JP5849771B2 - バイオマス誘導体、バイオマス誘導体組成物及びバイオマス誘導体硬化物 - Google Patents

バイオマス誘導体、バイオマス誘導体組成物及びバイオマス誘導体硬化物 Download PDF

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Description

本発明は、バイオマス誘導体、バイオマス誘導体組成物及びバイオマス誘導体硬化物に関する。
現在、合成樹脂はその優れた性質から、さまざまな分野に広く用いられている。一方で、合成樹脂のほとんどは化石資源である石油、石炭、天然ガスを原料としているため、資源枯渇や地球温暖化の観点より、脱化石資源の必要性が高まってきている。近年、動植物由来のバイオマスを原料とした合成樹脂が検討され、ポリ乳酸を代表として実用化が進んできている。一方で、これらバイオマス由来の樹脂は熱可塑型の樹脂が多く、耐久性、特に耐熱性に劣り、これまで適用アイテムが限定されていた。
バイオマス由来の合成樹脂で比較的耐熱性の高い樹脂としては、例えば熱硬化型の油変性フェノール樹脂が挙げられる。特にカシューオイル変性フェノール樹脂はフェノール性水酸基を持つ芳香族化合物であるため、硬化時に樹脂骨格に組み込まれ、他のバイオマス由来合成樹脂と比べて高い耐熱性を示すため、比較的耐熱性が要求される用途にも用いられてきた(例えば特許文献1、2、3、4)。しかし、例えば油等のバイオマスで変性されていない、未変性フェノール樹脂のような石油由来の原料を用いて得られる合成樹脂と比較すると、油変性フェノール樹脂はバイオマス含有率が高くなるほど耐熱性が悪化する傾向にあった。したがって、熱可塑型のバイオマス樹脂と比較して適用できる部位は多いものの、高い耐熱性が要求される既存の合成樹脂の用途においては、主に耐久性の問題から適用範囲が限られてきた。また、主に環境への配慮からバイオマスの含有率を高める要求が増加しているが、生物の代謝系に由来するバイオマス原料の複雑な構造、特に不飽和結合を有することにより、バイオマス含有率を高めると合成中に自己重合によるゲル化が起きやすく、バイオマス含有率の高い樹脂を工業的に安定して得ることが困難であった。
高バイオマス含有率の樹脂や誘導体を得る方法としては、たとえば植物油脂等から得られる乾性油に、フェノール類を付加させてバイオマス誘導体を得る方法(例えば特許文献5、6)が挙げられる。一方で、耐熱性は未変性のフェノール樹脂と比較して悪く、高温での耐久性に劣るという問題があるため、合成樹脂に一部添加するに留まるなど、使用範囲が限定されていた。他にもフェノール性水酸基のカップリング反応を利用した酸化重合により高バイオマス含有率の誘導体を得る方法が挙げられる(例えば特許文献7)。しかし、反応活性点及び反応活性点を発現するのに必要なフェノール性水酸基を反応の進行に伴い失うため、熱硬化させる場合に硬化が遅く、取り扱いが難しいために大きな成形品を得にくいという問題があった。
特開2007−2032号公報 特開2002−212250号公報 特開2000−44642号公報 特開2007−269843号公報 特開昭53−36504号公報 特開平5−320294号公報 特許第3760406号公報
本発明は、バイオマス含有率が高いにもかかわらず、耐熱性に優れる硬化物を得ることができるバイオマス誘導体を提供するものである。
このような目的は、下記の本発明(1)〜(8)により達成される。
(1) アルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)のアルキル鎖不飽和結合にフェノール類(b)を付加させて得られるバイオマス誘導体であって、前記アルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)が芳香族化合物であり、当該バイオマス誘導体のH−NMRスペクトルにおける前記アルキル鎖不飽和結合水素に由来するピーク(4.5〜6.0ppmのピーク)の割合が、炭素原子に結合した水素に由来するピーク(0.2〜7.5ppmのピーク)の積算値合計の1%以下であることを特徴とするバイオマス誘導体。
(2) 未反応フェノール類を除く前記バイオマス誘導体中に、前記アルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)に由来する構造を50質量%以上、95質量%以下の割合で含有する、(1)に記載のバイオマス誘導体。
(3) 前記フェノール類(b)がフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール及びアルキル鎖炭素数2〜9の飽和アルキルフェノールから選ばれる少なくとも1種以上を含むものである、(1)又は(2)に記載のバイオマス誘導体。
