JP6223163B2 - 車輌用エンジン及び該エンジンを備えた自動二輪車 - Google Patents

車輌用エンジン及び該エンジンを備えた自動二輪車 Download PDF

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Description

本発明は、エンジン内の潤滑箇所にオイルを供給する潤滑装置を備えた車輌用エンジン及び該エンジンを備えた自動二輪車に関する。
従来の車輌用エンジン、特に、自動二輪車用のエンジンは、クランクケースの下端部に設けたオイルパンにオイルを貯留し、フィードポンプにより、上記オイルパンからオイルを吸い込み、エンジン内の各注油箇所にオイルを供給している。オイルの貯留量を十分に確保するために、たとえば特許文献1に記載された潤滑装置では、クランクケースの底部に形成したオイルパンを、クランク軸の前側まで延設している。
特開2005-016510号公報
クランクケースの底部にのみオイル溜まりを設け、オイルを貯留する構造では、オイル貯留量を増大させようとすれば、オイルパンが深くなり、それによりエンジンの全高が高くなるので、車輌の地上高が低くならざるを得ない。特に、自動二輪車において、地上高が低くなると、バンク角度も小さくなる。
本発明は、クランクケースのクランク室の前側の空間を有効に利用することにより、車輌の地上高を低くすることなく、十分な潤滑用オイルを貯留できるようにすることを目的としている。また、オイルタンク室からオイルポンプまでのオイル吸い込み経路を、短く、かつ、簡素化することも目的の一つである。
上記課題を解決するため、本願発明は、クランク軸を収納するクランク室と、該クランク室に対し車輌前後方向の後方側に配置されたトランスミッション室とを、クランクケース内に形成してある車輌用エンジンにおいて、前記クランクケースには、前記クランク室の前方側にオイルタンク室が形成され、車輌側方から見て、前記オイルタンク室に少なくとも一部が重なる位置に、前記オイルタンク室内のオイルを吸引して前記エンジン内の注油箇所に供給するフィードポンプが配置されている。
上記第1の発明によると、(1)エンジンの全高を低く抑え、車輌の地上高を高く出来ることは勿論のこと、オイルタンク室は、回転部材がほとんどない箇所に配置されることになるので、高いオイルレベルを確保しても、回転部材に撹拌抵抗が生じる心配が少なく、回転部材の動力伝達ロスを少なくできる。しかも、オイルタンク室の近くにフィードポンプを配置しているので、フィードポンプのオイル吸い込み経路を短くでき、配管構造が簡単になると共に、フィードポンプの吸引効率も向上する。
本願発明は、さらに次の構成を備えることができる。
(a)クランクケースの車幅方向の一方側に、クラッチカバーで覆われると共にオイルタンク室と隔壁を介して隣り合う、クラッチ室が形成され、クラッチ室にフィードポンプが配置されている。
上記構成(a)によると、オイルタンク室の隣の部屋にフィードポンプを配置しているので、フィードポンプのオイル吸い込み経路をさらに短くできる。
(b)上記構成(a)を備えた車輌用エンジンにおいて、フィードポンプは、クラッチカバーに設けられている。
上記構成(b)によると、クラッチカバーには、たとえばオイルフィルターが取り付けられると共にオイル供給通路が形成されるが、フィードポンプをクラッチカバーに設けることにより、フィードポンプの吐出部からオイルフィルターまでのオイル吐出経路が短くなり、かつ、簡素化できる。
(c)少なくとも上記構成(a)を備えた車輌用エンジンにおいて、クラッチ室の底部は、クランク室及びトランスミッション室に連通することにより、クランク室及びトランスミッション室からのオイルが回収されるオイル回収室となっており、クラッチ室には、オイル回収室のオイルを吸い込んでオイルタンク室に排出する、スカベンジングポンプが設けられている。
上記構成(c)によると、容量の大きいクラッチ室の底部を利用してオイル回収室としているので、エンジンを大型化することなく、エンジン内全体のオイル容量を増やすことができる。
