JP2019094396A - フェノール樹脂組成物および耐火物 - Google Patents

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Abstract

【課題】低粘度であり、保管安定性に優れたフェノール樹脂組成物を提供する。【解決手段】本発明のフェノール樹脂組成物は、ノボラック型フェノール樹脂と溶剤とを含むフェノール樹脂組成物であって、ノボラック型フェノール樹脂のGPC測定による重量平均分子量が200以上1000以下であり、当該フェノール樹脂組成物を、60℃で1時間保管した後で、20℃で48時間保管したとき、析出する結晶の析出量が、ノボラック型フェノール樹脂の固形分全体に対して、10重量%以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、フェノール樹脂組成物および耐火物に関する。
フェノール樹脂の製造方法に関する技術としては、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。同文献によれば、フェノール100部、37%ホルムアルデヒド水溶液70部及び蓚酸1部を仕込み(F/Pモル比:0.81)、還流条件下で3時間反応させ、次いで、減圧下で脱水、脱フェノールを行った後、エチレングリコール44部を加えた後、取り出し、147部の不揮発分70%のノボラック型フェノール樹脂を得たと記載されている(特許文献1の製造例1)。
特開2009−249256号公報
しかしながら、本発明者が検討したところ、上記文献に記載のノボラック型フェノール樹脂およびエチレングリコールで構成されるフェノール樹脂組成物において、低粘度および保管安定性の点において、改善の余地を有していた。
本発明者はさらに検討したところ、F/Pモル比が高い特許文献1に記載のノボラック型フェノール樹脂は重量平均分子量が大きくなり、粘度が高くなるため作業性に劣る。しかし、F/Pモル比を低くしたとしても、樹脂ワニスについて長期的な保管安定性が低下する恐れがあることが判明した。
本発明者が検討した結果、重量平均分子量が小さなノボラック型フェノール樹脂を含むフェノール樹脂組成物を長期的に亘って使用せずに容器で保存したとき、容器の底に沈殿物が発生する場合があること、そして、この沈殿物がフェノール樹脂組成物中の成分が結晶化したものであることが判明した。
本発明者はさらに検討したところ、加熱後保管の条件を適切に選択することで、結晶による沈殿物の発生具合を評価するための加速試験を実施することが可能であることを見出した。このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、加速試験において、60℃で1時間保管した後20℃で48時間保管する加熱後保管の条件を採用し、析出する結晶の析出量を指標として利用することにより、長期保管後の沈殿物の発生具合を安定的に評価できることを見出すとともに、かかる指標に基づいて結晶の析出量を所定値以下に制御することにより、重量平均分子量が小さなノボラック型フェノール樹脂を含むフェノール樹脂組成物について長期的な保管安定性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、
ノボラック型フェノール樹脂と溶剤とを含むフェノール樹脂組成物であって、
前記ノボラック型フェノール樹脂のGPC測定による重量平均分子量が200以上1000以下であり、
当該フェノール樹脂組成物を、60℃で1時間保管した後で、20℃で48時間保管したとき、析出する結晶の析出量が、前記ノボラック型フェノール樹脂の固形分全体に対して、10重量%以下である、フェノール樹脂組成物が提供される。
また本発明によれば、上記フェノール樹脂組成物を乾燥または焼成してなる耐火物が提供される。
本発明によれば、低粘度であり、保管安定性に優れたフェノール樹脂組成物およびそれを用いた耐火物が提供される。
本実施形態のフェノール樹脂の製造方法の概要について説明する。
本実施形態のフェノール樹脂組成物において、当該フェノール樹脂組成物を、60℃で1時間保管した後で、20℃で48時間保管したとき、析出する結晶の析出量が、ノボラック型フェノール樹脂の固形分全体に対して、10重量%以下とすることができる。
本実施形態によれば、保管安定性に優れたフェノール樹脂組成物を実現することができる。
以下、本実施形態のノボラック型フェノール樹脂の製造方法の各工程について説明する。
本実施形態のフェノール樹脂の製造方法は、酸性条件下で、フェノール類とアルデヒド類とを反応させる工程を含むことができる。この酸性条件として、例えば、公知の有機酸または無機酸等の酸性触媒を用いることができる。
