JP3800306B2 - 摩擦クラッチ及びこれを用いた給紙装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、摩擦クラッチ及びこれを用いた給紙装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェット式記録装置の給紙装置では、側面視略D型の給紙ローラから紙送りローラへ向けて記録用紙を給紙し、その記録用紙の先端が紙送りローラに引き渡された後に、給紙ローラの駆動を停止すると共に紙送りローラの駆動を継続して、記録ヘッドの存する搬送路に用紙を送り出す機構が採用されている。そして、小型の給紙装置では、装置の小型化と低価格化を図るために、単一の駆動モータによりこの2つのローラの所要の動作を行えるように工夫されている。
【0003】
具体的には、単一の駆動モータからの駆動力を給紙ローラ及び紙送りローラへ伝える動力伝達歯車列を設け、その歯車列中に、給紙ローラ系歯車への駆動力の伝達を入り切りするクラッチ機構を設けている。このクラッチ機構は、上記歯車列中に介在される中間歯車と、この中間歯車を歯車列中の噛み合わせ位置に移動させる切換レバーとから構成されており、記録ヘッドを搭載したキャリッジが印刷領域からホームポジションに戻ったときに、上記切換レバーがキャリッジに押されて上記中間歯車が噛み合わせ位置に移動し、即ちクラッチ機構がONし、給紙ローラの回転駆動ができる状態に移行するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のクラッチ機構は、切換レバーにより中間歯車をその軸方向に移動させて、クラッチのオン・オフを行う構造であるため、小型化、特に軸方向の小型化を図る上で不適切であり、また切換レバー及びその復帰バネが大型化し構造が複雑化するという課題があった。また、従来公知の摩擦クラッチも両板挟持構造であり、同様に部品点数が多く、構造が複雑であった。
【0005】
本発明の目的は、記録装置の小型化を図ることが可能な摩擦クラッチ及びこれを用いた給紙装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本願請求項1の発明に係る摩擦クラッチは、回転駆動される歯車体の第1の歯車の片面側に軸方向に同軸的に円筒部及び第2の歯車とを設け、その円筒部に周方向に摺動可能にトリガレバーの環状部をはめ込み、このトリガレバーの環状部の直径方向一側に突出させたアームに係止爪を設けると共に、環状部の直径方向他側に突出させた保持部に、弾性体及び該弾性体により前記円筒部の表面に常時圧接される摺接片を設けたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、摩擦クラッチのトリガレバーに、バネ及び摺接片を一体的に組み入れて、保持部内に挿入したバネにより円筒部に摺接片を軽く摺接させ、共回りと相対的移動の両方を可能にしているので、従来の切換レバーにより中間歯車をその軸方向に変位させる構成に較べ、軸方向の小型化を図ることができると共に、部品点数の少ない簡単な構成の摩擦クラッチを得ることができる。
【0008】
本発明に係る給紙装置は、給紙ローラに対する駆動力の伝達をオン・オフする1回転クラッチと、該1回転クラッチのオン・オフを決定するトリガレバーを備えた摩擦クラッチとを設け、給紙ローラの駆動モータの逆転で前記摩擦クラッチのトリガレバーを前記1回転クラッチから離れる方向に揺動(レリース)させ、正転で前記1回転クラッチに近づく方向に揺動させて、給紙ローラが1回転した段階で前記1回転クラッチをオフにし、給紙ローラを停止させるように構成したことを特徴とする。
【0009】
この特徴によれば、給紙ローラが1回転した段階で前記1回転クラッチをオフにし、給紙ローラを停止させることができ、かつ、紙送りローラの回動はそのまま続行させることができる。
【0010】
また、トリガレバーと1回転クラッチの組み合わせから成るため、従来より構造が簡略化され、横幅が小さく動作も安定した給紙装置を提供することが可能である。
【0011】
