JP3760406B2 - 樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

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良平 池田
四郎 小林
浩 宇山
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    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G61/00Macromolecular compounds obtained by reactions forming a carbon-to-carbon link in the main chain of the macromolecule
    • C08G61/02Macromolecular compounds containing only carbon atoms in the main chain of the macromolecule, e.g. polyxylylenes
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Description

技術分野
本発明は樹脂組成物およびその製造方法に関し、漆類似塗料原材料、塗膜形成材料、記録材料用化合物、インキ原材料、塗料原材料、接着剤原材料、エポキシ樹脂原材料、フォトレジストの原材料、酸化防止剤の原材料、成形材料、積層材の原材料、粘着剤の原材料、結合剤の原材料、注型用フェノール樹脂の原材料、ゴム配合用フェノール樹脂の原材料、繊維板用フェノール樹脂の原材料として有用な硬化性樹脂組成物およびその製造方法に関する。
背景技術
フェノール化合物を含有する植物性油は種々のものが知られているが、ウルシ科の植物の樹液から得られるウルシオール、チチオール、ラッコール、カルダノールは塗料(染料用樹脂の原材料)として用いられている。ウルシオール、チチオール、ラッコールは、樹液中に含まれる酵素触媒(ラッカーゼ)によって室温下で硬化塗膜を形成する。酵素触媒は熱に弱く、一般にこれらの樹脂を70℃以上に加熱すると酵素が失活して触媒作用が減少して硬化膜が形成されないが130℃くらいから再び硬化するようになる。硬化塗膜は硬度が高く優れたたわみ性を有すばかりではなく光沢などの美観に優れ、古来より漆器の製造に用いられてきた。さらに、黒漆と呼ばれる漆塗料は固形分が約95%以上であり残りは水であることから、漆塗料は室温硬化型の無溶剤型塗料あるいはハイソリッド塗料として捉えることができるばかりか、千年以上も昔の漆塗りの遺物が確認されていることから分かるように、高い耐久性を有する有機塗膜である。また、漆塗料は、合成樹脂塗料のように多量の有機溶媒を使用し、且つ、硬化の為に高温を必要としない等の点で、自然環境に与える影響の極めて少ない塗料であると捉えることも出来る。このように、漆塗料は、地球環境問題に対する意識が高まる今日において理想的な塗料のひとつである。しかしながら、漆の生産量は少なく高価であるばかりか皮膚かぶれ等の問題点がある。
一方、ウルシ科のカシュー樹(Anacardium occidentale)より得られるカシューナット殻液(Cashew Nut Shell Liquid)は、その生産量が多く安価であり、かつ食用にされるカーネルを得る際の副産物でもあり、漆類似塗料、摩擦材料(ブレーキライニング、ブレーキパッド)用等として工業的に有用である。
カシューナット殻液には、主成分としてフェノール化合物であるアナカルド酸が含まれている。この化合物の側鎖の炭素数は15であり、側鎖不飽和数は0〜3である(平均=約2)。その他カルダノールやカルドールおよび2−メチルカルドール等が含まれることが知られている。カシューナット殻液はこのまま工業用途に使用しても差し支えないが、一般的にはカシューナット殻液を加熱処理してアナカルド酸のカルボキシル基を脱炭酸処理し、カルダノールを主成分としたものが工業用原材料として使用されている。
このカシューナット殻液(これは加熱処理したものを含む)は通常、カシューワニスとしたのち上記の各種の用途に用いられているが、カルダノールの構造が上記ウルシオールと極めて似ていることからも分かるように、漆の代用として用いられてきた。ただし、カシューナット殻液の場合は、漆のように樹液中に含まれる酵素触媒で硬化反応は進行しないので、まず、カルダノールを主成分とした原料油にホルマリンやホルムアルデヒドとアンモニアの縮合物であるヘキサメチレンテトラミンを反応させることによってカシューワニス(カルダノールプレポリマー)を製造する。次いで、一般的なカシュー樹脂塗料では、このものに側鎖オレフィン部位を酸化する触媒として油性塗料に通常使用されている金属ドライヤーを加えて、所定の顔料などの他の原料と混合して酸化重合型の塗料としている。このような方法で製造されたカシュー樹脂塗料は製造の段階はもちろんのこと製品化後においても人体に対して毒生の強いホルマリン(ホルムアルデヒド)発生の原因となることがある。しかしながら、近年における環境問題に対する意識の高まり、生活環境の消臭化、人体の安全・健康等の観点からカシュー塗料においても毒性の強いホルマリン(ホルムアルデヒド)を使用しない合成方法ならびにホルマリン(ホルムアルデヒド)を発生しない樹脂の開発が切望されている。
また、このカシューナット殻液のような植物性油中のフェノール化合物は、側鎖にアルケニル基などの不飽和脂肪族基を有することが多く、室温硬化性の酸化重合型の塗料用樹脂としての利用を考えた場合、フェノール化合物を重合反応の際に側鎖まで反応させないように適宜制御しうることが重要である。しかし、ホルマリンやヘキサメチレンテトラミン等を用いないで従来の触媒で重合反応を行わせた場合にはフェノール性水酸基を有する芳香環部位のみを酸化重合させるように反応を制御することは困難であった。例えば特開昭58−47079号公報には、カシューナット殻液に酸を加えて加熱重合し、次いで硬化させて粉砕したカシューダストの製造方法が記載されているが、カシューダストと言われる、溶媒に不溶な重合体が得られ、塗料用樹脂としては使用出来ない。また、ダストではなく有機溶媒に可溶なポリマーが得られた場合であっても、重合反応がカシューナット殻液の側鎖アルケニル基で進行していることから(下記比較例2で示す)、このものより硬化物を作成するには、未反応で残っているフェノール部位の反応性を利用することになるが、フェノール部位の連結にホルマリン等のアルデヒド等を使用することが多く、アルデヒドの毒性の問題が解決されないという問題がある。
一方、酸素の存在下において鉄錯体を触媒に用いてフェノール類を重合できることが既に知られている(例えば、特開昭49−26264号公報)。また、パーオキサイドの存在下、遷移金属錯体を触媒に用いてフェノール類を重合できることが既に知られている(例えば、特開平8−53545号公報、Polymer Bulletin、42、125(1999))。しかしながら、これらは、反応原料はフェノール化合物そのものであり、フェノール化合物を含有する植物油をモノマー成分として用いた例は示されていない。ましてや、これらの従来例には、アルケニル基のような不飽和脂肪族基を側鎖に有するフェノール化合物を複数含む天然由来の植物性油の、フェノール性水酸基のみを酸化重合させて植物油由来による硬化性樹脂組成物を製造する記載はない。
更に、本発明者等は特許第3030363号公報において、カシュナット殻液を酵素触媒で重合して形成した液状樹脂を明らかにしているが、該樹脂を得るための触媒は遷移金属錯体ではなかった。
本発明は樹脂組成物およびその製造方法に関し、漆類似塗料原材料、摩擦材料、ブレーキライニング材料、ブレーキパッド材料、塗膜形成材料、記録材料用化合物、インキ原材料、塗料原材料、接着剤原材料、エポキシ樹脂、フォトレジストもしくは酸化防止剤の原材料、機能性高分子材料の出発原料として有用な硬化性樹脂組成物およびその製造方法を提供する。
本発明の上記及び他の目的、特徴及び利点は、下記の記載からより明らかになるであろう。
発明の開示
本発明は、フェノール化合物を含有する植物性油を含む酸化重合性化合物を、遷移金属錯体存在下で重合して形成した樹脂を含む硬化性樹脂組成物に関する。
発明を実施するための最良の形態
以下に本発明をさらに説明する。
本発明で使用されるフェノール化合物を含有する植物性油としては、種々のものが知られており(例えば、Chem.Soc.Rev.,8,499(1979)に示されているものを挙げることができる)、Anacardicae,Gymnospermae,Compositae,Lichens,Proteacaeの各属から得られるものを使用することができる。フェノール化合物を含有する植物性油のフェノール化合物の具体例としては,アナカルド酸、アナギガン酸、ペランジュ酸、ギンクゴ酸、ギンクゴリン酸、カルダノール、カルドール、メチルカルドール、ウルシオール、チチオール、レンゴール、ラッコール等を挙げることができる。本発明に用いられるこれらの植物油中の各種のフェノール化合物の含有量は合計で50重量%以上、好ましくは70重量%以上である。このような植物性油としては、具体的にはカシュー樹(Anacardium occidentale)より得られるカシューナット殻液(Cashew Nut Shell Liquid)をあげることができる。
