JPWO2018150708A1 - バイオマス誘導体の製造方法、バイオマス変性フェノール樹脂の製造方法、およびバイオマス変性フェノール樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

バイオマス誘導体の製造方法、バイオマス変性フェノール樹脂の製造方法、およびバイオマス変性フェノール樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明のバイオマス誘導体の製造方法は、植物原料由来の不飽和炭素鎖含有フェノール類を自己重合させてコポリマーを得る自己重合工程と、コポリマー中の不飽和炭素鎖の二重結合にフェノール類を付加反応させる付加反応工程と、を含む。

Description

本発明は、バイオマス誘導体の製造方法、バイオマス変性フェノール樹脂の製造方法、バイオマス変性フェノール樹脂組成物の製造方法およびバイオマス変性フェノール樹脂に関する。
変性フェノール樹脂の製造方法に関する技術としては、例えば、特許文献1に記載の技術が挙げられる。同文献によれば、カシュー油、硫酸を加え、200℃で10時間反応させ、カシュー油自己重合物を得た後、そこに、フェノール、ホルマリン、硫酸を添加し、100℃で5時間反応させた後、アンモニア水を添加し、180℃に昇温し、減圧蒸留を開始して、タイヤ用ゴム組成物として好適なカシュー油変性フェノール樹脂を得た、と記載されている(特許文献1の実施例1)。
特開2007−269843号公報
しかしながら、本発明者が検討したところ、上記文献に記載のカシュー油変性フェノール樹脂を用いて得られる硬化物は、耐熱性および機械的強度の点において、改善の余地を有していた。
本発明者は、バイオマス変性フェノール樹脂の硬化物について、耐熱性、機械的強度および柔軟性のバランスに着眼して検討した結果、次のようなことが判明した。
まず、植物原料由来の柔軟骨格を有するフェノール類を使用して、通常のフェノール樹脂を変性した場合、通常のフェノール樹脂と比べてやや柔軟性を高めることができるが、それでも柔軟性が不十分であることが判明した。
そこで、植物原料由来のフェノール類をあらかじめ自己重合したコポリマーを使用して、通常のフェノール樹脂を変性すれば、柔軟性に優れた硬化物が得られるが、一方で、機械的強度や耐熱性が低下することが判明した。
このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、上記のようなコポリマーを使用して通常のフェノール樹脂を変性し、さらにコポリマー等に残存する不飽和炭素鎖の二重結合にフェノール類を付加反応させることによって、不飽和炭素鎖の二重結合を低減することにより、得られたバイオマス誘導体やこれを用いたバイオマス変性フェノール樹脂の硬化物において、耐熱性、機械的強度および柔軟性を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、
植物原料由来の不飽和炭素鎖含有フェノール類を自己重合させてコポリマーを得る自己重合工程と、
前記コポリマー中の不飽和炭素鎖の二重結合にフェノール類を付加反応させる付加反応工程と、を含む、バイオマス誘導体の製造方法が提供される。
また本発明によれば、
上記バイオマス誘導体の製造方法で得られたバイオマス誘導体、フェノール類およびアルデヒド類を反応させることにより、バイオマス変性フェノール樹脂を得る工程を含む、バイオマス変性フェノール樹脂の製造方法が提供される。
また本発明によれば、
上記バイオマス変性フェノール樹脂の製造方法で得られたバイオマス変性フェノール樹脂と、硬化剤と、を混合する工程を含む、バイオマス変性フェノール樹脂組成物の製造方法が提供される。
また本発明によれば、
植物原料由来の不飽和炭素鎖含有フェノール類が、当該不飽和炭素鎖を介して直接結合した構造単位を有しており、
H−NMRスペクトルにおけるアルキル鎖不飽和結合に由来するピーク(4.5〜6.0ppmのピーク)の割合が、炭素原子に結合した水素に由来するピーク(0.2〜7.5ppmのピーク)の積算値合計の2%以下である、バイオマス変性フェノール樹脂が提供される。
本発明によれば、耐熱性、機械的強度および柔軟性に優れた硬化物を実現できる、バイオマス誘導体、バイオマス変性フェノール樹脂ならびにバイオマス変性フェノール樹脂組成物の製造方法およびバイオマス変性フェノール樹脂が提供される。
本実施形態のバイオマス誘導体の製造方法は、植物原料由来の不飽和炭素鎖含有フェノール類を自己重合させてコポリマーを得る自己重合工程と、コポリマー中の不飽和炭素鎖の二重結合にフェノール類を付加反応させる付加反応工程と、を含むことができる。
また、本実施形態のバイオマス変性フェノール樹脂の製造方法は、得られたバイオマス誘導体、フェノール類およびアルデヒド類を反応させることにより、バイオマス変性フェノール樹脂を得る工程を含むことができる。
本実施形態によれば、上記自己重合工程により、植物原料(以下、バイオマスと呼称することもある。)由来のコポリマーを増大させて、柔軟性を有する構造を大きくすることができる。さらに上記付加反応工程によって、コポリマーにフェノール類が付加すること、また、当該フェノール類を介してコポリマー同士が結合することができる。これにより、バイオマス誘導体において、付加したフェノール類に起因して樹脂化時の反応性基を増大させることができ、また、柔軟性構造を有するコポリマーがフェノール類を介して増大するため、柔軟性が高くなり、架橋密度が高くなることで強度や耐熱性も向上させることができる。
本実施形態によれば、バイオマス誘導体およびこれを用いたバイオマス変性フェノール樹脂を使用することにより、その硬化物において耐熱性、機械的強度および柔軟性を向上させることができる。
以下、本実施形態のバイオマス誘導体およびそれを用いたバイオマス変性フェノール樹脂の製造方法の各工程について説明する。
