフィルムに関し、詳しくは、ポリエステルフィルムにおいて、フィルム表面へのオリゴマー析出が少なく、良好な帯電防止性能を有し、埃等の付着が防止され、光学的欠陥の少ない塗布層を設け、かつ、該塗布層の反対面に、ハードコート層が積層された、透明性の良好な積層ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
二軸延伸ポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、透明性等の優れた特性を有することから、磁気記録媒体のベースフィルム、製版用フィルム、包装用フィルム、光学用フィルムを始めとする幅広い用途に使用されている。
しかし、プラスチックフィルム共通の問題として、静電気が発生して帯電しやすいという欠点を有し、そのためフィルム加工時あるいは加工製品の走行性不良や、周囲の埃等を引きつけるという問題を起こす。
【0003】
一般に、ポリエステルフィルムの帯電防止方法としては、有機スルホン酸塩等の低分子量のアニオン性界面活性剤タイプである化合物を練り込む方法、金属化合物を蒸着する方法、アニオン性化合物やカチオン性化合物、あるいはいわゆる導電性化合物を表面に塗布する方法等がある。
アニオン性化合物を練り込む方法は、安価に製造できるという利点があるものの、帯電防止効果において限界がある。さらに低分子量化合物を用いるため、いわゆるブルーミングによりアニオン性化合物がポリエステルフィルム表面に集まり、ポリエステルフィルムと上塗り層との接着力が低下したり、アニオン性化合物がフィルムや搬送ロールに転着したりする等の問題が生じる。またこのため、帯電防止性能の耐久性も低下する。
【0004】
金属化合物を蒸着する方法は、帯電防止性が優れ、近年は透明導電性フィルムとして用途が拡大しているものの、製造コストが高く、特定の用途には向いているが、一般の帯電防止フィルムとしては利用し難い。
導電性カーボンなどの導電性化合物を塗布する方法は、帯電防止効果が比較的良好であると共に比較的安価に製造できる利点があるものの、フィルムの透明性が悪化するという欠点がある。
このようなことから、帯電防止剤として高分子量アニオン性化合物や高分子量カチオン性化合物をフィルムに塗布する方法がポリエステルフィルムの帯電防止法として広く採用されている。
【0005】
また、特に近年ポリエステルフィルムの用途が多様化するにつれて、フィルムの加工、使用条件も多様化し、例えばポリエステルフィルムを100℃以上の高温で放置すると、フィルム表面に内部から浸出してきたオリゴマーが析出してしまうため、こうした条件でフィルムを加工、あるいは使用することによる種々の問題が生じている。
従来、オリゴマーの析出を防止する方法としては、固相重合により原料中に含まれるオリゴマーの低減を図ったり、また、末端封鎖剤を用いてポリエステルフィルムの耐加水分解性を向上させることなどが行われてきたが、より厳しい条件下においてはオリゴマーの析出防止を満足するところまでは至らなかったり、製造コストが高くなりすぎたりする等の問題がある。
また、前述のようにポリエステルフィルムの表面改質を目的として、各種の塗布フィルムが提案されているが、塗布する組成によっては、オリゴマーの析出を促進してしまう問題が生じている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−289168号公報
【特許文献2】特開2001−62960号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、フィルム表面へのオリゴマー析出が少なく、優れた帯電防止性能を有し、埃等の付着が防止され、光学的欠陥の少ないポリエステルフィルムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記実情に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、特定構成の積層ポリエステルフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、厚さ30〜200μmのポリエステルフィルムの片面に、厚さ3〜15μmの活性化エネルギー線硬化樹脂層を有し、もう一方の面に、4級アンモニウム塩基を有する化合物を含有する塗布層を有し、当該塗布層表面の表面固有抵抗が1×1013Ω/□以下であることを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルとは、ジカルボン酸成分とグリコール成分との重縮合により得られるポリエステルである。これらのジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸等が、グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0010】
本発明において用いられるポリエステルとしては、代表的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられるが、その他に上記の酸成分やグリコール成分を共重合したポリエステルであってもよく、必要に応じて他の成分や添加剤を含有していてもよい。
