JP3816757B2 - 油圧式動力伝達継手のドレーン機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧式動力伝達継手に用いられるドレーン機構、特に継手油温が異常上昇したときに、トルクカット機能を有するドレーン機構に関する。
【0002】
【従来技術】
従来の油圧式動力伝達継手に用いられるドレーン機構としては、図11および図12に示すようなものがある。
【0003】
図11において、40はバルブであり、バルブ40は図示しないロータに連結され、ロータと一体で回転する。バルブ40には収納孔50が形成され、収納孔50にはねじ部51が形成され、スイッチプラグ52がねじ込まれている。バルブ40にはニードルベアリング37の受座53が形成され、受座53から収納孔50を貫通して、固定ピン54が挿入され、ニードルベアリング37が抜け止めとなり、固定されている。収納孔50の底部には金属製のシールワッシャ72が挿入され、さらにドレーンプラグ55が挿入され、ドレーンプラグ55は断面が略コの字形状に形成されている。ドレーンプラグ55には高圧側に連通するドレーン孔56が形成されている。
【0004】
バルブ40にはドレーン孔56に連通する高圧ポート57が形成され、高圧ポート57は高圧路58を介して高圧室59に連通している。
【0005】
ドレーンプラグ55内にはドレーンピン60がドレーン孔56を開閉可能に収納され、ドレーン孔56を開閉するための突起61を有する。突起61は断面が略三角形状に形成され、図12に示すように、突起61のテーパ部62がドレーン孔56の開口端部に当接する。したがって、ドレーン孔56の径が小さく形成されても、ドレーン孔56を突起61により閉止することができる。
【0006】
ドレーン孔60の突起61の反対側は開放され、凹部63が形成されている。ドレーンピンの凹部63を貫通して固定ピン54が設けられ、ドレーンピン60が移動してドレーン孔56を開いた状態では凹部63の底部が固定ピン54に当接して、ドレーンピン60の移動が規制されるようになっている。
【0007】
図11に戻って、ドレーンピン60がドレーンプラグ55に収納されるドレーン室64にはドレーン通路65が開口し、高圧ポート57からドレーン孔56を貫通したオイルは、ドレーン通路65に入り、その後低圧室にドレーンされる。
【0008】
スイッチプラグ52内には低圧室66が形成され、低圧室66内にはサーモスイッチ67が移動自在に収納される。サーモスイッチ67の外周には段部68が形成され、段部68とスイッチプラグ52との間にはリターンスプリング69が介装され、また、サーモスイッチ67の底部とスイッチプラグ52との間にもリターンスプリング70が介装されている。サーモスイッチ67は、これらのリターンスプリング69,70に付勢されて、ドレーンピン60を図中左方向に押圧し、ドレーンピン60でドレーン孔56を閉止している。
【0009】
サーモスイッチ67の先端部中央には頭部ピン71が一体に形成され、作動前においては、頭部ピン71と固定ピン54の間にはわずかな間隙が保持されている。所定温度になると、頭部ピン71が伸びて固定ピン54に当たり、反力でサーモスイッチ67がリターンスプリング69,70に抗して図中右方向に移動して、高圧ポート57からの高圧でドレーンピン60が図中右方向に移動してドレーン孔56が開くようになっている。
【0010】
サーモスイッチ67は低圧室66内にリターンスプリング69,70により付勢されて、ドレーンピン60を押圧するように収納されており、従来のように固定されていない。
【0011】
作動前においては、図11の上半分で示すように、ドレーンピン60はサーモスイッチ67を介してリターンスプリング69,70により左方向に押圧され、ドレーン孔56を閉止している。すなわち、ドレーンピン60はリターンスプリング69,70により左方向に付勢されたサーモスイッチ67により左方向に押圧されて、突起61がドレーン孔56を閉止している。
【0012】
サーモスイッチ67の頭部ピン71は、リターンスプリング69,70により付勢されてドレーンピン60に形成した凹部63に挿入されるが、固定ピン54は当接しないで、わずかな間隙が保持されている。
【0013】
所定温度になると、サーモスイッチ67の頭部ピン71が図11中左方向に伸びて固定ピン54に当たり、反力によりサーモスイッチ67はリターンスプリング69,70に抗して図11の下半部に示すように右方向に移動する。サーモスイッチ67が右方向に移動すると、ドレーンピン60を押圧する力がカットされ、ドレーンピン60はフリーになり高圧ポート57からの高圧により図11中右方向に移動してドレーン孔56を開く。このため、高圧ポート57のオイルは、矢印Aで示すように、ドレーン孔56を通って、ドレーン室64に入り、ドレーン通路65に入る。
