JP3817632B2 - 官能性9−金属置換フルオレン誘導体及びその製造方法 - Google Patents

官能性9−金属置換フルオレン誘導体及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、官能性9−金属置換フルオレン誘導体及びその製造方法に属し、この官能性9−金属置換フルオレン誘導体は特に有機EL素子材料として好適に利用されうる。
尚、この明細書において化合物の命名はIUPAC命名法規則に従うが、念のため末尾に置換基位置番号の付け方を示す。
【0002】
【従来の技術】
フルオレンの9位の炭素を電気的陽性な元素であるケイ素又はホウ素に置き換えたジベンゾシロール又はジベンゾボロール骨格は、σ*−π*共役やpπ−π*共役などの特異な軌道間相互作用により、フルオレンよりも低い最低非占有分子軌道をもち、電子を受け取りやすい構造である。従って、これらの骨格を構成単位とするπ電子系化合物は、電子輸送性をもつ発光材料として高い性能を発揮すると期待される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記π電子系化合物の前駆体となる官能基をもつジベンゾシロール又はジベンゾボロールなどの官能性9−金属置換フルオレン誘導体の効率的製造方法は未だ知られていない。
それ故、この発明の課題は、π電子系化合物の生産性に優れた官能性9−金属置換フルオレン誘導体とその効率的な製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
その課題を解決するために、この発明の官能性9−金属置換フルオレン誘導体は、
下記一般式[1]で表されることを特徴とする。
【化7】
Figure 0003817632
【0005】
式[1]中、Aは−OR、−NR、−O(CHOR、−NR(CHNRなどのオルト誘導効果をもつ置換基;Jはフッ素以外のハロゲン又はメタル官能基;Eは置換基の結合したホウ素である。AにおいてRは炭素数1から12までの置換もしくは無置換のアルキル基、nは1〜3の数で、A中のRが2個以上の場合、互いに同一もしくは異なっていても良い。3位のAと6位のA、並びに2位のJと7位のJは同一でも異なっていても良い。なお、Eが置換基の結合したケイ素であるときは、ジベンゾシロールとなり、この発明の範囲外であるが、後述の本発明と同様の製造方法により製造可能である。
【0006】
この発明の官能性9−金属置換フルオレン誘導体は、2,7位にハロゲンやメタル官能基などのように容易に変換可能な官能基を有するので、その位置に他のπ共役置換基を導入することができ、これにより容易に後述[6]の一般式をもつπ電子系化合物を合成することができる。
【0007】
この発明の官能性9−金属置換フルオレン誘導体を製造する第一の適切な方法は、下記一般式[2]で表されるビフェニル誘導体の4,4’位をハロゲン化し、次いで2,2’位をリチオ化した後、下記一般式[4]で表される有機ボランと反応させることを特徴とする。なお、有機ボランに代えて下記一般式[3]で表される有機シランと反応させたときは、前述のジベンゾシロールが製造される。
【0008】
【化8】
Figure 0003817632
式[2]中、Aは前記式[1]に同じ、Iはヨウ素である。
【0009】
【化9】
Figure 0003817632
式[3]中、R1及びR2はそれぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基又はアリール基、X及びYはハロゲン又はアルコキシ基である。
【0010】
【化10】
Figure 0003817632
式[4]中、R1、X及びYは前記式[3]に同じである。
【0011】
前記ハロゲン化として好ましいのはヨウ素存在下等におけるブロモ化である。出発原料の2,2’位にヨウ素が結合していることにより、4,4’位が選択的に臭素で置換されるからである。ヨウ素存在下とするのは、ヨウ素不存在下でブロモ化を行うとハロゲン交換反応がおこり目的物の収率が低下するからである。尚、原理的にはクロロ化も可能である。
前記2,2’位におけるリチオ化の好ましい条件は、n−BuLi、sec−BuLi又はtert−BuLiなどのアルキルリチウムと, −20〜−100℃の間の低温条件,好ましくは−70〜−90℃で反応させるものである。
【0012】