本発明におけるポリエステルフィルムには、取扱いを容易にするために、易滑性を付与する目的で粒子を含有させてもよい。このような目的で使用される粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子、さらに、ポリエステル製造工程時の析出粒子等を用いることができる。
【0011】
用いる粒子の粒径や含有量はフィルムの用途や目的に応じて選択されるが、平均粒径に関しては、通常は0.005〜5.0μm、好ましくは0.01〜3.0μmの範囲である。平均粒径が5.0μmを超えると、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎたり、粒子がフィルム表面から脱落しやすくなったりすることがある。平均粒径が0.005μm未満では、表面粗度が小さすぎて、十分な易滑性が得られない場合がある。粒子含有量については、ポリエステルに対し、通常0.001〜30.0重量%であり、好ましくは0.01〜10.0重量%である。粒子量が多くなるとフィルムの機械的特性や透明性が損なわれる傾向があり、少なければ易滑性が劣る傾向がある。
【0012】
また、必要に応じて上記の粒子のほかにも添加剤を加えてもよい。このような添加剤としては、例えば、帯電防止剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、染料、顔料、光線遮断剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
本発明におけるポリエステルフィルムは、本発明の要件を満たしていれば多層構造であってもよく、多層構造の場合は、ポリエステルでない層が含まれても構わない。また、塗布層はフィルムの片面のみに設けていても、両面に設けていても、本発明の概念に当然含まれるものであり、少なくとも片面の塗布層が本発明の要件を満足していればよい。
【0013】
本発明のポリエステルフィルムは、塗布層表面の表面固有抵抗が1×1013Ω/□以下であることを特徴とする塗布フィルムであり、好ましくは表面固有抵抗が1×1012Ω/□以下、さらに好ましくは1×1010Ω/□以下である。表面固有抵抗が1×1013Ω/□を超える場合は、ロール状に巻いたフィルムを巻出した時や、重ね合わせた単枚状のフィルムを順次搬送するような時に、フィルム同士の密着や加工不良、異物や埃の付着といった問題を引き起こす。
【0014】
また、本発明のポリエステルフィルムにおいては、フィルムを180℃で30分間熱処理した後における塗布層表面のポリエステルオリゴマー量が3.0mg/m2以下であることが好ましい。熱処理後の塗布層表面のポリエステルオリゴマー量がこれらの範囲を超えると、ポリエステルフィルムの用途が限定されたりする。例えば、離型層を設けたポリエステルフィルムに粘着層を設けて、他の部材に貼り合わせて後、ポリエステルフィルムと離型層を取り除くような離型フィルムとして用いる場合、フィルムより析出したオリゴマーが粘着層の中で結晶化し、輝点等の光学欠陥となる問題が知られている。その他にも、透明フィルムの場合はヘーズアップにより外観を損なったり、上塗り層を設けて使用する場合には上塗り層との密着性が低下したり、あるいは加工装置を汚し生産性を低下させたりと言った問題が発生することがある。
【0015】
上記のような様々な問題を解決するため、本発明ではポリエステルフィルムに、オリゴマーの析出を封止する性能を示す塗布層を設けてなる。
本発明において、フィルムに設けられる塗布層を構成する成分としては、4級アンモニウム塩基を有する化合物を必須とし、必要に応じてポリビニルアルコール等を併用することが好ましい。
【0016】
4級アンモニウム塩基を有する化合物とは、分子中の主鎖や側鎖に、4級アンモニウム塩基を含む構成要素を持つものを指す。そのような構成要素としては例えば、ピロリジウム環、アルキルアミンの4級化物、さらにこれらをアクリル酸やメタクリル酸と共重合したもの、N−アルキルアミノアクリルアミドの4級化物、ビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩、2−ヒドロキシ3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。さらに、これらを組み合わせて、あるいは他の樹脂と共重合させても構わない。また、これらの4級アンモニウム塩の対イオンとなるアニオンとしては例えば、ハロゲン、アルキルサルフェート、アルキルスルホネート、硝酸等のイオンが挙げられる。
【0017】
また本発明においては、4級アンモニウム塩基を有する化合物は高分子化合物であることが望ましい。分子量が低すぎる場合は、塗布層中から容易に除去されて経時的に性能の低下を引き起こしたり、塗布層がべたついたりするおそれがある。また、分子量が低いと耐熱安定性に劣る場合がある。このような不具合を生じないためには、4級アンモニウム塩基を有する化合物の数平均分子量が、通常は1000以上、さらには2000以上、特に5000以上であることが望ましい。また一方で、かかる化合物は分子量が高すぎる場合は、塗布液の粘度が高くなりすぎる等の不具合を生じる場合がある。そのような不具合を生じないためには、数平均分子量が500000以下であることが好ましい。
