JP3825104B2 - プリント配線板用長尺基材の外形加工方法及びスリット加工機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線板用長尺基材の外形加工方法及びスリット加工に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ICカードの製造等に用いられているプリント配線板用長尺基材は、ボンディングホールの形成、導体パターンのエッチング、めっき層の形成、電子部品の実装、モールド加工等の工程を経て、最終製品に加工されている。
【0003】
この種の長尺基板としては、従来、プリント配線板の1個分の幅(短手方向の幅)を有するものが広く用いられてきた。しかし、近年では外形加工の効率化を図るために、プリント配線板の複数個分の幅を有するものも採用されている。
【0004】
このような幅広の長尺基材は、前記加工工程のうちの比較的最終工程に近い段階(例えば電子部品の実装工程の前等)において、以下の手順で外形加工される。
【0005】
まず、ロール状に巻かれた長尺基材71を、図13,図14に示されるようなスリット加工機81に通じ、そこで同長尺基材71のスリット加工を行う。その結果、幅広であった長尺基材71は基材長手方向に沿って細長に切断され、個々の最小単位基材列71a,71b,71cごとに分割される。このとき、前記長尺基材71において製品領域R1 の両縁にある捨て耳領域R2 が除去される。さらに、このような長尺基材71の最小単位基材列71a,71b,71cを短手方向に沿って切断し、基材長手方向に沿って一列に並ぶ複数個の最小単位基材からなる短尺状基材が得られる。そして、この後に電子部品の実装及び封止樹脂によるモールド加工を行った後、さらに短尺状基材を最小単位基材に分割する。すると、最終製品であるプリント配線板が得られるようになっている。
【0006】
図13に例示される従来のスリット加工機81は、供給用ローラ82と、複数のガイドローラ83,84と、切断処理部85と、複数の巻取用ローラ86とを備えている。供給用ローラ82から連続的に供給される長尺基材71は、ガイドローラ83に掛け渡されながら、その後段にある切断処理部85まで搬送される。切断処理部85においては、互い違いに設けられた複数のロール刃87が噛合するように配置されている。そして、長尺基材71はこれらのロール刃87間を通過する際にスリット加工される。複数に分割された長尺基材71は、切断処理部85の後段に設けられたガイドローラ84に掛け渡されながら、複数の巻取用ローラ86によって巻き取られる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この種の長尺基材71においては、電気めっきによりめっき層を効率的に形成することを目的として、各最小単位基材同士を連結するような共通のめっきリードを形成しておく場合が少なくない。ただし、不要になっためっきリードは、極力最終製品から除去されることが好ましい。このため、従来ではスリット加工機81によるスリット加工の実施前または実施後に、専用の金型を備える別の装置によりめっきリードの打ち抜き切断を行っていた。
【0008】
しかしながら、上記の従来技術では、めっきリードの打ち抜き切断を実施する分だけ工程数が多くなり、コスト高になる。高価な金型装置が必要であることもコスト高の原因となる。
【0009】
また、金型を使用してめっきリードを打ち抜くと、長尺基材71が傷付いたり汚れたりしやすくなるため、歩留まりが悪くなる。
さらに、金型装置による打ち抜き時に長尺基材71の位置決めホールを用いると、位置決めホールが変形する結果、後工程において正確に位置決めをすることができなくなる。従って、プリント配線板の寸法精度を悪化させる原因となる。
【0010】
本発明は上記の課題を解決するためなされたものであり、その第1の目的は、工程数の増加を伴うことなくめっきリードの切断が可能なためコスト性に優れたプリント配線板用長尺基材の外形加工方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、前記の優れた外形加工方法を実施するにあたって好適なスリット加工機を提供することにある。
