JP3813105B2 - 硬化性に優れたエポキシ樹脂組成物、その硬化物およびその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、産業上非常に重要な性質と言える、硬化性を改良したエポキシ樹脂組成物に関し、より詳しくは半導体集積回路を封止する目的に供するに充分な性能を有し、且つ工業生産において優位となる、成型サイクルの高速化を可能にする、速硬化性エポキシ樹脂組成物に関するものである。さらに、該エポキシ樹脂の硬化物、および、該エポキシ樹脂により半導体集積回路を封止してなる半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
集積回路(IC)や大規模集積回路(LSI)は、それを保護する封止材により、外部雰囲気のゴミや埃、熱、水分、あるいは光による誤作動等から守られている。この封止材としては、金属やセラミックスによるものから、近年では樹脂封止へと変遷しており、現在ではエポキシ樹脂封止が主流である。特に、コスト面と物性面のバランスから、フェノール樹脂を硬化剤としたエポキシ樹脂組成物が多く使われており、中でも、エポキシ樹脂としてはo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂やビフェノール型エポキシ樹脂を、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂やフェノールアラルキル樹脂を用いた、エポキシ樹脂組成物が多く使われている。
しかし、この樹脂組成物は、封止材としての要求性能の中で、耐熱性には優れるものの、耐湿性の点では劣るという欠点を有していた。この問題に対し、様々な改良が検討されてきたが、いずれにしてもフェノール性水酸基によるエポキシ基の硬化反応である以上、化学式(XII)
【0003】
【化6】
に示すように水酸基が生成する反応である以上、水酸基に起因する吸湿性が生じるため、低吸湿化には限界があることは自明であった。
【0004】
これに対し、この問題を解決する一つの手法として、西久保ら出願の特開昭62−53327号公報に示される様なエポキシ基とエステル基の反応が提案され、更に本発明者らによりエポキシ/エステル付加反応に対して高活性な、特に封止材用途に好適なフォスファゼン系硬化触媒を含むエポキシ樹脂組成物が提案されている。(特開2000−327751等)
これらの提案により、ある種の硬化剤を必須とするものではありながら、エポキシ樹脂に対する硬化剤として水酸基をエステル化した硬化剤を用いることで、従来のエポキシ樹脂組成物に対し、圧倒的な低吸湿性を示す硬化物を得ることが可能となった。
【0005】
しかしながら、本発明者らの検討により以下の課題が明らかになった。すなわち、工業的な生産を意図した成型サイクルを考慮したとき、その硬化速度、特に金型からの離型が可能となるまでの時間に関与する初期硬化の速度に限界があることが判明した。
これは、様々な硬化触媒も用いることが可能であるフェノール硬化の場合は、要求される物性、硬化速度等に応じて様々な種類の硬化触媒を取捨選択、あるいは併用することにより対応することが可能であるのに対し、エステル硬化に関しては硬化触媒が限られ、実質的に先の本発明者らの提案した、フォスファゼン型触媒に限られるため、硬化速度の調整が出来ないことが原因である。
唯一の方法としては、硬化触媒量を増量することで対応することであるが、この方法は樹脂組成物の流動性を悪化させてしまい、また高価なフォスファゼン触媒を大量に用いることはコストアップにも繋がるため、好ましい方法とは言えない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、エステル基による硬化でありながら、硬化性に優れるエポキシ樹脂組成物を提供すること、およびそれを用いた硬化物および半導体装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、エステル基を有する硬化剤において、エステル基に対し特定の位置に置換基を導入することで硬化速度が向上する事を見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[11]に記載した事項により特定される。
【0009】
[1] (A)2官能以上のエポキシ化合物または2官能以上のエポキシ樹脂、
(B)硬化剤、および、
(C)硬化促進剤を含有するエポキシ樹脂組成物において、
前記(B)硬化剤が、
一般式(I)で表されるエステル含有化合物またはエステル含有樹脂であり、
前記(C)硬化促進剤が、
一般式(II)または(III)で表されるフォスファゼン化合物を必須として全硬化促進剤中に30〜100重量%
を含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物
(一般式(I)中、Xは、炭素数1〜7の脂肪族または芳香族アルデヒド残基、炭素数8〜14のキシリレン誘導体残基または炭素数10〜15の脂肪族ジエン残基を示し、R1は炭素数1〜6の直鎖、分岐または環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基を示し、その置換位置はOA基に対しオルソ位またはメタ位である。Aは水素原子もしくは炭素数2〜10の芳香族または脂肪族アシル基を示し、水素原子/アシル基のモル比が90/10〜0/100の範囲である。繰り返し単位を示すmは、1〜50の範囲に分布し、その平均は1〜20の範囲である。
一般式(II)中、R2は水素原子、炭素数1〜10の直鎖、分岐、環状アルキル基、炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基を示し、全て同一であっても異なっていてもよい。また、Y-で示されるアニオンは、ハロゲンアニオン、ヒドロキシアニオン、炭素数1〜8のアルコキシアニオン、6〜18のフェノキシアニオン、炭素数1〜6の脂肪族または芳香族カルボン酸から導かれる カルボキシアニオン、ナフトキシアニオンを示す。
一般式(III)中、R3は水素原子、炭素数1〜10の直鎖、分岐、環状アルキル基、炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基を示し、全て同一であっても異なっていてもよい。)。
【0010】
【化7】
【0011】
[2] (B)硬化剤が、
一般式(I)において、Rがメチル基である、o−クレゾール、または、m−クレゾールから誘導されるエステル含有化合物、または、エステル含有樹脂であることを特徴とする、