(d)少なくとも上記構成(c)を備えた車輌用エンジンにおいて、スカベンジングポンプは、フィードポンプと同軸芯に配置されており、フィードポンプとスカベンジングポンプとは、共通のポンプ駆動ギヤを介して、前記クランク軸に動力伝達可能に連結されている。
上記構成(d)によると、スカベンジングポンプ及びフィードポンプをコンパクトに配置できると共に、ポンプ駆動用の部品点数を減らすことができる。
(e)上記構成(d)を備えた車輌用エンジンにおいて、クランク軸の前方にバランサ軸が配置されており、ポンプ駆動ギヤは、バランサ軸のバランサギヤを介してクランク軸のクランクギヤに連動連結している。
上記構成(d)によると、クランク軸からポンプへの動力伝達経路の部品点数が少なく、かつ、経路自体を短くできる。
(f)少なくとも上記構成(d)を備えた車輌用エンジンにおいて、クランク軸からポンプ駆動ギヤに至る動力伝達経路は、オイルタンク室とは隔壁を隔てた空間内に配置されている。
上記構成(f)によると、ポンプ駆動ギヤがオイル抵抗を受けることがほとんどなく、ポンプ駆動力の伝達効率が向上する。
(g)少なくとも前記構成(c)を備えた車輌用エンジンにおいて、オイルタンク室内には、フィードポンプの吸い込み部に接続されるオイル吸い込み管と、スカベンジングポンプの吐出部に接続される排出管とが配置され、吸い込み管のオイル入口は、オイルタンク室の下部に位置しており、排出管のオイル出口は、オイルタンク室の上部に位置すると共に上方に向いて開口している。
上記構成(g)によると、オイルタンク室内において、スカベンジングポンプから排出されるオイルが、フィードポンプの吸い込み管のオイル入口から可及的に離れるように配置しているので、フィードポンプによるエア噛現象が防止できる。
(h)前記いずれかの特徴を有する車輌用エンジンを搭載した自動二輪車において、クランクケースの下面と、クラッチ室のオイル回収室の側面とで、上方及び側方が覆われた空間部に、後輪用のショックアブソーバを配置してある。
上記構成(h)によると、ショックアブソーバをエンジン下面に形成された空間部を利用して、コンパクトに配置でき、しかも、地上高を大きく取ることにより、自動二輪車のバンク角を大きく取ることができる。
要するに本願発明によると、クランクケースのクランク室の前側の空間を有効に利用することにより、車輌の地上高を低くすることなく、十分な潤滑用オイルを貯留できる。
本発明にかかる車輌用エンジンを備えた自動二輪車の左側面図である。 図1のエンジンのクランクケース部分の左側面図である。 図1のエンジンの右側面図である。 図1のエンジンのクランクケース部分の背面図である。 動力伝達系統を示す図2のV-V断面略図である。 図5のVI-VI断面に相当するエンジンの縦断面図である。 ポンプ駆動用動力伝達経路を示す図6のVII-VII断面拡大図である。 図1のエンジンの内側クラッチカバーの左側面(内面図)である。 図5のIX-IX断面に相当するオイル室下端部の右側面図である。 オイル用の吸い込み管及び排出管のユニットの斜視図である。 図1のエンジンのブリーザ室部分を縦断して示す斜視図である。 ブリーザ室の図11及び図6のXII-XII断面拡大図である。
図1乃至図12に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。説明の都合上、車輌の進行方向を車輌及び各部品の「前方」とし、乗車したライダーから見た左右方向を、車輌及び各部品の「左右方向」として、説明する。
[車輌全体構成]
図1は自動二輪車の左側面図であり、車体フレーム1は、ヘッドパイプ2と、該ヘッドパイプ2から略後下方に延びる左右一対のメインフレーム3と、ヘッドパイプ2から略下方に延びる一本のダウンフレーム5と、該ダウンフレームの5下端二股部に接続された左右一対のロワーフレーム6と、を有している。メインフレーム3の後端部は、スイングアームブラケット部3aとして、下方へ延びている。ロワーフレーム6は、ダウンフレーム5の下端部から下向きに延びると共に後向きに湾曲し、略水平状態で後方へ延びており、ロワーフレーム6の後端部が、スイングアームブラケット部3aの下端部に結合されている。
