JP3820970B2 - 自動二輪車の潤滑油冷却構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動二輪車の潤滑油冷却構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンは内部に多くの摺動部や回転部を有するため、潤滑装置を用いて各部に潤滑用潤滑油を供給し、潤滑油の働きにより各部の摩擦抵抗を減らしてエンジンの機能を充分に発揮させるようになっている。
【0003】
また、潤滑油は高温になると潤滑能力が低下するので、潤滑油を冷却する手段を備えたものもある。
【0004】
低速回転型エンジン等、潤滑油の温度上昇が比較的少ない場合、オイルパンやオイルタンクを装備して潤滑油の外気との接触面積を多くとって放熱性を向上させることにより、潤滑油の温度上昇を防止する手段がある。
【0005】
一方、高速回転型エンジン等、潤滑油の温度上昇が比較的大きく、積極的な冷却が求められる場合、オイルクーラを装備して潤滑油の温度上昇を防止する手段が一般的である。
【0006】
例えば自動二輪車に装備されるオイルクーラは、軽量且つ構造がシンプルな空冷式のものが多いが、空冷式のオイルクーラの場合、その配置位置に制限があるため(走行風が当たる位置でないとその機能を十分発揮できない)、また、エンジンが水冷式の場合、例えば特開平5−131962号公報に示すように、水冷式のオイルクーラを備えたものもある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、オイルパンやオイルタンクを装備して得られる以上の冷却性能を得るためにオイルクーラを備えると、オイルクーラの本体以外に配管等で部品点数及び組付け工程数が増加すると共に、例え空冷式のオイルクーラであっても重量の増加は免れない。
【0008】
さらに、オイルクーラの本体とエンジンとを配管で接続するため、オイル漏れの可能性がある箇所が増加してしまい、好ましくない。
【0009】
さらに、オイルクーラを装備した場合とそうでない場合との間にはエンジン冷却性やコスト、重量等の点で大きな開きがあり、オイルパンやオイルタンクを装備して得られる以上、且つオイルクーラで得られる以下の冷却性能を備えた技術が存在しない。
【0010】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、部品点数や重量、コストの増加なく、且つ簡単な構造で潤滑油の冷却が可能な自動二輪車の潤滑油冷却構造を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る自動二輪車の潤滑油冷却構造は、上述した課題を解決するために、請求項1に記載したように、クランクシャフトにより回転駆動される冷却水ポンプを用いてエンジンの冷却を行う自動二輪車において、上記冷却水ポンプを上記エンジンの側面に配置し、この冷却水ポンプに隣接して一定量の潤滑油を貯溜可能なオイル貯溜室を設ける一方、このオイル貯溜室と上記冷却水ポンプを収納する冷却水ポンプ室との両方を覆うカバー部材を設けたものである。
【0012】
また、上述した課題を解決するために、請求項2に記載したように、上記オイル貯溜室を、その内部に潤滑油濾過器を収納可能な潤滑油濾過器配設用の空間として設定したものである。
【0013】
さらに、上述した課題を解決するために、請求項3に記載したように、上記カバー部材の、上記オイル貯溜室に面した面に複数の冷却フィンを上記カバー部材と一体に形成すると共に、上記オイル貯溜室内壁の、上記冷却水ポンプ室に接する側の内壁に複数の冷却フィンを形成したものである。
【0014】
さらにまた、上述した課題を解決するために、請求項4に記載したように、上記オイル貯溜室から最初に延びるオイル通路の下流端にピストン冷却用潤滑油噴射装置を配置し、この潤滑油噴射装置を上記エンジン内に形成されるシリンダボア内のピストン裏面に指向するように配置したものである。
【0015】