[1]に記載したエポキシ樹脂組成物。
【0012】
[3] (B)硬化剤が、
一般式(IV)で表される、o−クレゾール、または、m−クレゾールノボラックから誘導されるエステル含有化合物、または、エステル含有樹脂であることを特徴とする、
[1]に記載したエポキシ樹脂組成物
(一般式(IV)中、Aは水素原子もしくは炭素数2〜10の芳香族または脂肪族アシル基を示し、水素原子/アシル基のモル比が90/10〜0/100の範囲である。繰り返し単位を示すmは、1〜50の範囲に分布し、その平均は1〜20の範囲である。)。
【0013】
【化8】
【0014】
[4] (B)硬化剤が、
一般式(V)で表される、o−クレゾール、または、m−クレゾールアラルキル樹脂から誘導されるエステル含有化合物、または、エステル含有樹脂であるエポキシ樹脂組成物であることを特徴とする、
[1]に記載したエポキシ樹脂組成物
(一般式(V)中、Aは水素原子もしくは炭素数2〜10の芳香族または脂肪族アシル基を示し、水素原子/アシル基のモル比が90/10〜0/100の範囲である。繰り返し単位を示すmは、1〜50の範囲に分布し、その平均は1〜20の範囲である。)。
【0015】
【化9】
【0016】
[5] (B)硬化剤が、
一般式(VI)で表される、o−クレゾール、または、m−クレゾール−ジシクロペンタジエン樹脂から誘導されるエステル含有化合物、または、エステル含有樹脂であることを特徴とする、
[1]に記載したエポキシ樹脂組成物
(一般式(VI)中、Aは水素原子もしくは炭素数2〜10の芳香族または脂肪族アシル基を示し、水素原子/アシル基のモル比が90/10〜0/100の範囲である。繰り返し単位を示すmは、1〜50の範囲に分布し、その平均は1〜20の範囲である。)
【0017】
【化10】
【0018】
[6] 一般式(I)で表されるエステル含有化合物またはエステル含有樹脂のアシル基Aが、
アセチル基またはベンゾイル基であることを特徴とする、
[1]乃至[5]の何れかに記載したエポキシ樹脂組成物。
【0019】
[7] 一般式(I)で表されるエステル含有化合物またはエステル含有樹脂のアシル基Aが、
アセチル基およびベンゾイル基であり、
アセチル基/ベンゾイル基のモル比が99/1〜1/99
であることを特徴とする、
[1]乃至[5]の何れかに記載したエポキシ樹脂組成物。
【0020】
[8] (A)エポキシ樹脂が、
一般式(VII)で表されるジヒドロキシナフタレンから得られるエポキシ樹脂、
一般式(VIII)で表されるビフェノール類から得られるエポキシ樹脂、
一般式(IX)で表されるノボラック型樹脂から得られるエポキシ樹脂、
一般式(X)から得られるフェノールアラルキル樹脂から得られるエポキシ樹脂、および、
一般式(XI)で表されるフェノール−ジシクロペンタジエン樹脂から得られるエポキシ樹脂
からなる群から選択された少なくとも一つのエポキシ樹脂を、
エポキシ樹脂成分中に20重量%〜100重量%含むことを特徴とする、
[1]乃至[7]の何れかに記載したエポキシ樹脂組成物。
(一般式(VII)中、2,3−エポキシプロピル基の置換位置は1,5位、1,6位、1,7位、2,6位、または2,7位である。
一般式(VIII)中、R4は水素原子またはメチル基を表し、全て同一でも異なっていてもよい。
一般式(IX)中、R5は水素原子またはメチル基を示し、繰り返し単位を示すmは、1〜50の範囲に分布し、その平均は1〜20の範囲である。
一般式(X)中、R6は水素原子またはメチル基を示し、繰り返し単位を示すmは、1〜50の範囲に分布し、その平均は1〜20の範囲である。
一般式(XI)中、R7は水素原子またはメチル基を示し、繰り返し単位を示すmは、1〜50の範囲に分布し、その平均は1〜20の範囲である。)。
【0021】
【化11】
【0022】
[9] [1]乃至[8]の何れかに記載したエポキシ樹脂組成物に対し、(D)有機および/または無機充填材を、(A+B)100重量部に対し、100〜1900重量部を添加して得られるエポキシ樹脂組成物。
【0023】
[10] [1]乃至[9]の何れかに記載したエポキシ樹脂組成物を熱硬化させて得られるエポキシ樹脂硬化物。
【0024】
[11] [1]乃至[9]の何れかに記載したエポキシ樹脂組成物を用いて半導体集積回路を封止して得られる半導体装置。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を構成する(A)(B)(C)および(D)成分について詳細に説明する。
【0026】
(A)成分である2官能以上のエポキシ化合物または2官能以上のエポキシ樹脂は、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有する物であれば全て用いることが可能である。
具体的に例示すれば、次のようなものを挙げることが出来る。
すなわち、オレフィン類の酸化や、水酸基のグリシジルエーテル化、1,2級アミン類のグリシジルアミン化、カルボン酸のグリシジルエステル化等により得られるエポキシ基を有するものである。
【0027】
これらエポキシ化され得る原料としては、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノンの様なジヒドロキシベンゼン類;2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2−(3−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルベンゼン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−2,2’,6,6’−テトラメチルビフェニル、4、4’ジヒドロキシジフェニルエーテル、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1−スピロビインダン、1,3,3−トリメチル−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−インダン−6−オール等のビスフェノール類;テトラフェニロールエタン、ナフトール−クレゾールレゾール縮合物等のオリゴフェノール類、一般式(XIII)
【0028】
【化12】
(但し、式中R8は炭素数1〜6の直鎖、分岐または環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基を示し、繰り返し単位を示すmは、1〜50の範囲に分布し、その平均は1〜20の範囲である。)