まず、上記自己重合工程は、例えば、容器中の植物原料由来の不飽和炭素鎖含有フェノール類を、酸性触媒の存在下で、加熱処理することにより、植物原料由来の不飽和炭素鎖含有フェノール類を自己重合させてコポリマーを得ることができる。これにより、柔軟性を有するバイオマス由来の構造を増大させることができる。上記自己重合工程中の容器中には、フェノール類、アルデヒド類およびフェノール樹脂は含まれない。
上記自己重合工程に用いる酸性触媒としては、特に限定されないが、例えば、蓚酸、酢酸などの有機カルボン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などの有機スルホン酸、塩酸、硫酸などの無機酸などが挙げられる。この中でも、パラトルエンスルホン酸等の有機スルホン酸や硫酸等の無機酸を用いることができる。
上記自己重合工程における反応温度は、植物原料に応じて適切に選択できるが、例えば、130℃〜200℃としてもよく、好ましくは140℃〜180℃としてもよい(以下、「〜」は、特に明示しない限り、上限値と下限値を含むことを表す)。なお、上記自己重合工程における反応時間は、特に制限はなく、反応条件に応じて適宜決定すればよいが、例えば、1時間〜8時間としてもよい。
上記植物原料としては、不飽和炭素鎖含有フェノール類であれば、特に限定されないが、例えば、ケイ皮酸、シンナムアルデヒド、コーヒー酸、フェルラ酸、クマル酸やこれらの誘導体等の、植物由来の不飽和カルボン酸;カルダノール、カードル、メチルカードルおよびアナカルド酸等のカシューナット殻液(カシュー油)、ウルシオール、ラッコールおよびチチオール等のウルシ抽出物やこれらの精製物等の、植物由来のフェノール性水酸基かつ不飽和アルキル基含有フェノール類;等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態において、植物原料として、不飽和炭素鎖含有フェノール類を使用することにより、バイオマス変性フェノール樹脂中のバイオマス変性率を高めることができ、その硬化物の耐熱性を向上させることができる。また、フェノール性水酸基かつ不飽和アルキル基含有フェノール類を使用することにより、高いバイオマス導入率でありながら反応性に優れるバイオマス変性フェノール樹脂を実現できる。また、他の動植物油脂と異なりエステル基のような易分解性の官能基が無いため、バイオマス変性フェノール樹脂の硬化物で構成された成形物は耐熱性に優れたものとすることができる。
上記自己重合工程において、コストの観点から、カシュー油を含む植物原料を使用することができる。上記カシュー油は、カシューナッツの殻に含まれる油状の液体であり、アナカルド酸、カルドール、2−メチルカルドール、カルダノールなどを含むものである。この中でも、上記カシュー油として、カルダノール、カルドール、および2−メチルカルドールからなる群から選択される一種以上を含むことができる。また、カルダノール等のカシュー油の精製物を使用してもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記フェノール性水酸基かつ不飽和アルキル基含有フェノール類としては、例えば、下記の一般式(1)で表されるフェノール化合物を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 2018150708
式(1)中、Rは、炭素数10以上の直鎖不飽和炭化水素基を表す。ただし、フェノール性水酸基を有するベンゼン環に結合する水素原子は置換基により置換されてもよい。また、Rは、オルト位、メタ位、パラ位のいずれでもよく、1個以上もよく、2個以上でもよく、3個以上でもよい。
また、上記式(1)中のRは炭素数10以上の直鎖不飽和炭化水素基を表し、炭素数10〜20の直鎖不飽和炭化水素基が好ましく、炭素数12〜20の直鎖不飽和炭化水素基が好ましく、炭素数12〜18の直鎖不飽和炭化水素基がより好ましい。直鎖不飽和炭化水素基の炭素数が上記範囲の上限値以下である場合、有機溶剤で希釈しやすくなる。一方、直鎖不飽和炭化水素基の炭素数が上記下限値以上である場合、柔軟性が向上しやすくなる。この直鎖不飽和炭化水素基は、二重結合を1個以上有していればよく、2個有していてもよく、3個有していてもよい。
フェノール性水酸基を有するベンゼン環に結合する水素原子を置換する置換基としては、特に限定されないが、たとえば、アセチル基、メチル基、水酸基等が挙げられる。
上記(1)で表されるフェノール化合物としては、具体的には、3−ドデセニルフェノール、3−トリデセニルフェノール、3−ペンタデセニルフェノール、5−トリデセニルレゾルシノール、5−ペンタデセニルレゾルシノール、メタ位に炭素数15の直鎖不飽和炭化水素基を有するフェノールであるカルダノール、メタ位に炭素数15の直鎖不飽和炭化水素基及び水酸基を有するカルドール、メタ位に炭素数15の直鎖不飽和炭化水素基及び水酸基、オルソ位にメチル基を有するフェノールである2−メチルカルドール等が挙げられる。
得られたコポリマーは、例えば、バイオマス由来のモノマーの、2量体でもよく、3量体でもよく、4量体でもよく、5量体以上でもよい。コポリマーは、これらを単独または2種以上含有していてもよい。また、コポリマー中の各量体の存在割合は、例えば、GPCによって測定することができる。
また、自己重合工程の後、GPC測定で得られた面積比に基づいて質量比を算出したとき、2量体以上のコポリマー成分の含有比率は、例えば、40質量%以上であり、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。
続いて、上記付加反応工程は、例えば、容器中の得られたコポリマーおよびフェノール類を、酸性触媒の存在下で、加熱処理することにより、当該コポリマー中の不飽和炭素鎖の二重結合にフェノール類を付加反応させて、バイオマス誘導体を得ることができる。これにより、バイオマス由来のモノマー同士が重合したコポリマーにおいて、当該コポリマー中に残存する不飽和炭素鎖の二重結合を低減させることができる。