さらに、本発明の第3の目的は、コスト性、歩留まり及び寸法精度に優れたスリット加工機を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、プリント配線板の大きさに相当する最小単位基材を基材長手方向に沿って並べてなる最小単位基材列が複数列形成されたプリント配線板用長尺基材をスリット加工機を用いてスリット加工することにより、前記長尺基材を最小単位基材列ごとに連続的に分割する外形加工方法であって、前記長尺基材を前記スリット加工機に通じる際、その長尺基材上に形成されているめっきリードの一部をめっきリード打ち抜き部による打ち抜きによって同時に切断することを特徴としたプリント配線板用長尺基材の外形加工方法をその要旨とする。
【0013】
請求項2に記載の発明では、プリント配線板の大きさに相当する最小単位基材を基材長手方向に沿って並べてなる最小単位基材列が複数列形成されたプリント配線板用長尺基材をスリット加工することにより、前記長尺基材を最小単位基材列ごとに連続的に分割するスリット加工機であって、互い違いに設けられた複数のロール刃の噛合により同長尺基材のスリット加工を行う切断処理部と、前記長尺基材上に形成されているめっきリードの一部を打ち抜きによって切断するめっきリード打ち抜き部とを備えたことを特徴としたプリント配線板用長尺基材のスリット加工機をその要旨とする。
【0014】
請求項3に記載の発明では、請求項2において、前記ロール刃の周面に打ち抜きピンを設け、前記長尺基材を介して同ロール刃に対峙する補助ロールの周面に前記打ち抜きピンが係脱可能な係合凹部を設けている。
【0015】
本発明の「作用」を説明する。
請求項1に記載の発明によると、長尺基材をスリット加工機に通じる際に同時に共通のめっきリードの一部がめっきリード打ち抜き部による打ち抜きによって切断されることにより、最小単位基材同士が電気的にアイソレートされる。従って、専用の金型を備える別の装置によりめっきリードを打ち抜き切断する必要がなくなる。即ち、工程数の増加を伴うことなくめっきリードの切断を行うことができ、結果としてコスト性が向上する。
【0016】
請求項2に記載の発明によると、切断処理部を有するスリット加工機に長尺基材を通じると、複数のロール刃の噛合により同長尺基材がスリット加工される。その際、めっきリード打ち抜き部がめっきリードにおいて最小単位基材同士を連結している部分を打ち抜きによって切断し、最小単位基材同士が電気的にアイソレートされる。従って、専用の金型を備える別の装置によりめっきリードを打ち抜き切断する必要がなくなる。即ち、工程数の増加を伴うことなくめっきリードの切断を行うことができ、結果としてコスト性が向上する。なお、高価な金型装置が不要になることもコスト性の向上に寄与する。
【0017】
また、金型装置を使用しない本発明によると、金型装置を使用したときに起こりやすかった長尺基材の傷付きや汚れが解消されるため、歩留まりも確実に向上する。さらに、打ち抜き時に長尺基材の位置決めホールを用いる必要がなくなるため、位置決めホールの変形に起因する寸法精度の悪化を未然に防止することができる。なお、上記のようなロール刃の噛合によるスリット加工は、切断部の形状に優れしかも加工精度も高い。
【0018】
請求項3に記載の発明によると、対峙しているロール刃及び補助ロールが摺接しながら転動するとき、摺接部位にある打ち抜きピンが、同じく摺接部位にある係合凹部に係合する。その結果、ロール刃間に挟持されている長尺基材がめっきリードの一部にて打ち抜かれ、最小単位基材同士が電気的にアイソレートされる。つまり、この構成によると、スリット加工及びめっきリードの打ち抜き切断の両方が切断処理部において同時に行われる。また、かかる構成であると、スリット加工機の大型化を伴うことなく、めっきリードの打ち抜き切断を行うことができる。しかも、既存のスリット加工機のロール刃及び補助ロールのみを変更すれば足りるという利点がある。
【0019】
【発明の実施の形態】
[第1の実施形態]
以下、本発明をプリント配線板用長尺基材のスリット加工機10に具体化した一実施形態を図1〜図7に基づき詳細に説明する。
【0020】
図1(d)には、本実施形態において外形加工に供されるプリント配線板用長尺基材1が示されている。この長尺基材1は、複数列(ここでは3列)の最小単位基材列2a,2b,2cがある製品領域R1 とその両縁の捨て耳領域R2 とからなり、ロール状に巻かれた状態で保管されている。捨て耳領域R2 には、矩形状をした多数のスプロケットホール3が基材長手方向に沿って配列されている。また、製品領域R1 において各最小単位基材列2a,2b,2cの中央部には、6つのボンディングホール4からなるボンディングホール群が基材長手方向に沿って配列されている。この他にも、各最小単位基材列2a,2b,2cには、矩形状の位置決めホール5が基材長手方向に沿って配列されている。
