JP5754731B2 - エポキシ樹脂、エポキシ樹脂の製造方法、及びその使用 - Google Patents

エポキシ樹脂、エポキシ樹脂の製造方法、及びその使用 Download PDF

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Description

本発明は、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂の製造方法、及びその使用に関する。
エポキシ樹脂組成物は、一般に作業性が良好であり、その硬化物は電気特性、耐熱性、耐湿性、接着性等が優れているので、電気・電子部品、構造用材料、接着剤、塗料等の分野で幅広く用いられている。
しかし近年、電気・電子部品等の用途では、エポキシ樹脂組成物の諸特性に対してより一層の向上が求められている。例えば、より厳しい環境下で使用される、車載用半導体に係る電子部品、高電圧を用いる表示装置に用いられる電子部品、大型電池等に用いられる場合には、高いガラス転移温度と高い難燃性とを兼ね備えた硬化物をもたらし得るエポキシ樹脂組成物が求められている。その一方で、環境負荷の軽減の面から、高い難燃性は、ハロゲンフリーでありつつ、発揮されることが望まれている。
特許文献1、2には、ビフェニル骨格を有するフェノールノボラック樹脂及びこれをエポキシ化することで得られるフェノールノボラック型エポキシ樹脂が提案されている。特許文献3には、前記のフェノールノボラック型エポキシ樹脂を用いることでハロゲンフリーでの高い難燃性が得られることが記載されている。しかしながら、前記のフェノールノボラック型エポキシ樹脂を用いた場合、高いガラス転移温度を有する硬化物を得ることはできなかった。
特許文献4には、トリフェニルメタンノボラック型エポキシ樹脂を用いることにより、高いガラス転移温度を有する硬化物を得ることができることが記載されている。しかしながら、特許文献5から分かるように、トリフェニルメタンノボラック型エポキシ樹脂を用いて高い難燃性の硬化物を得るためには、樹脂自身を臭素化する必要があった。
特許文献6には、ビフェニル骨格を有するフェノール多価フェノールノボラック樹脂が記載され、これをエポキシ化すればエポキシ樹脂を得ることができることが記載されている。しかし、得られるエポキシ樹脂がどのような特性を有するものであるかは、詳細な記載はなかった。
特開平8−143648号公報 特開平10−251362号公報 特開平11−140277号公報 特開昭63−264622号公報 特開平1−197519号公報 国際公開WO2007/007827号公報
本発明の目的は、低粘性や速硬化性を兼ね備えているので作業性が良好であり、また、特にハロゲンフリーでありながら、高いガラス転移温度と高い難燃性とを兼ね備えた硬化物をもたらすことができるエポキシ樹脂を提供することである。また、本発明の目的は、前記エポキシ樹脂の製造方法、前記エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物、前記エポキシ樹脂組成物からなる半導体封止材、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物、及び前記硬化物を含む半導体装置を提供することである。
本発明は、以下の各項に関する。
〔1〕一般式(1):
Figure 0005754731

(式中、
R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、置換若しくは非置換の炭素原子数1〜10の直鎖若しくは分岐状アルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、又は置換若しくは非置換のアラルキル基を表すが、同一環上で隣接して存在する、2個のR1、2個のR2、又は2個のR3は、互いに結合して、縮合環を形成していてもよく、
、p及びpは、それぞれ独立に、1又は2の整数であり、p、p及びpの全存在に対して、整数1であるp、p及びpの存在が合計で10〜80%、整数2であるp、p及びpの存在が合計で90〜20%の割合であり、
及びmは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、
は、それぞれ独立に、0〜3の整数であり、
nは、0〜15の整数であり、
Gは、置換又は非置換のグリシジル基を表す)
で表されるエポキシ樹脂に関する。
なお、「それぞれに独立に」とは、式中に同じ記号が複数あった場合も含めて、同一でも異なってもよいことを意味する。したがって同一記号でも別々の選択肢であることが許容され、例えば、一般式(I)において、単数又は複数のp、p及びpは、1又は2の整数であり、同一でも異なっていてもよい。ただし、p、p及びpの全存在に対して、整数1であるp、p及びpの存在は合計で10〜80%、整数2であるp、p及びpの存在は合計で90〜20%の割合であることとする。
〔2〕150℃における溶融粘度が20〜1000mPa・sである、〔1〕のエポキシ樹脂。
〔3〕一般式(2):
Figure 0005754731

(式中、Xは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルコキシル基、又は水酸基を表す)
で表されるビフェニル化合物と、2価フェノール類及び1価フェノール類とを反応させて、一般式(3):
Figure 0005754731

(式中、R1、R2、R3、p、p、p、m、m、m及びnは、〔1〕の一般式(1)と同義である)
で表されるフェノールノボラック樹脂を得て、次いで、前記フェノールノボラック樹脂とエピハロヒドリン類とを、アルカリ金属水酸化物の存在下で反応させることを含む、〔1〕又は〔2〕のエポキシ樹脂の製造方法。
〔4〕〔1〕又は〔2〕のエポキシ樹脂と硬化剤とを含む、エポキシ樹脂組成物。
〔5〕得られる硬化物が、ガラス転移温度が135℃以上であり、かつUL94規格に基づく難燃性評価がV−0である、〔4〕のエポキシ樹脂組成物。
〔6〕さらに、硬化速度(tc(80))が、3.3分以下である、〔5〕のエポキシ樹脂組成物。
〔7〕〔4〕〜〔6〕のいずれかのエポキシ樹脂組成物からなる半導体封止材。