このカシューナット殻液は、カシュー樹に結実するカシューナットから抽出される粘ちょうな液体全般が含まれる。カシューナット殻液成分としては、特に制限はなく、アナカルド酸、カルダノール、カルドール、メチルカルドールのごとき化合物が挙げられるが、好ましくは、アナカルド酸を主成分とするカシュー油を高温処理して得られるカルダノールを主成分とするカシューナット殻液が挙げられる。これらの成分は、一価のフェノールのアルキルあるいはアルケニル誘導体であり、側鎖アルケニル基は、モノエン、ジエン、トリエンから成るが、本発明ではこれらの混合物として使用しても何ら差し支えはない。本発明では、カシューナットから抽出される粘ちょうな液体をそのまま使用しても良いし、精製または変性などの処理をして使用しても良い。カルダノールを主成分とするカシューナット殻液を好ましく用いることができる。
ここでカルダノールを主成分とするとは、カシューナット殻液に対して通常80重量%以上であることをいう。
また、本発明の製造方法において、フェノール化合物を含有する植物性油としてはカシューナット殻液のような天然由来の、フェノール化合物を含有する植物油を用いることが好ましいが上記の植物性油に加えて様々な酸化重合性化合物、例えば、フェノール類、ナフトール類、芳香族アミン類を含有させて共重合反応を行うことが可能である。共重合反応に使用されるフェノール類、ナフトール類、芳香族アミン類およびその使用量は、得られるフェノール化合物を含有する植物性油重合体の使用目的に応じて要求される様々な物性等において適宜選択することが可能であり、単独あるいは2種以上を使用することができる。このような共重合反応成分として使用する化合物の割合は任意であるが、フェノール化合物を含有する植物性油に対して(その中に含まれるフェノール化合物の合計に対して)、フェノール類、ナフトール類は通常5000モル%以下、好ましくは500モル%以下であり、特に好ましくは100モル%以下であり、芳香族アミン類は通常5000モル%以下、好ましくは500モル%以下であり、特に好ましくは100モル%以下である。
このようなフェノール類の具体例としては、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、2,4,6−ジメチルフェノール、p−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、p−t−アミルフェノールなどのアルキルフェノール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、ウルシオール、チチオール、ラッコールなどの多価フェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、2,4,6−トリクロロフェノール、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール、o−フッ化フェノール、m−フッ化フェノール、p−フッ化フェノール等のハロゲン化フェノール、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール等のアミノフェノール、ビスフェノールA、p−(α−クミル)フェノール、p−フェニルフェノール、グアヤコール、グエトール、フェノール等を挙げることができる。
ナフトール類の具体例としては、α−ナフトール、β−ナフトール、1,4−ジヒドロキシナフタレン等を挙げることができる。
芳香族アミン類の具体例としては、アニリン、o−アニシジン、p−アニシジン、2,4−キシリジン、3,4−キシリジン、p−クレシジン、4,4`−ジアミノ−3,3`−ジエチルジフェニルメタン、4,4`−ジアミノベンズアニリド、ジアミノジフェニルエーテル、3,3`−ジメチル−4,4`−ジアミノジフェニルメタン、スルファニル酸等を挙げることができる。
本発明のフェノール化合物を含有する植物性油を含む酸化重合性化合物を、遷移金属錯体触媒の存在下で重合して形成した樹脂を含む硬化性樹脂組成物の製造方法において、その重合機構は、植物油中のフェノール化合物が遷移金属錯体によって酸化反応(脱水素反応)を受けて生成したフェノキシラジカルのラジカルカップリング反応によると考えられる。このフェノキシラジカルは共鳴構造(炭素ラジカルと酸素ラジカル)を取るが、これらのフェノキシラジカル共鳴体は非常に不安定であり、直ちに2分子カップリング反応を引き起こすと考えられる(2量化反応)。2量化以上の高分子化は、上記カップリング反応によって生成した2量体が更に遷移金属錯体によって酸化反応(脱水素反応)を受けることによってフェノキシラジカルを生成し、モノマーのフェノキシラジカルあるいは2量体以上のオリゴマーであるフェノキシラジカルとカップリングして進行していくものと考えられる。
また、その他にもモノマーのフェノキシラジカルとモノマーやオリゴマーとのラジカル置換反応によるフェノキシラジカルの生成が考えられるが、この場合も上記同様にフェノキシラジカルが生成することから、高分子化反応は上記同様に進行すると考えられる。以上より、本発明によって得られるフェノール化合物を含有する植物性油の樹脂は、フェノール化合物を含有する植物性油の芳香環部位において、フェニレン結合とオキシフェニレン結合したユニットをランダムに有する重合体からなり、側鎖の脂肪族不飽和二重結合が残存しているものである。側鎖の脂肪族不飽和二重結合の残存率は、使用する遷移金属錯体の種類や使用量、反応温度や溶媒などの各種重合条件によって異なるが、一般的には70%以上が残存しており、好ましくは80〜100%、特に好ましくは100%である。
本発明において、重合反応の諸条件を選ぶことによって側鎖の二重結合を残存させるか、一部あるいはその大部分を架橋させるかを制御することができる。具体的には樹脂組成物として硬化性を示すものが得られるか否かは、植物性油中のフェノール化合物に対する遷移金属錯体の量、反応溶媒の種類などによって定まる。本発明の樹脂組成物のヨウ素価は通常50〜500、好ましくは100〜500である。
本発明で使用する遷移金属錯体は、単独でまたは混合して用いることができる。これらは任意の量を使用することができ、用いる遷移金属錯体の触媒活性により適宜加減すればよいが、一般的にはフェノール化合物を含有する植物性油に対して0.0001〜30モル%、好ましくは0.01〜10モル%程度使用することができる。また、触媒としては、反応時に遷移金属化合物と対応する配位子を混合して用いることもできる。この場合配位子は任意の量を使用することができるが、一般的には遷移金属に対して0.1〜10モル当量程度使用することが好ましい。
本発明の遷移金属錯体における遷移金属原子は、元素の周期律表(IUPAC無機化学名法改訂版1989)の3A〜7A、8および1B、2B族の遷移金属原子である。好ましくは、第一遷移元素系列の遷移金属原子であり、さらに好ましくは鉄、コバルト、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅、酸化バナジウムである。特に好ましくは鉄、コバルト、銅、マンガンである。
本発明において配位子とは、化学大辞典(第1版、東京化学同人、1989年)に記載の通り、ある原子に配位結合で結合している分子またはイオンを指す。ここで配位結合に直接かかわっている原子を配位原子という。単座配位子は1個の配位子であり、二座配位子は2個の配位子であり、三座配位子は3個の配位子であり、四座配位子は配位原子数が4個の配位子であり、五座配位子は配位原子数が5個の配位子である。
本発明の遷移金属錯体においては、該配位子1個あたりの遷移金属原子数は1個以上であればよいが、1個以上、配位子の配座数個以下であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
本発明の遷移金属錯体における配位子の配位原子は、窒素原子および/または酸素原子である。
本発明の遷移金属錯体は、下記一般式(I)〜(IV)で表される遷移金属錯体である。
Figure 0003760406
(式中、Mは遷移金属原子を含む残基を表す。R1、R3はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、O-、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、アミノ基または置換アミノ基を表し、R2は水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、炭化水素オキシカルボニル基、置換炭化水素オキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、R1とR2とがおよび/またはR2とR3とが環を形成してもよい。nは1〜の整数を表す。)
Figure 0003760406
(式中、Mは遷移金属原子を含む残基を表す。R4、R9はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、O-、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、アミノ基または置換アミノ基を表し、R5、R8はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、炭化水素オキシカルボニル基、置換炭化水素オキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、R6、R7はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基またはO-を表す。R10は二価の炭化水素基または置換炭化水素基を表す。R4とR5とがおよび/またはR8とR9とが環を形成してもよい。)
Figure 0003760406