【0021】
前記1つの最小単位基材列2a,2b,2cは、プリント配線板6の大きさに相当する最小単位基材U1 を多数並べたものとして把握することができる。図1(c )に示されるように、本実施形態の最小単位基材U1 は矩形状の小片であって、中央部にボンディングホール群を1つ、両端部に位置決めホール5を2つ備えている。
【0022】
なお、本実施形態における長尺基材1の具体的数値を例示すると、以下のようになる。即ち、1ロットの長さは110mであり、幅は120mmである。そのうち製品領域R1 の幅は105mm(35mm×3)であり、捨て耳領域R2 の幅は残りの15mm(7.5mm×2)となる。そして、スリット加工後になされる別の外形加工によって得られる短尺状基材7は、長さ171mm,幅35mmとなる(図1(b) 参照)。そして、その短尺状基材7には、長さ14mm,幅35mmの最小単位基材U1 が12個含まれている。また、長尺基材1の材料としては、例えばポリイミドやエポキシ等が使用されている。
【0023】
図2に示されるように、この長尺基材1の片側面には、コンタクトパターン8やめっきリード9等の導体パターンが形成されている。図3は、1つ1つを電気的にアイソレートすべく前記めっきリード9の一部が円形状に打ち抜かれた状態を示している。
【0024】
図4には、本実施形態のスリット加工機10の全体が概略的に示されている。同図に示されるように、このスリット加工機10は、供給用ローラ11と、複数のガイドローラ12,13と、切断処理部14と、複数の巻取用ローラ15とを備えている。供給用ローラ11には、ロール状に巻かれた長尺基材1が水平にかつ回転可能に軸支されるようになっている。第1のガイドローラ12は、供給用ローラ11の後段に2つ配置されている。同ガイドローラ12は、長尺基材1に好適なテンションを与えつつ後段の切断処理部14へそれを案内する。第2のガイドローラ13は、切断処理部14の後段に3つ配置されている。これらのガイドローラ13は、分割された長尺基材1に好適なテンションを与えつつ後段の複数の巻取用ローラ15へそれを案内する。巻取用ローラ15は分割される数だけ、即ち本実施形態では3つ設けられている。
【0025】
従って、供給用ローラ11から連続的に供給される長尺基材1は、ガイドローラ12に掛け渡されながら切断処理部14まで搬送され、そこでスリット加工される。切断処理部14において複数に分割された長尺基材1は、さらにガイドローラ13に掛け渡されながら巻取用ローラ15に巻き取られる。
【0026】
次に、図5〜図7に基づいて切断処理部14の構成を詳細に説明する。
本実施形態の切断処理部14を構成するロール支持用ブロック23は、前記第1のローラ12と第2のローラ13との間に設けられた設置用凹部に2つ設置されている。前記ブロック23のうちの1つには、図示しない回転駆動手段が収容されている。図5,図6に示されるように、ブロック23は、基材搬送方向に対して直交する方向に延びる支軸24,25を2本備えている。図5において反時計周りに回転する上側の支軸24には、第1及び第3のロール刃21A,21Cの2つが一体回転可能に固定されている。それらのロール刃21A,21C間には、第2の補助ロール22Bが配置されている。また、図5において時計周りに回転する下側の支軸25には、第1及び第3の補助ロール22A,22Cが一体回転可能に固定されている。これらの補助ロール22A,22C間には、第2のロール刃21Bが配置されている。そして、互い違いに設けられたこれらのロール刃21A〜21Cは、図5等に示されるように噛合した状態になっている。また、第1のロール刃21Aと第1の補助ロール22A、第2のロール刃21Bと第2の補助ロール22B、第3のロール刃21Cと第3の補助ロール22Cは、いずれも長尺基材1を介して上下に対峙している。なお、各補助ロール22A〜22Cは、切断時における長尺基材1の浮き上がりを抑制することにより加工精度を向上させる役割を果たしている。
【0027】
ここで、前記各ロール21A〜21C,22A〜22Cの幅は、長尺基材1が分割されたときの幅にほぼ等しく(即ち本実施形態では約35mmに)それぞれ設定されている。
【0028】