(4) 前記アルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)が、フェノール性水酸基を含むバイオマス由来不飽和アルキルフェノール類である、(1)ないし(3)のいずれか1項に記載のバイオマス誘導体。
(5) 前記バイオマス由来不飽和アルキルフェノール類が、カシューナット殻液、ウルシ抽出物、カルダノール、カードル、メチルカードル、アナカルド酸、ウルシオール、ラッコール、チチオール及びそれらの精製物から選ばれる少なくとも1種以上を含むものである、(4)に記載のバイオマス誘導体。
(6)(1)ないし(5)のいずれか1項に記載のバイオマス誘導体と、硬化剤(c)とを含むことを特徴とするバイオマス誘導体組成物。
(7) 前記硬化剤(c)がヘキサメチレンテトラミン及びレゾール型フェノール樹脂から選ばれる少なくとも1種以上を含むものである、(6)に記載のバイオマス誘導体組成物。
(8) (6)又は(7)に記載のバイオマス誘導体組成物を加熱硬化してなるバイオマス誘導体硬化物。
アルキル鎖不飽和結合を有するバイオマス(a)のアルキル鎖不飽和結合にフェノール類(b)を付加させることにより、バイオマス含有率が高いバイオマス誘導体を得ることができる。また、得られるバイオマス誘導体をヘキサメチレンテトラミン、レゾール型フェノール樹脂等の硬化剤やエポキシ樹脂と反応、硬化させることにより、バイオマス含有率が高いにもかかわらず熱分解を受けにくく、耐熱性を要求する部位についても広く使用できる硬化物を得ることができる。特にヘキサメチレンテトラミン、レゾール型フェノール樹脂等の硬化剤と反応、硬化させた場合、反応性がよいため、各種バインダーとして使用した時に良好な成形体が得られるため、各種用途に好適に使用できる。
最初に、本発明のバイオマス誘導体について説明する。本発明のバイオマス誘導体はアルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)のアルキル鎖不飽和結合にフェノール類(b)を付加させて得られるバイオマス誘導体であり、アルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)が芳香族化合物であり、またバイオマス誘導体中にアルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)由来のアルキル鎖不飽和結合が少ないことを特徴とする。アルキル鎖不
飽和結合の量はH−NMRスペクトルにより定量することができ、本発明のバイオマス誘導体中のH−NMRスペクトルにおけるアルキル鎖不飽和結合水素に由来するピーク(4.5〜6.0ppmのピーク)の割合が、炭素原子に結合した水素に由来するピーク(0.2〜7.5ppmのピーク)の積算値合計の1%以下であることが好ましい。特に好ましくは0.5%以下である。アルキル鎖不飽和結合は実質含まなくても良い。アルキル鎖不飽和結合水素に由来するピークの割合が上記上限値以下であれば、バイオマス含有率の高い誘導体を得ることができ、硬化剤と混合し反応させて得られる硬化物は耐熱性に優れる。不飽和結合のピーク割合が上記上限値よりも多い場合には、耐熱性が低下することがあるだけでなく、反応中に不飽和結合の重合によるゲル化が起こりやすくなり、工業的に安定してバイオマス誘導体を得られないことがある。得られるバイオマス誘導体をヘキサメチレンテトラミン、レゾール型フェノール樹脂等の硬化剤と反応、硬化させた樹脂硬化物の耐熱性が高い理由は定かではないが、芳香族化合物であり樹脂骨格が耐熱性に優れること、不飽和結合が少ないことにより不飽和結合部位での熱分解が抑制されること、及びアルキル鎖に直接フェノール類を導入することにより、熱分解時に発生するラジカルをフェノール類がトラップし、連鎖的な分解を抑制するためと考えられる。
本発明のバイオマス誘導体中には、未反応フェノール類を除いたバイオマス誘導体中にアルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)に由来する構造を50質量%以上、95質量%以下の割合で含有することが好ましい。バイオマスの含有率を測定する方法としては、アイソトープ分析によりバイオマス由来の14Cの量を定量する方法を用いるが、簡易的には用いたバイオマスの質量を得られたバイオマス誘導体の質量で除算して求めても良い。バイオマスに由来する構造の含有割合を上記範囲とすることで、ヘキサメチレンテトラミン、レゾール型フェノール樹脂等の硬化剤との反応性が良く、硬化成形後に良好な耐熱性を有する樹脂硬化物を得ることができる。上記下限値よりもバイオマスの含有率が少ない場合には、環境面からのバイオマス含有率の要求に答えることができないことがある。上記上限値よりもバイオマスの含有率の多い場合は、ヘキサメチレンテトラミン、レゾール型フェノール樹脂等の硬化剤との良好な反応性を有するバイオマス誘導体を得ることが難しく、また反応中にゲル化が起こり、樹脂硬化物が得られないことがある。