上記フェノール類としては、例えば、フェノール環数は1核体、2核体または3核体などのいずれでもよく、フェノール性水酸基数は、1個でも2個以上でもよい。
上記フェノール類の一例としては、特に限定されないが、例えば、フェノール;オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール等のクレゾール;2、3−キシレノール、2、4−キシレノール、2、5−キシレノール、2、6−キシレノール、3、5−キシレノール等のキシレノール;2,3,5−トリメチルフェノール、2−エチルフェノール、4−エチルフェノール、2−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、イソブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、クミルフェノール、アリルフェノール等のアルキルフェノール;1−ナフトール、2−ナフトール等のナフトール;フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノール等のハロゲン化フェノール、p−フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール等の1価フェノール置換体;レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシナフタリン、ナフタレン等の多価フェノール;などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、フェノール類は、フェノール、クレゾール、キシレノールおよびアルキルフェノールからなる群より選ばれた2種以上を含ことができる。
上記アルデヒド類としては、特に限定されないが、例えば、ホルマリンやパラホルムアルデヒド等のホルムアルデヒド;トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒド類は単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。この中でも、アルデヒド類は、ホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドを含むことができ、生産性および安価な観点から、ホルマリンまたはパラホルムアルデヒドを用いることができる。
アルデヒド類(F)とフェノール類(P)との反応モル比(F/P)は、特に限定されないが、例えば、0.1〜0.4であることが好ましく、より好ましくは、0.15〜0.35である。F/Pを低くすることにより、ノボラック型フェノール樹脂の分子量を小さくすることができる。ただし、F/Pが0.1よりも過度に小さい場合には、収得(生産性)が悪くなることがある。
反応方法としては、反応の開始時にフェノール類とアルデヒド類を全量一括して反応容器に仕込み、触媒を添加し反応してもよく、また反応初期の発熱を抑制するために、フェノール類と触媒を仕込んだ後アルデヒド類を逐次添加して反応させてもよい。
また、反応温度は、例えば、40℃〜120℃としてもよく、好ましくは60℃〜100℃としてもよい。これにより、ゲル化を抑制して、反応を十分に進めることができる。なお、反応時間は、特に制限はなく、出発原料の種類、配合モル比、触媒の使用量及び種類、反応条件に応じて適宜決定すればよい。
上記酸性触媒としては、特に限定されないが、例えば、蓚酸、酢酸などの有機カルボン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などの有機スルホン酸、有機ホスホン酸、塩酸、硫酸などの無機酸などが挙げられる。この中でも無機酸を用いることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
酸性触媒の添加量は、特に限定されないが、例えば、フェノール類1モルに対して、0.001〜4.0モルであることが好ましく、より好ましくは、0.01〜0.5モルである。
本実施形態における反応溶媒としては、水を用いてもよいが、有機溶剤を用いてもよい。有機溶剤としては、非極性溶媒を用いて非水系を用いることができる。有機溶剤の一例としては、例えば、アルコール類、ケトン類、芳香族類で、アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等で、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等で、芳香族類としては、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
以上により、ノボラック型フェノール樹脂を含む反応溶液を得ることができる。