【0018】
本発明で用いるポリビニルアルコールは、通常の重合反応によって合成することができ、水溶性であることが好ましい。
ポリビニルアルコールの重合度は、特に限定されるものではないが、通常100以上、好ましくは300〜40000のものが用いられる。重合度が100以下の場合、塗布層の耐水性が低下する傾向がある。ポリビニルアルコールのけん化度は、特に限定されるものではないが、通常70モル%以上、好ましくは80モル%以上、99.9モル%以下であるポリ酢酸ビニルけん化物が実用上用いられる。
【0019】
さらに塗布層中には、必要に応じて上記以外の水溶性または水分散性のバインダー樹脂の1種もしくは2種以上を併用することができる。かかるバインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂等が挙げられる。これらは、それぞれの骨格構造が共重合等により実質的に複合構造を有していてもよい。複合構造を持つバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂グラフトポリエステル、アクリル樹脂グラフトポリウレタン、ビニル樹脂グラフトポリエステル、ビニル樹脂グラフトポリウレタン等が挙げられる。
【0020】
さらに必要に応じて、塗布層中に架橋反応性化合物を含んでいてもよい。架橋反応性化合物は、主に塗布層構成成分中に含まれる官能基と架橋反応することで、塗布層の凝集性、表面硬度、耐擦傷性、耐溶剤性、耐水性を改良することができ好ましい。
本発明のフィルムの塗布層は、界面活性剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、帯電防止剤、有機系潤滑剤、有機粒子、無機粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0021】
塗布層構成成分中に占める、4級アンモニウム塩基を有する化合物の比率は、通常10〜99重量%、好ましくは20重量%〜95重量%である。比率がこれらの範囲より高すぎたり低すぎたりした場合は、所望の帯電防止性能、オリゴマー析出防止性能が得られない場合がある。
本発明において用いる塗布液は、取扱い上、作業環境上、水溶液または水分散液であることが望ましいが、水を主たる媒体としており、本発明の要旨を越えない範囲であれば、有機溶剤を含有していてもよい。
【0022】
塗布液の固形分濃度には特に制限はないが、通常0.3〜65重量%、好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜20重量%である。濃度がこれらの範囲より高すぎる場合も低すぎる場合も、機能を十分に発現するために必要な厚さの塗布層を設けることが困難となることがある。
塗布層の厚さは乾燥厚さで、通常0.003〜1.5μm、好ましくは0.005〜0.5μm、さらに好ましくは0.01〜0.3μmである。塗布層の厚さが0.003μm未満の場合は十分な性能が得られない恐れがあり、1.5μmを超えるとフィルム同士のブロッキングが起こりやすくなる。
【0023】
ポリエステルフィルムに塗布層を設ける方法は、ポリエステルフィルムを製造する工程中で塗布液を塗布する方法が好適に採用される。例えば、未延伸フィルムに塗布した後、延伸する方法、一軸延伸フィルムに塗布した後、延伸する方法、二軸延伸フィルムに塗布した後、延伸する方法等がある。特に、未延伸または一軸延伸フィルムに塗布液を塗布した後、テンターにおいて乾燥および延伸を同時に行う方法が経済的である。
【0024】
ポリエステルフィルムに塗布液を塗布する方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような塗布技術を用いることができる。具体的には、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、カレンダコーター、押出コーター、バーコーター等のような技術が挙げられる。
【0025】
本発明の積層フィルムは、30〜200μm、好ましくは50〜200μm厚みのフィルムとした場合、優れた効果を発揮する。フィルム厚みが30μm未満の場合は、ハードコート層を形成した際にハードコート層に用いる硬化樹脂の硬化収縮により、カールが生じるため好ましくない。
次に本発明の中のポリエステルフィルムの製造方法について具体的に説明するが、本発明のフィルムは以下の製造例に何ら限定されるものではない。
【0026】
すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、押出機を用い、口金から溶融シ−トを押出し、冷却ロ−ルで冷却固化して未延伸シ−トを得る方法が好ましい。この場合、シ−トの平面性を向上させるため、シ−トと回転冷却ドラムとの密着性を高める必要があり、静電印加密着法及び/又は液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0027】