本発明のバイオマス誘導体に用いるアルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)としては、特に限定するものではないが、例えば、ケイ皮酸、シンナムアルデヒド、コーヒー酸、フェルラ酸、クマル酸やそれらの誘導体、フェノール性水酸基を含むバイオマス由来不飽和アルキルフェノール類が挙げられる。好ましくはフェノール性水酸基を含むバイオマス由来不飽和アルキルフェノール類であり、例えば、カシューナット殻液(カシューオイル)、ウルシ抽出物、カルダノール、カードル、メチルカードル、アナカルド酸、ウルシオール、ラッコール、チチオール及びそれらの精製物などが挙げられる。さらに好ましくはカルダノール、カードル、メチルカードル、カシューナット殻液及びそれらの精製物である。コストの点から、特に好ましくはカシューナット殻液及びその精製物である。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。アルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)が芳香族化合物であることにより、高いバイオマス導入率の誘導体を容易に得ることができ、その硬化物は耐熱性に優れたものが得られる。さらに、フェノール性水酸基を含むバイオマス由来不飽和アルキルフェノール類であることにより、バイオマス自身にフェノール類を含むため、フェノール類の導入量が少なくても反応点を多く取ることができ、高いバイオマス導入率でありながら反応性に優れる。また、フェノール類の付加によって生成する比較的熱分解を受けやすい脂肪族三級炭素結合部位を少なくすることができること、バイオマス由来構造においてもフェノール構造が熱分解時に発生するラジカルをトラップし分解を抑制できること、他の動植物油脂と異なりエステル基のような易分解性の官能基が無いため、硬化させた成形物は耐熱性の優れたものを得ることができる。
本発明のバイオマス誘導体に用いるフェノール類(b)としては、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール及びアルキル鎖炭素数2〜9の飽和アルキルフェノールから選ばれる少なくとも1種以上を含むものであることが好ましい。飽和アルキル鎖であって上記炭素数以内であればアルキル鎖に分岐鎖を有していても良いし、またアルキル鎖の置換位はオルト、メタ、パラ置換アルキルフェノールのいずれの化合物でも用いることができる。アルキル鎖炭素数2〜9の飽和アルキルフェノールとしては、例えば、エチルフェノール、プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、セカンダリーブチルフェノール、ターシャリーブチルフェノール、アミルフェノール、ターシャリーアミノフェノール、ヘキシルフェノール、へプチルフェノール、オクチルフェノール、ターシャリーオクチルフェノール、ノニルフェノール、ターシャリーノニルフェノールである。反応性の点から、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ヒドロキノン、フェノール核にアルキル鎖が1個置換した炭素数2〜9のモノ飽和アルキル化合物であることが好ましい。バイオマス含有率の点から、さらに好ましくはフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ヒドロキノンである。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。フェノール類(b)を用いることにより、高いバイオマス含有率とバイオマス誘導体の反応性を両立することができる。
アルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)のアルキル鎖不飽和結合にフェノール類(b)を付加する方法としては特に限定されないが、例えば、強酸触媒の存在下、アルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)とフェノール類(b)の混合物を50〜200℃で加熱する方法などが挙げられる。強酸触媒としては特に限定されないが、例えば、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化亜鉛、三フッ化ホウ素、塩化第二スズ、塩化アンチモン、塩化ガリウム、臭化ガリウム、塩化水素、臭化水素などのルイス酸や、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、硫酸、リン酸などのプロトン酸などが挙げられる。