本実施形態に記載のノボラック型フェノール樹脂とは、フェノール化合物の1核体成分(原料成分)または2核体,3核体以上の多核体成分を含む、モノマー、ポリマーまたはこれらの混合物を指す。
本実施形態において、反応溶液を中和する中和工程を行ってもよい。
また、脱水工程をさらに行ってもよい。脱水方法としては、減圧脱水を用いてもよいが、常圧脱水を用いてもよい。例えば、減圧脱水時の真空度は、例えば、110torr以下としてもよく、さらに好ましくは80torr以下としてもよい。これにより、脱水時間を短縮することができ、樹脂特性のばらつきの少ない安定的なノボラック型フェノール樹脂を得ることができる。また、このような脱水工程によりノボラック型フェノール樹脂中の水分を5重量%以下とすることができる。これらの方法により水分を十分に除去することができるが、更に除去するために、真空乾燥機や薄膜蒸発装置などの公知の水分除去装置を使用する工程と組み合わせてもよい。
また、必要に応じて、上記の反応後に、脱モノマー工程により未反応モノマー(例えば、未反応のフェノール類)を除去する工程を追加してよい。
以上により、ノボラック型フェノール樹脂を回収することができる。得られたノボラック型フェノール樹脂は、室温25℃で固形状とすることができる。
また、本実施形態のノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)の下限値は、例えば、200以上でもよく、好ましくは300以上でもよく、より好ましくは330以上でもよく、さらに好ましくは400以上でもよい。これにより、バインダー能として接着力を向上させることができ、また、硬化物の強度を高めることができる。一方で、上記重量平均分子量(Mw)の上限値は、例えば、1000以下であり、好ましくは900以下であり、より好ましくは800以下である。これにより、ノボラック型フェノール樹脂を含む樹脂ワニスの流動性を高めることができる。
本実施形態のフェノール樹脂組成物は、上記のノボラック型フェノール樹脂および溶剤を含むことができる。
本実施形態のフェノール樹脂組成物は、溶剤を含む樹脂ワニスとすることができる。
上記溶剤としては、例えば、水や有機溶剤を用いることができる。有機溶剤としては、例えば、アルコール類、グリコール類、トリオール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ケトンエステル類、ケトンエーテル類、エステルエーテル類、芳香族系溶剤、脂肪族系溶剤からなる群から選択される一種以上を含むことができる。これらの中でも、グリコール類,トリオール類などの多価アルコール類を使用できる。上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。この中でも、沸点が150℃以上の高沸点溶剤を使用することができる。これらを単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。樹脂ワニスを使用することで、混練性を高めることができる。
本実施形態のフェノール樹脂組成物において、当該フェノール樹脂組成物を、60℃で1時間保管した後で、20℃で48時間保管したとき、析出する結晶の析出量の上限値は、ノボラック型フェノール樹脂の固形分全体に対して、例えば、10重量%以下であり、好ましくは7重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下であり、一層好ましくは3重量%以下である。一方で、上記析出する結晶の析出量の下限値は、特に限定されないが、例えば、0重量%以上とすることができる。これにより、フェノール樹脂組成物における保管安定性を向上させることができる。
本実施形態では、たとえばノボラック型フェノール樹脂中に含まれる各成分の種類や配合量、ノボラック型フェノール樹脂の調製方法等を適切に選択することにより、上記結晶の析出量を制御することが可能である。これらの中でも、たとえば、ノボラック型フェノール樹脂の分子量を低減すること、F/Pを低くすること、異なる2種以上のフェノール類を使用すること、2つのベンゼン環のパラ位にメチレン結合および2つのフェノール性水酸基のみで形成されたビスフェノールFである対称性フェノールの含有量、点対称構造ではない非対称性2核体成分のフェノール化合物の種類や含有量を適切に選択すること等が、上記結晶の析出量を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