次いで、得られた未延伸フィルムは二軸方向に延伸して二軸配向される。すなわち、まず、前記の未延伸シ−トを一方向にロ−ルまたは、テンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は、通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸を行う。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜115℃であり、延伸倍率は、通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き、130℃〜250℃の範囲の温度で30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸延伸フィルムを得る。延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆるインラインコ−ティングを施すことができる。それは、以下に限定するものではないが、例えば、1段目の延伸が終了して、2段目の延伸前に、帯電防止性、滑り性、接着性等の改良、2次加工性改良等の目的で、水溶液、水系エマルジョン、水系スラリー等のコ−ティング処理を施すことができる。
【0028】
上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を用いることもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となる様に行うのが好ましい。また、前記の未延伸シ−トを面積倍率が10〜40倍になる様に同時二軸延伸を行うことも可能である。更に、必要に応じて熱処理を行う前または後に再度縦および/または横方向に延伸してもよい。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムにハードコートを形成してなり、ハードコート層としては、活性エネルギー線硬化樹脂層を採用する。
【0029】
活性エネルギー線硬化樹脂層の硬化成分としては、不飽和ポリエステル樹脂系、アクリル系、付加重合系、チオール・アクリルのハイブリッド系、カチオン重合系、カチオン重合とラジカル重合のハイブリッド系などを使用することができる。これらの中では、硬化性、耐擦傷性、表面硬度、可撓性および耐久性などの観点でアクリル系の硬化成分が好ましい。
上記のアクリル系硬化成分は、活性エネルギー線重合成分としてのアクリルオリゴマーと反応性希釈剤とを含有する。そして、必要に応じ、光重合開始剤、光増感剤、改質剤を含有する。
【0030】
アクリルオリゴマーとしては、代表的には、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリロイル基またはメタアクリロイル基が結合されたオリゴマーが挙げられる。その他のアクリルオリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、メラミン、イソシアヌール酸、環状ホスファゼン等の剛直な骨格にアクリロイル基またはメタアクリロイル基が結合したオリゴマーが挙げられる。
【0031】
反応性希釈剤は、塗布剤の媒体として塗布工程での溶剤の機能を担うとともに、それ自体が多官能性または一官能性のアクリルオルゴマーと反応する基を有するため、塗膜の共重合成分となる。反応性希釈剤の具体例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0032】
光重合開始剤としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシー2ーフェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2−クロロチオキサントン、アントラキノン、フェニルジスルフイド、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン等が挙げられる。
【0033】
光増感剤としては、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール等の3級アミン系、トリフェニルホスフィン等のアルキルホスフィン系、β−チオジグリコール等のチオエーテル系などが挙げられる。
改質剤としては、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、有機高分子、染料、顔料、安定剤などが挙げられる。これらは、活性エネルギー線による反応を阻害しない範囲で使用され、活性エネルギー線硬化樹脂層の特性を用途に応じて改良することができる。活性エネルギー線硬化樹脂層の組成物には、塗工時の作業性向上、塗工厚さのコントロールのため、有機溶剤を配合することができる。
【0034】
活性エネルギー線硬化樹脂層の形成は、硬化用樹脂組成物を前記の塗布層の表面に塗布した後に活性エネルギー線を照射して架橋硬化させることにより行う。活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線、α線、β線、γ線を使用することができる。活性エネルギー線の照射は、通常、塗布層側から行うが、フィルムとの密着性を高めるため、フィルム面側から行ってもよく、さらには、活性エネルギー線を反射し得る反射板をフィルム面側に設けてもよい。