で表されるフェノールノボラック類、ノボラック類からビスフェノール体を除いた残査物[トリフェノール体以上:以下VRと約す]、一般式(XIV)
【0029】
【化13】
(但し、式中R9は炭素数1〜6の直鎖、分岐または環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基を示し、繰り返し単位を示すmは、1〜50の範囲に分布し、その平均は1〜20の範囲である。)
で表されるフェノールアラルキル類、一般式(XV)
【0030】
【化14】
(但し、式中繰り返し単位を示すnは、1〜20の範囲に分布し、その平均は1〜5の範囲である。)
で表されるナフトールアラルキル類、一般式(XVI)
【0031】
【化15】
(但し、式中R10は炭素数1〜6の直鎖、分岐または環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基を示し、繰り返し単位を示すmは、1〜50の範囲に分布し、その平均は1〜20の範囲である。)
で表されるフェノール−ジシクロペンタジエン共重合樹脂(DPR樹脂)等のフェノール樹脂類;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、アニリン、4,4’−ジアミノフェニルメタン(MDA)、4、4’−ジアミノジフェニルエーテル、4、4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4,4’−ジアミノフェニル)プロパン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、一般式(XVII)
【0032】
【化16】
(但し、式中R11は炭素数1〜6の直鎖、分岐または環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基を示し、繰り返し単位を示すmは、1〜50の範囲に分布し、その平均は1〜20の範囲である。)
で表されるアニリンアラルキル樹脂[商品名:Anilix、三井化学(株)社製]等の脂肪族、芳香族アミン類;m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、2−(4−アミノフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、4−アミノフェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン等のアミノフェノール類;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ダイマー酸、1,3−ジカルボキシシクロヘキサン等のカルボン酸類;サリチル酸、4−ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸類等を挙げることが出来る。
【0033】
これらの活性水素を有する化合物のグリシジル化は公知の方法により行うことができ、ハロゲン化水素アクセプターの存在下、エピクロルヒドリンを反応させることが最も一般的である。なお、グリシジルエステルを製造する際には、金属触媒、特にTlNO3、Tl(OCOCF3)3等のタリウム化合物を触媒とし、カルボン酸メチルエステルとグリシドールとを反応させる方法が好ましいことも知られている。
【0034】
これらの中で、本発明の主な目的である半導体集積回路の封止材として好ましいものとしては、フェノール化合物、フェノール樹脂類から誘導されるグリシジルエーテル類であり、具体的には、上記の一般式(VII)で表されるジヒドロキシナフタレンから誘導されるエポキシ化合物、一般式(VIII)で表されるビフェノール類から得られるエポキシ樹脂、一般式(IX)で表されるフェノールノボラック樹脂から得られるエポキシ樹脂、一般式(X)で表されるフェノールアラルキル樹脂から得られるエポキシ樹脂、一般式(XI)で表されるフェノール−ジシクロペンタジエン樹脂から得られるエポキシ樹脂等である。
【0035】
本発明を構成する各成分のうち、本発明の特徴となるのは(B)硬化剤成分における置換基の導入位置を限定したことである。すなわち、置換基の存在とその置換位置による硬化性の関係を示すことにより本発明がなされている。
【0036】
本発明における(B)硬化剤は、
一般式(I)
【化17】
(但し、式中Xは、炭素数1〜7の脂肪族または芳香族アルデヒド残基、炭素数8〜14のキシリレン誘導体残基または炭素数10〜15の脂肪族ジエン残基を示し、R1は炭素数1〜6の直鎖、分岐または環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基を示し、その置換位置はOA基に対しオルソ位またはメタ位である。Aは水素原子もしくは炭素数2〜10の芳香族または脂肪族アシル基を示し、水素原子/アシル基のモル比が90/10〜0/100の範囲である。繰り返し単位を示すmは、1〜50の範囲に分布し、その平均は1〜20の範囲である。)
で表されるエステル含有化合物またはエステル含有樹脂である。
これらをさらに具体的に例示すれば、一般式(IV)に示される様な、o−、またはm−クレゾールノボラック樹脂のエステル化物、あるいはo−、またはm−クレゾールノボラックからビスフェノール体を除去した残査物のエステル化物、o−、またはm−クレゾールノボラックから単離されるビスフェノール体のエステル化物、一般式(IV)に示される様な、o−、またはm−クレゾールアラルキル樹脂のエステル化物、あるいはo−、またはm−クレゾールアラルキル樹脂からビスフェノール体を除去した残査物のエステル化物、o−、またはm−クレゾールアラルキル樹脂から単離されるビスフェノール体のエステル化物、一般式(V)に示される様な、o−、またはm−クレゾール−ジシクロペンタジエン樹脂のエステル化物、あるいはo−、またはm−クレゾール−ジシクロペンタジエン樹脂からビスフェノール体を除去した残査物のエステル化物、o−、またはm−クレゾール−ジシクロペンタジエン樹脂から単離されるビスフェノール体のエステル化物を挙げることが出来る。