本実施形態のフェノール樹脂組成物において、非対称構造を有する非対称性フェノール化合物は、下記一般式(1)で表される、芳香族環Aと芳香族環Bとが連結基Xを介して結合しており、芳香族環Aと芳香族環Bとが互いに異なるものである。本実施形態において、芳香族環Aと芳香族環Bとが互いに異なるとは、例えば、構造、官能基の種類、官能基の位置の点で相違するものである。具体的に芳香族環Aと芳香族環Bとが互いに異なるとは、例えば、(i)芳香族環Aと芳香族環Bとのフェノール性水酸基がそれぞれ1個の場合、フェノール性水酸基がパラ位−パラ位で結合した構造以外であること、(ii)フェノール性水酸基の数が異なること、(iii)フェノール性水酸基以外の官能基が芳香環Aおよび/または芳香環Bに形成されていること、(iv)連結基Xであるメチレン基がパラ位で結合した場合でも、上記(ii)〜(iii)のいずれかを満たすこと、(v)2核体の場合、対称性2核体が有する点対称構造ではないこと等の構造が挙げられる。
Figure 2019094396
[上記一般式(1)中、R、Rは、それぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、アラルキル基のいずれかであり、p、qはそれぞれ0、1、2のいずれかであり、j、kはそれぞれ1又は2であり、Xはメチレン基である。]
この中でも、上記非対称性フェノール化合物の芳香族環Aまたは前記芳香族環Bの少なくとも一方は、クレゾール、キシレノールおよびアルキルフェノールからなる群から選択されるフェノール類由来のフェノール骨格を有することができる。これにより、室温保存性を向上させることが可能である。
本実施形態において、標準ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定で得られる、ノボラック型フェノール樹脂全体に対するフェノール化合物の2核体成分の面積比率の下限値は、例えば、10%以上であり、好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上である。これにより、樹脂の分子量が低くなるため樹脂の粘度を下げることができる。一方で、上記フェノール化合物の2核体成分の面積比率の上限値は、例えば、75%以下でもよく、好ましくは65%以下でもよく、より好ましくは55%以下でもよく、さらに好ましくは45%以下でもよい。これにより、分子量が高くなるため樹脂の強度が高くなる。
本実施形態において、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS法)で測定される、上記フェノール化合物の2核体成分全体に対する、2つのベンゼン環のパラ位にメチレン結合および2つのフェノール性水酸基のみで形成されたビスフェノールFである対称性2核体化合物の面積比率の上限値は、例えば40%以下であり、好ましくは35%以下であり、より好ましくは30%以下である。これにより、保管中に再結晶化が起きて保管安定性が低下することを抑制できる。上記対称性2核体化合物の面積比率の下限値は、特に限定されないが、例えば、0%以上でもよく、1%以上、5%以上、11%以上でもよい。
本実施形態において、ノボラック型フェノール樹脂の固形分の下限値は、当該フェノール樹脂組成物(樹脂ワニス)全体に対して、例えば、50重量%以上であり、好ましくは60重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上である。これにより、樹脂分が多くなるので固定炭素を高く維持することができる。一方で、上記ノボラック型フェノール樹脂の固形分の上限値は、当該フェノール樹脂組成物(樹脂ワニス)全体に対して、例えば、90重量%以下でもよく、好ましくは85重量%以下でもよく、より好ましくは80重量%以下でもよい。これにより、限りなく少ない溶剤量で均一なワニスが得られる。
本明細書において、「ノボラック型フェノール樹脂の固形分」とは、フェノール樹脂組成物中における不揮発性のノボラック型フェノール樹脂成分を指し、ノボラック型フェノール樹脂から、水や溶媒等の揮発成分を除いた樹脂残部(室温25度における固形分)を指す。
本実施形態のフェノール樹脂組成物の粘度の下限値は、例えば、室温25℃において、100mPa・s以上でもよく、好ましくは200mPa・s以上でもよく、より好ましくは500mPa・s以上でもよい。これにより、耐火物骨材の混練時および成形時に配合物の液だれ成形性が向上する。一方で、上記フェノール樹脂組成物の粘度の上限値は、例えば、室温25℃において、9000mPa・s以下であり、好ましくは7000mPa・s以下であり、より好ましくは5000mPa・s以下である。これにより、樹脂を加温して粘度を下げる必要がなくなるため作業性が向上する。
本実施形態のフェノール樹脂組成物は、用途に応じて、各種成分をさらに含むことができる。
本実施形態のフェノール樹脂組成物は、その硬化物を成形体の構成の一部に用いることができる。このようなフェノール樹脂組成物は、成形体用のフェノール樹脂組成物として用いることができる。この場合、本実施形態のフェノール樹脂組成物は、硬化剤を含むことができる。
