JP3793606B2 - パーオキサイド及びこれを含有する樹脂組成物、成形材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂の硬化剤として有用なターシャリーアミルパーオキシイソプロピルカーボネート及びこれを硬化剤として含有する樹脂組成物更にはこれらの硬化剤及び樹脂を含有するシートモールディングコンパウンド(以下SMCと略す)、バルクモールディングコンパウンド(以下BMCと略す)等の成形材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
SMC、BMC等に代表される成形材料は不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂に硬化剤を加え、更に必要に応じて、増粘剤、充填剤、低収縮剤、離型剤、重合禁止剤、ビニル型単量体を混合した後、シート状、ペレット状又はバルク状等に加工したものである。
【0003】
これらの成形材料は圧縮成形、トランスファー成形、射出成形等各種のプレス成形法で、自動車部品、電気部品、住設機器、住設資材、浄化槽などに成形される等工業的に広く用いられるようになったきた。このような成形材料に使用される硬化剤はプレス成形時における成形材料の品質や生産性に大きな影響を与えるので、その選択には充分な注意が必要である。
【0004】
成形材料は、成形品に成形、硬化させる上での生産性を考慮して一般的には100℃ないし160℃の温度で成形、硬化されるため、このような温度で分解する各種のパーオキサイド及びアゾ化合物が硬化剤として使用されている。それらのなかでも、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート(以下TBPBと略す)はそのトータルバランスの良さから広く使用されている。
【0005】
成形材料を使用して成形品を製造する方法は、初期投資費用が少ない、デザインが自由である等の理由から、鋼板プレス成形法に代わる自動車部品、電気部品、住設機器などの中程度の規模における生産手段として見直され、最近その需要が増大している。
これに伴い成形サイクルの短縮化による生産性向上を目的とした高速プレス機の開発や自動SMCチャージ機等プレス成形前後の工程の機械化、自動化が一段と進んできた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記したような生産工程の変化に伴い、硬化剤にも生産サイクルの短縮化を可能にするような性能が要求されてきた。サイクルの短縮化を可能にする性能とは成形材料がプレス機のモールド内に流動するのに要する時間(以下プレートゲルタイムと略す)を短かくし、且つ成形材料がプレス機のモールド内に流動したのち硬化に到るまでの時間(以下立ち上がり時間と略す)を短くすることを可能にする性能である。前記したTBPBはブレ−ドゲルタイムは十分短いというものの、立ち上がり時間が長いという欠点がある。そのためプレートゲルタイムが充分に短く且つ、立ち上がり時間が短かいという性能を備えた硬化剤の開発が要望されている。尚、立ち上がり時間は短いほど又、プレートゲルタイムについては適切な範囲で短い方が好ましい。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記したような要望を満たすべく鋭意研究を重ねた結果、ターシャリーアミルパーオキシイソプロピルカーボネートを硬化剤として用いることによりブレ−ドゲルタイム及び立ち上がり時間を短かくできるということを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
(1)次の式(1)で示されるターシャリーアミルパーオキシイソプロピルカーボネート
【0009】
【化2】
【0010】
(2)ターシャリーアミルパーオキシイソプロピルカーボネート及び熱硬化性樹脂を必須成分として含有する樹脂組成物
(3)熱硬化性樹脂が不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂である前項(2)記載の樹脂組成物
(4)ターシャリーアミルパーオキシイソプロピルカーボネート及び熱硬化性樹脂を必須成分として含有する成形材料
(5)熱硬化性樹脂が不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂である前項(4)記載の成形材料
(6)ターシャリーアミルパーオキシイソプロピルカーボネートを硬化剤として使用することを特徴とする熱硬化性樹脂の硬化方法
(7)熱硬化性樹脂が不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂である前項(6)記載の硬化方法
に関する。
【0011】
【実施の形態】
本発明を詳細に説明する。
本発明のターシャリーアミルパーオキシイソプロピルカーボネート(以下TAPIPCと略す)は、通常のパーオキサイドの製造方法に準じて製造することができる。即ち、例えば、t−アミルハイドロパーオキサイドとイソプロピルクロロホーメートを通常の反応条件、即ち、水酸化ナトリウム等のアルカリ剤の存在下で、反応温度20℃以下、1〜2時間の縮合反応を行うことによって得ることが出来る。
【0012】
本発明における熱硬化性樹脂としては、樹脂の構造中に重合可能なビニル基を有し、加熱により三次元硬化が可能な樹脂であれば何れも使用可能であるが、好ましいものは不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂である。
【0013】