これらのo−またはm−クレゾール樹脂をエステル化する方法は、公知の方法が用いられるが、具体的には以下の通りである。すなわち、上述のような水酸基をエステル化する際に用いるエステル化剤としては、有機カルボン酸無水物、有機カルボン酸ハライド、有機カルボン酸のいずれでもよい。誘導したいエステルの炭素数によるエステル化剤の特徴により適宜選択すればよい。このエステル化剤を具体的に例示すれば、無水酢酸、アセチルクロライド、アセチルブロマイド、酢酸、無水プロピオン酸、プロピオン酸クロライド、プロピオン酸ブロマイド、プロピオン酸、無水酪酸、酪酸クロライド、酪酸、無水吉草酸、吉草酸クロライド、吉草酸ブロマイド、吉草酸、ピバリン酸クロライド、ピバリン酸、フェニル酢酸、フェニル酢酸クロライド、2−フェニルプロピオン酸、3−フェニルプロピオン酸、o−トリル酢酸、m−トリル酢酸、p−トリル酢酸、クメン酸、無水安息香酸、安息香酸クロライド、安息香酸ブロマイド、安息香酸、o−メチル安息香酸クロライド、m−メチル安息香酸クロライド、p−メチル安息香酸クロライド、o−メチル安息香酸、m−メチル安息香酸、p−メチル安息香酸、2,3−ジメチル安息香酸、2,4−ジメチル安息香酸、2,5−ジメチル安息香酸、2,6−ジメチル安息香酸、3,4−ジメチル安息香酸、3,5−ジメチル安息香酸、等を挙げることができる。この中で好ましいものとしては、無水酢酸、アセチルクロライド、安息香酸無水物、安息香酸クロライドを挙げることが出来る。これらのエステル化剤は単独あるいは任意の2種類以上を併用して用いることも可能である。
【0037】
その使用量は、水酸基に対して10モル%以上で用いればよく、上限は特に限定されず、過剰に用いて充分にエステル化を進行させた場合は、過剰のエステル化剤は反応終了後除去すればよいが、現実的には反応容積効率、コスト等の観点から、水酸基に対し10倍モル以下、好ましくは5倍モル以下、さらに好ましくは3倍モル以下がよい。
【0038】
具体的な方法は、エステル化剤の種類によって異なるが、それぞれについて述べれば、有機カルボン酸無水物については、一般に用いられる方法でよい。すなわち、水酸基に対しエステル化するべき任意の量の有機カルボン酸無水物を反応させたのち、副成する有機カルボン酸、過剰の有機カルボン酸無水物を常圧蒸留、減圧蒸留、水洗、炭酸塩等の弱塩基水洗浄等任意の方法もしくはそれらの組み合わせによって除去する事により、目的とするエステル化合物を得るものである。部分エステル化を行う際は、水酸基に対して任意の量、すなわち、本発明の樹脂組成物においては10モル%以上がエステル化されたエステル化物を用いるので、10モル%以上の有機カルボン酸無水物を用い、完全にエステル化する際には、水酸基に対して等モル以上、溶剤を兼ねればその上限は特に制限されるものではないが、経済効率、反応の容積効率を考慮すれば10倍モル%以下で用いればよい。なお、この使用量は後述の有機カルボン酸を用いた反応の際にも同様である。
【0039】
一般にエステル化反応においては、ピリジン、ピペリジン、トリエチルアミン等の反応に対しては不活性な有機塩基の存在下において行うことが多いが、本発明のエポキシ樹脂組成物を半導体集積回路の封止材等の電気・電子分野に用いる場合、これらの含窒素有機塩基が残存することを避けなければならない。このため、最終的には水洗行程を導入する事が望ましい。しかしながら、これら有機塩基を用いなくとも充分反応は進行するので、有機塩基を用いないことが最も望ましい。
【0040】
反応温度は60℃〜200℃の範囲、望ましくは80℃〜180℃の範囲、特に望ましくは100℃〜160℃の範囲が望ましい。反応時間は反応物の種類や反応温度に大きく左右されるが、およそ1時間〜25時間の範囲であり、現実的には高速液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィー等でエステル化剤の消失や水酸基の消失などを追跡しつつ終点を決定することが望ましい。
【0041】
反応における溶媒は用いても用いなくてもよい。原料とする水酸基を有する物質が反応温度に於いて充分溶融し、且つエステル化剤が液体である場合、また反応温度において溶融、あるいは樹脂に溶解し反応に支障がない場合には無溶媒で反応を行えばよい。
【0042】
溶媒を必要とするならば、反応に不活性な溶媒であれば全て使用することが出来る。それらを例示すれば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ジフェニルエーテル等の芳香族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、等を単独で、あるいは任意の組み合わせで用いることが出来る。
【0043】
反応は常圧(大気圧)、加圧(オートクレーブ中)、減圧のいずれでもよく、また反応系の雰囲気は空気中、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス中のいずれでもよいが、好ましくは窒素雰囲気下がよい。
【0044】
次に、エステル化剤として有機カルボン酸ハライドを用いる場合における反応について説明する。この場合も一般に用いられる手法を用いることが出来る。すなわち、水酸基に対してエステル化するべき任意の量の有機カルボン酸ハライドを反応させればよい。この場合、副生するハロゲン化水素は、ピリジン、ピペラジン、トリエチルアミン等の反応に不活性な塩基を必要量存在させて系内においてトラップする方法と、ガスとして反応中に順次速やかに系外に放出し、反応系外に設置された水またはアルカリトラップを用いて捕捉する場合が考えられるが、先に示す理由により、含窒素化合物、イオン性化合物の混入を避けるためハロゲン化水素ガスは反応中速やかに系外に放出する方法が好ましい。この時、やはり反応に不活性なガスの気流下において反応を行うとより好ましい。
【0045】
有機カルボン酸ハライドの使用量は、部分エステル化を行う際は、水酸基に対して任意の量、すなわち本発明の樹脂組成物においては10モル%以上がエステル化されたエステル化物を用いるので、10モル%以上の有機カルボン酸ハライドを用い、完全にエステル化する際には水酸基に対して等モルもしくは小過剰を用いればよく、大過剰用いることは特に制限されるものではないが、経済効率、反応の容積効率、さらに反応後の処理工程の煩雑さを考慮すれば水酸基に対して10倍モル以下、好ましくは5倍モル以下、さらに好ましくは3倍モル以下の範囲で用いればよい。反応温度、反応における溶媒の使用、反応の形態に関しては先の有機カルボン酸無水物の場合に準じればよい。
【0046】