また、上記自己重合工程でバイオマス由来のモノマーが残存していた場合、上記付加反応工程において、当該モノマーも反応することができるので、得られるバイオマス誘導体中におけるコポリマーの5量体以上の成分の割合を増加させることができる。
上記付加反応工程の後、GPC測定で得られた面積比に基づいて質量比を算出したとき、2量体以上のコポリマー成分の含有比率は、例えば、45質量%以上であり、好ましくは55質量%以上であり、より好ましくは65質量%以上である。
また、付加反応工程後の5量体以上のコポリマー成分の含有比率は、自己重合工程後、付加反応工程前の5量体以上のコポリマー成分の含有比率に対して、例えば、1.1倍以上であり、好ましくは1.2倍以上であり、より好ましくは1.3倍以上である。
このような付加反応工程によって、コポリマーにフェノール類が付加すること、また、当該フェノール類を介してコポリマー同士が結合することができる。これにより、バイオマス誘導体において、付加したフェノール類に起因して樹脂化時の反応性基を増大させることができ、また、柔軟性構造を有するコポリマーがフェノール類を介して大きくなるため、柔軟性が高くなり、架橋密度が高くなることで強度や耐熱性も向上させることができる。
上記付加反応工程は、例えば、上記自己重合工程で例示した酸性触媒を用いることができる。また、上記付加反応工程における反応温度は、植物原料に応じて適切に選択できるが、例えば、140℃〜200℃としてもよく、好ましくは160℃〜180℃としてもよい。なお、上記付加反応工程における反応時間は、特に制限はなく、反応条件に応じて適宜決定すればよいが、例えば、2時間〜8時間としてもよい。
本実施形態のバイオマス誘導体の製造方法において、上記自己重合工程および上記付加反応工程は、例えば、同種の酸性触媒を使用して、連続して実施してもよい。
また、バイオマス誘導体の製造方法において、必要に応じて酸性触媒を中和除去してもよいし、酸性触媒がバイオマス誘導体中にそのまま残存していてもかまわない。また、加工後の製品形態に合わせて、その後、余分な未反応のフェノール類を除去してもかまわないし、未反応のフェノール類がバイオマス誘導体中に残存していてもよい。
上記付加反応工程に使用するフェノール類としては、例えば、フェノール環数は1核体、2核体または3核体などのいずれでもよく、フェノール性水酸基数は、1個でも2個以上でもよい。
上記フェノール類の一例としては、特に限定されないが、例えば、フェノール;オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール等のクレゾール;2、3−キシレノール、2、4−キシレノール、2、5−キシレノール、2、6−キシレノール、3、5−キシレノール等のキシレノール;2,3,5−トリメチルフェノール、2−エチルフェノール、4−エチルフェノール、2−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、イソブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、クミルフェノール、アリルフェノール等のアルキルフェノール;1−ナフトール、2−ナフトール等のナフトール;フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノール等のハロゲン化フェノール、p−フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール等の1価フェノール置換体;レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシナフタリン、ナフタレン等の多価フェノール;などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、フェノール類は、フェノール、クレゾール、キシレノールおよびアルキルフェノールからなる群より選ばれた1種以上を含ことができ、安価な観点から、フェノールを用いることができる。
続いて、バイオマス変性フェノール樹脂を得る工程は、得られたバイオマス誘導体、フェノール類およびアルデヒド類を反応させる工程を含むことができる。これにより、バイオマス誘導体、フェノール類およびアルデヒド類が反応してなるバイオマス変性フェノール樹脂を含む反応溶液を得ることができる。
本実施形態において、ノボラック型のバイオマス変性フェノール樹脂を製造する観点から、反応溶液を得る工程は、酸性条件下で行うことができる。この場合、公知の有機酸または無機酸等の酸性触媒を用いることができる。一方で、レゾール型のバイオマス変性フェノール樹脂を製造する観点から、反応溶液を得る工程は、アルカリ性条件下で行うことができる。この場合、アルカリ性触媒を用いることができる。ここでは、一例として、ノボラック型フェノール樹脂を製造する方法について説明する。この中でも、強度の観点から、ノボラック型のバイオマス変性フェノール樹脂を用いることができる。
上記バイオマス変性フェノール樹脂を得る工程に用いるアルデヒド類としては、特に限定されないが、例えば、ホルマリンやパラホルムアルデヒド等のホルムアルデヒド;トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒド類は単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。この中でも、アルデヒド類は、ホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドを含むことができ、生産性および安価な観点から、ホルマリンまたはパラホルムアルデヒドを用いることができる。