〔8〕〔4〕〜〔6〕のいずれかのエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
〔9〕ガラス転移温度が135℃以上であり、かつUL94規格に基づく難燃性評価がV−0である、〔8〕の硬化物。
〔10〕さらに、UL94規格に基づく難燃性評価において、残炎時間が35秒以下である、〔9〕の硬化物。
〔11〕〔8〕〜〔10〕のいずれかの硬化物を含む半導体装置。
本発明によって、低粘性や速硬化性を兼ね備えているので作業性が良好であり、また、ハロゲンフリーでありながら、高いガラス転移温度と高い難燃性とを兼ね備えている硬化物をもたらすことができるエポキシ樹脂が提供される。また、前記エポキシ樹脂の製造方法、前記エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物、前記エポキシ樹脂組成物からなる半導体封止材、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物、及び前記硬化物を含む半導体装置も提供される。本発明のエポキシ樹脂によれば、上記のような特性に加えて、良好な耐熱性や機械特性を有する硬化物も提供することができ、極めて厳しい環境下でも好適に用いることが可能である。
図1−1は、合成例1で得られたフェノールノボラック樹脂のGPCチャートである。 図1−2は、合成例2で得られたフェノールノボラック樹脂のGPCチャートである。 図1−3は、合成例3で得られたフェノールノボラック樹脂のGPCチャートである。 図1−4は、合成例4で得られたフェノールノボラック樹脂のGPCチャートである。 図1−5は、合成例5で得られたフェノールノボラック樹脂のGPCチャートである。 図1−6は、合成例6で得られたフェノールノボラック樹脂のGPCチャートである。 図2−1は、実施例1で得られたエポキシ樹脂のGPCチャートである。 図2−2は、実施例2で得られたエポキシ樹脂のGPCチャートである。 図2−3は、実施例3で得られたエポキシ樹脂のGPCチャートである。 図2−4は、実施例4で得られたエポキシ樹脂のGPCチャートである。 図2−5は、比較例1で得られたエポキシ樹脂のGPCチャートである。 図2−6は、比較例2で得られたエポキシ樹脂のGPCチャートである。
本発明は、前記一般式(1)で示されるエポキシ樹脂である。
本発明のエポキシ樹脂は、特定の割合の1価フェノール類と2価フェノール類とを、ビフェニリレン類によって架橋した化学構造を有する。このエポキシ樹脂の1価フェノール類の割合と2価フェノール類との割合は、一般式(1)において、p、p及びpの全存在に対する、整数1と整数2であるp、p及びpの存在の割合で特定される。すなわち、本発明のエポキシ樹脂は、一般式(1)のp、p及びpの全存在(導入された全フェノール類)に対して、整数1であるp、p及びpの存在(1価フェノール類)が合計で10〜80%、整数2であるp、p及びpの存在(2価のフェノール類)が合計で90〜20%の割合で導入された化学構造を有する。
本発明のエポキシ樹脂を用いることにより、ハロゲンフリーでありながら、ガラス転移温度が135℃以上であり、かつUL94規格に基づく難燃性評価がV−0の硬化物を容易に得ることができる。特に、燃焼性評価の残炎時間については、50秒以下とすることができ、より好ましい残炎時間35秒以下をも容易に達成できる。すなわち、整数1であるp、p及びpの存在が合計で10%未満(すなわち1価フェノール類の割合が10%未満)では、それを用いた硬化物の難燃性が劣るために、UL94規格に基づく難燃性評価がV−0を得ることが難しくなり、また、整数1であるp、p及びpの存在が合計で80%超(すなわち1価フェノールの割合が80%超)では、それを用いた硬化物の耐熱性が劣るために、ガラス転移温度を135℃以上にすることが難しくなる。したがって、ガラス転移温度が135℃以上であり、かつUL94規格に基づく難燃性評価がV−0の硬化物を容易に得ることはできない。
なお、難燃性に優れ、高いガラス転移温度を有し、耐熱性に一層優れた硬化物を得る点から、一般式(1)において、好ましくは、整数1であるp、p及びpの存在は合計で15〜80%、整数2であるp、p及びpの存在は合計で85〜20%の割合であり、より好ましくは、整数1であるp、p及びpの存在は合計で25〜80%、整数2であるp、p及びpの存在は合計で75〜20%の割合であり、さらに好ましくは、整数1であるp、p及びpの存在は合計で25〜75%、整数2であるp、p及びpの存在は合計で75〜25%の割合である。
一般式(1)において、m、m、mは、0又は1であることが好ましく、R1、R2、R3は、炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐状のアルキル基であることが好ましく、より好ましくはメチルである。ここで、同一の環上に存在するpとmの合計は、5以下であり、pとmの合計は、4以下であり、pとmの合計は、5以下である。
特に、一般式(1)における、あるベンゼン環上のp、p及びpが整数1の場合、当該ベンゼン環のm、m及びmは、それぞれ、0又は1であることが好ましい。m、m又はmが1の場合、R1、R2、R3は、炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐状のアルキル基であることが好ましく、より好ましくはメチルである。炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐状のアルキル基は、水酸基に対してメタ位に存在していることがより好ましい。また、一般式(1)における、あるベンゼン環上のp、p及びpが整数2の場合、当該ベンゼン環上のm、m、mは、0であることが好ましい。
一般式(1)におけるGは、置換又は非置換のグリシジル基を表す。グリシジル基は、例えば、炭素原子数1〜4の炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐状のアルキル基(例えば、メチル基)で置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
