JP3807586B2 - 油圧式動力伝達継手 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、駆動力の配分に用いられる油圧式動力伝達継手、特にバルブ内に収納されるドレーンピンによるキャビテーション音の低減を図った油圧式動力伝達継手に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の油圧式動力伝達継手としては、例えば次のようなものがある。
【0003】
この油圧式動力伝達継手は、相対回転可能な入出力軸間に設けられ、一方の軸に連結され、内側面にカム面を形成したハウジングと;
他方の軸に連結されるとともに、ハウジング内に回転自在に収納され、複数のプランジャ室を軸方向に形成したロータと;
複数のプランジャ室のそれぞれに、リターンスプリングの押圧を受けて往復移動自在に収納されるとともに、両軸の相対回転時にカム面によって駆動される複数のプランジャと;
ロータに形成され、プランジャ室に通じる吐出孔と;
吐出孔に連通する高圧室を有するとともに、
プランジャの駆動による吐出油の流動により流動抵抗を発生する流動抵抗発生手段を有するバルブを備える。
【0004】
バルブには、図4に示すようなトルクリミッタ機構を兼用したドレーン機構101が収納されている。バルブに形成された図示しない収納孔には、ドレーンプラグ102が収納され、ドレーンプラグ102にはドレーン孔103が形成されている。
【0005】
ドレーンプラグ102にはドレーンピン104がドレーン孔103を開閉自在に収納され、ドレーンピン104内には図外の高圧室に通孔105を介して連通する高圧室106が形成されている。ドレーンピン104にはトルクを発生するためのオリフィス107が形成され、ドレーンプラグ102との間にはシールリング108が介装されている。
【0006】
高圧室106の内壁と、ドレーンプラグ102に当接して設けられたリミッタプラグ109との間にはリターンスプリング110が介装されている。ドレーンピン104はリターンスプリング110に付勢されて、ドレーン孔103を閉止している。
【0007】
リミッタプラグ109には高圧室106に連通する連通孔111が形成され、連通孔111を開閉するリミッタピン112がリミッタプラグ109内に摺動自在に収納されている。リミッタピン112は、図示しないサーモスイッチを介してリターンスプリングにより付勢されて連通孔111を閉止している。
【0008】
所定の高温に達すると、サーモスイッチが作動し、リミッタピン112が連通孔111を開く。このため、ドレーンピン104の高圧室106の油圧は一気にゼロになり、図示しない高圧室からの油圧によりドレーンピン104はドレーン孔103を開く。高圧室のオイルは低圧室にドレーンされ、トルクがなくなる。このため、砂地の連続走行などに継手が高温になるのを防止し、継手の破損を未然に防止することができる。
【0009】
一方、所定の油圧に達すると、ドレーンピン104の高圧室106の油圧がリミッタピン112を図中右方向に付勢する力より大きくなり、リミッタピン112が徐々に連通孔111を開く。このため、ドレーンピン104はバランスをとりながら、徐々にドレーン孔103を開く。
【0010】
したがって、トルクは差動回転数が大きくなるにつれて増加することがなく、一定値にカットされる。その結果、車両の発進時には、スムーズに発進することができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の油圧式動力伝達継手にあっては、オリフィスを有するドレーンピンはドレーンプラグに収納され、リターンスプリングにより付勢されるが、オリフィス回転方向の位置決めが行われていないため、オリフィス回転方向の位置によりキャビテーション音が大きくなるという問題があった。
【0012】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたのものであって、オリフィスを有するドレーンピンの回転方向の位置決めをすることで、キャビテーション音を低減することができる油圧式動力伝達継手を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明は次のように構成する。