上記硬化剤としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、レゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。これらの中では、硬化物の耐熱性の観点から、ヘキサメチレンテトラミンを用いることができる。
本実施形態のフェノール樹脂組成物において、下記の測定方法で測定される残炭率の下限値は、例えば、40重量%以上であり、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは60重量%以上である。これにより、耐火物成形品の強度を維持できる。上記残炭率の上限値は、特に限定されないが、例えば、90重量%以下でもよく、好ましくは80重量%以下でもよく、より好ましくは70重量%以下でもよい。これにより、焼成後の耐火物製品の気孔率を低く維持できる。
(残炭率の測定方法)
本実施形態のフェノール樹脂組成物の残炭率は、次のように測定することができる。
まず、ノボラック型フェノール樹脂100部およびヘキサメチレンテトラミン10部を混合して、フェノール樹脂組成物を得る。得られたフェノール樹脂組成物を坩堝に入れ、135℃で1時間加熱、さらに430℃で30分間加熱後、坩堝に蓋をしてコークス中でさらに800℃で30分間加熱する。800℃で30分間加熱後のサンプル重量を、坩堝に投入したフェノール樹脂組成物の重量で除することにより、残炭率(炭化率:%)を計算する。
本実施形態のフェノール樹脂組成物は、充填材を含むことができる。
上記充填材としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、炭化ケイ素、カーボン、窒化ホウ素、窒化アルミ、窒化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、マイカ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ウォラストナイト、金属粉等の無機粉末充填材や、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、金属繊維等の強化繊維が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のフェノール樹脂組成物は、必要に応じて、その添加剤を含むことができる。その他の添加剤としては、例えば、着色剤、離型剤、硬化触媒、硬化助剤、カップリング剤、低応力化剤、難燃剤、溶剤等の添加剤が挙げられる。
本実施形態において、成形体用のフェノール樹脂組成物は、次のような方法で製造することができる。例えば、まず、上記の配合物を所定の配合割合で混合し、加熱ロール、コニーダ、二軸押出機等の混練機を使用して溶融混練した後、冷却・粉砕又は造粒する方法、あるいは、上記配合物をそのまま又は上記配合物に溶剤等を添加して、乾式又は湿式のミキサーを用いて混合する方法などにより、上記のフェノール樹脂組成物を得ることができる。
本実施形態のフェノール樹脂組成物は安定保管性に優れており、ノボラック型フェノール樹脂の硬化物(成形体)は機械的強度に優れるため、自動車用、汎用機械用、家庭電化製品用及びその周辺機器用等、広範な用途に適用できる。
(耐火物)
また、本実施形態のフェノール樹脂組成物は、耐火物を形成するために用いる、耐火物用のフェノール樹脂組成物とすることができる。すなわち、本実施形態のノボラック型フェノール樹脂を、耐火物結合剤として用いることができる。
本実施形態の耐火物は、耐火物用のフェノール樹脂組成物を乾燥または焼成することで得ることができる。上記耐火物は、不定形耐火物でもよく、定形耐火物でもよい。
このような耐火物用のフェノール樹脂組成物は、例えば、上記ノボラック型フェノール樹脂、上記硬化剤および耐火骨材を含むことができる。
本実施形態のノボラック型フェノール樹脂は、残炭率が高いため、強力なカーボンボンドを形成することが可能になる、また、高耐用性を向上させることができる。
上記耐火骨材としては、例えば、アルミナ;マグネシア;ドロマイト;マグネシア;シリカ;ジルコン;炭化珪素;鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等の黒鉛;等を用いることができる。これらの中でも、マグネシアを用いることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記耐火物用のフェノール樹脂組成物において、耐火骨材と耐火物結合剤との配合比率としては特に限定されないが、耐火骨材100重量部に対して、例えば、耐火物結合剤3重量部〜12重量部を配合してもよい。