(式中、Mは遷移金属原子を含む残基を表す。R4、R9はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、O-、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、アミノ基または置換アミノ基を表し、R5、R8はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、炭化水素オキシカルボニル基、置換炭化水素オキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、R6、R7はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基またはO-を表す。R11およびR12はそれぞれ二価の炭化水素基または置換炭化水素基を表す。R13は水素原子、炭化水素基または置換炭化水素基を表し、R4とR5とがおよび/またはR8とR9とが環を形成してもよい。)
Figure 0003760406
(式中、Mは遷移金属原子を含む残基を表す。R14〜R29はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、O-、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、アミノ基または置換アミノ基を表し、炭化水素オキシカルボニル基、置換炭化水素オキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子またはO-を表す。R14とR15および/またはR15とR16および/またはR16とR17および/またはR18とR19および/またはR19とR20および/またはR20とR21および/またはR22とR23および/またはR24とR25および/またはR26とR27および/またはR27とR28および/またはR28とR29とが環を形成してもよい。)
上記一般式(I)〜(IV)における置換炭化水素オキシ基は、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基等で置換された炭化水素オキシ基であり、具体例としては、トリフルオロメトキシ基、2−t−ブチルオキシエトキシ基、3−ジフェニルアミノプロポキシ基等が挙げられる。
上記一般式(I)〜(IV)における置換アミノ基としては炭素原子数1〜20の置換アミノ基が好ましく、具体的には、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、メチルブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等が挙げられる。
上記一般式(I)〜(IV)における炭化水素オキシカルボニル基としては、炭素原子数1〜20の炭化水素オキシカルボニル基が好ましく、具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等が挙げられる。
上記一般式(I)〜(IV)における置換炭化水素オキシカルボニル基は、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基等で置換された炭化水素オキシカルボニル基であり、具体例としては、トリフルオロメトキシカルボニル基、2−t−ブチルオキシエトキシカルボニル基、3−ジフェニルアミノプロポキシカルボニル基等が挙げられる。
上記一般式(I)〜(IV)におけるハロゲン原子として好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、さらに好ましくは塩素原子、臭素原子である。
上記一般式(II)及び(III)において、R10、R11およびR12は二価の炭化水素基または置換炭化水素基であり、具体例としては、メチレン基、1,2−エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基等のアルキレン基、1,2−シクロペンチレン基、1,2−シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基等を挙げることができ、好ましくは、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,2−シクロヘキシレン基である。
上記一般式(I)で表される遷移金属錯体における二座配位子の具体例としては、アセチルアセトン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、トリフルオロアセチルアセトン、ジベンゾイルメタン等、あるいはこれらからプロトンを一つまたはそれ以上取り去って得られる陰イオン等を挙げることができる。好ましくはアセチルアセトンを使用することができる。
上記一般式(II)で表される遷移金属錯体における四座配位子の具体例としては、N,N’−ジサリシリデンエチレンジアミン、N−(3−オキソペンチリデン)−N’−サリシリデンエチレンジアミン、N,N’−ビス(3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(3−オキソブチリデン)−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ビス(3−オキソブチリデン)−1,2−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(3−オキソペンチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(3−オキソヘキシリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(4−メチル−3−オキソペンチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(4,4−ジメチル−3−オキソペンチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(4−フェニル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(4−トリフルオロメチル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−シアノ3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−シアノ−3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−ニトロ−3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−カルボキシルエチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス[2−(メトキシカルボニル)エチリデン]エチレンジアミン、N,N’−ビス[2−(ジメチルアミノカルボニル)エチリデン]エチレンジアミン、N,N’−(1,2−エチレン)−ビス(サリチル酸アミド)、N,N’−(1,2−エチレン)−ビス(マロン酸モノメチルモノアミド)等、あるいは、それらからプロトンを一つ又はそれ以上取り去って得られる陰イオン等を挙げることができる。
上記一般式(III)で表される遷移金属錯体における五座配位子の具体例としては、N,N”−ジサリシリデンジエチレントリアミン、N−(3−オキソペンチリデン)−N”−サリシリデンジエチレントリアミン、N,N”−ビス(3−オキソブチリデン)ジエチレントリアミン、N,N”−ビス(3−オキソブチリデン)−ジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(3−オキソブチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(3−オキソペンチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(3−オキソヘキシリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(4−メチル−3−オキソペンチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(4,4−ジメチル−3−オキソペンチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(4−フェニル−3−オキソブチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(4−トリフルオロメチル−3−オキシブチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(2−シアノ3−オキソブチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(2−シアノ−3−オキソブチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(2−ニトロ−3−オキソブチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(2−カルボキシルエチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス[2−(メトキシカルボニル)エチリデン]−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス[2−(ジメチルアミノカルボニル)エチリデン]−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N’−(3−アザ−1,5−ペンチレンレン)−ビス(サリチル酸アミド)、N,N’−(3−アザ−1,5−ペンチレンレン)−ビス(マロン酸モノメチルモノアミド)等、あるいは、それらからプロトンを一つ又はそれ以上取り去って得られる陰イオン等を挙げることができる。