【0035】
活性エネルギー線硬化樹脂層の厚さは、3.0〜15μm、好ましくは5〜15μmの範囲である。硬化樹脂層の厚さが3.0μm未満の場合は、表面硬度が不十分となり、15μmを超える場合は、硬化樹脂層の硬化収縮が大きくなり、フィルムが硬化樹脂層側にカールする。
本発明において硬化樹脂層側の表面硬度は、通常H以上、好ましくは2H以上である。H未満では製品となった時にキズが付きやすく、実用上好ましくない。
【0036】
本発明において、活性エネルギー線硬化樹脂層のベースフィルムへの接着性を改良するために、易接着層を施す以外の方法としてフィルムに化学処理や放電処理を施してもよい。また、必要に応じて帯電防止層等の中間層を設けてもよい。かかる易接着層や他の中間層を設ける方法としては、共押出法や塗布法を採用すればよい。
【0037】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中「部」とあるのは「重量部」を示す。
また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
【0038】
(1)ポリエステルの極限粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0039】
(2)平均粒径(d50)
(株)島津製作所社製遠心沈降式粒度分布測定装置SA−CP3型を用いてストークスの抵抗則に基づく沈降法によって粒子の大きさを測定した。
【0040】
(3)表面固有抵抗値
日本ヒューレット・パッカード社製高抵抗測定器(HP4339B)および測定電極(HP16008B)を使用し、23℃,50%RHの測定雰囲気でサンプルを十分調湿後、印可電圧100Vで1分後の塗布層の表面固有抵抗値を測定した。
【0041】
(4)フィルムの熱処理方法
A4サイズのケント紙と熱処理を行うポリエステルフィルムを重ね合わせ、その際、オリゴマー量を測定する面が外側になるようにゼムクリップ等で四隅をクリップし、ケント紙とポリエステルフィルムを止めた。
窒素雰囲気下で180℃のオーブンに前記ポリエステルフィルムを、30分間放置し熱処理を行った。
【0042】
(5)フィルム表面オリゴマー量測定法
上部が開放され、底辺の面積が250cm2となるように、ポリエステルフィルムを折って、四角の箱を作成する。塗布層を設けている場合は、塗布層面が内側となるようにする。
次いで、上記の方法で作成した箱の中に、DMF(ジメチルホルムアミド)10mlを入れ3分間放置後DMFを回収した。回収したDMFを液体クロマトグラフィー(島津LC−7A)に供給してDMF中のポリエステルのオリゴマー量を求め、このオリゴマー量の値を、DMFを接触させたフィルム面積で割って、フィルム表面オリゴマー量(mg/m2)とした。
【0043】
(6)フィルム表面オリゴマー量
上記(4)に示す方法にてフィルムを180℃、30分間熱処理し、次いで上記(5)に示す方法にて、当該フィルム表面のオリゴマー量を測定した。
【0044】
(7)埃付着性評価(アッシュテスト)
23℃,50%RHの測定雰囲気でポリエステルフィルムを十分調湿後、塗布層を綿布で10往復こする。これを、細かく砕いた煙草の灰の上に静かに近づけ、灰の付着状況を以下の基準で評価した。
○:フィルムを灰に接触させても付着しない。
△:フィルムを灰に接触させると少し付着する。
×:フィルムを灰に近づけただけで多量に付着する。
【0045】
(8)表面硬度
JIS K5400(1990)に従い、各種硬度の鉛筆を45°の角度で硬化樹脂層表面に当て、荷重1kgの下で引掻きを与え、そして、傷が発生したときの鉛筆の硬度を表面硬度とした。
【0046】
(9)カール値
100mm×100mmの大きさのサンプルを、凹面を上にして平らな面の上に置き、四隅の跳ね上がり高さを測定し平均値をカール値とした。
【0047】
(11)屈曲性
評価する活性エネルギー線硬化樹脂層を有する面を、JIS K 5600−5−1に記載されているタイプIの試験装置により求めた。
【0048】
(12)光学欠陥検査
ポリエステルフィルムの表面(下記実施例、比較例において活性エネルギー線硬化樹脂層が設けられている面の反対面)に、下記(R−1)に示す離型層を塗布量が0.1g/m2(乾燥後)になるように設け、離型フィルムを得た。次いで、離型層上にアクリル系粘着剤を塗布し、180℃で5分間乾燥して厚さ20μmの粘着層を設けた。これをガラス板に接着し離型フィルムを取り除いて得られた粘着層サンプルを、偏光顕微鏡のステージ上に置き、サンプルを挟む2枚の偏光子がクロスニコルになるようセットして輝点等の光学異常欠陥を観察した。光学欠陥は大きさが0.5μm以上のもののみカウントし、その個数を粘着層の面積あたりに換算した後、以下の基準にて評価した。
○:光学欠陥が、0.5個/m2未満(実用上問題にならない)
△:光学欠陥が、0.5個/m2以上、1.0個/m2未満(実用上やや問題になる)
×:光学欠陥が、1.0個/m2以上(実用上問題になる)
・離型層(R−1)組成:硬化型シリコーン樹脂/硬化触媒/溶媒を重量比で100/5/2000、ただし溶媒はトルエン/MEKを重量比で1/1の比率で混合した溶媒。
【0049】
比較例1