必要に応じて強酸触媒を中和除去しても良いし、触媒がバイオマス誘導体にそのまま含まれていてもかまわない。また、加工後の製品形態に合わせて、その後余分なフェノール類を真空下で蒸留除去してもかまわないし、フェノール類がバイオマス誘導体に含まれていても良い。アルキル鎖不飽和結合を含むバイオマスにフェノール類を付加させる装置は特に限定されないが、例えば加熱器、冷却器と撹拌器を備えた反応釜のような容器で反応させたり、連続ミキサー等で連続的に反応を行ってもかまわない。フェノール類(b)の配合量は、特に限定するものではないが、得られるバイオマス誘導体のH−NMRスペクトルにおけるアルキル鎖不飽和結合水素に由来するピーク(4.5〜6.0ppmのピーク)の割合が、炭素原子に結合した水素に由来するピーク(0.2〜7.5ppmのピーク)の積算値合計の1%以下となるよう、不足しない範囲とすることが好ましい。
次に、本発明のバイオマス誘導体組成物及びバイオマス誘導体硬化物について説明する。本発明のバイオマス誘導体組成物は、本発明のバイオマス誘導体と、硬化剤(c)とを含むことが好ましい。
本発明のバイオマス誘導体組成物に用いる硬化剤(c)としては、特に限定するものではないが、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、レゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。これらの中では、硬化物の耐熱性、バイオマス含有率の観点から、ヘキサメチレンテトラミンが好ましい。
硬化剤(c)の含有量は、特に限定されるものではないが、硬化剤(c)がヘキサメチレンテトラミンである場合、バイオマス誘導体100質量部に対し、1質量部以上、40質量部以下が好ましい。更に好ましくは2質量部以上、30質量部以下である。上記上限値を超えると、未反応へミサメチレンテトラミンが残存し強度に影響を与えることがあり、上記下限値未満では架橋が不十分で硬化物の強度が低下することがある。硬化剤(c)
がレゾール型フェノール樹脂である場合、バイオマス誘導体100質量部に対し、5質量部以上、50質量部以下が好ましい。更に好ましくは10質量部以上、50質量部以下である。上記上限値を超えると、耐熱性の低下及び環境面からのバイオマス含有率の要求に答えることができないことがあり、上記下限値未満では架橋が不十分で硬化物の強度が低下することがある。
本発明のバイオマス誘導体組成物には、各種充填材を配合することができる。各種充填材としては特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、カーボン、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミ、窒化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、マイカ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ウォラストナイト、金属粉等の無機粉末充填材や、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、金属繊維等の強化繊維が挙げられる。これらの充填材は、単独で用いても、二種類以上を併用しても差し支えない。また、本発明のバイオマス誘導体組成物には、必要に応じて、着色剤、離型剤、硬化触媒、硬化助剤、カップリング剤、低応力化剤、難燃剤、溶剤等を適宜添加することができる。
本発明のバイオマス誘導体組成物を得る方法としては特に限定されないが、例えば上記配合物を所定の配合割合で混合し、加熱ロール、コニーダ、二軸押出機等の混練機を使用して溶融混練した後、冷却・粉砕又は造粒する方法、あるいは、上記配合物をそのまま又は上記配合物に溶剤等を添加して、乾式又は湿式のミキサーを用いて混合する方法などにより得ることができる。本発明のバイオマス誘導体硬化物は、圧縮成形、移送成形、射出成形等の通常の成形方法により、本発明のバイオマス誘導体組成物を硬化成形することで得ることができる。このようにして得られたバイオマス誘導体硬化物(成形品)は、高い耐熱性を有し、高温での耐久性に優れるため、自動車用、汎用機械用、家庭電化製品用及びその周辺機器用等、広範な用途に適用できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制約されるものではない。また、実施例、比較例で示される「部」および「%」は全て「質量部」および「質量%」である。
(実施例1)