また、上記一般式(II)および(III)で表される遷移金属錯体は、さらに好ましくは下記一般式(V)または(VI)で表される遷移金属錯体である。
Figure 0003760406
式中、Mは遷移金属原子を含む残基を表す。R6、R7はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基または置換炭化水素基を表し、R10は二価の炭化水素基または置換炭化水素基を表す。R30〜R37はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、置換アミノ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表す。)
Figure 0003760406
(式中、Mは遷移金属原子を含む残基を表す。R6、R7およびR13はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基または置換炭化水素基を表し、R11およびR12はそれぞれ独立に二価の炭化水素基または置換炭化水素基を表す。R30〜R37はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、置換アミノ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表す。)
上記一般式(V)及び(VI)におけるM、炭化水素基、置換炭化水素基、二価の炭化水素基または置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、置換アミノ基、ハロゲン原子は、上記一般式(II)及び(III)と同様のものが挙げられる。
上記一般式(V)においてR6、R7、R10、R30〜R37としてさらに好ましくは、R6、R7がそれぞれ独立に水素原子または炭化水素基であり、R10がアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基であり、R30〜R37がそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換アミノ基、ニトロ基、塩素原子、臭素原子である。特に好ましくは、R6、R7がそれぞれ独立に水素原子、メチル基、フェニル基であり、R10が1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,2−フェニレン基であり、R30〜R37がそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ベンジル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、ジメチルアミノ基、ニトロ基、塩素原子、臭素原子である。
上記一般式(VI)においてR6、R7、R11〜R13、R30〜R37としてさらに好ましくは、R6、R7、R13がそれぞれ独立に水素原子または炭化水素基であり、R11、R12がそれぞれ独立にアルキレン基、アリーレン基であり、R30〜R37がそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換アミノ基、ニトロ基、塩素原子、臭素原子である。特に好ましくは、R6、R7、R13がそれぞれ独立に水素原子、メチル基、フェニル基であり、R11、R12がそれぞれ独立に1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,2−フェニレン基であり、R30〜R37がそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ベンジル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、ジメチルアミノ基、ニトロ基、塩素原子、臭素原子である。
上記一般式(IV)で表される遷移金属錯体における四座配位子の具体例としては、フタロシアニン、1,4,8,11,15,18,22,25−オクタカルボキシ−29H、31H−フタロシアニン、1,8,15,22−テトラフェノキシ−29H、31H−フタロシアニン、2,9,16,23−テトラ−t−ブチル−29H,31H−フタロシアニン、テトラキス(4−クミルフェノキシ)フタロシアニン、1,8,15,22−テトラキス(フェニルチオ)−29H、31H−フタロシアニン、2,9,16,23−テトラキス(フェニルチオ)−29H、31H−フタロシアニン、3,10,17,24−テトラ−t−ブチル−1,8,15,22−テトラキスー(ジメチルアミノ)−29H、31H−フタロシアニン、フタロシアニンテトラスルホン酸、4',4'',4''',4''''−テトラアザ−29H,31H−フタロシアニン、テトラカルボキシフタロシアニン、オクタカルボキシフタロシアニン、ナフタロシアニン、2,11,20,29−テトラ−t−ブチル−2,3−ナフタロシアニン、5,14,23,32−テトラフェニル−2,3−ナフタロシアニン、5,9,14,18,23,27,32,36−オクタカルボキシ−2,3−ナフタロシアニン等、あるいはこれらからプロトンを一つまたはそれ以上取り去って得られる陰イオン等を挙げることができる。好ましくはフタロシアニン、ナフタロシアニンを使用することができる。
本発明の遷移金属錯体の合成法は、例えば「第4版 実験化学講座17−無機錯体・キレート錯体」丸善(株)、1991年、302頁等に記載されているような一般的な方法により得ることができる。該遷移金属錯体は、あらかじめ合成された錯体を用いることができるが、反応系中で錯体を形成させてもよい。
本発明の遷移金属錯体において、配位子と遷移金属原子以外の構造は、触媒能を失活させないならば特に限定されるものではない。
例えば、配位子としてN,N’−ジサリシリデンエチレンジアミン(以下サレンまたはsalenと表記することがある)を、遷移金属として鉄を用いた、N,N’−ジ(サリシリデン)エチレンジアミナト鉄(II)(以下Fe−サレン、Fe(II)−salenと表記することがある)遷移金属錯体は、酸素下において容易に酸素架橋体であるμ−オキソ−ビス{(N,N’−ジサリシリデンエチレンジアミナト鉄(III))}を形成することが知られているが、このものを用いても何ら問題はない。
本発明の遷移金属錯体には、電気的中性を保たせるようなカウンターイオンが必要な場合がある。カウンターアニオンとしては、通常ブレンステッド酸の共役塩基が使用され、具体例としては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボーレートイオン、ヘキサフルオロホスフェイトイオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、水酸化物イオン、酸化物イオン、メトキサイドイオン、エトキサイドイオン等が挙げられる。またカウンターカチオンとしては、アルカリ金属やアルカリ土類金属等のカチオンを適宜用いることができる。また本発明の遷移金属錯体には、錯体の原料、合成過程および/または酸化重合過程で、溶媒などが配位していても良い。
本発明の遷移金属錯体の活性を高めるため助触媒を用いても良い。助触媒としてはアミン、ジケトン錯体、ハロゲン化金属等が挙げられる。
アミンを助触媒に用いる場合は、Polymer Bulletin、42、125(1999)に示されているように、重合活性の向上等の効果が期待できる。用いられるアミン種としては、遷移金属錯体の活性に影響を及ぼさず、フェノール化合物を含有する植物性油や反応溶媒に可溶性を示すものであれば特に制限はなく、公知のものが使用できる。具体的には、ピリジン、トリエチルアミン、2,6−ルチジン、N,N,N`,N`−テトラエチレンジアミン等の第3級アミンを用いることができ、好ましくは原料フェノール化合物を含有する植物性油に対して0.001〜50重量%、より好ましくは0.001〜10重量%の範囲で用いることが好ましい。
ジケトン錯体としては、鉄、コバルト、バナジウム、クロム、マンガン、またはニッケルのアセチルアセトナト錯体を挙げることができる。具体的には、ビス(アセチルアセトナト)コバルト(II)、トリスアセチルアセトナト)コバルト(III)、ビス(アセチルアセトナト)マンガン(II)、トリス(アセチルアセトナト)マンガン(III)、トリス(アセチルアセトナト)鉄(III)、ビス(アセチルアセトナト)オキソバナジウム(IV)等を挙げることができ、使用する遷移金属錯体に対して0.1〜5モル等量、より好ましくは0.5〜2モル等量使用するのが好ましい。
ハロゲン化金属の具体例としては、塩化第一コバルト、塩化第二コバルト等を挙げることができ、使用する遷移金属錯体に対して0.1〜5モル当量、より好ましくは0.5〜2モル当量使用するのが好ましい。
本発明において、酸化剤は任意のものが使用されるが、好ましくは酸素またはパーオキサイドが使用できる。酸素は不活性ガスとの混合物であってもよく、空気でもよい。またパーオキサイドの例としては、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジーt−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、過酢酸、過安息香酸等を示すことができる。さらに好ましくはパーオキサイドが使用でき、特に好ましくは過酸化水素である。
本発明において、酸化剤として酸素を用いる場合は、フェノール化合物を含有する植物性油に対して通常、当量以上大過剰に使用する。パーオキサイドを用いる場合は、フェノール化合物を含有する植物性油に対して通常、当量以上3当量以下を使用するが、0.8当量〜2当量を使用するのが好ましい。