前記リチオ化した後、前記有機シラン又は有機ボランと反応させる前に臭化マグネシウムと反応させると好ましい。これにより式[3]又は[4]の有機シラン又は有機ボランとの反応が容易に進行して収率が向上するからである。
【0013】
前記第一の製造方法において、生成物を更にtert−BuLi又はsec−BuLiと反応させることにより、4,4位をリチオ化した後、求電子性ハロゲン化剤又は求電子性メタル化剤と反応させることにより、種々の二官能性9−金属置換フルオレン誘導体を得ることができる。
【0014】
この発明の官能性9−金属置換フルオレン誘導体を製造する第二の適切な方法は、下記一般式[5]で表される9−金属置換フルオレン誘導体の2,7位をリチオ化した後、求電子性ハロゲン化剤又は求電子性メタル化剤と反応させることを特徴とする。
【0015】
【化11】
Figure 0003817632
(式中、A及びEは前記に同じ。)
第二製造方法における前記リチオ化をsec-BuLiにて行うとき、最も収率が高くなる。
【0016】
上記一般式[1]の官能性9−金属置換フルオレン誘導体が得られれば、それから下記一般式[6]で表される官能性9−金属置換フルオレン誘導体骨格を構成単位とすることを特徴とする有機EL素子材料が容易に得られる。
【化12】
Figure 0003817632
(式中、Aは−OR、−NR2、−O(CH2nOR、−NR(CH2nNR2などのオルト誘導効果をもつ置換基;Eは置換基の結合したケイ素又はホウ素である。AにおいてRは炭素数1から12までの置換もしくは無置換のアルキル基、nは1〜3の数で、A中のRが2個以上の場合、互いに同一もしくは異なっていても良い。3位のAと6位のAは同一でも異なっていても良い。R3はアリール基、アリールビニル基、アリールエチニル基、ヘテロアリール基、ヘテロアリールビニル基又はヘテロアリールエチニル基である。)
【発明の実施の形態】
−実施形態1−
これは前記第一の製造方法の好適な実施形態である。下記の反応式に示すように、2,2’-ジヨード-5,5’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル1をPO(OMe)3中ヨウ素存在下で臭素化することにより、4,4’-ジブロモ-2,2’-ジヨード-5,5’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル2を得ることができる(ステップ1)。
【0017】
化合物2を原料に用い、2モル量のn-ブチルリチウムと低温(-90 °C)で反応させることにより選択的に2,2’位をジリチオ化し、さらにジメチルジクロロシランあるいは(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)ジメトキシボランと反応させることにより、目的とする3,7-ジブロモジベンゾシロール3a又は3,7-ジブロモジベンゾボロール4aが得られる(ステップ2)。
【0018】
ジブロモ体3a,4aは、tert-ブチルリチウムと反応させることにより,さらにジリチオ化物5へと変換でき(ステップ3)、これからジヨードジベンゾボロール4bをはじめとする種々の二官能性ジベンゾシロールおよびジベンゾボロールへと変換することが可能である(ステップ4)。
【0019】
【化13】
Figure 0003817632
【0020】
ステップ2におけるリチオ化剤としては、n-BuLi のほかにs-BuLi、t-BuLi も可能である。ステップ3においては、t-BuLi のほかにs-BuLiも可能である。ステップ4における求電子剤としては、ICH2CH2Iの他に、I2、Br2、ICl、N-ヨードスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、BrCH2CH2Br、BrCl2CCCl2Br、BrF2CCF2Brなどの求電子性ハロゲン化剤、あるいはMe3SnCl、Bu3SnCl、Ph3SnCl、R3SiCl、R2Si(OR)Cl、RSi(OR)2Cl、Si(OR)3Cl、R2SiF2、RSiF3、B(OR)3、(iPrO)B(-OCH2CMe2CMe2CH2O-)、ClB(NR2)2、MgCl2、MgBr2、MgI2、ZnCl2、ZnBr2、ZnI2、ZnCl2(tmen)などの求電子性メタル化剤も使用可能である(但し、Rはアルキル基)。
【0021】