上記給紙装置において、動力伝達歯車に同軸的に設けた円筒部に周方向に相対移動可能かつ摩擦力により連行可能にトリガレバーの環状部をはめ込み、給紙ローラ用の1回転クラッチのオン・オフを行えるようしたことを特徴とする。この特徴によれば、摩擦力によりトリガレバーの連行を可能にしているので、部品点数の少ない給紙装置を得ることができる。
【0012】
上記給紙装置において、トリガレバーの前記1回転クラッチに近づく方向への揺動タイミングを、モータの正転開始時より遅らせる手段を設けたことを特徴とする。この特徴によれば、トリガレバーによる1回転クラッチのオン・オフ動作の確実性を向上させることができる。
【0013】
また本発明に係る記録装置は、上記のいずれかに記載された給紙装置を備えて成る。これにより、記録装置の小型化を図れる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
図1において、符号10は電気的駆動モータ、符号20は円筒状の紙送りローラ、符号30は側面視略D型のフリクションローラから成る給紙ローラである。電気的駆動モータ10は、紙送りローラ20及び給紙ローラ30に共通の駆動モータであり、紙送りローラ20は歯車体G4、G5を介して駆動される。また、給紙ローラ30は、摩擦クラッチ40、歯車体G2及び1回転クラッチ50を介して駆動される(図2参照)。この摩擦クラッチ40は、詳細は後述するが、動力伝達歯車である歯車体G3とその円筒部41に摺動可能にはめ込まれたトリガレバー42とで構成されている。また、1回転クラッチ50は、歯車体G1、ラチェット51、クラッチ環52、支持円板53及びバネ54から構成されている。
【0015】
上記の歯車体G1は、歯車G11とそれより小径のラチェット51を同軸的に一体に有する。また、歯車体G2は、歯車G21、G22を同軸的に一体に有する。また、歯車体G3は、歯車G31と、その片面側に軸方向に順次同軸的に設けた円筒部41及び歯車G32とを備えて構成されている。また歯車体G4は、歯車G41、G42、G43を同軸的に一体に有する。更に歯車体G5は、歯車G51、G52を同軸的に一体に有する。
【0016】
モータ10の駆動力は、その出力軸に設けた歯車11より、歯車体G4の歯車G41、G42、歯車体G5の歯車G51、G52を経て、紙送りローラ20と一体の歯車G6に伝えられる。
【0017】
また、上記モータ10の駆動力は、歯車体G4の歯車G43より、順次に摩擦クラッチ40を構成する歯車体G3の歯車G31、G32、歯車体G2の歯車G21、G22、1回転クラッチ50を構成する歯車体G1の歯車G11、ラチェット51、クラッチ環52、及び支持円板53を介して、給紙ローラ30へ伝達できるように構成されている。そして、1回転クラッチ50の入り切りは、摩擦クラッチ40のトリガレバー42により行われるようになっている。
【0018】
図2及び図3に摩擦クラッチ40の構成を示す。この摩擦クラッチ40は、歯車G31の片面側に軸方向に順次同軸的に円筒部41及び歯車G32とを設けた歯車体G3と、その円筒部41に摺動可能にはめ込まれたトリガレバー42とで構成されている。
【0019】
トリガレバー42は、歯車体G3の円筒部41に摺動可能にはめ込まれる環状部43と、その直径方向一側に突出させたアームに設けた係止爪47と、環状部43の直径方向他側に突出させた保持部である鞘44と、その内部に設けた弾性体としてのバネ45と、該バネ45により常時円筒部41の表面に圧接される摺接片(可撓子)46とを有している。即ち、トリガレバー42は、それ自体に外力が加えられなければ、バネ45で摺接片46が歯車体G3の円筒部41に当接している摩擦力により、歯車体G3と一体に回動する。しかし、係止爪47が他の部材に触れて阻止された場合、即ち1回転クラッチ50のクラッチ環52の係合突起55に係止した場合には、環状部43が円筒部41の周りに滑って、歯車体G3のみが回動し、クラッチ環52は移動しない状態となる。
【0020】
