JP5849771B2 - バイオマス誘導体、バイオマス誘導体組成物及びバイオマス誘導体硬化物 - Google Patents
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(1) アルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)のアルキル鎖不飽和結合にフェノール類(b)を付加させて得られるバイオマス誘導体であって、前記アルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)が芳香族化合物であり、当該バイオマス誘導体の1H−NMRスペクトルにおける前記アルキル鎖不飽和結合水素に由来するピーク(4.5〜6.0ppmのピーク)の割合が、炭素原子に結合した水素に由来するピーク(0.2〜7.5ppmのピーク)の積算値合計の1%以下であることを特徴とするバイオマス誘導体。
(2) 未反応フェノール類を除く前記バイオマス誘導体中に、前記アルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)に由来する構造を50質量%以上、95質量%以下の割合で含有する、(1)に記載のバイオマス誘導体。
(3) 前記フェノール類(b)がフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール及びアルキル鎖炭素数2〜9の飽和アルキルフェノールから選ばれる少なくとも1種以上を含むものである、(1)又は(2)に記載のバイオマス誘導体。
(4) 前記アルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)が、フェノール性水酸基を含むバイオマス由来不飽和アルキルフェノール類である、(1)ないし(3)のいずれか1項に記載のバイオマス誘導体。
(5) 前記バイオマス由来不飽和アルキルフェノール類が、カシューナット殻液、ウルシ抽出物、カルダノール、カードル、メチルカードル、アナカルド酸、ウルシオール、ラッコール、チチオール及びそれらの精製物から選ばれる少なくとも1種以上を含むものである、(4)に記載のバイオマス誘導体。
(6)(1)ないし(5)のいずれか1項に記載のバイオマス誘導体と、硬化剤(c)とを含むことを特徴とするバイオマス誘導体組成物。
(7) 前記硬化剤(c)がヘキサメチレンテトラミン及びレゾール型フェノール樹脂から選ばれる少なくとも1種以上を含むものである、(6)に記載のバイオマス誘導体組成物。
(8) (6)又は(7)に記載のバイオマス誘導体組成物を加熱硬化してなるバイオマス誘導体硬化物。
飽和結合の量は1H−NMRスペクトルにより定量することができ、本発明のバイオマス誘導体中の1H−NMRスペクトルにおけるアルキル鎖不飽和結合水素に由来するピーク(4.5〜6.0ppmのピーク)の割合が、炭素原子に結合した水素に由来するピーク(0.2〜7.5ppmのピーク)の積算値合計の1%以下であることが好ましい。特に好ましくは0.5%以下である。アルキル鎖不飽和結合は実質含まなくても良い。アルキル鎖不飽和結合水素に由来するピークの割合が上記上限値以下であれば、バイオマス含有率の高い誘導体を得ることができ、硬化剤と混合し反応させて得られる硬化物は耐熱性に優れる。不飽和結合のピーク割合が上記上限値よりも多い場合には、耐熱性が低下することがあるだけでなく、反応中に不飽和結合の重合によるゲル化が起こりやすくなり、工業的に安定してバイオマス誘導体を得られないことがある。得られるバイオマス誘導体をヘキサメチレンテトラミン、レゾール型フェノール樹脂等の硬化剤と反応、硬化させた樹脂硬化物の耐熱性が高い理由は定かではないが、芳香族化合物であり樹脂骨格が耐熱性に優れること、不飽和結合が少ないことにより不飽和結合部位での熱分解が抑制されること、及びアルキル鎖に直接フェノール類を導入することにより、熱分解時に発生するラジカルをフェノール類がトラップし、連鎖的な分解を抑制するためと考えられる。
がレゾール型フェノール樹脂である場合、バイオマス誘導体100質量部に対し、5質量部以上、50質量部以下が好ましい。更に好ましくは10質量部以上、50質量部以下である。上記上限値を超えると、耐熱性の低下及び環境面からのバイオマス含有率の要求に答えることができないことがあり、上記下限値未満では架橋が不十分で硬化物の強度が低下することがある。
フェノール1000部とカシューオイル(東北化工製、LB−7000)1000部を混合し、96%濃硫酸60部を添加し、150℃で3時間、反応を行った。反応物を0.9kPaまで徐々に減圧しながら、反応混合物の温度が170℃になるまで加熱して減圧蒸留を行った。続いて0.9kPaのまま水蒸気を吹き込み、水蒸気蒸留により未反応のフェノールを蒸留除去し、バイオマス誘導体A1137部を得た。得られたバイオマス誘導体Aの遊離フェノールは0.1%で、未反応フェノール類を除いたバイオマス誘導体Aの質量で、バイオマスであるカシューオイルの質量を除算して求めたバイオマス含有率は88%であった。また、NMRより求めたアルキル鎖不飽和結合水素に由来するピークの割合は、炭素原子に結合した水素に由来するピークの積算値合計に対して、0.2%であった。
フェノール1000部とカシューオイル(東北化工製、LB−7000)1000部を混合し、酸触媒として三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体30部を添加し、120℃で6時間、反応を行った。その後、水酸化カルシウム100部を添加して中和後、濾過し触媒の除去を行った。さらに反応物を0.9kPaまで徐々に減圧しながら、反応混合物の温度が170℃になるまで加熱して減圧蒸留を行った。続いて0.9kPaのまま水蒸気を吹き込み、水蒸気蒸留により未反応のフェノールを蒸留除去し、バイオマス誘導体B1
370部を得た。得られたバイオマス誘導体Bの遊離フェノールは0.1%で、未反応フェノール類を除いたバイオマス含有率は73%であった。また、NMRより求めたアルキル鎖不飽和結合水素に由来するピークの割合は、炭素原子に結合した水素に由来するピークの積算値合計に対して、0.1%以下であった。