本発明の実質的に溶媒を使用しないで重合反応を行うとは、好ましくはフェノール化合物を含有する植物性油中の溶媒の濃度が好ましくは0〜10重量%、より好ましくは1〜3重量%、特に好ましくは0%になるような割合で使用されることを言うが、この場合は反応媒体が液状を保つ範囲の温度下で反応を行うことが望ましく、カシューナット殻液を使用する場合は、一般的にこのものの融点が室温以下であることから室温以上の温度下で行うのが望ましい。但し、酸化剤として過酸化水素を使用する場合、過酸化水素は通常30%や60%などの過酸化水素水溶液として用いるが、本発明では酸化剤である過酸化水素中の水分は溶媒とは見なさない。
また、本発明は、溶媒の存在下でも実施することができる。溶媒を用いる場合はフェノール化合物を含有する植物性油に対し不活性でかつ反応温度において液体であり、生成する硬化性樹脂組成物を溶解するものであれば、特に限定されるものではない。溶媒の例を示すならば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘプタン、シクロヘキサン等の鎖状及び環状の脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール等のアルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物類;水等が挙げられる。これらは単独あるいは混合物として使用される。
該溶媒を用いる場合は、フェノール化合物を含有する植物性油の濃度が好ましくは0.5〜70重量%、より好ましくは1〜50重量%になるような割合で使用される。本発明を実施する反応温度は、フェノール化合物を含有する植物性油の側鎖の脂肪族不飽和2重結合が熱による変性を受けない温度範囲で、かつ、反応媒体が液状を保つ範囲である。このような温度範囲は、溶媒を用いない場合はフェノール化合物を含有する植物性油あるいは共重合モノマーが共存する場合は共重合モノマーの融点以上の温度が必要である。好ましい温度範囲は0℃〜180℃であり、より好ましくは0℃〜150℃である。特に、本発明方法は0〜40℃の範囲の低い温度条件でも重合反応を行うことができることが特徴である。また、本発明においては、特に酸化剤に過酸化水素、遷移金属錯体に上記一般式(II)に含まれるFe(II)−salenを用い、実質的に溶媒を用いないで重合反応を行った場合等では、過酸化水素の添加によって発熱反応を生じ、系中の温度が上昇する(過酸化水素添加前の温度〜約140℃の範囲)ことがあるが何ら問題はない。さらに上記一般式(I)および(IV)を用いて重合反応を行う場合の反応温度は、好ましくは、40〜180℃、より好ましくは60℃〜180℃である。
本発明の硬化性樹脂組成物は、酸化触媒の存在下でさらに架橋硬化させることができる。この硬化反応は塗料等に用いた場合の硬化反応として有効であり、酸化触媒としては、いわゆる金属ドライヤーが用いられる。このような金属ドライヤーは、不飽和脂肪酸を酸化して架橋反応を引き起こす能力を備える化合物であれば特に制限はなく、種々の金属あるいはその塩を用いることができる。具体的には、コバルト、マンガン、鉛、カルシウム、セリウム、ジルコニウム、亜鉛、鉄、銅のナフテン酸、オクチル酸、オレイン酸塩を用いることができ、好ましくはナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛、ナフテン酸マンガンを用いることができる。また、本発明において重合触媒に使用した各種金属錯体も金属ドライヤーとしての能力を有することから、これらを反応系から取り出すことなくそのまま使用しても良い。さらには、金属ドライヤーは、1種類に限らず、2種以上を混合して用いても何ら問題はない。金属ドライヤーの添加量としては、金属ドライヤーの種類等によって異なるが、通常は硬化性樹脂組成物に対して金属含量で、0.001重量%〜1重量%ほど使用するのが好ましい。
本発明で得られる重合体の分子量は、好ましくは数平均分子量350から100,000の範囲、とくに好ましくは数平均分子量500から30,000の範囲が挙げられる。
本発明において、フェノール化合物を含有する植物性油の酸化重合反応の実施は種々の態様で行うことができる。例えば、フェノール化合物を含有する植物性油と遷移金属錯体の溶液を個々に調製した後に同一容器中に注入してもよいし、フェノール化合物を含有する植物性油の溶解液に金属錯体あるいはその溶液を添加してもよい。過酸化水素を添加する場合は、フェノール化合物を含有する植物性油と遷移金属錯体の溶解液に過酸化物を徐々に添加する方法が好ましい。また、上記溶液重合による方法以外にも、反応系中に分散安定剤を加えてフェノール化合物を含有する植物性油と遷移金属錯体の反応を行う懸濁重合や分散重合、反応系中に乳化安定剤を加えてフェノール化合物を含有する植物性油と遷移金属錯体の反応を行う乳化重合等の方法を用いても問題はない。遷移金属錯体が不活性化するような方法でない限り、この他にも種々の組み合わせが可能である。本発明の樹脂組成物(硬化性樹脂組成物を含む)の製造において、酸化重合に用いた遷移金属錯体は反応終了後分離せずにそのまま樹脂組成物中に含有させても問題がない。
本発明の樹脂組成物ならびに硬化性樹脂組成物は、フェノール化合物を含有する植物性油を含む重合体である樹脂の他に遷移金属錯体に未反応な残存フェノール化合物を含有する植物性油モノマーやその他共重合に供したモノマー成分を含んでいても何ら問題はない。このものは室温下で粘稠である場合が多いことから室温下で使用する場合は希釈溶剤を使用しないでそのまま使用しても良い。この場合、硬化性樹脂組成物中の残存フェノール化合物を含有する植物性油モノマーやその他共重合に供したモノマー成分の割合は、塗膜の硬化時間や塗膜硬度等の物性と塗膜のレベリング性、塗れ性等の物性に影響を与えない範囲であれば特に問題はない。
また、該樹脂は、その構成成分のカルダノールが漆の主成分であるウルシオールと類似の構造であることからも推定されるように、得られる塗膜は漆塗膜に類似しているという特徴を有している。この場合、天然の漆塗膜にさらに類似させるには、漆のウルシオール以外の成分である多糖類やタンパク質を添加すれば良く、このようなものとして、例えばデンプン(誘導体)、アラビアゴム、カゼイン、ブルラン、ゼラチン(加水分解物)等が挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、様々な方法で硬化させることができる。すなわち、これらの樹脂組成物は、ポリマー側鎖に不飽和二重結合を又は、芳香環部位にはフェノール性水酸基を有していることから、これらの反応性部位に基づく公知の方法で架橋反応を進行させることにより硬化物を得ることができる。例えば、前記の酸素や有機過酸化物による架橋、フェノール樹脂およびアミノ樹脂による架橋、ハロゲン化合物による架橋、イソシアナートによる架橋、エポキシ化合物による架橋、加熱による架橋、光による架橋、UV照射による架橋、電子線およびγ線による架橋反応等を利用して硬化させることが可能である。
本発明の硬化性樹脂組成物は、JIS−K5400の8.4.2の手かき法で測定した鉛筆硬度が、硬化性樹脂組成物を基材に塗布して塗膜にしてから2週間以内、好ましくは1週間以内に9H〜2B、好ましくは9H〜HBである条件を満たすことができる。
本発明の硬化性樹脂組成物において、芳香環部位には未反応のフェノール性水酸基を有していることがある。また、側鎖には脂肪族不飽和二重結合を有している。従って、これらの反応性部位による様々な誘導体化が可能である。例えば、フェノール性水酸基をエピクロロヒドリンと反応させることによるエポキシエーテル化、アリルクロライドによるアリルエーテル化、(メタ)アクリル酸(誘導体)とのエステル化による(メタ)アクリル誘導体化等を挙げることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、天然ゴムや合成ゴムで、桐油、アマニ油、大豆油などの油で、ロジンとグリセリンやエチレングリコール、ペンタエリストール等で変性して使用しても良い。
さらに本発明の硬化性樹脂組成物は、フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂成分、桐油、アマニ油、脱水ヒマシ油、脂肪酸などの油脂成分、着色剤として黄色、紅色、藍色、墨色等の顔料あるいは染料、天然ゴム、合成ゴム、木粉、セルロース、アスベスト、ガラス繊維、織布、不織布、などの充填剤、離型剤、テレピン系、脂肪族系、芳香族系の溶剤、レベリング改良剤、増粘剤、可塑剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、等の補助剤等を適宜添加し、漆類似塗料原材料、塗膜形成材料、記録材料用化合物、インキ原材料、塗料原材料、接着剤原材料、エポキシ樹脂原材料、フォトレジストの原材料、酸化防止剤の原材料、成形材料、積層材の原材料、粘着剤の原材料、結合剤の原材料、注型用フェノール樹脂の原材料、ゴム配合用フェノール樹脂の原材料、繊維板用フェノール樹脂の原材料等の種々の用途に使用することが出来る。
本発明により、フェノール化合物を含有する植物性油成分を含む酸化重合性化合物を、遷移金属錯体存在下で重合して形成した樹脂を含む硬化性樹脂組成物を穏和な条件下で得ることが可能となった。本発明の、特定の触媒を用いた、フェノール化合物を含有する植物性油の酸化重合による製造方法によれば、フェニレン結合ユニットとオキシフェニレン結合ユニットとがランダムに結合した重合体からなり、側鎖の脂肪族不飽和二重結合を残存させた硬化性樹脂組成物を得ることができる。
本発明によれば、ホルマリンを用いることなく、漆類似塗料用などとして好適な硬化性樹脂組成物を得ることが可能となった。