本発明のエポキシ樹脂は、150℃における溶融粘度が5〜2000mPa・sであることができるため、流れ性、浸透性、含浸性等が優れ、封止材や接着剤等に好適に用いることができる。150℃における溶融粘度は、好ましくは20〜1000mPa・s、より好ましくは20〜500mPa・sである。本願明細書において、溶融粘度は、ICI溶融粘度計を用いて、150℃で測定した値である。
本発明のエポキシ樹脂は、硬化剤と組み合わせてエポキシ樹脂組成物とした場合、速い硬化速度で硬化物を得ることができる。例えば、硬化速度(tc(80))を3.5分未満にすれば、封止材料等の用途に極めて好適である。このような硬化速度は、例えば、硬化剤として、ビフェニル型ノボラック樹脂を使用することにより容易に得ることができる。硬化速度(tc(80))は、好ましくは3.3分以下である。本願明細書において、硬化速度(tc(80))は、キュラトメーターを用いて測定した、175℃における硬化トルクの上昇開始時間と最大トルクに達する時間の差分で表される値である。
本発明のエポキシ樹脂は、前記一般式(3)で示されるビフェニリレン架橋基を有するフェノールノボラック樹脂を、エピハロヒドリン類を用いてグリシジルエーテル化することによって好適に得ることができる。一般式(3)で示されるフェノールノボラック樹脂は、特に限定されないが、例えば、国際公開WO2007/007827号公報に記載された反応条件に準じて好適に得ることができる。その製法の一例を以下説明する。
[フェノールノボラック樹脂の製造方法]
一般式(3)で示されるフェノールノボラック樹脂は、前記一般式(2)で示される化合物(例えば、4,4’−ビフェニリレン基、2,4’−ビフェニリレン基、又は2,2’−ビフェニリレン基等を有する化合物)と、通常は過剰量の、2価フェノール類及び1価フェノール類を、酸触媒存在下又は触媒の非存在下で、縮合反応させることによって1段反応で好適に製造することができる。
本願明細書において、1価フェノール類とは、単一のベンゼン環に1個の水酸基を有する化合物である。1価フェノール類としては、例えば、置換又は非置換のフェノール等を好適に挙げることができる。置換基は、単数でも複数でもよく、炭素原子数1〜10の直鎖若しくは分岐状アルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアラルキル基等を挙げることができる。また、同一環上で隣接して存在する置換基同士が、互いに結合して、縮合環を形成していてもよい。
置換基としてのアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル及びオクチル等が挙げられる。これらは、直鎖であっても、分岐状であってもよい。置換基としてのアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。置換基としてのアラルキル基としては、ベンジル基等が挙げられる。これらの置換基は、さらに水酸基等で置換されていてもよい。同一環上で隣接して存在する置換基同士が、互いに結合して、縮合環を形成している一価フェノール類としては、ナフトール等が挙げられる。
1価フェノール類としては、具体的には、フェノール;クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール等の一置換フェノール類;キシレノール、メチルプロピルフェノール、ジプロピルフェノール、ジブチルフェノール、グアヤコール、グエトール等の二置換フェノール類;トリメチルフェノール等の三置換フェノール類;ナフトール、メチルナフトール等のナフトール類;ビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類等が挙げられる。1価フェノール類は、単独で、又は2種以上を併用してもよい。好ましい1価フェノール類としては、反応性の点から、非置換フェノール、及び炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐状のアルキル基でメタ位置換したフェノールであり、より好ましくはフェノール及びm−クレゾールである。
本願明細書において、2価フェノール類とは、単一のベンゼン環に2個の水酸基を有する化合物である。2価フェノール類としては、置換又は非置換のレゾルシン、ハイドロキノン、カテコール等が挙げられる。
置換基は、単数でも複数でもよく、炭素原子数1〜10の直鎖若しくは分岐状アルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアラルキル基等を挙げることができる。また、同一環上で隣接して存在する置換基同士が、互いに結合して、縮合環を形成していてもよい。これらの置換基は、1価フェノール類において記載されたものが挙げられるが、好ましくは非置換である。
2価フェノール類は、単独で、又は2種以上を併用してもよい。好ましくは、非置換のレゾルシン、ハイドロキノン、カテコールであり、さらに好ましくは非置換のレゾルシンである。
一般式(2)で示される化合物(ビフェニル型架橋剤)としては、4,4’−ジ(ハロゲノメチル)ビフェニル、2,4’−ジ(ハロゲノメチル)ビフェニル、2,2’−ジ(ハロゲノメチル)ビフェニル、4,4’−ジ(アルコキシメチル)ビフェニル、2,4’−ジ(アルコキシメチル)ビフェニル、2,2’−ジ(アルコキシメチル)ビフェニル、4,4’−ジ(ヒドロキシメチル)ビフェニル、2,4’−ジ(ヒドロキシメチル)ビフェニル、2,2’−ジ(ヒドロキシメチル)ビフェニルが挙げられる。
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられるが、塩素が好ましい。炭素原子数1〜6のアルコキシル基は、特に限定されないが、炭素原子数1〜4の脂肪族アルコキシル基が好ましく、メトキシ及びエトキシ基が挙げられる。
一般式(2)で示される化合物としては、4,4’−ジ(クロロメチル)ビフェニル、4,4’−ジ(メトキシメチル)ビフェニル、4,4’−ジ(エトキシメチル)ビフェニルが挙げられる。
一般式(2)で示される化合物と、2価フェノール類及び1価フェノール類とを反応させる際には、酸触媒を用いることが好ましい。酸触媒としては、シュウ酸、ギ酸、酢酸等の有機酸、及び硫酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸ジエチル等のフリーデルクラフト型触媒を好適に用いることができる。なお、一般式(2)で示される化合物としてハロゲノメチル基を有するビフェニル架橋剤を用いた場合、酸触媒の非存在下でも好適に反応を行うことができる。