また、前記下側の支軸25において第1及び第3の補助ロール22A,22Cの両外側には、周面に多数のスプロケットピン26が突設されたピンロール27,28が一体回転可能に固定されている。これらのピンロール27,28もロール刃21A,21Cと噛合している。前記スプロケットピン26は、長尺基材1の捨て耳領域R2 に設けられたスプロケットホール3に係合することで、切断時における長尺基材1の位置決め及び搬送の容易化という役割を果たす。
【0029】
そして、長尺基材1が切断処理部14を通過する際には、第1のピンロール27と第1のロール刃21Aとの噛合により、第1の最小単位基材列2aと捨て耳領域R2 との境界が切り離される。第3の最小単位基材列2cと捨て耳領域R2 との境界は、第2のピンロール28と第3のロール刃21Cとの噛合により切り離される。第1の最小単位基材列2aと第2の最小単位基材列2bとの境界は、第1のロール刃21Aと第2のロール刃21Bとの噛合により切り離される。第2の最小単位基材列2bと第3の最小単位基材列2cとの境界は、第2のロール刃21Bと第3のロール刃21Cとの噛合により切り離される。即ち、各ロール21A〜21C,27,28の噛合によりスリット加工が実現される。
【0030】
図5〜図7に示されるように、第1〜第3のロール刃21A〜21Cの周面全体には、めっきリード打ち抜き部としての多数の打ち抜きピン31が突設されている。これらの打ち抜きピン31は、長尺基材1においてめっきリード9が打ち抜かれるべき位置に対応するように配列されている。本実施形態では、1つの最小単位基材U1 について打ち抜き孔33を2箇所形成する必要がある。ゆえに、各ロール刃21A〜21Cの周面には、かかる打ち抜きピン31が周方向に沿って2列設けられている。なお、前記打ち抜きピン31は円筒状を呈しており、その開口部全体が刃部になっている。また、第1の補助ロール22A〜22Cの周面には、前記打ち抜きピン31が係脱可能な係合凹部32が多数設けられている。そして、打ち抜きピン31が係合凹部32に係合するとき、ロール刃21A〜21Cと補助ロール22A〜22Cとの間に配置された長尺基材1の所定部分が打ち抜かれるようになっている。
【0031】
次に、図1,図4等に基づいて本実施形態における外形加工の一連の手順を説明する。
まず、従来公知の手順に従って各ホール3,4,5の形成、導体パターンのエッチング及び導体パターンへのめっき層の形成等を実施し、プリント配線板用長尺基材1を作製する。このとき、長尺基材1にはコンタクトパターン8やめっきリードパターン9等が形成される。
【0032】
次に、長尺基材1を上記のスリット加工機10に通じ、各ロール21A〜21C,27,28の噛合により長尺基材1のスリット加工を行う。その結果、最小単位基材列2a,2b,2c同士の境界が連続的に切断されることでそれらが一列おきに分離され、かつ製品領域R1 から捨て耳領域R2 が除去される。そして、長尺基材1が切断処理部14を通過するとき、打ち抜きピン31による打ち抜きによってめっきリード9の一部が同時に切断される。
【0033】
このようにして分割された長尺基材1は、必要に応じて短尺状基材7に切断される。その後、電子部品であるIC35の実装及び封止樹脂36によるモールド加工を行い、さらに短尺状基材7を最小単位基材U1 に分割する。すると、最終製品であるプリント配線板6が得られるようになっている。
【0034】
さて、本実施形態において特徴的な作用効果を以下に列挙する。
(イ)本実施形態の外形加工方法によると、長尺基材1をスリット加工機10に通じる際、同時に共通のめっきリード9の一部が切断される。このため、最小単位基材U1 同士または最小単位基材U1 内の複数の領域を、電気的にアイソレートすることができる。従って、専用の金型を備える別の装置により、めっきリード9を打ち抜いて切断する必要がなくなる。即ち、この方法によると、工程数の増加を伴うことなくめっきリード9の切断を行うことができ、結果としてコスト性が向上する。
【0035】
(ロ)本実施形態のスリット加工機10は、上述したような切断処理部14と、めっきリード打ち抜き部としての多数の打ち抜きピン31を備えたものとなっている。従って、このスリット加工機10に長尺基材1を通じると、複数のロール刃21A〜21Cの噛合により同長尺基材1がスリット加工され、かつ打ち抜きピン31によりめっきリード9の一部が切断される。従って、従来とは異なり、専用の金型を備える別の装置によりめっきリード9を打ち抜いて切断する必要がなくなる。即ち、工程数の増加を伴うことなくめっきリード9の切断を行うことができ、結果としてコスト性が向上する。なお、高価な金型装置が不要になることもコスト性の向上に寄与する。