フェノール1000部、カシューオイル(東北化工製、LB−7000)500部、37%ホルマリン水溶液600部を混合し、触媒として96%濃硫酸20部を添加し、100℃で2時間反応させた。続いて反応混合物の温度が130℃になるまで常圧蒸留で脱水した。その後、未反応フェノールを除去するために反応混合物の温度が170℃になるまで減圧蒸留を行った。続いて0.9kPaのまま水蒸気を吹き込み、水蒸気蒸留により未反応のフェノールを蒸留除去し、カシューオイル変性フェノール樹脂1333部を得た。得られた樹脂の遊離フェノールは0.1%で、未反応フェノール類を除いたバイオマス含有率は38%であった。また、NMRより求めたアルキル鎖不飽和結合水素に由来するピークの割合は、炭素原子に結合した水素に由来するピークの積算値合計に対して、1.6%であった。
フェノール1000部、カシューオイル(東北化工製、LB−7000)1000部、37%ホルマリン水溶液600部を混合し、触媒として96%濃硫酸20部を添加し、100℃で2時間反応させた。続いて反応混合物の温度が130℃になるまで常圧蒸留で脱水した。その後、未反応フェノールを除去するために反応混合物の温度が170℃になるまで減圧蒸留を行おうとしたが、加熱中にゲル化が起こり、樹脂を得ることができなかった。
フェノール1000部、桐油320部を混合し、触媒としてパラトルエンスルホン酸10部を添加し、100℃で4時間反応させた。続いて未反応フェノールを除去するために反応物を0.9kPaまで徐々に減圧しながら、反応混合物の温度が170℃になるまで加熱して減圧蒸留を行った。続いて0.9kPaのまま水蒸気を吹き込み、水蒸気蒸留により未反応のフェノールを蒸留除去し、バイオマス誘導体C522部を得た。得られたバイオマス誘導体Cの遊離フェノールは0.1%で、未反応フェノール類を除いたバイオマス含有率は61%であった。また、NMRより求めたアルキル鎖不飽和結合水素に由来するピークの割合は、炭素原子に結合した水素に由来するピークの積算値合計に対して、0.2%であった。
フェノール1000部、37%ホルマリン水溶液690部を混合し、触媒としてシュウ酸10部を添加し、100℃で2時間反応させた。続いて反応混合物の温度が130℃になるまで常圧蒸留で脱水した。その後、未反応フェノールを除去するためにさらに反応物を0.9kPaまで徐々に減圧しながら、反応混合物の温度が170℃になるまで加熱して減圧蒸留を行った。続いて0.9kPaのまま水蒸気を吹き込み、水蒸気蒸留により未反応のフェノールを蒸留除去し、フェノール樹脂933部を得た。
カシューオイル(東北化工製、LB−7000)をそのまま用いた。
実施例及び比較例で得られたバイオマス誘導体及びフェノール樹脂の評価を下記の要領で行った。得られたバイオマス誘導体及びフェノール樹脂、ならびにカシューオイル、各
100部に対してヘキサメチレンテトラミン10部を配合し、165℃に加熱した鉄板上でかき混ぜながら、配合物が硬化するまでの時間を測定して硬化速度を比較した。カシューオイルをそのまま用いた比較例5の配合物では、測定時間が1200秒を超えても硬化しなかったため、硬化しないものと判断した。配合物が硬化することを確認できた実施例1,2及び比較例1,3,4については、バイオマス誘導体及びフェノール樹脂100部に対してヘキサメチレンテトラミン10部を配合し、ニーダーを用いて混合した。混合物を200℃、1時間加熱して硬化物を得た。得られた硬化物を熱重量分析(セイコーインスツル社製、EXTRA TG/DTA6300、空気気流下250ml/分)により熱重量減少を測定し、5%熱重量減少温度を熱分解開始温度として評価を行った。表1に評価結果を示す。
Claims (8)
- アルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)のアルキル鎖不飽和結合にフェノール類(b)を付加させて得られるバイオマス誘導体であって、
前記アルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)が芳香族化合物であり、
当該バイオマス誘導体の1H−NMRスペクトルにおける前記アルキル鎖不飽和結合水素に由来するピーク(4.5〜6.0ppmのピーク)の割合が、炭素原子に結合した水素に由来するピーク(0.2〜7.5ppmのピーク)の積算値合計の1%以下であることを特徴とするバイオマス誘導体。 - 未反応フェノール類を除く前記バイオマス誘導体中に、前記アルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)に由来する構造を50質量%以上、95質量%以下の割合で含有する、請求項1に記載のバイオマス誘導体。
- 前記フェノール類(b)がフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール及びアルキル鎖炭素数2〜9の飽和アルキルフェノールから選ばれる少なくとも1種以上を含むものである、請求項1又は2に記載のバイオマス誘導体。
- 前記アルキル鎖不飽和結合を含むバイオマス(a)が、フェノール性水酸基を含むバイオマス由来不飽和アルキルフェノール類である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のバイオマス誘導体。
- 前記バイオマス由来不飽和アルキルフェノール類が、カシューナット殻液、ウルシ抽出物、カルダノール、カードル、メチルカードル、アナカルド酸、ウルシオール、ラッコール、チチオール及びそれらの精製物から選ばれる少なくとも1種以上を含むものである、請求項4に記載のバイオマス誘導体。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のバイオマス誘導体と、硬化剤(c)とを含むことを特徴とするバイオマス誘導体組成物。
- 前記硬化剤(c)がヘキサメチレンテトラミン及びレゾール型フェノール樹脂から選ばれる少なくとも1種以上を含むものである、請求項6に記載のバイオマス誘導体組成物。
- 請求項6又は7に記載のバイオマス誘導体組成物を加熱硬化してなるバイオマス誘導体硬化物。
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