本実施形態において、耐火骨材、耐火物結合剤等の配合物を、所定の配合比率で混練することにより、不定形耐火物を得ることができる。具体的な一例としては、上記のノボラック型フェノール樹脂(耐火物結合剤)、硬化剤、および耐火骨材等の配合物を混合した後、ウェッターとして上記の有機溶剤を添加し、ミキサーなどを用いて混練することにより、混練物が得られる。混練する際の条件としては特に限定されないが、例えば、50℃で30分間混練することができる。有機溶剤として、高沸点溶剤を使用することにより、混練時に溶剤の蒸発を抑制できるため、混練性を高めることができる。また、本実施形態のフェノール樹脂組成物の粘度を低くすることができるため、その混練性を良好とすることができる。
また、本実施形態において、得られた混練物を金型などに充填し、加圧し成形後、所定の温度で乾燥させることにより、乾燥後の定形耐火物(不焼成)が得られる。得られた不焼成の定型耐火物に対して、さらに焼成を行うことにより、焼成後の定形耐火物を得ることができる。このとき、乾燥処理は、例えば、150℃〜300℃で加熱してもよい。このとき、上記の高沸点溶剤を揮発させることができ、ノボラック型フェノール樹脂や硬化剤を硬化反応させることができる。また、焼成処理は、例えば、1000℃〜1500℃で加熱してもよい。このとき、ノボラック型フェノール樹脂由来のフェノール骨格を炭化させることが可能になる。定形耐火物は、ノボラック型フェノール樹脂の全てが炭化されていてもよいが、一部にノボラック型フェノール樹脂のノボラック構造が残存していてもよい。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
下記の条件にて各実施例および各比較例のノボラック型フェノール樹脂を準備した。
(実施例1)
攪拌装置、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、フェノール900部、o−クレゾール100部、及び蓚酸10部を仕込み、内温を100℃まで昇温した後、表1に示すF/P比(0.3)となるように、37%ホルマリン255部を120分間かけて逐添した後、60分間還流反応を行った。その後、所望の水分量、遊離フェノール量になるまで減圧下で、脱水、脱フェノールを行った後、内容物を取り出し、室温25℃で固形状のノボラック型フェノール樹脂640部を得た。
(フェノール樹脂組成物Aの調製)
得られたノボラック型フェノール樹脂をエチレングリコールに分散または溶解させ、不揮発分(樹脂固形分)80%の樹脂ワニス(フェノール樹脂組成物A)を得た。
(実施例2)
攪拌装置、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、フェノール900部、m−クレゾール100部、及び蓚酸10部を仕込み、内温を100℃まで昇温した後、表1に示すF/P比(0.3)となるように、37%ホルマリン255部を120分間かけて逐添した後、60分間還流反応を行った。その後、所望の水分量、遊離フェノール量になるまで減圧下で、脱水、脱フェノールを行った後、内容物を取り出し、室温25℃で固形状のノボラック型フェノール樹脂640部を得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂をエチレングリコールに分散または溶解させ、不揮発分(樹脂固形分)76%の樹脂ワニス(フェノール樹脂組成物B)を得た。
(実施例3)
攪拌装置、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、フェノール800部、m−クレゾール200部、及び蓚酸10部を仕込み、内温を100℃まで昇温した後、表1に示すF/P比(0.3)となるように、37%ホルマリン255部を120分間かけて逐添した後、60分間還流反応を行った。その後、所望の水分量、遊離フェノール量になるまで減圧下で、脱水、脱フェノールを行った後、内容物を取り出し、室温25℃で固形状のノボラック型フェノール樹脂609部を得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂をエチレングリコールに分散または溶解させ、不揮発分(樹脂固形分)80%の樹脂ワニス(フェノール樹脂組成物C)を得た。
(実施例4)
攪拌装置、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、フェノール900部、p−クレゾール100部、及び蓚酸10部を仕込み、内温を100℃まで昇温した後、表1に示すF/P比(0.3)となるように、37%ホルマリン252部を120分間かけて逐添した後、60分間還流反応を行った。その後、所望の水分量、遊離フェノール量になるまで減圧下で、脱水、脱フェノールを行った後、内容物を取り出し、室温25℃で固形状のノボラック型フェノール樹脂620部を得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂をエチレングリコールに分散または溶解させ、不揮発分(樹脂固形分)80%の樹脂ワニス(フェノール樹脂組成物D)を得た。