そして、上述した課題を解決するために、請求項5に記載したように、上記オイル貯溜室と上記冷却水ポンプ室との両方を覆う上記カバー部材を、熱伝導性の高い材料で形成したものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、この発明を適用した自動二輪車の一例を示す左側面図である。また、図2は車体中央部分の拡大左側面図である。そして、図3は車体中央部分の拡大右側面図である。図1、図2および図3に示すように、この自動二輪車1は、例えばセミダブルクレードルフレーム型の車体フレーム2を有する。この車体フレーム2は、主に、ヘッドパイプ3、タンクレール4、ダウンチューブ5、アンダーチューブ6、メインチューブ7、リヤパイプ8およびシートレール9から構成される。
【0018】
車体フレーム2の前頭部にはヘッドパイプ3が設けられ、このヘッドパイプ3の後上部から後斜め下方に向かってタンクレール4が延びる。また、ヘッドパイプ3の後下部からダウンチューブ5が略下方に延設され、このダウンチューブ5の下端にアンダーチューブ6が接続される。アンダーチューブ6は、左右で一つの対を成して一旦下方に向かって延び、途中で後方に向かって折曲された後、略水平に延びる。また、タンクレール4の後端には左右一対のメインチューブ7上端部が左右に接続される。これらのメインチューブ7は略下方に向かって延び、アンダーチューブ6の後端に接続される。
【0019】
一方、タンクレール4の後端部には左右一対のシートレール9の先端部が接続され、また、シートレール9中央部付近から左右一対のリヤパイプ8がメインチューブ7下部に向かって前下方に延設される。
【0020】
車体フレーム2の中央下部にはエンジン10が搭載される。エンジン10は、図2および図3に示すように、その前部上側、前部下側および後部の三箇所で車体フレーム2に固定される。具体的には、エンジン10の前部上側はステー11を介してダウンチューブ5に固着されると共に、エンジン10の前部下側は左右のアンダーチューブ6の折曲部分で挟着される。
【0021】
さらに、エンジン10の後部は左右のメインチューブ7によって挟着され、各取り付け部は側面視で略二等辺三角形を形成する。そして、エンジン10はその底面がアンダーチューブ6の下面より上方になるように配置されると共に、側面視でエンジン10の下部とアンダーチューブ6の水平部分がオーバーラップ配置される。なお、タンクレール4の上方には燃料タンク12が設置され、また、運転シート13およびリヤフェンダ14がシートレール9に固定される。
【0022】
ヘッドパイプ3にはステアリング機構15が設けられる。このステアリング機構15には前輪16を回動自在に支持するフロントフォーク17やハンドルバー18等が設けられ、左右に回動自在に枢着される。一方、メインチューブ7の下部に架設されたピボット軸19(エンジン10後部の挟着部と同一箇所)にはスイングアーム20がピボット軸19廻りに回動自在に枢着され、その後端部に駆動輪である後輪21が軸支される。
【0023】
図4は図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【0024】
図1〜図4に示すように、エンジン10は、例えば4サイクル単気筒エンジンであり、上から順にヘッドカバー22、シリンダヘッド23およびシリンダブロック24から構成されるシリンダアッセンブリ25がエンジンケース26上にやや前傾した状態で載置される。
【0025】
エンジンケース26は主に、車両の幅方向に二分割される左右のクランクケース27と、クランクケース27の右側面に配置されるクラッチハウジング28と、クランクケース27の左側面に配置される発電機カバー29とから構成される。クラッチハウジング28および発電機カバー29はアンダーチューブ6の水平部分上方に配置され、それぞれ車幅方向外側に向かって張出する。
【0026】
さらに、このエンジン10は、シリンダヘッド23上部に吸気バルブ30aおよび排気バルブ30b開閉用の二本のカムシャフト31をそれぞれのバルブ30a,30b上方に設けて各バルブ30a,30bを開閉するダブルオーバーヘッドカムシャフト31(DOHC)型の動弁機構32を備えた4サイクルエンジンである。