【0014】
請求項1の発明は、相対回転可能な入出力軸間に設けられ、前記両軸の回転速度差に応じたトルクを伝達する油圧式動力伝達継手において、
前記入力軸に連結され、内側面にカム面を形成したハウジングと;
前記出力軸に連結されるとともに、前記ハウジング内に回転自在に収納され、複数のプランジャ室を軸方向に形成したロータと;
前記複数のプランジャ室のそれぞれに設けられる高圧室内にリターンスプリングを収容し、該リターンスプリングの押圧を受けて往復移動自在に収納されるとともに、前記両軸の相対回転時に前記カム面によって駆動される複数のプランジャと;
前記ロータに形成され、前記プランジャ室に通じる吐出孔と;
前記ロータに連結されて一体回転するバルブと;
前記バルブに設けられ、前記プランジャの駆動による吐出油の流動を受けて流動抵抗を発生する流動抵抗発生手段と;
前記バルブに設けられ、所定温度に達した時のドレーン孔の開放で高圧側から低圧側にオイルを流してトルク伝達を解除し、所定温度に達するまでは前記ドレーン孔の開度を調整して前記回転速度差の上昇に対し伝達トルクを一定値にリミットするドレーン機構と;
を備え、
前記ドレーン機構は、ドレーンプラグ内に摺動自在に収納されるドレーンピンと、ドレーンプラグに当接して設けられたリミッタプラグ内に前記ドレーンピン側に連通する連通孔を開閉するリミッタピンとを有し、前記ドレーンピンの内部にリターンスプリングの座巻部の一端を圧入し、他端を前記リミッタプラグに圧入して、前記ドレーンピンの回転方向の位置決めをするようにした。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1記載の油圧式動力伝達継手において、
前記ドレーンピンの内部に前記リターンスプリングの一方の座巻部が収納される段部を設けると共に、前記リミッタプラグに前記リターンスプリングの他方の座巻部が収納される溝を設け、前記高圧室の前記段部に連続する内壁は前記段部に向かうにつれて次第に広がるテーパ部を形成すると共に、前記高圧室の前記溝には前記座巻部に向かうにつれて次第に広がるテーパ部を形成した。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1記載の油圧式動力伝達継手において、
前記リターンスプリングの両端側の座巻部の径を両端側に向うにつれて大きくした。
【0017】
このような構成を備えた本発明によれば、流動抵抗発生手段としてのオリフィスを有するドレーンピンの内部にリターンスプリングの座巻部の一端を圧入し、他端をリミッタプラグに圧入して、ドレーンピンの回転方向の位置決めをするので、オリフィスを有するドレーンピンの向きを規制することができ、キャビテーション音を低減することができる。
【0018】
すなわち、リターンスプリングの座巻部を圧入することで、リターンスプリングに回り止め機構を付加して、回り止めにピンの追加、溝の追加を行うことなく、回転方向の回り止めを行うことができ、キャビテーション音を低減することができる。
【0019】
また、ドレーンピンの内部にリターンスプリングの一方の座巻部が収納されるテーパ部を形成するとともに、リミッタプラグにリターンスプリングの他方の座巻部が収納される溝にテーパ部を形成したので、リターンスプリングを圧入することができ、オリフィスを有するドレーンピンの向きをキャビテーション音が小さくなる回転方向に確実に位置決めすることができる。
【0020】
また、リターンスプリングの両端側の座巻部の径を両端側に向うにつれて大きくしたので、リターンスプリングの圧入を確実に行うことができ、ドレーンピンの回転方向の位置決めを所定位置に確実に行うことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施形態を示す全体断面図である。
【0022】