一般式(2)で示される化合物と、2価フェノール類及び1価フェノール類を、酸触媒の存在下、又は非存在下で反応させることにより、一般式(3)のフェノールノボラック樹脂を得ることができる。2価フェノール類及び1価フェノール類は混合物として反応させてもよい。反応終了後、未反応のフェノール類は、減圧下又は不活性ガスを吹き込みながら加熱して、系外へ留去することができる。また、酸触媒は、水洗等の洗浄により除去することができる
一般式(3)のフェノールノボラック樹脂は、式中のp、p及びpがそれぞれ独立に、1又は2の整数であり、p、p及びpの全存在に対して、整数1であるp、p及びpの存在が合計で10〜80%、整数2であるp、p及びpの存在が合計で90〜20%の割合である。この割合になるように、原料のフェノール類における2価フェノール類と1価フェノール類の割合が調節されるが、それぞれの反応性が異なるので、それらの反応性の大きさ、さらには採用する反応条件等を加味して、その割合が調節されるが、当業者にとっては、その調節方法は自明であるか、簡単に見出すことができる。必要に応じて、予備的実験を行うこともできる。反応は、通常、溶媒の非存在下で、あるいは水及び/又は有機溶媒等の溶媒の存在下で、0℃〜150℃で、0.5時間〜10時間程度で行うことができるが、前記割合や重合度等の調整するために、反応温度、反応時間等の反応条件を適宜調整することができる。
[エポキシ樹脂の製造方法]
本発明において、一般式(1)で示されるエポキシ樹脂は、一般式(3)で示されるフェノールノボラック樹脂を、エピハロヒドリン類と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下、例えば10℃〜120℃で、グリシジルエーテル化することにより得られる。このグリシジルエーテル化反応は、公知の方法を好適に採用することができ、特に限定されない。
エピハロヒドリン類としては、エピクロルヒドリン、α―メチルエピクロルヒドリン、γ―メチルエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等の置換又は非置換のエピハロヒドリン類が使用可能であるが、工業的に入手が容易であり、水酸基との反応性が良好である点から、エピクロルヒドリンを用いることが好ましい。
エピハロヒドリン類の使用量は、特に限定されず、目的とする分子量に応じて適宜選択できるが、通常、フェノールノボラック樹脂の水酸基に対して過剰量が使用される。低溶融粘度のエポキシ樹脂を得る点からは、エピクロルヒドリン類の使用量を、フェノールノボラック樹脂の水酸基1モルに対して3.0〜20モルとすることでき、好ましくは3.0〜10モルである。
反応に使用されるアルカリ金属水酸化物は、固形物であっても、その水溶液であってもよい。水溶液を使用する場合、アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加しながら、減圧下又は常圧下において、連続的に水とエピハロヒドリン類を反応系外に流出させ、水分を除去した後、エピハロヒドリン類を反応系内に連続的に戻す方法を採用することもできる。アルカリ金属水酸化物の使用量は、フェノールノボラック樹脂の水酸基1モルに対して0.8〜2.0モルとすることができ、好ましくは0.9〜1.3モルである。
反応に際しては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒等を存在させることが、反応の進行上好ましい。
また、一般式(1)で示されるエポキシ樹脂は、一般式(3)で示されるフェノールノボラック樹脂及びエピハロヒドリン類に、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加し、これらの反応によって得られるハロヒドリンエーテル化物に、アルカリ金属水酸化物を加えて閉環させて得ることもできる。
その際の反応温度は、特に限定されないが、通常30〜90℃であり、好ましくは35〜80℃である。反応時間は、反応温度にも影響されるが、通常0.5〜10時間であり、好ましくは1〜8時間である。
グリシジルエーテル化反応の反応混合物を、水洗後又は水洗せずに、加熱減圧下で、エピハロヒドリン類や溶媒等を留去して、一般式(1)のエポキシ樹脂を得ることができる。さらに、加水分解性塩素等を低減させるために、得られた粗エポキシ樹脂をトルエンやメチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解し、アルカリ金属水酸化物の水溶液を添加して反応させることで、エポキシ環の閉環を確実にしてもよい。反応終了後、生成した塩を濾過、水洗等により除去し、さらに加熱減圧下で溶剤を留去することにより、一般式(1)のエポキシ樹脂の精製物を好適に得ることができる。
上記グリシジルエーテル化反応の前後で、通常、樹脂中に導入されているフェノール類が脱離することはないため、1価フェノール類及び2価フェノール類の導入割合もまた、上記グリシジルエーテル化反応の前後で、通常、不変である。これを利用して、一般式(3)でフェノールノボラック樹脂における1価フェノール類及び2価フェノール類の導入割合を算出することによって、一般式(1)のエポキシ樹脂の1価フェノール類及び2価フェノール類の導入割合とすることができる。
一般式(3)のフェノールノボラック樹脂の1価フェノール類及び2価フェノール類の導入割合は、以下のように求めることができる。フェノールノボラック樹脂の合成時の反応混合液についてGPC測定を行い、面積比より未反応の1価フェノール類と2価フェノール類のモル比を測定する。一方、GPC測定からフェノールノボラック樹脂の繰り返し単位数(一般式(3)のnに相当)を算出し、導入されたフェノール類合計のモル数及び未反応のフェノール類合計のモル数を求める。これらの値から、未反応のフェノール類の1価フェノール類と2価フェノール類の各モル数、及びフェノールノボラック樹脂に導入された1価フェノール類と2価フェノール類の各モル数を算出し、1価フェノール類及び2価フェノール類の導入割合を得ることができる。