【0027】
シリンダアッセンブリ25の前部にはエンジン排気系を構成するエキゾーストパイプ33およびマフラ34が接続される。また、シリンダアッセンブリ25の後部にはエンジン吸気系を構成するキャブレタ35が接続され、さらにこのキャブレタ35の上流側には運転シート13の下方に配置されたエアクリーナ36が接続される。そして、ヘッドパイプ3の後下部、エンジン10の前上部にはエンジン冷却系を構成する左右一対のラジエター37が配置される。
【0028】
図2〜図4に示すように、クランクケース27の内部は隔壁38によって前後に区画され、前方にはクランク室39が、後方にはミッション室40がそれぞれ形成される。また、クランクケース27の下部にはオイルパン41が形成され、エンジン各部を潤滑する潤滑油が一時的に貯溜されると共に、クランクケース27同様上記隔壁38によって前後に区画される。
【0029】
クランク室39内にはクランクシャフト42が車両の幅方向、すなわち車両の進行方向に対して直角に配置される。また、シリンダブロック24の内部にはピストン43を収容するシリンダボア44が形成されると共に、シリンダヘッド23にはこのシリンダボア44に整合する燃焼室45が形成され、この燃焼室45に向かって外方より点火プラグ46が挿着される。
【0030】
クランクシャフト42の略中央部に位置するクランクピン47にはコンロッド48の大端部48aが連結され、また、コンロッド48の小端部48bにはピストン43が連結される。そして、このピストン43がシリンダボア44内をその軸方向に往復し、この往復ストロークがコンロッド48を介してクランクシャフト42に伝達され、クランクシャフト42を回転運動させる。
【0031】
一方、ミッション室40内には減速装置であるトランスミッション機構49が設けられる。このトランスミッション機構49にはクランクシャフト42と平行に配置され、クランクシャフト42からの駆動力がクラッチ機構50を介して入力されるカウンターシャフト51と、後輪21に駆動力を出力する駆動軸であるドライブシャフト52とが設けられる。
【0032】
クランクシャフト42の一端、本実施形態においては右端、にはプライマリードライブギヤ53が回転一体に設けられると共に、カウンターシャフト51にはこのプライマリードライブギヤ53に噛み合うプライマリードリブンギヤ54がカウンターシャフト51に回転自在に設けられ、プライマリードリブンギヤ54はクラッチ機構50のクラッチ本体55に回転一体に固着されてクランクシャフト42の回転駆動力をクラッチ機構50に伝達する。
【0033】
また、カウンターシャフト51とドライブシャフト52とには歯数の異なる複数枚のミッションギヤ56…が設けられており、これらのミッションギヤ56…の組み合わせを変えて一次減速を行っている。
【0034】
そして、ドライブシャフト52の一端はミッション室40外に突出しており、この突出したドライブシャフト52の端部にドライブスプロケット57が設けられる。このドライブスプロケット57はドライブチェーン58を介して後輪21に設けられたドリブンスプロケット59に連結されており、このチェーン駆動で二次減速を行ってエンジン駆動力を後輪21に伝達している。
【0035】
一方、クランクケース27の左側面にはこのクランクケース27から隔離された発電機室60が形成される。また、クランクシャフト42の左端は発電機室60内に突出し、この突出端に発電機61が設けられる。そして、発電機室60は前記発電機カバー29によって覆われると共に、クランクシャフト42の発電機61内側にはカムドライブギヤ62が設けられる。
【0036】
また、シリンダヘッド23に配置されたそれぞれのカムシャフト31の一端にはカムスプロケット63が設けられ、これらのカムスプロケット63はカムチェーン64を介してカムドライブギヤ62に作動連結され、クランクシャフト42の回転がカムチェーン64を介してカムシャフト31に伝達されることにより動弁機構32が作動する。