【0036】
(ハ)また、めっきリード9の打ち抜きに金型装置を使用しない本実施形態では、金型装置を使用したときに起こりやすかった長尺基材1の傷付きや汚れも解消される。このため、歩留まりも確実に向上する。さらに、打ち抜き時に長尺基材1の位置決めホール5を用いる必要がなくなるため、位置決めホール5の変形に起因する寸法精度の悪化を未然に防止することができる。なお、上記のような複数のロール刃21A〜21Cの噛合によるスリット加工は、切断部の形状に優れしかも加工精度も高いという利点がある。
【0037】
(ニ)このスリット加工機10では、各ロール刃21A〜21Cの周面に打ち抜きピン31を設けるとともに、各補助ロール22A〜22Cの周面に打ち抜きピン31が係脱可能な係合凹部32を設けている。従って、対峙しているロール刃21A〜21C及び補助ロール22A〜22Cが摺接しながら転動するとき、摺接部位にある打ち抜きピン31が、同じく摺接部位にある係合凹部32に係合する。その結果、長尺基材1がめっきリード9の一部にて打ち抜かれることで打ち抜き孔33が形成され、最小単位基材U1 同士が電気的にアイソレートされる。つまり、この構成によると、スリット加工及びめっきリード9の打ち抜き切断の両方が切断処理部14において同時に行われる。また、かかる構成であると、めっきリード打ち抜き部を設けるために特別の設置スペースが必要になることもない。ゆえに、スリット加工機10の大型化を伴うことなく、めっきリード9の打ち抜き切断を行うことができる。しかも、既存のスリット加工機10のロール刃21A〜21C及び補助ロール22A〜22Cのみを変更すれば足りるという利点がある。
[第2の実施形態]
次に、実施形態2のスリット加工機41を図8,図9に基づいて説明する。なお、実施形態1のスリット加工機10と共通の構成については同じ部材番号を付す代わりに、詳細な説明を省略する。
【0038】
このスリット加工機41の切断処理部14は、第1〜第3のロール刃42A〜42C、第1〜第3の補助ロール43A〜43C、第1及び第2の中空偏心支軸44,45、ピン出没孔46、コイルスプリング47、打ち抜きピン31、係合凹部32、排出手段等によって構成されている。
【0039】
ロール支持用ブロック23に支持される第1の中空偏心支軸44は、同じく中空状である第1のロール刃42A、第2の補助ロール43B及び第3のロール刃42Cに挿通されている。その下側にある第2の中空偏心支軸45は、同じく中空状である第1の補助ロール43A、第2のロール刃42B及び第3の補助ロール43Cに挿通されている。なお、各中空偏心支軸44,45は、図9に示されるように本来の位置よりも下方に偏心している。
【0040】
本実施形態においては、打ち抜きピン31は、各ロール刃42A〜42Cの周面ではなく前記中空偏心軸44,45の周面に多数突設されている。これらの打ち抜きピン31は、各ロール刃42A〜42Cの周面に透設された多数のピン出没孔46内に挿通されている。また、各打ち抜きピン31の周面には、付勢手段としてのコイルスプリング47が介装されている。これらのコイルスプリング47の一方の端部は中空偏心支軸44,45の外周面に当接し、他方の端部は各ロール刃42A〜42Cの内周面に当接している。従って、前記コイルスプリング47は、常には打ち抜きピン31を没入させる方向に付勢している。
【0041】
また、中空偏心支軸44,45の各打ち抜きピン31は各ロール刃42A〜42Cのピン出没孔46に係合していることから、中空偏心支軸44,45の転動に伴って各ロール刃42A〜42Cも転動するようになっている。各打ち抜きピン31は最上位置に近づくほど没入し、最下位置に近づくほど突出する。そして、摺接部位において突出する打ち抜きピン31は、補助ローラ43A〜43Cの係合凹部32に係合する。その結果、長尺基材1の所定部分が連続的に打ち抜かれ、めっきリード9が電気的にアイソレートされるようになっている。
【0042】
また、このスリット加工機41には、円形状の打ち抜き片を外部に排出するための排出手段として、真空吸引機(図示略)が設けられている。前記真空吸引機は、中空状のロール刃42A〜42Cの内部空間側から真空吸引によりエアを排出することにより打ち抜き片を除去するものである。そして、これにより長尺基材1に打ち抜き片が付着したままになることが防止されるようになっている。
【0043】
さて、本実施形態において特徴的な作用効果を以下に列挙する。