[エポキシ樹脂組成物]
本発明のエポキシ樹脂は、硬化剤と組み合わせて、硬化性のエポキシ樹脂組成物とすることができる。以下、エポキシ樹脂組成物について説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物で使用する硬化剤は、特に限定されないが、例えばアミン系硬化剤、アミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤等を好適に挙げることができる。
具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリアルキレングリコールポリアミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン等のアミン系硬化剤;ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等のアミド系硬化剤;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物系硬化剤;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、ビスフェノールF型ノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニル変性フェノールアラルキル樹脂、フェノールトリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂等を始めとするフェノール樹脂系硬化剤、及びこれらの変性物、イミダゾ−ル、BF3−アミン錯体、並びにグアニジン誘導体等を好適に挙げることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて硬化促進剤をさらに含むことができる。
硬化促進剤は、特に限定されず、例えばフェノール系硬化剤と組み合わせて用いられる公知の硬化促進剤等が好適に挙げられる。
具体例としては、有機ホスフィン化合物及びそのボロン塩、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、イミダゾール類及びそのテトラフェニルボロン塩等を挙げることができる。中でも、硬化性や耐湿性の点から、トリフェニルホスフィン及び1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)が好ましい。また、より高流動性にするためには、加熱により活性が発現する熱潜在性の硬化促進剤がより好ましく、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルホスフォニウム誘導体が好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、硬化剤、及び任意の硬化促進剤の使用量は、特に限定されず、通常のエポキシ樹脂組成物におけるエポキシ樹脂、硬化剤及び任意の硬化促進剤との使用量が好適に採用できる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、無機充填材、離型剤、着色剤、カップリング剤、難燃剤等を含有することができる。本発明のエポキシ樹脂組成物を半導体封止材用途に使用する場合、通常、無機充填材を添加する。無機充填材としては、非晶性シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、硫酸バリウム等を挙げることができるが、特に非晶性シリカ、結晶性シリカ等が好ましい。無機充填材の使用量は、特に限定されず、通常のエポキシ樹脂組成物からなる半導体封止材における使用量が好適に採用できる。半導体封止用材において使用されたエポキシ樹脂組成物は、半導体装置として半導体製品の一部品を構成する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化反応を行わせることによって、容易に硬化物とすることができる。硬化条件は、硬化剤や任意の硬化促進剤によって適宜選択することができるが、例えばフェノール系硬化剤(例えば、フェノールノボラック樹脂)と硬化促進剤とを使用する場合、100〜250℃の温度範囲で硬化させて、硬化物を好適に得ることができる。
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。また、本発明における評価方法を以下に示す。
(1)150℃溶融粘度:ICI溶融粘度計を用い、150℃でのフェノールノボラック樹脂及びエポキシ樹脂の溶融粘度を測定した。ICI粘度の測定方法は以下の通り。
ICIコーンプレート粘度計 MODEL CV−1S TOA工業(株)
ICI粘度計のプレート温度を150℃に設定し、試料を所定量、秤量する。
プレート部に秤量した樹脂を置き、上部よりコーンで押えつけ、90秒放置する。コーンを回転させて、そのトルク値をICI粘度として読み取る。
(2) 水酸基当量:JIS K0070に準拠した方法で測定した。
(3) エポキシ当量:JIS K−7236に準拠した方法で測定した。
(4) 2価フェノール導入割合
フェノールノボラック樹脂の合成時の反応混合液のGPC測定を行い、面積比より未反応の1価フェノールと2価フェノールのモル比を測定した。
一方、GPC測定からフェノールノボラック樹脂の繰り返し単位数(一般式(3)のnに相当)が算出できるので、導入されたフェノール類のモル数及び未反応のフェノール類のモル数を算出した。
以上の値から、未反応のフェノール類の1価フェノール類と2価フェノール類の各モル数、及びフェノールノボラック樹脂に導入された1価フェノール類と2価フェノール類の各モル数を算出し、2価フェノール類の導入割合を得た。
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)の測定方法は以下の通り。
・型式:HLC−8220 東ソー(株)製
・カラム:TSK−GEL Hタイプ
G2000H×L 4本
G3000H×L 1本
G4000H×L 1本
・測定条件:カラム圧力 13.5MPa
・溶解液:テトラヒドロフラン(THF)
・フローレート:1ml/min.