また、エステル化剤として有機カルボン酸を用いる場合は、ほぼ有機カルボン酸無水物に準じればよいが、反応に際して酸触媒を必要とする。それを例示すれば、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸等の鉱酸類;p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ジメチルスルホン酸、ジエチルスルホン酸等の有機スルホン酸類;トリフルオロメタンスルホン酸に代表される超強酸;アルカンスルホン酸型に代表される酸性イオン交換樹脂;パーフルオロアルカンスルホン酸型に代表される超強酸型イオン交換樹脂等である。
【0047】
その使用量は、原料の重量に対して超強酸の場合が0.00001〜5重量%、好ましくは0.0001〜1重量%、より好ましくは0.001〜0.1重量%の範囲、イオン交換樹脂類の場合が1〜100重量%、好ましくは10〜50重量%の範囲、その他の場合は0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲である。この範囲を下まわると反応速度が低下し、現実的な反応時間では完結しない。またこの範囲より大きくなると、副反応が無視できなくなり、あるいは触媒の除去の行程の煩雑さ等を含めてコストの増大に繋がる。
【0048】
以上、3種類のエステル化剤についてその反応を説明してきたが、いずれの場合もより精製度の高いエステル化物を得る必要のある場合には、反応終了後、水洗行程を導入すればよい。その場合はトルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の水洗可能な溶媒を用いて、洗浄廃水に酸性成分、イオン性不純物が混入しなくなるまで洗浄すればよい。
また、本発明においては、そのエステル化率は10モル%〜100モル%の範囲であるが、好ましくは50モル%〜100モル%、さらに好ましくは80モル%〜100モル%の範囲である。
【0049】
本発明において、更に必須となるものは(C)硬化促進剤である。従来のエポキシ−フェノール硬化に用いられてきた代表的な硬化促進剤、例えばトリフェニルホスフィンの様なホスフィン類、2−メチルイミダゾールの様なイミダゾール類などは、エポキシ−エステル付加反応においては触媒硬化を有さないことは、既に本発明者らが明らかにしている。
【0050】
(特開2000−327751等)
本発明においては、硬化促進剤として一般式(II)または(III)で表されるフォスファゼン化合物を必須として全硬化促進剤中に30〜100重量%を含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物に関するものである。
【0051】
【化18】
一般式(II)中、R2は水素原子、炭素数1〜10の直鎖、分岐、環状アルキル基、炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基を示し、全て同一であっても異なっていてもよい。また、Y-で示されるアニオンは、ハロゲンアニオン、ヒドロキシアニオン、炭素数1〜8のアルコキシアニオン、6〜18のフェノキシアニオン、炭素数1〜6の脂肪族または芳香族カルボン酸から導かれる カルボキシアニオン、ナフトキシアニオンを示す。
一般式(III)中、R3は水素原子、炭素数1〜10の直鎖、分岐、環状アルキル基、炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基を示し、全て同一であっても異なっていてもよい。
上記一般式(II)で表されるフォスファゼン化合物は、昇氏ら出願の特開平10−77289において、詳細に説明されている。また、上記一般式(III)のフォスファゼン化合物もまた、昇氏ら出願の特開2000−355595において、詳細に説明されている。
【0052】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との配合比は、エポキシ基1当量に対して(B)硬化剤の(水酸基+エステル基)が0.5〜1.5当量であり、好ましくは0.7〜1.3当量である。当量比は、硬化物の最適物性が得られる当量比を調整して用いることが好ましい。本発明のエポキシ樹脂組成物においては、エポキシ樹脂および硬化剤はそれぞれ一種類づつ単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0053】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、必須の成分として用いる硬化触媒の使用量は、全エポキシ樹脂組成物(樹脂成分:エポキシ樹脂と硬化剤の合計)に対して、好ましくは重量で0.001〜25%の範囲であり、さらに好ましくは0.01〜15%、最も好ましくは0.1〜5%の範囲である。
【0054】
硬化触媒は先の一般式(II)のフォスファゼン化合物を必須とするが、本発明のエポキ
シ樹脂組成物においては、それ以外の、一般に用いられる公知の硬化促進剤、例えば、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、トリエチルアミン等の3級アミン類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザビシクロ類、4−N,N−ジメチルピリジン等のピリジン類等を、本発明の特徴が失われない範囲で用いても良く、その使用量は全硬化触媒中に、フォスファゼン触媒が30〜100重量部の範囲である。
【0055】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、必要に応じて、有機および/または無機充填材やその他の添加剤を用いることができる。特に半導体集積回路の封止材に用いるときには、その機械的特性の向上や全体のコストダウンのために有機および/または無機充填材を、また光による誤動作を防ぐためにカーボンブラック等の着色剤を、更には離型剤、カップリング剤、難燃剤等を用いることが望ましい。
【0056】
有機および/または無機充填材の使用量としては、(A+B)100重量部に対し、100重量部以上、1900重量部以下の範囲であり、好ましくは250重量部以上、より好ましくは550重量部以上である。
【0057】
用いられる有機および/または無機充填材としては、シリカ、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、タルク、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、マイカ、クレー、チタンホワイト等の粉体、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維等の繊維体等が挙げられる。これらの中で封止材用途において好ましいものは、結晶性シリカおよび/または溶融シリカであり、さらにその樹脂組成物の成型時の流動性を考慮すると、その形状は球形または球形と不定形の混合物が望ましい。