(イ)本実施形態の外形加工方法及びスリット加工機41は、第1の実施形態と基本的部分を同じくしている。従って、実施形態1において述べた効果イ〜ニを奏することはいうまでもない。
【0044】
(ロ)このスリット加工機41では、打ち抜きピン31がロール刃42A〜42Cの周面から出没するように構成されている。ゆえに、打ち抜きピン31が出没動作を行わないものに比べて、めっきリード9をより確実に打ち抜くことができるという利点がある。
【0045】
(ハ)また、このスリット加工機41は、中空状のロール刃42A〜42Cの内部空間側から真空吸引を行うことにより前記打ち抜き片を外部に排出する真空吸引機を排出手段として備えている。このような真空吸引であると、物理的な接触を伴うことなしに、確実に打ち抜き片を除去することができる。従って、この場合においても長尺基材1を傷付けるようなことがない。また、このような排出手段であると、装置の周囲を汚すこともない。
【0046】
なお、本発明は例えば次のように変更することが可能である。
(1)めっきリード打ち抜き部は、必ずしも実施形態1,2のように切断処理部14自体に配置されていなくてもよい。例えば、図10に示される別例1のスリット加工機51では、めっきリード打ち抜き部52を切断処理部14のすぐ前段に設けている。逆に、図11に示される別例2のスリット加工機56では、めっきリード打ち抜き部52を切断処理部14のすぐ後段に設けている。この場合、別例2の構成よりも別例1の構成のほうが好ましく、さらにはそれらよりも前記実施形態1,2の構成のほうが好ましい。即ち、長尺基材1の分割時またはそれ以前に打ち抜きを行ったほうが、分割後にそれを行った場合に比べて高い加工精度が得られるからである。また、高い加工精度を実現すべく複雑な装置を使用する必要もなくなるため、装置構成が簡単になる。
【0047】
(2)図12(a)に示されるような単純形状の打ち抜きピン31に代えて、例えば次のような形状を採用してもよい。図12(b)に示される別例3の打ち抜きピン61では、開口部が凹状になっており、2箇所あるエッジ部61aに等しい大きさの刃部が形成されている。このような構成であると、単純形状の打ち抜きピン31を用いたときに比べて、長尺基材1を確実に打ち抜くことができる。図12(c)に示される別例4の打ち抜きピン62においても、開口部が凹状になっている。ただし、その開口部には大小2つのエッジ部62aがあり、そこがこの打ち抜きピン62における刃部になっている。かかる構成であると、さらに確実に長尺基材1を打ち抜くことができる。
【0048】
(3)めっきリード9のアイソレートを達成する場合、切断具として打ち抜きピン31,61,62以外のものを使用することが許容される。例えば、カッター等のような切断具を長尺基材1に刺す等の手法を用いることが可能である。また、加熱手段によってめっきリード9を部分的に焼き切ったり、めっきリード9を部分的に溶解する等の手法を採用することも可能である。
【0049】
(4)実施形態2に示した真空吸引機以外のものを用いて打ち抜き片の除去を図ることも許容される。例えば、ロール刃21A〜21Cの近傍にブラシ等を設けておき、そのブラシで打ち抜き片を長尺基材1から掃き取るような構成としてもよい。
【0050】
(5)中空偏心支軸44,45を用いてピン出没機構を構成していた実施形態2に代え、例えばカム等を利用して打ち抜きピン31を出没させてもよい。
ここで、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想をその効果とともに以下に列挙する。
【0051】
(1) 請求項2において、前記めっきリード打ち抜き部は、前記切断処理部自体または同切断処理部の前段に配置されていることを特徴としたスリット加工機。この構成であると、めっきリード打ち抜き部を後段に配置した場合に比べて加工精度が高くなり、しかも装置構成が簡単なものとなる。
【0052】
(2) 請求項3において、前記打ち抜きピンは前記ロール刃の周面から出没することを特徴としたスリット加工機。この構成であると、打ち抜きピンが出没動作を行うことにより、めっきリードの一部を確実に打ち抜くことができる。
【0053】
(3) 請求項3、技術的思想2のいずれかにおいて、前記切断処理部は、打ち抜き片を排出するための排出手段を備えることを特徴としたスリット加工機。この構成であると、打ち抜き片が確実に排出されることから、長尺基材に打ち抜き片が付着したままになることがない。従って、後工程においてそれを除去する工程も不要になる。
【0054】