1回転クラッチ50は、歯車体G1と、その側面に同軸的に一体に設けられたラチェット51と、支持円板53に設けたピン56に差込穴57を揺動自在に挿通して枢支したクラッチ環52と、給紙ローラ30に同軸的に固定された支持円板53と、上記ピン56を中心として揺動するクラッチ環52を周方向の一側に常時付勢するバネ54とから構成されている。クラッチ環52は円環状に構成されており、その円環の内側の一箇所にクラッチ爪58が突設されていると共に、外周面の一箇所に係合突起55が突設されている。
【0021】
1回転クラッチ50単独の場合、クラッチ環52はバネ54の働きにより常時クラッチ爪58がラチェット51に係合する位置にあり、そのラチェット爪の働きにより、一方向にのみ回転できる状態にある。しかし、摩擦クラッチ40のトリガレバー42が歯車体G3に連行されて回動し、その係止爪47がクラッチ環52の係合突起55に係止すると、クラッチ環52がピン56を支点として回動し、そのクラッチ爪58がラチェット51から離れる。このため、1回転クラッチ50が切断され、給紙ローラ30による記録用紙の給紙が停止する。
【0022】
次に、上記機構による給紙動作を図4〜図7を参照しながら説明する。
(1)まず、紙送りモータ10を僅かに逆転(時計方向CWに回転)させる。このモータ10の逆転(CW)過程では、摩擦クラッチ40において歯車G3とトリガレバー42が摩擦で繋がれ、トリガレバー42は図4から見ると矢印P1で示すように、左回りに回る。即ち、歯車体G3に連行されて、1回転クラッチ50から離れる方向に揺動(レリース)され、トリガレバー42が図4の点線位置から実線位置に移行し、係止爪47が外れる(図4)。この時クラッチ爪58とラチェット51の頭が当たらなければクラッチ環52は図5の位置へ動く。
【0023】
(2)記録ヘッドのキャリッジ2を案内ロッド1に沿ってトリガレバー42の在る位置まで移動させ、図5に示すように、そのキャリッジ止部3にて、トリガレバー42を戻らないように押さえる。その後、紙送りモータ10を正転(反時計方向CCWに回転)させ、歯車体G1を図5に矢印P2で示す方向に回転させて、クラッチ爪58とラチェット51を噛ませる(図5)。このキャリッジ止部3は、トリガレバー42の1回転クラッチ50に近づく方向への揺動タイミングを、モータ10の正転開始時より遅らせる手段として機能する。このようにキャリッジ止部3にてトリガレバー42を非作用位置に係留させ遅らせる理由は、クラッチ爪58とラチェット51の頭が当たる場合に、トリガレバー42を押さえずに紙送りモータを逆転(CCW)すると、クラッチ爪58がラチェット51と噛み合う前にトリガレバー42が戻ってしまうからである。
【0024】
図5において、上記クラッチ爪58がラチェット51と噛み合うことで、上記一方向クラッチ50がON状態になる。即ち、給紙ローラ30を一方向に回転させて用紙を送り出しローラ20に向けて送り出すことができると共に、給紙ローラ30を逆方向に回動させることが可能な状態になるため、必要に応じ、用紙を逆方向に引き出すことが可能になる。
【0025】
(3)給紙を行う場合は、キャリッジ2をトリガレバー42から離した後、紙送りモータ10を正転(CCW)させる。図6に示すように、紙送りモータ10の正転(CCW)により、ON状態の一方向クラッチ50を介して、図6に示す矢印P2方向に、給紙ローラ30が正転(給紙)し、給紙が行われる。このときトリガレバー42の係止爪47はクラッチ環52側へ近づいた状態となり、その係止爪47下をクラッチ環52の環状外周面が滑って行く(図6)。
【0026】
(4)給紙ローラ30がほぼ1回転すると、用紙の先端は紙送りローラ20に達しニップされる。この時点において、クラッチ環52の係合突起55が、トリガレバー42の係止爪47の位置まで移動してきており、両者が係合することにより、図7に示すようにクラッチ環52はピン56を支点として揺動し、そのクラッチ爪58がラチェット51から離れて、一方向クラッチ50がOFFする。このとき、紙送りローラ20は回転を続け、従って歯車体G3も回転を続けるが、トリガレバー42は単にその環状部43が歯車体G3の円筒部41に摺動可能にはめ込まれているだけであり、トリガレバー42と歯車体G3は相対的に滑るため、紙送り動作には何ら支障を来さない。