さらに本発明の方法は、原料としてホルマリンを使用しないので、樹脂の製造段階はもちろん、樹脂の製品化後においても、製品からのホルマリン発生の問題がなく、環境問題への意識の高まり、生活環境の消臭化、人体の安全、健康等の要求に対応できるという点で非常に優れるものである。
本発明を要約すると、次の通りである。
(1)フェノール化合物を含有する植物性油を含む酸化重合性化合物を、遷移金属錯体存在下で重合して形成した樹脂を含む硬化性樹脂組成物。
(2)フェノール化合物を含有する植物性油を含む酸化重合性化合物を、遷移金属錯体、および酸素またはパーオキサイドの存在下で重合して形成した樹脂を含む(1)項記載の硬化性樹脂組成物。
(3)フェノール化合物を含有する植物性油がカシューナット殻液である(1)または(2)項記載の硬化性樹脂組成物。
(4)遷移金属錯体が、前記一般式(I)〜(IV)で表わされる錯体であることを特徴とする(1)〜(3)項のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
(5)遷移金属錯体の遷移金属が鉄、コバルト、バナジウム、クロム、マンガン、またはニッケル、銅、酸化バナジウムであることを特徴とする(1)〜(4)項のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
(6)硬化性樹脂組成物がさらに金属ドライヤーを含む(1)〜(5)項のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
(7)フェノール化合物を含有する植物性油を含む酸化重合性化合物を、触媒の存在下で重合して形成した樹脂を含む硬化性樹脂組成物の製造方法において、触媒が遷移金属錯体であることを特徴とする硬化性樹脂組成物の製造方法。
(8)フェノール化合物を含有する植物性油を含む酸化重合性化合物を、遷移金属錯体、および酸素またはパーオキサイドの存在下で重合させることを特徴とする(7)項記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
(9)フェノール化合物を含有する植物性油がカシューナット殻液である(7)または(8)項に記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
(10)遷移金属錯体が、前記一般式(I)〜(IV)で表わされる錯体であることを特徴とする(7)〜(9)項のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
(11)フェノール化合物を含有する植物性油を含む酸化重合性化合物を、触媒の存在下で重合して形成した樹脂を含む硬化性樹脂組成物の製造方法において、実質的に溶媒を使用しないで重合反応を行うことを特徴とする、(7)〜(10)項のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
(12)(1)項記載の硬化性樹脂組成物に金属ドライヤーを含有させてなる被覆樹脂組成物。
実施例
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
本実施例に用いたフェノール化合物を含有する植物性油はカシューナット殻液であり、カシューナットから抽出されるカシュー油を加熱処理したものを用いた。このものは、ヨウ素価は約290であり、組成は(ガスクロマトグラフィー分析の各ピーク面積より求めた)、カルダノール83.8(側鎖のオレフィン数が0=2.6%、1=28.6%、2=18.3%、3=34.3%)、カルドール7.7%(各種側鎖異性体の混合物として)、メチルカルドール1.6%(各種側鎖異性体の混合物として)であった。
重合体の数平均分子量(以下Mn)、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/Mn)、カシューナット殻液の転化率(以下Conv.)、Mn、分子量分布(以下Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より求め、標準ポリスチレン換算値として算出した。Conv.は、上記分析で得られた結果において、カシューナット殻液のモノマーに相当するピーク面積(A)とポリマーに相当するピーク面積(B)を求め、式「B/(A+B)×100」の計算を行って、%で表示した。
重合体の側鎖オレフィン部位の残存率は、プロトンNMRより求めた。すなわち、オレフィン構造に由来する5.8ppm(−C=CH2)、5.4ppm(−C=C−)、5.0ppm(−CH=C 2 )、2.8ppm(−CH=CH−C 2 −CH=CH−)、2.0ppm(−C 2 −CH=CH−)付近のピーク積分面積の合計を、オレフィン部位ではないベンゼン隣接メチレン2.5ppm(Ar−C 2 )付近のピーク(内部標準)積分面積で除した値を求め、同様にして求めた重合前の値と比較して算出した。
本実施例に用いた遷移金属錯体は、一例として次に示すFe(salen)、Co(salpta)、(Fe(salen))2Oを用いた。
Fe(salen)
Figure 0003760406
Co(salpta)
Figure 0003760406
(Fe(salen))2
Figure 0003760406
実施例1
100ミリリットルナスフラスコに、撹拌子、カシューナット殻液1.5グラム、1.4−ジオキサン10ミリリットル、Fe(Salen)8ミリグラムを加え、マグネチックスターラーにて撹拌した。このものを30℃のオイルバスに付した。撹拌下、30%過酸化水素水の57マイクロリットルを6分おきに計10回添加した。添加後さらに1時間30℃で撹拌を継続して反応を行った。反応終了後、反応液の一部をGPC分析した。Conv.は42%、Mnは3500、Mw/Mnは1.70であった。反応液の一部を多量のメタノールに投入して得られた沈殿物を遠心分離により回収して減圧乾燥した。このものは、プロトンNMR分析によれば、カシューナット殻液の側鎖オレフィン部位が約80%残存している。
実施例2
100ミリリットルナスフラスコに、撹拌子、カシューナット殻液1.5グラム、トルエン10ミリリットル、Fe(Salen)16.1ミリグラムを加え、マグネチックスターラーにて撹拌した。このものを40℃のオイルバスに付した。撹拌下、30%過酸化水素水の107マイクロリットルを15分おきに計5回添加した。添加後さらに45分40℃で撹拌を継続して反応を行った。反応終了後、反応液の一部をGPC分析した。Conv.は87%、Mnは5600、Mw/Mnは1.83であった。反応液の一部を多量のメタノールに投入して得られた沈殿物を遠心分離により回収して減圧乾燥した。このもののプロトンNMR分析より、カシューナット殻液の側鎖オレフィン部位が75%残存していることを確認した。
実施例3
ピリジンを100マイクロリットル添加した以外は実施例1と同様の操作を行った。Conv.は55%、Mnは4100、Mw/Mnは1.86であった。
実施例4
100ミリリットルナスフラスコに、撹拌子、カシューナット殻液600ミリグラム、トルエン25ミリリットル、Co−Salpta10ミリグラムを加え、マグネチックスターラーにて撹拌した。このものを40℃のオイルバスに付した。撹拌下、6%過酸化水素水の145マイクロリットルを12分おきに計10回添加した。添加後さらに1時間40℃で撹拌を継続して反応を行った。反応終了後、反応液の一部をGPC分析した。Conv.は17%、Mnは2500、Mw/Mnは1.73であった。
実施例5
Co−Salptaの代わりに、(Fe(salen))2Oを用いた以外は、実施例4と同様の操作を行った。Conv.は80%、Mnは7600、Mw/Mnは2.67であった。
実施例6
カシューナット殻液に、2,4−ジメチルフェノール61ミリグラムを加えた以外は実施例1と同様の操作を行った。Conv.は42%、Mnは2800、Mw/Mnは1.74であった。また、反応液のHPLC分析より、2,4−ジメチルフェノールが消失していることを確認した。
実施例7
カシューナット殻液に、p−t−ブチルフェノール75ミリグラムを加えた以外は実施例1と同様の操作を行った。Conv.は44%、Mnは2800、Mw/Mnは1.72であった。また、反応液のHPLC分析より、p−t−ブチルフェノールが消失していることを確認した。
実施例8
300ミリリットルナスフラスコに、撹拌子、カシューナット殻液15グラム、テトラヒドロフラン100ミリリットル、Fe(Salen)80ミリグラムを加え、マグネチックスターラーにて撹拌して溶解した。このものを30℃のオイルバスに付した。撹拌下、30%過酸化水素水の566マイクロリットルを15分おきに計10回添加した。添加後さらに2時間撹拌を継続して反応を行った。反応終了後、反応液の一部をGPC分析した。Conv.は44%、Mnは3700、Mw/Mnは1.66であった。反応液を減圧濃縮し、250ミリリットルのメタノールに少量ずつ加えた。生成した褐色油状物を遠心分離より回収し、減圧乾燥した。得られた褐色油状物は3.53グラムであった。このものは、GPC分析より、Mn=5900、Mw/Mn=1.54であった。また、このもののプロトンNMR分析より、カシューナット殻液の側鎖オレフィン部位が80%以上残存していることを確認した。得られた褐色油状物100重量部に対して、ナフテン酸コバルト(コバルト含量約6%)3重量部を添加して良く混合した。このものを膜厚3ミルあるいは50マイクロメーターのアプリケーターを用いてガラス板上に塗布し、直ちに25℃、相対湿度70%の恒温恒湿器に設置した。3ミルのアプリケーターで作成した塗膜の指触乾燥時間をRC型ドライイングメーター(太佑機材(株)製)で測定したところ40分であった。鉛筆硬度は6B以下であった。24時間後恒温恒湿器より塗膜を取り出し、冷暗所で保管した。1日後の鉛筆硬度は6Bであった。塗膜硬度は時間の経過に伴って増加し、4日後には鉛筆硬度2B、6日後にはHB、11日後には2Hとなった。また、6日後の膜圧は46マイクロメーターであった。FT−IR分析より硬化反応を追跡したところ、カシューナット殻液の側鎖不飽和2重結合部位に由来する3010cm-1付近の吸収が時間の経過に伴って著しく減少していた。1日後に、塗膜(3ミルのアプリケーターで作成)の色差(分光測色計CM−3610d、ミノルタ製)、鏡面反射光沢(光沢計GM−268、ミノルタ製)と反射ヘイズ(マイクロヘーズプラス、ビックケミー・ジャパン製)を測定した。色差はL*64.2、a*15.3、b*52.3、光沢は、20度=101.2、60度=106.2、反射ヘイズ=85.8であった。得られた塗膜は黄褐色透明であり、肉持感、光沢等に優れた漆類似の塗膜であった。21日経過後の3ミルのアプリケーターで作成した塗膜(鉛筆硬度2H)の熱重量分析(TGA)を行った。測定はアルゴン下で行った。5%の重量減少を与える温度は173℃、10%の重量減少を与える温度は266℃であった。