メインフレーム3の前後方向の略中間部には、略後方に延びるシートレール10が接続され、スイングアーブラケット部3aの上端部には、後上方に延びるリヤフレーム11が接続され、該リヤフレーム11の後端部はシートレール10の後端部に結合されている。メインフレーム3及びシートレール10の上には、燃料タンク16及びシート17が設けられている。
ヘッドパイプ2には、操舵軸及び上下のブラケット13を介して左右一対のフロントフォーク15が支持されており、フロントフォーク15の下端部に、前車軸16を介して前車輪17が回転自在に支持されている。
スイングアームブラケット部3aには、スイングアーム14が上下方向揺動可能に支持されており、スイングアーム14の後端部には、後車軸18を介して後車輪019が支持されている。
エンジン20は車体フレーム1内に搭載されており、ロワーフレーム6に形成された左右一対の下側取付部21と、メインフレーム3に設けられた左右一対の上側取付部22と、ダウンフレーム5の下端部に設けられた左右一対の前側取付部23と、スイングアームブラケット部3aのピボット軸部24と、により、車体フレーム1に支持されている。ダウンフレーム5にはラジエータ25が取り付けられ、メインフレーム3の後部内には、吸気用エアクリーナボックス26が配置されている。
エンジン20の下側には、略前後方向に沿う後車輪用のショックアブソーバ30が配置されており、このショックアブソーバ30の前端部は、ロワーフレーム6に設けられた支持部31に回動自在に支持され、ショックアブソーバ30の後端部は、前上方に延びるリンク機構32の下端部に連結されている。リンク機構32は、上下のリンク部材から構成されており、下側リンク部材の下端部にショックアブソーバ30の後端部が連結され、下側リンク部材の上端部に上側リンク部材が連結され、下側リンク部材の前端部に、スイングアーム14が連結されている、リンク機構32の上端部は、スイングアームブラケッ3aの上端部に連結されている。ショックアブソーバ30は、後方に行くに若干高くなるように、水平面に対して若干傾斜している。
エンジン20の背面図である図4において、クランクケース41は、車幅方向の略中央の合わせ面Dを境に、左右のクランクケース部材41L、41Rに分割されており、右クランクケース部材41Rの右端面には、内側クラッチカバー43及び外側クラッチカバー44が順に締結されている。左クランクケース部材41Lの左端面には、クランクケースカバー(又は内側ジェネレータカバー)45及びジェネレータカバー46(図5)が順に締結されている。
クランクケース41の底部の下面は、ショックアブソーバ30の一部が収納可能な空間部Sを確保できるように、後面視で略L字状に形成されている。具体的に説明すると、ショックアブソーバ30の上端よりも上方に位置して、上方からショックアブソーバ30に対向する第1下面41aと、ショックアブソーバ30の上端よりも下方に位置する第2下面41bとから構成されている。第2下面41bは、さらに、ショックアブソーバ30に対して車幅方向の右方に位置する側方第2下面41b1と、ショックアブソーバ30の前方に位置する前方第2下面41b2と、を備えている。
図2は、エンジンの左側面図であり、クランクケース41の下面を、前述のようにショックアブソーバ30の上端より高い第1下面41a、ショックアブソーバ30の上端より低い側方第2下面41b1及び前方第2下面41b2とで構成することにより、エンジン20のクランクケース41に下側に、ショックアブソーバ30の一部を収納できる空間部Sを形成している。ショックアブソーバ30に上方から対向する第1下面41aは、ショックアブソーバ30の傾斜に対応して、後方に行くに従い高くなるように傾斜している。また、前方第2下面41b2には、下側エンジン取付部21に取り付けるために被取付部(ボス部)41dが形成されている。
図3はエンジンの右側面図であり、内側クラッチカバー43の下面は、クランクケース41の側方第2下面41b1と対応する形状に形成されており、ロワーフレーム6の上端近傍まで下方に延長されている。