図1において、1はコンパニオンフランジであり、コンパニオンフランジ1は前輪駆動軸(一方の軸)である図示しないプロペラシャフトに連結されている。コンパニオンフランジ1にはカムハウジング軸部2が挿入され、スプライン結合されている。カムハウジング軸部2の外周にはフロントベアリング3が設けられ、フロントベアリング3を介してカムハウジング軸部2はデフケース4に支持されている。デフケース4とコンパニオンフランジ1との間にはシール部材5およびカバー6が設けられ、シール部材5およびカバー6によりごみなどの異物の侵入およびデフオイルの流出を防止している。カムハウジング軸部2には溶接部7でハウジング8が固定され、内側面には2つ以上の山を有するカム面9が形成されている。カムハウジング軸部2はこのカム面9によりカムとしての機能を持つ。また、カムハウジング軸部2にはオイルを継手内部に注入し、または排出するためのプラグ10,11が挿入されている。
【0023】
12はハウジング8内に回転自在に収納されたロータであり、ロータ12はメインシャフト(他方の軸)13に係合され、メインシャフト13と一体で回転する。メインシャフト13内にはドライブピニオンギア14が挿入、固定され、メインシャフト13はドライブピニオンギア14と一体で回転する。
【0024】
ロータ12には、軸方向に複数個のプランジャ室15が形成されプランジャ室15内は複数個のプランジャ16がリターンスプリング17を介して摺動自在に収納されている。
【0025】
プランジャ16の頭部側には吸入路18が形成され、吸入路18は低圧室19に連通している。吸入路18とプランジャ室15は連通孔20により連通し、連通孔20はボールよりなる吸入用のワンウェイバルブ21により開閉される。
【0026】
プランジャ室15の内部には弁座22が形成され、弁座22にはワンウェイバルブ21が着座する。弁座22の段部にはチェックプラグ23が設けられ、チェックプラグ23とワンウェイバルブ21との間にはワンウェイバルブ21を押圧し、位置決めるためのチェックスプリング(図示しない)が介装されている。
【0027】
チェックプラグ23とロータ12の底部との間には前記のリターンスプリング17が介装されている。ロータ12には吐出孔24が形成され、吐出孔24はプランジャ室15に連通している。吐出孔24にはボールよりなる吐出用のワンウェイバルブ25が設けられている。すなわち、吐出孔24には弁座26が形成され、弁座26にはワンウェイバルブ25が着座する。
【0028】
27はバルブであり、バルブ27にはロータ12の吐出孔24に連通する高圧室28が形成されている。高圧室28に規制部材29が突出してバルブ27に設けられ、規制部材29はワンウェイバルブ25を所定の位置に位置決めする。
【0029】
バルブ27にはオリフィス30が設けられたオリフィス部材31が設けられ、高圧室28はオリフィス30に連通している。バルブ27とロータ12はピン32により位置決めされ、ボルト33で固定されている。
【0030】
プランジャ16が吸入工程にあるときは、プランジャ16の頭部に設けた吸入用のワンウェイバルブ21が開き、低圧室19、吸入路18、連通孔20を通じて、プランジャ室15にオイルを吸入する。このとき、ロータ12の吐出孔24に設けた吐出用のワンウェイバルブ25は閉じて、高圧室28からのオイルの逆流を阻止する。また、プランジャ16が吐出工程にあるときは、吐出側のワンウェイバルブ25が開き、プランジャ室15のオイルは、吐出孔24、高圧室28からオリフィス30に供給される。このとき、吸入用のワンウェイバルブ21は閉じて連通孔20、吸入路18から低圧室19にオイルがリークするのを防止する。
【0031】
34はベアリングリテーナであり、ベアリングリテーナ34はハウジング8に圧入、固定され、スナップリング35により位置決めされている。
【0032】
ベアリングリテーナ34はハウジング8と一体で回転する。ベアリングリテーナ34は通孔36が形成され、通孔36は低圧室19に連通している。また、ベアリングリテーナ34とバルブ27およびベアリングリテーナ34とメインシャフト13との間にはニードルベアリング37,38がそれぞれ介装され、また、ベアリングリテーナ34とメインシャフト13との間にはオイルシール39が設けられ、オイルシール39によりオイルの流出を防止している。