【0037】
図5は、クランクケースの右側面図であり、図6は図5のVI−VI線に沿う断面図である。図3〜図6に示すように、クランクケース27の右側面には前記クラッチハウジング28が配置され、その後部内方には前記クラッチ本体55が収納されると共に、前部内方には補器室65が形成され、この補器室65内に冷却水ポンプ66および一対のオイルポンプ67,68が収納されると共に、クラッチハウジング28には補器室65とは別に一定量の潤滑油を貯溜可能なオイル貯溜室69が冷却水ポンプ66に隣接して形成される。
【0038】
オイル貯溜室69は、本実施形態においては潤滑油濾過器配設用の空間として設定され、その内部に潤滑油濾過器である例えばオイルフィルタ90が収納される。なお、クラッチハウジング28のクラッチ本体55収納部分は側方に向けて開口されており、着脱自在のクラッチカバー70によって塞がれる。
【0039】
図6に示すように、クランクケース27の右側面とクラッチハウジング28の内面との間にはクランクシャフト42と平行に配置された冷却水ポンプシャフト71が軸支され、この冷却水ポンプシャフト71には前記プライマリードライブギヤ53に噛み合う冷却水ポンプギヤ72が回転一体に設けられる。また、冷却水ポンプギヤ72側方のクラッチハウジング28には前記冷却水ポンプ66が収納される冷却水ポンプ室73が形成され、この冷却水ポンプ室73はクランクケース27に形成された冷却水通路74に繋がる。
【0040】
冷却水ポンプシャフト71の右端は冷却水ポンプ室73の外方に向かって突出し、この突出端にインペラ75が取り付けられて冷却水ポンプ66本体が構成される。前記オイル貯溜室69は冷却水ポンプ室73に隣接して配置され、このオイル貯溜室69と冷却水ポンプ室73とは例えばアルミニウム等の高熱伝導性材で一体に形成されたカバー部材77によって覆われると共に、このカバー部材77には冷却水ユニオン78が設けられ、この冷却水ユニオン78から前記ラジエター37に向かって冷却水ホース79が延設される(図3参照)。
【0041】
図3、図5および図6に示すように、クランクケース27内には一対のオイルポンプ67,68が設けられる。一方は汲み上げ用のスカベンジポンプ67、他方は潤滑用のフィードポンプ68であり、いずれのオイルポンプ67,68もオイルポンプアイドルギヤ80を介してクランクシャフト42の右端部に設けられたオイルポンプドライブギヤ81に作動連結される。
【0042】
スカベンジポンプ67は、図5に示すように、クランク室39側のオイルパン41F内に配置されたオイルストレーナ82Fから潤滑油を汲み上げ、例えばミッション室40内上部に設けられたミッション潤滑用オイル通路83からカウンターシャフト51やドライブシャフト52等のトランスミッション機構49各部に潤滑油を滴下させる。そして、トランスミッション機構49各部を潤滑した潤滑油はミッション室40側のオイルパン41R内に溜まる。
【0043】
一方、フィードポンプ68は、ミッション室40側のオイルパン41R内に配置されたオイルストレーナ82Rから潤滑油を吸入し、オイル貯溜室69を経てクランクシャフト42やピストン43、動弁機構32の各部に潤滑油を導く。
【0044】
具体的には、例えば図4に示すように、オイル貯溜室69からは最初にシリンダブロック24の下部内側に向かって第一オイル通路91が延びる。第一オイル通路91の下流端にはピストン冷却用潤滑油噴射装置であるオイルノズル92がシリンダボア44内のピストン43裏面に指向するように配置され、このノズル92から噴射される潤滑油がシリンダボア44とピストン43との摺接面を潤滑すると共に、両者を冷却する。
【0045】
また、第一オイル通路91の途中からは第二オイル通路93が分岐してクランクシャフト42の右端に向かって延びる。クランクシャフト42の右端に導かれる潤滑油は例えばクランクシャフト42内に形成された第三オイル通路94およびピストンピン47内に形成された第四オイル通路95を経由してピストンピン47とコンロッド48の大端部48aとの摺接面に導かれ、この摺接面を潤滑する。