図5は動力伝達系の略図であり、クランクケース41内は、左右方向に延びるクランク軸48を回転自在に収納するクランク室51と、該クランク室51の後方に隔壁52を介して形成されたトランスミッション室53と、右クランクケース部材41Rの右端面とクラッチカバー43、44とで囲まれたクラッチ室54と、左クランクケース部材41Lの左端面とクランクケースカバー45及びジェネレータカバー46により囲まれたジェネレータ室55と、が設けられている。これらに加え、クランク室51の前側に、隔壁56によりクランク室51から隔離されたオイルタンク室57が形成されている。オイルタンク室57の右端部とクラッチ室54の前端部との間には、右クランクケース部材41Rの端壁の一部により、隔壁41Raが形成されている。
クランク51室内には、前記クランク軸48の前側にバランサ軸61が配置されており、クランク軸48及びバランサ軸61の右端部は、クラッチ室54の前部分内に突出している。クランク軸48の右端部に設けられたクランクギヤ62と、バランサ軸61の右端部に設けられたバランサギヤ63とが噛み合い、これにより、クランク軸48の動力がバランサ軸61に伝達される。クランクギヤ62とバランサギヤ63とは同一径及び同一歯数のギヤであり、バランサ軸61は、クランク軸48と逆回りに、クランク軸48と同期回転する。クランク軸48の左端部はジェネレータ室55内に突出し、クランク軸の他端部には。ジェネレータ65のロータ65aが固着されている。
トランスミッション室53には、入力側変速ギヤ群を備えた入力軸71、出力側変速ギヤ群を備えた出力軸72及び変速操作機構が配置されている。入力軸71の右端部はクラッチ室54内に突出し、入力軸71の右端部に多板摩擦式クラッチ73が設けられている。このクラッチ73の入力側リングギヤ74は、クランク軸48のクランクギヤ62に噛み合っている。出力軸72の左端部はクランクケース41外に突出し、この左端部に出力スプロケット75が設けられ、該出力スプロケット75は駆動チェーン76を介して後車輪の被駆動スプロケットに連結している。
クラッチ室54の前端部は、オイルタンク室57の前端近傍まで前方に延びており、このクラッチ室54の前端部内に、オイルタンク室57のオイルを各潤滑箇所に供給するフィードポンプ(オイルポンプ)81とクラッチ室の底部のオイルをオイルタンク室57内に排出するスカベンジングポンプ82とが配置されている。両ポンプ81、82は車幅方向に見て、少なくともそれらの一部がオイルタンク室57と重なる位置に、かつ、同一軸芯上に配置されている。
フィードポンプ81は内側クラッチカバー43に設けられており、スカベンジングポンプ82は、右クランクケース部材41Rの端壁(隔壁)41Raに設けられている。両ポンプ81、82のポンプ軸81a、82aは、同一軸芯線上に配置されると共に、共通のポンプ駆動ギヤ84を有しており、このポンプ駆動ギヤ84は、クラッチ室54内においてバランサギヤ63に噛み合っている。すなわち、両ポンプ81、82は、クランク軸48のクランクギヤ62から、バランサギヤ63及び共通のポンプ駆動ギヤ84を介して各ポンプ軸81a、82aに動力が伝達されることにより、駆動する。また、内側クラッチカバー43には、フィードポンプ81の上方近傍位置に筒状のオイルフィルター85が取り付けられている。
図7において、フィードポンプ81は、前述のポンプ軸81aと、該ポンプ軸81aに固着されたトロコイド型のロータ81bと、内側クラッチカバー43に形成されたポンプケーシング81cと、該ポンプケーシング81cとは別体のケーシングカバー81dとから構成されている。スカベンジングポンプ82は、前述のポンプ軸82aと、該ポンプ軸82aに固着されたトロコイド型のロータ82bと、右クランクケース部材41Rの端壁(隔壁)41Raに形成されたポンプケーシング82cと、該ポンプケーシング82cとは別体のケーシングカバー82dとから構成されている。フィードポンプ81のポンプ軸81aの端部に前述の共通のポンプ駆動ギヤ84が固着され、スカベンジングポンプ82のポンプ軸82aの先端部は、オルダム継手87によりフィードポンプ81のポンプ軸81aに連結されている。