【0033】
ベアリングリテーナ34の外側にはオイルの熱膨張、収縮を吸収するためのアキュムレータピストン40が摺動自在に設けられ、アキュムレータピストン40によりアキュムレータ室41が画成されている。アキュムレータ室41はベアリングリテーナ34の通孔36を介して低圧室19に連通している。
【0034】
アキュムレータピストン40とハウジング8との間およびアキュムレータピストン40とベアリングリテーナ34との間にはオイルのもれを防止するOリング42,43がそれぞれ介装されている。44はアキュームリテーナであり、アキュームリテーナ44の外周端部はハウジング8に固定されている。アキュームリテーナ44とアキュムレータピストン40の底部との間にはリターンスプリング45,46が介装されている。
【0035】
ベアリングリテーナ34の延在部の外周にはリアベアリング47が設けられ、リアベアリング47を介してベアリングリテーナ34はデフケース4に支持されている。なお、48はメインシャフト13の開口部に設けられた潤滑用油溝、49はシール部材である。
【0036】
図2はバルブ27の部分断面図である。
【0037】
図2において、27はバルブであり、バルブ27はロータ12に連結され、ロータ12と一体で回転する。バルブ27には収納孔50が形成され、収納孔50にはねじ部51が形成され、スイッチプラグ52がねじ込まれている。
【0038】
バルブ27の上端部にはニードルベアリング37の受座53が形成され、受座53の途中から収納孔50を貫通して、固定ピン54が挿入され、ニードルベアリング37が抜け止めとなり、固定されている。収納孔50には金属製のリミッタプラグ55が挿入され、リミッタプラグ55は断面が略コの字形状に形成されている。リミッタプラグ55には高圧側に連通する連通孔56が形成されている。連通孔56は小径に形成され、高圧側の油圧を高圧に設定することができるようにしている。
【0039】
リミッタプラグ55内にはリミッタピン60が連通孔56を開閉可能に収納され、連通孔56を開閉するための突起61を有する。突起61は断面が略三角形状に形成され、突起61のテーパ部が連通孔56の開口端部に当接する。
【0040】
リミッタピン60の突起61の反対側は開放され、図示しない凹部が形成されている。リミッタピン60の凹部を貫通して固定ピン54が設けられ、リミッタピン60が移動して連通孔56を開いた状態では凹部の底部が固定ピン54に当接して、リミッタピン60の移動が規制されるようになっている。
【0041】
リミッタピン60がリミッタプラグ55に収納されるドレーン室64にはリミッタプラグ55に形成した図示しない排出孔が開口し、排出孔はプラグ27に形成した図示しないドレーン通路に連通している。連通孔56を通過したオイルは、ドレーン室64、排出孔を経てドレーン通路に入り、その後低圧室にドレーンされる。
【0042】
スイッチプラグ52内には低圧室66が形成され、低圧室66内にはサーモスイッチ67が移動自在に収納される。サーモスイッチ67の外周には段部68が形成され、段部68とスイッチプラグ52との間にはリターンスプリング69が介装され、また、サーモスイッチ67の底部とスイッチプラグ52との間にもリターンスプリング70が介装されている。サーモスイッチ67は、これらのリターンスプリング69,70に付勢されて、リミッタピン60を図中左方向に押圧し、リミッタピン60で連通孔56を閉止している。
【0043】
サーモスイッチ67の先端部中央には頭部ピン71が一体に形成され、所定温度以内の作動前においては、頭部ピン71と固定ピン54の間にはわずかな間隙が保持されている。所定温度になると、頭部ピン71が伸びて固定ピン54に当り、反力でサーモスイッチ67がリターンスプリング69,70に抗して図中右方向に移動して、高圧側からの高圧でリミッタピン60が図中右方向に移動して連通孔56が開くようになっている。
【0044】