また、2ヶ月経過後の塗膜の動的粘弾性測定を東洋ボールドウィン製RHEOVIBRONDDV−II−EAを用いて、室温〜200℃、1℃/分の昇温速度、周波数3.5Hzで測定したところ、動的Tg=約98℃(tanδ=約0.25)に観測された。
実施例9
実施例8で得られたカシューナット殻液の樹脂を用い、ナフテン酸コバルトを加えることなく、膜厚3ミルあるいは50マイクロメーターのアプリケーターを用いてガラス板上に塗布した。塗布後、直ちに150℃の恒温器に30分間設置して取り出し、冷暗所で保管した。得られた塗膜は黄褐色透明であり、肉持感、光沢等に優れた漆類似の塗膜であった。加熱処理して放冷後の鉛筆硬度は2Bであった。塗膜硬度は時間の経過に伴って増加し、5日後には鉛筆硬度HB、15日後には2Hとなった。FT−IR分析より硬化膜を測定したところ、カシューナット殻液の側鎖不飽和二重結合部位に由来する3010cm-1付近の吸収が著しく減少していた。実施例8と同様に、1日後の塗膜(3ミルのアプリケーターで作成)の色差、鏡面反射光沢と反射ヘイズを測定した。色差はL*53.5、a*19.6、b*41.6、光沢は、20度=121.5、60度=110.7、反射ヘイズ=11.4であった。21日経過後の3ミルのアプリケーターで作成した塗膜(鉛筆輝度2H)の熱重量分析(TGA)を行った。測定はアルゴン下で行った。5%の重量減少を与える温度は278℃、10%の重量減少を与える温度は361℃であった。
また、4.5ヶ月経過後の塗膜の動的粘弾性測定より(実施例8と同様の実験条件)動的Tg=約135℃(tanδ=約0.14)に観測されたが、tanδ曲線は上記室温硬化に比べて約100〜150℃の温度範囲でなめらかであった。
実施例10
100ミリリットルナスフラスコに、撹拌子、カシューナット殻液1.5グラム、1.4−ジオキサン20ミリリットル、Fe(Salen)16ミリグラム、内部標準としてジフェニルエーテル200ミリグラムを加え、マグネチックスターラーにて撹拌した。このものを30℃のオイルバスに付した。撹拌下、30%過酸化水素水の57マイクロリットルを15分おきに計7回添加した。添加後さらにFe(Salen)12ミリグラムを加えて30%過酸化水素水の57マイクロリットルを15分おきに計2回(合計9回)添加した。反応終了後、反応液の一部をGPC分析した。Conv.は93%、Mnは4500、Mw/Mnは3.34であった。このように、遷移金属錯体を複数回に分けて添加して重合を行うことで、Conv.は90%以上になった。ただし、30%過酸化水素水の57マイクロリットルを更にもう一回添加すると添加直後にゲル化物が生成した。
実施例11
100ミリリットルナスフラスコに5mLのメタノールを加えマグネティックスターラーで攪拌した。このものに予め作成していたエチレンジアミン、サリチルアルデヒドのメタノール溶液、FeSO4・7H2Oの水溶液の一部を採取して、1.8mgエチレンジアミン、6.6mgサリチルアルデヒド、8.34mg FeSO4・7H2Oとなるように加えた。60℃で30分攪拌した後、減圧濃縮した。このものに、カシューナット殻液1.5グラム、1.4−ジオキサン20ミリリットル、30%過酸化水素水の57マイクロリットルを6分おきに計10回添加した。過酸化水素の初めの添加から2時間後、反応液の一部をGPC分析した。Conv.は44%、Mnは1800、Mw/Mnは1.46であった。このように、反応系中で遷移金属錯体を合成して用いても良いことが示された。
実施例12
50ミリリットルの3つ口フラスコに、カシューナット殻液6グラム、Fe(Salen)96ミリグラムを加えて1分ほど超音波処理した。その後、攪拌棒を取りつけ、室温下で250rpm/分で機械攪拌した。このものに30%過酸化水素水の2.26ミリリットルを一度に加えた。10分後には反応液は116℃へ上昇した。過酸化水素の添加から30分後、反応液の一部をGPC分析したところ、Conv.は81%、Mnは3000、Mw/Mnは4.6であった。また、2時間後に同様に分析したところ、Conv.は80%、Mnは2900、Mw/Mnは4.5であった。このものは室温下で褐色粘稠な樹脂であり、プロトンNMR分析からカシューナット殻液の側鎖オレフィン部位が74%残存していることを確認した。
実施例13〜16
50ミリリットルの3つ口フラスコに、撹拌子、カシューナット殻液1.5グラム(5mmol)、1.4−ジオキサン20ミリリットル、カシューナット殻液に対して0.5または0.6mol%の遷移金属錯体を加え、1分ほど超音波処理をした。その後、攪拌棒を取りつけ、30℃のオイルバスに設置して250rpm/分で機械攪拌した。撹拌下、30%過酸化水素水の107マイクロリットルを6分おきに計10回添加した。なお、遷移金属錯体は以下に示すものを用いた。結果を表1に示す。
Figure 0003760406
Figure 0003760406
実施例17〜37
遷移金属錯体と反応温度を各種変更した以外は実施例12と同様の操作を行った。ただし、遷移金属錯体の量は、カシューナット殻液(6グラムを20mmolとした)に対して1mol%を用いた。
結果を表2に記す。
Figure 0003760406
Figure 0003760406
前記実施例17、21、27、31、33、35、37に関して硬化試験をおこなった。すなわち、前述の各実施例で得られた反応液を多量の含水メタノール(実施例17、21、33、35、37については90%メタノール水溶液、実施例27、31については95%メタノール水溶液)に投入して生成した沈殿物(樹脂)をデカンテーションにより回収した。このものの少量をガラス板に取り、冷風を当てながら溶媒を除去して、GPC分析、プロトンNMR分析をおこなった。次いで、樹脂の乾燥重量に対して3重量%となるようにナフテン酸コバルト(金属含量6%)を加えてよく混合し、別のガラス板に50マイクロメーターのアプリケーターを用いて塗布し、直ちに20℃、相対湿度70%の恒温高恒湿器に設置した。所定の時間経過後、鉛筆硬度を測定した。結果を表3にまとめて示す。尚、共試樹脂には6〜32%の範囲でモノマーが含まれていたが、Mn、Mw/Mnはモノマーを含めないで計算した。
Figure 0003760406
また、全ての実施例において、得られた樹脂はカシューダストではなく硬化性樹脂組成物であった。
比較例1
空気冷却管を付けた100mLナスフラスコにカシューナット殻液2gをとり、4mLの濃硫酸と4mLのエタノールを加えた。この液を15分かけて200℃(オイルバスの温度)まで加熱し、この温度で5分反応を行った。その後自然冷却した。生成ポリマーは黒色の粉末状物質(カシューダスト)であり、種々の有機溶媒(例えばN,N'−ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサンなど)に不溶であった。このものから、金属ドライヤーなどを添加して硬化塗膜を形成することはできなかった。
比較例2
空気冷却管を付けた100mLナスフラスコにカシューナット殻液2gをとり、2mLの濃硫酸と4mLのエタノールを加えた。この液を10分かけて100℃(オイルバスの温度)まで加熱し、この温度で一時間攪拌を続けた。その後自然冷却して室温付近まで戻し、生成した粘稠物質を少量のクロロホルムに溶解し、多量のメタノール中に滴下した。デカンテーションによりメタノール−クロロホルム溶液を除去し、粘稠物質を少量のクロロホルムで回収して減圧下でクロロホルムを留去した後、減圧乾燥した。得られた樹脂は褐色の粘稠物質であった。このもののプロトンNMR分析より、側鎖オレフィンの残存率は23%であった。またFT−IR分析より、カシューナット殻液の側鎖脂肪族不飽和2重結合が著しく減少していることを確認した。この樹脂にナフテン酸コバルトを加えて硬化膜の作成を試み(硬化反応および保管を20℃、相対湿度70%の恒温恒湿器で行った以外は実施例8と同様)、評価した(実施例8と同様)。また、該樹脂を180℃で30分間加熱して硬化膜の作成を試みた(評価は実施例8と同様)。室温硬化における塗膜の鉛筆硬度は、3ヶ月経過後でも6B以下であった。加熱硬化における塗膜の鉛筆硬度は、1日後に6B、3ヶ月経過後でも6Bであった。このように、酸触媒を用いるカシューナット殻液の重合により得られた樹脂は、金属ドライヤーや加熱処理では実用的な硬度の塗膜を形成しなかった。
比較例3