【0058】
さらに、機械的強度や耐熱性の面を考慮し、各種添加剤を配合することが好ましい。例えば、樹脂と無機充填材との接着性向上のためにはカップリング剤を用いることが望ましく、かかるカップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系、またはジルコアルミネート系等を挙げることが出来る。なかでも好ましいものとしては、シランカップリング剤であり、特にエポキシ基と反応する官能基を持つシランカップリング剤が最も好ましい。
【0059】
そのようなカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノメチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アニリノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることが出来る。これらを単独で、あるいは2種類以上組み合わせて使用することが出来る。これらのカップリング剤は、予め無機充填材の表面に吸着あるいは、反応により固定化されていることが望ましい。
【0060】
本発明のエポキシ樹脂硬化物とは、本発明のエポキシ樹脂組成物を熱硬化させて得られる硬化物である。
【0061】
本発明の半導体装置とは、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて半導体集積回路を封止して得られるものである。半導体装置を作製する方法としては、低圧トランスファー成型が最も一般的であるが、その他の方法、例えば、インジェクション成型、圧縮成型、注型成型等の方法も可能である。また、溶剤を用いるような特殊な手法も可能である。本発明の半導体装置は、従来提案されていた未置換のエステル化フェノール樹脂硬化剤を用いた場合に比べ、硬化が速く、特に初期硬化性に優れるという特徴を有する。
【0062】
【実施例】
次に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
【0063】
合成例1
温度計、滴下ロート、還流冷却器および攪拌装置を備えたガラス製反応容器に、o−クレゾール:487g(4.5mol)、シュウ酸:2.4g(0.5wt%)を装入し、70℃において攪拌を行いながら35%ホルマリン(ホルムアルデヒド水溶液):250g(3.0mol)を1時間で滴下した。若干の発熱が認められたが、70℃をキープし滴下終了後、更に5時間、攪拌、反応を行った。その後、昇温し、90℃で2時間熟成して反応を完結した。続けて水および過剰のo−クレゾールを最高170℃、2.7kPaの条件で減圧留去し、残査として457gのo−クレゾールノボラック樹脂を得た。
このものの水酸基当量は、127.2g/eqであった。
GPCによる分子量(標準ポリスチレン換算)は、Mn=514、Mw=691であった。
このo−クレゾールノボラック樹脂:254.4g(2.0mol=水酸基)を温度計、滴下ロート、還流冷却器、窒素導入管、攪拌装置、減圧装置(ハンディアスピレーター)およびアルカリトラップを備えたガラス製反応容器に装入し、120℃へ昇温した。120℃〜125℃を保ちながら、塩化ベンゾイル:272.7g(1.94mol)を3時間で滴下した。滴下終了後、1時間で160℃まで昇温し、同温度において12時間、熟成を行った。
尚、滴下中および熟成中は還流冷却器の頭頂部より微減圧し、系内を70〜100kPa程度に保つことで、発生する塩化水素ガスを速やかに系外へ除去した。系外に除去された塩化水素ガスは、還流冷却器頭頂部と減圧装置との間に設けられたアルカリトラップ中によりほぼ完全に中和された。
熟成終了後、ガスクロマトグラフにより樹脂中に塩化ベンゾイルが完全に消失していることを確認し、反応終了とした。
その後、減圧を解除し、窒素導入管より毎分5ml/minの流速で窒素を導入しながら120℃まで冷却した。
同温度において攪拌を続けながら、反応器壁に付着残存してる塩化ベンゾイルを完全に消失させるため、イソプロピルアルコール:50gを30分で滴下しながら反応させた。
常圧(大気圧)において留出するイソプロピルアルコールはそのまま系外に留出させながら30分間攪拌を続けた後、再び160℃まで昇温し、最後は最高70kPaまで減圧し、揮発分を留去した後、SUS製のバットに排出して、ほぼ完全にベンゾイル化樹脂432gを得た。(収率95%)
【0064】
合成例2
合成例1と同様の反応装置に、m−クレゾール:487g(4.5mol)、シュウ酸:2.4g(0.5wt%)を装入し、以下同様にして457gのm−クレゾールノボラック樹脂を得た。
このものの水酸基当量は、126.3g/eqであった。
GPCによる分子量(標準ポリスチレン換算)は、Mn=739、Mw=1304であった。
このm−クレゾールノボラック樹脂:252.6g(2.0mol=水酸基)を合成例1と同様に塩化ベンゾイル:272.7g(1.94mol)と反応させ、ベンゾイル化樹脂427を得た。(収率94%)
【0065】
合成例3
合成例1と同様にしてo−クレゾールノボラック樹脂を得た後、塩化ベンゾイル:272.7g(1.94mol)に変えて塩化ベンゾイル:196.8g(1.4mol)を用いた以外は同様にして、ノボラック樹脂の水酸基がおよそ70%ベンゾイル化された樹脂:376gを得た。(収率94%)
このものの水酸基当量は、630.0g/eqであり、68.5%の水酸基がベンゾイル化されている計算であった。
【0066】
合成例4
合成例1と同様にしてo−クレゾールノボラック樹脂を得た後、塩化ベンゾイル:272.7g(1.94mol)に変えて塩化ベンゾイル:140.6g(1.0mol)を用いた以外は同様にして、ノボラック樹脂の水酸基がおよそ50%ベンゾイル化された樹脂:330gを得た。(収率92%)
このものの水酸基当量は、352.0g/eqであり、49.3%の水酸基がベンゾイル化されている計算であった。
【0067】
合成例5