【0014】
すなわち、図12に示すように、ドレーンピン60がドレーン孔56を開くと、高圧ポート57のオイルは、矢印Bで示すように、ドレーン室64に入り、その後ドレーン通路を通って低圧室にドレーンされる。ドレーンピン60の移動は、図12に示すようにドレーンピン60の凹部63の底部が固定ピン54に当接することでこれ以上移動することが阻止される。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
継手においては、例えば前後軸に異径タイヤを装着した場合、車速の上昇に伴って差動回転が上昇し、トルクが上昇して、継手が加熱して、破損に至る。この問題を解決するため、従来は高圧室の油をドレーンすることにより、トルクカットをしていた。しかし従来例においては、通常時高圧を塞いでおくためのスプリング荷重を大きくすることが必要な場合もあり、スペース増大を招く。それを回避し、スプリング荷重を下げ、ドレーン部の受圧面積を小さくすると、ドレーン能力が不足してしまう。また、従来例においてはコストが上昇するという問題点もあった。
【0016】
本発明は、小型化を図り、ドレーン能力が不足することなく高圧に設定することができ、さらにコストを低減することができる油圧式動力伝達継手のドレーン機構を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明は次のように構成する。
【0018】
本発明は、入力軸と出力軸の回転速度差に応じたトルクを伝達する油圧式動力伝達継手に用いられ、ロータに形成されたオリフィスに連通する連通溝とカム谷に相対する位置に前記ロータに形成された油給孔を開放させる補給溝と該補給溝に連通する通孔が形成されたプレートと油温が上昇したとき前記通孔を閉止し該通孔に連通する油路に設けられた温度スイッチを備える。
【0019】
また、本発明では、ハウジング内であって、通孔を開閉し油路に連通する位置に温度スイッチを配置している。
【0020】
このような構成を備えた本発明によれば、
ロータに形成されたオリフィスに連通する連通溝とカム谷に相対する位置にロータに形成された油給孔を開放させる補給溝と補給溝に連通する通孔が形成されたプレートを設け、
油温が上昇したとき通孔を閉止し通孔に連通する油路に設けられた温度スイッチを備えたため、
従来のようにスプリングを用いる必要がないため、小型化を図ることができる。また、ドレーン能力が不足しないため、高圧を設定することができる。さらに、構成が簡単になるため、コストを低減することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施形態を示す横断面図である。
図1において、1は内側面に2つ以上の山を有するカム面2を形成したカムであり、カム1はハウジング3に固定され、またハウジング3は図示しない出力軸に連結され、出力軸と一体で回転する。
【0022】
4はハウジング3内に回転自在に収納されたロータであり、ロータ4は入力軸5に結合され、入力軸5と一体で回転する。ロータ4には、軸方向に複数個のプランジャー室6が形成され、プランジャー室6内は複数個のプランジャー7がリターンスプリング8を介して摺動自在に収納されている。
【0023】
ロータ4の底部には、オリフィス9が形成され、ロータ4と密着して設けられている。ワッシャプレート(プレート)10には連通溝11が形成されている。
【0024】
連通溝11はオリフィス9を介して各プランジャー室6に連通している。オリフィス9は、プランジャー室6ごとに複数個形成され、プランジャー7の吐出工程において、流動抵抗発生手段としての機能を有し、また、プランジャー7の吸入工程において、プランジャー室6に油を吸入する吸入孔としての機能を有する。
【0025】
連通溝11の外側には排油溝30が形成されている。したがって、連通溝11から外側にリークする油は、排油溝30を通って、低圧側に排出される。ロータ4の外周側には各プランジャー室6に通じる複数個の補給孔12が形成され、補給孔12はプランジャー7の上死点前後の所定の区間において、プランジャー室6に油の補給ができるようになっている。
【0026】
すなわちワッシャプレート10には補給溝13が設けられ、補給溝13、補給孔12を通って油がプランジャー室6に補給される。
【0027】
14はストッパリングであり、ストッパリング14はハウジング3の内周に設けられ、カム1が図中右方向に移動するのを阻止する。ハウジング3の内周とカム1の外周の間にはOリング15が設けられ、また、入力軸5の外周とカム1の内周の間にはXリング16が設けられている。カム1には注油孔17が形成され、注油孔17はプラグ18により閉止されている。カム1の外側にはダストカバー19が設けられている。
【0028】