内側クラッチカバー43の右側面(クラッチ室外の側面)には、水ポンプ86のケーシング86cが固着されており、該ケーシング86c内に収納されるインペラ86bは水ポンプ軸86aに固定されている。水ポンプ軸86aは、バランサ軸61と同一軸芯線上に配置されると共に、継手88により一体回転自在に連結されており、この水ポンプ軸86aに、ポンプ駆動ギヤを兼用する前述のバランサギヤ63が固着されている。
図5に戻り、オイルタンク室57の右端部には、オイルタンク室57からフィードポンプ81にオイルを吸い込むための吸い込み管90と、スカベンジングポンプ82からオイルタンク室57にオイルを吐出するための排出管91とが配置されており、吸い込み管90と排出管91とは、組み付け性を向上させるために、一体的なオイル管ユニットとして構成されている。
ジェネレータ室55の下端部は、左クランクケース部材41Lの端壁に形成された連通孔100を介してトランスミッション室53の下端部に連通しており、トランスミッション室53の下端部は右クランクケース部材41Rの端壁に形成された連通孔101を介してクラッチ室54の下端部に連通しており、クランク室51の下端部は右クランクケース部材41Rに形成された連通孔102を介してクラッチ室54の下端部のオイル回収室43aに連通している。
エンジンの縦断面図を示す図6において、クランク室51内に配置されたクランク軸48は、コンロッド110に連結され、コンロッド110の上端部はシリンダライナ111内に延びて、ピストン113に連結されている。トランスミッション室53内には、前述の入力軸71及び出力軸72等からなるギヤトランスミッション機構に加え、チェンジドラム120及び複数のシフトフォーク121等からなる変速操作機構が収納されている。
シフトフォーク121を支持するシフトフォーク支軸122及びチェンジドラム120は、入力軸71及び出力軸72よりも上方に配置されている。
クランクケース41の前方第2下面41b2に形成された被取付部(ボス部)41dは、ショックアブソーバ30の前端連結部30aの前方近傍に位置しており、前述のように、下側エンジン取付部21に取り付けられているが、下側エンジン取付部21は、ショックアブソーバ30の前端連結部30aを支持する支持部31と一体に形成されている。
オイルタンク室57は、クランクケース41の底部の前方第2下面41b2に対応する箇所から、クランク室51の前壁51aに沿って上方に立ち上がり、クランクケース41の略上端部近傍までのびている。
バランサ軸61は、クランク軸48の前方に配置されている。スカベンジングポンプ82及びフィードポンプ81は、バランサ軸61の概ね下方であって、車輌側方から見て、大部分がオイルタンク室57と重なる位置に配置されている。
図10はオイル管ユニットの斜視図であり、フィードポンプ用の吸い込み管90は、概ね上下方向に延び、下端部にフィルターケース部90cを一体的に有しており、フィルターケース部90cの下端がオイル入口90aとなっている。吸い込み管90の上端は、オイル出口90bとなっている。スカベンジングポンプ用の排出管91は、下端部にオイル入口91aが形成され、上端には、斜めにカットされたオイル出口91bが形成されている。また、排出管91の上下端部には、オイル管ユニットをクランクケース41に取り設けるための被取付部130が形成されている。
図6において、吸い込み管90の下端のオイル入口90aは、オイルタンク室57の下端部で下向きに開口している。吸い込み管90の上端のオイル出口90bは、右クランクケース部材41R及び内側クラッチカバー43(図5)内のオイル通路83に連通し、該オイル通路83は、フィードポンプ81の吸い込み部81h(図8)に連通している。
オイル排出管91の下端のオイル入口91aは、右クランクケース部材41Rに形成されたオイル通路を介してスカベンジングポンプ82の吐出部に連通しており、排出管91の上端のオイル出口91bは、オイルタンク室57の上端部において、上方に向いて開口している。