合成例1と同様にしてo−クレゾールノボラック樹脂を得た後、このo−クレゾールノボラック樹脂:254.4g(2.0mol=水酸基)を粗く砕き、トルエン500gとともに温度計、滴下ロート、還流冷却器、窒素導入管、攪拌装置、およびアルカリトラップを備えたガラス製反応容器に装入し、スラリー状態で分散させた後、30℃〜35℃において塩化アセチル:152.3g(1.94mol)を2時間で滴下した。途中、反応の進行と共に塩化水素ガスが流出し、徐々に樹脂がトルエンに溶解して均一な溶液となった。
反応とともに生成する塩化水素ガスは、系外に導かれ、アルカリトラップによりほぼ完全に中和された。
滴下終了後、同温度により3時間熟成した後、ガスクロマトグラフィーによって塩化アセチルが完全に消失していることを確認し、反応終了とした。
その後、イソプロピルアルコール:50gを系内に装入し、続けて窒素導入管より窒素導入管より毎分5ml/minの流速で窒素を導入しながら、トルエンおよびイソプロピルアルコールを系外に流出させながら徐々に120℃まで昇温した。留出がほぼ止まった後徐々に昇温および減圧を行い、最終的に160℃/70kPamp条件で、揮発分を留去した後、SUS製のバットに排出して、ほぼ完全にアセチル化された樹脂315gを得た。(収率94%)
【0068】
合成例6
合成例1と同様の反応装置に、p−クレゾール:487g(4.5mol)、シュウ酸:2.4g(0.5wt%)を装入し、以下同様にして405gのp−クレゾールノボラック樹脂を得た。
このものの水酸基当量は、125.7g/eqであった。
GPCによる分子量(標準ポリスチレン換算)は、Mn=397、Mw=519であった。
このp−クレゾールノボラック樹脂:251.4g(2.0mol=水酸基)を合成例1と同様に塩化ベンゾイル:272.7g(1.94mol)と反応させ、ベンゾイル化樹脂421gを得た。(収率93%)
【0069】
合成例7
合成例1と同様の反応装置に、フェノール:423g(4.5mol)、シュウ酸:2.4g(0.5wt%)を装入し、以下同様にして353gのフェノールノボラック樹脂を得た。
このものの水酸基当量は、109.7g/eqであった。
GPCによる分子量(標準ポリスチレン換算)は、Mn=688、Mw=1358であった。
このフェノールノボラック樹脂:219.4g(2.0mol=水酸基)を合成例1と同様に塩化ベンゾイル:272.7g(1.94mol)と反応させ、ベンゾイル化樹脂408を得た。(収率97%)
【0070】
実施例1
エポキシ樹脂として、一般式(VIII)におけるR4=メチルであるビフェノール型エポキシ
樹脂[商品名:YX4000H、油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量193g/eq]を0.1グラム当量(19.3g)、硬化剤として合成例1のo−クレゾールノボラック樹脂のベンゾイル化物[官能基当量228g/eq:計算値]0.1グラム当量(22.8g)に、硬化促進剤として、前記一般式(II)におけるR2が全てメチル基、Y-が
ヒドロキシアニオンであるフォスファゼン化合物(以下、PZN)0.842g(2%)、予め100℃/5分間溶融混練したものを、80℃において充分溶融混練し、均一な樹脂混合物とした。このエポキシ樹脂組成物のゲルタイムを測定したところ、175℃において48秒であった。
また、キュラストメーター(日合商事社製 CURELASTOMETER V型にて測定。金型:P−200(樹脂用)、温度:175℃、振動数:100サイクル/分、振幅角:±1°、サンプル量:4.5g)によりこの樹脂組成物の硬化挙動を測定した。
測定温度は175℃とした。
10%硬化までの時間をt'c(10)、90%硬化までの時間をt'c(90)で表し、結果を表−1に示す。
【0071】
実施例2〜5
実施例1における硬化剤を、それぞれ合成例2〜5に変えた以外は同様にして、エポキシ樹脂組成物を得、ゲルタイムおよびキュラストメーターによる硬化挙動を測定した。結果を表−1に示す。
【0072】
実施例6〜10
実施例1〜4における硬化促進剤を、前記一般式(III)におけるR3が、全てメチル基で
あるフォスファゼン化合物(以下PZO)2%に変えた以外は同様にして、エポキシ樹脂組成物を得、ゲルタイムおよびキュラストメーターによる硬化挙動を測定した。結果を表−1に示す。
【0073】
実施例11〜12
実施例1におけるエポキシ樹脂を、o−クレゾールノボラックエポキシ樹脂[商品名:EOCN102S、日本化薬(株)社製、エポキシ当量210g/eq]およびフェノールアラ
ルキル樹脂型エポキシ樹脂[商品名:E−XLC−3L、三井化学(株)社製、エポキシ当量
238g/eq]に変えた以外は同様にして、エポキシ樹脂組成物を得、ゲルタイムおよびキュラストメーターによる硬化挙動を測定した。結果を表−1に示す。
【0074】
比較例1〜2
実施例1における硬化剤を、合成例6のp−クレゾールノボラック樹脂のベンゾイル化物および、合成例7のフェノールノボラック樹脂のベンゾイル化物に変えた以外は同様にして、エポキシ樹脂組成物を得、ゲルタイムおよびキュラストメーターによる硬化挙動を測定した。結果を表−1に示す。
【0075】
比較例3〜4
比較例2におけるエポキシ樹脂を、EOCN−102SおよびE−XLCに変えた以外は同様にして、エポキシ樹脂組成物を得、ゲルタイムおよびキュラストメーターによる硬化挙動を測定した。結果を表−1に示す。
【0076】
実施例13
エポキシ樹脂としてYX4000H、硬化剤として合成例1のo−クレゾールノボラック樹脂のベンゾイル化物、硬化促進剤としてPZNを2重量部用い、表−2に示す割合で充填材およびその他の添加剤を配合し、ロールによる加熱混練を行って封止材用成形材料を得た。
尚、シリカゲルは龍森(株)社製、商品名YXK−35Rを用いた。
こうして得られた成形材料を用い、175℃/10min、150kg/cm2の条件下で硬化物を得た後、175℃/8Hr(窒素雰囲気)の条件でアフターキュアーをかけて、十分に硬化を進行させた。この硬化物を用いて各物性を測定した。結果を表−2に示す。
尚、各種物性等の試験方法は以下の通りである。・Tg(ガラス転移温度):TMA針進入法[島津 TMA−DRW DT−30]により測定。・曲げ強度、弾性率:JIS K−6911による。・煮沸吸水率:100℃の沸騰水中で2時間煮沸後の重量増加を測定。
【0077】
比較例5
実施例13における硬化剤成分を、合成例7のフェノールノボラック樹脂のベンゾイル化物に変えた以外は同様にして、封止材用成型材料を得た後、同様にして各種硬化物物性を測定した。
結果を表−2に示す。
【0078】
【表1】