−実施形態2−
これは前記第二の製造方法の好適な実施形態である。下記の反応式に示すように、公知の方法に従い合成できる2,8-ジメトキシジベンゾシロールをsec-BuLiと反応させることにより、選択的に3,7位でジリチオ化が進行し、ジリチオ化物5が生成する。これを続いて1,2-ジヨードエタンなどの求電子剤と反応させることにより、3,7-ジヨードジベンゾシロール 3b, 3c をはじめとする種々の3,7-二官能性ジベンゾシロールを得ることができる。また、同様の手法を用いれば3,7-二官能性ジベンゾボロールの合成も可能である。
【0022】
【化14】
Figure 0003817632
【0023】
ステップ1におけるリチオ化剤としてはTHF溶媒中sec-BuLiが最も収率が良い。このほかにtert-BuLiを用いても反応は進行する。ステップ2における求電子剤としては、ICH2CH2Iの他に、I2、Br2、ICl、NIS、NBS、BrCH2CH2Br、BrCl2CCCl2Br、BrF2CCF2Brなどの求電子性ハロゲン化剤、あるいはR3SnCl、Ph3SnCl、R3SiCl、R2Si(OR)Cl、RSi(OR)2Cl、Si(OR)3Cl、R2SiF2、RSiF3、B(OR)3、(iPrO)B(-OCH2CMe2CMe2CH2O-)、ClB(NR2)2、MgCl2、MgBr2、MgI2、ZnCl2、ZnBr2、ZnI2、ZnCl2(tmen)などの求電子性メタル化剤も使用可能である(但し、Rはアルキル基)。
【0024】
−実施形態3−
実施形態1及び実施形態2で得られた二官能性ジベンゾシロール及び二官能性ジベンゾボロールは、π電子系化合物の好適な前駆体となる。例えば、実施形態1で得られた3,7-ジヨードジベンゾボロール4b及び実施形態2で得られた3,7-ジヨードジベンゾシロール3cは、下記の反応式に示すようにアリールスズ化合物やアセチレン化合物とのPd触媒クロスカップロング反応などにより、電子輸送材料や発光材料に有用なπ電子系化合物へと容易に誘導することができる。
【0025】
【化15】
Figure 0003817632
【0026】
【実施例】
以下に第一製造方法及び第二製造方法の具体的実施例を示す。尚、化合物の符号3a〜3e及び4a〜4eと置換基との対応は、下記の化合物リストの通りである。
【0027】
【化16】
Figure 0003817632
【0028】
−実施例1−
4,4’-ジブロモ-2,2’-ジヨード-5,5’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル (化合物2)の製造例(第一製造方法におけるステップ1の具体例)
2,2’-ジヨード-5,5’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル (5.0 g, 10.7 mmol)とヨウ素 (1.3 g, 8.1 mmol)のリン酸トリメチル (20 mL) 溶液に臭素(1.8 mL, 22.0 mmol) のリン酸トリメチル (10 mL) 溶液を0 ℃で滴下し、その後、12時間0 ℃で撹拌した。撹拌終了後、混合物に水を加え、ジエチルエーテルにより抽出した。得られた有機層をさらに1N 水酸化ナトリウム水溶液、チオ硫酸ナトリウム水溶液、そして飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過により乾燥剤を除去し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた濃縮物をアセトンから再結晶することにより、下記の分析値を有する目的化合物を収率40% (2.56 g, 4.3 mmol)で無色の固体として得ることができた。
【0029】
Mp 159 ℃. 1H NMR (CDCl3) δ 8.37 (s, 2H), 6.71 (s, 2H), 3.87 (s, 6H). 13C NMR (CDCl3) δ 155.8, 147.9, 141.9, 113.1, 112.3, 87.5, 56.4. MS (EI) m/e (relative intensity) 623 (M+, 90), 575 (30), 496 (100). Anal. Calcd for C14H10Br2I2O2: C, 26.95; H, 1.62. Found: C, 27.20; H, 1.80.