また、所定トルク以上になると、連通孔56を通ってリミッタピン60に作用する高圧によって、リミッタピン60は、リターンスプリング69,70に抗して右方向に移動し、徐々に連通孔56を開く。
【0045】
バルブ27に形成された収納孔50の底部にはドレーンプラグ72が収納され、ドレーンプラグ72にはドレーン孔73が形成されている。ドレーンプラグ72内には後述するリターンスプリング74に付勢されたドレーンピン75が摺動自在に収納されている。ドレーンピン75に内部には、第1の高圧室76が形成され、第1の高圧室76は連通孔56を介してリミッタプラグ55のドレーン室64に連通するとともに先端部に形成された通孔77を介してバルブ27に形成した第2の高圧室78に連通している。
【0046】
ドレーンピン75とドレーンプラグ72との間にはシールリング79が装着され、また、ドレーンピン75にはオリフィス80が形成されている。オリフィス80を介してドレーンプラグ72とドレーンピン75との間には形成されたドレーン室81と第1の高圧室76は連通し、オイルがオリフィス80を通過するときの油圧抵抗により、トルクを発生させる。ドレーン室81は図示しないドレーン通路に連通し、ドレーン室81に入ったオイルはドレーン通路から低圧室にドレーンされる。
【0047】
所定の温度に達すると、サーモスイッチ67は頭部ピン71が伸びることで作動し、リミッタピン55が連通孔56を開くため、ドレーンピン75の第1の高圧室76の油圧は一気にゼロになり、リターンスプリング74のスプリング力より勝る第2の高圧室78の油圧により、ドレーンピン75がドレーン孔73を開いてオイルをドレーンする。
【0048】
一方、サーモスイッチが作動しない状態で所定トルクに達したときは、第1の高圧室76の油圧がリターンスプリング69,70のスプリング力より大きくなり、リミッタピン60が連通孔56を開き調圧するため、第1の高圧室76の油圧+リターンスプリング74のスプリング力と第2の高圧室78の油圧のつり合いが変化し、ドレーンピン75自身が油圧で徐々にバランスしながら、ドレーン孔73を開き、第2高圧室のオイルをドレーンし、調圧する。
【0049】
第2の高圧室78には3本の高圧路83,84,85を介して高圧ポート86に連通している。オイルは高圧ポート86から高圧路83,84,85を通って第2の高圧室78に供給される。なお、収納孔50の内壁とドレーンプラグ72との間にはアルミワッシャ87が設けられている。
【0050】
通常時においては、高圧ポート86からオイルは高圧路83,84,85を通って第2の高圧室78に供給されている。第2の高圧室78のオイルはドレーンピン75の通孔77を通って第1の高圧室76に入り、さらに連通孔56を通ってリミッタピン60に作用している。したがって、第1の高圧室76と第2の高圧室78の油圧は同一になっている。
【0051】
リターンスプリング69,70は、サーモスイッチ67を介してリミッタピン60を押圧しており、リターンスプリング69,70のスプリング力は第1の高圧室76の油圧より勝っており、リミッタピン60は、連通孔56を閉止している。また、ドレーンピン75は、リターンスプリング74と、第1高圧室76の油圧反力により左方向に付勢されて、ドレーン孔73を閉止している。したがって、油圧はシールされている。
【0052】
一方、第1の高圧室76に入った油圧は、オリフィス80を通ってドレーン室81からドレーン通路を経て低圧室にドレーンされる。この通常時のトルク特性は、差動回転数の2乗に比例するトルクが得られる。
【0053】
所定の温度に達すると、サーモスイッチ67の頭部ピン71は図2中左方向に伸びて、固定ピン54に当たり、その反力でサーモスイッチ67はリターンスプリング69,70に抗して右方向に移動する。このため、リミッタピン60を押し付ける力がカットされ、リミッタピン60は強制的にリリーフされる。リミッタピン60が連通孔56を開くと、ドレーン室64内の油圧はドレーン通路から低圧室にドレーンされ、ドレーンピン75の第1の高圧室76の油圧が一気にゼロになり、リターンスプリング74のスプリング力に勝る第2の高圧室78の油圧によりドレーンピン75はドレーン孔73を開き、オイルをドレーンする。トルクはほとんどなくなる。