(4) 技術的思想3において、前記排出手段は、中空状のロール刃の内部空間側から真空吸引を行うことにより前記打ち抜き片を外部に排出する真空吸引機であることを特徴としたスリット加工機。この構成であると、長尺基材を傷付けることなく確実に打ち抜き片を除去することができ、しかも装置の周囲を汚すことがない。
【0055】
なお、本明細書中において使用した技術用語を次のように定義する。
「切断具: ピン状のものをいうほか、カッター等のようなナイフ状のもの等も含む。」
【0056】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明によれば、工程数の増加を伴うことなくめっきリードの切断が可能なためコスト性に優れたプリント配線板用長尺基材の外形加工方法を提供することができる。
【0057】
請求項2に記載の発明によれば、コスト性、歩留まり及び寸法精度の向上を図ることができるため、前記の優れた外形加工方法を実施するにあたって好適なスリット加工機を提供することができる。
【0058】
請求項3に記載の発明によれば、スリット加工及びめっきリードの打ち抜き切断の両方が切断処理部において同時に行われることから、請求項2の効果に加えて装置の大型化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(c)は第1の実施形態のプリント配線板用長尺基材の外形加工方法を説明するための概略図、(d)は長尺基材の部分拡大平面図。
【図2】前記方法によりめっきリードの一部を打ち抜く前の状態を示す長尺基材の部分平面図。
【図3】前記方法によりめっきリードの一部を打ち抜いた後の状態を示す長尺基材の部分平面図。
【図4】第1の実施形態のスリット加工機の全体を示す概略正面図。
【図5】スリット加工機の切断処理部を説明するための概略斜視図。
【図6】同じく切断処理部を示す部分拡大正面図。
【図7】同じく切断処理部を示す部分拡大側面図。
【図8】第2の実施形態におけるスリット加工機の切断処理部を説明するための概略斜視図。
【図9】同じくその部分拡大正面図。
【図10】別例1のスリット加工機の全体を示す概略正面図。
【図11】別例2のスリット加工機の全体を示す概略正面図。
【図12】(a)は実施形態の打ち抜きピンの形状を示す部分拡大図、(b)は別例3の打ち抜きピンの形状を示す部分拡大図、(c)は別例4の打ち抜きピンの形状を示す部分拡大図。
【図13】従来例のスリット加工機の全体を示す概略正面図。
【図14】従来例のスリット加工機の切断処理部を説明するための概略斜視図。
【符号の説明】
1…プリント配線板用長尺基材、2a,2b,2c…最小単位基材列、6…プリント配線板、9…めっきリード、10,41,51,56…スリット加工機、14…切断処理部、21A,21B,21C,42A,42B,42C…ロール刃、22A,22B,22C,43A,43B,43C…補助ロール、31,61,62…めっきリード打ち抜き部としての打ち抜きピン、32…係合凹部、U1 …最小単位基材。
Claims (3)
- プリント配線板の大きさに相当する最小単位基材を基材長手方向に沿って並べてなる最小単位基材列が複数列形成されたプリント配線板用長尺基材をスリット加工機を用いてスリット加工することにより、前記長尺基材を最小単位基材列ごとに連続的に分割する外形加工方法であって、
前記長尺基材を前記スリット加工機に通じる際、その長尺基材上に形成されているめっきリードの一部をめっきリード打ち抜き部による打ち抜きによって同時に切断することを特徴としたプリント配線板用長尺基材の外形加工方法。 - プリント配線板の大きさに相当する最小単位基材を基材長手方向に沿って並べてなる最小単位基材列が複数列形成されたプリント配線板用長尺基材をスリット加工することにより、前記長尺基材を最小単位基材列ごとに連続的に分割するスリット加工機であって、
互い違いに設けられた複数のロール刃の噛合により同長尺基材のスリット加工を行う切断処理部と、前記長尺基材上に形成されているめっきリードの一部を打ち抜きによって切断するめっきリード打ち抜き部とを備えたことを特徴としたプリント配線板用長尺基材のスリット加工機。 - 前記ロール刃の周面に打ち抜きピンを設け、前記長尺基材を介して同ロール刃に対峙する補助ロールの周面に前記打ち抜きピンが係脱可能な係合凹部を設けたことを特徴とした請求項2に記載のプリント配線板用長尺基材のスリット加工機。
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