・測定温度:40℃
・検出器:スペクトロフォトメーター(UV−8020)
・RANGE:2.56 WAVE LENGTH 254nm & RI
GPC分析によって得られた樹脂組成より、2価フェノール導入割合を求めた。
なお、2価フェノール導入割合は、一般式(1)、一般式(3)における、p、p及びpの全体に対する、整数2の割合であり、残りが1価フェノールになる。
(5) 硬化特性:エポキシ樹脂組成物について、175℃での硬化トルク上昇スピードをオリエンテック(株)製、JSRキュラストメーターWP型を用いて、ゲル化TSX(ゲル化時間)、硬化トルク(トルクMH)、硬化速度(tc(80))を測定した。
(6) Tg:動的粘弾性測定装置(TAインスツルメント社製 RSA−G2)(昇温速度3℃/min)を用いて30℃及び270℃の弾性率、ガラス転移温度を測定した。
(7) 難燃性:UL−94に準拠して測定した。
(8) 機械特性:機械強度:JIS K 7171に準拠して測定した。
以下、フェノールノボラック樹脂の合成例について説明する。
〔合成例1〕
撹拌装置、コンデンサー、及び窒素ガス導入管を備えたガラス製反応釜に、フェノール141g(1.5モル)、レゾルシン165g(1.5モル)、4,4’−ジ(クロロメチル)ビフェニル(以下、4,4’−BCMBと略記する。)188.3g(0.75モル)を仕込み、100℃で3時間反応させた。
その後、160℃に昇温し、4,4’−BCMBを全て反応させた。その間、生成するHClを留去した。反応終了後、減圧蒸留により未反応フェノール及び未反応レゾルシンを留去することにより250gのフェノールノボラック樹脂を得た。
得られたフェノールノボラック樹脂のICI粘度は4000mPa・s、水酸基当量は128g/eqであった。一般式(3)におけるnの値は1.9であった。得られたフェノールノボラック樹脂のGPCチャートを図1−1に示す。
反応終了時のGPCより、未反応フェノール類中の1価フェノール割合は66%、2価フェノール割合は34%であった。また、樹脂の繰り返し数より算出した未反応フェノール類のモル数は2.0モルであった。これらより、未反応フェノール類中のうち1価フェノール類は1.3モル、2価フェノール類は0.7モルとなる。したがって、仕込み量から逆算して反応に寄与したフェノール類は1価フェノール類が0.2モル、2価フェノール類が0.8モルとなり、GPCによる2価フェノール導入割合は82%であった。
〔合成例2〕
撹拌装置、コンデンサー、及び窒素ガス導入管を備えたガラス製反応釜に、フェノール225.6g(2.4モル)、レゾルシン264g(2.4モル)、4,4’−BCMB200.8g(0.8モル)を仕込み、100℃で3時間反応させた。
その後、160℃に昇温し、4,4’−BCMBを全て反応させた。その間、生成するHClを留去した。反応終了後、減圧蒸留により未反応フェノール及び未反応レゾルシンを留去することにより274gのフェノールノボラック樹脂を得た。
得られたフェノールノボラック樹脂のICI粘度は840mPa・s、水酸基当量は117g/eqであった。一般式(3)におけるnの値は1.1であった。合成例1と同様にして算出したGPCによる2価フェノール導入割合は71%であった。得られたフェノールノボラック樹脂のGPCチャートを図1−2に示す。
〔合成例3〕
撹拌装置、コンデンサー、及び窒素ガス導入管を備えたガラス製反応釜に、フェノール315.8g(3.4モル)、レゾルシン158.4g(1.4モル)、4,4’−BCMB200.8g(0.8モル)を仕込み、100℃で3時間反応させた。
その後、160℃に昇温し、4,4’−BCMBを全て反応させた。その間、生成するHClを留去した。反応終了後、減圧蒸留により未反応フェノール及び未反応レゾルシンを留去することにより266gのフェノールノボラック樹脂を得た。
得られたフェノールノボラック樹脂のICI粘度は470mPa・s、水酸基当量は132g/eqであった。一般式(3)におけるnの値は1.3であった。合成例1と同様にして算出したGPCによる2価フェノール導入割合は64%であった。得られたフェノールノボラック樹脂のGPCチャートを図1−3に示す。
〔合成例4〕
撹拌装置、コンデンサー、及び窒素ガス導入管を備えたガラス製反応釜に、フェノール253.8g(2.7モル)、レゾルシン33.0g(0.3モル)、4,4’−BCMB125.5g(0.5モル)を仕込み、100℃で3時間反応させた。
その後、160℃に昇温し、4,4’−BCMBを全て反応させた。その間、生成するHClを留去した。反応終了後、減圧蒸留により未反応フェノール及び未反応レゾルシンを留去することにより166gのフェノールノボラック樹脂を得た。
得られたフェノールノボラック樹脂のICI粘度は190mPa・s、水酸基当量は167g/eqであった。一般式(3)におけるnの値は1.2であった。合成例1と同様にして算出したGPCによる2価フェノール導入割合は29%であった。得られたフェノールノボラック樹脂のGPCチャートを図1−4に示す。
〔合成例5〕
撹拌装置、コンデンサー、及び窒素ガス導入管を備えたガラス製反応釜に、レゾルシン220g(2.0モル)を150gの水に溶解させ4,4’−BCMB 125.5g(0.5モル)を仕込み、100℃で3時間反応させた。
その後、160℃に昇温し、4,4’−BCMBを全て反応させた。その間、生成するHCl、及び水を留去した。反応終了後、減圧蒸留により未反応レゾルシンを留去することにより180gのフェノールノボラック樹脂を得た。
得られたフェノールノボラック樹脂のICI粘度は700mPa・s、水酸基当量は123g/eqであった。一般式(3)におけるnの値は0.9であった。合成例1と同様にして算出したGPCによる2価フェノール導入割合は100%であった。得られたフェノールノボラック樹脂のGPCチャートを図1−5に示す。
〔合成例6〕
撹拌装置、コンデンサー、及び窒素ガス導入管を備えたガラス製反応釜に、フェノール273.5g(2.9モル)、レゾルシン9.9g(0.1モル)、4,4’−BCMB125.5g(0.5モル)を仕込み、100℃で3時間反応させた。
その後、160℃に昇温し、4,4‘−BCMBを全て反応させた。その間、生成するHClを留去した。反応終了後、減圧蒸留により未反応フェノール及び未反応レゾルシンを留去することにより167gのフェノールノボラック樹脂を得た。
得られたフェノールノボラック樹脂のICI粘度は60mPa・s、水酸基当量は200g/eqであった。一般式(3)におけるnの値は0.9であった。合成例1と同様にして算出したGPCによる2価フェノール導入割合は12%であった。得られたフェノールノボラック樹脂のGPCチャートを図1−6に示す。