【0030】
−実施例2−
3,7-ジブロモ-5-(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)-2,8-ジメトキシ-5H-ジベンゾ[b,d]ボロール (化合物4a)の製造例(第一製造方法におけるステップ2の具体例)
【0031】
化合物2 (2.0 g, 3.2 mmol)のTHF(20 mL)溶液にn-ブチルリチウムのヘキサン溶液 (1.6 M, 4.5 mL, 7.2 mmol)を-90 ℃で5分かけて滴下した。反応溶液を1時間撹拌した後、臭化マグネシウム (9.6 mmol) のTHF (20 mL)溶液を加え、室温まで昇温し、さらに1時間撹拌した。反応溶液を再び-90 ℃に冷却し、(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)ジメトキシボラン(1.23 g、4.5 mmol)を加えた後、反応溶液を環流下10時間撹拌した。減圧下で溶媒を留去し得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(hexane:AcOEt = 8:2, Rf = 0.3)で精製することにより下記の分析値を有する目的化合物4a (680 mg, 1.2 mmol) を収率36%で黄色固体として得ることができた。
【0032】
Mp 220 ℃. 1H NMR (CDCl3) δ 7.49 (s, 2H), 7.00 (s, 2H), 6.94 (s, 2H), 4.03 (s, 6H), 2.92 (sep, J = 6.9 Hz, 1H), 2.42 (sep, J = 6.9 Hz, 2H), 1.30 (d, J = 6.9 Hz, 6H), 1.13 (d, J = 6.6 Hz, 12H). 13C NMR (CDCl3) δ 160.3, 153.3, 149.8, 149.1, 139.0, 137.7, 133.6, 120.1, 111.4, 104.0, 56.5, 35.9, 34.4, 24.7, 24.1. MS (EI) m/e (relative intensity) 583 (M+, 100), 382 (80). Anal. Calcd for C29H33BBr2O2: C, 59.62; H, 5.69. Found: C, 59.58; H, 5.79.
【0033】
−実施例3−
3,7-ジブロモ-2,8-ジメトキシ-5,5’-ジメチル-5H-ジベンゾ[b,d]シロール (化合物3a)の製造例(第一製造方法におけるステップ2の具体例)
化合物4aの合成において、(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)ジメトキシボランの代わりにジメチルジクロロシランを用いる以外は同様の手順で、下記の分析値を有する目的化合物3aを収率31%で得ることができた。
【0034】
Mp 123℃ (dec.). 1H NMR (C6D6): δ 0.21 (s, 6H), 3.37 (s, 6H), 7.05 (s, 2H), 7.81 (s, 2H). 13C NMR (CDCl3): δ 3.10, 56.22, 104.66, 111.84, 132.21, 136.90, 147.69, 157.40. Anal. Calcd for C16H16Br2O2 Si: C, 44.88; H, 3.77. Found: C, 44.85; H, 3.77.
【0035】
−実施例4−
3,7-ジヨード-5-(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)-2,8-ジメトキシ-5H-ジベンゾ[b,d]ボロール (化合物4b)の製造例(第一製造方法におけるステップ3及びステップ4の具体例)
【0036】
化合物4a (100 mg, 0.17 mmol)のジエチルエーテル(3 mL)溶液にt-ブチルリチウム/ペンタン溶液 (1.5 M, 0.5 mL, 0.75 mmol)を-90 ℃で滴下した。滴下後、反応溶液を-78 ℃に昇温し、30分撹拌した。そして、1,2-ジヨードエタン (210 mg, 0.75 mmol)のジエチルエーテル(2 mL)溶液を反応溶液に-78 ℃加え、室温まで昇温し、1時間撹拌した。反応終了後、水を加え、クロロホルムを用いて抽出し、得られた有機層をさらに食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過により乾燥剤を除去し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(hexane:AcOEt = 8:2, Rf = 0.3)で精製することにより、下記の分析値を有する目的化合物4b (78 mg, 0.11 mmol)を収率68%で黄色固体として得ることができた。
【0037】
Mp 199 ℃ (dec.). 1H NMR (CDCl3) δ 7.72 (s, 2H), 7.00 (s, 2H), 6.89 (s, 2H), 4.01 (s, 6H), 2.93 (sep, J = 6.9 Hz, 1H), 2.42 (sep, J = 6.6 Hz, 2H), 1.30 (d, J = 6.9 Hz, 6H), 1.13 (d, J = 6.6 Hz, 12H). 13C NMR (CDCl3) δ 162.5, 150.4, 149.8, 148.9, 145.0, 138.5, 120.0, 103.1, 85.5, 56.5, 35.8, 34.3, 24.8, 24.1. MS (EI) m/e (relative intensity) 678 (M+, 100), 476 (90). HRMS (EI) Calcd for C14H12I2O2; 678.0717. Found; 678.0657.