ここで不飽和ポリエステル樹脂とは、不飽和二塩基酸を1成分として必ず使用し、必要により飽和二塩基酸を併用してグリコール類と加熱脱水縮合させて得らた反応物をスチレン等のビニル系単量体で希釈したものを言う。用いうる不飽和二塩基酸の例としては、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等が挙げられる。又、用いうる飽和二塩基酸の例としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、こはく酸、アジピン酸、セバチン酸等が挙げられる。更に用いうるグリコール類の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキサンジオール、ビスフェノールA、プロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。このような不飽和ポリエステル樹脂は市場から容易に入手することが可能である。
【0014】
次にビニルエステル樹脂とは、ポリエポキシドとα,βー不飽和一塩基酸の当量反応物をスチレン等のビニル系単量体で希釈したもの言う。用いうるポリエポキシドの例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のエピビス型グリシジルエーテル、ノボラック型グリシジルエーテル、臭素化グリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等の含窒素ポリエポキシド、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のグリシジルエステル、グリコール型グリシジルエーテル等が挙げられる。又、用いうるα,βー不飽和一塩基酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸等が挙げられる。
本発明においては、硬化させるべき樹脂が不飽和ポリエステル樹脂とビニルエステル樹脂の混合物であってもよい。
【0015】
本発明の樹脂組成物は、熱硬化性樹脂100重量部に対して通常TAPIPCを0.1〜3重量部、好ましくは0.5〜2重量部の割合で含有する。0.1重量部未満では硬化剤としての作用が不十分になるおそれがあり、又3重量部以上を使用しても、硬化剤としての作用が、3重量部のときとそれ程変わらないので経済性の面で不利である。
【0016】
本発明の成形材料は本発明のTAPIPC及び熱硬化性樹脂を必須成分として使用し、そのほか必要により成形材料の製造に一般的に用いられる増粘剤(例えば酸化マグネシウム、微粉シリカ、水酸化カルシウムなど)、充填剤(例えば炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルクなど)、低収縮剤(例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)離型剤(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ワックスなど)禁止剤(例えばパラベンゾキノン、ハイドロキノンなど)ビニル型単量体(例えばスチレン、メチルメタクリレート、ジアリルフタレート、ビニルトルエンなど)、ガラス繊維(例えばチョップドストランド、コンティニュアスマットなど)等を混合して調製される。この場合熱硬化性樹脂組成物とTAPIPCの含有割合は熱硬化性樹脂組成物100重量部にたいしてTAPIPCを通常0.1〜3重量部好ましくは0.5〜2重量部である。任意成分である、増粘剤、充填剤、低収縮剤、離型剤、重合禁止剤、ビニル型単量体、ガラス繊維等は通常成形材料を調製する際に用いられる量に準じて使用される。
【0017】
本発明の成形材料はこれを調製した後たとえば、1〜2日、35〜50℃の温度をかけるというような条件で増粘処理を施すのが好ましい。
【0018】
本発明のTAPIPCは上記のように、あらかじめ混合してから成形材料としても良いし、又熱硬化性樹脂を硬化せしめる時に直接添加してもよい。本発明のTAPIPCを用いて熱硬化性樹脂を硬化せしめる時も通常熱硬化性樹脂100重量部に対してTAPIPC0.1〜3重量部、好ましくは0.5〜2重量部の割合で使用される。
【0019】
本発明のTAPIPCは、必要に応じて、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート(以下TBPBと略す)やターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(以下TBPIPCと略す)ターシャリーブチルイソブチレート(以下TBPIBと略す)等の公知の硬化剤と併用してもよい。2種以上の硬化剤を併用する場合は本発明のTAPIPCが全硬化剤中50重量%、好ましく70重量%以上占めるような割合で使用するのが好ましい。
【0020】
本発明の樹脂組成物又は成形材料を用いて成形物を得る際の成形温度は通常100℃以上、好ましくは120℃以上160℃以下である。100℃未満では、TAPIPCが硬化剤として十分に作用しなかったり、又逆に160℃を越える場合には、型内での流動性に問題が生じることがある。
成形方法としては圧縮成形、トランスファー成形、射出成形等各種のプレス成形法が採用出来る。
【0021】
本発明の樹脂組成物又は成形材料は、自動車部品、電気部品、住設機器、住設資材、浄化槽等の成形物を製造するのに好適に使用される。
【0022】
本発明のTAPIPCを含有する樹脂組成物あるいは成形材料はプレス成形時にモールド中に流動するのに要する流動時間(プレートゲルタイム)が充分に短く、又モールド中に流動してから最終的な硬化に至るまでの時間(立ち上がり時間)を短かくできるという性能において優れている。
【0023】
【実施例】
以下に実施例、比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、何れも例示のためであり、これらの実施例が本発明を限定するものではない。実施例、比較例において「部」は重量部を意味する。
【0024】
実施例1