〔実施例1〕
攪拌装置、及びコンデンサー、及び窒素ガス導入管を備えたガラス製反応容器に、合成例1で得られた2価フェノール導入割合が82%であるフェノールノボラック樹脂50.0g(0.39モル)、エピクロルヒドリン433.6g(4.7モル)、メタノール50gを仕込み、均一に溶解させた。50℃で固形の96%水酸化ナトリウム10.3g(0.4モル)を90分かけて分割投入した。その後50℃で2時間反応させ、70℃昇温後さらに2時間反応を継続した。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを減圧下において除去した。
釜残にメチルイソブチルケトンを85g投入し溶解させた。25%水酸化ナトリウム水溶液6.3g(0.04モル)を添加し70℃で1時間反応させた。反応終了後、水層が中性になるまで水洗処理を7回繰り返した。加熱減圧下メチルイソブチルケトンを留去することで67gのエポキシ樹脂を得た。
得られたエポキシ樹脂の150℃におけるICI粘度は660mPa・sであり、エポキシ当量は200g/eq、一般式(1)におけるnの値は2.0であった。得られたエポキシ化ノボラック樹脂のGPCチャートを図2−1に示す。
〔実施例2〕
攪拌装置、及びコンデンサー、及び窒素ガス導入管を備えたガラス製反応容器に、合成例2で得られた2価フェノール導入割合が71%であるフェノールノボラック樹脂50.0g(0.43モル)、エピクロルヒドリン476.4g(5.1モル)、メタノール50gを仕込み、均一に溶解させた。50℃で固形の96%水酸化ナトリウム17.8g(0.4モル)を90分かけて分割投入した。その後50℃で2時間反応させ、70℃昇温後さらに2時間反応を継続した。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを減圧下において除去した。
釜残にメチルイソブチルケトンを85g投入し溶解させた。25%水酸化ナトリウム水溶液6.8g(0.04モル)を添加し70℃で1時間反応させた。反応終了後、水層が中性になるまで水洗処理を7回繰り返した。加熱減圧下メチルイソブチルケトンを留去することで67gのエポキシ樹脂を得た。
得られたエポキシ樹脂の150℃におけるICI粘度は285mPa・sであり、エポキシ当量は195g/eq、一般式(1)におけるnの値は1.2であった。得られたエポキシ化ノボラック樹脂のGPCチャートを図2−2に示す。
〔実施例3〕
攪拌装置、及びコンデンサー、及び窒素ガス導入管を備えたガラス製反応容器に、合成例3で得られた2価フェノール導入割合が64%であるフェノールノボラック樹脂50.0g(0.37モル)、エピクロルヒドリン408.1g(4.4モル)、メタノール50gを仕込み、均一に溶解させた。50℃で固形の96%水酸化ナトリウム15.3g(0.4モル)を90分かけて分割投入した。その後50℃で2時間反応させ、70℃昇温後さらに2時間反応を継続した。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを減圧下において除去した。
釜残にメチルイソブチルケトンを85g投入し溶解させた。25%水酸化ナトリウム水溶液5.9g(0.04モル)を添加し70℃で1時間反応させた。反応終了後、水層が中性になるまで水洗処理を7回繰り返した。加熱減圧下メチルイソブチルケトンを留去することで69gのエポキシ樹脂を得た。
得られたエポキシ樹脂の150℃におけるICI粘度は300mPa・sであり、エポキシ当量は200g/eq、一般式(1)におけるnの値は1.4であった。得られたエポキシ化ノボラック樹脂のGPCチャートを図2−3に示す。
〔実施例4〕
攪拌装置、及びコンデンサー、及び窒素ガス導入管を備えたガラス製反応容器に、合成例4で得られた2価フェノール導入割合が29%であるフェノールノボラック樹脂55.0g(0.33モル)、エピクロルヒドリン365.6g(4.0モル)、メタノール50gを仕込み、均一に溶解させた。50℃で固形の96%水酸化ナトリウム13.7g(0.3モル)を90分かけて分割投入した。その後50℃で2時間反応させ、70℃昇温後さらに2時間反応を継続した。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを減圧下において除去した。
釜残にメチルイソブチルケトンを85g投入し溶解させた。25%水酸化ナトリウム水溶液5.3g(0.03モル)を添加し70℃で1時間反応させた。反応終了後、水層が中性になるまで水洗処理を7回繰り返した。加熱減圧下メチルイソブチルケトンを留去することで75gのエポキシ樹脂を得た。
得られたエポキシ樹脂の150℃におけるICI粘度は120mPa・sであり、エポキシ当量は224g/eq、一般式(1)におけるnの値は1.3であった。得られたエポキシ化ノボラック樹脂のGPCチャートを図2−4に示す。
〔比較例1〕
攪拌装置、及びコンデンサー、及び窒素ガス導入管を備えたガラス製反応容器に、合成例5で得られた2価フェノール導入割合が100%であるフェノールノボラック樹脂50.0g(0.41モル)、エピクロルヒドリン451.2g(4.9モル)、メタノール50gを仕込み、均一に溶解させた。50℃で固形の96%水酸化ナトリウム16.9g(0.4モル)を90分かけて分割投入した。その後50℃で2時間反応させ、70℃昇温後さらに2時間反応を継続した。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを減圧下において除去した。
釜残にメチルイソブチルケトンを85g投入し溶解させた。25%水酸化ナトリウム水溶液6.5g(0.04モル)を添加し70℃で1時間反応させた。反応終了後、水層が中性になるまで水洗処理を7回繰り返した。加熱減圧下メチルイソブチルケトンを留去することで67gのエポキシ樹脂を得た。
得られたエポキシ樹脂の150℃におけるICI粘度は230mPa・sであり、エポキシ当量は176g/eq、一般式(1)におけるnの値は1.2であった。得られたエポキシ化ノボラック樹脂のGPCチャートを図2−4に示す。
〔比較例2〕
攪拌装置、及びコンデンサー、及び窒素ガス導入管を備えたガラス製反応容器に、合成例6で得られた2価フェノール導入割合が12%であるフェノールノボラック樹脂50.0g(0.25モル)、エピクロルヒドリン277.5g(3.0モル)、メタノール50gを仕込み、均一に溶解させた。50℃で固形の96%水酸化ナトリウム10.4g(0.3モル)を90分かけて分割投入した。その後50℃で2時間反応させ、70℃昇温後さらに2時間反応を継続した。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを減圧下において除去した。