フェノール1000部とカシューオイル(東北化工製、LB−7000)1000部を混合し、96%濃硫酸60部を添加し、150℃で3時間、反応を行った。反応物を0.9kPaまで徐々に減圧しながら、反応混合物の温度が170℃になるまで加熱して減圧蒸留を行った。続いて0.9kPaのまま水蒸気を吹き込み、水蒸気蒸留により未反応のフェノールを蒸留除去し、バイオマス誘導体A1137部を得た。得られたバイオマス誘導体Aの遊離フェノールは0.1%で、未反応フェノール類を除いたバイオマス誘導体Aの質量で、バイオマスであるカシューオイルの質量を除算して求めたバイオマス含有率は88%であった。また、NMRより求めたアルキル鎖不飽和結合水素に由来するピークの割合は、炭素原子に結合した水素に由来するピークの積算値合計に対して、0.2%であった。
(実施例2)
フェノール1000部とカシューオイル(東北化工製、LB−7000)1000部を混合し、酸触媒として三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体30部を添加し、120℃で6時間、反応を行った。その後、水酸化カルシウム100部を添加して中和後、濾過し触媒の除去を行った。さらに反応物を0.9kPaまで徐々に減圧しながら、反応混合物の温度が170℃になるまで加熱して減圧蒸留を行った。続いて0.9kPaのまま水蒸気を吹き込み、水蒸気蒸留により未反応のフェノールを蒸留除去し、バイオマス誘導体B1
370部を得た。得られたバイオマス誘導体Bの遊離フェノールは0.1%で、未反応フェノール類を除いたバイオマス含有率は73%であった。また、NMRより求めたアルキル鎖不飽和結合水素に由来するピークの割合は、炭素原子に結合した水素に由来するピークの積算値合計に対して、0.1%以下であった。
(比較例1)
フェノール1000部、カシューオイル(東北化工製、LB−7000)500部、37%ホルマリン水溶液600部を混合し、触媒として96%濃硫酸20部を添加し、100℃で2時間反応させた。続いて反応混合物の温度が130℃になるまで常圧蒸留で脱水した。その後、未反応フェノールを除去するために反応混合物の温度が170℃になるまで減圧蒸留を行った。続いて0.9kPaのまま水蒸気を吹き込み、水蒸気蒸留により未反応のフェノールを蒸留除去し、カシューオイル変性フェノール樹脂1333部を得た。得られた樹脂の遊離フェノールは0.1%で、未反応フェノール類を除いたバイオマス含有率は38%であった。また、NMRより求めたアルキル鎖不飽和結合水素に由来するピークの割合は、炭素原子に結合した水素に由来するピークの積算値合計に対して、1.6%であった。
(比較例2)
フェノール1000部、カシューオイル(東北化工製、LB−7000)1000部、37%ホルマリン水溶液600部を混合し、触媒として96%濃硫酸20部を添加し、100℃で2時間反応させた。続いて反応混合物の温度が130℃になるまで常圧蒸留で脱水した。その後、未反応フェノールを除去するために反応混合物の温度が170℃になるまで減圧蒸留を行おうとしたが、加熱中にゲル化が起こり、樹脂を得ることができなかった。
(比較例3)
フェノール1000部、桐油320部を混合し、触媒としてパラトルエンスルホン酸10部を添加し、100℃で4時間反応させた。続いて未反応フェノールを除去するために反応物を0.9kPaまで徐々に減圧しながら、反応混合物の温度が170℃になるまで加熱して減圧蒸留を行った。続いて0.9kPaのまま水蒸気を吹き込み、水蒸気蒸留により未反応のフェノールを蒸留除去し、バイオマス誘導体C522部を得た。得られたバイオマス誘導体Cの遊離フェノールは0.1%で、未反応フェノール類を除いたバイオマス含有率は61%であった。また、NMRより求めたアルキル鎖不飽和結合水素に由来するピークの割合は、炭素原子に結合した水素に由来するピークの積算値合計に対して、0.2%であった。
(比較例4)
フェノール1000部、37%ホルマリン水溶液690部を混合し、触媒としてシュウ酸10部を添加し、100℃で2時間反応させた。続いて反応混合物の温度が130℃になるまで常圧蒸留で脱水した。その後、未反応フェノールを除去するためにさらに反応物を0.9kPaまで徐々に減圧しながら、反応混合物の温度が170℃になるまで加熱して減圧蒸留を行った。続いて0.9kPaのまま水蒸気を吹き込み、水蒸気蒸留により未反応のフェノールを蒸留除去し、フェノール樹脂933部を得た。
(比較例5)
カシューオイル(東北化工製、LB−7000)をそのまま用いた。
(評価)
実施例及び比較例で得られたバイオマス誘導体及びフェノール樹脂の評価を下記の要領で行った。得られたバイオマス誘導体及びフェノール樹脂、ならびにカシューオイル、各