【0038】
−実施例5−
3,7-ジヨード-5,5-ジメチル-2,8-ジメトキシ-5H-ジベンゾ[b,d]シロール (化合物3b)の製造例(第二製造方法の具体例)
2,8-ジメトキシ-5,5-ジメチル-5H-ジベンゾ[b,d]シロール6 (135 mg, 0.50 mmol) のTHF(5 mL)溶液にsec-ブチルリチウム/シクロヘキサン/ヘキサン溶液(1.0 M, 2.0 mL, 2.0 mmol)を-78 ℃で加えた。その後、反応温度を-20 ℃まで3時間かけて徐々に昇温し、この反応溶液に1,2-ジヨードエタン (564 mg, 2.0 mmol)のTHF(1 mL)溶液を加えた。30分撹拌した後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、ジエチルエーテルにより抽出した。得られた有機層を水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過により乾燥剤を除去し、濾液を減圧下で濃縮することにより、下記の分析値を有する目的化合物3b (0.23 g, 0.44 mmol)を収率88%で白色固体として得ることができた。
1H NMR (CDCl3): δ 0.37 (s, 6H), 4.00 (s, 6H), 7.19 (s, 2H), 7.94 (s, 2H).
【0039】
−実施例6−
5,5-ジヘキシル-3,7-ジヨード-2,8-ジメトキシ-5H-ジベンゾ[b,d]シロール (化合物3c)の製造例(第二製造方法の具体例)
出発原料を2,8-ジヘキシル-5,5-ジメチル-5H-ジベンゾ[b,d]シロールとした以外は実施例5と同様の手順により、下記の分析値を有する目的化合物3cを収率57%で得ることができた。
【0040】
1H NMR (CDCl3): δ 0.77-0.93 (m, 6H), 1.12-1.38 (m, 20H), 4.00 (s, 6H), 7.20 (s, 2H), 7.91 (s, 2H). 13C NMR (CDCl3): δ 12.41, 14.19, 22.65, 23.85, 31.37, 33.05, 56.37, 86.56, 103.79, 132.24, 143.45, 149.45 159.56. Anal. Calcd for C26H36I2O2Si: C, 47.14; H, 5.48. Found: C, 47.46; H, 5.56.
【0041】
−実施例7−
5,5-ジヘキシル-3,7-ジ(2-チエニル)-2,8-ジメトキシ-5H-ジベンゾ[b,d]シロール (化合物3d)の製造例(π電子系化合物の製造例)
化合物3c (100 mg, 0.15 mmol)、2-トリブチルスタンニルチオフェン(124 mg, 0.33 mmol)、Pd2(dba)3 (7.8 mg, 0.0076 mmol)、およびトリ(2-フリル)ホスフィン(7.0 mg, 0.03 mmol)のTHF (2 mL)混合溶液を窒素雰囲気下で調整し、環流下4時間撹拌した。反応終了を1H NMRにより確認した後、反応溶液に水を加え、ジエチルエーテルにより抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過により乾燥剤を除去し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(hexane:AcOEt = 8:2, Rf = 0.5)で精製し、さらにリサイクル型GPCにより精製することで、下記の分析値を有する目的化合物3d (52 mg, 0.089 mmol)を収率59%で淡黄緑色固体として得ることができた。
【0042】
1H NMR (CDCl3): δ 0.83 (t, J = 6.8 Hz, 6H), 0.92-0.99 (m, 4H), 1.17-1.42 (m, 16H), 4.07 (s, 6H), 7.12 (dd, J = 3.8, 5.3 Hz, 2H), 7.34 (dd, J = 1.1, 5.3 Hz, 2H), 7.38 (s, 2H), 7.55 (dd, J = 1.1, 3.8 Hz, 2H), 7.85 (s, 2H). 13C NMR (CDCl3): δ 12.73, 14.19, 22.67 24.03, 31.45, 33.15, 55.69, 104.07, 122.60, 125.12, 125.20, 126.71, 130.15, 132.96, 139.66, 148.51, 157.55.