100ccのビ−カ−に水9部、ついでt−アミルハイドロパ−オキサイドを13.1部と25%苛性ソ−ダ水溶液11.4ぶを入れ、充分撹拌する。次に10℃に冷却しながら、イソプロピルクロロホ−メイト12.4部を40分かけて滴下する。滴下終了がさらに同温度で60分間反応を続ける。次に分液ロ−トで反応液を分液して、TAIPIPC18.5部を得た。このもののヨ−ド滴定法による活性酸素量は7.57%であった。ここで活性酸素量とは次の式で定義される値を言う。
活性酸素量(%)=((過酸化結合の数×16)÷分子量)×純度(%)
【0025】
実施例2
3000ccの容器にSMC用不飽和ポリエステル樹脂(大日本インキ化学工業(株)製ポリライトPS−281)200部と本発明のTAIPIPC2部を混合し本発明の樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物に、ポリスチレン系低収縮剤(大日本インキ化学工業(株)製ポリライトPS−954)40部、炭酸カルシウム300部、ステアリン酸亜鉛10部及び酸化マグネシウム2部、6mmチョップストランド(日東紡製 CS−6E227S)120部を加え、万能混合機で5分間撹拌混合し、本発明の成形材料を得た。次に、これをポリエチレンテレフタレ−トフイルムに包み込み、40℃の恒温室に1日置くことにより増粘させた。この増粘された成形材料ついてリアクトメ−タプレス機(SMCテクノロジ−社製)を用いてプレス成形し、成形硬化物を得た。
【0026】
実施例3〜5
500ccのポリコップに市販のSMC用不飽和ポリエステル樹脂(大日本インキ化学工業(株)製ポリライトPS−281)80部、ポリスチレン系低収縮剤(大日本インキ化学工業(株)製ポリライトPS−954)20部、炭酸カルシウム(日東粉化工業(株)製NS#100)150部、ステアリン酸亜鉛5部及び酸化マグネシウム1部を入れ、本発明のTAPIPCを各1.18PHR(実施例3)1.20PHR(実施例4)及び1.0PHR(実施例5)、更にパラベンゾキノンを表1に示されるような量加え、ガラス棒で充分に均一となるように、一定時間混合し、それぞれ本発明の成形材料を得た。
次いで、これをポリエチレンテレフタレートフィルムで密封し、45℃で24時間増粘させた。(PHRはPer Hundred Resinを意味する)
【0027】
この成形材料(コンパウンド)について、オリエンテック社製JSRキュラストメーター3 S.D型(ダイス樹脂型、振巾角度±1/4)にて、成形材料の硬化過程(硬化温度は145℃)のトルク値を測定した。測定を開始してからトルクが発現するまでの時間(T0 )を測定し、プレートゲルタイムとした。又、トルクが最大になったトルク値の90%にあたるトルク値を90%maxFとし、90%maxFに達するまでの時間(T90)を測定した。次いで、T90−T0 を計算し立ち上がり時間を算出した。キュラストメーターで得られた結果を表1に示す。T0 はプレートゲルタイムを表し、少なくとも40〜45秒程度が作業上好ましい。又T90、T90−T0 は共により小さい方が好ましい。
【0028】
比較例1〜3
TAPIPCの代わりに表1に示されるような配合量でTBPB、TBIPC及びTBMCHを使用する以外は実施例3〜5におけるのと同様にして比較用の成形材料を作成し、実施例3〜5におけるのと同様にして硬化試験及びキャラスト特性の測定を行った。結果を同じく表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
本発明のTAPIPCは、TBPB、TBIPC、TBMCHに比べて(比較例1〜3)T90−T0 (立ち上がり時間)を短くすることが出来る。
【0031】
【発明の効果】
プレス成形時にモールド中に流動するに要する時間が適切であり且つモールド中に流動した後硬化に至るまでの時間を短くすることの出来る、熱硬化性樹脂又はこれを含有する成形材料硬化せしめる為の硬化剤(ターシャリーアミルパーオキシイソプロピルカーボネート)が得られた。
Claims (5)
- 熱硬化性樹脂が不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂である請求項1記載の硬化方法。
- ターシャリーアミルパーオキシイソプロピルカーボネートを硬化剤として含有するシートモールディングコンパウンド(以下SMCと略す)又はバルクモールディングコンパウンド(以下BMCと略す)である請求項1記載の硬化方法。
- ターシャリーアミルパーオキシイソプロピルカーボネート及び熱硬化性樹脂を必須成分として含有し、100〜160℃で、成形硬化するためのSMC又はBMC。
- 熱硬化性樹脂が不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂である請求項4記載のSMC又はBMC。
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JP18426596A JP3793606B2 (ja) | 1996-06-26 | 1996-06-26 | パーオキサイド及びこれを含有する樹脂組成物、成形材料 |
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JPH1017546A JPH1017546A (ja) | 1998-01-20 |
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JP2012069866A (ja) * | 2010-09-27 | 2012-04-05 | Sekisui Chem Co Ltd | 太陽電池用封止シート及び太陽電池モジュール |
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- 1996-06-26 JP JP18426596A patent/JP3793606B2/ja not_active Expired - Lifetime
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