(実施例5)
攪拌装置、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、フェノール900部、キシレノール酸100部、及び蓚酸10部を仕込み、内温を100℃まで昇温した後、表1に示すF/P比(0.3)となるように、37%ホルマリン253部を120分間かけて逐添した後、60分間還流反応を行った。その後、所望の水分量、遊離フェノール量になるまで減圧下で、脱水、脱フェノールを行った後、内容物を取り出し、固形状のノボラック型フェノール樹脂630部を得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂をエチレングリコールに分散または溶解させ、不揮発分(樹脂固形分)80%の樹脂ワニス(フェノール樹脂組成物E)を得た。
(比較例1)
攪拌装置、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、フェノール1000部、及び蓚酸10部を仕込み、内温を100℃まで昇温した後、表1に示すF/P比(0.3)となるように、37%ホルマリン259部を120分間かけて逐添した後、60分間還流反応を行った。その後、所望の水分量、遊離フェノール量になるまで減圧下で、脱水、脱フェノールを行った後、内容物を取り出し、室温25℃で固形状のノボラック型フェノール樹脂640部を得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂をエチレングリコールに分散または溶解させ、不揮発分(樹脂固形分)81%の樹脂ワニス(フェノール樹脂組成物F)を得た。
(比較例2)
攪拌装置、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、フェノール1000部、及び蓚酸10部を仕込み、内温を100℃まで昇温した後、表1に示すF/P比(0.7)となるように、37%ホルマリン604部を120分間かけて逐添した後、60分間還流反応を行った。その後、所望の水分量、遊離フェノール量になるまで減圧下で、脱水、脱フェノールを行った後、内容物を取り出し、室温25℃で固形状のノボラック型フェノール樹脂1240部を得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂をエチレングリコールに分散または溶解させ、不揮発分(樹脂固形分)80%の樹脂ワニス(フェノール樹脂組成物G)を得た。
(比較例3)
比較例2で得られたノボラック型フェノール樹脂をエチレングリコールに分散または溶解させ、不揮発分(樹脂固形分)60%の樹脂ワニス(フェノール樹脂組成物H)を得た。
Figure 2019094396
(25℃における室温保存性)
得られたフェノール樹脂組成物A〜Hを、室温25℃、湿度60%の暗所の条件にて容器中で保管し、保管直後から1週間後、2週間後、1ヶ月後において、容器の底にフェノール樹脂由来の結晶の析出状態について経時的に評価した。1ヶ月経過後も結晶析出がない場合を○、2週間以内に結晶析出がある場合を△、1週間以内で結晶析出がある場合を×とした。評価結果を表1に示す。
(結晶析出量)
得られたフェノール樹脂組成物A〜Hを、密閉した容器中に60℃で1時間保管した後で、20℃で48時間保管したとき、析出する結晶の結晶析出量を下記の手順にて測定した。結晶析出量(重量%)は、ノボラック型フェノール樹脂の固形分全体100重量%に対する重量比率として算出した。評価結果を表1に示す。
(結晶析出量の定量手順)
まず保管していた容器に入ったフェノール樹脂組成物を円筒ろ紙を用いてろ過した。樹脂の洗浄には水:メタノール:エチレングリコール=1:1:2(重量比)の混合溶剤で洗浄することで、結晶成分以外の樹脂分を洗い流した。その後、真空乾燥機で乾燥させて、析出した結晶成分の重量(結晶析出量)を測定した。
本発明者の知見によると、メタノールとエチレングリコールそれぞれの単独溶剤では結晶成分が溶解しやすいため、ここでは混合溶剤を用い、さらに混合溶剤に水を添加することで、析出物を洗浄できることが判明した。
(25℃における粘度)
得られたフェノール樹脂組成物A〜Hについて、JISK6910に準拠し、25℃における粘度を測定した。測定装置として、東機産業株式会社製のE型粘度計EHD型を使用し、該当する粘度範囲に適合するコーンと回転数の条件で粘度を測定した。結果を表1に示す。表1中の「−」は、溶解するが、粘度が高すぎて測定できなかったことを示すものであり、1000Pa・s以上を意味する。