図8は、内側クラッチカバー43の右側面図(内面図)であり、O1はクランク軸芯、O2はポンプ軸芯、O3はバランサ軸芯(水ポンプ軸芯)、O4はオイルフィルター85の中心、O4はクラッチ中心(入力軸芯)である。内側クラッチカバー43には、フィードポンプ81のポンプケーシング81c内に連通する吸い込み経路81f及び吐出経路81gがそれぞれ形成されており、吸い込み経路81fのオイル吸い込み口81hはクランクケースの前端壁近傍に位置し、吐出経路81gの吐出口81kは、クラッチカバー外部のオイルフィルター(図2及び図5)85を介して、エンジン内の各潤滑箇所に連通している。潤滑箇所とは、たとえば、図5のクランク軸48の軸受、コンロッド110(図6)の嵌合部、トランスミッションの変速用入力軸71及び出力軸72の外周面、ジェネレータ装置65、クラッチ73等である。
図9において、クラッチ室54の底部はオイル貯留室兼回収室54aとなっており、前後方向に延びると共に概ねS字状に屈曲するオイル吸い込み用オイル管140が配置されている。オイル管140は右クランクケース部材41Rの右端壁に固着され、カバー(図示せず)により、右端面が閉ざされている。オイル管140内のオイル通路141の前端部は、スカベンジングポンプ82のオイル吸い込み部82hに連通しており、オイル管140の後端に接続された取入管142は、オイル回収室54a内で下向きに開口している。オイル通路141の前後方向の途中には、第1のオイル孔143及び第2のオイル孔144が形成されており、第1のオイル孔143は前述の連通孔102(図5及び図6)を介してクランク室51内に連通し、第2のオイル孔144は、前述の連通孔101(図5)を介してトランスミッション室53に連通している。
すなわち、クラッチ室54のオイル回収室54aには、エンジン停止中、クラッチ73を潤滑したオイルが回収されると共に、図5のクランク室51、ジェネレータ室55及びトランスミッション室53の各潤滑箇所を潤滑したオイルが、図9のオイル孔143、144及びオイル通路141を通って回収され、貯留される。エンジン運転時、オイル回収室54aに貯留されているオイルは、オイル通路141を通ってスカベンジングポンプ82に吸い込まれ、スカベンジングポンプ82内で加圧され、図6のオイルタンク室57内の排出管91を通り、オイルタンク室57の上壁に向かって排出される。
図11は、右クランクケース部材41Rの後上端部の斜視図であり、右クランクケース部材41Rの後上端部には、トランスミッション室53に連通するブリーザ室150が形成さている。このブリーザ室150は、前端部の下端にミスト入口150aが形成され、前後方向の中間部の上壁に、気体成分排出口150bが形成され、後下端部にオイル排出口150cが形成されている。ミスト入口150a及びオイル排出口150cは、いずれもトランスミッション室53に連通している。ブリーザ室150の途中には、上下両方から突出する衝突壁(気液分離板)150dが形成されている。ブリーザ室150に左端面には、図2及び図6に示すように、ブリーザ室カバー151が取り付けられる。
図12は図11及び図6のXII-XII断面図であり、前記複数の衝突壁150dは、右クランクケース部材41Rに一体成形される壁と、ブリーザ室カバー151に一体に成形される壁とが有り、これにより、製造を容易化している。
[エンジン全体のオイルの流れ]
図5において、エンジン停止時、クランク室51、トランスミッション室53、ジェネレータ室55のオイルは、各連通孔100、101、102及び図9のオイル孔142、143を通って、クラッチ室54の底部のオイル回収室54aに回収される。
図6において、エンジンを運転すると、オイルタンク57内のオイルは、吸い込み管90を介してフィードポンプ81に吸い込まれ、加圧された後、各潤滑箇所に圧送られる。また、クラッチ室54の底部のオイル回収室54aに貯留されているオイルは、スカベンジングポンプ82によりオイル管140を介して吸い込まれ、加圧された後、排出管91の上端オイル出口91bからオイルタンク室57の上壁に向けて排出される。また、運転が安定すると、上記、オイル管140の第1及び第2のオイル孔142、143からもオイルが吸い込まれ、スカベンジングポンプ82に供給される。
排出管91の上端オイル出口91bは、吸い込み管90の下端オイル入口90aから最も離れ位置に配置されており、しかも、かつ上向きに開口しているので、排出された直後のエア等を含むオイルが、吸い込み管90から沿い込まれる可能性が小さく、フィードポンプ81によるエア噛を防止し、円滑なオイル循環を確保することができる。