上記バイオマス変性フェノール樹脂を得る工程に用いるフェノール類としては、上記付加反応工程で説明したフェノール類を使用することができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、各工程で使用するフェノール類は同種でも異種でもよい。
ノボラック型のバイオマス変性フェノール樹脂を合成する際に用いる酸性触媒としては、特に限定するものではないが、例えば、蓚酸、塩酸、硫酸、ジエチル硫酸、パラトルエンスルホン酸等の酸類、酢酸亜鉛等の金属塩類が挙げられ、これらを単独または2種類以上併用して使用できる。酸性触媒の使用量としては特に限定されないが、バイオマス変性フェノール樹脂全体に対して、0.1質量%以上、10質量%以下とすることができる。
本実施形態における反応溶媒としては、水を用いてもよいが、有機溶剤を用いてもよい。有機溶剤としては、非極性溶媒を用いて非水系を用いることができる。有機溶剤の一例としては、例えば、アルコール類、ケトン類、芳香族類で、アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等で、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等で、芳香族類としては、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、反応温度は、例えば、40℃〜120℃としてもよく、好ましくは60℃〜110℃としてもよい。なお、反応時間は、特に制限はなく、出発原料の種類、配合モル比、触媒の使用量及び種類、反応条件に応じて適宜決定すればよい。
以上により、バイオマス変性フェノール樹脂を含む反応溶液を得ることができる。
本実施形態において、反応溶液を中和する中和工程を行ってもよい。
また、脱水工程をさらに行ってもよい。脱水方法としては、減圧脱水を用いてもよいが、常圧脱水を用いてもよい。減圧脱水時の真空度は、例えば、110torr以下としてもよく、さらに好ましくは80torr以下としてもよい。これにより、脱水時間を短縮することができ、樹脂特性のばらつきの少ない安定的なバイオマス変性フェノール樹脂を得ることができる。また、このような脱水工程によりバイオマス変性フェノール樹脂中の水分を5重量%以下とすることができる。これらの方法により水分を十分に除去することができるが、更に除去するために、真空乾燥機や薄膜蒸発装置などの公知の水分除去装置を使用する工程と組み合わせてもよい。
また、必要に応じて、上記の反応後に、脱モノマー工程により未反応モノマー(例えば、未反応のフェノール類)を除去する工程を追加してよい。
以上により、ノボラック型のバイオマス変性フェノール樹脂を回収することができる。
本実施形態のバイオマス変性フェノール樹脂の製造方法で得られたバイオマス変性フェノール樹脂について説明する。
本実施形態のバイオマス変性フェノール樹脂は、室温25℃で固体とすることができる。
また、本実施形態のバイオマス変性フェノール樹脂は、植物原料由来の不飽和炭素鎖含有フェノール類が、当該不飽和炭素鎖を介して直接結合した構造単位を有することができる。この直接結合は、例えば、不飽和炭素鎖中の不飽和二重結合が反応し、バイオマス由来のフェノール環同士が互いの炭素鎖を介して化学的に架橋した構造を有することができる。
本実施形態のバイオマス変性フェノール樹脂の一例は、バイオマス由来のフェノール類が、互いに炭素数10以上の架橋基を介して直接結合した構造単位を有することができる。この架橋基は、上記のバイオマス由来の不飽和炭素鎖が、末端や内部の二重結合が直接結合した構造を有することができる。この不飽和炭素鎖としては、例えば、不飽和アルキル基でもよく、好ましくは炭素数10以上の直鎖不飽和炭化水素基でもよい。
また、本実施形態のバイオマス変性フェノール樹脂において、H−NMRスペクトルにおけるアルキル鎖不飽和結合に由来するピーク(4.5〜6.0ppmのピーク)の割合は、例えば、炭素原子に結合した水素に由来するピーク(0.2〜7.5ppmのピーク)の積算値合計の上限値は、2.0%以下であり、好ましくは1.5%以下であり、より好ましくは1.0%以下であり、さらに好ましくは0.9%以下である。上記積算値合計の下限値は、特に限定されないが、例えば、0%以上でもよく、0.15%以上でもよく、0.2%以上でもよい。
本実施形態では、たとえばバイオマス変性フェノール樹脂中に含まれる各成分の種類や配合量、バイオマス変性フェノール樹脂の調製方法等を適切に選択することにより、上記アルキル鎖不飽和結合に由来するピークの割合を制御することが可能である。これらの中でも、たとえば、触媒の種類、反応温度、バイオマスの種類等を適切に選択して付加反応工程を行うこと等が、上記アルキル鎖不飽和結合に由来するピークの割合の数値範囲とするための要素として挙げられる。
本実施形態のバイオマス変性フェノール樹脂の変性率は、例えば、1%〜99%でもよく、5%〜80%でもよく、10%〜60%でもよい。例えば、バイオマス誘導体の仕込み量の比率等を適切に調整することなどによって、変性率を制御することができる。
本発明者が検討した結果、上記付加反応工程を行わない場合、コポリマー中に二重結合が多く残存することになり、効果的に反応できないため架橋密度が低くなり、硬化物の機械的強度や耐熱性が低下してしまうことが判明した。
また、上記自己重合工程を行わない場合、柔軟性構造を有するバイオマス由来の部分が小さいので、硬化物の柔軟性が低くなることが判明した。
これに対して、本実施形態のバイオマス変性フェノール樹脂を使用することにより、上述の通り、得られる硬化物において、耐熱性、機械的強度および柔軟性を向上させることができる。