(重量平均分子量、2核体成分の含有量、対称性2核体成分の含有量)
(1)ノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量Mw:GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法を用いて測定したものであり、テトラヒドロフランを溶出溶媒として使用し、流量1.0ml/分、カラム温度40℃の条件で示差屈折計を検出器として用いて測定し、分子量については標準ポリスチレンにより換算した。
装置は、
・本体:TOSOH社製・「HLC−8120」
・分析用カラム:TOSOH社製・「G1000HXL」2本、「G3000HXL」1本、を使用した。
(2)2核体成分の含有量:上記GPC測定により得られた分子量分布曲線から、フェノール樹脂全体における、フェノール化合物の2核体成分(対称性2核体成分および非対称性2核体成分を含む)に該当する面積比率(%)より算出した。
(3)対称性2核体成分の含有量:2核体の定性GC−MS(ガスクロマトグラフィー質量分析計)を用いて、フェノール化合物の2核体成分全体に対する、対称性フェノール化合物(2つのベンゼン環のパラ位にメチレン結合および2つのフェノール性水酸基のみで形成されたビスフェノールFである対称性フェノール)の面積比率(%)より算出した。
装置は、
・本体:アジレント・テクノロジー株式会社製 Agilemt5977B GC/MSDシステム、を使用した。
(残炭率の測定方法)
実施例および比較例において得られたノボラック型フェノール樹脂100部、およびヘキサメチレンテトラミン10部を混合して、フェノール樹脂組成物を得た。このフェノール樹脂組成物を坩堝に入れ、135℃で1時間加熱、さらに430℃で30分間加熱後、坩堝に蓋をしてコークス中でさらに800℃で30分間加熱した。800℃で30分間加熱後のサンプル重量を、坩堝に投入したフェノール樹脂組成物の重量で除することにより、残炭率(%)を計算した。
実施例1〜5におけるフェノール樹脂組成物は、比較例1と比べて室温保存性に優れることが分かった。また、実施例1〜5におけるフェノール樹脂組成物は、比較例2,3と比べて低粘度であり、混練性および作業性に優れることが分かった。
また、比較例2の粘度を低減させるために、溶剤で希釈したものが比較例3であるが、かかる比較例3において、樹脂分(レジンコンテント)が低減するために、固定炭素が下がり、残炭率が低下することが分かった。これに対して、実施例1〜5におけるフェノール樹脂組成物は、比較例3と比べて、低粘度でありながらも残炭率を高められることが分かった。

Claims (8)

  1. ノボラック型フェノール樹脂と溶剤とを含むフェノール樹脂組成物であって、
    前記ノボラック型フェノール樹脂のGPC測定による重量平均分子量が200以上1000以下であり、
    当該フェノール樹脂組成物を、60℃で1時間保管した後で、20℃で48時間保管したとき、析出する結晶の析出量が、前記ノボラック型フェノール樹脂の固形分全体に対して、10重量%以下である、フェノール樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載のフェノール樹脂組成物であって、
    前記結晶の析出量が、前記ノボラック型フェノール樹脂の固形分全体に対して、5重量%以下である、フェノール樹脂組成物。
  3. 請求項1または2に記載のフェノール樹脂組成物であって、
    室温25℃における、当該フェノール樹脂組成物の粘度が、100mP・s以上5000mPa・s以下である、フェノール樹脂組成物。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載のフェノール樹脂組成物であって、
    前記ノボラック型フェノール樹脂の固形分が、当該フェノール樹脂組成物全体に対して、50重量%以上90重量%以下である、フェノール樹脂組成物。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載のフェノール樹脂組成物であって、
    当該フェノール樹脂組成物の残炭率が40重量%以上である、フェノール樹脂組成物。
  6. 耐火物を形成するために用いる、請求項1から5のいずれか1項に記載のフェノール樹脂組成物。
  7. 前記ノボラック型フェノール樹脂が室温25℃において固形状である、請求項1から6のいずれか1項に記載のフェノール樹脂組成物。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載のフェノール樹脂組成物を乾燥または焼成してなる耐火物。
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