【0043】
−実施例8−
5,5-ジヘキシル-3,7-ビス(フェニルエチニル)-2,8-ジメトキシ-5H-ジベンゾ[b,d]シロール (化合物3e)の製造例(π電子系化合物の製造例)
化合物3c (100 mg, 0.15 mmol)、PdCl2(PPh3)2 (1.6 mg, 0.003 mmol)、及びヨウ化銅(I) (1.1 mg, 0.006 mmol)のトリエチルアミン(2 mL)溶液を窒素下で調製し、この混合溶液にフェニルアセチレン(0.040 mL, 0.36 mmol)を加え、環流下6時間撹拌した。反応終了を1H NMRにより確認した後、反応溶液に水を加え、ジエチルエーテルにより抽出した。得られた有機層を水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過により乾燥剤を除去し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(hexane:AcOEt = 8:2, Rf = 0.3)で精製することにより、下記の分析値を有する目的化合物3e (85 mg, 0.14 mmol)を収率93%で淡黄緑色固体として得ることができた。
【0044】
1H NMR (CDCl3): δ 0.83 (t, J = 6.6 Hz, 6H), 0.87-0.98 (m, 4H), 1.16-1.38 (m, 16H), 4.06 (s, 6H), 7.28-7.38 (m, 8H), 7.56-7.62 (m, 4H), 7.72 (s 2H). 13C NMR (CDCl3): δ 12.53, 14.17, 22.65, 23.90, 31.42, 33.11, 55.95, 86.38, 94.26, 103.54, 123.50, 127.96 128.14, 129.97, 131.48, 137.90, 149.50, 161.86.
【0045】
−実施例9−
5-(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)-2,8-ジメトキシ-3,7-ジ(2-チエニル)-5H-ジベンゾ[b,d]ボロール (化合物4c)の製造例(π電子系化合物の製造例)
出発原料を化合物4bとした以外は実施例7と同様の手順により、下記の分析値を有する目的化合物4cを収率30%で橙色固体として得ることができた。
【0046】
Mp 225 ℃. 1H NMR (CDCl3) δ 7.65 (s, 2H), 7.39 (dd, J = 3.9 and 1.5 Hz, 2H), 7.27 (dd, J = 5.4 and 1.5 Hz, 2H), 7.06 (s, 2H), 7.04 (s, 2H), 7.03 (dd, J = 5.1 and 3.9 Hz, 2H), 4.08 (s, 6H), 2.97 (sep, J = 5.9 Hz, 1H), 2.60 (sep, J = 6.8 Hz, 2H), 1.35 (d, J = 6.8 Hz, 6H), 1.17 (d, J = 6.8 Hz, 12H). 13C NMR (CDCl3) δ 160.2, 153.4, 150.0, 148.6, 139.3, 137.1, 134.6, 134.4, 126.5, 125.1, 125.0, 122.6, 120.0. 103.3, 55.8, 35.7, 34.3, 24.9, 24.2. MS (EI) m/e (relative intensity) 590 (M+, 100), 388 (50). UV-vis (THF) λmax nm (log ε): 488 (2.95), 394 (4.32), 375 (4.24). Anal. Calcd for C37H39BO2S2: C, 75.24; H, 6.66. Found: C, 74.84; H, 6.53.
【0047】
−実施例10−
5-(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)-2,8-ジメトキシ-3,7-ビス(2,2’-ビチオフェン-5-イル)-5H-ジベンゾ[b,d]ボロール (化合物4d)の製造例(π電子系化合物の製造例)
2-トリブチルスタンニルチオフェンに代えて5-トリブチルスタンニル-2,2'-ビチオフェンを用いた以外は実施例9と同様の手順により、下記の分析値を有する目的化合物4dを収率27%で橙色固体として得ることができた。
【0048】
Mp 244 ℃ (dec.). 1H NMR (CDCl3) δ 7.67 (s, 2H), 7.32 (d, J = 3.2 Hz, 2H), 7.19 (m, 2H), 7.18 (s, 2H), 7.10 (d, J = 3.9 Hz, 2H), 7.07 (s, 2H), 7.06 (s, 2H), 7.00 (dd, J = 3.9 and 4.8 Hz, 2H), 4.11 (s, 6H), 2.98 (sep, J = 6.9 Hz, 1H), 2.59 (sep, J = 6.9 Hz, 2H), 1.35 (d, J = 6.9 Hz, 6H), 1.17(d, J = 6.9 Hz, 12H). 13C NMR (CDCl3) δ 160.1, 153.4, 150.0, 148.7, 138.2, 137.8, 137.1, 138.8, 134.2, 134.0, 127.7, 125.6, 124.0, 123.4, 123.2, 122.4, 120.1, 103.4, 55.9, 35.8, 34.3, 25.0, 24.2. MS (EI) m/e (relative intensity) 755 (M+, 100), 550 (40). UV-vis (THF) λmax nm (log ε): 504 (3.51), 405 (4.67). Anal. Calcd for C45H43O2S2B: C, 71.60; H, 5.74. Found: C, 71.45; H, 5.86.