[実施の形態による効果]
(1)図6において、クランクケース41の前端部に、クランク室51の前側に位置するオイルタンク室57を形成し、車輌側方から見て、オイルタンク室57に部分的に重なる位置に、フィードポンプ81を配置してあるので、エンジンの全高を低く抑え、車輌の地上高を高く出来ることは勿論のこと、オイルタンク室57は、回転部材のない箇所に配置されていることになり、高いオイルレベルを確保しても、回転部材に撹拌抵抗が生じる心配が少なく、回転部材の動力伝達ロスを少なくできる。
(2)図5及び図6において、車輌側方から見て、オイルタンク室57と部分的に重ねる位置にフィードポンプ81を配置しているので、フィードポンプ81の吸い込み経路81f等(図8)を短くでき、配管構造が簡単になると共に、フィードポンプ81の吸引効率も向上する。
(3)図5において、クラッチ室54の前端部とオイルタンク室57とは、隔壁41Raを介して隣り合っており、このクラッチ室54の前端部にフィードポンプ81を配置しているので、フィードポンプ81の吸い込み経路を短くできる。
(4)図7において、フィードポンプ81のポンプケーシング81cは、内側クラッチカバー43と一体に形成されており、また、内側クラッチカバー43には、オイルフィルター85(図2)が取り付けられているので、フィードポンプ81の吐出部からのオイルフィルター85までのオイル吐出経路が短くなり、かつ、簡素化できる。
(5)図5において、クラッチ室54の底部が、クランク室51及びトランスミッション室53に連通してそれら両室51、53からのオイルが貯留されるオイル回収室54aとなっており、そして、クラッチ室54には、オイル回収室54aのオイルを吸い込んでオイルタンク室57に排出するスカベンジングポンプ82が設けられているので、容量の大きいクラッチ室54の底部をオイル回収室54aとして利用でき、エンジンを大型化することなく、エンジン内全体のオイル容量を増やすことができる。
(6)図7において、スカベンジングポンプ82は、フィードポンプ81と同軸芯に配置されており、かつ、フィードポンプ81とスカベンジングポンプ82とは、共通のポンプ駆動ギヤ84を介して、クランク軸48に動力伝達可能に連結されているので、スカベンジングポンプ82及びフィードポンプ81をコンパクトに配置できると共に、動力伝達経路を簡素化できる。
(7)図5において、クランク軸48の前方にバランサ軸61が配置されており、ポンプ駆動ギヤ84は、バランサ軸61のバランサギヤ63を介してクランク軸48のクランクギヤ62に連動連結しているので、クランク軸48から各ポンプ81、82への動力伝達経路の部品点数が少なくなり、かつ、経路自体を短くできる。
(8)図5において、クランク軸48からポンプ駆動ギヤ84に至る動力伝達経路は、オイルタンク室57とは隔壁を隔てた空間(クラッチ室54の前端部)内に配置されているので、ポンプ駆動ギヤ84は、オイルによる抵抗を受けることなく回転でき、各ポンプ81、82への伝動効率が良く、ポンプ性能を高く維持できる。
(9)図6において、オイルタンク室57内で、スカベンジングポンプ用の排出管91のオイル出口91bは、フィードポンプ81の吸い込み管90の下端オイル入口90aから、可及的に上方に離れるように配置され、かつ上向きに勢いよく排出するように構成しているので、フィードポンプ81によるエア噛み現象等が防止できる。
(10)図2に示す自動二輪車のクランクケース41の下面と、図9に示すクラッチ室54のオイル回収室54aを囲む外壁とで上方及び側方が覆われた図2の空間部Sに、後輪用のショックアブソーバ30の一部を収納しているので、ショックアブソーバ30をエンジン下側にコンパクトに配置でき、しかも、地上高を大きく取ることにより、バンク角を大きく取ることができる。
[その他の実施の形態]
(1)本発明は、複数気筒エンジンに適用することも可能である。
(2)自動二輪車用エンジンだけでなく、四輪車等、他の車輌用エンジンにも適用可能である。
(3)車輌側方から見て、フィードポンプ全体がオイルタンク室に重なるように配置され