【0046】
そして、上述した各部を潤滑した潤滑油はシリンダアッセンブリ25の一端側、本実施形態においては左側のカムチェーン64配設用のスペースであるカムチェーントンネル85を通って一部が前記発電機室60内に落下する。また、発電機61が潤滑油に浸かるのを防止するため、その大部分はクランクケース27の左側面に穿設された連通孔87を通ってクランク室39内へ自然落下し、クランク室39側のオイルパン41F内に溜まる。
【0047】
ところで、クランク室39側のオイルパン41F内に溜まった潤滑油が一定量以上になるとクランクシャフト42の回転抵抗が増大するため、前述したスカベンジポンプ67は前記フィードポンプ68が圧送した潤滑油量を上回る量の潤滑油をミッション室40側へ汲み上げる必要がある。その理由から、スカベンジポンプ67はフィードポンプ68よりも大容量となっている。
【0048】
図7は前記カバー部材77の表面を示す図であり、図8はカバー部材77の裏面を示す図である。図7に示すように、隣接して配置されたオイル貯溜室69と冷却水ポンプ室73との両方を覆うように一体形成された高熱伝導性材製のカバー部材77の、オイル貯溜室69に面した裏側面には、図6及び図8に示すように、複数の冷却フィン96がカバー部材77と一体に形成される。また、オイル貯溜室69内壁の、冷却水ポンプ室73に接する側の内壁にも複数の冷却フィン97がクラッチハウジング28と一体に形成される。
【0049】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0050】
クランクケース27の右側面に配置されたクラッチハウジング28内に、クランクシャフト42からプライマリードライブギヤ53および冷却水ポンプギヤ72を介して回転駆動される冷却水ポンプ66と、一定量の潤滑油を貯溜可能なオイル貯溜室69を冷却水ポンプ66に隣接して配置したことにより、このオイル貯溜室69と、冷却水ポンプ66が収納される冷却水ポンプ室73との両方を一つのカバー部材77で覆うことができ、部品点数や組付け工程数、重量の削減が可能になる。
【0051】
また、オイル貯溜室69を、その内部に潤滑油濾過器であるオイルフィルタ90を収納する潤滑油濾過器配設用の空間として設定したことにより、カバー部材77を介して冷却水ポンプ室73内の冷却水でオイル貯溜室69内の潤滑油を冷却できる。オイルフィルタ90は何ら駆動力を必要としないので、クランクシャフト42に近接配置された冷却水ポンプ66にオイル貯溜室69を隣接配置することは十分に可能である。
【0052】
さらに、カバー部材77の、オイル貯溜室69に面した裏側面に複数の冷却フィン96をカバー部材77と一体に形成すると共に、オイル貯溜室69内壁の、冷却水ポンプ室73に接する側の内壁に複数の冷却フィン97をクラッチハウジング28と一体に形成したことにより、潤滑油とカバー部材77との接触面積が増え、潤滑油の冷却効率が向上する。
【0053】
さらにまた、オイル貯溜室69から最初に延びる第一オイル通路91の下流端にピストン冷却用潤滑油噴射装置であるオイルノズル92をシリンダボア44内のピストン43裏面に指向するように配置し、このオイルノズル92から噴射される潤滑油でシリンダボア44とピストン43との摺接面を潤滑するように構成したことにより、オイル貯溜室69内で冷却された潤滑油を、エンジン10の他の部位で温度が上昇される前にシリンダボア44内に噴射でき、ピストン43の冷却性能が向上する。
【0054】
そして、オイル貯溜室69と、冷却水ポンプ66が収納される冷却水ポンプ室73との両方を覆うカバー部材77を例えばアルミニウム等の高熱伝導性材で一体に形成したことにより、オイル貯溜室69からの熱を冷却水ポンプ室73へ伝導しやすくなる。その結果、潤滑油の温度が低下して冷却効率がさらに向上し、エンジン10各部の冷却性能がさらに向上する。
【0055】