釜残にメチルイソブチルケトンを85g投入し溶解させた。25%水酸化ナトリウム水溶液4.0g(0.03モル)を添加し70℃で1時間反応させた。反応終了後、水層が中性になるまで水洗処理を7回繰り返した。加熱減圧下メチルイソブチルケトンを留去することで64gのエポキシ樹脂を得た。
得られたエポキシ樹脂の150℃におけるICI粘度は50mPa・sであり、エポキシ当量は266g/eq、一般式(1)におけるnの値は1.0であった。得られたエポキシ化ノボラック樹脂のGPCチャートを図2−6に示す。
〔比較例3〕
比較例3として市販のビフェニル型エポキシ樹脂(YX−4000:三菱化学株式会社製)を用いた。なお、このエポキシ樹脂のGPCによる2価フェノール導入割合は0%であった。
実施及び比較例のエポキシ樹脂について、エポキシ樹脂物性を測定した。下記のようにしてエポキシ樹脂組成物の粉末(EMC)を調製し、その硬化物の特性を測定した。結果を表1にまとめて示した。
[EMC(Epoxy Moldering Compound)の調製]
実施例・比較例のエポキシ樹脂、硬化剤として明和化成株式会社製MEH−7851SS(水酸基当量202g/eq)のビフェニル型ノボラック樹脂、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(TPPと略記することもある)、及び充填剤として龍森社製シリカ(MSR−2212)を使用してEMCを調製した。その際、エポキシ樹脂と硬化剤とは、フェノール水酸基当量とエポキシ当量比が1:1となるように配合し、TPP触媒をキュラストメーター試験におけるゲル化tsxが0.6〜0.8minとなるように配合した。これに、83質量%になるように充填剤を加え、60℃の温度条件で2本ロールで混練後粉砕しEMC粉体を調製した。
得られたEMC粉体を用いて作成した40φタブレットを、トランスファー成形機にて試験片を作成し、180℃ 8時間のポストキュアを行い、ガラス転移点評価及び、難燃評価用のテストピースを得た。
Figure 0005754731
本発明によって、低粘性や速硬化性を兼ね備えているので作業性が良好であり、また、ハロゲンフリーでありながら、高いガラス転移温度と高い難燃性とを兼ね備えている硬化物をもたらすことができるエポキシ樹脂が提供される。また、前記エポキシ樹脂の製造方法、前記エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物、前記エポキシ樹脂組成物からなる半導体封止剤、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物、及び前記硬化物を含む半導体装置も提供される。本発明のエポキシ樹脂によれば、上記のような特性に加えて、良好な耐熱性や機械特性を有する硬化物も提供することができ、極めて厳しい環境下でも好適に用いることが可能であるため、車載用半導体に係る電子部品、高電圧を用いる表示装置に用いられる電子部品、大型電池等に好適であり、産業上の利用可能性が高い。

Claims (10)

  1. 一般式(1):
    Figure 0005754731

    (式中、
    R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、置換若しくは非置換の炭素原子数1〜10の直鎖若しくは分岐状アルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、又は置換若しくは非置換のアラルキル基を表すが、同一環上で隣接して存在する、2個のR1、2個のR2、又は2個のR3は、互いに結合して、縮合環を形成していてもよく、
    、p及びpは、それぞれ独立に、1又は2の整数であり、p、p及びpの全存在に対して、整数1であるp、p及びpの存在が合計で10〜80%、整数2である、p及びpの存在が合計で90〜20%の割合であり、
    及びmは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、
    は、それぞれ独立に、0〜3の整数であり、
    nは、0〜15の整数であり、
    Gは、置換又は非置換のグリシジル基を表す)
    で表され、150℃における溶融粘度が20〜1000mPa・sであるエポキシ樹脂。
  2. 一般式(2):
    Figure 0005754731

    (式中、Xは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルコキシル基、又は水酸基を表す)
    で表されるビフェニル化合物と、2価フェノール類及び1価フェノール類とを反応させて、一般式(3):
    Figure 0005754731

    (式中、R1、R2、R3、p、p、p、m、m、m及びnは、請求項1記載の一般式(1)と同義である)
    で表されるフェノールノボラック樹脂を得て、次いで、前記フェノールノボラック樹脂とエピハロヒドリン類とを、アルカリ金属水酸化物の存在下で反応させることを含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
  3. 請求項1に記載のエポキシ樹脂及び硬化剤を含む、エポキシ樹脂組成物。
  4. 得られる硬化物が、ガラス転移温度が135℃以上であり、かつUL94規格に基づく難燃性評価がV−0である、請求項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. さらに、硬化速度(tc(80))が、3.3分以下である、請求項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. 請求項3〜5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物からなる半導体封止材。
  7. 請求項3〜5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
  8. ガラス転移温度が135℃以上であり、かつUL94規格に基づく難燃性評価がV−0である、請求項に記載の硬化物。
  9. さらに、UL94規格に基づく難燃性評価において、残炎時間が35秒以下である、請求項に記載の硬化物。
  10. 請求項7〜9のいずれか1項に記載の硬化物を含む半導体装置。
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