JP6636665B2 - 炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、炭素繊維強化複合材料 - Google Patents
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Description
こういった成型体は車や飛行機といった温度環境の厳しい環境下で使用されることが想定され、そのCFRPの厚みや形状により炭素繊維との線膨張量による歪みが大きく出やすい。具体的には例えば、厚みの厚い部分と薄い部分とでは線膨張量が異なり、お互いに引っ張り合うため内部の応力がたまりやすくなってしまう。これが起因し、クラックやカーボン繊維とのはがれ等の問題が生じる。
また、一般にCFRPのような強化繊維プラスチックはその繊維と硬化マトリクスの樹脂との線膨張係数の差が大きく、特にカーボンファイバーの場合、線膨張がマイナスであり、温度サイクルによる線膨張歪は大きくなる。
このようなことからできるだけ樹脂自体の線膨張変化が少なく、かつこの応力に耐えるために、強度・強靭性の高いマトリックス樹脂が求められている。
(1)下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂及び硬化剤を必須成分とする炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物、
(2)前記硬化剤がアミン系硬化剤であることを特徴とする前項(1)に記載の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物、
(3)他のエポキシ樹脂を混合してなる前項(1)又は(2)のいずれか一項に記載の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物、
(4)前項(1)及至(3)のいずれか一項に記載の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を支持基盤に塗布してなる樹脂シート、
(5)前項(1)及至(3)のいずれか一項に記載の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物、又は前項(4)に記載の樹脂シートを炭素繊維に含浸してなるプリプレグ、
(6)前項(5)に記載のプリプレグを硬化してなる炭素繊維強化複合材料、
を提供するものである。
本発明の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物(以下、「本発明のエポキシ樹脂組成物」という。)は、下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂を必須成分として含有する。
ただし、本発明においては特に前記式(a)と前記式(b)の割合が(a)/(b)=1〜3の物を使用することが好ましい。(a)の構造が多いと耐熱性があがるがその分吸水特性が悪くなるばかりか、脆く硬くなってしまう。そこで上述の範囲内の多官能化率が好ましい。
前記式(1)中、nは繰り返し単位であり、0〜5である。nが5を超えないことでプリプレグや樹脂シートにした際のフロー性や流動性をコントロールする。これが5を超えた場合、流動性ばかりか、溶剤への溶解性に課題が生じるため好ましくない。
本発明で用いられるエポキシ樹脂は溶剤への溶解性が重要となる。同様の骨格を有するビフェニルアラルキルタイプのエポキシ樹脂の場合、メチルエチルケトンやトルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤に対し、溶解性が必要となる。
特にメチルエチルケトンへの溶解性が重要であり、5℃、室温等で2か月以上、結晶が析出しないことを特徴とする。前述の (a)/(b)の比率にも関与するが、(a)の値が大きいと結晶が出やすくなってしまうため、 (a)/(b)が1を超えることが重要となる。
特に、強靭性と耐熱性の面から、芳香族アミン化合物が好ましく、中でも3,3‘−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、アニリンノボラック、オルソエチルアニリンノボラック、アニリンとキシリレンクロライドとの反応により得られるアニリン樹脂、アニリンと置換ビフェニル類(4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル及び4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル等)、若しくは置換フェニル類(1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン及び1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等)等との重縮合により得られるアニリン樹脂は、そのたわみや応力に対する強度が高く、その架橋密度から高温での弾性率を向上させることができ、CFRPとしての強度を向上させる面からも好ましく、さらには耐熱性の面から好ましい。
酸無水物系硬化剤としては無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルヘキサヒドロ無水フタル酸等
アミド系硬化剤 ジシアンジアミド、若しくはリノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂等、
その他イミダゾール硬化剤としては、BF3 −アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を支持基材の片面または両面に塗布し、樹脂シートとして用いてもよい。塗布方法としては、例えば、注型法、ポンプや押し出し機等により樹脂をノズルやダイスから押し出し、ブレードで厚さを調整する方法、ロールによりカレンダー加工して厚さを表製する方法、スプレー等を用いて噴霧する方法等が挙げられる。なお、層を形成する工程においては、エポキシ樹脂組成物の熱分解を回避可能な温度範囲で加熱しながら行ってもよい。また、必要に応じて圧延処理、研削処理等を施してもよい。支持基材としては、例えば紙、布、不織布等からなる多孔質基材、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルムあるいはシート、ネット、発泡体、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。支持基材に厚さは特に制限されず、用途に応じて適宜に決定される。
また、RTM法の一種である、例えば、VaRTM法、SCRIMP(Seeman’s Composite Resin Infusion Molding Process)法、特表2005−527410記載の樹脂供給タンクを大気圧よりも低い圧力まで排気し、循環圧縮を用い、かつ正味の成形圧力を制御することにとよって、樹脂注入プロセス、特にVaRTM法をより適切に制御するCAPRI(Controlled Atmospheric Pressure Resin Infusion)法なども用いることができる。