最後に、上述した本願発明の構成により、オイルクーラを備えなくとも、またオイルパン41を大型化しなくても、オイルパン41の大型化やオイルタンクを装備して得られる以上の冷却性能を得ることができ、例えばピストン43を積極的に冷却できる。
【0056】
また、複雑な配管等がないので、部品点数や組付け工程数、重量やコストの大幅な増加はなく、オイル漏れの可能性がある箇所も増加しないのでシール部材も削減できる。よって、エンジンの信頼性も向上する。
【0057】
さらに、オイルクーラを装備した場合に比べエンジン10外部の凹凸が減少するため、泥濘地走行時のエンジン10外部への泥付着量も低減し、整備性が向上する。
【0058】
なお、上述した実施形態においてはオイル貯溜室69を冷却水ポンプ66に隣接して配置し、オイル貯溜室69と、冷却水ポンプ66が収納される冷却水ポンプ室73との両方を一つのカバー部材77で覆った例を示したが、詳細には図示しないが、オイル貯溜室69の代りに例えばオイルポンプ67,68を冷却水ポンプ66に隣接して配置し、オイルポンプ67,68が収納されるオイルポンプ室(図示せず)と冷却水ポンプ66が収納される冷却水ポンプ室73との両方を一つのカバー部材(図示せず)で覆うようにしてもよい。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る自動二輪車の潤滑油冷却構造によれば、潤滑油の温度を低下させて冷却効率を向上させることができる。
【0060】
また、部品点数や組付け工程数、重量の削減が可能になる。
【0061】
さらに、エンジン各部の冷却性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る自動二輪車の潤滑油冷却構造の一実施形態を示す自動二輪車の左側面図。
【図2】車体中央部分の拡大左側面図。
【図3】車体中央部分の拡大右側面図。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図。
【図5】クランクケースの右側面図。
【図6】図5のVI−VI線に沿う断面図。
【図7】カバー部材の表面を示す図。
【図8】カバー部材の裏面を示す図。
【符号の説明】
1 自動二輪車
10 エンジン
42 クランクシャフト
43 ピストン
44 シリンダボア
66 冷却水ポンプ
69 オイル貯溜室
73 冷却水ポンプ室
77 カバー部材
90 オイルフィルタ(潤滑油濾過器)
91 第一オイル通路(最初に延びるオイル通路)
92 オイルノズル(ピストン冷却用潤滑油噴射装置)
96 カバー部材に形成される冷却フィン
97 オイル貯溜室に形成される冷却フィン

Claims (5)

  1. クランクシャフトにより回転駆動される冷却水ポンプを用いてエンジンの冷却を行う自動二輪車において、上記冷却水ポンプを上記エンジンの側面に配置し、この冷却水ポンプに隣接して一定量の潤滑油を貯溜可能なオイル貯溜室を設ける一方、このオイル貯溜室と上記冷却水ポンプを収納する冷却水ポンプ室との両方を覆うカバー部材を設けたことを特徴とする自動二輪車の潤滑油冷却構造。
  2. 上記オイル貯溜室を、その内部に潤滑油濾過器を収納可能な潤滑油濾過器配設用の空間として設定した請求項1記載の自動二輪車の潤滑油冷却構造。
  3. 上記カバー部材の、上記オイル貯溜室に面した面に複数の冷却フィンを上記カバー部材と一体に形成すると共に、上記オイル貯溜室内壁の、上記冷却水ポンプ室に接する側の内壁に複数の冷却フィンを形成した請求項1または2記載の自動二輪車の潤滑油冷却構造。
  4. 上記オイル貯溜室から最初に延びるオイル通路の下流端にピストン冷却用潤滑油噴射装置を配置し、この潤滑油噴射装置を上記エンジン内に形成されるシリンダボア内のピストン裏面に指向するように配置した請求項1、2または3記載の自動二輪車の潤滑油冷却構造。
  5. 上記オイル貯溜室と上記冷却水ポンプ室との両方を覆う上記カバー部材を、熱伝導性の高い材料で形成した請求項1、2、3または4記載の自動二輪車の潤滑油冷却構造。
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