固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートのチップを十分に乾燥した後、280〜300℃に加熱溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電密着法を用いて表面温度40〜50℃の鏡面冷却ドラムに密着させながら冷却固化させて、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを作成した。このフィルムを85℃の加熱ロール群を通過させながら長手方向に3.7倍延伸し、一軸配向フィルムとした。この一軸配向フィルムをテンター延伸機により100℃で幅方向に4.0倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施し、フィルム厚みが125μmの二軸延伸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
次いで、得られたフィルムに活性エネルギー線硬化樹脂を硬化後の厚さが10μmになるように塗布し、120W/cmのエネルギーの高圧水銀灯を使用し、照射距離100mmにて約10秒間照射した。
活性エネルギー線硬化樹脂としては、日本化薬製KAYARAD DPHAを77部、日本化薬製KAYARAD R−128Hを18部、チバ・ガイギー製IRGACURE651を5部より成る組成物を使用した。
【0050】
実施例1
フィルム製造工程の最中において、フィルムへの塗布と乾燥を行った。具体的には、比較例1と同様の手順によるフィルムの製造工程において、縦延伸後かつ横延伸前の一軸配向フィルムの片面に、下記表1に示す塗布液(A)を塗布した。その次にテンター延伸機における熱を利用して乾燥を行った。以降は比較例1と同様にし、厚みが125μmの基材フィルムの上に0.05g/m2の量の塗布層を設けた積層二軸延伸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
次いで、得られたフィルムの塗布層の反対面に活性エネルギー線硬化樹脂を比較例1と同様にして設けた。
【0051】
実施例2〜5および比較例2〜5
実施例1において、ポリエステルフィルムの厚さと塗布液(A)の組成と活性化エネルギー硬化樹脂層の厚さを下記表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして積層二軸延伸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0052】
<塗布液の調製>
実施例、比較例に用いた塗布液組成と配合比を下記に示す。
a:主鎖にピロリジウム環を有するポリマーである第一工業製薬社製シャロールDC−303P
b:ポリトリメチルアミノエチルメタクリレート4級化物
c:トリメチルアミノエチルメタクリレート4級化物/メチルメタクリレートを、重量組成比として65/35の割合で共重合した化合物
d:けん化度=88モル%、重合度=500のポリビニルアルコール
e:アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルを共重合した、Tgが約40℃のアクリル樹脂である、日本カーバイド工業製ニカゾール
f:メトキシメチロールメラミンである、大日本インキ化学工業製ベッカミン
g:平均粒径0.05μmのシリカゾル
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
以上、得られたフィルムの特性および実用特性を下記表3および4に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、静電気による汚れ等を防止し、高温下での使用後においてもオリゴマーの析出による問題が起きない、光学的欠陥の少ない活性エネルギー線硬化樹脂層を有する積層フィルムを提供することができ、その工業的な利用価値は高い。
Claims (5)
- 厚さ30〜200μmのポリエステルフィルムの片面に、厚さ3〜15μmの活性化エネルギー線硬化樹脂層を有し、もう一方の面に、4級アンモニウム塩基を有する化合物を含有する塗布層を有し、当該塗布層表面の表面固有抵抗が1×1013Ω/□以下であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
- 4級アンモニウム塩基を有する化合物が高分子化合物であることを特徴とする請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。
- 塗布層が、ポリビニルアルコールを含有することを特徴とする請求項1または2記載の積層ポリエステルフィルム。
- 塗布層が、ポリエステルフィルムの製造工程内で設けられたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
- 4級アンモニウム塩基を有する化合物が塗布層構成成分中に占める割合が、10〜99重量%の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
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