また、本実施形態のバイオマス変性フェノール樹脂は、上記付加反応工程を実施しない場合と比較して、バイオマス由来の不飽和炭素鎖の二重結合の存在割合は低減されたものとすることができる。これにより、常温などで保管されたバイオマス変性フェノール樹脂について、経時安定性を向上させることができる。詳細なメカニズムは定かでないが、残存する二重結合が保管時に反応し、増粘したり分子量が増大して、硬化物の特性が低下する恐れがあるが、二重結合を低減することでこのような現象を抑制して、経時安定性を高められると考えられる。
次いで、本実施形態のバイオマス変性フェノール樹脂組成物について説明する。
本実施形態のバイオマス変性フェノール樹脂組成物は、上記バイオマス変性フェノール樹脂および硬化剤を含むことができる。
上記硬化剤としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、レゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。これらの中では、硬化物の耐熱性、バイオマス含有率の観点から、ヘキサメチレンテトラミンを用いることができる。
本実施形態のバイオマス変性フェノール樹脂組成物は、例えば、各種の充填材を含むことができる。
上記充填材としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、カーボン、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミ、窒化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、マイカ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ウォラストナイト、金属粉等の無機粉末充填材や、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、金属繊維等の強化繊維が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のバイオマス変性フェノール樹脂組成物は、必要に応じて、着色剤、離型剤、硬化触媒、硬化助剤、カップリング剤、低応力化剤、難燃剤、溶剤等の添加剤をさらに含むことができる。
本実施形態のバイオマス変性フェノール樹脂組成物の製造方法は、上記のバイオマス変性フェノール樹脂の製造方法で得られたバイオマス変性フェノール樹脂と、硬化剤と、を混合する工程を含むことができる。具体的な一例としては、まず、配合物を所定の配合割合で混合し、加熱ロール、コニーダ、二軸押出機等の混練機を使用して溶融混練した後、冷却・粉砕又は造粒する方法、あるいは、上記配合物をそのまま又は上記配合物に溶剤等を添加して、乾式又は湿式のミキサーを用いて混合する方法などにより、上記のバイオマス変性フェノール樹脂組成物を得ることができる。
このようなバイオマス変性フェノール樹脂組成物を、圧縮成形、移送成形、射出成形等の通常の成形方法に成形することにより、バイオマス変性フェノール樹脂の硬化物(成形体)を得ることができる。
本実施形態のバイオマス変性フェノール樹脂の硬化物(成形体)は、既存のフェノール樹脂と同等の耐熱性を有し、高温での耐久性に優れるため、各種の用途に用いることができるが、例えば、自動車用、汎用機械用、家庭電化製品用及びその周辺機器用等の成形品;砥石;タイヤ;成型材料;エポキシ硬化剤;等、広範な用途に適用できる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 植物原料由来の不飽和炭素鎖含有フェノール類を自己重合させてコポリマーを得る自己重合工程と、
前記コポリマー中の不飽和炭素鎖の二重結合にフェノール類を付加反応させる付加反応工程と、を含む、バイオマス誘導体の製造方法。
2. 1.に記載のバイオマス誘導体の製造方法であって、
前記植物原料がカシュー油を含む、バイオマス誘導体の製造方法。
3. 2.に記載のバイオマス誘導体の製造方法であって、
前記カシュー油がカルダノール、カルドール、および2−メチルカルドールからなる群から選択される一種以上を含む、バイオマス誘導体の製造方法。
4. 1.から3.のいずれか1つに記載のバイオマス誘導体の製造方法で得られたバイオマス誘導体、フェノール類およびアルデヒド類を反応させることにより、バイオマス変性フェノール樹脂を得る工程を含む、バイオマス変性フェノール樹脂の製造方法。
5. 4.に記載のバイオマス変性フェノール樹脂の製造方法であって、
前記バイオマス変性フェノール樹脂は、室温25℃で固体である、バイオマス変性フェノール樹脂の製造方法。
6. 4.または5.に記載のバイオマス変性フェノール樹脂の製造方法であって、
前記バイオマス変性フェノール樹脂を得る工程は、酸性条件下で行う、バイオマス変性フェノール樹脂の製造方法。
7. 4.から6.のいずれか1つに記載のバイオマス変性フェノール樹脂の製造方法であって、
前記バイオマス変性フェノール樹脂を得る工程は、未反応の前記フェノール類を除去する工程を含む、バイオマス変性フェノール樹脂の製造方法。
8. 4.から7.のいずれか1つに記載のバイオマス変性フェノール樹脂の製造方法であって、
前記アルデヒド類が、ホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドを含む、バイオマス変性フェノール樹脂の製造方法。
9. 1.から8.のいずれか1つに記載のバイオマス変性フェノール樹脂の製造方法であって、
前記フェノール類が、フェノール、クレゾール、キシレノールおよびアルキルフェノールからなる群より選ばれた1種以上を含む、バイオマス変性フェノール樹脂の製造方法。
10. 4.から9.のいずれか1つに記載のバイオマス変性フェノール樹脂の製造方法で得られたバイオマス変性フェノール樹脂と、硬化剤と、を混合する工程を含む、バイオマス変性フェノール樹脂組成物の製造方法。
11. 植物原料由来の不飽和炭素鎖含有フェノール類が、当該不飽和炭素鎖を介して直接結合した構造単位を有しており、