【0027】
上記のように、紙送りモータ10の正転(CCW)で1回転クラッチ50が切られることにより、給紙ローラは1回転した後に止まる(図7)。即ち、給紙ローラは1回転でその役割を終え、その後は紙送りローラ20により紙の送り出しが続行される。
【0028】
以上述べたように、本実施形態によれば、摩擦クラッチ40のトリガレバー42に、バネ45及び摺接片46を一体的に組み入れて、鞘44内に挿入したバネ45により円筒部41に摺接片46を軽く摺接させ、共回りと相対的移動の両方を可能にしているので、従来の切換レバーにより中間歯車をその軸方向に変位させる構成に較べ、軸方向の小型化を図ることができると共に、部品点数の少ない簡単な構成の摩擦クラッチを得ることができる。
【0029】
また、この摩擦クラッチと1回転クラッチとを組み合わすことにより、給紙ローラを1回転させて用紙の送り出しを行わせた後に給紙ローラを停止させ、しかし、送り出しローラの動きは続行させるという動作を、同じ駆動モータの駆動力で行わせることができる。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の摩擦クラッチによれば、摩擦クラッチのトリガレバーに、バネ及び摺接片を一体的に組み入れて、保持部内に挿入したバネにより円筒部に摺接片を軽く摺接させ、共回りと相対的移動とを可能にしているので、従来の切換レバーにより中間歯車をその軸方向に変位させる構成に較べ、軸方向の小型化を図ることができると共に、部品点数の少ない簡単な構成の摩擦クラッチを得ることができる。
【0031】
また本発明の給紙装置によれば、給紙ローラが1回転した段階で前記1回転クラッチをオフにし、給紙ローラを停止させることができ、かつ、送り出しローラの回動はそのまま続行させることができる。また、トリガレバーと1回転クラッチの組み合わせから成るため、従来より構造が簡略化され、横幅が小さく動作も安定した給紙装置を提供することが可能である。
【0032】
更にトリガレバーの前記1回転クラッチに近づく方向への揺動タイミングを、モータの正転開始時より遅らせる手段を設けた構成では、1回転クラッチのオン・オフ動作の確実性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の給紙装置を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の給紙装置の歯車の係合関係を示す概略図である。
【図3】本発明の摩擦クラッチを示す分解斜視図である。
【図4】本発明のクラッチ動作の説明に供する図で、トリガレバーのレリース時を示した図である。
【図5】本発明のクラッチ動作の説明に供する図で、1回転クラッチがオンした状態を示した図である。
【図6】本発明のクラッチ動作の説明に供する図で、1回転クラッチがオンした状態で、給紙ローラと共に回動して行く状態を示した図である。
【図7】本発明のクラッチ動作の説明に供する図で、給紙ローラがほぼ1回テンして1回転クラッチがオフした状態を示した図である。
【符号の説明】
2 キャリッジ2
3 キャリッジ止部
10 モータ
11 歯車
20 紙送りローラ
30 給紙ローラ
40 摩擦クラッチ
41 円筒部
42 トリガレバー
43 環状部
44 鞘(保持部)
45 バネ
46 摺接片
47 係止爪
50 1回転クラッチ
51 ラチェット
52 クラッチ環
53 支持円板
54 バネ
55 係合突起
56 ピン
57 差込穴
58 クラッチ爪
G1、G2、G3、G4、G5 歯車体
Claims (1)
- 回転駆動される歯車体の第1の歯車の片面側に軸方向に同軸的に円筒部及び第2の歯車とを設け、その円筒部に周方向に摺動可能にトリガレバーの環状部をはめ込み、
このトリガレバーの環状部の直径方向一側に突出させたアームに係止爪を設けると共に、環状部の直径方向他側に突出させた保持部に、弾性体及び該弾性体により前記円筒部の表面に常時圧接される摺接片を設けたことを特徴とする摩擦クラッチ。
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