市販のカシュー樹脂塗料(カシュー(株)製、No.53透)の硬化反応を比較例2と同様の操作で行った。なお、このもののGPC分析より、Mn=2800、Mw/Mn=1.77であった。室温硬化において、指触乾燥時間は4時間、4日後の鉛筆硬度はHB,6日後はH,14日後には2Hであった。また、7日後の60度鏡面反射光沢の値は114であった。また、2ヶ月経過後の塗膜の動的粘弾性測定より(実施例8と同様の実験条件)動的Tg=約97℃(tanδ=約0.35)に観測された。
加熱による硬化では、1日後の鉛筆硬度はH、4日後で2H、14日後で4Hであった。また、7日後の60度鏡面反射光沢の値は107であった。また、2ヶ月経過後の塗膜の動的粘弾性測定より(実施例8と同様の実験条件)動的Tg=約120℃(tanδ=約0.11)に観測されたが、tanδ曲線は上記室温硬化に比べて約80〜200℃の温度範囲でなめらかであった。
比較例4
市販の天然漆(中国産素黒目漆)の硬化反応を比較例3と同様の操作で行った。室温硬化において、指触乾燥時間は30分、4日後の鉛筆硬度は6B,6日後にはHB,14日後には2Hであった。また、7日後の60度鏡面反射光沢の値は105であった。また、2ヶ月経過後の塗膜の動的粘弾性測定より(実施例8と同様の実験条件)動的Tg=約140℃(tanδ=約0.14)に観測されたが、約120〜160℃の温度範囲でなめらかであった。
加熱による硬化では、加熱後の鉛筆硬度は、1日後の鉛筆硬度はHB、4日後でHB、14日後で2Hであった。また、7日後の60度鏡面反射光沢の値は114であった。104であった。また、2ヶ月経過後の塗膜の動的粘弾性測定より(実施例8と同様の実験条件)動的Tg=約135℃(tanδ=約0.085)に観測されたが、tanδ曲線は約120〜190℃の温度範囲でなめらかであった。
以上より、本発明において遷移金属錯体を用いてフェノール化合物を有する植物性油を重合すると、硬化性の樹脂組成物が得られた。この樹脂は、室温下あるいは加熱下(例えば150℃)で硬化膜を形成し、硬化塗膜の美観ならびに物性は、ホルマリンでカシューナット殻液を変成した市販のカシュー樹脂塗料に同等であるばかりか、天然漆のそれらにも匹敵するものであった。
産業上の利用可能性
本発明の硬化性樹脂組成物は、漆類似塗料原材料、摩擦材料、ブレーキライニング材料、ブレーキパッド材料、塗膜形成材料、記録材料用化合物、インキ原材料、塗料原材料、接着剤原材料、エポキシ樹脂、フォトレジストもしくは酸化防止剤の原材料、機能性高分子材料の出発原料として有用な硬化性樹脂組成物として好適なものである。
本発明の硬化性樹脂組成物の製造方法は、フェノール化合物を含有する植物性油成分を含む酸化重合性化合物を、遷移金属錯体存在下で重合して形成した樹脂を含む硬化性樹脂組成物を穏和な条件下で得ることができる方法として好適なものである。本発明の、特定の触媒を用いた、フェノール化合物を含有する植物性油の酸化重合による硬化性樹脂組成物の製造方法は、フェニレン結合ユニットとオキシフェニレン結合ユニットとがランダムに結合した重合体からなり、側鎖の脂肪族不飽和二重結合を残存させた硬化性樹脂組成物を得ることができる方法として好適なものである。
さらに本発明の方法は、原料としてホルマリンを使用しないので、樹脂の製造段階はもちろん、樹脂の製品化後においても、製品からのホルマリン発生の問題がなく、環境問題への意識の高まり、生活環境の消臭化、人体の安全、健康等の要求に対応できるという点で、漆類似塗料原材料用などの硬化性樹脂組成物の製造法として非常に優れるものである。
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。

Claims (7)

  1. フェノール化合物を全体の50重量%以上含有する植物性油を含む酸化重合性化合物を、触媒の存在下で重合して樹脂を形成することを含む硬化性樹脂組成物の製造方法であって、触媒が下記一般式 ( ) 〜( IV )で表わされる遷移金属錯体であることを特徴とする硬化性樹脂組成物の製造方法。
    Figure 0003760406
    (式中、Mは遷移金属原子を含む残基を表す。R 、R はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、O - 、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、アミノ基または置換アミノ基を表し、R は水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、炭化水素オキシカルボニル基、置換炭化水素オキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、R とR とがおよび/またはR とR とが環を形成してもよい。nは1〜3の整数を表す。)
    Figure 0003760406
    (式中、Mは遷移金属原子を含む残基を表す。R 、R はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、O - 、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、アミノ基または置換アミノ基を表し、R 、R はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、炭化水素オキシカルボニル基、置換炭化水素オキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、R 、R はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基またはO - を表す。R 10 は二価の炭化水素基または置換炭化水素基を表す。R とR とがおよび/またはR とR とが環を形成してもよい。)
    Figure 0003760406
    (式中、Mは遷移金属原子を含む残基を表す。R 、R はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、O - 、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、アミノ基または置換アミノ基を表し、R 、R はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、炭化水素オキシカルボニル基、置換炭化水素オキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、R 、R はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基またはO - を表す。R 11 およびR 12 はそれぞれ二価の炭化水素基または置換炭化水素基を表す。R 13 は水素原子、炭化水素基または置換炭化水素基を表し、R とR とがおよび/またはR とR とが環を形成してもよい。)
    Figure 0003760406
    (式中、Mは遷移金属原子を含む残基を表す。R 14 〜R 29 はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、アミノ基、置換アミノ基、炭化水素オキシカルボニル基、置換炭化水素オキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子またはO - を表す。R 14 とR 15 および/またはR 15 とR 16 および/またはR 16 とR 17 および/またはR 18 とR 19 および/またはR 19 とR 20 および/またはR 20 とR 21 および/またはR 22 とR 23 および/またはR 24 とR 25 および/またはR 26 とR 27 および/またはR 27 とR 28 および/またはR 28 とR 29 とが環を形成してもよい。)
  2. フェノール化合物を全体の50重量%以上含有する植物性油を含む酸化重合性化合物を、遷移金属錯体、および酸素またはパーオキサイドの存在下で重合させることを特徴とする請求項記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
  3. フェノール化合物を全体の50重量%以上含有する植物性油が、アナカルド酸、アナギガン酸、ペランジュ酸、ギンクゴ酸、ギンクゴリン酸、カルダノール、カルドール、メチルカルドール、ウルシオール、チチオール、レンゴール、およびラッコールからなる群から選ばれるフェノール化合物を少なくとも1種含有する請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
  4. フェノール化合物を全体の50重量%以上含有する植物性油がカシューナット殻液である請求項またはに記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
  5. フェノール化合物を全体の50重量%以上含有する植物性油がカルダノールを主成分とするカシューナット殻液である請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
  6. フェノール化合物を全体の50重量%以上含有する植物性油を含む酸化重合性化合物を、触媒の存在下で重合して形成した樹脂を含む硬化性樹脂組成物の製造方法において、実質的に溶媒を使用しないで重合反応を行うことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
  7. 前記遷移金属錯体を前記植物性油に対して0.0001〜30モル%使用することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
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