H−NMRスペクトルにおけるアルキル鎖不飽和結合に由来するピーク(4.5〜6.0ppmのピーク)の割合が、炭素原子に結合した水素に由来するピーク(0.2〜7.5ppmのピーク)の積算値合計の2%以下である、バイオマス変性フェノール樹脂。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
(実施例1のバイオマス変性フェノール樹脂の作製)
カシューオイル(東北化工社製、LB−7000)1000部に96%濃硫酸を5部添加し、160℃で5時間反応を行った。GPC測定で得られた面積比に基づいて質量比を算出したとき、2量体以上のコポリマー成分の含有比率が65質量%あった。また、NMRより、カシューオイル由来のモノマーが有する不飽和アルキル基同士が、互いに直接結合したコポリマー成分が存在することが分かった。
その後、フェノール400部を添加し、180℃で5時間反応させバイオマス誘導体aを得た。このバイオマス誘導体aは、NMR、GPC測定の結果から、フェノールがカシューオイル由来の不飽和二重結合に付加することで、残存する不飽和二重結合が減少したこと、バイオマス誘導体a中に、2量体以上のコポリマー成分の含有比率が72質量%に増加したこと、さらに5量体の成分がフェノールの付加反応前に比べ、質量比で1.4倍に増加したことが分かった。
得られたバイオマス誘導体a1041部にフェノール1000部、37%ホルマリン水溶液838部、96%濃硫酸5部添加し100℃にて2時間反応させた。続いて反応混合物の温度が130℃になるまで常圧蒸留で脱水した。その後、水酸化カルシウム3部を添加し、未反応フェノールを除去するために反応混合物の温度が170℃になるまで減圧蒸留を行った。続いて0.9kPaのまま水蒸気を吹き込み、水蒸気蒸留により未反応のフェノールを蒸留除去し、バイオマス変性フェノール樹脂A1800部を得た。
得られたバイオマス変性フェノール樹脂Aにおいて、バイオマス含有率は40%であり、NMRより求めたアルキル鎖不飽和結合水素に由来するピークの割合は、炭素原子に結合した水素に由来するピークの積算値合計に対して、0.6%であった。
(実施例2のバイオマス変性フェノール樹脂の作製)
カシューオイル(東北化工社製、LB−7000)1000部に96%濃硫酸を5部添加し、160℃で5時間反応を行った。その後、フェノール400部を添加し、180℃で5時間反応させバイオマス誘導体aを得た。
得られたバイオマス誘導体a359部にフェノール1000部、37%ホルマリン水溶液720部、96%濃硫酸5部を添加し100℃にて2時間反応させた。続いて反応混合物の温度が130℃になるまで常圧蒸留で脱水した。その後、水酸化カルシウム3部を添加し、未反応フェノールを除去するために反応混合物の温度が170℃になるまで減圧蒸留を行った。続いて0.9kPaのまま水蒸気を吹き込み、水蒸気蒸留により未反応のフェノールを蒸留除去し、バイオマス変性フェノール樹脂B1230部を得た。
得られたバイオマス変性フェノール樹脂Bにおいて、バイオマス含有率は20%であり、NMRより求めたアルキル鎖不飽和結合水素に由来するピークの割合は、炭素原子に結合した水素に由来するピークの積算値合計に対して、0.5%であった。
(実施例3のバイオマス変性フェノール樹脂の作製)
カシューオイル(東北化工社製、LB−7000)1000部に96%濃硫酸を5部添加し、160℃で5時間反応を行った。その後、フェノール400部を添加し、180℃で5時間反応させバイオマス誘導体aを得た。
得られたバイオマス誘導体a155部にフェノール1000部と37%ホルマリン水溶液683部と96%濃硫酸5部を添加し100℃30分で反応させた。続いて反応混合物の温度が130℃になるまで常圧蒸留で脱水した。その後、水酸化カルシウム3部を添加し、未反応フェノールを除去するために反応混合物の温度が170℃になるまで減圧蒸留を行った。続いて0.9kPaのまま水蒸気を吹き込み、水蒸気蒸留により未反応のフェノールを蒸留除去し、バイオマス変性フェノール樹脂C1080部を得た。
得られたバイオマス変性フェノール樹脂Cにおいて、バイオマス含有率は10%であり、NMRより求めたアルキル鎖不飽和結合水素に由来するピークの割合は、炭素原子に結合した水素に由来するピークの積算値合計に対して、0.7%であった。
(比較例1のバイオマス変性フェノール樹脂の作製)
カシューオイル(東北化工社製、LB−7000)300部に96%濃硫酸1.5部を加え、200℃で10時間反応した。50℃に降温し、フェノール1000部、37%ホルマリン571部、硫酸5部を添加し、100℃で5時間反応させた後、25%アンモニア水4.5部を添加した。180℃に昇温し、減圧蒸留を開始し、0.9kPaに達した時点で水蒸気を吹き込みながら3時間蒸留し、バイオマス変性フェノール樹脂D1160部を得た。
得られたバイオマス変性フェノール樹脂Dにおいて、バイオマス含有率は25%であり、NMRより求めたアルキル鎖不飽和結合水素に由来するピークの割合は、炭素原子に結合した水素に由来するピークの積算値合計に対して、2.9%であった。
(比較例2のバイオマス変性フェノール樹脂の作製)
フェノール500部とカシューオイル(東北化工社製、LB−7000)500部を混合し、96%濃硫酸30部を添加し、150℃で3時間、反応を行って、反応物を得た。得られた反応物1000部に37%ホルマリン水溶液106部を混合し、触媒として蓚酸10部を添加し、100℃で2時間反応させた。続いて反応混合物の温度が130℃になるまで常圧蒸留で脱水した。その後、未反応フェノールを除去するために反応混合物の温度が170℃になるまで減圧蒸留を行った。続いて0.9kPaのまま水蒸気を吹き込み、水蒸気蒸留により未反応のフェノールを蒸留除去し、バイオマス変性フェノール樹脂E830部を得た。