ハウジング3の内周と入力軸5の外周には、Xリング20が設けられ、ハウジング3の内周に設けられたストッパリング21はベアリング22の位置決めをしている。ハウジング3にはボルト孔23が形成され、また、ハウジング3にアキュムレータ室24が形成されている。
【0029】
アキュムレータ室24には摺動自在にアキュムレータピストン25が収納され、アキュムレータピストン25は内圧に応じて移動し、温度変化による封入油の体積変化を吸収する。26は蓋部材であり、蓋部材26はアキュムレータピストン25のストッパとしての機能も有する。アキュムレータピストン25の内部に空気27が入れられている。
【0030】
図2はハウジング3を示す図である。
図2において、3はハウジングであり、ハウジング3には周方向に複数個のアキュムレータ室24が形成されている。アキュムレータ室24とアキュムレータ室24との間にはボルト孔23がそれぞれ形成されている。
【0031】
10はワッシャプレートであり、ワッシャプレート10には周方向に4個の補給溝13が形成されている。
【0032】
28は温度スイッチ収納孔、29はワッシャプレート10の通孔である。
プランジャー室であり、プランジャー室6にはロータ4に形成された補給孔12が開口している。
【0033】
図3はワッシャプレート10を示す図である。
図3において、6はロータ4に形成されたプランジャー室、28はハウジング3に形成された温度スイッチ収納孔、29はワッシャプレート10に形成された通孔、12はロータ4の底部に形成された補給孔である。
【0034】
また、9はロータ4に形成されたオリフィス、11はオリフィス9に連通する連通溝、30は連通溝11の外周に形成された排油溝である。
【0035】
ワッシャプレート10の内側には周方向に複数個の補給溝13がそれぞれ形成されている。
【0036】
補給溝13は、カム谷に相対する位置に形成され、ロータ4の補給孔12を開放させる。ワッシャプレート10の補給溝13と補給溝13との間には凸部31がそれぞれ形成されている。吐出工程にあるプランジャー7はオリフィス9により流動抵抗を受けており、このときロータ4の補給孔12はワッシャプレート10の凸部31により閉止されている。したがって補給孔12から油が流出することはない。吸入工程に移ると、プランジャー7はリターンスプリング8により押し戻されながら、ロータ4の補給孔12がワッシャプレート10の補給溝13の位置にくると、補給孔12が開放され、油を吸い込む。
【0037】
黒丸で示す補給孔12はワッシャプレート10の凸部31により閉止されている状態を示し、白丸で示す補給孔12は開放されている状態を示している。
【0038】
図4は吸入時の要部断面図である。
図4において、4はロータであり、ロータ4内にはプランジャー7が収納されるプランジャー室6が形成されている。ロータ4は入力軸5にスプライン結合されている。ロータ4の底部には補給孔12が形成され、プランジャー室6に連通している。また、ロータ4の底部にはオリフィス9が形成され、吐出工程にあるプランジャーはオリフィス9による流動抵抗を受ける。
【0039】
10はワッシャプレートであり、ワッシャプレート10はロータ4に当接して設けられる。ワッシャプレート10の一面側には補給溝13が形成され、補給溝13はロータ4の補給孔12に連通している。また、ワッシャプレート10の他面側には通孔29が形成され、通孔29は補給溝13に連通している。ワッシャプレート10の一面側には連通溝11が形成され、連通溝11はオリフィス9に連通している。
【0040】
ハウジング3には温度スイッチ収納孔28が形成され、温度スイッチ収納孔28にはスプリング33を介して温度スイッチ32が収納される。
【0041】
34は低圧室であり、35は低圧室34からの油が流入する油路である。油路35はワッシャプレート10の通孔29に連通している。したがって、ロータ4の補給孔12がワッシャプレート10の補給溝13の位置にくると補給孔12は、補給溝13、通孔29を介して油路35に開放され、プランジャー室6に油が補給される。油温が上昇したときは、温度スイッチ32がスプリング33に抗して移動し、ワッシャプレート10の通孔29を閉止する。油路35からの油は、プランジャー室6に供給されなくなる。
【0042】
図5は吐出時の要部断面図である。
図5において、吐出時には、ロータ4の補給孔12はワッシャプレート10により閉止されている。したがって吐出時に油は補給孔12からもれることはない。
【0043】
プランジャー7がカム1により押し込まれると、プランジャー室6の油はオリフィス9を通り、そのとき油圧圧力によりトルクが発生する。
【0044】
次に、作用を説明する。