【0054】
次に、サーモスイッチが作動しない状態で所定の油圧に達すると、第1の高圧室76の油圧とリターンスプリング69,70のスプリング力のつり合いが変化し、リミッタピン60に作用する第1の高圧室76の油圧がリターンスプリング69,70のスプリング力に勝り、リミッタピン60は連通孔56を開き、調圧する。このため、第1の高圧室76の油圧がリターンスプリング74のスプリング力と第2の高圧室78の油圧のつり合いが変化し、第2の高圧室78の油圧が第1の高圧室76の油圧+リターンスプリング74のスプリング力に勝り、ドレーンピン75がドレーン孔73を徐々に開く。こうして、ドレーンピン75自身が油圧で徐々にバランスをとりながら、オイルをドレーンする。このときのトルク特性は、所定のトルク以上では、トルクを一定に保つことができる。
【0055】
このように、ドレーンピン75自身が油圧バランスで作動し、トルクを一定に保持することができ、温度2WD機構とトルクリミッタ機構を兼用することができる。
【0056】
図3は要部断面図である。
【0057】
図3において、ドレーンピン75の第1高圧室76内にはリターンスプリング74が縮設され、ドレーンピン75はドレーン孔73を閉止している。リターンスプリング74の両端側には座巻部90,91がそれぞれ形成され、座巻部90,91は各端部側に向かうにつれて次第に直径が大きくなるように形成されている。
【0058】
第1の高圧室76内には段部92が形成され、段部92に連続する内壁は、通孔77側に向かうにつれて次第に広がるテーパ部93が形成されている。また、リミッタプラブ55に形成した連通孔56の外側には溝94が形成され、溝94には連通孔56側に向かうにつれて次第に広がるテーパ部95が形成されている。リミッタプラブ55の外側には切欠き96が形成され、切欠き96にはドレーンプラグ72が嵌合している。したがって、リミッタプラグ55およびドレーンプラグ72はバルブ27の内部で固定されている。
【0059】
ドレーンピン75の段部92にテーパ部93に沿ってリターンスプリング74の一方の座巻部90を圧入し、リミッタプラグ55の溝94にテーパ部95に沿ってリターンスプリング74の他方の座巻部91を圧入する。これによりオリフィス80を有するドレーンピン75の回転方向の位置決めをすることができる。このように、オリフィス80を有するドレーンピン75の向きに規制することができるので、キャビテーション音を低減することができる。
【0060】
すなわち、リターンスプリング74の座巻部90,91を圧入することで、リターンスプリング74に回り止め機構を付加して、回り止めにピンの追加、溝の追加などを行うことなく、回転方向の回り止めを行うことができ、キャビテーション音を低減することができる。
【0061】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、流動抵抗発生手段としてのオリフィスを有するドレーンピンの内部にリターンスプリングの座巻部の一端を圧入し、他端をリミッタプラグに圧入して、ドレーンピンの回転方向の位置決めをするため、オリフィスを有するドレーンピンの向きを規制することができ、キャビテーション音を低減することができる。
【0062】
また、ドレーンピンの内部にリターンスプリングの一方の座巻部が収納されるテーパ部を形成するとともに、リミッタプラグにリターンスプリングの他方の座巻部が収納される溝にテーパ部を形成したため、リターンスプリングを圧入することができ、オリフィスを有するドレーンピンの向きをキャビネーション音が小さくなる回転方向に確実に位置決めすることができる。
【0063】
また、リターンスプリングの両端側の座巻部の径を両端側に向うにつれて大きくしたので、リターンスプリングの圧入を確実に行うことができ、ドレーンピンの回転方向の位置決めを所定位置に確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す全体断面図