【0049】
−実施例11−
5-(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)-2,8-ジメトキシ-3,7-ビス[p-(ジフェニルアミノ)フェニル]-5H-ジベンゾ[b,d]ボロール (化合物4e)の製造例(π電子系化合物の製造例)
2-トリブチルスタンニルチオフェンに代えてp-トリブチルスタンニルジフェニルアミノベンゼンを用いた以外は実施例9と同様の手順により、下記の分析値を有する目的化合物4eを収率43%で橙色固体として得ることができた。
【0050】
1H NMR (CDCl3) δ 7.34 (s, 2H), 7.33 (d, J = 4 Hz, 2H), 7.26-7.21 (m, 4H), 7.13-7.10 (m, 8H), 7.05-6.99 (m, 12H), 3.98 (s, 6H), 2.91 (sep, J = 6.9 Hz, 1H), 2.58 (sep, J = 6.6 Hz, 2H), 1.29 (d, J = 6.9 Hz, 6H), 1.15 (d, J = 6.6 Hz, 12H). 13C NMR (CDCl3) δ 161.2, 153.8, 149.7, 148.4, 147.6, 146.4, 137.0, 136.9, 134.8, 132.2, 130.0, 129.1, 124.3, 122.9, 122.7, 119.8, 103.0, 55.8, 35.7, 34.3, 24.9, 24.1. MS (FAB) m/e (relative intensity) 912 (M+, 30), 391 (100). UV-vis (THF) λmax nm (log ε): 389 (5.44), 295 (5.23). Anal. Calcd for C65H61BN2O2・0.5H2O: C, 84.67; H, 6.78; N, 3.04. Found: C, 84.75; H, 6.85; N, 3.14. HRMS (FAB) Calcd for C65H61BN2O2; 912.4826. Found; 912.4843.
【0051】
【発明の効果】
以上のように、この発明によればフルオレンよりも低い最低非占有分子軌道を有するジベンゾボロールを骨格とするπ電子系化合物を高い収率で容易に得ることができるので、有機EL素子材料製造に有益である。

Claims (7)

  1. 下記一般式[1]で表される官能性9−金属置換フルオレン誘導体。
    Figure 0003817632
    (式中、Aは−OR、−NR、−O(CHOR、−NR(CHNRなどのオルト誘導効果をもつ置換基;Jはフッ素以外のハロゲン又はメタル官能基;Eは置換基の結合したホウ素である。AにおいてRは炭素数1から12までの置換もしくは無置換のアルキル基、nは1〜3の数で、A中のRが2個以上の場合、互いに同一もしくは異なっていても良い。3位のAと6位のA、並びに2位のJと7位のJは同一でも異なっていても良い。)
  2. 下記一般式[2]で表されるビフェニル誘導体の4,4’位をハロゲン化し、次いで2,2’位をリチオ化した後、下記一般式[4]で表される有機ボランと反応させることを特徴とする請求項1に記載の官能性9−金属置換フルオレン誘導体の製造方法。
    Figure 0003817632
    (式中、Aは前記に同じ、Iはヨウ素である。)
    Figure 0003817632
    (式中、R、X及びYは前記に同じである。)
  3. 前記ハロゲン化がヨウ素存在下におけるブロモ化である請求項2に記載の方法。
  4. 前記リチオ化した後、前記有機ボランと反応させる前に臭化マグネシウムと反応させる請求項2又は3に記載の方法。
  5. 更にtert−BuLi又はsec−BuLiと反応させた後、求電子性ハロゲン化剤又は求電子性メタル化剤と反応させる請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 下記一般式[5]で表される9−金属置換フルオレン誘導体の2,7位をリチオ化した後、求電子性ハロゲン化剤又は求電子性メタル化剤と反応させることを特徴とする請求項1に記載の官能性9−金属置換フルオレン誘導体の製造方法。
    Figure 0003817632
    (式中、A及びEは前記に同じ。)
  7. 前記リチオ化をsec-BuLiにて行う請求項6に記載の方法。
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