吐出工程のときは、図5に示すように、プランジャー7はオリフィス9による流動抵抗を受けている。このときのトルク特性を図6のAに示す。トルクTは差動回転数ΔNの2乗に比例したものになる。なお、ロータ4の補給孔12はワッシャプレート10により閉止されている。このため、プランジャー室6の油は、補給孔12から流出することはない。
【0045】
次に、吸入工程に移ると、プランジャー7はリターンスプリング8により押し戻されながら、ロータ4の補給孔12が図7の矢印Bで示すように、ワッシャプレート10の補給溝13の位置にくると、ロータ4の補給孔12は、ワッシャプレート10の補給溝に連通する。このため、図8の矢印Cで示すように油路35からの油は、ワッシャプレート10の通孔29、補給溝13、ロータ4の補給孔12を通ってプランジャー室6内に補給される。
【0046】
油温が上昇すると、ハウジング3内に収納された温度スイッチ32が作動し、リフトしてワッシャプレート10の通孔29を閉止する。このため、図9の矢印Dで示すように油路35からの油は、ワッシャプレート10の通孔29、補給溝13、ロータ4の補給孔12からプランジャー室6へと供給されなくなる。
【0047】
その結果、プランジャー7への油供給が断たれることになり、吐出工程で吐出する油がなくなり、流動抵抗を発生させることができず、トルクカット(2WD化)の状態になる。このときのトルク特性は、図10のEで示され、トルクが発生しなくなる。このように、異常な継手の温度上昇に対して、トルクカット(2WD化)することにより、これ以上の温度上昇を阻止することができ、継手の保護を図ることができる。
【0048】
本実施形態においては、従来のようにスプリングを用いる必要がないため、小型化を図ることができる。
また、ドレーン能力が不足しないため、高圧を設定することができる。さらに、構成が簡単になるため、コストを低減することができる。
【0049】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、ロータに形成されたオリフィスに連通する連通溝とカム谷に相対する位置にロータに形成された油給孔を開放させる補給溝と補給溝に連通する通孔が形成されたプレートを設け、
油温が上昇したとき、通孔を閉止し通孔に連通する油路に設けられた温度スイッチを備えたため、
従来のようにスプリングを用いる必要がないため、小型化を図ることができる。また、ドレーン能力が不足しないため、高圧を設定することができる。さらに、構成が簡単になるため、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す横断面図
【図2】ハウジングを示す図
【図3】ワッシャプレートを示す図
【図4】吸入時の要部断面図
【図5】吐出時の要部断面図
【図6】通常時のトルク特性を示すグラフ
【図7】補給孔の移動を説明する図
【図8】油の補給を説明する図
【図9】温度スイッチ作動時の説明図
【図10】温度スイッチ作動時のトルク特性を示すグラフ
【図11】従来例を示す図
【図12】従来例の動作を説明する図
【符号の説明】
1:カム
7:カム面
3:ハウジング
4:ロータ
5:入力軸
6:プランジャー室
7:プランジャー
8:リターンスプリング
9:オリフィス
10:ワッシャプレート
11:連通溝
12:補給孔
13:補給溝
14,21:ストッパリング
15:Oリング
16,20:Xリング
17:注油孔
18:プラグ
19:ダストカバー
22:ベアリング
23:ボルト孔
24:アキュムレータ室
25:アキュムレータピストン
26:蓋部材
27:空気
28:温度スイッチ収納孔
29:通孔
30:排油溝
31:凸部
32:温度スイッチ
33:スプリング
34:低圧室
35:油路
Claims (2)
- 入力軸と出力軸の回転速度差に応じたトルクを伝達する油圧式動力伝達継手に用いられ、
ロータに形成されたオリフィスに連通する連通溝とカム谷に相対する位置に前記ロータに形成された油給孔を開放させる補給溝と該補給溝に連通する通孔が形成されたプレートと、油温が上昇したとき前記通孔を閉止し、該通孔に連通する油路に設けられた温度スイッチと、
を備えたことを特徴とする油圧式動力伝達継手のドレーン機構。 - 請求項1記載の油圧式動力伝達継手のドレーン機構において、
前記ハウジング内であって、前記通孔を開閉し、前記油路に連通する位置に前記温度スイッチを配置したことを特徴とする油圧式動力伝達継手。
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JP2001109454A JP3816757B2 (ja) | 2001-04-09 | 2001-04-09 | 油圧式動力伝達継手のドレーン機構 |
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2001
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