・エポキシ当量
JIS K−7236に記載された方法で測定し、単位はg/eq.である。
・軟化点
JIS K−7234に準拠した方法で測定し、単位は℃である。
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、フェノール316部、レゾルシン158部を仕込み、100℃に昇温した後、4,4’−ビスクロロメチルビフェニル201部を2時間かけて分割添加し、同温度でさらに5時間反応させた。その後、160℃に昇温し、4,4’−ビスクロロメチルビフェニルを全て反応させた。その間、生成するHClをアルカリでトラップでして留去した。反応終了後、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下に未反応フェノール及び未反応レゾルシンを留去することにより266部のフェノール樹脂(P−1)を得た。得られたフェノール樹脂(P−1)の水酸基当量は137g/eq.、軟化点は94℃、ICI粘度は470mPa・s、2価フェノール導入割合は64%であった。
攪拌機、還流冷却管、攪拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら実施例3で得られたフェノール樹脂266部、エピクロロヒドリン719部、メタノール72部、水21部を加え、75℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム83部を90分かけて分割添加した後、さらに75℃で75分間反応を行った。反応終了後水洗を行い、有機層からロータリーエバポレーターを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロロヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン750部を加え溶解し、75℃にまで昇温した。攪拌下で30%水酸化ナトリウム水溶液52部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで有機層を水洗し得られた有機層からロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等の溶剤を留去することでエポキシ樹脂(EP1)を338部得た。得られたエポキシ樹脂(EP1)のエポキシ当量は209g/eq.、軟化点は71℃、150℃における粘度は370mPa・s、2価グリシジル置換フェニル基の導入割合は68%であった。
合成例2で得られたエポキシ樹脂、及び比較用のエポキシ樹脂(EP2 日本化薬製 ビスフェノールA型エポキシ樹脂 RE−310S)を用いて、硬化剤をエポキシ樹脂に対し、活性水素当量で1当量、さらに硬化促進剤である触媒をエポキシ樹脂の重量に対し1phrをエポキシ樹脂と同量のメチルエチルケトンで希釈し、室温で混合した後、ポリイミド(ユーピレックス)に100ミクロンのアプリケータを用いて塗布後、120℃5分、窒素ガスを流しながら熱風乾燥器で乾燥をおこない、それぞれ樹脂シートを得た。合成例2で得られたエポキシ樹脂(EP1)を用いた本発明の樹脂シートは膜厚が平均32μm、比較用のエポキシ樹脂を用いた比較用樹脂シートは半固形状であり、膜厚の測定ができなかった。得られた本発明の樹脂シートはテトラヒドロフランに溶解可能であり、硬化前であることを確認した。
合成例2で得られたエポキシ樹脂(EP1)21部、及び比較用のエポキシ樹脂(EP2 日本化薬製 ビスフェノールA型エポキシ樹脂 RE−310S)18部をそれぞれ用いて、硬化剤をエポキシ樹脂に対し、活性水素当量で1当量をアルミカップ中で140℃で溶融しながら撹拌していき均一にし、さらに硬化促進剤である触媒をエポキシ樹脂の重量に対し1phrを加えて撹拌し、冷却した。これにより、樹脂プレートを得た。
得られた樹脂プレートをアルミカップのまま180℃のオーブンに入れ、そのまま180℃で10時間加熱し、本発明のエポキシ樹脂成型体と比較用の成型体(表2中の硬化剤H−1:明和化成工業(株)製 フェノールノボラック樹脂)を得た。得られた樹脂プレートから2mm×10mm×5mmの評価用のサンプルを切り出し、下記の項目及び方法でその特性の測定を行った。測定結果を表1及び表2に示す。
・耐熱性、寸法安定性(線膨張変化率):TMA(熱機械測定装置 TAインスツルメント TMA-Q400EM 昇温速度 2℃/min)
・弾性率(DMA)
動的粘弾性測定器:TA−instRuments、DMA−2980
測定温度範囲:−30〜280℃
温速度:2℃/分
試験片サイズ:5mm×50mmに切り出した物を使用した
Tg:DMA測定に於けるTan−δのピーク点をTgとした
合成例2で得られたエポキシ樹脂(EP1)6.8部、及び比較用のエポキシ樹脂(EP2 日本化薬製 ビスフェノールA型エポキシ樹脂 RE−310S)6.5部をそれぞれ用いて、硬化剤をエポキシ樹脂に対し、活性水素当量で1当量、溶剤にメチルエチルケトン(MEK)6.7部を用いて、アルミカップ中で撹拌し、樹脂濃度が60重量%になるように均一な樹脂ワニスを作成した。調整した樹脂ワニスに、厚さ150μm、綿密度18本/inchのカーボンクロスを含浸させた後、表3の乾燥条件で溶剤を揮発させて、プリプレグを作成した。続いて、プリプレグを熱板プレスにおいて、175℃で10分間、10kgの荷重を加えてプレキュアさせた後、160℃で2時間、180℃で6時間ポストキュアすることにより、炭素繊維強化複合材料(CFRP)を得た。得られたCFRPから4mm×16mm四方の評価用サンプルを切り出し、下記の方法で耐熱性の測定を行った。測定結果を表3に示す。
・耐熱性、寸法安定性(線膨張変化率):TMA(熱機械測定装置 TAインスツルメント TMA-Q400EM 昇温速度 2℃/min)
(図1)実施例5により得られた炭素繊維強化複合材料のTMAチャート
(図2)比較例3により得られた炭素繊維強化複合材料のTMAチャート
Claims (5)
- 他のエポキシ樹脂を混合してなる請求項1に記載の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
- 請求項1又は請求項2に記載の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を支持基盤に塗布してなる樹脂シート。
- 請求項1又は請求項2に記載の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物、又は請求項3に記載の樹脂シートを炭素繊維に含浸してなるプリプレグ。
- 請求項4に記載のプリプレグを硬化してなる炭素繊維強化複合材料。
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