得られたバイオマス変性フェノール樹脂Eにおいて、バイオマス含有率は59%であり、NMRより求めたアルキル鎖不飽和結合水素に由来するピークの割合は、炭素原子に結合した水素に由来するピークの積算値合計に対して、0.1%であった。
(比較例3のバイオマス変性フェノール樹脂の作製)
フェノール1000部、カシューオイル(東北化工社製、LB−7000)500部、37%ホルマリン水溶液600部を混合し、触媒として96%濃硫酸20部を添加し、100℃で2時間反応させた。続いて反応混合物の温度が130℃になるまで常圧蒸留で脱水した。その後、未反応フェノールを除去するために反応混合物の温度が170℃になるまで減圧蒸留を行った。続いて0.9kPaのまま水蒸気を吹き込み、水蒸気蒸留により未反応のフェノールを蒸留除去し、バイオマス変性フェノール樹脂F1333部を得た。
得られたバイオマス変性フェノール樹脂Fにおいて、バイオマス含有率は38%であり、NMRより求めたアルキル鎖不飽和結合水素に由来するピークの割合は、炭素原子に結合した水素に由来するピークの積算値合計に対して、2.2%であった。
(比較例4のバイオマス変性フェノール樹脂の作製)
フェノール1000部、37%ホルマリン水溶液600部を混合し、触媒として96%濃硫酸20部を添加し、100℃で2時間反応させた。続いて反応混合物の温度が130℃になるまで常圧蒸留で脱水した。その後、カシューオイル(東北化工社製、LB−7000)500部を加え、反応混合物の温度が170℃になるまで減圧蒸留を行った。その後、さらに230℃で20時間熟成反応させ、バイオマス変性フェノール樹脂G1320部を得た。
得られたバイオマス変性フェノール樹脂Gにおいて、バイオマス含有率は38%であり、NMRより求めたアルキル鎖不飽和結合水素に由来するピークの割合は、炭素原子に結合した水素に由来するピークの積算値合計に対して、0.1%であった。
(比較例5の未変性フェノール樹脂の作製)
フェノール1000部、37%ホルマリン水溶液690部を混合し、触媒として蓚酸10部を添加し、100℃で2時間反応させた。続いて反応混合物の温度が130℃になるまで常圧蒸留で脱水した。その後、未反応フェノールを除去するためにさらに反応物を0.9kPaまで徐々に減圧しながら、反応混合物の温度が170℃になるまで加熱して減圧蒸留を行った。続いて0.9kPaのまま水蒸気を吹き込み、水蒸気蒸留により未反応のフェノールを蒸留除去し、未変性フェノール樹脂H933部を得た。
実施例1〜3及び比較例1〜4のバイオマス変性フェノール樹脂A〜G、比較例5の未変性フェノール樹脂Hについて、下記の要領にて評価を行った。
得られたバイオマス変性フェノール樹脂A〜Gまたは未変性フェノール樹脂H100部のそれぞれに対して、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミン(ヘキサミン)10部を配合し、ラボプラストミルを用いて混合した。混合物を175℃、圧力10MPaで成形を行い、硬化物を得た。
得られた硬化物の、「曲げ強度」および「曲げ弾性率」を、JIS K 6911「硬質プラスチックの曲げ試験方法」に準拠し、室温25℃または250℃で測定した。
以下、室温25℃において測定した曲げ強度を『25℃曲げ強度』と表し、250℃において測定した曲げ強度を『250℃曲げ強度』と表し、室温25℃において測定した曲げ弾性率を『25℃曲げ弾性率』と表し、250℃において測定した曲げ弾性率を『250℃曲げ弾性率』と表す。
Figure 2018150708
表1中、バイオマス変性フェノール樹脂が得られたものを「変性」の欄に○、得られなかったものを×と表記し、「自己重合工程」や「付加反応工程」を実施した場合を○、実施しなかった場合を×と表記した。
(耐熱性)
耐熱性は、得られた硬化物の、『25℃曲げ強度』に対する『250℃曲げ強度』の曲げ強度比(『250℃曲げ強度』/『25℃曲げ強度』)について、以下の評価基準に基づいて評価を行った。結果は表1に示す。
◎:0.66以上
○:0.62以上〜0.66未満
△:0.58以上〜0.62未満
×:0.58未満
(強度)
強度は、得られた硬化物の、『25℃曲げ強度』について、以下の評価基準に基づいて評価を行った。結果は表1に示す。
◎:100MPa以上
○:95MPa以上〜100MPa未満
△:90MPa以上〜95MPa未満
×:90MPa未満
(柔軟性)
柔軟性は、得られた硬化物の、『25℃曲げ弾性率』について、以下の評価基準に基づいて評価を行った。結果は表1に示す。
◎:2.0GPa未満
○:2.0GPa以上〜3.0GPa未満
△:3.0GPa以上〜4.0GPa未満
×:4.0GPa以上
実施例1〜3の硬化物は、比較例1,3,4,5の硬化物と比較して、室温25℃の曲げ弾性率が低くなることから、柔軟性と低弾性に優れていることが分かった。また、実施例1〜3の硬化物は、比較例1〜3,4の硬化物と比較して、室温25℃の曲げ強度および250℃の曲げ強度ともに高くなることから、強度に優れていることが分かった。また、実施例1〜3の硬化物は、比較例1〜3,4の硬化物と比較して、25℃曲げ強度に対する250℃曲げ強度の曲げ強度比の結果から、耐熱性に優れることが分かった。実施例1〜3のバイオマス誘導体を用いたバイオマス変性フェノール樹脂の硬化物(成形体)は、既存のフェノール樹脂と同等の高い耐熱性を有し、且つ優れた柔軟性と低弾性率を有するため、各種用途に好適に使用できるものである。
この出願は、2017年2月15日に出願された日本出願特願2017−025755号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
本発明によれば、
植物原料由来の不飽和炭素鎖含有フェノール類を自己重合させてコポリマーを得る自己重合工程と、
アルデヒド類の非存在下で、前記コポリマー中の不飽和炭素鎖の二重結合にフェノール類を付加反応させる付加反応工程と、を含む、バイオマス誘導体の製造方法が提供される。