以上、実施例等により詳細に説明してきたが、本発明のオルソ位またはメタ位に置換基を有するフェノール樹脂のエステル化樹脂は、フォスファゼン型触媒を用いてエポキシ樹脂と硬化反応させる際、無置換フェノール樹脂のエステル化物と比較してゲルタイム、キュラストメーターで測定することが出来る初期硬化の時間が短縮される。例えば、実施例1と比較例2を比較すると、オルソクレゾールノボラック樹脂のベンゾイル化物を硬化剤として用いた実施例1は、フェノールノボラック樹脂のベンゾイル化物を硬化剤に用いた比較例2よりゲルタイムで68.6%まで短縮されている。(実施例1=48秒、比較例2=70秒)
また、キュラストメーターによる初期硬化(t‘c(10))を比較すれば、71.3%まで短縮されている。(実施例1=0.72min、比較例2=1.01min)。
また、パラ位置換フェノール樹脂のエステル化物は、比較例1に示す様に、硬化性は非常に悪化している。
この様に、置換基の位置により硬化性に大きな差が特徴的に出ることを見出したのは本発明が始めてである。
また、実施例13に示すように、本発明の置換基を有するフェノール樹脂のエステル化物は、硬化後の物性においても、何ら遜色無く、充分に硬化し物性を発揮する。
このため、例えばIC封止材等に用いる際には、硬化サイクルを速くすることが可能であり生産性の面で工業的に寄与する効果は大きなものがある。
【0079】
【発明の効果】
本発明により与えられるエポキシ樹脂組成物は、エステル基による硬化でありながら、硬化性に優れるものであり、従来の技術により得られたエポキシ樹脂組成物が使用されている産業分野において、代替して使用することが可能であり、特に半導体の封止材として用いることにより、生産性に優れるエポキシ樹脂組成物を提供することができる。
Claims (11)
- (A)2官能以上のエポキシ化合物または2官能以上のエポキシ樹脂、
(B)硬化剤、および、
(C)硬化促進剤を含有するエポキシ樹脂組成物において、
前記(B)硬化剤が、
一般式(I)で表されるエステル含有化合物またはエステル含有樹脂であり、
前記(C)硬化促進剤が、
一般式(II)または(III)で表されるフォスファゼン化合物を必須として全硬化促進剤中に30〜100重量%
を含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物
(一般式(I)中、Xは、炭素数1〜7の脂肪族または芳香族アルデヒド残基、炭素数8〜14のキシリレン誘導体残基または炭素数10〜15の脂肪族ジエン残基を示し、R1は炭素数1〜6の直鎖、分岐または環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基を示し、その置換位置はOA基に対しオルソ位またはメタ位である。Aは水素原子もしくは炭素数2〜10の芳香族または脂肪族アシル基を示し、水素原子/アシル基のモル比が90/10〜0/100の範囲である。繰り返し単位を示すmは、1〜50の範囲に分布し、その平均は1〜20の範囲である。
一般式(II)中、R2は水素原子、炭素数1〜10の直鎖、分岐、環状アルキル基、炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基を示し、全て同一であっても異なっていてもよい。また、Y-で示されるアニオンは、ハロゲンアニオン、ヒドロキシアニオン、炭素数1〜8のアルコキシアニオン、6〜18のフェノキシアニオン、炭素数1〜6の脂肪族または芳香族カルボン酸から導かれる カルボキシアニオン、ナフトキシアニオンを示す。
一般式(III)中、R3は水素原子、炭素数1〜10の直鎖、分岐、環状アルキル基、炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基を示し、全て同一であっても異なっていてもよい。)。
- (B)硬化剤が、
一般式(I)において、Rがメチル基である、o−クレゾール、または、m−クレゾールから誘導されるエステル含有化合物、または、エステル含有樹脂であることを特徴とする、
請求項1に記載したエポキシ樹脂組成物。 - 一般式(I)で表されるエステル含有化合物またはエステル含有樹脂のアシル基Aが、
アセチル基またはベンゾイル基であることを特徴とする、
請求項1乃至5の何れかに記載したエポキシ樹脂組成物。 - 一般式(I)で表されるエステル含有化合物またはエステル含有樹脂のアシル基Aが、
アセチル基およびベンゾイル基であり、
アセチル基/ベンゾイル基のモル比が99/1〜1/99
であることを特徴とする、
請求項1乃至5の何れかに記載したエポキシ樹脂組成物。 - (A)エポキシ樹脂が、
一般式(VII)で表されるジヒドロキシナフタレンから得られるエポキシ樹脂、
一般式(VIII)で表されるビフェノール類から得られるエポキシ樹脂、
一般式(IX)で表されるノボラック型樹脂から得られるエポキシ樹脂、
一般式(X)から得られるフェノールアラルキル樹脂から得られるエポキシ樹脂、および、
一般式(XI)で表されるフェノール−ジシクロペンタジエン樹脂から得られるエポキシ樹脂
からなる群から選択された少なくとも一つのエポキシ樹脂を、
エポキシ樹脂成分中に20重量%〜100重量%含むことを特徴とする、
請求項1乃至7の何れかに記載したエポキシ樹脂組成物。
(一般式(VII)中、2,3−エポキシプロピル基の置換位置は1,5位、1,6位、1,7位、2,6位、または2,7位である。
一般式(VIII)中、R4は水素原子またはメチル基を表し、全て同一でも異なっていてもよい。
一般式(IX)中、R5は水素原子またはメチル基を示し、繰り返し単位を示すmは、1〜50の範囲に分布し、その平均は1〜20の範囲である。
一般式(X)中、R6は水素原子またはメチル基を示し、繰り返し単位を示すmは、1〜50の範囲に分布し、その平均は1〜20の範囲である。
一般式(XI)中、R7は水素原子またはメチル基を示し、繰り返し単位を示すmは、1〜50の範囲に分布し、その平均は1〜20の範囲である。)。
- 請求項1乃至8の何れかに記載したエポキシ樹脂組成物に対し、(D)有機および/または無機充填材を、(A+B)100重量部に対し、100〜1900重量部を添加して得られるエポキシ樹脂組成物。
- 請求項1乃至9の何れかに記載したエポキシ樹脂組成物を熱硬化させて得られるエポキシ樹脂硬化物。
- 請求項1乃至9の何れかに記載したエポキシ樹脂組成物を用いて半導体集積回路を封止して得られる半導体装置。
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