る構造とすることもできる。
20 エンジン
41 クランクケース
41L 左クランクケース部材
41R 右クランクケース部材
41Ra 右クランクケース部材の端壁(隔壁)
43 内側クラッチカバー
44 外側クラッチカバー
48 クランク軸
51 クランク室
53 トランスミッション室
54 クラッチ室
54a オイル回収室(オイル貯留室)
55 ジェネレータ室
61 バランサ軸
62 クランクギヤ
63 バランサギヤ
65 ジェネレータ
73 クラッチ
81 フィードポンプ
81a ポンプ軸
81b ロータ
81c ポンプケーシング
81h オイル吸い込み部
81k オイル吐出部
82 スカベンジングポンプ
82a ポンプ軸
82b ロータ
82c ポンプケーシング
82h オイル吸い込み部
82k オイル吐出部
84 共通のポンプ駆動ギヤ
90 オイル吸い込み管
90a オイル入口
90b オイル出口
91a オイル入口
91b オイル出口

Claims (8)

  1. クランク軸を収納するクランク室と、該クランク室に対し車輌前後方向の後方側に配置されたトランスミッション室とを、クランクケース内に形成してある車輌用エンジンにおいて、
    前記クランクケースには、前記クランク室の前方側にオイルタンク室が形成され、
    車輌側方から見て、前記オイルタンク室に少なくとも一部が重なる位置に、前記オイルタンク室内のオイルを吸引して前記エンジン内の注油箇所に供給するフィードポンプが配置されており、
    前記クランクケースの車幅方向の一方側に、クラッチカバーで覆われると共に前記オイルタンク室と隔壁を介して隣り合う、クラッチ室が形成され、
    前記クラッチ室に前記フィードポンプが配置されている、ことを特徴とする車輌用エンジン。
  2. 請求項1に記載の車輌用エンジンにおいて、
    前記フィードポンプは、前記クラッチカバーに設けられている、車輌用エンジン。
  3. 請求項1又は2に記載の車輌用エンジンにおいて、
    前記クラッチ室の底部は、前記クランク室及び前記トランスミッション室に連通することにより、前記クランク室及び前記トランスミッション室からのオイルが回収されるオイル回収室となっており、
    前記クラッチ室には、前記オイル回収室のオイルを吸い込んで前記オイルタンク室に排出する、スカベンジングポンプが設けられている、車輌用エンジン。
  4. 請求項3に記載の車輌用エンジンにおいて、
    前記スカベンジングポンプは、前記フィードポンプと同軸芯に配置されており、
    前記フィードポンプと前記スカベンジングポンプとは、共通のポンプ駆動ギヤを介して、前記クランク軸に動力伝達可能に連結されている、車輌用エンジン。
  5. 請求項4に記載の車輌用エンジンにおいて、
    前記クランク軸の前方にバランサ軸が配置されており、
    前記ポンプ駆動ギヤは、前記バランサ軸のバランサギヤを介して前記クランク軸のクランクギヤに連動連結している、車輌用エンジン。
  6. 請求項4又は5に記載の車輌用エンジンにおいて、
    前記クランク軸から前記ポンプ駆動ギヤに至る動力伝達経路は、前記オイルタンク室とは隔壁を隔てた空間内に配置されている、車輌用エンジン。
  7. 請求項3乃至6のいずれか一つに記載の車輌用エンジンにおいて、
    前記オイルタンク室内には、前記フィードポンプの吸い込み部に接続されるオイル吸い込み管と、前記スカベンジングポンプの吐出部に接続される排出管とが配置され、
    前記吸い込み管のオイル入口は、前記オイルタンク室の下部に位置しており、前記排出管のオイル出口は、前記オイルタンク室の上部に位置すると共に上方に向いて開口している、車輌用エンジン。
  8. 請求項1乃至7のいずれか一つに記載の車輌用エンジンを備えた自動二輪車において、
    前記クランクケースの下面と、前記クラッチ室の下部の側面とで、上方及び側方が覆われた空間部に、後輪用のショックアブソーバを配置してある、ことを特徴とする自動二輪車。
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