100部に対してヘキサメチレンテトラミン10部を配合し、165℃に加熱した鉄板上でかき混ぜながら、配合物が硬化するまでの時間を測定して硬化速度を比較した。カシューオイルをそのまま用いた比較例5の配合物では、測定時間が1200秒を超えても硬化しなかったため、硬化しないものと判断した。配合物が硬化することを確認できた実施例1,2及び比較例1,3,4については、バイオマス誘導体及びフェノール樹脂100部に対してヘキサメチレンテトラミン10部を配合し、ニーダーを用いて混合した。混合物を200℃、1時間加熱して硬化物を得た。得られた硬化物を熱重量分析(セイコーインスツル社製、EXTRA TG/DTA6300、空気気流下250ml/分)により熱重量減少を測定し、5%熱重量減少温度を熱分解開始温度として評価を行った。表1に評価結果を示す。
表1に示すように、本発明によって得られたバイオマス誘導体をヘキサメチレンテトラミンで硬化させた実施例1、2の硬化物は、アルキル鎖不飽和結合を含む芳香族化合物のバイオマスを用いたものの不飽和結合を多量に有するカシュー変性フェノール樹脂をヘキサメチレンテトラミンで硬化させた比較例1の硬化物や、不飽和結合はほとんど有しないものの非芳香族化合物のバイオマスを用いたバイオマス誘導体をヘキサメチレンテトラミンで硬化させた比較例3の硬化物、あるいは、バイオマスを用いていない一般のフェノール樹脂をヘキサメチレンテトラミンで硬化させた比較例4よりも、バイオマス含有率が高いにもかかわらず熱分解開始温度が高く、耐熱性に優れていることが判った。また、比較例2の結果から、従来の方法では高いバイオマス含有率の誘導体を得ることは困難であることが判った。さらに比較例5では、カシューオイルをそのまま用いたが、ヘキサミンを配合しても、実用的に成形できると考えられる時間では硬化しなかった。これらの結果より、本発明のバイオマス誘導体は、バイオマス含有率が高いにもかかわらず、得られる硬化物は高い耐熱性を有し、各種用途に好適に使用できるものである。
本発明は、従来のバイオマス樹脂や誘導体と比較して、得られる硬化物が耐熱性に優れるため、本発明のバイオマス誘導体は耐熱性の点から従来適用することが難しかった、各種バインダーや成形品向け等に広く使用できるものである。また従来よりも高バイオマス含有率であるため、環境対応の面で優れたバイオマス誘導体を提供できる。

Claims (8)

  1. アルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)のアルキル鎖不飽和結合にフェノール類(b)を付加させて得られるバイオマス誘導体であって、
    前記アルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)が芳香族化合物であり、
    当該バイオマス誘導体のH−NMRスペクトルにおける前記アルキル鎖不飽和結合水素に由来するピーク(4.5〜6.0ppmのピーク)の割合が、炭素原子に結合した水素に由来するピーク(0.2〜7.5ppmのピーク)の積算値合計の1%以下であることを特徴とするバイオマス誘導体。
  2. 未反応フェノール類を除く前記バイオマス誘導体中に、前記アルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)に由来する構造を50質量%以上、95質量%以下の割合で含有する、請求項1に記載のバイオマス誘導体。
  3. 前記フェノール類(b)がフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール及びアルキル鎖炭素数2〜9の飽和アルキルフェノールから選ばれる少なくとも1種以上を含むものである、請求項1又は2に記載のバイオマス誘導体。
  4. 前記アルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)が、フェノール性水酸基を含むバイオマス由来不飽和アルキルフェノール類である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のバイオマス誘導体。
  5. 前記バイオマス由来不飽和アルキルフェノール類が、カシューナット殻液、ウルシ抽出物、カルダノール、カードル、メチルカードル、アナカルド酸、ウルシオール、ラッコール、チチオール及びそれらの精製物から選ばれる少なくとも1種以上を含むものである、請求項4に記載のバイオマス誘導体。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のバイオマス誘導体と、硬化剤(c)とを含むことを特徴とするバイオマス誘導体組成物。
  7. 前記硬化剤(c)がヘキサメチレンテトラミン及びレゾール型フェノール樹脂から選ばれる少なくとも1種以上を含むものである、請求項6に記載のバイオマス誘導体組成物。
  8. 請求項6又は7に記載のバイオマス誘導体組成物を加熱硬化してなるバイオマス誘導体硬化物。
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