【図2】バルブの部分断面図
【図3】要部断面図
【図4】従来例を示す図
【符号の説明】
1:コンパニオンフランジ
2:ハウジング軸部
3:フロントベアリング
4:デフケース
5,49:シール部材
6:カバー
7:溶接部
8:ハウジング
9:カム面
10,11:フラグ
12:ロータ
13:メインシャフト
14:ドライブピニオンギア
15:プランジャ室
16:プランジャ
17:リターンスプリング
18:吸入路
19:低圧室
20:連通孔
21:吸入用のワンウェイバルブ
22,26:弁座
23:チェックプラグ
24:吐出孔
25:吐出用のワンウェイバルブ
27:バルブ
28:高圧室
29:規制部材
30:オリフィス
31:オリフィス部材
32:ピン
33:ボルト
34:ベアリングリテーナ
35:スナップリング
36:通孔
37,38:ニードルベアリング
39:オイルシール
40:アキュムレータピストン
41:アキュムレータ室
42,43:Oリング
44:アキュームリテーナ
45,46:リターンスプリング
47:リアベアリング
48:潤滑用油溝
50:収納孔
51:ねじ部
52:スイッチプラグ
53:長溝
54:固定ピン
55:リミッタプラグ
56:連通孔
60:リミッタピン
61:突起
64:ドレーン室
66:低圧室
67:サーモスイッチ
68:段部
69,70,74:リターンスプリング
71:頭部ピン
72:ドレーンプラグ
73:ドレーン孔
75:ドレーンピン
76:第1の高圧室
77:通孔
78:第2の高圧室
79:シールリング
80:オリフィス
81:ドレーン室
83,84,85:高圧路
86:高圧ポート
87:アルミワッシャ
90,91:座巻部
92:段部
93,95:テーパ部
94:溝
96:切欠き
Claims (3)
- 相対回転可能な入出力軸間に設けられ、前記両軸の回転速度差に応じたトルクを伝達する油圧式動力伝達継手において、
前記入力軸に連結され、内側面にカム面を形成したハウジングと;
前記出力軸に連結されるとともに、前記ハウジング内に回転自在に収納され、複数のプランジャ室を軸方向に形成したロータと;
前記複数のプランジャ室のそれぞれに設けられる高圧室内にリターンスプリングを収容し、該リターンスプリングの押圧を受けて往復移動自在に収納されるとともに、前記両軸の相対回転時に前記カム面によって駆動される複数のプランジャと;
前記ロータに形成され、前記プランジャ室に通じる吐出孔と;
前記ロータに連結されて一体回転するバルブと;
前記バルブに設けられ、前記プランジャの駆動による吐出油の流動を受けて流動抵抗を発生する流動抵抗発生手段と;
前記バルブに設けられ、所定温度に達した時のドレーン孔の開放で高圧側から低圧側にオイルを流してトルク伝達を解除し、所定温度に達するまでは前記ドレーン孔の開度を調整して前記回転速度差の上昇に対し伝達トルクを一定値にリミットするドレーン機構と;
を備え、
前記ドレーン機構は、ドレーンプラグ内に摺動自在に収納されるドレーンピンと、ドレーンプラグに当接して設けられたリミッタプラグ内に前記ドレーンピン側に連通する連通孔を開閉するリミッタピンとを有し、前記ドレーンピンの内部にリターンスプリングの座巻部の一端を圧入し、他端を前記リミッタプラグに圧入して、前記ドレーンピンの回転方向の位置を決めたことを特徴とする油圧式動力伝達継手。 - 請求項1の油圧式動力伝達継手において、
前記ドレーンピンの内部に前記リターンスプリングの一方の座巻部が収納される段部を設けると共に、前記リミッタプラグに前記リターンスプリングの他方の座巻部が収納される溝を設け、前記高圧室の前記段部に連続する内壁は前記段部に向かうにつれて次第に広がるテーパ部を形成すると共に、前記高圧室の前記溝には前記座巻部に向かうにつれて次第に広がるテーパ部を形成したことを特徴とする油圧式動力伝達継手。 - 請求項1の油圧式動力伝達継手に於いて、
前記リターンスプリングの両端側における座巻部の径を両端側に向うにつれて大きくしたことを特徴とする油圧式動力伝達継手。
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