また本発明によれば、
植物原料由来の不飽和炭素鎖含有フェノール類同士が、当該不飽和炭素鎖を介して直接結合した構造単位を有しており、
H−NMRスペクトルにおけるアルキル鎖不飽和結合に由来するピーク(4.5〜6.0ppmのピーク)の割合が、炭素原子に結合した水素に由来するピーク(0.2〜7.5ppmのピーク)の積算値合計の2.0%以下である、バイオマス変性フェノール樹脂が提供される。
本発明は、バイオマス誘導体の製造方法、バイオマス変性フェノール樹脂の製造方法、およびバイオマス変性フェノール樹脂組成物の製造方法に関する。
本発明によれば、
植物原料由来の不飽和炭素鎖含有フェノール類を自己重合させてコポリマーを得る自己重合工程と、
フェノール類を添加することにより、前記自己重合工程で得られた前記コポリマー中の不飽和炭素鎖の二重結合に当該フェノール類を付加反応させる付加反応工程と、を含む、バイオマス誘導体の製造方法が提供される。

Claims (18)

  1. 植物原料由来の不飽和炭素鎖含有フェノール類を自己重合させてコポリマーを得る自己重合工程と、
    前記コポリマー中の不飽和炭素鎖の二重結合にフェノール類を付加反応させる付加反応工程と、を含む、バイオマス誘導体の製造方法。
  2. 請求項1に記載のバイオマス誘導体の製造方法であって、
    前記自己重合工程は、容器中の前記植物原料由来の不飽和炭素鎖含有フェノール類を加熱処理する工程を含む、バイオマス誘導体の製造方法。
  3. 請求項2に記載のバイオマス誘導体の製造方法であって、
    前記自己重合工程中の前記容器中には、フェノール類、アルデヒド類およびフェノール樹脂のいずれも含まれない、バイオマス誘導体の製造方法。
  4. 請求項2または3に記載のバイオマス誘導体の製造方法であって、
    前記自己重合工程中の加熱処理は、酸性条件下で実施するものである、バイオマス誘導体の製造方法。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載のバイオマス誘導体の製造方法であって、
    前記付加反応工程は、容器中の前記コポリマーと前記フェノール類とを加熱処理する工程を含む、バイオマス誘導体の製造方法。
  6. 請求項5に記載のバイオマス誘導体の製造方法であって、
    前記付加反応工程中の加熱処理は、酸性条件下で実施するものである、バイオマス誘導体の製造方法。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載のバイオマス誘導体の製造方法であって、
    前記植物原料がカシュー油を含む、バイオマス誘導体の製造方法。
  8. 請求項7に記載のバイオマス誘導体の製造方法であって、
    前記カシュー油がカルダノール、カルドール、および2−メチルカルドールからなる群から選択される一種以上を含む、バイオマス誘導体の製造方法。
  9. 請求項1から8のいずれか1項に記載のバイオマス誘導体の製造方法であって、
    前記フェノール類が、フェノール、クレゾール、キシレノールおよびアルキルフェノールからなる群より選ばれた1種以上を含む、バイオマス誘導体の製造方法。
  10. 請求項1から9のいずれか1項に記載のバイオマス誘導体の製造方法で得られたバイオマス誘導体、フェノール類およびアルデヒド類を反応させることにより、バイオマス変性フェノール樹脂を得る工程を含む、バイオマス変性フェノール樹脂の製造方法。
  11. 請求項10に記載のバイオマス変性フェノール樹脂の製造方法であって、
    前記バイオマス変性フェノール樹脂は、室温25℃で固体である、バイオマス変性フェノール樹脂の製造方法。
  12. 請求項10または11に記載のバイオマス変性フェノール樹脂の製造方法であって、
    前記バイオマス変性フェノール樹脂を得る工程は、酸性条件下で行う、バイオマス変性フェノール樹脂の製造方法。
  13. 請求項10から12のいずれか1項に記載のバイオマス変性フェノール樹脂の製造方法であって、
    前記バイオマス変性フェノール樹脂を得る工程は、未反応の前記フェノール類を除去する工程を含む、バイオマス変性フェノール樹脂の製造方法。
  14. 請求項10から13のいずれか1項に記載のバイオマス変性フェノール樹脂の製造方法であって、
    前記アルデヒド類が、ホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドを含む、バイオマス変性フェノール樹脂の製造方法。
  15. 請求項10から14のいずれか1項に記載のバイオマス変性フェノール樹脂の製造方法であって、
    前記フェノール類が、フェノール、クレゾール、キシレノールおよびアルキルフェノールからなる群より選ばれた1種以上を含む、バイオマス変性フェノール樹脂の製造方法。
  16. 請求項10から15のいずれか1項に記載のバイオマス変性フェノール樹脂の製造方法で得られたバイオマス変性フェノール樹脂と、硬化剤と、を混合する工程を含む、バイオマス変性フェノール樹脂組成物の製造方法。
  17. 請求項16に記載のバイオマス変性フェノール樹脂組成物の製造方法であって、
    前記混合する工程において、さらに充填材を混合する、バイオマス変性フェノール樹脂組成物の製造方法。
  18. 植物原料由来の不飽和炭素鎖含有フェノール類が、当該不飽和炭素鎖を介して直接結合した構造単位を有しており、
    H−NMRスペクトルにおけるアルキル鎖不飽和結合に由来するピーク(4.5〜6.0ppmのピーク)の割合が、炭素原子に結合した水素に由来するピーク(0.2〜7.5ppmのピーク)の積算値合計の2.0%以下である、バイオマス変性フェノール樹脂。
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